説明

気相成長装置および結晶膜の形成方法

【課題】基板へのダスト付着を抑制または防止して、高歩留まりで高品質な化合物半導体デバイスを製造する。
【解決手段】グローブボックス室内部にリアクタ3が内蔵された開閉自在なチャンバ5が設けられ、チャンバ5内のリアクタ3で基板4の表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置1において、グローブボックス室上部よりパージガスを導入してグローブボックス室下部のダストトラップ部8を介してその下部よりパージガスが排気されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に結晶膜を形成させる気相成長装置およびこれを用いた結晶膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD法などの気相成長法は、結晶膜の形成には欠かせない技術である。有機金属気相成長法(MOCVD:MetalOrganic Chemical Vapor Deposition)は、気相結晶成長方法のうちの一つで、主に半導体結晶成長に用いられる。
【0003】
MOCVDは、材料ガスや水素、窒素、アルゴンなどのキャリアガス流量を制御するガス計量ユニット、ヒータで成長基板の温度を制御し成長基板上に材料ガスを反応成長させるリアクターユニット、真空ポンプ、圧力制御器でリアクタ圧力を制御する排気ユニットで構成されている。MOCVDは、ガス計量ユニットで所望の流量に調整された有機金属を中心とした原料ガスを所望の圧力、温度に制御したチャンバ内で熱分解、反応させ、成長基板上に所望の半導体結晶を得るための装置である。例えば、III−V族半導体の場合、一般的にはIII族原料に有機金属を用い、V族原料に特殊材料ガスを用いる。加熱されたチャンバ内に導入された原料が熱分解することにより、適切な反応基が成長基板に供給されて半導体結晶成長が行われる。
【0004】
図8は、従来の気相成長装置の一構成例を模式的に示す縦断面図である。
【0005】
図8において、従来の気相成長装置100において、図示しないガス制御装置から、ガス供給部としてのノズル101を介して供給される原料ガスがチャンバ102内で熱分解され、チャンバ102内の回転軸で支持されるサセプター103上に設置された成長基板104に所望の材料膜を形成する。その後、原料ガスは排気ガスとして排気ポート105を通じて図示しない排気ポンプによりチャンバ102内から排出される。排気ガス中には大量に反応副生成物や未反応物が含まれるため、排気ポンプの上流にこれらを専用に捕獲するための図示しないトラップ機構を配置する。また、排気ガス中には砒素などの有害な物質が含まれることが多いので、最下流に図示しない専用の除害設備が設置される。
【0006】
次に、成長基板104の上方には、防着板106が蓋部材107と共に設けられ、シリンダ手段108により蓋部材107が防着板106と共に上下に移動自在に設けられている。蓋部材107が上方向に移動してチャンバ102内の雰囲気がグローボックス室109内に拡散する。サセプター103上に設置された成長基板104が搬送ロボット110により入口111から取り除かれる。この取り除かれた成長基板104は搬送ロボット110により別の入口112からカセット113内に収容される。
【0007】
このとき、蓋部材107が開いており、不活性ガスであるパージガスがグローブボックス室内に下方の供給ポート114から供給され、成膜に寄与した原料ガスと共にパージガスが上方の排気ポート115から排気される。同様に、搬送室やカセット室においても、不活性ガスであるパージガスが供給ポート117から供給されて排気ポート118から排気される。
【0008】
逆に、カセット112内の未処理の基板116は、搬送ロボット110により入口112から取り出された後に、その未処理の基板116は入口111からサセプター103上に設置される。入口111、112が閉じられ、シリンダ手段108により蓋部材107が防着板106と共に下方向に移動する。これにより、チャンバ102の空間が構成されて、次の成膜工程が行われる。
【0009】
定期的に、グローブ119内に手を差し込んで各種のメンテナンスを行うことができるようになっている。また、成長基板104を回収する際に、ダスト120がサセプター103の周囲に飛散する。
【0010】
このような従来の気相成長装置100およびこれを用いた結晶膜の形成方法については、特許文献1,2などで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−206167号公報
【特許文献2】特開2007−170813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の気相成長装置100では、グローブボックス室内での成長基板104の出し入れの際の成長基板104の表面へのダスト付着が問題になっていた。
【0013】
特許文献1,2では、基板表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置については記載されているが、パージガスの流れやダストの基板表面への付着については考慮されていない。
【0014】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、基板へのダスト付着を抑制または防止して、高歩留まりで高品質な化合物半導体デバイスを製造することができる気相成長装置およびこれを用いた結晶膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の従来の気相成長装置は、グローブボックス室内部にリアクタが内蔵された開閉自在なチャンバ部が設けられ、該チャンバ部内の該リアクタで基板表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置において、該グローブボックス室上部よりパージガスを導入して該グローブボックス室下部のダストトラップ部を介してその下部より該パージガスが排気されるように構成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】
また、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるダストトラップ部の底面および側面の少なくともいずれかに前記パージガスを排気する排気ポートが設けられている。
【0017】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるダストトラップ部の底面の上方位置にはダストを通過させるメッシュ板が設けられている。
【0018】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるダストトラップ部は、前記チャンバ部内のリアクタの下面よりも低い位置に設けられている。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるダストトラップ部は、前記チャンバ部の外部周辺にあって、前記グローブボックス室の平面視4角形の4角部または4角を含む領域にそれぞれ設けられている。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるダストトラップ部は、前記チャンバ部の外部周辺全部に該チャンバ部を囲むように設けられている。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置における均一なダウンフローを発生させるようにパージガスを分散させる分散手段が前記グローブボックス室の天面側に設けられている。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるブローブボックス室の隣には入口を介して搬送室が設けられ、該搬送室内には、前記基板を前記リアクタの所定位置に搬送すると共に、処理基板を該リアクタの所定位置から取り出し可能とする搬送手段が設けられ、該搬送室内に、該搬送手段の下面よりも低い位置にダストを捕らえるダストトラップ部が設けられている。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置における搬送室の上部よりパージガスを導入して該搬送室の下部の前記ダストトラップ部を介してその下部より前記パージガスが排気されるように構成されている。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるメッシュ板の断面形状が前記グローブボックス室側を頂点にした断面三角形状または、該グローブボックス室側を短辺にした断面台形状である。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置におけるメッシュ板の穴形状は、平面視で円形、楕円形または4角形などの多角形であり、穴側面には前記グローブボックス室側に開くテーパが付いている。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置において、前記排気ポートが前記ダストトラップ部の側面に設けられ、該ダストトラップ部の底面を受けるトレー手段が外部に引き出し可能に設けられている。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の気相成長装置において、前記排気ポートによるガス排気量と、前記グローブボックス室上部よりパージガスを導入する供給ポートによるガス供給量との関係は、ガス排気量をガス供給量に比べて多くして、該グローブボックス室内部の原料ガス雰囲気を外部に出さないように減圧している。
【0028】
本発明の従来の結晶膜の形成方法は、本発明の上記気相成長装置を用いて基板上に結晶膜を形成するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0029】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0030】
本発明においては、グローブボックス室内部にリアクタが内蔵された開閉自在なチャンバ部が設けられ、チャンバ部内の該リアクタで基板表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置において、グローブボックス室上部よりパージガスを導入してグローブボックス室下部のダストトラップ部を介してその下部よりパージガスが排気されるように構成されている。
【0031】
このように、グローブボックス上部よりパージガスを導入し、ダストトラップを介して下部より排気することによりウエハ出し入れの際の基板へのダスト付着を抑制または防止することが可能となる。このように、例えばMOCVDなどのダストを抑制し、高品質な化合物半導体デバイスを高歩留まりで製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上により、本発明によれば、グローブボックス室の上部よりパージガスを導入し、ダストトラップ部を介してその下部より排気するため、ウエハ表面に付着するダスト数が低減され、エピの欠陥も低減することができる。これによって、高歩留まりで高品質な化合物半導体デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1の気相成長装置の要部構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態2における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態2における気相成長装置の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態3における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態3における気相成長装置の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施形態3における気相成長装置の別の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図8】従来の気相成長装置の一構成例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の気相成長装置およびこれを用いた結晶膜の形成方法の実施形態1〜3について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1の気相成長装置の要部構成例を模式的に示す平面図である。
【0036】
図1および図2において、本実施形態1の気相成長装置1は、図示しないガス制御装置から原料ガスを、ガス供給管21を介して供給して原料ガス(不活性ガスに成膜材料の原料ガスなどを含む混合ガスであるが、ここでは原料ガスという)を供給するガス供給部としてのガス供給管先端のノズル2と、供給された原料ガスが熱分解され、回転自在に軸支された平面視円形のリアクタ3上に設置されたサファイヤ基板などの基板4上に所望の材料膜を形成可能とするチャンバ部としてのチャンバ5と、チャンバ5の外部周辺のグローブボックス室の天面に不活性ガス(例えばN)であるパージガスを供給する供給ポート6および、チャンバ5の外部周辺の底面部分に不活性ガスであるパージガスを吸引して排気する排気ポート7と、チャンバ5のリアクタ3(反応炉)の下面よりも低い位置であって、リアクタ3の周辺底面部のよりも低い位置にダスト82を捕らえるダストトラップ部8とを有し、グローブボックス室の内部に開閉自在なチャンバ5内で基板表面に所定の材料膜を成膜する。
【0037】
チャンバ5は、平面視円形のリアクタ3の外周側のチャンバ5内の底面に排気ポート51が設けられ、先端部がT字状に分かれて各ノズル2からリアクタ3上の中央両側に原料ガスが供給される。原料ガスは、リアクタ3上の基板4の表面と防着板53との間を通過して、リアクタ3の外周側から排気ガスとしてその下方の排気ポート51を通じて図示しない排気ポンプによりチャンバ5内から外部に排出される。ガス供給管21を介してノズル2からチャンバ5内に供給される原料ガス量と、排気ポート51から排気される原料ガス量とを調整することによりチャンバ5内の原料ガスによる圧力を調整することができる。この排気ガス中には砒素などの有害な物質が含まれることが多いので、最下流に図示しない専用の除害設備が設置される。また、リアクタ3およびその上の基板4の上方を覆ってチャンバ5内の空間を構成する蓋部材52が設けられると共に、ガス供給管21が通る中央部分以外のリアクタ3およびその上の基板4の上方を覆うように防着板53がドーナツ状に設けられている。そのドーナツ状の中央部をガス供給管21が貫通している。さらに、グローブボックス室の天井面外部に設けられた二つのシリンダ手段54は、そのロッドの先端部が蓋部材52の天面外側に固定されて、蓋部材52を防着板53と共に上下動させるように構成されている。さらに、チャンバ5において、リアクタ3が設けられる底面部分にヒータが設けられて、結晶膜の形成方法として、原料ガスとしてアンモニアガスやGa系ガスに窒素ガスを混合した混合ガスを供給してチャンバ5の内部温度を結晶成長時(エピタキシャル成長時)には摂氏1000度程度にして熱分解させて結晶成長させ、結晶成長が終われば、原料ガスを止めて不活性ガスである窒素ガスだけを供給し続けて、蓋部材52を開くときには内部温度が摂氏300度程度まで冷やされている。これらの原料ガスを含む混合ガスの供給・排気とヒータによりチャンバ5内の温度と圧力を制御している。1回の結晶成長で4〜10μm程度の膜厚で成膜させるが、結晶成長を例えば5回繰り返すと、基板4以外の周りの部材にも20〜50μm程度の膜厚で厚く成膜されてしまい、これに温度サイクルがかかって剥がれやすくなって細かいダスト82となる。
【0038】
供給ポート6および排気ポート7は、シリンダ手段54により蓋部材52が上方向に上がって基板4がリアクタ3上から取り除かれたり基板4がリアクタ3上に新たに載置されたりするときに、チャンバ5内に残った原料ガス雰囲気の他、そのチャンバ5内に付着した原料膜が剥がれてダスト82になってグローボックス室内に飛散されると共に、特に、基板4の出し入れでダスト82が周りに飛散しても、ダウンフローによりダスト82を舞い上げることなく下方にダスト82を移動させてダストトラップ部8に集める役目を果たしている。この供給ポート6は、不活性ガスであるパージガスを放射状に周囲に広がって分散するように供給される。蓋部材52を防着板53と共に上に上げたときに、チャンバ5を構成していた空間内の原料ガスの体積分がグローブボックス室内に拡散した後に、入口11が開いたときに入口11から外部に、残った原料ガス雰囲気やダスト82が出ない程度の排気量で複数箇所の排気ポート7から原料ガス雰囲気をパージガスと共に排気できる程度の排気量が必要である。
【0039】
ダストトラップ部8は、図2に示すように、チャンバ5の外部周辺であって、グローブボックス室の平面視4角形の4角部(ここでは図2の各4角形領域)または4角を含む領域に所定の大きさでそれぞれ設けられていてもよく、チャンバ5の外部周辺全部にチャンバ5を囲むように設けられていてもよい。ダストトラップ部8の底面部中央位置には排気ポート7が設けられ、排気ポート7が複数ある場合は、排気ポート7は所定間隔を空けて設けられ、その上方位置に、通気性があってダスト82を通過させるメッシュ板81が、排気ポート7により内部を負圧にして、一旦、捕獲されたダスト82が再びメッシュ板81の外部のブローブボックス室内に戻らないようにしている。メッシュ板81のメッシュのサイズは0.5mm角程度である。メッシュ板81の穴形状は、平面視で円形、楕円形または4角形であるが、ここでは平面視で4角形としている。
【0040】
ダストトラップ部8を、チャンバ5のリアクタ(反応炉)の下面よりも低い位置に設けるのは、ダストトラップ部8が、チャンバ5のリアクタ(反応炉)よりも高い位置にあれば、リアクタ3の周辺底面部からダストトラップ部8に段差ができてその段差部にダスト82が溜まってしまうためである。メッシュ板81の上にダスト82が付着した場合にもチャンバ5のリアクタ(反応炉)の下面よりも低い位置に設けた方が、ダスト82が舞い上がって基板4に付着し難い。
【0041】
ブローブボックス室の隣には入口11を介して搬送室が設けられ、搬送室内には搬送ロボット12が設けられている。この搬送室の隣には入口13を介してカセット室が設けられ、このカセット室内にはカセット14が設けられている。カセット14には成膜処理された基板4の他に、成膜処理前の基板15が収容されている。これらの基板4、15は入口13とは反対側の別の入口16側からカセット14内に出し入れされる。
【0042】
蓋部材52が開いており、不活性ガスであるパージガスがグローブボックス室内に上方の供給ポート6から供給され、成膜に寄与した原料ガスと共にパージガスが下方にあるダストトラップ部8内の排気ポート7から排気される。シリンダ手段54により蓋部材52が上方向に上がると、チャンバ5内の原料ガス雰囲気がグローボックス室内に拡散されるが、このとき、基板4の出し入れ時にダスト82が飛散しても、ダウンフローでダスト82を舞い上げるのを抑制している。
【0043】
同様に、搬送室において、天面に設けられた供給ポート17から不活性ガスであるパージガスが供給され、底面に設けられた排気ポート18によりパージガスを吸引するダウンフローになっている。また、カセット室においても、不活性ガスであるパージガスが供給ポート19から供給されてダウンフローで排気ポート20から排気される。
【0044】
定期的に、グローブ22内に手を差し込んで各種(防着板53の交換など)のメンテナンスを行うことができるようになっている。また、基板4を回収する際に、ダスト82がリアクタ3の周囲に飛散する。このダスト82の基板4の表面への飛散をダウンフローにより抑えている。
【0045】
以上により、本実施形態1によれば、グローブボックス室内部にリアクタ3が内蔵された開閉自在なチャンバ5が設けられ、チャンバ5内のリアクタ3で基板4の表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置1において、グローブボックス室上部よりパージガスを導入してグローブボックス室下部のダストトラップ部8を介してその下部よりパージガスが排気されるように構成されている。
【0046】
このように、グローブボックス室の上部よりパージガスを導入し、ダストトラップ部8を介してその下部より排気するため、基板4(ウエハ)の出し入れの際の基板4へのダスト付着を抑制または防止することができる。このように、例えばMOCVDなどのダストを抑制し、高品質な化合物半導体デバイスを高歩留まりで製造することができる。
【0047】
本実施形態1の気相成長装置1を用いた結晶膜の形成方法として、結晶膜が形成された基板4上にダスト82の付着が少なく、LED素子などの高品質な化合物半導体デバイスを高歩留まりで製造することができる。
【0048】
(実施形態2)
上記実施形態1では、チャンバ5の周辺領域の天面に供給ポート6を設けたが、本実施形態2では、チャンバ5の上方の天面にも後述の供給ポート6Aを設けた場合について説明する。
【0049】
図3は、本発明の実施形態2における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。なお、図3では、図1の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図3において、本実施形態2の気相成長装置1Aにおいて、上記実施形態1の場合と異なるのは、チャンバ5上方のグローブボックス室の天面にも供給ポート6Aを設けた点である。供給ポート6、6Aは同じものであってもよいし異なっていてもよい。これによって、チャンバ5上方の天面に設けられた中央部分の各供給ポート6Aからダストトラップ部8内の排気ポート7へのダウンフローも形成されて、よりダウンフローが、グローブボックス室の天面からより均一にダストトラップ部8に向かってダスト82を舞い上げずにダストトラップ部8内に捕獲し易くなっている。
【0051】
要するに、均一なダウンフローを発生させるようにパージガスを分散させるように、分散手段として、供給ポート6に加えて、供給ポート6Aがリアクタ3上方の天面に設けられている
図4は、本発明の実施形態2における気相成長装置の変形例を模式的に示す縦断面図である。なお、図4では、図2の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図4において、本実施形態2の気相成長装置1Bにおいて、図2の気相成長装置1Aの場合と異なるのは、グローブボックス室の天面に設けた供給ポート6、6Aの下方位置に、所定の空間を空けてメッシュ手段で構成された分散手段としての分散板23をその天面全面に設けた点である。これによって、グローブボックス室の天面に設けられた各供給ポート6、6Aから不活性ガスであるパージガスが供給され、その天面と分散板23間の空間部分にパージガスが充満した後に、グローブボックス室の天面全面に配置された分散板23全面からパージガスが均一にグローブボックス室内に供給される。
【0053】
これによって、分散板23全面からダストトラップ部8内の排気ポート7への室全体で均一なダウンフローが形成される。これによって、よりダウンフローが、グローブボックス室の天面からより均一にダストトラップ部8に向かってダスト82を巻き上げずにダストトラップ部8内に捕獲し易くすることができて、基板4へのダスト付着を抑制または防止して、高歩留まりで高品質な化合物半導体デバイスを製造することができる。
【0054】
また、本実施形態2の図4では、ブローブボックス室の隣には入口11を介して搬送室が設けられ、搬送室内には搬送ロボット12が設けられているが、搬送室内にも、搬送ロボット12の下面よりも低い位置であって、搬送ロボット12の周辺底面部のよりも低い位置にダスト82を捕らえるダストトラップ部8Bが設けられている。要するに、グローブボックス室に隣接する搬送室上部よりパージガスを導入して搬送室下部のダストトラップ部8Bを介してその下部よりパージガスが排気されている。
【0055】
ダストトラップ部8Bは、図2の場合と同様に、搬送ロボット12の外部周辺であって、搬送室の平面視4角形の4角部(ここでは図2の各4角形領域)または4角を含む領域に所定の大きさでそれぞれ設けられていてもよく、搬送ロボット12の外部周辺全部に搬送ロボット12を囲むように設けられていてもよい。ダストトラップ部8Bの底面部中央位置には排気ポート718Bが設けられ、排気ポート18Bが複数ある場合は、排気ポート18Bは所定間隔を空けて設けられ、その上方位置にメッシュ板81Bが、排気ポート18Bにより内部を負圧にして、一旦、捕獲されたダストが再びメッシュ板81Bの外部の搬送室内に戻らないようにしている。メッシュ板81Bのメッシュのサイズは0.5mm角程度である。この排気ポート18Bに対応して搬送室の天面に供給ポート17が新設されている。これによって、搬送室内で均一なダウンフローを生じさせてダストの舞い上がりを抑えている。
【0056】
(実施形態3)
上記実施形態1,2では、グローブボックス室の上部よりパージガスを導入し、グローブボックス下部にダストトラップ部8を設け、ダストトラップ部8の底面に排気ポート7を設け、ダストトラップ部8の底面の上方位置にメッシュ板81を設けた場合について説明したが、本実施形態3では、このダストトラップ部8の変形例について説明する。
【0057】
図5は、本発明の実施形態3における気相成長装置の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。なお、図5では、図3の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図5において、本実施形態3の気相成長装置1Cにおいて、上記実施形態1、2の場合と異なるのは、ダストトラップ部8Cのメッシュ板81Cの断面形状である。上記実施形態1、2のメッシュ板81の断面形状が4角形であったのに対して、本実施形態3ではメッシュ板81Cの断面形状が上を頂点にした断面三角形状である。これは、排気ポート7がパージガスを吸引してメッシュ板81C下方のダストトラップ領域を負圧にしてダスト82を外部のグローブボックス室から取り込む際に、ダスト82をダストトラップ領域に入れやすく、一旦入れたダスト82を、断面三角形状の底面によって外部に戻さないように構成されている。これによって、より確実にダスト82をダストトラップ部8Cに捕獲することができる。
【0059】
なお、メッシュ板81Cの断面形状が上を頂点にした断面三角形状に限らず、断面台形状であってもよい。要するに、メッシュ板81Cの断面形状がグローブボックス室側を頂点にした断面三角形状であるかまたはグローブボックス室側を短辺にした断面台形状であればよい。
【0060】
また、メッシュ板81Cのメッシュのサイズは0.5mm程度である。メッシュ板81Cの穴形状は、平面視で円形、楕円形または4角形などの多角形であり、穴内側面にはグローブボックス室側(図5では上)に開くテーパが付いている。穴のサイズについては、穴形状が平面視で円形の場合に直径が0.5mm程度、穴形状が平面視で楕円形の場合に長径または短径が0.5mm、穴形状が平面視で矩形の場合に長辺または短辺の長さが0.5mmである。
【0061】
図6は、本発明の実施形態3における気相成長装置の変形例を模式的に示す縦断面図である。なお、図6では、図1の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図6において、本実施形態3の気相成長装置1Dにおいて、上記実施形態1の場合と異なるのは、図1のダストトラップ部8では、排気ポート7をダストトラップ部8の底面に設けたのに対して、本実施形態3のダストトラップ部8Dでは、排気ポート7Dをダストトラップ部8Dの側面に設けた点が異なっている。これは、排気ポート7がパージガスを吸引してダストトラップ部8内にダスト82を取り込んで、排気ポート7が設けられたダストトラップ部8の底面に堆積した場合に、排気ポート7の開口がダスト82で埋まって機能しなくなるのを防止するために、本実施形態3のダストトラップ部8Dでは、排気ポート7Dをダストトラップ部8Dの側面に設けている。このように、排気ポート7Dをダストトラップ部8Dの側面に設けたので、本実施形態3の気相成長装置1Dを連続運転して、ダスト82が多い場合にも排気ポート7Dが詰まって機能しなくなるのを防止することができる。
【0063】
図7は、本発明の実施形態3における気相成長装置の別の変形例を模式的に示す縦断面図である。なお、図7では、図6の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図7において、本実施形態3の気相成長装置1Eにおいて、上記実施形態3の変形例の場合と異なるのは、排気ポート7Dをダストトラップ部8Dの側面に設け、トレー83を手前側に引き出して取り出すことができるようにしている。ダスト82を受けるトレー手段としてのトレー83内に溜まったダスト82を定期的に取り出してクリーニングすることができる。特に隅部のクリーニングは困難なため、引き抜き式のトレー83とすることによってメンテナンスが容易になる。
【0065】
要するに、排気ポート7Dがダストトラップ部8Eの側面に設けられており、ダストトラップ部8Eの底面を受けるように上方に開いたトレー手段としてのトレー83が外部に引き出し可能に設けられている。トレー83の上に開いた凹部はメッシュ板81に対向している。
【0066】
なお、本実施形態3では、排気ポート7Dをダストトラップ部8Dの側面に設け、上記実施形態1,2では、排気ポート7をダストトラップ部8の底面に設けたが、これに限らず、排気ポート7をダストトラップ部の底面に設けかつ排気ポート7Dをダストトラップ部の側面に設けてもよい。要するに、ダストトラップ部の底面および側面の少なくともいずれかに排気ポートが設けられていればよい。
【0067】
なお、上記実施形態1〜3では、特に説明しなかったが、排気ポート7、7Dによるガス排気量と、供給ポート6、6Aによるガス供給量との関係は、ガス排気量をガス供給量に比べて多くして、グローブボックス室内部のアンモニアガスやガリウム系ガスなどの原料ガス雰囲気を外部に完全に出さないために、減圧ぎみに設定している。
【0068】
また、上記実施形態1〜3では、特に説明しなかったが装置故障時などに使用する、緊急排気用排気口は、グローブボックス上部に追加してもよい。
【0069】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜3を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜3に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜3の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、基板上に結晶膜を形成させる気相成長装置およびこれを用いた結晶膜の形成方法の分野において、グローブボックス室の上部よりパージガスを導入し、ダストトラップ部8を介してその下部より排気するため、基板へのダスト付着を抑制または防止して、高歩留まりで高品質な化合物半導体デバイスを製造することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A〜1E 気相成長装置
2 ノズル
21 ガス供給管
3 リアクタ
4、15 基板(ウエハ)
5 チャンバ
51 排気ポート
52 蓋部材
53 防着板
54 シリンダ手段
6、6A 供給ポート
7、7D 排気ポート
8、8B、8C、8D ダストトラップ部
81,81B、81C、 メッシュ板
82 ダスト
83 トレー
11、13,16 入口
12 搬送ロボット
14 カセット
17,19 供給ポート
18、18B、20 排気ポート
22 グローブ
23 分散板(分散手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブボックス室内部にリアクタが内蔵された開閉自在なチャンバ部が設けられ、該チャンバ部内の該リアクタで基板表面に所定の材料膜を成膜する気相成長装置において、
該グローブボックス室上部よりパージガスを導入して該グローブボックス室下部のダストトラップ部を介してその下部より該パージガスが排気されるように構成されている気相成長装置。
【請求項2】
前記ダストトラップ部の底面および側面の少なくともいずれかに前記パージガスを排気する排気ポートが設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記ダストトラップ部の底面の上方位置にはダストを通過させるメッシュ板が設けられている請求項1または2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記ダストトラップ部は、前記チャンバ部内のリアクタの下面よりも低い位置に設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記ダストトラップ部は、前記チャンバ部の外部周辺にあって、前記グローブボックス室の平面視4角形の4角部または4角を含む領域にそれぞれ設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記ダストトラップ部は、前記チャンバ部の外部周辺全部に該チャンバ部を囲むように設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項7】
均一なダウンフローを発生させるようにパージガスを分散させる分散手段が前記グローブボックス室の天面側に設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項8】
前記ブローブボックス室の隣には入口を介して搬送室が設けられ、該搬送室内には、前記基板を前記リアクタの所定位置に搬送すると共に、処理基板を該リアクタの所定位置から取り出し可能とする搬送手段が設けられ、該搬送室内に、該搬送手段の下面よりも低い位置にダストを捕らえるダストトラップ部が設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項9】
前記搬送室の上部よりパージガスを導入して該搬送室の下部の前記ダストトラップ部を介してその下部より前記パージガスが排気されるように構成されている請求項8に記載の気相成長装置。
【請求項10】
前記メッシュ板の断面形状が前記グローブボックス室側を頂点にした断面三角形状または、該グローブボックス室側を短辺にした断面台形状である請求項3に記載の気相成長装置。
【請求項11】
前記メッシュ板の穴形状は、平面視で円形、楕円形または4角形などの多角形であり、穴側面には前記グローブボックス室側に開くテーパが付いている請求項10に記載の気相成長装置。
【請求項12】
前記排気ポートが前記ダストトラップ部の側面に設けられ、該ダストトラップ部の底面を受けるトレー手段が外部に引き出し可能に設けられている請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項13】
前記排気ポートによるガス排気量と、前記グローブボックス室上部よりパージガスを導入する供給ポートによるガス供給量との関係は、ガス排気量をガス供給量に比べて多くして、該グローブボックス室内部の原料ガス雰囲気を外部に出さないように減圧している請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の気相成長装置を用いて基板上に結晶膜を形成する結晶膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69818(P2013−69818A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206647(P2011−206647)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】