説明

歩留まり向上剤および濾水性向上剤

本発明は、セルロース系繊維組成物のための高分子歩留まり向上剤および濾水性向上剤、および、それらの使用方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年12月14日付けで出願された米国仮出願第60/636,448号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書の開示に含まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、セルロース系繊維の組成物に関し、具体的には高分子歩留まり向上剤および濾水性向上剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
セルロース系繊維のシート、具体的には紙や板紙の製造は、セルロース系繊維の水性スラリーを製造し、このスラリーを移動する製紙用のワイヤーまたはファブリック上に堆積させ、水を濾水することによってスラリーの固形分からシートを形成することを含む。また、このようなスラリーは、無機鉱物性の増量剤または顔料を含んでいてもよい。さらに、このようなスラリーに、シートを形成する工程の前に有機および無機化学物質が添加されることが多く、そうすることによって、製紙方法にかかるコストを少なくし、より迅速にし、および/または、最終的な紙製品に特定の特性を付与する。濾水後、シートをプレスし、乾燥させて、さらに水分を除去する。
【0004】
製紙産業は、紙の質を改善し、生産性を高め、製造コストを低減させる努力を続けている。濾水/脱水する方法と固形分の歩留まりを改善するために、繊維スラリーが製紙用のワイヤーまたはファブリックに到達する前に、繊維スラリーに化学物質が添加されることが多い。このような化学物質は、歩留まりおよび/または濾水性向上剤と称される。製紙用のワイヤーまたはファブリック上での繊維スラリーの濾水または脱水が、より速い方法のスピードを達成することにおいて律速段階であることが多い。また、改善された脱水法では、プレス中でより乾燥したシートが得られる可能性があり、従って、より乾燥したセクションでは、必要なエネルギーはより少なくなる。また、製紙方法におけるこの段階は、多くのシートの最終的な特性を決定する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形分の歩留まりに関して、製紙用の歩留まり向上剤は、濾水してペーパーウェブを形成するための乱流法(turbulent method)中に、ウェブ中の微細な完成紙料の固形分の歩留まりを高めるのに用いられる。微細な固形分の十分な歩留まりがないと、固形分が本方法の排水に流出するか、または、白水が循環するループ中に高レベルで蓄積し、場合によっては堆積の沈着を引き起こすかのいずれかである。加えて、歩留まりが不十分だと、繊維上に吸収させて、紙の不透明性、強度またはサイジング特性それぞれを提供することを目的とする添加剤が損失することによって製紙コストが高くなる。
【0006】
新しい歩留まり向上剤および濾水性向上剤を開発することが望ましい。本発明は、これらの目的、加えてその他の重要な目的を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要約
一実施形態において、本発明は、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換された少なくとも1種のエチレン性不飽和の単量体(A)から形成されたポリマーセグメントを含む水混和性(水溶性、または、水分散性)のポリマーを含み、ここで、pは、0または1であり、Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、アリールまたはカチオンであり、該ポリマーは、約5百万またはそれより大きい重量平均分子量を有する。好ましくは、このようなポリマーはアニオン性である。
【0008】
このような水混和性ポリマーは、セルロース系繊維の組成物に驚くべき歩留まりおよび濾水活性を提供する。
その他の実施形態において、本発明は、このような水混和性ポリマー、および、セルロース繊維を含む。
【0009】
発明の詳細な説明
一実施形態において、本発明は、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換された少なくとも1種のエチレン性不飽和の単量体(A)から形成されたポリマーセグメントを含む水混和性ポリマーを含み、ここで、pは、0または1であり、Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、アリールまたはカチオンであり、該ポリマーは、約5百万またはそれより大きい重量平均分子量を有する。いくつかの好ましい実施形態において、本水混和性ポリマーはアニオン性である。許容できるカチオンの例としては、Na、K、Li、NHまたはアルキル−NHが挙げられるが、好ましくは、このようなカチオンは、ナトリウム、または、アンモニウムである。
【0010】
当然ながら、Aが、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換されているという条件は、エチレン部分が、アリールと−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分との両方で直接置換されていなければならないことを示すことは意図していない(例えば、以下の式IAを参照)。このような配列は本発明の一部だが、Aは、アリールが、エチレン部分に結合している実施形態と、−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分が、アリールに結合している実施形態も含むこととする(例えば、以下の式Iを参照)。さらに、アリール基が存在するという条件は、Rがアリールである実施形態によって満たすことができる(例えば、以下の式IBを参照)。
【0011】
単量体Aの例としては、これらに限定されないが、スチレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、アネトールスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、4−スルホナートN−ベンジルアクリルアミド、4−スルホナートN−フェニルアクリルアミド、ビニルピレンスルホン酸、ビニルアントラセンスルホン酸、または、ビニルピリジニオプロパンスルホナート、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS)、または、ビニルスルホン酸の遊離酸または塩、および、それらの混合物が挙げられる。
【0012】
好ましい実施形態において、単量体Aは、前述の化合物の遊離酸または塩である。さらなる実施形態において、Aは式I:
【0013】
【化1】

【0014】
を有し、式中:
はカチオンであり、例えばNa、K、Li、NHまたはRNHであり;および、
、RおよびRは、独立して、Hまたはアルキルである。式Iにおいて、−SO基は、オルト、メタまたはパラ位に存在していてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、単量体Aは、スチレンスルホン酸の塩を含む。好ましくは、このような塩は、ナトリウムまたはアンモニウム塩である。
あるいは、さらなる実施形態において、Aは式IAまたはIB:
【0016】
【化2】

【0017】
を有し、式中:Rはカチオンであり、例えばNa、K、Li、NHまたはRNHであり;および、
およびRは、独立して、Hまたはアルキルであり、Arはアリールである。
【0018】
容易に理解できることであるが、本発明のポリマーはホモポリマーであってもよく、すなわち、完全にエチレン性不飽和の単量体Aから形成されたポリマーセグメントで構成されていてもよい。好ましいホモポリマーは、式II:
【0019】
【化3】

【0020】
で示される高分子セグメントを含み、式中:
はカチオンであり、例えばNa、K、Li、NHまたはRNHであり;および、
、RおよびRは、独立して、Hまたはアルキルである。式IIにおいて、−SO基は、オルト、メタまたはパラ位に存在していてもよい
いくつかの好ましい実施形態において、Rは、Naである。その他の実施形態において、本発明は、本明細書で説明したような異なる単量体Aのポリマーセグメントを含むコポリマーを包含する。
【0021】
その他の実施形態において、本発明はまた、単量体Aのポリマーセグメントと、少なくとも1種のエチレン性不飽和のアニオン性または非イオン性単量体(B)から形成されたポリマーセグメントとを含むコポリマーも包含する。当然ながら、コポリマーという用語としては、これらに限定する意図はないが、可能性のあるあらゆるAおよびBを含む単量体の配列が挙げられ、例えばランダム、ブロックおよび交互の配列などである。
【0022】
単量体Bの例としては、これらに限定されないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アルキルアクリルアミド、アルキルメタクリルアミド、アルコキシル化アクリラート、メタクリラート、アルキルポリエチレングリコールアクリラート、アルキルポリエチレングリコールメタクリラート;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリルアミドグリコール酸の遊離酸または塩、それらの混合物が挙げられる。ポリマーを水混和性に保つことができるあらゆるアニオン性または非イオン性単量体が考慮されるが、好ましくは、単量体Bは、アクリルアミド、アクリル酸、または、アクリル酸の塩である。許容できる塩の例としては、Na、K、Li、NHまたはRNHを有するものが挙げられるが、好ましくは、このような塩は、ナトリウムまたはアンモニウム塩である。
【0023】
一実施形態において、A:Bのモル比は、約5:95〜約100:0である。その他の実施形態において、A:Bのモル比は、約20:80〜約100:0である。その他の実施形態において、A:Bのモル比は、約30:70〜約100:0である。
【0024】
好ましい一実施形態は、単量体Aがスチレンスルホン酸のナトリウムまたはアンモニウム塩を含み、単量体Bがアクリルアミドであるコポリマーを含む。このような実施形態において好ましいポリマーは、式IIおよび式III:
【0025】
【化4】

【0026】
で示される高分子セグメントそれぞれを含む。
いくつかの好ましい実施形態において、Rは、Naである。その他の好ましい実施形態は、単量体Aがスチレンスルホン酸のナトリウムまたはアンモニウム塩を含み、単量体Bがアクリル酸の塩であるコポリマーを含む。このような実施形態において好ましいポリマーは、式IIおよび式IV:
【0027】
【化5】

【0028】
で示される高分子セグメントそれぞれを含み、式中、
はカチオンであり、例えばNa、K、Li、NHまたはRNHである。
【0029】
好ましい一実施形態において、Rは、Naである。本発明のその他の実施形態において、セルロース繊維と、上述のポリマーのいずれかの1種またはそれ以上とを含むセルロース系繊維の組成物が提供される。いくつかの実施形態において、上記セルロース繊維はパルプスラリーを含み、その他の実施形態において、上記セルロース繊維は紙または板紙を含む。上記セルロース系繊維の組成物は、典型的には水性スラリーであり、従って、この実施形態において、上記セルロース系繊維の組成物は水をさらに含む。任意に、上記セルロース系繊維の組成物は、無機鉱物性の増量剤、顔料、サイズ剤、スターチ、堆積を制御する物質、充填剤、不透明化剤、蛍光増白剤、増強剤、有機または無機凝固剤、および、従来の凝集剤の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0030】
本発明のその他の実施形態において、セルロース系繊維の組成物を製造する方法が提供され、本方法は、水性セルロース系繊維のスラリーに、上述のポリマーのいずれかの1種またはそれ以上を添加することを含む。
【0031】
本発明のその他の実施形態において、セルロース系繊維の組成物における濾水および固形分の歩留まりを改善する方法が提供され、本方法は、上記セルロース系繊維の組成物に、上述のポリマーのいずれかの1種またはそれ以上を添加することを含む。
【0032】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、既定数の炭素原子を有する分岐状および直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含み、例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル(i−Pr)、イソブチル(i−Bu)、sec−ブチル(s−Bu)、tert−ブチル(t−Bu)、イソペンチル、イソヘキシルなどである。前述の置換基のいずれかがアルキル置換基を示すか、またはアルキル置換基を含む場合、このアルキル置換基は、直鎖状でもよいし、または、分岐状でもよく、さらに、12個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子、より好ましくは1または2個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0033】
用語「アリール」は、20個以下の炭素原子からなる芳香族の炭素環式部分を意味し、このような環は、一つの環(単環式)でもよいし、または、複合環(多環式、環は3つまで)でもよく、複合環は一緒に融合していてもよいし、または、共有結合で連結していてもよい。そのアリール部分の環におけるあらゆる適切な位置で、定義された化学構造に共有結合で連結していてもよい。アリール部分の例としては、これらに限定されないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、ピレニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニルなどのような化学基が挙げられる。
【0034】
当然ながら、特許請求の範囲には、可能性のあるあらゆる立体異性体、互変異性体、塩およびプロフォームが包含される。その上、特に他の指定がない限り、アルキルおよびアリールは、それぞれ任意に置換されると考慮される。
【0035】
置換される可能性がある部分は、1個またはそれ以上の置換基置換されていてもよい。存在していてもよい置換基は、一般的に用いられる置換基のうち1種またはそれ以上であってよい。このような置換基の具体例としては、ハロゲン、ニトロ、シアノ、チオシアナト、シアナト、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミル、アルコキシカルボニル、カルボキシル、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、カルバモイル、アルキルアミド、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヘテロシクリル、または、シクロアルキル基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子、または、低級アルキルまたは低級アルコキシ基である。典型的には、0〜4個の置換基が存在していてもよい。
【0036】
好ましくは、本発明のポリマー(ホモポリマーおよびコポリマーの両方)は、分岐状ポリマー、または、架橋ポリマーではない。例えば、調製物中に分基剤または架橋剤を用いないことが好ましい。
【0037】
セルロース系繊維のシート、具体的には紙や板紙の製造は、セルロース系繊維の水性スラリーを製造すること(このスラリーには、無機鉱物性の増量剤または顔料が含まれていてもよい);このスラリーを、移動する製紙用のワイヤーまたはファブリック上に堆積させること;および、水を濾水することによってスラリーの固形分からシートを形成することを含む。本発明は、セルロース系繊維と、本発明のポリマーとを含むセルロース系繊維の組成物を提供する。本発明はまた、本発明のポリマーを、セルロースのスラリー、または、セルロースパルプスラリーに添加する工程を含む、上記セルロース系繊維の組成物の製造方法も提供する。
【0038】
本発明のポリマーは、製紙システムおよびプロセスで用いることができ、具体的には、濾水および歩留まり向上剤として有用である。上述したように、商業的な製紙法において、セルロース系繊維またはパルプのスラリーは、移動する製紙用ワイヤーまたはファブリック上に堆積される。このようなスラリーは、その他の化学物質を含んでいてもよく、例えばサイズ剤、スターチ、堆積を制御する物質、鉱物性の増量剤、顔料、充填剤、不透明化剤、蛍光増白剤、有機または無機凝固剤、従来の凝集剤、または、その他の製紙用パルプに一般的な添加剤を含んでいてもよい。堆積されたスラリーから水を除去すると、シートが形成される。通常このようなシートは、続いてプレスされ、乾燥させ、紙または板紙が形成される。好ましくは、濾水または脱水、および、スラリー中の微細な繊維と充填剤の歩留まりを改善するために、本発明のポリマーは、スラリーがワイヤーに到達する前にスラリーに添加される。
【0039】
本発明の方法で使用可能な適切なセルロース系繊維パルプとしては、従来の製紙用原料、例えば従来の化学パルプが挙げられる。例えば、漂白した、および、無漂白の硫酸塩パルプ、および、亜硫酸パルプ、機械パルプ、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、古紙パルプ、例えば古い段ボール箱、新聞用紙、オフィス古紙、雑誌古紙およびその他の脱インキされていない古紙、脱インキされた古紙、および、それらの混合物を用いてもよい。
【0040】
本明細書で説明されるポリマーは、典型的には、適用部位で希釈され、約0.01〜約1%の活性ポリマーの水溶液が製造され、続いて紙加工に導入されることによって、歩留まりおよび濾水に影響を与える。本明細書で説明されるポリマーは、高粘度の原料に添加してもよいし、または、低粘度の原料に添加してもよいが、好ましくは低粘度の原料に添加される。本ポリマーは、1ヶ所の供給ポイントで添加してもよいし、または、本ポリマーが2ヶ所またはそれ以上の別々の供給ポイントで同時に供給されるように分割して供給されてもよい。典型的な原料添加ポイントとしては、ファンポンプの前、ファンポンプの後、および、圧力スクリーンの前、または、圧力スクリーンの後の供給ポイントが挙げられる。
【0041】
本明細書で説明されるポリマーは、好ましくは、パルプの乾燥重量に基づきセルロースパルプ1トンあたり約0.01ポンド〜約10ポンドの活性ポリマーの比率で用いられる。ポリマーの濃度は、より好ましくは、乾燥したセルロースパルプ1トンあたり約0.05ポンド〜約5ポンドの活性ポリマーである。
【0042】
水溶性または水分散性の、アニオン性の、高分子量のスルホン化芳香族ポリマーの重合は、当業者既知のあらゆる方法で行うことができ、例えば、AllcockおよびLampe,Contemporary Polymer Chemistry(イングルウッドクリフス,ニュージャージー州,PRENTICE−HALL,1981),3〜5章を参照。本ポリマーは、逆乳化重合、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合などによって製造してもよい。また、本ポリマーは、水不溶性の非イオン性ポリスチレンポリマーがポリスチレンスルホン酸塩にスルホン化される場合、親となるポリスチレンのスルホン化によって製造してもよい。これらの反応の例としては、多数のスルホン化試薬の使用が挙げられ、このような試薬としては、これらに限定されないが、三酸化硫黄(SO)、リン酸トリエチルを含む三酸化硫黄、硫酸アセチル(濃硫酸と無水酢酸とを混合することによってその場で製造される)、クロロスルホン酸などが挙げられる。
【0043】
また、分子量を制御するために、当業者既知の連鎖移動剤のいずれかを用いてもよい。このような物質としては、これらに限定されないが、低級アルキルアルコール、例えばイソプロパノール、アミン、メルカプタン、例えばメルカプトエタノール、亜リン酸塩、チオ酸、アリルアルコールなどが挙げられる。当然ながら、上述の重合方法は、決して本発明に係るポリマーの合成を限定することはない。
【0044】
その他の実施形態において、上述のポリマーの製造方法が、2004年12月14日付けで出願された同時係属中の米国特許出願第11/012,010号で説明されている(その全ての開示内容は、この参照により開示に含まれる)。
【0045】
以下の実施例で本発明の化合物をさらに説明する。
【実施例】
【0046】
実施例1
オーバーヘッド型の機械式撹拌器、温度計、窒素散布管、および、コンデンサーを備えた適切な反応フラスコに、電荷を有するパラフィン油の油相(139.0g、エスケイド110(ESCAID110)オイル、エクソン・モービル(Exxon Mobil,ヒューストン,テキサス州))、および、界面活性剤(3.75gのシラソールG−1086(CIRRASOL(R)G−1086)、および、11.25gのスパン80(SPAN(R)80)、いずれもユニケマ(Uniqema,ニューカッスル,デラウェア州)製)を入れた。
【0047】
50重量%のアクリルアミド水溶液(51.1g,単量体総量に基づき50モル%)、スチレンスルホン酸、ナトリウム塩粉末(74.44g,単量体総量に基づき50モル%)、脱イオン水(218.47g)、および、バーサネックス80(VERSENEX(R)80,ダウ・ケミカル(ミッドランド,ミシガン州))キレート化剤(chelant)溶液(0.27g)を含む水相を別々に製造した。水相を約35〜45℃に温め、単量体を溶解させた。この水溶液のpHは、9〜11の範囲であった。
【0048】
次に、この水相を、ホモジナイザーで混合しながら油相に入れ、安定な油中水型エマルジョンを得た。次に、このエマルジョンを、4個のブレードを有するガラス製撹拌器を用いて、窒素を散布しながら60分間混合した。窒素を散布する間、エマルジョンの温度を57±1℃に調節した。その後、散布を中止し、窒素ブランケットを取り付けた。
【0049】
単量体の総モル量に基づき75ppmの最初のAIBN分量に相当する3重量%AIBNのトルエン溶液を供給することによって、重合を開始させた。最初のAIBN投入から4時間後に、単量体の総モル量に基づき75ppmの第二のAIBN分量に相当する3重量%AIBNのトルエン溶液を〜30秒間にわたり反応器に入れた。次に、このバッチを57±1℃で1.5時間保持した。最終的なAIBNチャージとして、単量体の総モル量に基づき100ppmの最終的なAIBN分量に相当する3重量%AIBNのトルエン溶液を〜30秒間にわたり反応器に入れ、65±1℃に加熱し、約0.5時間にわたり保持した。次に、このバッチを室温に冷却し、生成物を回収した。
【0050】
この高分子逆エマルジョンに、水に添加する際のエマルジョンの逆転を促進するためにブレーカーとしての界面活性剤を添加してもよい。
実施例2〜7
表1に記載の変更を行ったこと以外は実施例1の方法に従って、ポリマーを製造した。
【0051】
【表1】

【0052】
重量平均分子量Mwを、バッチの多角度光散乱検出器(MALLS)によって、Dawn DSPレーザー光度計オプティラボDSP(Optilab DSP)干渉屈折計システム(ワイアット・テクノロジー(Wyatt Technology),サンタバーバラ,カリフォルニア州)を用いて決定した。MALLSのバッチモードにおいて、1MのNaNO中のポリマー溶液のうち数種の濃度を解析し、極めて低い散乱角および濃度に対する光散乱および屈折率データを推測した。次に、数種のポリマー濃度と検出角度からの光散乱データを利用してジムプロットを構築し、重量平均分子量Mwを得た。
【0053】
絶対重量平均分子量Mwを決定する方法は光散乱である。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、または、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)でも重量平均分子量Mwを得ることができるが、これらは、試験されるポリマーをポリマー分子量標準と比較することに基づく相対的なMw測定である。光散乱は、重量平均分子量Mwを決定するためのここで開示された唯一の方法である。
【0054】
多数の比較ポリマーの重量平均分子量Mwを上述した通りに同様にして決定し、表2に列挙した。
【0055】
【表2】

【0056】
略語
バーサTL−501(VERSA(R)TL−501)は、ポリ(スチレンスルホナートのナトリウム塩)であり、アルコ・ケミカルズ(Alco Chemicals,チャタヌーガ,テネシー州)から水溶液として市販されており、
SP2製品番号625および626は、ポリ(スチレンスルホナートのナトリウム塩)である分子量標準であり、サイエンティフィック・ポリマー・プロダクツ(Scientific Polymer Products,オンタリオ,ニューヨーク州)より乾燥粉末として入手可能であり、
EM1030Naは、ポリ(アクリル酸ナトリウム)であり、SNFフロージャー(SNF Floerger,ライスボロ(Riceboro),ジョージア州)から自己逆転する逆エマルジョンとして市販されており、
AN132は、32:68モル%のポリ(アクリルアミド−コ−2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸のナトリウム塩)であり、SNFフロージャー(SNF Floerger)より乾燥粉末として入手可能であり、
EM1010は、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸のナトリウム塩)であり、SNFフロージャー(SNF Floerger)より自己逆転する逆エマルジョンとして入手可能であり、
NaSSは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムであり、
AMは、アクリルアミドであり、
NaAcは、アクリル酸ナトリウムであり、
AMPSは、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸のナトリウム塩であり、
Mwは、多角度光散乱検出器(MALLS)によって決定された重量平均分子量である。
【0057】
紙のシート形成および歩留まりの化学に関する技術は、当業界周知である。例えば、Handbook for Pulp and Paper Technologist,G.A.Smook編(ジョージア州アトランタ,TAPPI Press,1989)、および、PULP AND PAPER,Chemistry and Chemical Technology,第3版,J.P.Casey編(ニューヨーク,ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience),1981)を参照。本発明の実施例の性能を評価するために、一連の濾水実験を、動的濾水試験機(DDA)を用いて行った。本明細書で説明したポリマーと比較ポリマーを、当業界では一般的に「マイクロパーティクル」と称されている無機シリカの濾水性向上剤のNP780(エカ・ケミカルズ(Eka Chemicals,マリエッタ,ジョージア州))と比較した。特に他の指定がない限り、パーセンテージ、部などはいずれも重量に基づく。
【0058】
DDA(AB Akribi Kemikonsulter,スンドスバル,スウェーデン)は当業界既知である。このユニットは、バッフル付きミキシングジャー、真空容器、および、電子制御と空気制御を備えた制御ボックスからなる。DDAは、パルプ完成紙料の濾水時間、歩留まりおよび湿潤シート透過性を測定すると予想される。DDAの操作において、パルプスラリーを混合チャンバーに添加した。試験開始の際に、機械式かきまぜ機で既定の速度で混合した。混合チャンバーに様々な添加剤を既定の時間間隔で添加した。混合が完了したら、混合チャンバーの下の貯蔵タンクに300mbarの真空をかけ、スラリーを濾水し、真空容器中にろ液を回収した。完成紙料を介して真空が破壊され、抄紙機上の湿潤ラインと類似した湿潤マットが形成されるまで、完成紙料を濾水し続けた。続いて、マットが形成された後も、真空は既定の時間作用し続けた。DDA濾水試験の時間は、真空が破壊される(すなわち真空が、適用された300mbarのレベルから減少する)時間とした。シート透過性は、試験終了時における湿潤マットの平衡真空(equilibrium vacuum)とした。濾水時間が秒単位で短ければ短いほど、パルプの脱水がより容易であると予想されるために、望ましい応答である。シート透過性は、形成された湿潤マットの凝集の程度の指標であるため、シート透過性は高いほど望ましい。透過性が低いことは、大きい凝集塊を生じる望ましくない高度の凝集があることを示し、そのために、そのすき間に存在する水が容易に放出されないと予想される。このタイプの凝集塊は、プレス中の抄紙機や乾燥セクション上で容易に脱水されないと予想される。また、透過性が低いことにより、その結果得られた形成されたシートにおいて不良な印刷特性やコーティング性をもたらす可能性もある。異なるシステムの比較において、望ましい応答とは、より低い濾水時間と、より高いシート透過性との組み合わせである。
【0059】
この一連の試験で用いられる完成紙料は、合成で酸性pHの機械的な完成紙料であった。この完成紙料は、米国南部の製紙工場から得られたコーティングされた損紙とコーティングされていない損紙から製造された。TAPPI離解機(テスティング・マシーンズ社(Testing Machines Inc.),アミティビル,ニューヨーク州)を利用して、コーティングされた損紙とコーティングされていない損紙を水に分散させた。完成紙料の製造に使用された水は、現地の硬水1部に対して脱イオン水3部を含む混合物を含み、さらに、0.075%硫酸ナトリウム、および、0.0025%のスレンディッド100(Slendid(R)100)ペクチンゴム(CPケルコ(CP Kelco,アトランタ,ジョージア州))で改変した。完成紙料のpHを4.5に調節する。
【0060】
DDA濾水試験試験は、総固形分濃度0.5%を有する合成完成紙料(500ml)を用いて行った。この試験は、カチオン性スターチ、続いてカチオン性凝固剤、続いて高分子凝集剤、続いて濾水性向上剤を連続的に添加しながら1,600rpmで行った;これらの材料を全て既定の時間間隔で混合した。濾水性向上剤を導入して混合した後、濾水試験を行った。カチオン性スターチは、乾燥完成紙料1トンあたりスターチ10ポンドのレベルで添加された。カチオン性凝固剤は、乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝固剤1ポンドのレベルで添加された。高分子凝集剤は、乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝集剤0.5ポンドのレベルで添加された。濾水性向上剤の適用量は、乾燥完成紙料1トンあたりの活性な濾水性向上剤のポンド数(lb)で示され、具体的な適用量はデータの表に記載した。
【0061】
DDA濾水試験試験において、用いられたカチオン性スターチは、スタロック400(STALOK(R)400)ポテトスターチ(AE.,ステイリー(AE.,STALEY,ディケーター,イリノイ州))である。カチオン性凝固剤は、パーフォームPC1279(PERFORM(R)PC1279)(ハーキュリーズ(Hercules,ウィルミントン,デラウェア州))という商標で販売されている、分岐状エピクロロヒドリン−ジメチルアミン縮合重合体である。用いられたカチオン性凝集剤は、パーフォームPC8715(PERFORM(R)PC8715)(ハーキュリーズ,ウィルミントン,デラウェア州)という商標で販売されている90/10モル%のアクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物であり、乾燥粉末として商業的に利用可能である。DDA濾水試験試験の結果は、以下の表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に記載のデータは、カルボキシル化された、および、脂肪族のスルホン化されたポリマーを用いて得られた結果と比較した、本発明のアニオン性で芳香族のスルホン化されたポリマーの濾水活性を説明する。50%、70%および100%NaSSポリマーを含むラン8〜16のポリマーは、シート透過性に影響を与えなかったカチオン性凝集剤単独と比較して、濾水時間を改善した。
【0064】
EM1030Na、EM1010およびAN132は、カチオン性凝集剤単独のコントロールプログラムを超えて濾水を改善しなかった。
予想に反して、ここに示すデータから、脂肪族のスルホン化されたポリマー、および、カルボキシル化ポリマーは、未処理コントロールと比較して濾水をまったく改善しないことから、本発明の高分子量でアニオン性の芳香族のスルホン化されたポリマーは、歩留まりおよび濾水に影響を与えることに関して極めて優れていることが実証された。
【0065】
合成の酸性pHの機械的な完成紙料用いた第二の一連の濾水試験を、DDAを用いて行った。
【0066】
【表4】

【0067】
表4に示すデータから、5百万より大きいMwを有するポリマーは、より低い製品適用量で、NP780によって提供される濾水活性を超える優れた濾水活性を提供したことが実証された。220,000、および、510,000のMwを有するPSSホモポリマーは、本明細書で説明される5百万より大きいMwを有するポリマーと比較して最小の濾水活性を提供したことから、濾水性能に影響を与えるには5百万より大きいMwが必要条件であることが実証された。この結果は予想外である。
【0068】
また、一連の濾水試験を、真空での濾水試験(VDT)を、合成の酸性pHの木材非含有の完成紙料を用いて行った;そのデータを表4に示す。装置のセットアップは、様々なろ過に関する参考図書で説明されているようなブーフナー漏斗試験と同様であり、例えば、Perry’s Chemical Engineers’Handbook,第7版(マグローヒル,ニューヨーク,1999),18〜78頁を参照。VDTは、300mlの磁気性のゲルマン(Gelman)ろ過漏斗、250mlのメスシリンダー、クイックディスコネクト、ウォータートラップ、および、真空計と調節器を備えた真空ポンプからなる。VDT試験は、まず、真空を望ましいレベル(典型的には10インチHg)に設定し、漏斗を円柱上に適切に置くことによって行われた。次に、250gの0.5重量%の紙原料をビーカーに入れ、この原料に、オーバーヘッド型ミキサーによって提供される撹拌下で、処理プログラムに従って必要な添加剤(例えば、スターチ、アラム、および、試験する凝集剤)を添加した。次に、この原料をろ過漏斗に注入し、真空ポンプを稼動させ、それと同時にストップウォッチを稼働させた。濾水の有効性は、230mlのろ液を得るのに必要な時間として報告した。VDTの原理は、ケークろ過理論に基づいており、参考として、Solid−Liquid Separation,第3版,L.Svarovsky編(ロンドン,Butterworths,1990)の9章を参照。まず、スラリー中の固形分を、ろ過ケークを支持するのに役立つ薄いろ過材の媒体上に堆積させた。固形層の連続的な堆積がろ過ケークまたはマットを形成するかどうかは、凝集塊の密度、マット中の凝集塊の粒度分布、および、水相中に残留した高分子材料のレベルに依存する。高密度で大きさが一様の凝集塊を形成し、水中での残留レベルが低い(すなわち優れた形成特性を有する)凝集剤は、VDT試験において優れた濾水を示すと予想され、逆もまた同様である。
【0069】
合成の木材非含有の酸性完成紙料を、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプ、ならびに、水およびその他の材料から製造した。まず、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプを、実験用バレービーター(Valley Beater,ヴォイス(Voith),アップルトン,ワイオミング州)で別々に精製した。次に、これらのパルプを水性媒体に添加した。
【0070】
完成紙料の製造に使用された水は、現地の硬水1部に対して脱イオン水3部を含む混合物を含み、さらに、0.075%硫酸ナトリウム、および、0.0025%のスレンディッド(R)100ペクチンゴム(CPケルコ,アトランタ,ジョージア州))で改変した。完成紙料のpHを4.5に調節した。
【0071】
完成紙料を製造するために、硬材および軟材を、硬材:軟材が70:30の重量比で水性媒体に分散させた。80%の繊維と20%のクレーフィラーとを含む最終的な完成紙料が提供されるように、この完成紙料に、クレーフィラーをパルプの合計の乾燥重量に基づいて25重量パーセントで導入した。完成紙料のpHを4.5に調節した。スターチ、凝固剤および凝集剤(添加剤)、適用量および添加順序は、上記の実施例で用いられた通りである。
【0072】
【表5】

【0073】
表5に示すデータから、濾水に影響を与えないEM1010や、適用量を増加させても濾水をそれ以上増加させないより低いMwのPSSポリマーと比較して、本明細書で説明されるポリマーは優れた活性を有することが実証された。より低いMwのPSSポリマーは、適用量を増加させるにつれて濾水が遅くなり、これは望ましくない応答である。本明細書で説明される5百万より大きいMwを有するポリマーは、脂肪族のスルホン化されたポリマーEM1010や、低いMwのPSSホモポリマーより著しく優れた濾水を示すことが実証された。この結果は予想外である。
【0074】
軽量コート紙グレードを製造する米国南部の製紙工場から得られた完成紙料で本明細書で説明されるポリマーを用いて、その他の一連のDDA濾水試験実験を行った。ミルを運転させて、カチオン性凝固剤とカチオン性凝集剤とを組み合わせたNP780シリカのプログラムを行った。完成紙料を、原料と白水とをミル機械のチェストで代表的な粘稠度にブレンドすることによって製造した。DDA試験のために、完成紙料を、カチオン性凝固剤を乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝固剤1ポンドのレベルで、高分子凝集剤を乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝集剤0.5ポンドのレベルで、および、濾水性向上剤は、乾燥完成紙料1トンあたり数ポンド(lb)の活性な濾水性向上剤を用いて処理した(具体的な適用量はデータの表に記載した)。カチオン性凝固剤は、パーフォームPC1279であり、用いられたカチオン性凝集剤は、パーフォームPC8715凝集剤である。
【0075】
【表6】

【0076】
新聞用紙を製造する米国南部の製紙工場から得られた完成紙料で本明細書で説明されるポリマーを用いて、その他の一連のDDA濾水試験実験を行った。ミルを運転させて、アラムとカチオン性凝集剤とを組み合わせたNP780シリカのプログラムを行った。完成紙料を、原料と白水とをミル機械のチェストで代表的な粘稠度にブレンドすることによって製造した。DDA試験のために、完成紙料を、硫酸アルミニウム十八水和物を乾燥完成紙料1トンあたりアラム4ポンドのレベルで、高分子凝集剤を乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝集剤0.25ポンドのレベルで、および、濾水性向上剤を乾燥完成紙料1トンあたり数ポンド(lb)の活性な濾水性向上剤で処理した(具体的な適用量はデータの表に記載した)。用いられたカチオン性凝集剤は、パーフォームPC8715凝集剤である。
【0077】
【表7】

【0078】
表6および7に示すデータから、実際のミルを用いた完成紙料において、本明細書で説明されるポリマーは、NP780、EM1030Naおよび低いMwのPSSホモポリマーのバーサTL−501(Versa(R)TL−501)によって提供される濾水性より優れた濾水性を有することが示された。本明細書で説明される5百万より大きいMwを有するポリマーは、低いMwのPSSホモポリマーよりも著しく優れた濾水性を有することが実証された。この結果は予想外である。
【0079】
その他の一連のVDT濾水実験を、合成のアルカリ性完成紙料を用いて行った;そのデータを表8に示す。合成のアルカリ性完成紙料を、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプ、ならびに、水およびその他の材料から製造した。まず、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプを、実験用バレービーター(ヴォイス,アップルトン,ワイオミング州)で別々に精製した。次に、これらのパルプを水性媒体に添加した。
【0080】
完成紙料の製造に使用された水は、現地の硬水1部に対して脱イオン水3部を含む混合物を含み、さらに、0.01%炭酸水素ナトリウム、および、0.03%塩化ナトリウムで改変した。
【0081】
完成紙料を製造するために、硬材および軟材を、硬材:軟材が70:30の重量比で水性媒体に分散させた。80%の繊維と20%PCC充填剤とを含む最終的な完成紙料が提供されるように、この完成紙料に、沈降炭酸カルシウム(PCC)充填剤をパルプの合計の乾燥重量に基づいて25重量パーセントで導入した。得られたpHは8.3であった。
【0082】
VDT試験を、カチオン性スターチ、続いてアラム、続いて高分子凝集剤、続いて濾水性向上剤を連続的に添加しながら1,200rpmで行った;これらの材料は全て既定の時間間隔で混合した。濾水性向上剤を導入して混合した後、濾水試験を行った。カチオン性スターチは、乾燥完成紙料1トンあたりスターチ10ポンドのレベルで添加された。アラム(硫酸アルミニウム十八水和物)は、乾燥完成紙料1トンあたりアラム5ポンドのレベルで添加された。高分子凝集剤は、乾燥完成紙料1トンあたり活性な凝集剤0.4ポンドのレベルで添加された。濾水性向上剤の適用量は、乾燥完成紙料1トンあたりの活性な濾水性向上剤のポンド数(lb)で示され、具体的な適用量はデータの表に記載した。
【0083】
カチオン性スターチおよびアラムは、その他のデータの表で説明されている通りである。用いられたカチオン性凝集剤は、90/10モル%のアクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物であり、これは、パーフォームPC8138(PERFORM(R)PC8138)(ハーキュリーズ,ウィルミントン,デラウェア州)という商標で販売されており、自己逆転するエマルジョンとして商業的に利用可能である。パーフォームSP9232(PERFORM(R)SP9232)濾水性向上剤(ハーキュリーズ,ウィルミントン,デラウェア州)は、自己逆転するエマルジョンとして商業的に利用可能な濾水性向上剤である。
【0084】
【表8】

【0085】
表8の濾水のデータから、本明細書で説明されるポリマーは、アルカリ性の完成紙料における商業的な濾水性向上剤と比較して、それに匹敵する活性を有することが実証された。
【0086】
この文書中で引用または記載されたそれぞれの特許、特許出願および公報の開示は、それらの全体を参照により本発明に含める。
本明細書で説明されている改変に加えて、当業者であれば、前述の説明から本発明の様々な改変を十分に理解できると思われる。このような改変も、添付の請求項の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と、水混和性ポリマーとを含むセルロース系繊維の組成物であって、該水混和性ポリマーは、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換された少なくとも1種のエチレン性不飽和の単量体(A)から形成されたポリマーセグメントを含み、ここで、pは、0または1であり、Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、アリールまたはカチオンであり、該ポリマーは、約5百万またはそれより大きい重量平均分子量を有する、上記組成物。
【請求項2】
前記単量体Aは、スチレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、アネトールスルホン酸、ビニルフェニル硫酸、4−スルホナートN−ベンジルアクリルアミド、4−スルホナートN−フェニルアクリルアミド、ビニルピレンスルホン酸、ビニルアントラセンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルスルホン酸、ビニルピリジニオプロパンスルホナートの遊離酸または塩、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項3】
前記単量体Aは、スチレンスルホン酸の遊離酸または塩を含む請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項4】
前記単量体Aは、式I:
【化1】

を有し、式中:
は、Na、K、Li、NHまたはRNHであり、
、RおよびRは、独立して、Hまたはアルキルであり、−SO基は、オルト、メタまたはパラ位に存在する、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項5】
前記単量体Aは、式IAまたはIB:
【化2】

を有し、式中:
はカチオンであり、
、RおよびRは、独立して、Hまたはアルキルであり;および、
Arはアリールである、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のエチレン性不飽和のアニオン性または非イオン性単量体(B)から形成されたポリマーセグメントをさらに含む、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のエチレン性不飽和のアニオン性または非イオン性単量体(B)から形成されたポリマーセグメントをさらに含む、請求項3に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項8】
前記単量体Bは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アルキルアクリルアミド、アルキルメタクリルアミド、アルコキシル化アクリラート、メタクリラート、アルキルポリエチレングリコールアクリラート、アルキルポリエチレングリコールメタクリラート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリルアミドグリコール酸の遊離酸または塩、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項9】
前記単量体Bは、アクリルアミドである、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項10】
前記単量体Bは、アクリル酸の塩である、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項11】
前記単量体Aは、スチレンスルホン酸のナトリウムまたはアンモニウム塩を含む、請求項9に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項12】
前記単量体Aは、スチレンスルホン酸のナトリウムまたはアンモニウム塩を含む、請求項10に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項13】
A:Bのモル比は、約5:95〜約100:0である、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項14】
A:Bのモル比は、約20:80〜約100:0である、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項15】
A:Bのモル比は、約30:70〜約100:0である、請求項6に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項16】
前記セルロース繊維は、パルプスラリーを含む、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項17】
前記セルロース繊維は、紙または板紙を含む、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項18】
無機鉱物性の増量剤、顔料、サイズ剤、スターチ、堆積を制御する物質、充填剤、不透明化剤、蛍光増白剤、増強剤、有機または無機凝固剤、および、従来の凝集剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載のセルロース系繊維の組成物。
【請求項19】
セルロース系繊維の組成物を製造する方法であって:
水性セルロース系繊維のスラリーに、アニオン性水混和性ポリマーを添加することを含み、該アニオン性水混和性ポリマーは、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換された少なくとも1種のエチレン性不飽和の単量体(A)から形成されたポリマーセグメントを含み、ここで、pは、0または1であり、Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、アリールまたはカチオンであり、該ポリマーは、約5百万またはそれより大きい重量平均分子量を有する、上記方法。
【請求項20】
セルロース系繊維の組成物における濾水および固形分の歩留まりを改善する方法であって:
セルロース系繊維の組成物に、アニオン性水混和性ポリマーを添加することを含み、害アニオン性水混和性ポリマーは、少なくとも1個のアリール基、および、少なくとも1個の−S(=O)OR、または、−OS(=O)(O)部分で置換された少なくとも1種のエチレン性不飽和の単量体(A)から形成されたポリマーセグメントを含み、ここで、pは、0または1であり、Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、アリールまたはカチオンであり、該ポリマーは、約5百万またはそれより大きい重量平均分子量を有する、上記方法。

【公表番号】特表2008−523236(P2008−523236A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546867(P2007−546867)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/045289
【国際公開番号】WO2006/065928
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】