説明

水晶振動子の製造方法

【課題】漏れ調整と離調度調整をひとつのエッチング工程によって実現し、漏れ振動が抑制され、且つ、適正に離調度調整された高性能な水晶振動子の製造方法を提供する。
【解決手段】水晶を所定の外形形状に加工する外形加工工程と、外形形状に電極を形成する電極形成工程と、漏れ量を測定する工程ST3と、離調度を測定する工程と、離調度の測定結果に基づいた時間エッチングを行い、外形形状を加工するエッチング工程と、を備え、エッチング工程は、エッチング時間と漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状のマスクを用いて外形形状のエッチングを行う漏れ量調整工程を有する水晶振動子の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型ジャイロセンサなどに利用される水晶振動子の製造方法に関し、特に面外振動である漏れ振動調整及び離調度調整に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型ジャイロセンサなどに利用される音叉型の水晶振動子は、水晶ウェハーから所定の形状の水晶振動子を切り出す外形形成工程、水晶振動子を発振させるための電極を形成する電極形成工程、電極が形成された水晶振動子を容器に実装する封止工程などによって製造される。特に、水晶振動子の形状が振動を決定し水晶振動子の性能に大きく影響するため、水晶ウェハーから水晶振動子を切り出す外形形成工程は重要な工程である。
【0003】
ここで、図23は従来の水晶振動子を模式的に示した斜視図であり、水晶振動子100の外形は、水晶ウェハーからエッチング加工等による外形形成工程によって切り出される。この水晶振動子100は、振動型ジャイロセンサとして用いられる振動子であり、振動脚として2本の駆動脚101、102と1本の検出脚103とを有する三脚音叉型振動子である。
【0004】
この水晶振動子100を例えば振動型ジャイロセンサとして用いる場合、図23に示すX軸方向の屈曲振動を駆動振動、Z´軸方向の屈曲振動を角速度が印加された場合の検出振動として用いている。そのため、角速度が印加されていない状態ではZ´軸方向の振動は発生しない。
【0005】
図24は、図23の従来の水晶振動子100の切断線A−A´での断面を模式的に示した断面図であって、駆動脚101、102の断面を示した図である。なお、説明に必要のない部分は省略してある。図24において、図24(a)は、水晶振動子100の駆動脚の駆動振動を説明するための図であり、図24(b)は、水晶振動子100の駆動脚の斜めの駆動振動を説明するとともに水晶の残渣形状を説明する図である。
【0006】
図24(a)は、水晶振動子100に角速度が印加されていない状態での、駆動脚101、102の理想的な駆動振動を示しており、その振動方向S1はX軸方向である。しかし、従来の製造方法で製作した水晶振動子においては、実際には角速度が印加されていない場合にも図24(b)に示すように、Z´軸方向の振動成分を有する斜め振動(振動方向S2)が観測される。
【0007】
これは、水晶振動子の加工精度や水晶の異方性等に起因して、駆動振動(X軸方向の振動)のほかに、水晶振動子100に角速度が印加されていない状態において発生してはならない面外振動(Z´軸方向の振動)が発生するからである。
【0008】
このように、駆動脚101、102が斜め振動をすると、検出脚103の先端の軌跡は、Z´軸方向への直線的な振動、または、X−Z´面内における楕円振動となる。このZ´軸方向の振動成分は漏れ振動と呼ばれ、この漏れ振動によって検出脚103の検出電極からはコリオリ出力と無関係な漏れ信号が発生し、ジャイロセンサのS/N比を悪化させたり、温度特性を悪化させたりするという問題があった。
【0009】
また、周波数基準などの通常用途の音叉型水晶振動子の場合も、振動はX軸方向の屈曲振動を利用しており、Z´方向成分の漏れ振動はクリスタルインピーダンス(CI値)の上昇をもたらし、特性の悪化を招くという問題があった。
【0010】
この漏れ振動は、水晶振動子の脚断面形状の製造によるばらつき等が影響を与えていると考えられる。特に、図24(b)に示したように、水晶振動子をエッチングで製造する際に形成される水晶の残渣形状のばらつきの影響が大きいと考えられる。すなわち、水晶にはエッチング異方性があり、結晶の方向によってエッチング速度が異なるという特性を有する。そのために、エッチング後の水晶振動子における振動脚の側面は均一にエッチングされずに残渣が残る。
【0011】
ここで、残渣の影響による漏れ振動の発生について考察する。一般に梁などの曲げについて考える場合、断面の主軸がよく考慮される。断面の主軸は、直交する2本の軸からなり、梁に主軸と同方向に曲げ力をかけると、梁は力と同方向に曲がる。一方、主軸と異なる方向に曲げ力をかけた場合には、梁は力がかけられた方向とは異なった方向に曲がる。
【0012】
水晶振動子の場合、圧電効果によって曲げ力がかかるのは、X軸方向である。よって、主軸の一方がX軸と同じであれば、振動はX軸方向に起こり、漏れ振動は発生しない。一方、主軸がX軸から外れてZ´方向に傾くと、曲げ力のかかる方向と主軸の方向が一致しないため、振動はZ´軸成分を含んだ斜め振動となり、漏れ振動が発生する。
【0013】
主軸は、その梁(振動脚)の断面形状によって決まる。単純な例では、対称軸を持つ断面に関しては、その対称軸およびそれと垂直な軸がその断面の主軸である。例えば、長方形の断面ならば、各辺の2等分線がそれぞれ主軸である。
【0014】
漏れ振動のない水晶振動子を得ようとする場合、主軸の一方がX軸に平行である必要がある。主軸は直交する2本の軸なので、X軸かZ´軸に平行な対称軸が断面にあれば、X軸に平行な主軸が存在することになる。つまり、断面形状が上下対称か、左右対称であれば漏れ振動は発生しない。
【0015】
すでに説明した例のように水晶振動子を製造した場合に、そうした対称軸を持った振動子が得られるのかどうかを考えてみる。水晶振動子をウェットエッチングで製造すると、振動脚側面には必ず残渣が残る。そのため、この残渣のでき方によって断面の主軸が決定される。水晶振動子の断面の主軸を考えるには、まず残渣がどのようにできるかを考える必要がある。残渣の形状は、エッチングの時間や条件によって異なるため、一概に言うことはできないが、概ね同じような傾向をたどるので、ここでは発明者の行った実験条件から観察できた結果に基づき残渣のでき方を説明する。
【0016】
図25は、図23で示した水晶振動子100の振動脚を切断線A−A´での断面を模式的に示した拡大断面図であり、振動脚における残渣の形成状態の一例を示すものである。ここでは、説明を簡単にするために一本の駆動脚101のみを記し、水晶の結晶軸の−X側の側面を第1側面、+X側の側面を第2側面とする。また、200aと200bとは、エッチングマスクである。
【0017】
ここで、図25(a)に示したように、比較的短時間のエッチングの場合の第2側面は、振動子の主平面、即ち表面101a、裏面101bから浅い部分ではZ´軸に対して約2°、深い部分では約22°の角度を成して残渣が形成される。この表面101a、裏面101bからの深さはエッチングの時間によって異なるが、表面101a側、裏面101b側とも同じ傾向をたどる。また、図25(b)に示したように、比較的長時間エッチングを続けると、22°の部分はなくなり、2°の角度を成した残渣のみが残る。
【0018】
また、第1側面に形成される残渣は、ごく小さいので言及された例は少ないのだが、図25(a)、図25(b)に示したように、詳細に観察すると残渣は形成されており、Z
´軸に対して約1°の角度を成して形成される。この第1側面の残渣形状は、時間による差はあまりない。ここで、エッチングはエッチングマスク200a、200bの端部からスタートし、貫通するまでは表面側、裏面側で互いに影響を及ぼさず、独立して進行する。
【0019】
このように、水晶はエッチングによって残渣ができるため、水晶ウェハーの表裏両面からエッチングをする方法で水晶振動子を製造した場合、次のようなことが言える。
まず、図25(a)、図25(b)は、水晶ウェハーに形成された表面のエッチングマスク200a、裏面のエッチングマスク200bの位置が正確に合っている場合を示している。この場合は図示したように、短時間エッチングであっても、長時間エッチングであっても、エッチング後の駆動脚101の断面は、X軸に略平行な対称軸をもった上下対称形となり、従ってX軸に略平行な主軸110を持つ。この場合、曲げ力のかかる方向と主軸110の方向とが共にX軸であり、ほぼ一致しているので漏れ振動はほとんど起こらない。
【0020】
一方、図26で示す駆動脚101の断面図は、エッチングマスク200a、200bの位置が製造上の誤差で位置ずれ量eだけX軸方向にずれて形成されてしまった場合の一例を示している。この場合は図示したように、駆動脚101の断面は、上下左右非対称となり、X軸に平行な対称軸も、Z´軸に平行な対称軸も何れも持たない。
【0021】
そしてこの場合の主軸111はX軸に対して平行ではなく、ズレ角θ1を有する。従って、曲げ力のかかる方向と主軸111の方向とが異なるので斜め振動となり、漏れ振動を発生してしまう。こうした断面の主軸と斜め振動の関係については、解析した例も開示されている(例えば、非特許文献1参照)。ここで図示するように、エッチングマスク200aと200bとの位置ずれ量eと、主軸111のX軸に対するズレ角θ1と、は相関関係にあり、位置ずれ量eが増加すると、ズレ角θ1も大きくなり、漏れ振動は増大する。
【0022】
また、水晶振動子の外形形成の製造方法としては、エッチングマスクを水晶ウェハーの片面のみにパターニングし、もう一方の面は全面を金属耐食膜で覆っておき、片面からエッチングする方法や、エッチングマスクの裏面パターンを表面パターンよりも大きくし、表面パターンを基準パターンとしてエッチングする方法が知られている。
【0023】
ここで、図27は表面パターンを基準パターンとしてエッチングする場合の一例を示した駆動脚の断面図である。図27において、駆動脚121は表面121aのエッチングマスク201aを基準パターンとして、裏面121bのエッチングマスク201bを幅広く形成している。これにより、エッチングマスク201aと201bとが多少位置ずれしても、断面形状への影響は少ない。しかし、前述したように、水晶のエッチング異方性によって、第1側面はZ´軸に対して約1°の角度を成して形成され、第2側面はZ´軸に対して約2°の角度を成して形成されるので、駆動脚121の断面は図示するように上下左右非対称となり、主軸112はX軸と平行にならずにズレ角θ2を有し、漏れ振動が発生してしまう。
【0024】
以上のように、振動型ジャイロセンサ等に用いられる水晶振動子は、エッチングマスクの精度に起因して漏れ振動が発生し、センサの検出精度等を悪化させる重大な問題がある。
この解決には、エッチングマスクを高精度に形成できれば、ある程度の漏れ振動を抑制できるが、高精度化には限界があり、またコスト高となる。また、残渣は無くすことができないので、漏れ振動の抑制は困難であった。
【0025】
このような背景から、水晶振動子の外形形成後に振動脚をさらに加工して漏れ振動を抑
制する方法が提案されている。ここで、断面の主軸がX軸またはZ´軸と平行になる例として、断面にX軸またはZ´軸に平行な対称軸を持つ例を示したが、必ずしも対称軸を持つ必要は無い。図24(b)に示す例では、上面左側及び下面右側を削れば、断面主軸の傾きが解消され、非対称形状でも漏れ振動を抑制することができる。例えば、水晶振動子の振動脚の稜線を摺動させたテープによって研削して、振動脚のバランス調整によって漏れ振動を抑制する水晶振動子の特性調整方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0026】
また、水晶振動子の振動脚の研削は、テープを振動脚に当接させて行うこと以外に、エッチングにより行うこともできる(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に示した従来技術は、圧電振動子の外形形成後に、電極膜等の金属膜をマスクにしてエッチングによって板厚調整を行い、振動子の周波数−温度特性を調整する振動子の温度特性調整方法が開示されている。特許文献2に示した従来技術によれば、振動子形成後に再エッチングを行うことによって、温度特性を調整できるので、周波数温度特性に優れた振動子を効率よく製造できることが示されている。
【0027】
また、水晶振動子の出力を決定する要素として離調度(離調周波数)がある。離調度とは、駆動モードの共振周波数と検出モードの共振周波数との差で定義される。水晶振動子の出力は離調度にほぼ反比例する。また、離調度が小さい場合は離調度の僅かな変化でジャイロの出力が大きく変動し、離調度が大きい場合はジャイロの出力が低下するので、離調度は適正な範囲に設定する必要がある。
【0028】
ここで、水晶振動子の離調度と相対出力との関係を図28によって説明する。なお、図28では、離調度は正のみを示し、横軸に離調度を示し縦軸に相対出力を示している。図28において離調度Δfは図示するような特性を持つので、大きな出力を得るために小さい離調度(図中のΔf11)を設定すると、離調度の変動幅F1に対する出力変動幅(V1)が大きく、出力範囲を所定の大きさに設定することが難しい。この出力変動を小さい範囲内に納めるには離調度の変動分は小さいことが求められるが、現在の水晶振動子の加工精度では、離調度の変動を所定の狭い範囲内に納めることは困難である。
【0029】
一方、離調度を大きな値(図中のΔf12)に設定すると、離調度の変動幅F2に対する出力変動幅(V2)は小さくなるが、相対出力が低下するため、所望の出力に設定することが難しいという問題がある。
【0030】
出力と離調度の特性から、水晶振動子の出力が小さくてもよい場合には、離調度を大きく設定することによって、離調度を調整することなく水晶振動片を製造することができる。しかし、S/N比が良好で安定した出力を得るためには、ある程度以上の出力が必要であるので、離調度を小さくし、且つ、水晶振動子の出力のばらつきを抑えるために、離調度を適正な範囲に調整することは必須となる。
【0031】
この離調度調整において、水晶振動子をパッケージに実装後、エッチング工程によって離調度の調整を行う水晶振動子の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。ここで、図29のフローチャートを用いて、離調度調整を含んだ従来の水晶振動子の製造方法の概要を説明する。
【0032】
図29において、水晶ウェハーに対して、Cr及びAuの成膜、レジスト塗布、マスク露光、現像、エッチング、及びレジスト剥離などの各操作を行なって、水晶ウェハーの両面に水晶振動子の外形形状に応じたエッチング膜を成形する。続いて、水晶を溶解するフッ化水素酸を主成分とするエッチング液を用いて水晶エッチングを行ない、水晶振動子の素子外形を所定形状に加工する(外形形成工程:ST50)。
【0033】
次に、レジスト電着、露光、現像、Auエッチング、Crエッチング、及びレジスト剥離などの操作を行ない、水晶ウェハーに連結された状態の複数の水晶振動子片に対して所定の電極を形成する(電極形成工程:ST51)。
【0034】
次に、水晶振動子を水晶ウェハーから分離後、各水晶振動子を振動子パッケージに収納し固着する(パッケージ内水晶搭載工程:ST52)。
【0035】
次に、水晶振動子を駆動して漏れ振動を測定しながら、研削装置やレーザー照射等によって振動脚の面取り加工を実施し、漏れ振動を抑制する(漏れ振動調整工程:ST53)。
【0036】
次に、離調度調整を行うかどうかを判定し(ST54)、離調度調整を行う場合は、水晶振動子を再び駆動して離調度測定を実施する(離調度測定工程:ST55)。
【0037】
次に、離調度測定結果に基づいてエッチング時間を決定し、水晶振動子を振動子パッケージに実装された状態でエッチングを実施する(調整エッチング工程:ST56)。
【0038】
次に、離調度調整を行った水晶振動子の振動子パッケージに封止のためにカバーを取り付け(ST57)、完成品としての組立及び検査を行い(ST58)、終了する。
【0039】
以上の製造工程によって、水晶振動子は漏れ振動調整と離調度調整が実施され、CI値の上昇を抑制して高性能な水晶振動子が提供されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002―243451号公報(第7頁、第9図)
【特許文献2】特開昭54−53889号公報(第3頁、第5図)
【特許文献3】特開2007−93485号公報(第11頁、第4図)
【非特許文献】
【0041】
【非特許文献1】藤吉基弘、他5名、「水晶振動式角速度センサのモデル化と振動解析」、電気情報通信学会論文誌C、Vol.J87−C、No.9、p.712−719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
しかしながら、特許文献1の漏れ振動調整をテープにより研削する方法では、振動脚に正確に接触できないので、微細なバランス調整を実施することが困難である。また、テープによる研削では振動子に外力が加わるので、特に小型の振動子の調整作業においては、外力により振動子にクラックなどが入りやすく、歩留まり低下、信頼性低下等の課題がある。
【0043】
また、特許文献2に示した振動子の温度特性調整方法は、振動子形成後に再びエッチングを行って板厚を調整するが、その目的は振動子の周波数−温度特性の改善であり、振動子の漏れ振動の調整や補正を目的としておらず、漏れ振動調整に関しては、開示も示唆もされていない。
【0044】
また、特許文献3に示した従来技術は、漏れ振動調整工程と離調度調整工程が別々の工程として分かれているので、それぞれ個別に調整を行わなければならず、また、調整工程ごとに調整量を決めるための測定を行う必要があるので、工程が複雑で工程数が多く必要
である。また、パッケージごとに調整を行うので、大量に一括した調整を行うことが出来ない。
【0045】
本発明の目的は上記課題を解決し、単純な工程で漏れ量調整と離調度調整とを行うことを可能とする水晶振動子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0046】
上記課題を解決するために、本発明の水晶振動子の製造方法は、下記記載の方法を採用する。
【0047】
本発明の水晶振動子の製造方法は、基部から延設する振動脚を備える外形形状に水晶を加工する外形加工工程と、外形形状に電極を形成する電極形成工程と、外形形状の漏れ振動による漏れ量を測定する漏れ量測定工程と、外形形状の離調度を測定する離調度測定工程と、離調度測定工程の測定結果に基づいた時間エッチングを行い、外形形状を加工するエッチング工程と、を備え、エッチング工程は、エッチング時間と漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状のマスクを用いて外形形状のエッチングを行う漏れ量調整工程を有することを特徴とする。
【0048】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、漏れ量調整工程のエッチング時間と漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状に、電極を加工する電極加工工程を有し、漏れ量調整工程において、電極加工工程で加工された電極をマスクにしてエッチングを行うことを特徴とする。
【0049】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、電極加工工程は、断面主軸の方向を調整することによって、振動脚の漏れ振動成分を抑制するように電極の一部分が除去された漏れ量調整エリアを形成することを特徴とする。
【0050】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、漏れ量調整エリアは振動脚の長手方向に沿って形成され、漏れ量調整エリアの幅方向の略中心が、振動脚の幅方向の略中心より振動脚の幅方向にずれていることを特徴とする。
【0051】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、漏れ量調整エリアは1つの振動脚に複数個あり、振動脚の断面の振動軸中心を原点としたとき、原点を通り直交する2つの軸で定義される第1象限、第2象限、第3象限、第4象限のうち、原点を挟み対称となる象限に設けられることを特徴とする。
【0052】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、エッチング工程は、漏れ量調整工程とは別に、外形形状のエッチングを行って離調度を調整する離調度調整工程を有することを特徴とする。
【0053】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、電極形成工程で形成された電極を剥離した後に、離調度調整工程を行うことを特徴とする。
【0054】
さらに、本発明の水晶振動子の製造方法は、振動脚は駆動脚と検出脚によって構成され、離調度調整工程は、検出脚の電極が形成されていない領域をエッチング加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0055】
本発明の水晶振動子の製造方法によれば、離調度に応じたエッチング時間を決定し、このエッチング時間と漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状のマスクを用いて外形形状
のエッチングを行うことによって、ひとつのエッチング工程だけで漏れ量調整と離調度調整を同時に実施できるので、調整工程を単純にした水晶振動子の製造方法を実現できる。また、漏れ量調整と離調度調整を共にエッチングによって行えるので、水晶振動子片に外力を加えることなく微細な調整が可能であり、特性ばらつきが少なく小型で高性能な水晶振動子を製造できる。
【0056】
また、本発明によって製造された水晶振動子をジャイロセンサとして用いるならば、漏れ振動が抑制された高精度な振動型ジャイロセンサを実現できる。また、周波数基準用の水晶振動子として用いるならば、CI値を低く抑えられるので、低消費電力の高性能な周波数基準用水晶振動子を実現できる。
【0057】
また、水晶発振器などに使用する通常の水晶振動子においても、漏れ振動はCI値上昇の原因となるので、漏れ調整を行うことは有効である。また、副振動である面外振動の周波数と基本振動の周波数とが近い場合は、特性を悪化させる原因となる。この場合も基本周波数と副振動である面外振動の周波数差である離調度を調整し、二つの振動を遠ざけることによって特性悪化を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態の水晶振動子の製造方法の工程順を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の水晶振動子の製造方法によって完成した水晶振動子の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の外形形成工程を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の外形形成工程によって水晶ウェハーに形成された複数の水晶振動子片の斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の電極形成工程を説明する断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の電極形成工程によって形成された振動脚の電極配線を説明する拡大断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の漏れ量と離調度測定工程と電極加工工程を実施する漏れ量と離調度測定システムおよび電極加工システムの一例を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の離調度に応じたエッチング時間の決定を説明するグラフである。
【図9】本発明の第1の実施形態の電極加工工程におけるエッチング時間と漏れ量に応じたトリミング量の決定を説明する水晶振動子の平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の漏れ量調整エリアと離調度調整エリアの一例を示す水晶振動子の平面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態のエッチング工程における水晶振動子の駆動脚の第2象限と第4象限の漏れ量調整エリアがエッチングされることを説明する拡大断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態のエッチング工程における水晶振動子の駆動脚の第1象限と第3象限の漏れ量調整エリアがエッチングされることを説明する拡大断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態のエッチング工程における離調度に応じた検出脚のエッチング量を説明する拡大断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の水晶振動子の製造方法の工程順を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態の電極剥離工程とエッチング工程を説明する断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の離調度による水晶ウェハーのランク分けを説明する斜視図である。
【図17】本発明の第3の実施形態の水晶振動子の製造方法の工程順を説明するフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施形態の電極加工工程のトリミング加工の一例とエッチング工程における漏れ量推移の想定を示す説明図である。
【図19】本発明の第3の実施形態のエッチング工程における漏れ量推移の一例を示す説明図である。
【図20】本発明の第3の実施形態の追加電極加工工程を示す説明図である。
【図21】本発明の第4の実施形態の水晶振動子の製造方法の工程順を説明するフローチャートである。
【図22】本発明の第4の実施形態の離調度調整エリアの一例を示す水晶振動子の平面図である。
【図23】従来の水晶振動子の一例を示す斜視図である。
【図24】図23で示す従来の水晶振動子の駆動脚の切断線A−A´での断面図である。
【図25】従来の水晶振動子の振動脚の残渣を説明する拡大断面図である。
【図26】従来の水晶振動子のマスクずれによる振動脚の一例を示す拡大断面図である。
【図27】従来の水晶振動子の片面マスクによって製造された振動脚の一例を示す拡大断面図である。
【図28】従来の水晶振動子の離調度と相対出力の関係の一例を説明するグラフである。
【図29】従来の水晶振動子の漏れ量調整と離調度調整の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下図面に基づいて本発明の第1から第4の実施形態を詳述する。なお、第1の実施形態の特徴は、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の漏れ量と離調度の測定工程を実施後、離調度に基づいてエッチング時間を決定し、このエッチング時間と漏れ量に基づいて電極のトリミング量を決定して電極加工工程を実施し、この加工された電極をマスクにして1回のエッチング工程によって漏れ量調整と離調度調整を同時に行う製造方法である。
【0060】
また、第2の実施形態の特徴は、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の電極形成後に離調度測定を実施し、電極剥離を行った後に離調度に基づいてランク分けした水晶ウェハーを一括してエッチングによる離調度調整を行い、その後、再び電極形成工程を実施した後に、第1の実施形態の工程により漏れ量調整と離調度調整を同時に実施して、離調度が適正値から大きく離れた水晶振動子片を調整する製造方法である。
【0061】
また、第3の実施形態の特徴は、第2の実施形態の再電極形成工程後に漏れ量と離調度の測定工程を実施し、一定のエッチング時間に基づいた電極のトリミング量を決定して電極加工工程を実施し、この加工された電極をマスクにして簡略化したエッチング工程によって漏れ量と離調度の調整を同時に行う製造方法である。
【0062】
また、第4の実施形態の特徴は、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の電極形成後に離調度測定を実施し、電極剥離を行わずに離調度に基づいて水晶ウェハーを一括してエッチングによる離調度調整を行い、その後、第1の実施形態の工程、または第3の実施形態の工程を実施して、離調度が適正値から大きく離れた水晶振動子を簡素化した調整工程によって調整する製造方法である。
【0063】
[水晶振動子の形状の説明:図2]
まず、それぞれの実施形態を説明する前に、各実施形態の製造方法で製造される水晶振
動子の形状の一例を図2を用いて説明する。図2は本発明の水晶振動子の製造方法で製造された水晶振動子を模式的に示した斜視図である。なお、説明に関係のない部分、例えば、水晶振動子をパッケージなどの封止部材に封止する際に導電性接着剤等を付着させる固定部分などは省略してある。
【0064】
図2において、10は後述する各実施形態の製造方法で製造された水晶振動子である。この水晶振動子10は、すでに説明した例と同様に水晶ウェハーからエッチング加工によって切り出されて形成されるものである。一例として、振動型ジャイロセンサとして用いられる振動子であり、振動脚として2本の駆動脚11、12と1本の検出脚13とを有する三脚音叉型振動子である。なお、水晶振動子10は、三脚音叉型に限定されず、例えば、二脚音叉型やT型音叉、H型音叉などでもよい。
【0065】
また、14は基部であり、駆動脚11、12と検出脚13とは、この基部14から延設する構造である。20、21は駆動脚11、12の主平面と側面に形成される駆動電極であり、22は検出脚13の主平面と側面とに形成される検出電極である。30は水晶振動子10の漏れ振動を調整する漏れ量調整エリアである。この漏れ量調整エリア30は、駆動脚11、12の長手方向に沿って水晶の素地が露出するエリアである。この漏れ量調整エリア30は、レーザー加工などによって駆動電極20、21の一部がトリミングされることで形成され、その加工された駆動電極をマスクにして後工程のエッチング工程で駆動脚11、12がエッチングされ、水晶振動子10の漏れ振動による漏れ量が調整される。
【0066】
また、検出脚13の主平面の検出電極22が形成されていない部分(検出脚13の主平面の水晶の素地が露出している破線で囲うエリア)は、離調度調整エリア40であり、水晶振動子10の離調度調整のためにエッチング工程でエッチング加工されるエリアである。この離調度調整エリア40は、以降説明する各実施形態では、検出脚13の主平面の大部分を示すように図示するが、この離調度調整エリア40の長さや幅は限定されず、離調度調整範囲などに応じて任意に決めて良い。なお、ここでは図示しないが、水晶振動子10の図面上裏側の主平面にも、漏れ量調整エリア30と離調度調整エリア40は形成されている。
【0067】
このように、駆動脚11、12の漏れ量調整エリア30と検出脚13の離調度調整エリア40を同時にエッチング加工して漏れ振動を抑制し、且つ、離調度を調整することが、本発明の大きな特徴である。なお、この水晶振動子10は、X軸を幅方向に、Y´軸を長手方向に、Z´軸を厚み方向に構成される。また、駆動脚11、12に形成される駆動電極20、21と、検出脚13に形成される検出電極22は、後述するように、主平面に形成されるか側面に形成されるか等で区別して個別の番号を付すが、区別する必要がない場合は、まとめて駆動電極20、21及び検出電極22と記述する。
【実施例1】
【0068】
[第1の実施形態の製造工程順の説明:図1、図2]
第1の実施形態の製造方法の工程順を図1のフローチャートを用いて説明する。なお、各工程の詳細は後述する。また、説明の前提として本実施形態の水晶振動子の製造方法は、単一の水晶ウェハーに複数の水晶振動子片を形成し、水晶振動子の集合体として一括して製造する製造方法を例示する。もちろん、この集合体による一括製造に限定されるものではなく、1つの水晶ウェハーや水晶板に対して1つの水晶振動子を形成する製造方法でも、本実施形態は適応可能である。
【0069】
図1において、まず製造工程の最初に単一の水晶板である水晶ウェハーに耐エッチング用マスク部材を形成し、水晶ウェハーに複数の水晶振動子片の外形形状を形成する(外形形成工程:ST1)。
【0070】
耐エッチング用マスク部材は、例えば、金(Au)を用いることができる。なお、この場合、金の下地にクロム(Cr)を形成してもよい。つまり、耐エッチング用マスク部材は、積層膜構造であってもよい。このように下地にクロム(Cr)を用いることで、水晶と金(Au)との密着性が向上する。このような耐エッチング用マスク部材を形成した後、これをマスクとして、所定のエッチング液を用いて水晶ウェハーをエッチングし、水晶振動子片の外形を形成する。
【0071】
次に、形成された水晶振動子片の振動脚を構成する主平面または側面に電極を形成する(電極形成工程:ST2)。この工程で形成される電極は、図2に示す例では、駆動電極20、21および検出電極22である。
【0072】
次に、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、漏れ振動の漏れ量と離調度を測定する(漏れ量と離調度測定工程:ST3)。なお、漏れ量と離調度測定工程は、水晶ウェハーに形成される全ての水晶振動子片を測定するが、漏れ量と離調度のばらつきが少ない場合などは、抜き取り等で測定を行ってもよい。
【0073】
次に、漏れ量と離調度測定工程で得た測定結果に基づいて振動脚の表面をエッチングするエッチング時間と振動脚の電極の一部を除去するトリミング量を決定する(エッチング時間とトリミング量決定工程:ST4)。ここで、エッチング時間は測定で得た離調度から決定し、トリミング量は、決定されたエッチング時間と測定で得た漏れ量から決定する。
【0074】
次に、決定されたトリミング量に基づいて、各々の水晶振動子片の電極の一部分をトリミングする(電極加工工程:ST5)。この工程でトリミングされる箇所は、図2に示す例では、駆動電極20、21の漏れ量調整エリア30である。
【0075】
次に、決定されたエッチング時間に基づいて、水晶ウェハーをエッチングして漏れ量調整と離調度調整を同時に実施する(エッチング工程:ST6)。この工程でエッチングされる領域は、図2に示す例では、検出脚13の離調度調整エリア40と駆動電極20、21の漏れ量調整エリア30である。
【0076】
すなわち、エッチング工程ST6は駆動脚11、12の漏れ量調整エリア30をエッチングすることで漏れ量を調整する漏れ量調整工程と、検出脚13の離調度調整エリア40をエッチングすることで検出モードの共振周波数を低くして離調度を調整する離調度調整工程との二つの工程によって構成され、この二つの工程を同時に実施する。
【0077】
次に、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、漏れ振動の漏れ量と離調度を再度測定する(漏れ量と離調度測定工程:ST7)。なお、漏れ量と離調度測定工程は、水晶ウェハーに形成される全ての水晶振動子片を測定するが、漏れ量と離調度のばらつきが少ない場合などは、抜き取り等で測定を行ってもよい。
【0078】
次に、漏れ量と離調度測定工程ST7で得た測定結果を所定の規格値と比較し、漏れ量と離調度が規格値以内であるかを判定する(規格値判定工程:ST8)。ここで、肯定判定(漏れ量と離調度が共に所定の規格値以内)であれば、水晶振動子片を封止する封止工程に進み、水晶振動子を完成する。また、否定判定(漏れ量と離調度が所定の規格値以外)であれば、エッチング時間とトリミング量決定工程ST4に戻り、再度、エッチング時間とトリミング量を決定し、工程ST4から工程ST8を繰り返して漏れ量と離調度の調整を行う。
【0079】
ここで、エッチングによる加工オーバーを避けるために、工程ST4で算出されたエッチング時間を短めに決定し、また、算出されたトリミング量を少なめに決定することが出来る。このようにエッチング時間とトリミング量を決定すれば、加工オーバーを防ぐと共に、調整工程を繰り返すことで高精度な調整が可能であるが、工程を繰り返すことは製造工数を増やす結果となるので、調整工程の繰り返しは2回程度までが好ましい。
【0080】
また、規格値判定工程ST8の判定結果によって漏れ量と離調度の調整が終了したならば、各々の水晶振動子片は水晶ウェハーから切り離され、封止部材によって封止されて製品として完成するが、以降の工程は本発明に直接係わらないので、説明は省略する。
【0081】
なお、1枚の水晶ウェハーに形成される複数の水晶振動子片の中で、ある水晶振動子片が規定値以内となり、他の水晶振動子片が規定値以外である場合は、規定値以内となった時点で、その水晶振動子片を水晶ウェハーから切り離して次の封止工程へ送り、規定値以外の水晶振動子片だけが付いた水晶ウェハーを工程ST4へ戻すようにすることもできる。このようにすればスループットが早くなり、作業効率を向上させることができる。
【0082】
[製造工程の詳細説明1:外形形成工程:図3、図4]
次に、第1の実施形態の各工程の詳細を説明する。まず、図3を用いて水晶振動子の外形形成工程ST1の詳細を説明する。図3は、水晶ウェハー上に形成される水晶振動子片の振動脚の断面を模式的に示す断面図である。図3は図2に示した水晶振動子10が2つ並んだ状態を示すものであって、駆動脚11、12と検出脚13との先端方向から基部14の方向(図2の矢印Y´)に向かって見た図である。
【0083】
図3(a)に示す、所定の板厚に調整された平板形状の単一の水晶板である水晶ウェハー1の両面に、図3(b)に示すように、水晶用のエッチング液に耐性のある金属耐食膜2a、2bと、その上にフォトレジスト3a、3bと、を形成する。図3(b)に示す例では、図面を見やすくするために、金属耐食膜2a、2bは、単層膜として記載しているが、前述のとおり、金(Au)とクロム(Cr)との積層膜を用いることができる。これらの金属膜は、知られている蒸着技術やスパッタ技術を用いて形成することができる。また、フォトレジスト3a、3bは、知られているスピンコート技術を用いて形成することができる。
【0084】
次に、図3(c)に示すように、振動子パターンがそれぞれ描画された2枚のフォトマスク4a、4bを水晶ウェハー1の上下に配置し、フォトマスク4a、4bの上から光(矢印B)を照射してフォトレジスト3a、3bを露光する。
【0085】
次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト3a、3bの現像を行い、形成したレジストパターンをマスクとして金属耐食膜2a、2bをパターニングし、耐エッチング用マスク部材であるエッチングマスク5a、5bを形成する。金属耐食膜2a、2bを金(Au)とクロム(Cr)との積層膜を用いたときは、これら2つの金属膜それぞれをエッチングする。例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムとの混合溶液を用いて、金(Au)をエッチングする。水洗後、硝酸第2セリウムアンモニウム溶液を用いて、クロム(Cr)をエッチングする。
【0086】
次に、図3(e)に示すように、フォトレジスト3a、3bを剥離後、表裏両面にエッチングマスク5a、5bの形成された水晶ウェハー1を水晶用エッチング液であるフッ酸系のエッチング液に浸漬すると、エッチングマスク5a、5bに覆われていない部分の水晶が表裏両側から溶解する。その後、エッチングマスク5a、5bを除去することによって、水晶振動子片の振動脚である駆動脚11、12と検出脚13とが得られる。水晶用エッチング液は、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合溶液を用いることができる
。なお、図3に示す例では、振動脚の断面のみを示しているが、実際にはこの外形形成工程ST1によって、図2に示す水晶振動子10の外形の全体が形成される。
【0087】
図4は、この外形形成工程ST1によって水晶ウェハー1に形成された複数の水晶振動子片7の様子を説明するために模式的に示す斜視図である。切断線C−C´については後述する。この複数の水晶振動子片7は、エッチングによって溶解された溶解部8から切り出されたように形成され、個々の水晶振動子片7は、水晶ウェハー1と連結部9によって結合されている。なお、連結部9は、調整工程が終了した後に切断される部分であって、いわゆる折り取り部と呼ばれる部分である。そして、連結部9が切断されると、水晶振動子片7は水晶ウェハー1から分離して図2に示す水晶振動子10として完成する。
【0088】
また、図4では、1枚の水晶ウェハー1に6個の水晶振動子片7を形成する例を示しているが、この個数は図4の例に限定されるものではない。水晶振動子片7は、得たい水晶振動子の性能や特性によりそのサイズや形状が選択され、それに伴って水晶ウェハー1のサイズが決まるためである。もちろん、1枚の水晶ウェハー1に形成する水晶振動子片7の数が多ければ、多数の水晶振動子を一括して製造できるため、製造コストを低減することができる。
【0089】
[製造工程の詳細説明2:電極成形工程:図5、図6]
次に、図5を用いて電極形成工程ST2の詳細を説明する。図5は、図4に示す切断線C−C´での断面を模式的に示した断面図であって、駆動脚11、12と検出脚13との断面を示した図である。
【0090】
図5(a)に示す、駆動脚11、12と検出脚13との表面に、図5(b)に示すように、金属膜200と、その上にフォトレジスト300と、を形成する。図5(b)に示す例では、図面を見やすくするために、金属膜200は、単層膜として記載しているが、クロム(Cr)を下地にしてその上に金(Au)を設ける積層膜とすることができる。なお、金属膜200の厚みは、一例として下地を含んで1500Å程度であるが、これより薄くても厚くても良い。
【0091】
この金属膜200は、知られている蒸着技術やスパッタ技術を用いて形成することができる。また、フォトレジスト300は、知られているスプレー法や電着法などを用いて形成することができる。
【0092】
次に、図5(c)に示すように、駆動脚11、12と検出脚13とに設ける電極の形状がそれぞれ描画された2枚のフォトマスク400a、400bを水晶ウェハー1の上下に配置し、フォトマスク400a、400bの上から光(矢印B)を照射してフォトレジスト300を露光する。なお、図5(c)では、光を斜めから照射する、いわゆる斜め露光を行う例を示している。
【0093】
次に、図5(d)に示すように、フォトレジスト300の現像を行い、形成したレジストパターンをマスクとして金属膜200をパターニングし、駆動電極20a、20b、20c、20d、21a、21b、21c、21dと検出電極22a、22b、検出GND電極22cとを形成する。
【0094】
ここで、図6を用いて各電極の接続例を説明する。図6は、電極形成工程ST2によって振動脚である駆動脚11、12と検出脚13とに形成される電極の接続の一例を示す図である。駆動脚11の主平面である対向する2面に駆動電極20a、20bが形成され、駆動脚12の主平面である対向する2面に駆動電極21c、21dが形成されている。また、駆動脚11の側面である対向する2面に駆動電極21a、21bが形成され、駆動脚
12の側面である対向する2面に駆動電極20c、20dが形成されている。
【0095】
これらの駆動電極20a、20b、20c、20dは、それぞれ電気的に接続されて駆動電極端子20eとして外部に出力している。また、駆動電極21a、21b、21c、21dも、それぞれ電気的に接続されて駆動電極端子21eとして外部に出力している。
【0096】
また、検出脚13には、その角の部分に対となる検出電極22a、22bが形成され、それぞれ検出電極端子22d、22eとして外部に出力している。また、検出電極22a、22bに対向する面の検出GND電極22cは、検出GND電極端子22fとして外部に出力しており、図示しない回路のGND(0V)に接続している。もちろん、図6に示す電極構造または電極同士の接続構造は、これに限定されず、水晶振動子の仕様に応じて任意に決定することができる。
【0097】
なお、以上の説明に用いた図3、図4、図5、図6に示す例では、駆動脚11、12と検出脚13とのそれぞれの側面は、前述したように残渣によって平面ではないが、図示しやすいように残渣の形状を省略している。
【0098】
[製造工程の詳細説明3:漏れ量と離調度測定工程:図7]
次に、図7を用いて漏れ量と離調度測定工程ST3を説明する。図7は、漏れ量と離調度測定工程と後述する電極加工工程を実施するための漏れ量と離調度測定システムおよび電極加工システムの一例を示している。
【0099】
図7において、7a〜7fは水晶振動子片である。水晶振動子片7a〜7fが形成された水晶ウェハー1は、XYステージ60に載せられ固定されている。61は複数の電極端子62を有するプローブであり、XYステージ60の上部に配設されている。このプローブ61の電極端子62は、水晶ウェハー1の水晶振動子片7a〜7fに形成される駆動電極端子20e、21eと検出電極端子22d、22eおよび検出GND電極端子22f(図6参照)に電気的に接触する。
【0100】
また、63は漏れ量と離調度測定及び電極加工を実施する制御部であり、接続ケーブル64を介して、プローブ61に信号の入出力を行う。65はXYステージ60を駆動する駆動部であり、制御部63からの制御信号に基づいてXYステージ60を駆動し、水晶ウェハー1をX方向、又はY方向に移動して、プローブ61が全ての水晶振動子片のそれぞれの電極に接触できるように動作する。また、66は情報を記憶するメモリであり、制御部63に接続されて、水晶ウェハー1のすべての水晶振動子片7a〜7fの漏れ量情報や離調度情報をそれぞれの水晶振動子片の位置情報と共に記憶する。
【0101】
次に、漏れ量と離調度測定システムの動作を説明する。図7において、制御部63は駆動部65に制御信号を送ってXYステージ60を駆動し、水晶ウェハー1に形成される所定の水晶振動子片7a〜7fの電極がプローブ61の直下に位置するように水晶ウェハー1を移動させる。図7に示す例では、水晶振動子片7fがプローブ61の真下に位置している。
【0102】
次に、プローブ61は図示しない昇降手段によって降下し、電極端子62が水晶振動子片7fの各電極に接触する。次に、制御部63は、水晶振動子片7fを振動させる駆動信号を接続ケーブル64を介してプローブ61に送り、水晶振動子片7fの駆動電極端子20e、21eに駆動信号が供給されて水晶振動子片7fは自励発振して振動を開始する。
【0103】
次に、制御部63は、水晶振動子片7fの検出電極端子22d、22eから検出脚13の振動による検出信号をプローブ61を介して入力し、この検出信号から漏れ信号成分を
検出して、その漏れ量を水晶振動子片7fの位置関係情報と共にメモリ66に記憶する。
【0104】
また、制御部63は、駆動脚11、12の共振周波数と検出脚13の共振周波数を測定して離調度を算出し、前述の漏れ量データと共にメモリ66に記憶する。
【0105】
すなわち、この漏れ量と離調度測定工程ST3の測定結果は、測定した水晶振動子片7の漏れ量と離調度、及びその水晶振動子片7の位置関係情報と、で構成している。なお、水晶振動子片7の位置関係情報は、XYステージ60の所定の原点からのX軸位置、Y軸位置として計測される位置情報である。また、漏れ量測定は当然であるが角速度を印加しない状態で行われる。
【0106】
次に、制御部63は、ひとつの水晶振動子片7の測定が終わったならば、駆動部65に制御信号を送ってXYステージ60を駆動し、隣に位置する水晶振動子片7の電極がプローブ61の直下に位置するように水晶ウェハー1を移動させる。例えば、水晶振動子片7fの測定が終了したならば、隣の水晶振動子片7eがプローブ61の真下に位置するようにXYステージ60を駆動する。以降、水晶ウェハー1に形成される水晶振動子片を順次駆動して漏れ量と離調度を測定し、水晶振動子片7a〜7fの個々の漏れ量と離調度、及び位置関係情報とをメモリ66に記憶する。この場合、メモリ66には、6つの水晶振動子片7の漏れ量と離調度、及びそのデータに対応した6つの水晶振動子片7の位置関係情報が記憶される。
【0107】
また、水晶ウェハー1に設けてある水晶振動子片7の全ての漏れ量と離調度を測定しなくてもよい。例えば、水晶ウェハー1の漏れ量と離調度のばらつきが少ないと予測できる場合は、水晶振動子片7aを測定し、その漏れ量と離調度が水晶振動子片7b〜7fの漏れ量と離調度だと仮定することもできるのである。このような仮定は、過去に測定した水晶ウェハーや他の水晶ウェハーの情報、例えば、水晶ウェハー1の膜厚や外形形成工程ST1のエッチング条件などを用いることでなすことができる。この場合、メモリ66には、1つの水晶振動子片の漏れ量と離調度、6つそれぞれの水晶振動子片の位置関係情報と、が記憶される。
【0108】
また、水晶ウェハー1に設けてある水晶振動子片7を選択する、いわゆる抜き取り測定を行ってもよい。例えば、水晶ウェハー1に設けてあるいずれかの水晶振動子片の1つ、または予め決められた個数の水晶振動子片をランダムに選んで測定し、その平均値を水晶ウェハー1の漏れ量と離調度として記憶してもよいのである。この場合、メモリ66には、選択して測定した個数の水晶振動子片の漏れ量と離調度、6つの水晶振動子片の位置関係情報と、が記憶される。
【0109】
[製造工程の詳細説明4:エッチング時間とトリミング量決定工程:図8、図9]
次に、エッチング時間とトリミング量決定工程ST4を説明する。図8は、測定した離調度に応じた水晶振動子片のエッチング時間の決定方法を説明するグラフである。図8において、縦軸は測定した水晶振動子片の離調度Δfであり、この縦軸上の離調度Δf1は測定した離調度が比較的小さい値の場合を示し、離調度Δf2は測定した離調度が中位の値の場合を示し、離調度Δf3は測定した離調度が比較的大きな値の場合を示している。また、Δf0は水晶振動子として適正な離調度である目標離調度を示し、この目標離調度Δf0を中心として所定の範囲内に収まるように水晶振動子片7の離調度Δfは調整されることが好ましい。
【0110】
なお、目標離調度Δf0は、前述したように、水晶振動子の出力変動が小さく、且つ、S/N比が良好となるように比較的大きな出力が得られる離調度の値に設定される。この目標離調度Δf0を中心とした離調度の所定の範囲は、一例として350Hz〜550H
z位である。
【0111】
また、図8の横軸は、測定した離調度Δfを目標離調度Δf0に調整するために必要な水晶振動子片のエッチング時間tである。なお、このエッチング時間tとは、水晶振動子片の離調度を調整するために、前述した検出脚13の離調度調整エリア40をエッチング工程ST6でエッチング加工するための時間である。
【0112】
ここで、横軸上のエッチング時間t1は水晶振動子片7の離調度Δf1を目標離調度Δf0に調整するために必要な時間であり、エッチング時間t2は水晶振動子片7の離調度Δf2を目標離調度Δf0に調整するために必要な時間であり、エッチング時間t3は水晶振動子片7の離調度Δf3を目標離調度Δf0に調整するために必要な時間である。
【0113】
ここで、水晶振動子片7のエッチング時間tと水晶振動子片7の表面が腐食してエッチングされる深さは比例関係にあり、エッチング時間tの違いは、エッチング深さの違いにそのまま反映される。すなわち、離調度Δf1は目標離調度Δf0に比較的近いので、必要となるエッチング時間t1は短くて良く、離調度Δf2は目標離調度Δf0に対して中程度離れているので、必要となるエッチング時間t2は中程度の時間であり、離調度Δf3は目標離調度Δf0に対して大きく離れているので、必要となるエッチング時間t3は最も長い時間となる。
【0114】
この離調度Δf1、Δf2、Δf3とエッチング時間t1、t2、t3との関係をエッチング時間テーブルとして予め用意する。すなわち、ある水晶振動子片7を漏れ量と離調度測定工程ST3で測定して離調度Δf1が得られたとすると、エッチング時間とトリミング量決定工程ST4において、制御部63(図7参照)は、エッチング時間テーブルより離調度Δf1に対応するエッチング時間t1(エッチング深さ:小)を選択する。
【0115】
また同様に、測定によって離調度Δf2が得られたとすると、制御部63は、エッチング時間テーブルより離調度Δf2に対応するエッチング時間t2(エッチング深さ:中)を選択する。同様に、離調度Δf3が得られたとすると、制御部63は、エッチング時間テーブルより離調度Δf3に対応するエッチング時間t3(エッチング深さ:大)を選択する。
【0116】
この動作によって、エッチング時間とトリミング量決定工程ST4は、まず、離調度Δfに応じたエッチング時間tを決定することが出来る。すなわち、測定で得られた離調度Δfを目標離調度Δf0に調整するために必要なエッチング時間tを決定する。なお、図8では、便宜上3種類の離調度Δfに応じたエッチング時間tを示しているが、実際には、エッチング時間テーブル上で離調度Δfの測定値に応じて細かくエッチング時間を設定して良い。これにより、高精度の離調度調整を行うことが可能となる。
【0117】
次に、エッチング時間とトリミング量決定工程ST4は、決定したエッチング時間tと、測定した漏れ量の値から、駆動電極20、21の一部を加工するトリミング量を決定する。図9は、決定したエッチング時間tと測定して得た漏れ量の値から、水晶振動子片7の駆動電極20、21のトリミング量がどのように決定されるかを示す一例である。
【0118】
図9(a)は、測定した離調度からエッチング時間t3が決定された場合(すなわち、離調度Δf3の場合:図8参照)の3種類のトリミング量Trを示している。図9(a)において、測定された漏れ量が大きい場合、そのトリミング量Tr31は、3種類の中で最も大きいトリミング量となる。また、測定された漏れ量が中程度の場合は、そのトリミング量Tr32は、3種類の中で中程度のトリミング量となる。また、測定された漏れ量が小さい場合は、そのトリミング量Tr33は、3種類の中で最も小さいトリミング量と
なる。
【0119】
また、図9(b)は、測定した離調度からエッチング時間t1が決定された場合(すなわち、離調度Δf1の場合:図8参照)の3種類のトリミング量Trを示している。図9(b)において、測定された漏れ量が大きい場合は、そのトリミング量Tr11は、3種類の中で最も大きいトリミング量となる。また、測定された漏れ量が中程度の場合は、そのトリミング量Tr12は、3種類の中で中程度のトリミング量となる。また、測定された漏れ量が小さい場合は、そのトリミング量Tr13は、3種類の中で最も小さいトリミング量となる。
【0120】
これらのトリミング量Tr31〜Tr33、Tr11〜Tr13に基づいて、後工程である電極加工工程ST5で駆動電極20、21がトリミングされるが、このトリミングされる領域が前述の漏れ量調整エリア30である。なお、トリミング量Trは、漏れ量調整エリア30の幅が一定であることを前提にして、漏れ量調整エリア30の長さを示している。
【0121】
ここで、図9(a)のエッチング時間t3が決定された場合のトリミング量Tr31〜Tr33と、図9(b)のエッチング時間t1が決定された場合のトリミング量Tr11〜Tr13とを比較すると、同じ漏れ量であれば、エッチング時間t3が決定された場合のトリミング量の方が小さく(トリミング長さが短い)、エッチング時間t1が決定された場合のトリミング量の方が大きい(トリミング長さが長い)ことが理解できる。
【0122】
これは、エッチング時間t3が決定された場合は、エッチング加工時間が長いので、漏れ量調整エリア30のエッチング深さが深くなる。このため、エッチング時間t3が決定された場合は、加工されるエッチング深さに応じてトリミング量を減らし、漏れ量調整エリア30の面積を狭めることで、決定されたエッチング時間と測定された漏れ量に応じたトリミング量を決定するのである。
【0123】
また、エッチング時間t1が決定された場合は、エッチング加工時間が短いので、漏れ量調整エリア30のエッチング深さが浅くなる。このため、エッチング時間t1が決定された場合は、加工されるエッチングの浅さに応じてトリミング量を増やし、漏れ量調整エリア30の面積を広げることで、決定されたエッチング時間と測定された漏れ量に応じたトリミング量を決定するのである。また、エッチング時間t2が決定された場合は、図9では図示していないが、エッチング時間t3の場合とエッチング時間t1の場合の中間位のトリミング量を、決定されたエッチング時間と測定された漏れ量に応じて決定する。
【0124】
すなわち、図9(a)のトリミング量Tr31〜Tr33と、図9(b)のトリミング量Tr11〜Tr13は大きく異なる理由は、両者のエッチング時間が異なるからである。これは、漏れ振動を調整して主軸の傾きを解消する要素は、漏れ量調整エリア30のエッチング深さとトリミング量(エッチングの長さ)によって決まるからである。ここで、漏れ量調整エリア30のエッチング深さとトリミング量の積を漏れ量調整エリア30のエッチング量と定義する。
【0125】
このように、漏れ量を調整するための漏れ量調整エリア30のトリミング量Trは、その水晶振動子片7の離調度を調整するエッチング時間tと、その水晶振動子片7の漏れ量の測定値の二つの要素によって決定される。そして、同じ漏れ量であれば、離調度に応じて決定されるエッチング時間tが異なっても、漏れ量調整エリア30のエッチング量が同じになるようにトリミング量が決定される。
【0126】
[製造工程の詳細説明5:電極加工工程:図7、図10]
次に、決定されたトリミング量に基づいて、駆動電極20、21をトリミングする電極加工工程ST5を説明する。この電極加工工程ST5は、前述の漏れ量と離調度測定システムおよび電極加工システム(図7参照)によって、水晶ウェハー1の各々の水晶振動子片7a〜7fの電極にレーザ光を照射して実施する。
【0127】
図7において、XYステージ60上の水晶ウェハー1の所定の水晶振動子片の駆動電極部分に図示しないレーザ照射器によってレーザ光を照射し、決定したトリミング量に応じて電極の一部を除去する。
【0128】
ここで、メモリ66が1枚の水晶ウェハー1上のすべての水晶振動子片7a〜7fのトリミング量を位置関係情報と共に記憶し、制御部63が記憶情報に基づいてレーザ光をすべての水晶振動子片7a〜7fに次々と照射し、一括してトリミングを行うならば、作業効率が向上する。また、水晶振動子片の一つ一つに対して、漏れ量と離調度測定、エッチング時間とトリミング量決定、電極加工を順次繰り返し行っても良い。この作業手順は、水晶ウェハー1上の水晶振動子片の数量や、測定値のばらつき等に応じて柔軟に変更することができる。
【0129】
次に、この電極加工工程ST5によって加工された電極の状態を図10を用いて説明する。図10は、水晶ウェハー1に複数形成されるうちの一つの水晶振動子片7の平面図であり、図7に示す水晶振動子片7a〜7fのいずれかを示すものである。そして、上述の電極加工工程ST5によって駆動電極にレーザ光が照射され、駆動電極の一部分が除去された一例を示している。図10に示す例では、レーザ光(図示せず)をスポット状の円形状にして照射している。
【0130】
ここで、駆動脚11の主平面に形成される駆動電極20aと、同じく駆動脚12の主平面に形成される駆動電極21cとの所定の場所に、スポット状のレーザ光を連続して照射し、電極の幅方向の一方の端部が、漏れ量に応じて駆動脚11、12の長手方向に連続して除去される。この電極が除去された部分は、水晶振動子片7の水晶の素地が露出し、略長方形状の漏れ量調整エリア30が形成される。
【0131】
この漏れ量調整エリア30は、図示するように、その漏れ量調整エリア30の幅方向の略中心G2が駆動脚11、12の幅方向の略中心G1に対して駆動脚11、12の幅方向にずれて形成される。
【0132】
すなわち、漏れ量調整エリア30を後工程のエッチング工程ST6でエッチングして削り、断面主軸の方向を変化させ、振動方向を調整して漏れ振動を抑制するのであるから、漏れ量調整エリア30は、駆動脚11、12の主軸方向が変わるような部分に設けなくてはならない。主軸方向は、断面の重心から離れた位置にある程、変化の度合いが大きいため、漏れ量調整エリア30の幅方向の略中心G2が駆動脚11、12の幅方向の略中心G1に対して駆動脚11、12の幅方向にずれて形成される。
【0133】
なお、図10に示す例では、レーザ光を照射して除去する漏れ量調整エリア30は、図面に向かって駆動電極20a、21cの左側の端部に設ける例を示したが、もちろんこれは一例である。場合によっては漏れ量調整エリア30を右側の端部に設けなければならない例もある。いずれにせよ、このレーザ光を照射して除去する漏れ量調整エリア30は、駆動脚11、12の幅方向にずれていなければならない。
【0134】
また、この漏れ量調整エリア30の長手方向の長さが、前述したトリミング量Trであり、レーザ光は決定されたトリミング量Trに応じて照射される。また、漏れ量調整エリア30は水晶振動子片7の裏面にも形成されるが、その説明は後述する。また、漏れ量調
整エリア30は、ここに示す例では、水晶振動子片7の基部14に近い側に形成されているが、これに限定されず、駆動脚11、12の先端付近に形成しても良い。また、検出脚13の離調度調整エリア40についての説明は後述する。
【0135】
[漏れ量調整エリアによる漏れ振動調整方法の説明:図11、図12]
次に、外形形成のエッチング時のマスクずれを原因とする漏れ振動調整の具体例を説明する。図11は水晶ウェハー1に形成された水晶振動子片7の一方の駆動脚11の断面の一例であり、図10の切断線D−D´での断面を模式的に示した拡大断面図である。
【0136】
ここで、水晶ウェハー1をエッチング加工してできた水晶振動子片7の振動脚には残渣があり、且つ、水晶ウェハー1から水晶振動子片7を切り出すためのエッチングマスクが上下で位置ずれ量eだけずれた(裏面マスクが図面上右側にずれた)と仮定すると、駆動脚11の断面は図示するように上下左右非対称となり、駆動脚11の主軸35(破線で示す)はX軸に平行にならずズレ角θ1を持つ。(このような駆動脚の形状については、図26を用いて説明した従来技術の水晶振動子の駆動脚101の断面と同様である。)これにより、駆動脚11は斜め振動となって漏れ振動が発生する。
【0137】
前述した漏れ量と離調度測定工程ST3は、この漏れ振動を検出して漏れ量を測定し、電極加工工程ST5は、駆動脚11の主平面の表面と裏面とに形成されている駆動電極20a、20bの一部分を加工して電極が取り除かれた漏れ量調整エリア30a、30bを形成するものである(破線で示す部分)。
【0138】
また、この漏れ量調整エリア30a、30bの駆動脚11に対する位置関係は、駆動脚11の表面の駆動電極20a側の漏れ量調整エリア30aは、駆動電極20aの図面上左側に偏って形成され、駆動脚11の裏面の駆動電極20b側の漏れ量調整エリア30bは、駆動電極20bの図面上右側に偏って形成される。これは、エッチングマスクの上下位置ずれeによって偏って形成された振動脚断面の偏りを補正するためである。この漏れ量調整エリア30a、30bが、後述するエッチング工程ST6でエッチングされることによって、断面の偏りが補正され、主軸35が主軸35´(実線)のように修正されることで振動方向が調整されて漏れ振動が抑制される。ただし、ここでいう断面主軸とは、振動脚長手方向全体での平均について述べている。
【0139】
ここで、駆動脚11の表面と裏面との駆動電極20a、20bで加工される漏れ量調整エリア30a、30bの位置関係をまとめて述べると、図11において漏れ量調整エリア30a、30bは、駆動脚11の振動軸中心を原点Pとし、この原点Pを通り直交する2つの軸x、yで定義される第1象限、第2象限、第3象限、第4象限のうち、原点Pを挟み対象となる象限に設けるように加工され形成される。
【0140】
このように、漏れ量調整エリア30a、30bが、駆動脚11の表裏両面の電極に対して対角に形成されることで、電極の除去面積がわずかであっても駆動脚に対して影響を与えて確実に振動方向を調整することができる。
【0141】
図11に示す漏れ量調整エリア30a、30bは、一例として第2象限と第4象限とに形成されるが、これは外形形成のエッチングにおいて、裏面マスクが表面マスクに対して図面上右方向にずれていたためであり、ずれて偏って形成された駆動脚11の水晶片を打ち消すように、漏れ量調整エリア30a、30bを第2象限と第4象限とに形成することで、その主軸35の傾きを修正することができるからである。なお、漏れ量調整エリア30a、30bに示すラインE1、E2、E3は、エッチング時間tの違いによるエッチング深さを示しているが、詳細な説明は後述する。
【0142】
一方、図12は外形形成のエッチングマスクが図11とは逆方向に、すなわち、裏面側のマスクが図面上左側に位置ずれ量eだけずれた場合を示す水晶振動子片7の駆動脚11の断面図である。この場合は、図示するようにずれて偏って形成された水晶部分を打ち消すように、漏れ量調整エリア30a、30bを第1象限と第3象限とに形成すればよい。すなわち、第1象限と第3象限とに形成された漏れ量調整エリア30a、30bによって、振動脚11の上下非対称が補正され、依然として断面形状は上下左右非対称であるが、振動脚全体の平均としての主軸35は主軸35´(実線)のように修正されて漏れ振動が抑制される。なお、図12のエッチング深さを示すラインは省略している。
【0143】
[製造工程の詳細説明6:エッチング工程:図10、図11、図13]
次に漏れ量調整エリア30と離調度調整エリア40をエッチング加工するエッチング工程ST6を説明する。エッチング工程ST6は、前工程であるエッチング時間とトリミング量決定工程ST4、及び電極加工工程ST5の終了後、決定されたエッチング時間に基づき、電極加工工程ST5で加工された電極をマスクにして、水晶ウェハー1をエッチング液に浸漬して一括した時間エッチングを行う。
【0144】
ここで、水晶振動子片7がエッチング工程ST6でエッチングされる領域を図10によって説明する。図10において、水晶振動子片7がエッチング液に浸漬されると、駆動電極20a、21aや検出電極22aなどの電極で覆われていない全ての水晶の素地の領域がエッチング液に浸漬されるが、一般にZカット水晶ウェハーを用いた場合、水晶の厚み方向であるZ´軸方向のエッチング速度が速く、X軸方向のエッチング速度はそれよりも遅い特性を有している。これにより、Z´軸方向である漏れ量調整エリア30と離調度調整エリア40の領域がエッチングによる腐食が進み、水晶振動子片7の側面であるX軸方向の腐食は進まない。
【0145】
ここで、図11の漏れ量調整エリア30aと30bに示しているラインE1、E2、E3は、エッチング時間t1、t2、t3によるエッチング深さの違いを示している。すなわち、ラインE1は、短いエッチング時間t1によって漏れ量調整エリア30aと30bの表面が腐食して加工されたエッチング深さを示している。また、ラインE2は、中位のエッチング時間t2によって漏れ量調整エリア30aと30bが加工されたエッチング深さを示しており、ラインE3は、長いエッチング時間t3によって漏れ量調整エリア30aと30bが加工されたエッチング深さを示している。
【0146】
このように、エッチング工程ST6でのエッチング時間を変えることによって、漏れ量調整エリア30aと30bの水晶の素地を腐食させる深さを変えることが出来るので、エッチング時間の違いによってエッチング量が変化し、水晶振動子片7の漏れ振動に対する影響度を変えて、漏れ振動を調整することが出来る。なお、漏れ量の調整は、前述したように、このエッチング時間と共に、漏れ量調整エリア30の長手方向の長さであるトリミング量Trの二つの要素を変えることによって行われる。このように、エッチング工程ST6は、エッチング時間と漏れ量に応じて加工された電極をマスクとした外形形状のエッチングを行う漏れ量調整工程を含んでいる。
【0147】
次に、エッチング工程ST6による離調度調整について説明する。図10で示すように、水晶振動子片7の検出脚13には、主平面に水晶の素地が露出した離調度調整エリア40が形成されている。この離調度調整エリア40は、図示するように、検出脚13の主表面の大部分を占めているので、離調度調整エリア40の表面がエッチング加工によって腐食されると、検出脚13の厚みが僅かではあるが薄くなり、面外振動である検出モードの共振周波数に影響を及ぼすことが出来る。
【0148】
図13は水晶ウェハー1に形成された水晶振動子片7の検出脚13の断面の一例であり
、図10の切断線D−D´での断面を模式的に示した拡大断面図である。なお、残渣は省略して図示している。図13において、40aは検出脚13の表側の主平面に形成された離調度調整エリアであり、40bは検出脚13の裏側の主平面に形成された離調度調整エリアである。すなわち、離調度調整エリア40aは、検出電極22aによって覆われていない水晶の素地が露出したエリアであり、離調度調整エリア40bは、検出電極22bによって覆われていない水晶の素地が露出したエリアである。
【0149】
なお、離調度調整エリア40aと40bに示すラインE1、E2、E3は、エッチング時間の違いによるエッチング深さの違いを示している。すなわち、漏れ量調整エリア30aと30bと同様に、離調度調整エリア40aと40bのラインE1は、短いエッチング時間t1によって離調度調整エリア40aと40bの表面が腐食して加工されたエッチング深さを示している。また、ラインE2は、中位のエッチング時間t2によって離調度調整エリア40aと40bが加工されたエッチング深さを示しており、ラインE3は、長いエッチング時間t3によって離調度調整エリア40aと40bが加工されたエッチング深さを示している。
【0150】
そして、たとえば、離調度調整エリア40aと40bがラインE3までエッチングされれば、検出脚13のZ´軸方向の実質的な厚みは、図示するように、離調度調整エリア40aと40bが対向する部分の厚みTとなる。
【0151】
このように、エッチング工程ST6でのエッチング時間tを変えることによって、離調度調整エリア40aと40bのエッチング深さを変えることが出来るので、エッチング時間tを調整することで、水晶振動子片7の検出脚13のZ´軸方向の厚みTを変化させて、検出モードの共振周波数を変えることが出来る。
【0152】
すなわち、検出脚13の厚みTが薄くなれば、共振周波数を低くすることが出来るので、検出脚13の共振周波数と駆動脚11、12の共振周波数の差である離調度を、このエッチング工程ST6によって検出脚13をエッチング加工し、検出脚モードの共振周波数を下げることで、適正な離調度に調整することが出来る。なお、検出脚モードの共振周波数が駆動脚11、12の共振周波数よりある程度高くなるように、予め水晶振動子片7の外形形状を加工することで、離調度のずれの方向を限定できるので、エッチングによる離調度調整を容易に行うことが出来る。このように、エッチング工程ST6は、水晶振動子片の外形形状のエッチングを行って離調度を調整する離調度調整工程を含んでいる。
【0153】
[製造工程の詳細説明7:電極加工工程とエッチング工程の繰り返し:図1]
次に、エッチング工程ST6が終了したならば、図1のフローチャートの説明で前述したように、漏れ量と離調度測定工程ST7で再度漏れ量と離調度を測定し、規格値判定工程ST8で判定して、必要に応じてエッチング時間とトリミング量決定工程ST4、電極加工工程ST5、エッチング工程ST6を繰り返して良い。なお、工程ST4からST6を繰り返す場合において、更にトリミング量を増やす必要がないときは、電極加工工程ST5はスキップして、エッチング工程ST6だけを実施しても良い。
【0154】
以上のように第1の実施形態は、まず、水晶振動子の離調度と漏れ量を測定し、離調度に応じたエッチング時間を決定し、決定したエッチング時間と測定した漏れ量とに応じて駆動電極を加工し、この加工された電極をマスクとしてエッチングを行うことによって、1回のエッチング工程で、漏れ量調整と離調度調整を同時に実施出来ることが、最大のメリットである。これにより、調整工程の無駄を省いて大幅に簡素化した水晶振動子の製造方法を実現できる。
【0155】
また、漏れ量調整と離調度調整のためのエッチング加工は、水晶ウェハーをエッチング
液に浸漬して実施出来るので、調整工程を水晶ウェハー単体で一括して行うことが出来、水晶振動子の大量生産を容易に実現することが出来る。また、漏れ量調整と離調度調整を共にエッチングによって行えるので、水晶振動子片に外力を加えることなく微細な調整が可能であり、特性ばらつきが少ない高性能な水晶振動子を製造できる。
【実施例2】
【0156】
[第2の実施形態の製造工程順の説明:図14]
次に、第2の実施形態の製造方法の工程順を図14のフローチャートを用いて説明する。第2の実施形態は、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の電極形成後に離調度測定を実施し、水晶振動子片の表面を均一にエッチングするために電極剥離を行った後、水晶ウェハーを一括してエッチングによる離調度調整を行い、その後、再び電極形成工程を実施した後、第1の実施形態の工程により漏れ量調整と離調度調整を同時に実施して、離調度が適正値から大きく離れた水晶振動子片を調整する製造方法である。
【0157】
なお、各工程の詳細は後述するが、工程の一部は、第1の実施形態の工程と同様であるので、重複する説明は一部省略する。また、説明の前提として本実施形態の水晶振動子の製造方法は、単一の水晶ウェハーに複数の水晶振動子を形成し、水晶振動子の集合体として一括して製造する製造方法を例示する。もちろん、この集合体による一括製造に限定されるものではなく、1つの水晶ウェハーや水晶板に対して1つの水晶振動子を形成する製造方法でも、本実施形態は適応可能である。
【0158】
図14において、まず製造工程の最初に単一の水晶板である水晶ウェハーに耐エッチング用マスク部材を形成し、水晶ウェハーに複数の水晶振動子片の外形形状を形成する(外形形成工程:ST10)。この外形形成工程ST10は、前述の第1の実施形態の外形形成工程ST1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0159】
次に、形成された水晶振動子片の振動脚を構成する主平面または側面に電極を形成する(電極形成工程:ST11)。この電極形成工程ST11は、前述の第1の実施形態の電極形成工程ST2と同様であるので詳細な説明は省略する。なお、この電極形成工程ST11で形成される電極は、後工程である離調度測定工程で離調度を測定するための測定用電極である。
【0160】
次に、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、離調度を測定する(離調度測定工程:ST12)。この離調度測定工程ST12は、前述の第1の実施形態の漏れ量と離調度測定工程ST3の離調度測定と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0161】
次に、離調度測定工程ST12で測定した各水晶振動子片の離調度を水晶ウェハー毎に平均化し、この離調度の平均化データに基づいて、水晶ウェハーを複数のランクにランク分けする(離調度ランク分け工程:ST13)。そして、ランク毎に、後工程で行うエッチングのエッチング時間を決定する。
【0162】
次に、ランク分けした水晶ウェハーの測定用電極のすべてを剥離して、水晶ウェハーの全体を水晶の素地が露出した状態に戻す(電極剥離工程:ST14)。
【0163】
次に、離調度に基づいてランク分けされ、且つ、電極剥離された水晶ウェハーをランク毎に決定されたエッチング時間に基づいて、時間エッチングを行う(エッチング工程:ST15)。このエッチングによって検出脚の共振周波数が変化して離調度が調整される。
【0164】
次に、離調度が調整された水晶ウェハー上の各水晶振動子片に、再び電極を形成する(電極形成工程:ST16)。この電極形成工程ST16は、前述の第1の実施形態の電極
形成工程ST2と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0165】
次に、前述の第1の実施形態のフローチャート(図1参照)で示した漏れ量と離調度測定工程ST3へ進み、以降、工程ST3から工程ST8を実施して、漏れ量調整と離調度調整を行い、その後、封止工程に進んで水晶振動子を完成する。
【0166】
このように、第2の実施形態の水晶振動子の製造方法は、製造工程が多少長くなるが、適正な離調度から大きく離れ、且つ、離調度のばらつきが大きい水晶振動子片を調整して良品とする製造方法として有効である。すなわち、本実施形態は工程ST10から工程ST16を実施して、適正な離調度から大きく離れている離調度をランク毎の時間エッチングで適正な離調度に近い離調度に、ばらつきを吸収しながら調整する。この本実施形態の工程ST10から工程ST16は、離調度の粗調整工程である。そして、離調度の粗調整工程終了後に実施する第1の実施形態の工程ST3から工程ST8は、離調度の微調整工程と漏れ量調整工程として実施される。
【0167】
[第2の実施形態の製造工程の詳細説明:図15、図16]
次に、第2の実施形態の各工程の詳細を説明する。なお、第1の実施形態の工程と重複する説明は省略し、第2の実施形態の特有の工程である離調度ランク分け工程ST13、電極剥離工程ST14、エッチング工程ST15を中心に詳細説明を行う。
【0168】
図15は、第1の実施形態で示した図4の水晶ウェハー1の切断線C−C´での断面を模式的に示した断面図であって、水晶振動子片7の駆動脚11、12と検出脚13との断面を示した図である。図15(a)に示すように、電極形成工程ST11によって測定用電極として水晶振動子片7の駆動脚11、12に駆動電極20a〜29d、21a〜21dが形成され、検出脚13に検出電極22a、22b、検出GND電極22cが形成される。
【0169】
この測定用電極が形成された水晶振動子片7に対して離調度測定工程ST12と離調度ランク分け工程ST13が実施される。ここで、図16を用いて離調度ランク分け工程ST13の詳細を説明する。図16において、離調度測定工程ST12で測定した水晶ウェハー1の各水晶振動子片の離調度を平均化し、その離調度の平均化データに基づいて、一例として、それぞれの水晶ウェハー1をランクA、ランクB、ランクCと3種類の離調度のランクに分類する。
【0170】
たとえば、ランクAは適正な離調度に比較的近い離調度を有するグループであり、ランクBは、適正な離調度から中程度離れた離調度を有するグループであり、ランクCは、適正な離調度から最も大きく離れた離調度を有するグループである。そして、このランクA、B、Cごとに、離調度に応じたエッチング時間を決定する。
【0171】
ここで、ランクごとのエッチング時間の決定は、前述した第1の実施形態のエッチング時間とトリミング量決定工程ST4で示したエッチング時間決定(図8参照)と同様な決定方法を採用することが出来る。すなわち、離調度のランクごとに目標離調度Δf0になるためのエッチング時間テーブルを設定し、ランクに応じたエッチング時間テーブルを選択してエッチング時間tを決定する。
【0172】
但し、第1の実施形態のエッチング時間決定の場合は、水晶振動子として適正な離調度を目標離調度Δf0としたが、本実施形態においての目標離調度Δf0は、後工程である第1の実施形態の工程ST3からST8によって調整される離調度を見積もり、その調整分を差し引いた離調度を目標離調度Δf0´としてエッチング時間テーブルを設定する。たとえば、本実施形態の後工程である第1の実施形態(工程ST3から工程ST8)にお
いて、一例として200Hzの離調度の調整が見積もれる場合は、本来の目標離調度Δf0に200Hzを加算した値を本実施形態の目標離調度Δf0´としてエッチング時間テーブルを作成するのである。
【0173】
なお、第1の実施形態での離調度の調整見積もりは、水晶振動子片の漏れ量の値から実験的に求めることが可能である。また、離調度のランク分けは、3種類に限定されない。また、離調度のばらつきが小さい場合は、離調度ランク分け工程ST13は実施せず、一つのランクに固定してエッチング時間を決定しても良い。
【0174】
次に、図15(b)に示すように、ランク分けされた水晶振動子片7は電極剥離工程ST14が実施され、すべての電極が剥離される。すなわち、駆動脚11、12に形成されていた駆動電極20a〜29d、21a〜21d、及び、検出脚13に形成されていた検出電極22a、22b、検出GND電極22cの全てが剥離され、水晶振動子片7のすべての表面は水晶の素地が露出された状態となる。
【0175】
次に、図15(c)に示すように、すべての電極が剥離された水晶振動子片7に対して、エッチング工程ST15が実施される。このエッチング工程ST15は、第1の実施形態で示したエッチング工程ST6と同様の工程であるが、エッチング工程ST15は、前述したように、全ての電極が剥離された水晶振動子片7に対してエッチング加工される点が異なっている。
【0176】
すなわち、エッチング工程ST15では、水晶振動子片7の全ての表面がエッチング液に浸漬される。そして、第1の実施形態と同様に、水晶振動子片7は水晶の厚み方向であるZ´軸方向のエッチング速度が速く、X軸方向のエッチング速度はそれよりも遅い特性を有しているので、Z´軸方向である表面と裏面の主平面がエッチングによる腐食が進み、水晶振動子片7の側面であるX軸方向の腐食は進まない。
【0177】
これにより、駆動脚11、12と検出脚13の表面と裏面の主平面がエッチング領域15としてエッチング加工されて、駆動脚11、12と検出脚13のZ´軸方向の厚みがエッチング時間に応じて薄くなる。すなわち、エッチング時間が短ければ、厚みの変化は僅かであり、エッチング時間が長ければ、厚みの変化は大きくなり、厚みは薄くなる。
【0178】
ここで、駆動モードの共振周波数は面内の屈曲振動なので駆動脚11、12のX軸方向の幅に略比例する。一方、検出モードの共振周波数は面外の屈曲振動なので、駆動脚11,12、検出脚13の厚みに略比例する。駆動脚11、12のX軸方向の幅に対して、検出脚13のX軸方向の幅を狭くすれば、検出脚13の方が厚みの変化に対して検出モードの共振周波数に与える影響が大きく、検出脚の離調度調整エリア40が開口していれば検出モードの周波数調整が可能である。また、エッチングによって駆動脚11、12の幅も減少するため、駆動モードの共振周波数も検出モードの共振周波数も共に減少するが、水晶のエッチング異方性により厚み方向のエッチング量の方がはるかに大きいため、駆動モード共振周波数に比べて検出モードの共振周波数の減少幅が大きくなる。
【0179】
ここで、検出脚13の共振周波数が駆動脚11、12の共振周波数より高く設定されていれば、エッチング工程ST15によって、検出脚13の共振周波数のほうが大きく減少するので、検出脚13の共振周波数は駆動脚11、12の共振周波数に近づくことになる。そして、検出脚13の共振周波数と駆動脚11、12の共振周波数の差が離調度であるので、この離調度をエッチング工程ST15のエッチング時間に応じて減少させ、前述した目標離調度Δf0´近傍に調整することが出来る。
【0180】
また、前述したように、水晶ウェハー1は離調度の大きさに応じてランク分けされ、そ
のランクに応じてエッチング時間が異なるので、エッチング工程ST15によって離調度のばらつきも吸収することが出来る。また、エッチング工程ST15によるエッチングは、前述したように、水晶振動子片7のすべての電極が剥離された状態で行われるので、水晶振動子片7のすべての表面を均一にエッチングすることが出来る。これにより、水晶振動子片7の表面がエッチング加工によって凹凸になることを防ぎ、水晶振動子の特性に悪影響を及ぼすことなく、確実に離調度を調整することが出来る。
【0181】
次に、図15(d)に示すように、エッチングが終了した水晶振動子片7に対して電極形成工程ST16を実施して、水晶振動子片7の駆動脚11、12と検出脚13の主平面と側面に、駆動電極20a〜29d、21a〜21d、及び、検出電極22a、22b、検出GND電極22cが形成される。これによって、水晶振動子片7に再び電極が形成されるので、外部から駆動信号を供給すれば、振動して動作することが出来る。
【0182】
本実施形態は、この電極形成工程ST16を実施したのちに、離調度の微調整、及び漏れ量調整として、第1の実施形態(工程ST3から工程ST8)を実施して、水晶振動子の調整工程を完了する。なお、第1の実施形態の各工程の説明は、重複するので省略する。
【0183】
以上のように第2の実施形態は、水晶ウェハー1に形成された水晶振動子片7の電極形成後に離調度測定を実施し、電極剥離を行った後に離調度に基づいてランク分けした水晶ウェハー1を一括してエッチングを行い、離調度を粗調整して目標離調度Δf0´に調整し、その後、再び電極形成工程を実施した後に、第1の実施形態の工程(ST3からST8)によって離調度を微調整して目標離調度Δf0に調整し、同時に漏れ量調整も行う。
【0184】
これにより、離調度の調整を二段階で行うことで、離調度が適正な値から大きく離れている水晶振動子片を、不良品とせずに調整によって良品にできるので、水晶振動子の製造歩留まりを大きく向上することが出来る。また、二段階による離調度調整は、粗調整と微調整に分けられるので、ばらつきの大きな離調度を高精度に調整することが可能となり、出力が大きく、且つ、安定した出力を備えた水晶振動子の製造方法を提供することが出来る。
【実施例3】
【0185】
[第3の実施形態の製造工程順の説明:図17]
次に、第3の実施形態の製造方法の工程順を図17のフローチャートを用いて説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態の電極形成工程ST16を実施した後に、漏れ量と離調度の測定工程を実施し、一定のエッチング時間に基づいた電極のトリミング量を決定して電極加工工程を実施し、この加工された電極をマスクにして簡略化したエッチング工程によって漏れ量と離調度の調整を行う製造方法である。
【0186】
なお、各工程の詳細は後述するが、工程の一部は、第1及び第2の実施形態の工程と同様であるので、重複する説明は一部省略する。また、説明の前提として本実施形態の水晶振動子の製造方法は、単一の水晶ウェハーに複数の水晶振動子を形成し、水晶振動子の集合体として一括して製造する製造方法を例示する。もちろん、この集合体による一括製造に限定されるものではなく、1つの水晶ウェハーや水晶板に対して1つの水晶振動子を形成する製造方法でも、本実施形態は適応可能である。
【0187】
図17において、第2実施形態による工程ST10から工程ST16(図14参照)を実施した後、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、漏れ振動の漏れ量と離調度を測定する(漏れ量と離調度測定工程:ST20)。なお、漏れ量と離調度測定工程ST20は、水晶ウェハーに形成される全ての水晶振動子片を測定するが、漏れ量
と離調度のばらつきが少ない場合などは、抜き取り等で測定を行ってもよい。
【0188】
次に、漏れ量と離調度測定工程ST20で得た漏れ量の測定結果と、予め決定したエッチング時間とに基づいて駆動脚の電極の一部を除去するトリミング量を決定する(トリミング量決定工程:ST21)。
【0189】
次に、決定されたトリミング量に基づいて、各々の水晶振動子片の電極の一部分をトリミングする(電極加工工程:ST22)。この工程でトリミングされる電極は、前述の図2に示す例では、駆動電極20、21の漏れ量調整エリア30である。
【0190】
次に、電極加工工程ST22で加工された電極をマスクにして、水晶ウェハーを一括してエッチングする(エッチング工程:ST23)。この工程でのエッチング時間は、前述したように予め決められた一定のエッチング時間である。また、この工程でエッチングされる主な領域は、図2に示す例では、駆動脚11、12の漏れ量調整エリア30と、検出脚13の離調度調整エリア40である。
【0191】
すなわち、駆動脚11、12の漏れ量調整エリア30がエッチングされることによって、このエリアの表面が腐食し、駆動脚11、12のZ´軸方向が削られるので、漏れ量を調整することが出来る(図11参照)。また、検出脚13の離調度調整エリア40がエッチングされることによって、このエリアの検出脚13のZ´軸方向の厚みが薄くなるので検出モードの共振周波数が低くなり、離調度を調整することが出来る(図13参照)。
【0192】
次に、エッチング工程ST23の途中で、一旦、エッチング作業を中断してエッチング工程ST23は終了し、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、漏れ振動の漏れ量と離調度を再度測定する(漏れ量と離調度測定工程:ST24)。なお、漏れ量と離調度測定工程は、水晶ウェハーに形成される全ての水晶振動子片を測定するが、漏れ量と離調度のばらつきが少ない場合などは、抜き取り等で測定を行ってもよい。
【0193】
次に、漏れ量と離調度測定工程ST24で得た測定結果を所定の規格値と比較し、漏れ量と離調度が規格値以内であるかを判定する(規格値判定工程:ST25)。ここで、肯定判定(漏れ量と離調度が共に所定の規格値以内)であれば、水晶振動子片を封止する封止工程に進み、水晶振動子を完成する。また、否定判定(漏れ量と離調度が所定の規格値以外)であれば、次の工程に進む。
【0194】
次に、規格値判定工程ST25で否定判定がなされたならば、漏れ量の測定値に応じて、追加の電極トリミングを行う(追加電極加工工程:ST26)。ここで、想定される漏れ量から大きくずれてなく、現在のトリミング量(すなわち、現在の漏れ量調整エリア30)で十分と判定できれば、図示しないが電極加工工程ST26はスキップして、更なるトリミングは行わなくても良い。
【0195】
次に、電極加工された電極をマスクにして、再度、水晶ウェハーを一括してエッチングを行う(エッチング工程:ST27)。なお、このエッチング工程ST27でのエッチング時間は、前述のエッチング工程ST23で中断した残りのエッチング時間である。
すなわち、エッチング工程ST23によって、決定されている一定のエッチング時間の途中までを実施し、測定と追加トリミング後に、エッチング工程ST27において残り時間のエッチングを行う。よって、エッチング工程ST23とST27の両方のエッチング時間の合計が、決められた一定のエッチング時間となる。このエッチング工程ST23とST27によって、漏れ量と離調度が更に調整される。
【0196】
次に、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、漏れ振動の漏れ量と
離調度を再度測定する(漏れ量と離調度測定工程:ST28)。なお、漏れ量と離調度測定工程は、水晶ウェハーに形成される全ての水晶振動子片を測定するが、漏れ量と離調度のばらつきが少ない場合などは、抜き取り等で測定を行ってもよい。この漏れ量と離調度測定工程ST28は確認のための測定であり、エッチング工程ST23とST27によって漏れ量と離調度が調整されたことを確認後、水晶振動子片を封止する封止工程に進み、水晶振動子を完成する。
【0197】
なお、この漏れ量と離調度測定工程ST28の測定結果で、再度、調整が必要であると判定されれば、図17のフローチャートには示していないが、追加電極加工工程ST26、またはエッチング工程ST27に戻って、再度調整を行っても良い。
【0198】
このように、第3の実施形態の水晶振動子の製造方法は、製造工程が多少長くなるが、適正な離調度から大きく離れ、且つ、離調度のばらつきが大きい水晶振動子片の離調度と漏れ量を調整する製造方法として有効である。すなわち、第2の実施形態で示した工程ST10から工程ST16を実施して、適正な離調度から大きく離れている離調度をランクごとに決めたエッチングによって、適正な離調度に近い離調度に、ばらつきを吸収しながら粗調整する。次に、本実施形態の工程ST20から工程ST28によって、一定のエッチング時間による簡略化したエッチング工程によって漏れ量と離調度を同時に調整することが出来る。
【0199】
[第3の実施形態の製造工程の詳細説明:図18、図19]
次に、第3の実施形態の各工程の詳細を説明する。なお、第1及び第2の実施形態の工程と重複する説明は省略し、第3の実施形態の特有の工程であるトリミング量決定工程ST21、電極加工工程ST22、ST26、及び一定時間によるエッチング工程ST23、ST27を中心に詳細説明を行う。
【0200】
図18は、電極加工工程ST22のトリミング加工の一例と、エッチング工程における漏れ量調整を説明している。図18(a)は、決められた一定のエッチング時間に応じた電極加工工程ST22での3種類のトリミング量Trを示している。図18(a)において、測定された漏れ量RK3が大きな漏れ量である場合、そのトリミング量Tr43は3種類の中で最も大きいトリミング量となる。また、測定された漏れ量RK2が中程度の漏れ量である場合は、そのトリミング量Tr42は3種類の中で中程度のトリミング量となる。また、測定された漏れ量RK1が小さな漏れ量である場合は、そのトリミング量Tr41は3種類の中で最も小さいトリミング量となる。なお、ここでは説明の都合上、3種類のトリミング量を示したが、このトリミング量は測定された漏れ量に応じて、さらに細分化して決定して良いことはもちろんである。
【0201】
図18(b)は、エッチング工程でのエッチング時間の進行による漏れ量調整の推移を想定したグラフである。図18(b)において、横軸はエッチング工程ST23、ST27でのエッチング時間tであり、軸上のt10は予め決定された一定のエッチング時間を示している。縦軸は測定で得られた水晶振動子片7の漏れ量RKであり、軸上のRK1は少ない漏れ量の場合であり、RK2は中程度の漏れ量の場合であり、RK3は大きい漏れ量の場合である。また、軸上のRK0は漏れ量が零となる目標漏れ量である。
すなわち、漏れ量調整はエッチング工程ST23、ST27によって、この目標漏れ量RK0を目指してエッチングを行うのである。
【0202】
ここで、少ない漏れ量RK1を有する水晶振動子片7に対してエッチング加工が実施されると、エッチングが進むにつれて漏れ量は少しずつ減少し、エッチング時間t10に到達した時点で、漏れ量は目標漏れ量RK0近傍の値となる(ラインL1)。また、中程度の漏れ量RK2を有する水晶振動子片に対してエッチング加工が実施されると、エッチン
グが進むにつれて漏れ量は少しずつ減少し、エッチング時間t10に到達した時点で、漏れ量は目標漏れ量RK0近傍の値となる(ラインL2)。同様に、大きな漏れ量RK3を有する水晶振動子片に対してエッチング加工が実施されると、エッチングが進むにつれて漏れ量は少しずつ減少し、エッチング時間t10に到達した時点で、漏れ量は目標漏れ量RK0近傍の値となる(ラインL3)。
【0203】
ここで、エッチング時間tの経過と共に、漏れ量の推移を想定したラインL1、L2、L3の傾きがそれぞれ異なる訳は、それぞれの水晶振動子片7に対するトリミング量が異なるからである。すなわち、漏れ量RK3に応じて最も長いトリミング量Tr43を有する水晶振動子片7は、エッチング時間に対するエッチング量の増加が早いので、ラインL3の傾きが最も大きくなる。また、漏れ量RK2に応じて中程度のトリミング量Tr42を有する水晶振動子片7は、エッチング時間に対するエッチング量の増加が中程度なので、ラインL2の傾きは中程度である。また、漏れ量RK1に応じて最も短いトリミング量Tr41を有する水晶振動子片7は、エッチング時間に対するエッチング量の増加が遅いので、ラインL1の傾きが最も少なくなる。
【0204】
このように、電極加工工程ST22は、測定された漏れ量RKに基づき、決定された一定のエッチング時間t10でエッチング加工を実施することによって、目標漏れ量RK0となる漏れ量の推移を想定し、電極のトリミング量Trを決定して電極加工を実施するのである。
【0205】
次に、実際のエッチング工程ST23、ST27と追加の電極加工工程ST26について、漏れ量RK3が測定された水晶振動子片の場合を例として図19と図20を用いて説明する。図19は、エッチング工程ST23とST27のエッチング加工による漏れ量RKの推移の一例を示しており、横軸はエッチング時間tであり、縦軸は漏れ量RKである。
図19において、エッチング工程ST23は、エッチングを開始してから、エッチング時間t9までエッチング加工を行う。また、エッチング工程ST27は、エッチング時間t9の時点で、工程ST24からST26を実施後、決定されているエッチング時間t10まで残りのエッチング加工を行う。
【0206】
ここで、ラインL3aは、実際のエッチング加工による漏れ量の推移が、前述の図18(b)で示した大きな漏れ量RK3を有する水晶振動子片に対してエッチング時間に応じた漏れ量の推移の想定(ラインL3)と重なった場合である。この漏れ量推移のラインL3aは、このままエッチング工程ST27を実施すれば、エッチング時間t10において、漏れ量が零の目標漏れ量RK0の近傍となる。よって、漏れ量がエッチング工程ST23終了時(エッチング時間t9)に、ラインL3a上の漏れ量RK3a近傍である場合は、追加電極加工工程ST26はスキップして、エッチング工程ST27を実施し、エッチングを完了させれば、水晶振動子片の漏れ量を目標漏れ量RK0近傍に調整することが出来る。
【0207】
また、図19のラインL3bは、エッチング加工による漏れ量の推移が、図18(b)で示した漏れ量推移の想定(ラインL3)より、何らかの原因によって誤差が生じて漏れ量の調整が進まない場合である。この漏れ量推移のラインL3bは、想定した漏れ量推移(ラインL3)より傾きが少ないので、このままエッチング工程ST27を実施しても、エッチング時間t10で漏れ量は、破線で示すように漏れ量RK3bからRK3b´となるだけで、目標漏れ量RK0に達しない。このために、エッチング工程ST23が終了したエッチング時間t9の時点で、追加電極加工ST26を実施し、漏れ量RK3bの値に応じて追加するトリミング量を決定し、電極のトリミング加工を行ってから、その電極をマスクとしてエッチング工程ST27を実施し、残りのエッチング加工を行う。これによ
り、エッチング工程ST27での漏れ量推移の傾きが大きくなって、エッチング時間t10が完了した時点で、漏れ量は、図示するように目標漏れ量RK0近傍に達することが出来る。
【0208】
また、図19のラインL3cは、エッチング加工による漏れ量の推移が、図18(b)で示した漏れ量の推移の想定(ラインL3)より、何らかの原因によって誤差が生じて漏れ量の調整が進み過ぎた場合である。この漏れ量推移のラインL3cは、想定した漏れ量推移(ラインL3)より傾きが大きいので、このままエッチング工程ST27を実施すると、エッチング時間t10では漏れ調は破線で示すようにRK3cからRK3c´となってしまい、目標漏れ量RK0を通り越してしまう。このために、エッチング工程ST23が終了したエッチング時間t9の時点で、電極加工工程ST22でトリミングした場所とは反対方向に追加電極加工ST26を実施し、漏れ量RK3cの値に応じて追加するトリミング量を決定し、電極のトリミング加工を行ってから、その電極をマスクとしてエッチング工程ST27を実施し、残りのエッチング加工を行う。これにより、エッチング工程ST27での漏れ量推移の傾きが小さくなって、エッチング時間t10が完了した時点で、漏れ量は、図示するように目標漏れ量RK0近傍に達することが出来る。
また、この漏れ量推移のラインL3cは、目標漏れ量RK0近傍に達しているので、規格値判定工程ST25で肯定判定として、漏れ量調整を終了して良い。なお、水晶振動子片の調整作業は、離調度調整も必要であるので、離調度がさらに調整する必要がある場合は、上記の通りエッチング工程ST27を実施して、エッチングを完了する。
【0209】
また、図19のラインL3dは、何らかの原因によってラインL3cより更に大きな誤差が生じ、想定した漏れ量推移(ラインL3)より更に傾きが大きい場合である。これにより、エッチング時間t9での漏れ量RK3dは、図示するように、目標漏れ量RK0を通り越している。このため、ラインL3cの場合と同様に、エッチング工程ST23が終了したエッチング時間t9の時点で、電極加工工程ST22でトリミングした場所とは反対方向に追加電極加工ST26を実施し、漏れ量RK3dの値に応じて追加するトリミング量を決定し、電極のトリミング加工を行ってから、その電極をマスクとしてエッチング工程ST27を実施し、残りのエッチング加工を行う。これにより、エッチング工程ST27での漏れ量推移の傾きが右上がりになって、エッチング時間t10が完了した時点で、漏れ量は、図示するように目標漏れ量RK0近傍に達することが出来る。
【0210】
また、図20(a)は、電極加工工程ST22で漏れ量RK3に応じてトリミング量Tr43がトリミングされた水晶振動子片7に、追加の電極加工工程ST26で追加トリミングされた一例を示している。図20(a)において、漏れ量と離調度測定工程ST24で測定された漏れ量に基づいて、追加のトリミングが必要となった場合、図示するように、トリミング量Tr43に対して所定の量のトリミング加工が追加分として実施される(破線で示す領域)。なお、図20(a)は、漏れ量推移のラインL3bの場合のように、電極加工工程ST22と同一方向の追加トリミングを例示している。
【0211】
また、図20(b)は、電極加工工程ST22で漏れ量RK3に応じてトリミング量Tr43がトリミングされた水晶振動子片7に、電極加工工程ST22とは反対方向に電極加工工程ST26で追加されたトリミングの一例を示している。すなわち、前述した漏れ量推移のラインがL3cやL3dの場合に、追加される電極加工工程ST26の追加トリミングの位置を示しており、破線で示す領域がそれである。
【0212】
また、水晶振動子片7の離調度調整については、本実施形態のエッチング工程ST23とST27によって検出脚13の離調度調整エリア40がエッチングされることで、漏れ量調整と同時に実施される。ここで、前述したように、エッチング工程ST23とエッチング工程ST27での合計エッチング時間は一定であるので、適正な離調度に調整される
ように、前工程である第2の実施形態の工程10から工程16の調整工程では、本実施形態のエッチング工程ST23とST27での離調度の調整量を見込んだ調整を行うことが出来る。これは、本実施形態のエッチング工程におけるエッチング時間が一定であるので、離調度の調整量を予め見積もることが出来るからである。
【0213】
ここで、エッチング工程ST23とST27での一定のエッチング時間t10は、どの程度の漏れ量をエッチング加工によって調整する必要があるかを、製造する水晶ウェハーのデータから割り出して決定すると良い。また、本実施形態の最初の測定である漏れ量と離調度測定工程ST20の測定結果に基づいて、一定のエッチング時間t10を決定しても良い。
【0214】
なお、図19は、大きな漏れ量RK3が測定された水晶振動子片の場合を例示したが、図18で示した漏れ量RK1、RK2が測定された水晶振動子片の場合においても、同様に漏れ量と離調度が調整できることはもちろんである。
【0215】
以上のように第3の実施形態は、第2の実施形態の工程終了後に、漏れ量と離調度の測定工程を実施し、一定のエッチング時間に基づいた電極のトリミング量を決定して電極加工工程を実施し、この加工された電極をマスクにしてエッチングを行い、漏れ量と離調度の調整を実施するので、エッチング工程での煩わしい時間調整作業が不要であり、簡素化された水晶振動子の製造方法を実現することが出来る。また、本実施形態のエッチング時間が一定であるので、離調度の調整量を正確に見積もることが可能となり、前工程である第2の実施形態における離調度調整工程を容易に行うことが出来る。
【実施例4】
【0216】
[第4の実施形態の製造工程順の説明:図21]
次に、第4の実施形態の製造方法の工程順を図21のフローチャートを用いて説明する。第4の実施形態は、前述の第2の実施形態の工程を簡素化した水晶振動子の製造方法であり、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の電極形成後に離調度測定を実施し、電極剥離を行わずに離調度に基づいて水晶ウェハーを一括してエッチングし、その後、第1の実施形態の工程、または第3の実施形態の工程を実施して、離調度が大きく離れた水晶振動子を調整する製造方法である。
【0217】
なお、各工程の詳細は後述するが、工程の一部は第2の実施形態の工程と同様であるので、重複する説明は一部省略する。また、説明の前提として本実施形態の水晶振動子の製造方法は、単一の水晶ウェハーに複数の水晶振動子を形成し、水晶振動子の集合体として一括して製造する製造方法を例示する。
【0218】
図21において、まず製造工程の最初に単一の水晶板である水晶ウェハーに耐エッチング用マスク部材を形成し、水晶ウェハーに複数の水晶振動子片の外形形状を形成する(外形形成工程:ST30)。この外形形成工程ST30は、前述の第1の実施形態の外形形成工程ST1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0219】
次に、形成された水晶振動子片の振動脚を構成する主平面または側面に電極を形成する(電極形成工程:ST31)。この電極形成工程ST31は、前述の第1の実施形態の電極形成工程ST2と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0220】
次に、水晶ウェハーに形成された各々の水晶振動子片を駆動して、離調度を測定する(離調度測定工程:ST32)。この離調度測定工程ST32は、前述の第1の実施形態の漏れ量と離調度測定工程ST3の離調度測定と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0221】
次に、離調度測定工程ST32で測定した各水晶振動子片の離調度を水晶ウェハーごとに平均化し、この離調度の平均化データに基づいて、水晶ウェハーを複数のランクにランク分けする(離調度ランク分け工程:ST33)。そして、ランクごとに、後工程で行うエッチングのエッチング時間を決定する。この離調度ランク分け工程ST33は、前述の第2の実施形態の離調度ランク分け工程ST13と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0222】
次に、離調度に基づいてランク分けされた水晶ウェハーをランクごとに決定されたエッチング時間に基づいて、エッチングを行う(エッチング工程:ST34)。このエッチングによって検出脚13の離調度調整エリア40(後述する図22参照)の共振周波数が変化して離調度が調整される。
【0223】
次に、前述の第1の実施形態の漏れ量と離調度測定工程ST3、または、第3の実施形態の漏れ量と離調度測定工程ST20へ進み、以降、それぞれの工程を順次実施して漏れ量と離調度調整を行い、その後、封止工程に進んで水晶振動子を完成する。なお、本実施形態の工程ST30からST34が、離調度の粗調整工程となり、後工程である第1の実施形態による工程、または、第3の実施形態による工程が、漏れ量調整と離調度の微調整工程となる。
【0224】
このように、本実施形態の水晶振動子の製造方法は、前述の第2の実施形態の工程の中で、電極剥離工程ST14を行わない簡素化した水晶振動子の製造方法である。すなわち、本実施形態の水晶振動子の製造方法は、水晶ウェハーに形成された水晶振動子片の電極形成後に離調度測定を実施し、電極剥離を行わずに離調度に基づいて水晶ウェハーを一括してエッチングし、その後、第1の実施形態の工程、または第3の実施形態の工程を実施して、離調度が大きく離れた水晶振動子を不良品とせずに良品として製造することが出来る。
【0225】
[第4の実施形態の製造工程の詳細説明:図22]
次に、第4の実施形態の工程の詳細を説明する。なお、第2の実施形態の工程と重複する説明は省略し、第4の実施形態の特有の工程であるエッチング工程ST34を中心に詳細説明を行う。
【0226】
図22は、エッチング工程ST34の前工程である離調度ランク分け工程ST33によってランク分けされた水晶ウェハー1に形成された複数の水晶振動子片7のひとつを模式的に示している。なお、駆動電極20、21と検出電極22は、図示しているが、基部14などに形成される配線電極等の図示は省略している。
【0227】
図22において、本実施形態の水晶振動子片7は、剥離工程を実施しないでエッチング工程ST34が実施されるので、図示するように、水晶振動子片7の駆動脚11、12の主平面の大部分は駆動電極20、21で覆われており、また、検出脚13の主平面一部も検出電極22で覆われている。また、図示しないが、駆動脚11、12と検出脚13の裏側の主平面と側面も、それぞれ電極で覆われている。
【0228】
また、検出脚13の主平面の検出電極22が形成されていないエリアは、離調度調整エリア40であり、離調度調整のためにエッチング工程で検出脚13の表面がエッチングされるエリアである。なお、図示しないが、検出脚13の裏側の主平面にも離調度調整エリア40が形成されている。また、本実施形態では、電極加工工程が実施されないので、当然であるが、駆動電極20、21に漏れ量調整エリアは形成されず、後工程であるST3以降、またはST20以降の工程で形成される。
【0229】
ここで、本実施形態は、水晶振動子片7に電極が形成された状態で、離調度調整工程としてのエッチング工程ST34が実施される。これにより、電極が無く水晶の素地が露出した表面だけがエッチング液に浸漬され、Z´軸方向である主平面の離調度調整エリア40や基部14の領域がエッチングによる腐食が進み、水晶振動子片7の側面であるX軸方向の腐食は進まない。
【0230】
この結果、離調度調整エリア40の表面がエッチング加工によって腐食されると、検出脚13の厚みが僅かではあるが薄くなり、検出モードの共振周波数が低下して、離調度を調整することが出来る。また、エッチング工程ST34のエッチング時間は、離調度のランク分けごとに決定されるので、水晶ウェハー1を離調度の大きさに応じて調整することが出来る。
【0231】
なお、エッチングによって腐食が進む領域は、離調度調整エリア40だけでなく、基部14などの水晶の素地が露出したすべての箇所に及ぶが、基部14などの表面が僅かにエッチング加工されても、水晶振動子としての特性に大きな影響を及ぼすことはない。また、電極が形成された箇所はエッチング液が浸漬されないので、その部分はエッチング加工されない。これにより、水晶振動子片7の表面の水晶の素地は、厳密には電極が形成されている箇所と電極が形成されていない箇所では表面に段差が生じるが、これについても水晶振動子としての特性に大きな影響を及ぼすことはない。
【0232】
以上のように第4の実施形態は、第2の実施形態の工程の電極剥離工程を廃止して電極が形成された状態で、離調度の粗調整のためのエッチング工程を実施するので、電極剥離工程と2回目の電極形成工程が不要であり、離調度が大きく離れた水晶振動子の製造を簡素化した製造方法によって実現することが出来る。
【0233】
なお、本実施形態の工程を終了後、第1の実施形態の工程ST3、または、第3の実施形態の工程ST20へ進み、以降、それぞれの工程を順次実施して水晶振動子を完成するが、第1の実施形態の工程に進んだ場合は、漏れ量と離調度に応じてエッチング時間とトリミング量を決定するので高精度に漏れ量と離調度を調整することが出来る。また、本実施形態の工程を終了後、第3の実施形態の工程に進んだ場合は、エッチング時間を一定としたエッチング工程を実施するので、エッチング時間を調整するという作業が不要であり、簡素化された工程によって比較的短時間で水晶振動子の調整を行うことが出来る。
【0234】
なお、本発明の実施例で示したフローチャートや外形図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
【0235】
上述した第1から第4の実施形態では、エッチング時間と離調度の測定結果とに応じた形状に電極を加工する電極加工工程を有し、電極加工工程で加工された電極をマスクにしてエッチング工程を行う水晶振動子の製造方法の例を説明した。ここで、エッチング工程でマスクとする電極は、水晶振動子の駆動脚を駆動させる電極に限らず、電気的に駆動電極とは導通していないいわゆる浮き電極であってもよい。浮き電極を用いることで、電極加工による駆動電極の構成が変化により電気的な特性が変わり、水晶振動子の振動特性が変化することを防ぐことが可能となる。
【0236】
また、本発明は、加工された電極をマスクにしてエッチング工程を行う方法に限定されるものではなく、漏れ量と離調度の測定工程の後、水晶振動子の駆動脚上に、電極とは異なる金属(例えばTi等)からなる膜、または、エッチング液に耐性のある他の材料からなる膜を形成する工程を有し、エッチング時間と離調度の測定結果とに応じた形状にこの膜を加工する工程を有し、加工された膜をマスクにしてエッチング工程を行う方法でもよい。
【0237】
このような方法であっても、ひとつのエッチング工程だけで漏れ量調整と離調度調整を同時に実施できるので、調整工程を単純にした水晶振動子の製造方法を実現できる。また、電極加工による駆動電極の構成が変化により電気的な特性が変わり、水晶振動子の振動特性が変化することを防ぐことが可能となる。さらに、駆動電極の構成によらず、漏れ量を調整するためのマスクの形状を自由に構成することが可能となる。
【0238】
また、上述した第2および第4の実施形態では、漏れ量調整のエッチング工程の前に離調度調整のエッチング工程を行う水晶振動子の製造方法の例を説明した。しかし、本発明の水晶振動子の製造方法は、これらに限定されるものではなく、例えば第1および第3の実施形態において漏れ量調整のエッチング工程を行った後に離調度調整のエッチング工程を行っても良い。
【0239】
この離調度調整のエッチング工程は、エッチングにより水晶振動子の漏れ量が変わらない構成に電極を加工した後に行う。ここで、エッチングにより漏れ量が変わらない電極の構成とは、例えば図10において、電極20、21の開口部である漏れ量調整エリア30の振動脚の中心に対して反対側となる位置に同様の開口部を設けることで、それぞれの開口部でのエッチングによる漏れ量の変化が打ち消しあい、エッチングにより水晶振動子の漏れ量が変わらない電極の構成をいう。
漏れ量調整のエッチング工程によりウェハー毎の離調度の変化にばらつきがあるような場合には、漏れ量調整のエッチング工程を行った後にこのような離調度調整のエッチング工程を行うことでと、精度よく離調度の調整をすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明の水晶振動子の製造方法は、漏れ振動と離調度を高精度に調整出来るので、小型で高精度なジャイロセンサ用水晶振動子の製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0241】
1 水晶ウェハー
2a、2b 金属耐食膜
3a、3b、300 フォトレジスト
4a、4b、400a、400b フォトマスク
5a、5b エッチングマスク
7 水晶振動子片
8 溶解部
9 連結部
10 水晶振動子
11、12 駆動脚
13 検出脚
14 基部
15 エッチング領域
20、20a、20b、20c、20d、21、21a、21b、21c、21d 駆動電極
20e、21e 駆動電極端子
22a、22b 検出電極
22d、22e 検出電極端子
22c 検出GND電極
22f 検出GND電極端子
30、30a、30b 漏れ量調整エリア
35、35´ 主軸
40、40a、40b 離調度調整アリア
60 XYステージ
61 プローブ
62 電極端子
63 制御部
64 接続ケーブル
65 駆動部
66 メモリ
200 金属膜
P 原点
θ1 ズレ角
Δf、Δf1、Δf2、Δf3 離調度
Δf0 目標離調度
RK、RK1、RK2、RK3 漏れ量
RK0 目標漏れ量
RK0´ 仮目標漏れ量
t、t1、t2、t3 エッチング時間
TB1、TB2、TB3 エッチング時間テーブル
Tr トリミング量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部から延設する振動脚を備える外形形状に水晶を加工する外形加工工程と、
前記外形形状に電極を形成する電極形成工程と、
前記外形形状の漏れ振動による漏れ量を測定する漏れ量測定工程と、
前記外形形状の離調度を測定する離調度測定工程と、
前記離調度測定工程の測定結果に基づいた時間エッチングを行い、前記外形形状を加工するエッチング工程と、を備え、
前記エッチング工程は、エッチング時間と前記漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状のマスクを用いて前記外形形状のエッチングを行う漏れ量調整工程を有する
ことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項2】
前記漏れ量調整工程のエッチング時間と前記漏れ量測定工程の測定結果とに応じた形状に、前記電極を加工する電極加工工程を有し、
前記漏れ量調整工程において、前記電極加工工程で加工された前記電極をマスクにしてエッチングを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項3】
前記電極加工工程は、断面主軸の方向を調整することによって、前記振動脚の漏れ振動成分を抑制するように前記電極の一部分が除去された漏れ量調整エリアを形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項4】
前記漏れ量調整エリアは前記振動脚の長手方向に沿って形成され、
前記漏れ量調整エリアの幅方向の略中心が、前記振動脚の幅方向の略中心より前記振動脚の幅方向にずれている
ことを特徴とする請求項3に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項5】
前記漏れ量調整エリアは1つの振動脚に複数個あり、
前記振動脚の断面の振動軸中心を原点としたとき、前記原点を通り直交する2つの軸で定義される第1象限、第2象限、第3象限、第4象限のうち、前記原点を挟み対称となる象限に設けられる
ことを特徴とする請求項3または4に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング工程は、前記漏れ量調整工程とは別に、前記外形形状のエッチングを行って離調度を調整する離調度調整工程を有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項7】
前記電極形成工程で形成された前記電極を剥離した後に、前記離調度調整工程を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項8】
前記振動脚は駆動脚と検出脚によって構成され、
前記離調度調整工程は、前記検出脚の電極が形成されていない領域をエッチング加工する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の水晶振動子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−220922(P2011−220922A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92159(P2010−92159)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】