説明

水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器の各製造方法

【課題】品質係数Q値が高く、容量比の小さい超小型の音叉型屈曲水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器の製造方法を提供する。
【解決手段】逆相の屈曲モードで振動し、音叉基部と音叉基部に接続された第1及び第2音叉腕とを備えた音叉型水晶振動子70と、ケース71と、蓋72を備えて構成されるユニット170であって、水晶ウエハの上面と下面の各々に金属膜を形成し、その上にレジストを塗布、第1及び第2音叉腕とを形成し、第1及び第2音叉腕の各々の上面と下面に溝を形成、その上に形成された第1電極が、第2音叉腕の側面に形成された第2電極に接続され、同様に第2音叉腕に形成された第3電極が、第1音叉腕の側面に形成された第4電極に接続され、音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数が少なくとも2回、異なる工程で調整されていて、ケースの固定部に音叉型屈曲水晶振動子が固定され、ケースに蓋が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屈曲モードで振動する音叉腕と音叉基部から成る音叉形状の水晶振動子と増幅器とコンデンサーと抵抗素子から構成される水晶発振回路を具えた水晶発振器の製造方法と前記方法により得られた水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水晶発振器は増幅器とコンデンサーと抵抗素子と音叉腕の上下面と側面に電極が配置された音叉型屈曲水晶振動子から成る水晶発振器がよく知られている。この従来例の水晶発振器に用いられている音叉形状の屈曲水晶振動子は2本の音叉腕と音叉基部とを具えて構成されていて、励振電極は音叉腕の上下面と側面に配置されている。例えば、一方の音叉腕の上下面には同極となる電極が配置され、両側面には同極となる電極が配置されている。即ち、上下面の電極と両側面の電極は極性が異なるように構成されている。同様に、他方の音叉腕の上下面にも同極となる電極が配置され、両側面にも同極となる電極が配置されている。即ち、上下面の電極と両側面の電極は極性が異なるように構成されている。詳細には、一方の音叉腕の上下面の電極と他方の音叉腕の上下面の電極とは極性が異なるように構成されている。それ故、電極間に電圧が印加されたとき、電界は音叉腕の中を曲線にて働く。その結果、x軸方向の電界成分Exが各音叉腕の内部で方向が反対になるために屈曲モードで振動する。交番電圧の印加により振動を持続することができる。
【特許文献1】特開昭56−65517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
音叉型屈曲水晶振動子では、電界成分Exが大きいほど損失等価直列抵抗Rが小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら、従来から使用されている音叉型屈曲水晶振動子は、各音叉腕の上下面と側面の4面に電極を配置している。そのために電界が直線的に働かず、かかる音叉型屈曲水晶振動子を小型化させると、電界成分Exが小さくなってしまい、損失等価直列抵抗Rが大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残されていた。同時に、時間基準として高精度な、即ち、高い周波数安定性を有し、2次高調波モード振動を抑えた屈曲水晶振動子を得ることが課題として残されていた。又、前記課題を解決する方法として、例えば、特開昭56−65517では音叉腕に溝を設け、且つ、溝の構成と電極構成について開示している。しかしながら、溝の構成、寸法と振動モード並びに基本波モード振動での等価直列抵抗Rと2次高調波モード振動での等価直列抵抗Rとの関係及び周波数安定性に関係するフィガーオブメリットMについては全く開示されていない。又、従来の水晶振動子や前記溝を設けた振動子を従来の回路に接続し、水晶発振回路を構成すると、基本波振動モードの出力信号が衝撃や振動などの影響で出力信号が2次高調波モード振動の周波数に変化、検出される等の問題が発生していた。このようなことから、衝撃や振動を受けても、それらの影響を受けない2次高調波モード振動を抑えた基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子を具えて構成される水晶発振器とその製造方法が所望されていた。更に、水晶発振器の消費電流を低減するために、負荷容量Cを小さくすると2次高調波モードの振動がし易くなり、基本波モード振動の出力発振周波数が得られない等の課題が残されていた。それ故、基本波モードで振動する超小型で、等価直列抵抗Rの小さい、品質係数Q値が高くなるような新形状で、電気機械変換効率の良い溝の構成と電極構成を有する音叉形状の屈曲水晶振動子を具え、出力信号が基本波モード振動の発振周波数で、高い周波数安定性(高い時間精度)を有し、消費電流の少ない水晶発振器とその製造方法が所望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子を具えて構成された水晶発振器とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
即ち、本発明の水晶振動子の製造方法の第1の態様は、逆相の屈曲モードで振動し、かつ、音叉基部と前記音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕とを備えた音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、水晶ウエハを準備する工程と、前記水晶ウエハの上面と下面の各々に金属膜を形成する工程と、前記金属膜の上にレジストを塗布する工程と、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕とを備えた音叉形状を形成する工程と、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の各々の上面と下面の各々に溝を形成する工程と、前記第1音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第1電極が、前記第2音叉腕の側面に形成された第2電極に接続され、かつ、前記第2音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第3電極が、前記第1音叉腕の側面に形成された第4電極に接続されるように、前記第1電極から前記第4電極を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子を前記水晶ウエハから切り離す工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を少なくとも2回、かつ、異なる工程で調整する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
【0006】
本発明の水晶ユニットの製造方法の第1の態様は、逆相の屈曲モードで振動し、かつ、音叉基部と前記音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕とを備えた音叉型屈曲水晶振動子と、ケースと、蓋と、を備えて構成される水晶ユニットの製造方法で、水晶ウエハを準備する工程と、前記水晶ウエハの上面と下面の各々に金属膜を形成する工程と、前記金属膜の上にレジストを塗布する工程と、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕とを備えた音叉形状を形成する工程と、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の各々の上面と下面の各々に溝を形成する工程と、前記第1音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第1電極が、前記第2音叉腕の側面に形成された第2電極に接続され、かつ、前記第2音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第3電極が、前記第1音叉腕の側面に形成された第4電極に接続されるように、前記第1電極から前記第4電極を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子を前記水晶ウエハから切り離す工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を少なくとも2回、かつ、異なる工程で調整する工程と、前記ケースの固定部に前記音叉型屈曲水晶振動子を固定する工程と、前記ケースに前記蓋を接続する工程と、を含む水晶ユニットの製造方法である。
本発明の水晶ユニットの製造方法の第2の態様は、前記ケースの固定部に前記音叉型屈曲水晶振動子を固定する工程の後に、前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を調整する工程を備えている第1の態様に記載の水晶ユニットの製造方法である。
本発明の水晶発振器の製造方法の第1の態様は、第1の態様に記載の水晶振動子の製造方法、または第1の態様若しくは第2の態様に記載の水晶ユニットの製造方法と、増幅回路の増幅器と、帰還回路のコンデンサーと抵抗と、を備えた水晶発振器の製造方法で、前記水晶発振器から出力される出力信号は、32.764kHzから32.772kHzの範囲内にある発振周波数を備えている水晶発振器の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明は屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子を具えて構成された水晶発振器の製造方法で、しかも、音叉形状の溝又は貫通穴と電極の構成と周波数調整方法を改善し、増幅回路と帰還回路との関係を示すことにより、高調波振動を抑え、基本波振動モードで振動する発振周波数を出力する水晶発振器を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
図1は本発明の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。本実施例では、水晶発振回路1は増幅器(CMOSインバータ)2、帰還抵抗4、ドレイン抵抗7、コンデンサー5,6と音叉形状の屈曲水晶振動子3から構成されている。即ち、水晶発振回路1は、増幅器2と帰還抵抗4とを具えて構成される増幅回路8とドレイン抵抗7、コンデンサー5,6と屈曲水晶振動子3とを具えて構成される帰還回路9から構成されている。詳細には、本発明の水晶発振器は水晶発振回路を具えて構成され、水晶発振回路は増幅回路と帰還回路とを具えて構成されていて、増幅回路は少なくとも増幅器から構成され、帰還回路は少なくとも音叉形状の屈曲水晶振動子とコンデンサーから構成されている。又、本発明の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子は図3と図4で詳述される。
【0009】
図2は図1の帰還回路図を示す。今、屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の角周波数をω、ドレイン抵抗7の抵抗をR、コンデンサー5、6の容量をC、C、水晶のクリスタルインピーダンスをRei,入力電圧をV,出力電圧をVとすると、帰還率βはβ=|V/|Vで定義される。但し、iは屈曲振動モードの振動次数を表し、例えば、i=1のとき、基本波モード振動、i=2のとき、2次高調波モード振動である。更に、負荷容量CはC=C/(C+C)で与えられ、C=C=CgsとRd>>Reiとすると、帰還率βはβ=1/(1+kC)で与えられる。但し、kはω、R、Reiの関数で表される。又、Reiは近似的に等価直列抵抗Rに等しくなる。
【0010】
このように、帰還率βと負荷容量Cとの関係から、負荷容量Cが小さくなると、基本波モード振動と2次高調波モード振動の発振周波数の帰還率はそれぞれ大きくなる。それ故、負荷容量Cが小さくなると、基本波モード振動よりも2次高調波モード振動の方が発振し易くなる。その理由は2次高調波モード振動の最大振動振幅が基本波モード振動の最大振動振幅より小さいために、発振持続条件である振幅条件と位相条件を同時に満足するためである。
【0011】
本発明の水晶発振器は、消費電流が少なく、しかも、出力周波数が高い周波数安定性(高い時間精度)を有する、基本波モード振動の発振周波数である水晶発振器を提供することを目的としている。それ故、消費電流を少なくするために、本実施例では、負荷容量Cは18pF以下を用いる。より消費電流を少なくするには、消費電流は負荷容量に比例するので、C=15pF以下が好ましい。又、2次高調波モード振動を抑えるために、負荷容量C値は1pFより大きい値が好ましい。更に、2次高調波モードの振動を抑え、発振器の出力信号が基本波モード振動の発振周波数を得るために、α/α>β/βとαβ>1を満足するように本実施例の水晶発振回路は構成される。但し、α、αは基本波モード振動と2次高調波モード振動の増幅回路の増幅率で、β、βは基本波モード振動と2次高調波モード振動の帰還回路の帰還率である。
【0012】
換言するならば、増幅回路の基本波モード振動の増幅率αと2次高調波モード振動の増幅率αとの比が帰還回路の2次高調波モード振動の帰還率βと基本波モード振動の帰還率βとの比より大きく、かつ、基本波モード振動の増幅率αと基本波モード振動の帰還率βの積が1より大きくなるように構成される。このような構成により、消費電流の少ない、出力信号が音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動の発振周波数である水晶発振器が実現できる。更に、高い周波数安定性については後述される。
【0013】
又、本実施例の水晶発振回路を構成する増幅回路の増幅部は負性抵抗−RLでその特性を示すことができる。i=1のとき基本波モード振動の負性抵抗で、i=2のとき2次高調波モード振動の負性抵抗である。本実施例の水晶発振回路は、増幅回路の基本波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL|と基本波モード振動の等価直列抵抗Rとの比が増幅回路の2次高調波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL|と2次高調波モード振動の等価直列抵抗Rとの比より大きくなるように発振回路が構成されている。即ち、|−RL|/R>|−RL|/Rを満足するように構成されている。このように水晶発振回路を構成することにより、2次高調波モード振動の発振起動が抑えられ、その結果、基本波モード振動の発振起動が得られるので基本波モード振動の発振周波数が出力信号として得られる。
【0014】
図3は本発明の第1実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子45の上面図である。音叉形状の屈曲水晶振動子45は、音叉腕46,47と音叉基部48とを具えて構成されている。即ち、音叉腕46,47の一端部が音叉基部48に接続されている。本実施例では、音叉基部48にはその幅が曲線的に徐々に狭くなる部分53、54が設けられている。この長さはlで与えられ大略0.03mmから0.6mmを有する、好ましくは、0.1mmから0.6mmの範囲内にある。又、音叉基部の長さlは0.3mmから0.85mmを有する。即ち、音叉基部の音叉部側の幅寸法Wと端部側の幅寸法WはW>Wを満たすように構成されている。本実施例では、徐々に狭くなる部分53、54は曲線的であるが、直線で徐々に狭くなるように形成しても良い。又、音叉腕46、47には中立線51、52を挟んで(含む)溝49、50が設けられている。本実施例では溝49、50は音叉腕46、47の一部に設けられている。図示されていないが、溝49、50に対抗して音叉腕の下面にも溝が設けられている。と共に溝の中と音叉腕の側面に電極が配置されている。そしてその対抗電極は極性が異なるように構成されている。又、振動子は音叉基部48の端部側で表面実装型のケースや円筒型のケースに半田や接着剤によって固定される。即ち、2電極端子を構成する。円筒型のケースの場合には2本のリード線に固定される。
【0015】
また、音叉形状の屈曲水晶振動子45は厚みtを有し、溝は厚みtを有している。ここで言う厚みtは溝の一番深いところの厚みを言う。その理由は水晶は異方性の材料のために、化学的エッチング法では各結晶軸の方向によりエッチングスピードが異なる。それ故、化学的エッチング法による溝の形成では溝の深さにバラツキが生じ、一様な形状に加工するのが極めて難しいためである。本実施例では、溝の厚みtと音叉腕の厚みtとの比(t/t)が0.79より小さくなるように溝が音叉腕に形成されている。このように形成することにより、音叉腕の溝側面電極とそれに対抗する側面の電極との間の電界Exが大きくなるので、電気機械変換効率の良い屈曲振動子が得られる。即ち、基本波モード振動の容量比rが2次高調波モード振動の容量比rより小さい音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。
【0016】
更に、部分幅W、Wと溝幅Wとすると、音叉腕46,47の腕幅WはW=W+W+Wで与えられ、通常はWとWの一部又は全部がW≧Wまたは、W<Wとなるように構成される。又、溝幅WはW≧W,Wを満足する条件で構成される。更に具体的に述べると、本実施例では、溝幅Wと音叉腕幅Wとの比(W/W)が0.35より大きく、1より小さくなるように、好ましくは、0.35〜0.95で、溝の厚みtと音叉腕の厚みtとの比(t/t)が0.79より小さくなるように、好ましくは、0.01〜0.79となるように溝が音叉腕に形成されている。このように形成することにより、音叉腕の中立線51、52を基点とする慣性モーメントが大きくなる。即ち、等価直列抵抗Rの小さい、Q値の高い音叉形状の屈曲水晶振動子を得る事ができる。
【0017】
更に、音叉形状の振動子45の全長lは要求される周波数や収納容器の大きさなどから決定されると共に、基本波モードで振動する良好な屈曲水晶振動子を得るためには、溝の長さlと全長lとの間には密接な関係が存在する。
【0018】
すなわち、音叉腕46,47に設けられた溝の長さlと音叉形状の屈曲水晶振動子の全長lとの比(l/l)が0.2〜0.78となるように溝の長さは設けられる。このように形成する理由は、不要振動である2次高調波モード振動を抑える事ができると共に基本波モード振動の周波数安定性を高めることができる。それ故、基本波モードで容易に振動する良好な音叉形状の屈曲水晶振動子が実現できる。さらに詳述するならば、基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子の等価直列抵抗Rが2次高調波モード振動の等価直列抵抗Rより小さくなる。即ち、R<Rとなり、増幅器(CMOSインバータ)、コンデンサ、抵抗、本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子等から成る水晶発振器において、振動子が基本波モードで容易に振動する良好な水晶発振器が実現できる。また、溝の長さlは音叉腕の長さ方向に分割されていても良く、その中の少なくとも1個が前記辺比(l/l)を満足すれば良いか、又は、分割された溝の長さ方向の加えられた溝の長さが前記辺比(l/l)を満足すれば良い。
【0019】
また、この実施例では、音叉基部48は図3中、振動子45の長さlの下側部分全体とされ、又、音叉腕46及び音叉腕47は、図3中、振動子45の長さlの部分から上側の部分全体とされている。
【0020】
換言するならば、音叉形状の音叉腕の中立線を挟んだ、即ち、中立線を含む音叉腕の上下面に各々少なくとも1個の溝が長さ方向に設けられ、前記溝の両側面に電極が配置され、前記溝側面の電極とその電極に対抗する音叉腕側面の電極とが互いに異極となるように構成されていて、音叉腕に生ずる慣性モーメントが大きくなるように前記各々少なくとも1個の溝の内少なくとも1個の溝幅Wと音叉腕幅Wとの比(W/W)が0.35より大きく、1より小さく、且つ、前記溝の厚みtと音叉腕の厚みtとの比(t/t)が0.79より小さくなるように溝が形成されている。
【0021】
更に、本実施例の音叉腕の間隔はWで与えられ、間隔Wと溝幅WはW≧Wを満足するように構成され、間隔Wは0.05mm〜0.35mmで、溝幅Wは0.03mm〜0.12mmの値を有する。このように構成する理由は超小型の屈曲水晶振動子で、かつ、音叉形状と音叉腕の溝をフオトリソグラフィ技術を用いて別々の工程で形成でき、更に、基本波モード振動の周波数安定性が高調波モード振動の周波数安定性より高くすることができる。この場合、本実施例では、厚みtは通常0.05mm〜0.12mmの水晶ウエハが用いられるが、0.12mmより厚い水晶ウエハを使用してもよい。
【0022】
更に詳述するならば、屈曲水晶振動子の誘導性と電気機械変換効率を表すフイガーオブメリットMは品質係数Q値と容量比rの比(Q/r)によって定義され(i=1のとき基本波モード振動、i=2のとき2次高調波モード振動)、屈曲水晶振動子の並列容量に依存しない機械的直列共振周波数fと並列容量に依存する(直列)共振周波数fの周波数差ΔfはフイガーオブメリットMに反比例し、その値Mが大きい程Δfは小さくなる。従って、Mが大きい程、屈曲水晶振動子の共振周波数は並列容量の影響を受けないので、屈曲水晶振動子の周波数安定性は良くなる。即ち、時間精度の高い音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。
【0023】
詳細には、前記音叉形状と溝と電極とその寸法の構成により、基本波モード振動のフイガーオブメリットMが2次高調波モード振動のフイガーオブメリットMより大きくなる。即ち、M>Mとなる。一例として、基本波モード振動の周波数が32.768kHzで、W/W=0.5、t/t=0.34、l/l=0.48のとき、製造によるバラツキが生ずるが、音叉形状の屈曲水晶振動子のM、MはそれぞれM>65、M<30となる。即ち、高い誘導性と電気機械変換効率の良い(等価直列抵抗Rの小さい)、品質係数の大きい基本波モードで振動する屈曲水晶振動子を得ることができる。その結果、基本波モード振動の周波数安定性が2次高調波モード振動の周波数安定性より良くなると共に、2次高調波モード振動を抑圧することができる。また、本発明の基本波モード振動の基準周波数は10kHz〜200kHzが用いられる。特に、32.768kHzの振動子の製造方法については後述される。
【0024】
図4は本発明の第2実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する2個の音叉形状の水晶振動子20、30の上面図である。振動子20は音叉腕25,26と音叉基部29とを具えて構成されている。更に、音叉腕25,26には溝27,28が設けられている。同様に、振動子30は音叉腕35,36と音叉基部39とを具えて構成されている。更に、音叉腕35,36には溝37,38が設けられている。また、振動子20と振動子30は接続部40を介して音叉基部で接続され、一体に形成されている。本実施例では、電極は図示されていないが、振動子20と振動子30は周波数温度特性において頂点温度の異なる振動子で、かつ、それらは電気的に並列に接続されるように電極は構成されている。このように構成することにより、振動子の周波数温度特性を改善することができる。また、振動子20,30の形状は図3で述べた形状と同じであり、接続部40を介して両振動子は音叉基部で接続されている。振動子寸法又は溝の寸法又は両振動子間に角度を持たせることにより、頂点温度を変えることができる。また、両振動子間には振動干渉防止用の仕切り部を設けても良い。
【0025】
図5は本発明の第3実施例の水晶発振器に用いられる水晶ユニットの断面図である。水晶ユニット170は音叉形状の屈曲水晶振動子70、ケース71と蓋72を具えて構成されている。更に詳述するならば、振動子70はケース71に設けられた固定部74に導電性接着剤76や半田によって固定される。又、ケース71と蓋72は接合部材73を介して接合される。本実施例では、振動子70は図3で詳細に述べられた屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子45と同じ振動子である。又、本実施例の水晶発振器では回路素子は水晶ユニットの外側に接続される。即ち、音叉形状の屈曲水晶振動子のみが真空中のユニット内に収納されている。本実施例では、水晶振動子は表面実装型の容器に収納されているが、円筒型の容器に収納しても良い。
【0026】
更に、ケースの部材はセラミックスかガラス、蓋の部材は金属かガラス、そして、接合部材は金属か低融点ガラスでできている。本実施例で述べた振動子とケースと蓋との関係は以下に述べられる図6の水晶発振器にも適用される。
【0027】
図6は本発明の第4実施例の水晶発振器の断面図を示す。水晶発振器190は水晶発振回路とケース91と蓋92を具えて構成されている。本実施例では、水晶発振回路はケース91と蓋92から成る水晶ユニット内に収納されている。又、水晶発振回路は音叉形状の屈曲水晶振動子90と帰還抵抗を含む増幅器98とコンデンサー(図示されていない)とドレイン抵抗(図示されていない)を具えて構成されていて、増幅器98はCMOSインバータが用いられる。
【0028】
更に、本実施例では、振動子90はケース91に設けられた固定部94に接着剤96や半田によって固定される。これに対して、増幅器98はケース91に固定されている。また、ケース91と蓋92は接合部材93を介して接合されている。本実施例の振動子90は図3で詳細に述べられた音叉形状の屈曲水晶振動子45の振動子が用いられる。
【0029】
次に、本発明の水晶発振器の製造方法の実施例について、図面に記載の工程に従って述べる。図7は本発明の水晶発振器を構成する水晶ユニットを製造する工程である。即ち、本発明の水晶発振器の製造方法の一実施例の工程図である。記号S−1からS−12は工程の番号を示す。まず、S−1では水晶ウエハ140(断面図で示す)が準備される。次に、S−2ではその水晶ウエハ140の上面と下面に金属膜(例えば、クロムそしてその上に金、又は、金)141が蒸着法又はスパッタリング法により形成される。更に、S−3では前記金属膜141の上にレジスト142が塗布される。そして、フォトリソ工程により、それら金属膜141とレジスト142とが音叉形状を残して除去された後、エッチング加工(例えば、化学的エッチング法)により、S−4で示される音叉腕143,144と音叉基部145とを具えた音叉形状が形成される。この音叉形状を形成するときに、音叉基部に切り欠き部を形成しても良い。あるいは、音叉基部の叉付近の幅が音叉腕の自由端と反対側の方向に曲線的に徐々に狭くなる部分(図3参照)が存在するように音叉基部を形成しても良い。
【0030】
次に、S−2とS−3の工程で示したと同様に金属膜とレジストがS−4の音叉形状に塗布されて、フォトリソ工程とエッチング加工により、S−5で示される音叉腕143および音叉腕144に溝146,147,148,149が形成される。更に、S−5に金属膜とレジストが塗布されて、フォトリソ工程により極性が異なる電極がS−6で示されるように形成される。
【0031】
即ち、音叉腕143の側面に配置された電極150,153と音叉腕144の溝148,149に配置された電極155,156は同極となるように接続形成される。同様に、音叉腕143の溝146、147に配置された電極151,152と音叉腕144の側面に配置された電極154,157は同極となるように接続形成される。更に詳述するならば、溝の側面(段差部)と対抗する音叉腕の側面に互いに異なる極性を有する電極が配置されているので、音叉腕は基本波モード振動で、しかも逆相で屈曲振動をする。本実施例の工程では、水晶ウエハ内に1個の音叉形状の屈曲水晶振動子が示されているが、実際には、多数個の音叉形状の屈曲水晶振動子が水晶ウエハ内に形成され、それらの振動子の発振周波数は基本波モード振動で32.768kHzより高くなるように形成される。
【0032】
次の工程では、水晶ウエハ内に形成された多数個の音叉形状の屈曲水晶振動子の発振周波数が32.768kHzより低くなるように、スパッタリング法又は蒸着法又はメッキにて水晶ウエハ内の音叉腕に重り(金属膜)が付加、形成される。好ましくは、29.4kHzから32.75kHzの範囲内にある。重り(金属膜)の材料として、例えば、銀若しくは金が使用される。更に、次の工程では、音叉腕に形成された前記重り(金属膜)の一部又は全部をレーザ又はプラズマエッチング法によって除去し、発振周波数が32.2kHz〜33.08kHzの範囲内にあるように水晶ウエハ内で周波数調整がなされる。又、水晶ウエハ内に形成された音叉形状の屈曲水晶振動子は水晶ウエハ内で良振動子か不良振動子かの検査が行われる。そして、不良振動子が存在するときには、前記振動子は水晶ウエハから取り除かれるか、又はマーキングされるか又はコンピュタに記憶される。不良振動子には、例えば、発振不良(等価直列抵抗R大)、欠け、周波数不良(周波数の変化大)、電極切れ、汚れ、外形形状不良等が含まれる。本実施例の工程では、音叉形状の加工後に重りを音叉腕に形成しているが、音叉形状の加工前に水晶ウエハに形成しても良い。
【0033】
本実施例では、S−3の工程から音叉形状を形成し、その後、音叉腕に溝を形成しているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなくて、S−3の工程からまず溝を形成し、その後に音叉形状を形成しても良い。又は、音叉形状と溝を同時に形成しても良い。更に、音叉腕に設けられる溝は叉部より音叉腕の自由端方向の位置に形成しても良い。即ち、叉部より自由端側に設けられている。
【0034】
次の工程は矢印で示されるAとBの2つの方法がある。Aはケースに穴がない場合で、Bは穴がある場合である。まずAの工程では形成された音叉形状の屈曲水晶振動子160が水晶ウェハから切離され、その音叉基部145がS−7で示されるように、ケース158の固定部159に導電性接着剤161又は半田にて固定される。次に、S−8では水晶振動子160が真空中で封止されて水晶ユニットが形成され、その水晶ユニットを有する水晶発振回路が構成されたときに、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.764kHzから32.772kHzの範囲内にあるようにレーザ162又はプラズマエッチング法にて周波数が調整される。最後に、S−9で示すように、ケース158と蓋163とが低融点ガラス164又は半田などの金属を介して接合される。その結果、音叉形状の屈曲水晶振動子とケースと蓋とを具えて構成される水晶ユニットが得られる。この場合はケース158は真空封止用の穴を持たないので、接合は真空中で行われる。図示されていないが、更に周波数の偏差を小さくするために、蓋がガラスの場合には、S−9の後にレーザで周波数調整をしても良い。尚、レーザ又はプラズマエッチング法にて周波数調整するときには、音叉腕の重り(金属膜)の一部又は全部を除去して周波数調整される。Bの工程では穴がケースにあるが蓋でも良い。
【0035】
本実施例では、重り(金属膜)が水晶ウエハに形成された多数個の音叉形状の屈曲水晶振動子の音叉腕に形成され、その重り(金属膜)の一部又は全部をレーザ又はプラズマエッチング法にて除去して周波数調整しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、即ち、これらの工程は省略しても良い。詳細には、水晶ウエハ内に形成された多数個の音叉形状の屈曲水晶振動子で、各々の振動子の基本波モード振動での発振周波数が32.768kHzより高い周波数を有する音叉形状の屈曲水晶振動子を各々のケースの固定部に固定し、その後に、水晶ユニットが形成され、その水晶ユニットを有する水晶発振回路が構成されたときに、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.764kHzから32.772kHzの範囲内にあるように蒸着法にて周波数調整される。蒸着法にて周波数調整されるときには、音叉腕に重り(金属)を付加して調整される。
【0036】
次にBの工程では、S−10で音叉形状の屈曲水晶振動子160が水晶ウエハから切離され、その音叉基部145がケース165の固定部159に導電性接着剤161又は半田にて固定される。次に、S−8と同じ様にして周波数調整が行われる。即ち、水晶振動子160が真空中で封止され、その水晶ユニットを有する水晶発振回路が構成されたときに、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.764kHzから32.772kHzの範囲内にあるようにレーザ又はプラズマエッチング法にて周波数調整される。更に、S−11では、ケース165と蓋163がS−9と同じ方法で接合される。その後に、真空中で周波数調整が行われる。好ましくは、水晶振動子160が真空中で封止されたときに、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.766kHzから32.77kHzになるようにレーザにて調整される。最後に、S−12では、ケース165に設けられた穴167が真空中で低融点ガラスや半田などの金属166を用いて封止される。
【0037】
このように、本実施例では、S−10の工程とS−11の工程の後とに周波数調整が行われるが、少なくともどちらか一方の工程の後に周波数調整をしても良い。更に詳述するならば、音叉形状の屈曲水晶振動子をケース又は蓋の固定部に固定し、その後に、水晶ユニットが形成され、その水晶ユニットを有する水晶発振回路が構成されたときに、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.764kHzから32.772kHzの範囲内にあるようにレーザ又はプラズマエッチング法によって周波数調整される。例えば、音叉形状の屈曲水晶振動子をケース又は蓋の固定部に固定し、ケースと蓋を接合した後に、レーザにて周波数調整される。この場合も水晶ユニットを形成し、バッフア回路を介して出力される発振周波数が32.764kHzから32.772kHzの範囲内にあるようにレーザによって周波数調整される。又、Aの工程と同じように、周波数の偏差を小さくするために、S−12の後にレーザで周波数調整をしても良い。この場合には、出力される発振周波数が32.766kHzから32.77kHzの範囲内にあるように周波数調整される。このように、本実施例では、周波数調整は複数回の別々の工程で行われるが、本発明では、少なくとも2回の別々の工程で周波数調整すれば良い。即ち、1回は水晶ウエハの状態で、更に、1回は振動子をケース、又は蓋に固定した後に周波数調整される。固定した後に、例えば、ケースと蓋を接合し、その後に周波数調整しても固定した後の周波数調整に含まれる。又、水晶振動子が真空中で封止された水晶ユニットを形成し、その後に、周波数調整をしても良い。この周波数調整の工程は別の1回の工程である。
【0038】
本実施例では、1個の音叉型屈曲水晶振動子を具える水晶ユニットの製造方法について説明したが、2個以上(複数個)の同一モードの振動子を具える水晶ユニットの場合も同じ工程で製造される。即ち、S−3の工程から2個以上の個々、又は、一体形成の音叉形状を形成し(S−4)、更に、S−5では少なくとも1個の音叉形状の音叉腕に溝、又は音叉腕と音叉基部とに溝、又は叉部付近で分割された、分割部を有する溝を形成し、S−6では各音叉型屈曲水晶振動子は逆相で振動するように電極が配置され、A工程(S−7〜S−9)又はB工程(S−10〜S−12)にて形成される。更に、周波数の偏差を小さくするために、S−9又はS−12の後にレーザで片方又は両振動子の周波数調整を行っても良い。この場合、両振動の周波数差は同じ負荷容量で30ppm以内にあるのが好ましい。
【0039】
尚、本実施例の製造工程で示された共振(発振)周波数の測定には、他励振法と自励振法の2つがある。本実施例の共振(発振)周波数の測定において、本発明はどちらの方法も含む。他励振法では、本実施例の共振(発振)周波数は、負荷容量C値が18pF以下の容量を音叉形状の屈曲水晶振動子に直列に接続して位相が略零になるようにして測定したときの共振(発振)周波数である。例えば、C値が6pF、又は9pF、又は12pF等である。即ち、18pF以下の任意の数値で測定したときの共振(発振)周波数である。測定にはインピーダンスアナライザー等の測定器が用いられる。これに対して、自励振法では、本実施例の発振(共振)周波数は水晶発振回路を構成し、負荷容量C値が18pF以下の容量を有する回路構成にして測定したときの発振(共振)周波数である。好ましくは、1pFから18pFである。例えば、C値が6pF、又は9pF、又は12pF等である。即ち、18pF以下の任意の数値で測定したときの発振(共振)周波数である。この場合、発振(共振)周波数はバッフア回路を介して出力信号として出力される。
【0040】
次に、上記実施例で示された水晶ユニットは水晶発振回路を具えて構成される本発明の水晶発振器を構成するのに用いられる。即ち、水晶発振回路は増幅回路と帰還回路とを具えて構成されていて、増幅回路は少なくとも増幅器から構成され、帰還回路は少なくとも音叉形状の屈曲水晶振動子を具えて構成される前記水晶ユニットとコンデンサーから構成されている。詳細には、増幅部はCMOSインバータと帰還抵抗とを具えて構成され、帰還部は前記水晶ユニットとドレイン抵抗とゲート側のコンデンサとドレイン側のコンデンサとを具えて構成されていて、これらの素子は電気的に接続されている。又、前記した発振周波数は水晶発振回路から出力される出力信号の周波数である。通常はバッフア回路を介して出力される。即ち、水晶発振回路の出力信号はバッフア回路を介して出力され、その出力信号の周波数は32.764kHzから32.772kHzの範囲内にある。
【0040】
上記方法で製造された本発明の水晶発振器は、超小型で、高い周波数安定性と高い時間精度を有する品質に優れた、安価な水晶発振器が実現できる。
【0041】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、上記実施例の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子では、音叉腕又は音叉腕と音叉基部に溝を設けているが、例えば、音叉腕に貫通穴(t=0)を設けてもよい。即ち、貫通穴は溝の特別の場合で、本発明の溝は前記貫通穴をも包含するものである。又、上記実施例では、音叉腕は2本で構成されているが、本発明は3本以上の音叉腕を包含するものである。この場合、少なくとも2本の音叉腕が逆相で振動するように電極が構成されていれば良い。
【0042】
更に、第1実施例〜第4実施例の水晶発振器とそれに用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子について述べてきたが、これらの実施例の水晶発振器に用いられる水晶振動子はケースと蓋とから構成される、いわゆるユニット内に収納され、水晶ユニットを構成する。即ち、ケース又は蓋に設けられた固定部に導電性接着剤又は半田等によって固定部に本実施例の振動子は固定され、さらに、ケースと蓋とは接合部材を介して接合されていて、ケース内は真空になるように構成されている。このように構成することにより、等価直列抵抗Rの小さい、超小型の水晶ユニットを実現することができる。また、上記実施例では、音叉腕に溝が設けられているが、溝はなくても良い。即ち、音叉腕は上面と下面と側面とを有し、それらの面に音叉腕が逆相で振動するように電極が配置されている。
【0043】
また、音叉形状の屈曲水晶振動子の容量比r、rはそれぞれr=C/C、r=C/Cで与えられる。但し、Cは電気的等価回路の並列容量で、CとCは電気的等価回路の基本波モード振動と2次高調波モード振動の等価容量である。更に、音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動と2次高調波モード振動の品質係数はQ値とQ値で与えられる。そして、前記実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子は、基本波モードで振動する共振周波数の並列容量による依存性が2次高調波モードで振動する共振周波数の並列容量による依存性より小さく成るように構成される。即ち、r/2Q<r/2Qを満たすように構成されている。このような構成により、基本波モードで振動する共振周波数の並列容量による影響が無視できるほど極めて小さくなるので、高い周波数安定性を有する基本波モードで振動する屈曲水晶振動が得られる。又、本発明では、r/2Qとr/2QをそれぞれSとSと置き、SとSをそれぞれ基本波モード振動と2次高調波モード振動の周波数安定係数と呼ぶ。即ち、S=r/2QとS=r/2Qで与えられる。
【0044】
更に、本実施例の屈曲水晶振動子の音叉形状と溝は化学的、物理的と機械的加工方法の内、少なくとも一つの方法を用いて加工される。物理的方法では、例えば、イオン化した原子、分子を飛散させて加工するものである。ここではこの方法をプラズマエッチング法と言う。又、機械的方法では、例えば、ブラスト加工用の粒子を飛散させて加工するものである。ここではこの方法を粒子法と言う。
【発明の効果】
【0045】
以上述べたように、本発明の水晶発振器とその製造方法を提供する事により多くの効果が得られることを既に述べたが、その中でも特に、次の如き著しい効果が得られる。
(1)音叉形状の屈曲水晶振動子を多数個ウエハ内に形成し、重りの形成および周波数調整をウエハ内で行うので、作業性に優れ、安価な振動子が得られると同時に、安価な水晶発振器が実現できる。
(2)増幅回路の基本波モード振動の増幅率αと2次高調波モード振動の増幅率αとの比が帰還回路の2次高調波モード振動の帰還率βと基本波モード振動の帰還率βとの比より大きく、かつ、基本波モード振動の増幅率αと基本波モード振動の帰還率βの積が1より大きくなるように水晶発振器は構成されているので、負荷容量が小さくても、水晶発振器の出力信号は、基本波モード振動の周波数が出力として得られると共に、消費電流の少ない水晶発振器が実現できる。
(3)基本波モード振動のフイガーオブメリットMが2次高調波モード振動のフイガーオブメリットMより大きい振動子を具えて水晶発振器は構成されるので、出力信号が基本波モード振動の周波数が得られると共に、高い周波数安定性を有する水晶発振器が実現できる。即ち、高い時間精度を有する水晶発振器を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。
【図2】図1の帰還回路図を示す。
【図3】本発明の第1実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の平面図である。
【図4】本発明の第2実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する2個の音叉形状の水晶振動子の上面図で、一体に形成されている。
【図5】本発明の第3実施例の水晶発振器に用いられる水晶ユニットの断面図である。
【図6】本発明の第4実施例の水晶発振器の断面図を示す。
【図7】本発明の水晶発振器を製造する方法の一実施例の工程図である。
【符号の説明】
【0047】
1、9 増幅回路、帰還回路
、V 入力電圧、出力電圧
、W、W 溝幅、音叉腕の腕幅、音叉腕の間隔
、W 音叉腕の部分幅
、l、l 溝の長さ、音叉基部の長さ、音叉形状の屈曲水晶振動子の全長
t、t 音叉腕の厚み、溝の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆相の屈曲モードで振動し、かつ、音叉基部と前記音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕とを備えた音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、
水晶ウエハを準備する工程と、
前記水晶ウエハの上面と下面の各々に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の上にレジストを塗布する工程と、
前記第1音叉腕と前記第2音叉腕とを備えた音叉形状を形成する工程と、
前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の各々の上面と下面の各々に溝を形成する工程と、
前記第1音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第1電極が、前記第2音叉腕の側面に形成された第2電極に接続され、かつ、前記第2音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第3電極が、前記第1音叉腕の側面に形成された第4電極に接続されるように、前記第1電極から前記第4電極を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子を前記水晶ウエハから切り離す工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を少なくとも2回、かつ、異なる工程で調整する工程と、を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項2】
逆相の屈曲モードで振動し、かつ、音叉基部と前記音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕とを備えた音叉型屈曲水晶振動子と、ケースと、蓋と、を備えて構成される水晶ユニットの製造方法で、
水晶ウエハを準備する工程と、
前記水晶ウエハの上面と下面の各々に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の上にレジストを塗布する工程と、
前記第1音叉腕と前記第2音叉腕とを備えた音叉形状を形成する工程と、
前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の各々の上面と下面の各々に溝を形成する工程と、
前記第1音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第1電極が、前記第2音叉腕の側面に形成された第2電極に接続され、かつ、前記第2音叉腕の上面と下面の各々に形成された溝の面の上に形成された第3電極が、前記第1音叉腕の側面に形成された第4電極に接続されるように、前記第1電極から前記第4電極を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子を前記水晶ウエハから切り離す工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を少なくとも2回、かつ、異なる工程で調整する工程と、
前記ケースの固定部に前記音叉型屈曲水晶振動子を固定する工程と、
前記ケースに前記蓋を接続する工程と、を含むことを特徴とする水晶ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記ケースの固定部に前記音叉型屈曲水晶振動子を固定する工程の後に、前記音叉型屈曲水晶振動子の発振周波数を調整する工程を備えていることを特徴とする請求項2に記載の水晶ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の水晶振動子の製造方法、または請求項2若しくは請求項3に記載の水晶ユニットの製造方法と、増幅回路の増幅器と、帰還回路のコンデンサーと抵抗と、を備えた水晶発振器の製造方法で、前記水晶発振器から出力される出力信号は、32.764kHzから32.772kHzの範囲内にある発振周波数を備えていることを特徴とする水晶発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−183634(P2010−183634A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94456(P2010−94456)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2003−158697(P2003−158697)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【出願人】(500505197)有限会社ピエデック技術研究所 (29)
【Fターム(参考)】