説明

水性塗料の塗布乾燥方法及び装置

【課題】 塗装から乾燥までの所要時間を短縮することができる水性塗料の塗布乾燥方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ディスクロータ1はローラコンベア2によって予熱用高周波誘導加熱コイル4まで搬送され、予熱用高周波誘導加熱コイル4で局部的に70乃至100℃に予熱される。予熱されたディスクローラ1は、後流の塗装ロボット5によって被塗装面が塗装される。塗装後のディスクローラ1は養生のためのセッティング工程を経て乾燥加熱用高周波誘導加熱コイル7まで搬送され、ここで加熱され、塗膜が乾燥する。塗膜が形成されたディスクローラ1は製品15として回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装対象物に水性塗料を塗布し、加熱装置を用いて強制的に乾燥させる水性塗料の塗布乾燥方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装方法又は塗装装置に関する従来技術として、例えば特開2003−340361号公報、特開2002−126625号公報、特開2002−33324号公報、特開2001−96215号公報等が挙げられる。
【0003】
特開2003−340361号公報(特許文献1)には、乾燥時間の短縮、膨れ、ワキ等の欠陥の発生を防止することを目的とし、塗料工程、常温放置セッティング工程、プレヒート工程(35〜60℃、3〜5分)及び加熱乾燥工程(80〜120℃)を有する塗膜乾燥方法が開示されている。
【0004】
また、特開2002−126625号公報(特許文献2)には、黄変することなく、優れた外観を有する塗膜形成方法を提供することを目的とし、鋼板に特定のカチオン塗料及び中塗り塗料を塗布し、特定条件で焼き付け処理した後、この塗装鋼板上に、水性中塗り塗料を塗布し、プレヒート又は焼付工程を経た後、水性ベース塗料を塗布し、その後、プレヒート工程を経て得られた塗装表面に、クリヤ塗料を塗布し、焼付(180℃、60分)を行う塗膜形成方法が開示されている。
【0005】
更に、特開2002−33324号公報(特許文献3)には、水性分散塗料における割れのない、平滑性に優れた塗膜形成方法を提供することを目的として、特定方法で製造した水性分散塗料の塗布工程、常温における水分蒸発工程、塗料樹脂粒子の形成工程及び塗料樹脂粒子の溶融、融着工程(100〜160℃)を有する塗膜形成方法が開示されている。
【0006】
また、特開2001−96215号公報(特許文献4)には、たれ、たるみ、ワキ等の欠陥を生じない水性塗料の塗装方法を提供することを目的として、水性塗料の塗布工程、加熱乾燥工程(45〜60℃)及び乾燥空気(温度30℃、湿度30%)吹付け工程とを有する塗装方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−340361号公報
【特許文献2】特開2002−126625号公報
【特許文献3】特開2002−33324号公報
【特許文献4】特開2001−96215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術は、いずれも塗装対象物全体の温度を管理して塗装、養生又は乾燥を行うものであり、塗装から乾燥までの所要時間を短縮することができないという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み、塗装から乾燥までの所要時間を短縮することができる水性塗料の塗布乾燥方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願第1発明に係る水性塗料の塗布乾燥方法は、塗装対象物を高周波誘導加熱して少なくとも表面を70乃至100℃の予熱温度まで昇温させる予熱工程と、予熱後の塗装対象物の被塗装面に水性塗料を塗布する塗布工程と、塗装対象物を前記予熱温度に保持する保持工程と、前記塗装対象物を所定の乾燥温度まで昇温させて塗装膜を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、この場合に、前記乾燥工程においては前記塗装対象物を高周波誘導加熱することが好ましい。
【0012】
更に、この場合において、前記塗装対象物は前記水性塗料の塗布により、20℃以上の温度降下を生じない熱容量を有するものであることが好ましい。
【0013】
本願第2発明に係る水性塗料の塗布乾燥装置は、塗装対象物を搬送するコンベアと、前記塗装対象物を高周波誘導加熱して少なくとも表面を70乃至100℃の予熱温度まで昇温させる予熱用高周波誘導加熱器と、予熱後の被塗装面に水性塗料を塗布する塗装用ロボットと、前記塗装対象物を所定の乾燥温度まで昇温させて塗装膜を乾燥させる乾燥用高周波誘導加熱器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願第1発明に係る水性塗料の塗布乾燥方法によれば、塗装対象物の被塗装面を高周波誘導加熱するようにしたので、塗装対象物の加熱時間又は塗装膜の乾燥時間を著しく短縮して水性塗料の塗布から乾燥までの所要時間を短縮することができる。
【0015】
本願の請求項2に係る水性塗料の塗布乾燥方法によれば、乾燥工程において前記塗装対象物を高周波誘導加熱するので、昇温時間を短縮して効率よく塗装膜を乾燥させることができる。
【0016】
本願の請求項3に係る水性塗料の塗布乾燥方法によれば、前記塗装対象物は前記水性塗料の塗布により、20℃以上の温度降下を生じない熱容量を有するので、予熱及び乾燥温度の温度管理が容易となる。
【0017】
本願第2発明に係る水性塗料の塗布乾燥装置によれば、水性塗料に最適条件の予熱・乾燥加熱を段階的に行うことによって乾燥時間の短縮を図り、塗装から乾燥に至る全処理時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図3は本発明の実施形態に係る水性塗料の塗布乾燥装置を示す説明図であって、図1は平面図、図2は図1の乾燥用加熱器までを示す側面図、図3は図1の乾燥用加熱器よりも後流側を示す側面である。
【0019】
図1において、この塗布乾燥装置には塗装対象物1としての例えば自動車のディスクロータを搬送するローラコンベア2が塗装対象物1の搬入端から搬出端にわたって設けられている。ローラコンベア2の塗装対象物の搬入端と搬出端とは例えば隣接しており、ローラコンベア2は塗装対象物の搬入端から搬出端に至る中間点で「U」字状に湾曲している。
【0020】
ローラコンベア2の前記「U」字状に湾曲するまでの間の上方には、塗装対象物1の搬入端から塗装対象物1の搬送方向に沿って順次予熱用高周波誘導加熱コイル4、水性塗料用塗装ロボット5及び乾燥用高周波誘導加熱コイル7が配置されている。予熱用高周波誘導加熱コイル4は高周波誘導加熱機本体3に接続されており、乾燥用高周波誘導加熱コイル7は乾燥用高周波誘導加熱機本体6に接続されている。
【0021】
水性塗料の塗装ロボット5と乾燥用高周波誘導加熱コイル7に接続された高周波誘導加熱機本体6との間には、予熱用高周波誘導加熱コイル4によって予熱された後、塗装ロボット5によって水性塗料が塗布された塗装対象物1を予熱温度のまま保持するための時間を確保する所定の間隙が設けられている。従って、ローラコンベア2がこの間隙内を移動する間が予熱温度保持工程となる。
【0022】
ローラコンベア2には、例えば部分的にローラの中央部分が切除された間隙を有するローラ2aが配置されている。例えば間隙のない通常のローラ2bを2本配置し、その後流に間隙を有するローラ2aを3本を配置し、以下、2本の間隙のないローラ2bと3本の間隙のあるローラ2aが交互に配置されている。
【0023】
ローラコンベア2の下方には、ローラコンベア2によって搬送される塗装対象物1を上方に押し上げ、加熱器内に挿入したり、塗装ロボットの塗装ノズルの噴射領域に搬入させるシリンダー12が、各加熱器及び塗装ロボットに対向するように配置されている。シリンダー12はローラコンベア2の間隙のあるローラ2aの前記間隙内を上昇して塗装対象物1を各加熱器4、7内又は塗装ロボット5の塗装ノズルの噴射領域内に押し上げる。
【0024】
各シリンダー12の塗装対象物1の搬送方向下流側には、塗装対象物1を一時的に停止させるストッパ16が設けられており、このストッパ16は、加熱器4若しくは7又は塗装ロボット5に対応する位置に塗装対象物を停止させる。
【0025】
ローラコンベア2は乾燥用高周波誘導加熱コイル7が配置された部分の後流で「U」字状に湾曲しており、この湾曲部分の後流部分は、冷却領域及び防錆領域となっている。冷却領域のローラコンベア2の下方には複数の冷却ファン8が配置されている。
【0026】
冷却ファン8が配置された部分の後流には防錆槽9が設けられており、ローラコンベア2は、例えば防錆槽8の入口部分で下側に移動方向を変更し、ローラコンベア上の塗装された塗装対象物(以下、製品15という)が防錆槽8内の50℃の防錆液に浸漬するまで下降し、その後、水平に移動方向を変え、防錆槽9出口部分で更に移動方向を上側に変え、これによってコンベア上の製品15を防錆槽9から搬出し、その後、ほぼ水平に移動する。
【0027】
防錆槽9の出口部分には、ローラコンベア2の上下にローラコンベア2を挟むように、ブローノズル10が配置されており、このブローノズル10によって製品に付着した余剰の防錆剤が吹き飛ばされる。ローラコンベア2のブローノズル10が設けられた部分の後流は製品15の搬出端となり、この搬出端は塗装対象物1の搬入端と隣接している。
【0028】
図2において、ローラコンベア2の塗装対象物1の搬入端のローラコンベア2の上方には、塗装対象物1をローラコンベア2上に載置する搬入装置11が設けられており、塗装対象物1としての例えば自動車のディスクロータは搬入装置11によってローラコンベア2上に搬入、載置される。
【0029】
予熱用高周波誘導加熱コイル3とローラコンベア2との間には所定の隙間が設けられており、予熱用高周波誘導加熱コイル3とローラコンベア2を挟んで対向するローラコンベア2の下方にはシリンダー12が配置されている。また、予熱用高周波誘導加熱コイル3のディスクロータ1の搬送方向後流側端部に対向するローラコンベア2の下方には塗装対象物であるディスクロータ1の位置決め用のストッパ16が設けられている。
【0030】
ローラコンベア2上に搬入され、予熱用高周波誘導加熱コイル3の位置まで搬送されたディスクロータ1はストッパ16によってその搬送が停止され、ローラコンベア2の下方に設けられ間隙のあるローラ2aの前記間隙を上昇するシリンダー12によって上方に持ち上げられる。持ち上げられた塗装対象物1はその被塗装面が予熱用高周波誘導加熱コイル3内に挿入され、被塗装面が予熱される。
【0031】
予熱用高周波誘導加熱コイル3の後流のローラコンベア2上には塗装ロボット5が配置されており、この塗装ロボット5とローラコンベア2との間にも所定の隙間が設けられている。
【0032】
塗装ロボット5とローラコンベア2を挟んで対向するローラコンベア2の下方にはシリンダー12が配置されている。また、塗装ロボット5のディスクロータ1搬送方向後流側端部に対向するローラコンベア2の下方には塗装対象物であるディスクロータ1を停止させるための位置決め用のストッパ16が設けられている。
【0033】
予熱用高周波誘導加熱コイル3で塗装面が予熱されたディスクロータ1は塗装ロボット5の下方まで搬送され、ストッパ16によって停止される。塗装ロボット5の下方で停止したディスクロータ1はローラコンベア2の下方に設けられ間隙を有するローラ2aの前記間隙部分を通過して上昇するシリンダー12によって上方に持ち上げられ、予熱用高周波誘導加熱コイル3で予熱された塗装面に塗装ロボット5によって水性塗料が塗布される。
【0034】
塗装ロボット5の後流のローラコンベア2上には、その後流の乾燥用高周波誘導加熱コイル7との間に所定の間隔が設けられている。この間隔は塗装面が塗装されたディスクロータ1を予熱温度のまま保持し、養生(乾燥)するためのものである。この予熱温度保持のための間隔のディスクロータ1の搬送方向後流側のローラコンベア2の下方にもディスクロータ1の搬送を停止するためのストッパ16が設けられている。
【0035】
塗装ロボット5の後流には上述した養生(乾燥)のための間隔を隔てて乾燥用高周波誘導加熱コイル7が配置されており、この乾燥用高周波誘導加熱コイル7とローラコンベア2を挟んで対向するローラコンベア2の下方にはシリンダー12が配置されている。また、乾燥用高周波誘導加熱コイル7のディスクロータ1搬送方向後流側端部に対向するローラコンベア2の下方にはディスクロータ1を停止させるための位置決め用のストッパ16が設けられている。
【0036】
図3は、塗布乾燥装置の乾燥用高周波誘電加熱器7の後流部分を示す側面図であるが、乾燥用高周波誘電加熱器7の後流のローラコンベア2の下方には乾燥工程後の製品を冷却する冷却ファン8が複数設けられている。
【0037】
冷却ファン8の後流には防錆槽9が設けられており、冷却後の製品にはここで防錆剤が塗布される。防錆剤の塗布は例えば製品を防錆槽9内の防錆剤中に浸漬するどぶ付けにより行う。防錆槽9出口部分にはローラコンベア2の上下にブローノズル10が配置されており、製品15に付着した余剰の防錆剤はブローノズル10によって除去される。余剰の防錆剤が吹き飛ばされた製品15はローラコンベア2の搬出端から次の工程に搬出される。
【0038】
冷却工程における冷却ファン8からの送風はフード13によって吸引され、ブローノズル10からのブローエアーとして利用される。また防錆槽8の上部空間部がフード14によって吸引され、同様にブローノズル10からのブローエアーとして利用される。
【0039】
次に、上述の如く構成された本発明の水性塗料の塗布乾燥装置の動作について説明する。本実施形態においてローラコンベア2は、例えば間欠移動するものである。先ず、ローラコンベア2の搬入端側に搬入装置11によって塗装対象物としてのディスクロータ1が搬入され、ローラコンベア2上に載置される。
【0040】
ディスクロータ1はローラコンベア2上を搬送方向(図2中右方向)に搬送され、高周波誘導加熱機本体3に接続された予熱用高周波誘導加熱コイル4の下方に到達した時、ストッパ16がローラコンベア2のローラ相互間の隙間を上昇し、ディスクロータ1の搬送を停止する。
【0041】
図4はローラコンベア2によって搬送されるディスクロータ1と予熱用高周波誘導加熱コイル4との位置関係を示す模式図であり、図4(a)はディスクロータ1が加熱コイル4の下に到達して停止した状態を示す。
【0042】
搬送が停止したディスクロータ1は、間隙を有するローラ2aの前記間隙を通過して上昇するシリンダー12によって持ち上げられ、被塗装面が予熱用高周波誘導加熱コイル4のコイル本体内に挿入される。図4(b)は、ディスクロータ1の被塗装面が予熱用高周波誘導加熱コイル4のコイル本体内に挿入された状態を示す説明図である。予熱用高周波誘導加熱コイル4のコイル本体内に挿入されたディスクロータ1の被塗装面は所定の予熱温度、例えば70乃至100℃に予熱される。
【0043】
このとき、加熱コイル4は高周波誘導加熱コイルであるので、所定温度までの昇温時間は短く、10乃至20秒で予熱が完了する。なお、塗装対象物であるディスクロータ1は水性塗料の塗布により20℃以上の温度降下を生じない程度の熱容量を有するものであり、極端な温度低下を生じることはない。
【0044】
予熱されたディスクロータ1はシリンダー12の下降によってローラコンベア2上に載置され、ローラコンベア2の稼働によって水性塗料の塗装ロボット5の下方に搬送され、対応するストッパ16で前記と同様にしてその搬送が停止され、塗装ロボット5のローラコンベア2を挟んで対応する下方に設けられたシリンダー12によって持ち上げられ、塗装ロボット5の塗装ノズル5aの噴霧領域内に挿入される。
【0045】
塗装ロボット5の塗装ノズルの噴霧領域内に挿入された予熱後のディスクロータ1の被塗装面に対して塗装ロボット5の塗装ノズルから水性塗料が吹き付けられ、塗装が完了する。塗装所要時間は例えば30秒程度である。
【0046】
塗装が終了したディスクロータ1はシリンダー12の下降によってローラコンベア2上に載置され、ローラコンベア2の稼働によって後流の予熱温度保持のための間隙部に至り、ここで所定時間、例えば1分間予熱温度に保持され、この間に養生(塗膜が乾燥)する(後述する図5(a)参照)。
【0047】
乾燥後のディスクロータ1はローラコンベア2の稼働によって後流の乾燥用高周波誘導加熱コイル7の下方に搬送され、対応するストッパ16でその搬送が停止され、乾燥用高周波誘導加熱コイル7とローラコンベア2を挟んで対応する下方に設けられたシリンダー12によって持ち上げられ、塗装面が乾燥用高周波誘導加熱コイル7のコイル本体内に挿入され、例えば140℃に加熱されて塗装膜が乾燥する。140℃までの昇温時間は例えば1分であり、乾燥時間は例えば30秒である。この場合に、予熱したディスクロータ1に塗装したので、70乃至100℃の予熱温度を有するディスクロータ1を乾燥すればよいので、乾燥工程も短くなる。
【0048】
塗装膜の乾燥が終了した製品15としてのディスクロータ1は、後流の冷却領域に搬送され、ローラコンベア2の下方に配置された冷却ファン8によって冷却される。
【0049】
冷却後のディスクロータ1は、防錆槽8の入口部分で下側に移動方向を変更するローラコンベア2によって防錆槽9内の例えば50℃の防錆液に浸漬され、その後、防錆槽9出口部分で上側に移動方向を変えるローラコンベア2によって防錆槽9から搬出され、これによって防錆剤が塗布される。
【0050】
防錆槽9の出口部分には、ローラコンベア2の上下にローラコンベア2を挟むように、ブローノズル10が配置されており、このブローノズル10によって製品としての塗装後のディスクロータ1に付着した余剰の防錆剤が吹き飛ばされる。塗装後のディスクロータ1はローラコンベア2の搬出端から次工程に搬出される。
【0051】
本実施形態によれば、予熱器及び乾燥用加熱器として高周波誘導加熱コイルを用いたので、塗装対象物を迅速に予熱及び乾燥加熱することができるので、塗装対象物の全体を加熱していた従来技術に比べて塗装及び乾燥に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0052】
図5は、本実施形態と従来技術との塗装及び乾燥時間を比較したものであり、図5(a)が本実施形態を示し、図5(b)が従来技術を示す。図5において、本実施形態においては、乾燥工程である本加熱までに要する時間は、例えば5分であり、従来技術の30分程度に比べて著しく短縮できたことが分かる。
【0053】
本実施形態によれば、予熱温度を70乃至100℃としたので、塗膜の乾燥が促進できる上、塗料を沸騰させることがないので、塗装面の膨れ及びワキを防止することができる。
【0054】
本実施形態によれば、水性塗料の塗装、乾燥時間を著しく短縮することができるので、塗装、乾燥工程を機械加工ラインとアッシーラインとの間に設ける等、製造ラインバリエーションが広がる。
【0055】
本実施形態において、加熱温度の昇温速度は塗装の仕上がり状態に影響を与えないので、特に規定しない。また、養生(乾燥)のための予熱温度保持時間は水性塗料の乾燥状況によって適宜設定される。
【0056】
上記実施形態において塗装対象物としてディスクロータを使用した場合について説明したが、本発明の水性塗料の塗布乾燥方法に適用される塗装対象物は特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、膨れ、ワキ等の不都合を生じることなく水性塗料の塗装乾燥時間を大幅に短縮することができるものであり、水性塗料の塗膜形成の分野で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る水性塗料の塗布乾燥装置の平面図である。
【図2】本発明に係る水性塗料の塗布乾燥装置の部分側面図である。
【図3】本発明に係る水性塗料の塗布乾燥装置の部分側面図である。
【図4】誘導加熱コイルと塗装対象物との位置関係を示す図である。
【図5】本発明の効果を従来技術と比較して示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1:塗装対象物(ディスクロータ)
2:ローラコンベア
2a:間隙のあるローラ
2b:間隙のないローラ
3:予熱用高周波誘導加熱機本体
4:予熱用高周波誘導加熱コイル
5:塗装ロボット
5a:塗装ノズル
6:乾燥用高周波誘導加熱機本体
7:乾燥用高周波誘導加熱コイル
8:冷却ファン
9:防錆槽
10:ブローノズル
11:搬入装置
12:シリンダー
13:フード
14:フード
15:製品
16:ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象物を高周波誘導加熱して少なくとも表面を70乃至100℃の予熱温度まで昇温させる予熱工程と、予熱後の塗装対象物の被塗装面に水性塗料を塗布する塗布工程と、塗装対象物を前記予熱温度に保持する保持工程と、前記塗装対象物を所定の乾燥温度まで昇温させて塗装膜を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする水性塗料の塗布乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥工程においては前記塗装対象物を高周波誘導加熱することを特徴とする請求項1に記載の水性塗料の塗布乾燥方法。
【請求項3】
前記塗装対象物は前記水性塗料の塗布により20℃以上の温度降下を生じない熱容量を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料の塗布乾燥方法。
【請求項4】
塗装対象物を搬送するコンベアと、前記塗装対象物を高周波誘導加熱して少なくとも表面を70乃至100℃の予熱温度まで昇温させる予熱用高周波誘導加熱器と、予熱後の被塗装面に水性塗料を塗布する塗装用ロボットと、前記塗装対象物を所定の乾燥温度まで昇温させて塗装膜を乾燥させる乾燥用高周波誘導加熱器と、を有することを特徴とする水性塗料の塗布乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−130384(P2006−130384A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319901(P2004−319901)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(390027524)浅間技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】