説明

治療薬としての縮合四環性mGluR1アンタゴニスト

本発明の多くの実施形態において、本発明は、代謝調節型グルタミン酸レセプター(mGluR)アンタゴニスト、特に選択的代謝調節型グルタミン酸レセプター1アンタゴニストとして有用な式(I)または式(II)(ここで、様々な部分とは、本明細書中に定義されるとおりである)の四環性化合物、その化合物を含む薬学的組成物、ならびに代謝調節型グルタミン酸レセプター(例えば、mGluR1)に関連する疾患(例えば、疼痛、片頭痛、不安、尿失禁およびアルツハイマー病などの神経変性疾患)を処置するためにその化合物および組成物を使用した処置の方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、代謝調節型グルタミン酸レセプター(mGluR)アンタゴニスト、特に、選択的代謝調節型グルタミン酸レセプター1アンタゴニストとして有用な縮合四環性化合物、その化合物を含む薬学的組成物、ならびに代謝調節型グルタミン酸レセプター(例えば、mGluR1)に関連する疾患(例えば、疼痛、片頭痛、不安、尿失禁およびアルツハイマー病などの神経変性疾患)を処置する化合物および組成物を使用した処置の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グルタミン酸は、哺乳動物の中枢神経系における重要な興奮性神経伝達物質である。中枢神経系(CNS)におけるグルタミン酸シナプス応答は、2つのファミリーのレセプター:イオンチャネル型グルタミン酸レセプターと呼ばれるリガンド開口性(ligand−gated)陽イオンチャネルおよび代謝調節型グルタミン酸レセプター(mGluR)として知られているGタンパク質結合型レセプターの活性化を介して媒介される。これまでに、スプライスバリアントとともに、8つのmGluRサブタイプがクローニングされ、機能的研究において特徴付けられている(非特許文献1)。この8つのmGluRは、構造的相同性、薬理学およびシグナル伝達メカニズムに基づいて3つのクラスに分類される。
【0003】
グループIレセプター(mGluR1およびmGluR5)は、G11タンパク質と共役し、ホスホイノシチド(PI)の加水分解、すなわち、細胞内貯蔵からカルシウムを放出させるホスホリパーゼC(PLC)の活性化をもたらす。他方、グループII(mGluR2およびmGluR3)およびグループIII(mGluR4、mGluR6、mGluR7およびmGluR8)は、G/Gタンパク質を介してアデニルシクラーゼ(AC)と負に共役し、それによりサイクリックAMP(cAMP)形成が阻害される(非特許文献2)。
(グルタミン酸および疼痛)
慢性疼痛は、未だ対処されていない、医学的対応が求められている重要な分野である。現在の治療は十分ではなく、慢性疼痛は、最もよく使用されているオピオイド類などの鎮痛薬に無反応であることが多い。グルタミン酸は、侵害受容性プロセシングにおいて重要な役割を果たす。mGluRなどのグルタミン酸レセプターは、疼痛の感覚および伝達に関わる脳、脊髄および末梢の関連領域において発現している。
【0004】
慢性疼痛は、組織の損傷および疾患に起因する場合(炎症性疼痛)もあれば、中枢神経系および末梢神経系に起因する場合(神経障害性疼痛)もあり、また、自発痛、痛覚過敏(有痛性刺激に対して過度に応答する)および異痛症(非侵害性刺激を有痛性として誤って知覚する)により特徴付けられる重篤な慢性知覚障害に関連する。ヒト患者における一般的な症状としては、冷痛覚過敏、機械的異痛症(mechanical allodynia)およびそれほど多くはないが、熱痛覚過敏が挙げられる。
【0005】
慢性疼痛は、典型的な疾患である。慢性疼痛は、脊髄後角ニューロンの興奮性が増大することからなる「中枢性感作」と呼ばれる現象である、侵害受容性プロセシングの中心に存在するシナプスにおける可塑性の結果であると考えられている。その中枢性感作における重要な役割としてグルタミン酸レセプターは同定されている。侵害受容性プロセシングに関連するシナプスにおける可塑性には、NMDAなどのイオンチャネル型グルタミン酸レセプターの活性化が必要であり、この可塑性は、mGluR1などのmGluRによって調節される。NMDAレセプターアンタゴニストは、損傷後の持続性疼痛の予防および処置についての実験的な治療法において試験されている。しかしながら、それらのレセプターが、神経系全体に亘る正常な興奮性シナプス伝達に重要な役割を果たしていることに大きく起因して、NMDAアンタゴニストの使用に関連した望ましくない重要な副作用が存在する。これらの副作用としては、精神病(pyschosis)、活動亢進、疲労、眩暈が挙げられ、そしてNMDAアンタゴニストが高レベルの場合には、健忘症および神経毒性が挙げられる。mGluR1レセプターに拮抗するように設計された薬物は、無痛性の知覚に関与する正常な脊髄シナプスプロセスにほとんど影響を及ぼさずに、持続性疼痛状態に関連する病理学的に異常な脊髄NMDAレセプターの活性化を選択的に調節するとみられるので、副作用を引き起こす傾向が低いと考えられている。従って、mGluRアンタゴニストは、広範な脊髄および上脊髄性のNMDAレセプターの拮抗作用に固有の副作用を回避するので、慢性疼痛状態において臨床的に良好に作用し得る。
(mGluR1および疼痛)
多くの行動研究(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)および電気生理学的研究(非特許文献8;および非特許文献9)によって、痛覚過敏および炎症の機構を含むCNSでの侵害受容性プロセシングにおけるグループIのmGluR、および特にmGluR1レセプターについての特異的な役割が証明されている。脊髄において、mGluR1は、後角および前角全体のシナプス後要素に主に局在しているとみられている(非特許文献10)。慢性侵害受容における脊髄mGluR1の固有の活性化は、アンタゴニスト、抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて証明されている。mGluR1アンタゴニストのくも膜下腔内投与により、ホルマリン誘発侵害受容行動の第2相において抗侵害受容作用がもたらされる(非特許文献11)。行動研究もまた、脊髄損傷および神経因性疼痛の結紮モデルにおける脊髄のmGluR1レセプターの役割を取り扱っている。脊髄損傷後のラットでは、mGluR1の発現が増大し、この発現の増大は、損傷によって誘発される慢性中枢性疼痛を媒介し得る(非特許文献12)。アンチセンスオリゴヌクレオチドをくも膜下腔内注入して脊髄mGluR1をノックダウンすることにより、神経障害性ラットにおいて冷痛覚過敏および機械的異痛症が減弱した(非特許文献13;および非特許文献14)。さらに、抗mGluR1 IgG抗体を脊髄投与することにより、神経障害性ラットにおいて冷痛覚過敏が低減したが、機械的異痛症は低減しなかった(非特許文献15)。疼痛関連中枢性感作における脊髄mGluR1レセプターの決定的な役割は、麻酔された動物の電気生理学的なインビボ研究によって、単一細胞レベルで強調される。mGluR1アンタゴニストの脊髄内投与により、非侵害性ではなく侵害性の短い機械的皮膚刺激、ならびにカプサイシン疼痛モデルにおける中枢性感作に対する霊長類の脊髄視床路ニューロンの応答が阻害された(非特許文献16)。mGluR1発現をノックダウンしたラットにおいて、C線維刺激性カラシ油を反復して局所的に塗布することにより誘起される侵害性入力に対する多受容性後角ニューロンの応答は、コントロールニューロンと比較して有意に低下した;非侵害性の皮膚刺激に対する応答は、有意な差がなかった(非特許文献17)。
【非特許文献1】Schoeppら、Neuropharmacology,1999年,38,1431−1476
【非特許文献2】A.Francesconi and R.M.Duvoisin,J.Biol.Chem.1998年,273(10),5615−5624
【非特許文献3】Fisherら、Neuroreport,1998年,20,1169−1172
【非特許文献4】Fundytusら、Neuroreport,1998年,9,731−735
【非特許文献5】Bhaveら、Nature Neurosci,2001年,4,417−423
【非特許文献6】Dolanら、Neuropharmacology,2002年,43,319−326
【非特許文献7】Dolanら、Pain,2003年,106,501−512
【非特許文献8】Youngら、Neuropharmacology,1994年,33,141−144
【非特許文献9】Youngら、Brain Res.,1997年,777,161−169
【非特許文献10】Neugebauer,Trends Neurosci.,2001年,24,550−552
【非特許文献11】Neugebauer,Trends Neurosci.,2001年,24,550−552
【非特許文献12】Mills and Hulsebosch,Neurosci.Lett.,2002年,319,59−62
【非特許文献13】Fundytusら、Br.J.Pharmacol.,2001年,132,354−367
【非特許文献14】Fundytusら、Pharmacol.Biochem.Behav.,2002年,73,401−410
【非特許文献15】Fundytusら、Neuroreport,1998,9,731−735
【非特許文献16】Neugebauerら、J.Neurophysiol.,1999,82,272−282
【非特許文献17】Youngら、J.Neurosci.,1998,18,10180−10188
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
多くの実施形態において、本発明は、代謝調節型グルタミン酸レセプター(mGluR)アンタゴニスト、特に選択的mGluR1アンタゴニストとして有用な四環性化合物の新規クラス、1つ以上のそのような化合物を含む薬学的組成物、1つ以上のそのような化合物を含む薬学的処方物を調製する方法、およびそのような化合物または薬学的組成物を用いてmGluR、特にmGluR1に関連する1つ以上の疾患を処置、予防、阻害または回復する方法を提供する。
【0007】
1つの局面において、本出願は、式I:
【0008】
【化8】

の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を開示し、
ここで:
Wは、S、OまたはN(R10)であり;
Xは、NまたはCR3であり;
Yは、NまたはCRであり:
およびJは、各々独立してC(R)またはNであり;
は、−H、−NR、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)R、−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)Rおよび−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、独立して、H、ハロ、−CN、−NHC(O)R、−NHSO、−NR、−OR、−C(O)R、−C(O)R、−C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、H、−C(O)OR、−SO、−C(O)NRならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;
およびRは、独立して、H、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;または
およびRまたはRおよびRは、同じ窒素原子に結合するとき、必要に応じてその窒素原子と共に、前記窒素原子に加えて独立してO、NまたはSから独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の複素環式環を形成し;
は、H、ハロ、−OR、−NO、−CN、−NRC(O)R、−NRSO、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)NR、ならびに必要に応じて、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)C(O)NRおよび−NRSOの少なくとも1つで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
10は、H、−C(O)R、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され、
Aは、CHR、CR、O、S、N、NR、C=OおよびC=Sからなる群から選択され;
Bは、N、NR、CHR、CR、O、S、C=O、C=SおよびC−S−Rからなる群から選択され;
Dは、CHR、O、SおよびNRからなる群から選択され;そして
mは、1〜3である。
【0009】
別の局面において、本出願は、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を開示し、ここで:
Wは、S、OまたはN(R10)であり;
Xは、NまたはCR3であり;
Yは、NまたはCRであり:
およびJは、各々独立してC(R)またはNであり;
は、−H、−NR、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)R、−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)Rおよび−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、独立して、H、ハロ、−CN、−NHC(O)R、−NHSO、−NR、−OR、−C(O)R、−C(O)R、−C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、H、−C(O)OR、−SO、−C(O)NRならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;
およびRは、独立して、H、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;または
およびRまたはRおよびRは、同じ窒素原子に結合するとき、必要に応じてその窒素原子と共に、前記窒素原子に加えて独立してO、NまたはSから独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の複素環式環を形成し;
は、H、ハロ、−OR、−NO、−CN、−NRC(O)R、−NRSO、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)NR、ならびに必要に応じて、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)C(O)NRおよび−NRSOの少なくとも1つで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
10は、H、−C(O)R、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され、
Aは、CHR、CR、O、S、N、NR、C=OおよびC=Sからなる群から選択され;
Bは、N、NR、CHR、CR、O、S、C=OおよびC=Sからなる群から選択され;
Dは、CHR、O、SおよびNRからなる群から選択され;そして
mは、1〜3である。
【0010】
別の局面において、本発明は、式II:
【0011】
【化9】

の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を開示し、
ここで:
Wは、S、OまたはN(R10)であり;
Xは、NまたはCRであり;
Yは、NまたはCRであり;
およびJは、各々独立してC(R)またはNであり;
は、−H、−NR、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)R、−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)Rおよび−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、H、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;
およびRは、独立して、H、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;または
およびRまたはRおよびRは、同じ窒素原子に結合するとき、必要に応じてその窒素原子と共に、前記窒素原子に加えて独立してO、NまたはSから独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の複素環式環を形成し;
は、H、ハロ、−OR、−NO、−CN、−NRC(O)R、−NRSO、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)NR、ならびに必要に応じて、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)C(O)NRおよび−NRSOの少なくとも1つで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
10は、H、−C(O)R、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
11は、ハロであり;
12は、−NR1314であり;
13は、Hまたはアルキルであり;そして
14は、ヒドロキシ置換基で置換されたアルキルである。
【0012】
式IおよびIIの化合物は、選択的代謝調節型グルタミン酸レセプター1アンタゴニストとして有用であり、ゆえに、疼痛(神経向性または炎症性)、片頭痛、不安、尿失禁およびアルツハイマー病などの神経変性疾患の処置および予防において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、構造式IもしくはIIに示される四環性化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを開示し、ここで、その様々な部分とは、上に記載するとおりである。
【0014】
1つの実施形態において、式I中の
【0015】
【化10】

は、
【0016】
【化11】

からなる群から選択される。
【0017】
別の実施形態において、式I中の
【0018】
【化12】

は、
【0019】
【化13】

からなる群から選択される。
【0020】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、ZおよびXはNである。
【0021】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、JはCRであり、JはNである。
【0022】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、JはCRであり、JはNであり、ZおよびXはNである。
【0023】
別の実施形態において、式I中の、AおよびBは、CHRおよびCRからなる群から選択され、DはNRである。
【0024】
別の実施形態において、式I中の、AはCHRまたはCRであり、BはNまたはNRであり;そしてDはNRである。
【0025】
別の実施形態において、式I中の、AはNまたはNRであり、DはNRであり、BはCHRまたはCRである。
【0026】
別の実施形態において、式I中の、AおよびBは、CHRおよびCRからなる群から選択され、DはOである。
【0027】
別の実施形態において、式I中の、AおよびBは、CHRおよびCRからなる群から選択され、DはSである。
【0028】
別の実施形態において、式I中の、AおよびBは、CHRおよびCRからなる群から選択され、DはCRである。
【0029】
別の実施形態において、式I中の、AはNまたはNRであり、BはCHRまたはCRであり、DはNRである。
【0030】
別の実施形態において、式I中の、AはOであり、BはCHRまたはCRであり、DはNRである。
【0031】
別の実施形態において、式I中の、AはSであり、BはC=O、C=SおよびC−S−Rからなる群から選択され、DはNRである。
【0032】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、Rはシクロヘキシルである。
【0033】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、Rはp−メチルフェニルである。
【0034】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、Rはp−メトキシフェニルである。
【0035】
別の実施形態において、式IまたはII中の、WはSであり、Rはp−ハロフェニルである。
【0036】
本発明の代表的な化合物のリストを下の表1に示す。
【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

表1の化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物またはエステルもまた、意図される。
【0040】
好ましい化合物としては、化合物番号20b、27a、27b、34、35、36、37a、38a、38b、38c、38d、38e、38f、38g、38hおよび38iが挙げられる。
【0041】
以下の用語は、上記および明細書全体に亘って使用されるとき、他に明記されない限り、以下の意味を有すると理解されなければならない:
「患者」は、ヒトと動物の両方ともを含む。
【0042】
「哺乳動物」とは、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0043】
「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖であり得る、鎖中に約1〜約20個の炭素原子を含んでいる脂肪族炭化水素基のことを意味する。好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約12個の炭素原子を含んでいる。より好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約6個の炭素原子を含んでいる。分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が、直鎖アルキル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」とは、直鎖または分枝鎖であり得る鎖中に約1〜約6個の炭素原子を有している基のことを意味する。用語「置換アルキル」とは、アルキル基が、1つ以上の置換基(同じであっても異なっていてもよい)によって置換されている場合があることを意味し、各置換基は、独立して、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、−C(O)O−アルキルおよび−S(アルキル)からなる群から選択される。適当なアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖または分枝鎖であり得、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含んでいる脂肪族炭化水素基のことを意味する。好ましいアルケニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子;より好ましくは、鎖中に約2〜約6個の炭素原子を有する。分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が、直鎖アルケニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルケニル」とは、直鎖または分枝鎖であり得る鎖中の約2〜約6個の炭素原子を意味している。用語「置換アルケニル」とは、アルケニル基が、1つ以上の置換基(同じであっても異なっていてもよい)によって置換されている場合があることを意味し、各置換基は、独立して、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシおよび−S(アルキル)からなる群から選択される。適当なアルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニルおよびデセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖または分枝鎖であり得、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含んでいる脂肪族炭化水素基のことを意味する。好ましいアルキニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子;より好ましくは、鎖中に約2〜約4個の炭素原子を有する。分枝鎖とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が、直鎖アルキニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキニル」とは、直鎖または分枝鎖であり得る鎖中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適当なアルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニルおよびデシニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「置換アルキニル」とは、アルキニル基が、1つ以上の置換基(同じであっても異なっていてもよい)によって置換されている場合があることを意味し、各置換基は、独立して、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群から選択される。
【0046】
「アルキレン」とは、上で定義するアルキル基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。アルキレンの例としては、メチレン、エチレンおよびプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「アリール」(時折、「ar」と省略される)とは、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは、約6〜約10個の炭素原子を含んでいる、芳香族の単環式または多環式(multicyclic)の環系のことを意味する。アリール基は、必要に応じて、同じであっても異なっていてもよい、本明細書中に定義するような1つ以上の「環系置換基」で置換され得る。適当なアリール基の例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロアリール」とは、約5〜約14個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含んでいる芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し、ここで、その環原子の1つ以上は、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄の単独または組み合わせである。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含む。「ヘテロアリール」は、本明細書中で定義されるような1つ以上の「環系置換基」(同じであっても異なっていてもよい)によって必要に応じて置換され得る。ヘテロアリールの語根(root name)の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアとは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在していることを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、必要に応じて、対応するN−オキシドに酸化され得る。適当なヘテロアリールの例としては、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「アラルキル」または「アリールアルキル」とは、アリール−アルキル基(アリールおよびアルキルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適当なアラルキル基の例としては、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0050】
「アルキルアリール」とは、アルキル−アリール基(アリールおよびアルキルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適当なアルキルアリール基の例としては、o−トリル、p−トリルおよびキシリルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アリールを介する。
【0051】
「シクロアルキル」とは、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは、約5〜約10個の炭素原子を含んでいる、非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、同じであっても異なっていてもよく、上で定義されたとおりの1つ以上の「環系置換基」によって必要に応じて置換され得る。適当な単環式シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。適当な多環式シクロアルキルの例としては、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキル」は、以下に定義するような「アリールシクロアルキル」および「シクロアルキルアリール」を含む。
【0052】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基のことを意味する。フルオロ、クロロまたはブロモが好ましく、フルオロおよびクロロが、より好ましい。
【0053】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のことを意味する。フッ素、塩素および臭素が好ましい。
【0054】
「ハロアルキル」とは、アルキル上の1つ以上の水素原子が、上で定義したハロ基によって置換されている、上で定義されたようなアルキルのことを意味する。
【0055】
「シアノアルキル」とは、アルキル上の1つ以上の水素原子が、シアノ基によって置換されている、上で定義されたようなアルキルのことを意味する。
【0056】
「オキソ」とは、(=O)のことを意味し、「チオキソ」とは、(=S)のことを意味する。
【0057】
「環系置換基」とは、芳香族または非芳香族の環系に結合している置換基、例えば、環系上の利用可能な水素を置換する置換基のことを意味する。環系置換基は、同じであっても異なっていてもよく、その各々は独立してアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−およびYNSO−からなる群から選択され、ここで、YおよびYは、同じであっても異なっていてもよく、そして、独立して、水素、アルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から選択される。「環系置換基」はまた、3〜7個の環原子のうち1〜2個がヘテロ原子であり得、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロシクレニル環上の2つの環水素原子を同時に置換することによって、前記アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロシクレニル環に結合している環式環のことを意味する。例としては、
【0058】
【化17】

などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「シクロアルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含んでいる約3〜約10個の炭素原子、好ましくは、約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルケニルは、上で定義されたような1つ以上の「環系置換基」(同じであっても異なっていてもよい)で必要に応じて置換され得る。適当な単環式のシクロアルケニルとしては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。適当な多環式のシクロアルケニルの例は、ノルボルニレニルであるが、これに限定されない。「シクロアルケニル」は、以下に定義するような「アリールシクロアルケニル」および「シクロアルケニルアリール」を含む。
【0060】
「ヘテロシクレニル」とは、約3〜約10個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含んでいる、非芳香族の単環式または多環式の環系のことを意味し、ここで、その環系内の原子の1つ以上は、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄原子の単独または組み合わせであり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含む。この環系内に存在する酸素および/または硫黄原子は、隣接していない。好ましいヘテロシクレニル環は、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクレニルの語根の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、必要に応じて1つ以上の環系置換基によって置換され得、ここで、「環系置換基」は、上で定義されたとおりである。ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに酸化され得る。適当な単環式のアザヘテロシクレニル基の例としては、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。適当なオキサヘテロシクレニル基の例としては、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。適当な多環式のオキサヘテロシクレニル基の例は、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルであるがこれに限定されない。適当な単環式のチアヘテロシクレニル環の例としては、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「ヘテロシクリル」(またはヘテロシクロアルキル)とは、約3〜約10個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含む非芳香族飽和単環式または多環式の環系のことを意味し、その環系内の原子の1つ以上は、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄の単独または組み合わせである。その環系内に存在する酸素および/または硫黄原子は、隣接していない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリル語根の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在していることを意味する。ヘテロシクリルは、本明細書中で定義されるような1つ以上の「環系置換基」(同じであっても異なっていてもよい)によって必要に応じて置換され得る。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに酸化され得る。適当な単環式のヘテロシクリル環の例としては、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクリル」は、以下に定義するような「ヘテロアリールシクロアルキル」および「シクロアルキルヘテロアリール」を含む。
【0062】
「アリールシクロアルケニル」とは、シクロアルケニル部から水素原子を除去することによって、本明細書中に定義するような縮合アリールおよび縮合シクロアルケニルから誘導される基のことを意味する。好ましいアリールシクロアルケニルは、アリールがフェニルであり、シクロアルケニルが、約5〜約6個の環原子からなるものである。アリールシクロアルケニルは、必要に応じて、1つ以上の環系置換基によって置換され得、ここで、「環系置換基」は、上で定義されるとおりである。適当なアリールシクロアルケニルの例としては、1,2−ジヒドロナフタレン、インデンなどが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、非芳香族の炭素原子を介する。
【0063】
「シクロアルケニルアリール」とは、アリール部から水素原子を除去することによって、本明細書中に定義するような縮合アリールシクロアルケニルから誘導される基のことを意味する。適当なシクロアルケニルアリールの例は、親部分への結合が、芳香族の炭素原子を介すること以外は、アリールシクロアルケニルについて本明細書中に記載するとおりであるが、それらに限定されない。
【0064】
「アリールシクロアルキル」とは、シクロアルキル部から水素原子を除去することによって、本明細書中に定義されるような縮合アリールおよび縮合シクロアルキルから誘導される基のことを意味する。好ましいアリールシクロアルキルは、アリールがフェニルであり、シクロアルキルが、約5〜約6個の環原子からなるものである。アリールシクロアルキルは、必要に応じて、1つ以上の環系置換基によって置換され得、ここで、「環系置換基」は、上で定義されたとおりである。適当なアリールシクロアルキルの例としては、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどが挙げられるが、これに限定されない。親部分への結合は、非芳香族の炭素原子を介する。
【0065】
「シクロアルキルアリール」とは、アリール部から水素原子を除去することによって、本明細書中に定義されるような縮合アリールシクロアルキルから誘導される基のことを意味する。適当なシクロアルキルアリールの例は、親部分への結合が芳香族の炭素原子を介すること以外は、アリールシクロアルキル基について本明細書中に記載するとおりであるが、それらに限定されない。
【0066】
「ヘテロアリールシクロアルキル」とは、シクロアルキル部から水素原子を除去することによって本明細書中に定義されるような縮合ヘテロアリールおよび縮合シクロアルキルから誘導される基のことを意味する。好ましいヘテロアリールシクロアルキルは、そのヘテロアリールが、約5〜約6個の環原子からなり、シクロアルキルが、約5〜約6個の環原子からなるものである。ヘテロアリールの前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、それぞれ少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールシクロアルキルは、必要に応じて、1つ以上の環系置換基によって置換され得、ここで、「環系置換基」は、上で定義されたとおりである。ヘテロアリールシクロアルキルのヘテロアリール部の窒素原子は、必要に応じて、対応するN−オキシドに酸化され得る。適当なヘテロアリールシクロアルキルの例としては、5,6,7,8−テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンズイミダゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾオキサゾリル、1H−4−オキサ−1,5−ジアザナフタレン−2−オニル、1,3−ジヒドロイミジゾール−[4,5]−ピリジン−2−オニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、非芳香族の炭素原子を介する。
【0067】
「シクロアルキルへテロアリール」とは、ヘテロアリール部から水素原子を除去することによって、本明細書中に定義されるような縮合ヘテロアリールシクロアルキル(beteroarylcycloalkyl)から誘導される基のことを意味する。適当なシクロアルキルへテロアリールの例は、親部分への結合が、芳香族の炭素原子を介すること以外は、ヘテロアリールシクロアルキルについて本明細書中に記載するとおりであるが、それらに限定されない。
【0068】
「アラルケニル」とは、アリール−アルケニル基(アリールおよびアルケニルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいアラルケニルは、低級アルケニル基を含む。適当なアラルケニル基の例としては、2−フェネテニルおよび2−ナフチルエテニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アルケニルを介する。
【0069】
「アラルキニル」とは、アリール−アルキニル基(アリールおよびアルキニルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいアラルキニルは、低級アルキニル基を含む。親部分への結合は、アルキニルを介する。適当なアラルキニル基の例としては、フェナセチレニルおよびナフチルアセチレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリール−アルキル基(ヘテロアリールおよびアルキルは先に記載されたとおりである)を意味する。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含む。適当なアラルキル基の例としては、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0071】
「ヘテロアラルケニル」とは、ヘテロアリール−アルケニル基(ヘテロアリールおよびアルケニルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいヘテロアラルケニルは、低級アルケニル基を含む。適当なヘテロアラルケニル基の例としては、2−(ピリド−3−イル)エテニルおよび2−(キノリン−3−イル)エテニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アルケニルを介する。
【0072】
「ヘテロアラルキニル」とは、ヘテロアリール−アルキニル基(ヘテロアリールおよびアルキニルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいヘテロアラルキニルは、低級アルキニル基を含む。適当なヘテロアラルキニル基の例としては、ピリド−3−イルアセチレニルおよびキノリン−3−イルアセチレニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、アルキニルを介する。
【0073】
「ヒドロキシアルキル」とは、HO−アルキル−基(アルキルは先に記載されたとおりである)のことを意味する。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含む。適当なヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「アシル」とは、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−またはシクロアルキニル−C(O)−基のことを意味し、その中の様々な基は、先に記載されたとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介する。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適当なアシル基の例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
「アロイル」とは、アリール−C(O)−基(アリール基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。親部分への結合は、カルボニルを介する。適当な基の例としては、ベンゾイルならびに1−ナフトイルおよび2−ナフトイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
「ヘテロアロイル」とは、ヘテロアリール−C(O)−基(ヘテロアリール基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当な基の例としては、ニコチノイルおよびピロール−2−イルカルボニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0077】
「アルコキシ」とは、アルキル−O−基(アルキル基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0078】
「アリールオキシ」とは、アリール−O−基(アリール基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアリールオキシ基の例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0079】
「アラルキルオキシ」とは、アラルキル−O−基(アラルキル基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシおよび1−ナフタレンメトキシまたは2−ナフタレンメトキシが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0080】
「アルキルアミノ」とは、窒素上の水素原子の1つ以上が、上で定義されたようなアルキル基によって置換された、−NHまたは−NH基のことを意味する。
【0081】
「アリールアミノ」とは、窒素上の水素原子の1つ以上が、上で定義されたようなアリール基によって置換された、−NHまたは−NH基のことを意味する。
【0082】
「アルキルチオ」とは、アルキル−S−基(アルキル基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアルキルチオ基の例としては、メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオおよびヘプチルチオが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0083】
「アリールチオ」とは、アリール−S−基(アリール基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアリールチオ基の例としては、フェニルチオおよびナフチルチオが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0084】
「アラルキルチオ」とは、アラルキル−S−基(アラルキル基は先に記載されたとおりである)のことを意味する。適当なアラルキルチオ基の例は、ベンジルチオであるが、これに限定されない。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0085】
「アルコキシカルボニル」とは、アルキル−O−CO−基を意味する。適当なアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0086】
「アリールオキシカルボニル」とは、アリール−O−C(O)−基を意味する。適当なアリールオキシカルボニル基の例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙げられるが、これらに限定されない。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0087】
「アラルコキシカルボニル」とは、アラルキル−O−C(O)−基のことを意味する。適当なアラルコキシカルボニル基の例は、ベンジルオキシカルボニルであるが、これに限定されない。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0088】
「アルキルスルホニル」とは、アルキル−S(O)−基のことを意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルであるものである。親部分への結合は、スルホニルを介する。
【0089】
「アルキルスルフィニル」とは、アルキル−S(O)−基のことを意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルであるものである。親部分への結合は、スルフィニルを介する。
【0090】
「アリールスルホニル」とは、アリール−S(O)−基のことを意味する。親部分への結合は、スルホニルを介する。
【0091】
「アリールスルフィニル」とは、アリール−S(O)−基のことを意味する。親部分への結合は、スルフィニルを介する。
【0092】
すべての必要な原子価が満たされる場合、式Iの炭素は、1〜3個のケイ素原子で置換され得ることに注意されたい。
【0093】
用語「必要に応じて置換される」とは、利用可能な位置における特定の基、ラジカルまたは部分による任意の置換のことを意味する。
【0094】
ある化合物における部分(例えば、置換基、基または環)の数に関して、他に定義されない限り、句「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、化学的に許容されるのと同程度の数の部分が存在し得ることを意味し、そのような部分の最大数の決定は、当業者の知識の範囲内に十分入っている。
【0095】
任意の可変部分(例えば、アリール、複素環、Rなど)が、任意の構成要素または式において2つ以上存在するとき、各々の存在におけるその定義は、他のすべての存在における定義から独立したものである。
【0096】
本明細書中で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の量の特定の成分を含む生成物、ならびに特定量の特定の成分を組み合わせることにより直接または間接的に生じる任意の生成物を包含すると意図される。
【0097】
環系内に描かれている線、例えば:
【0098】
【化18】

のような線は、示されている線(結合)が、置換可能な環炭素原子のいずれかに結合され得ることを示している。
【0099】
当該分野で周知のように、結合の末端に何も部分が描かれていない特定の原子から引かれている結合は、他に明記されない限り、その原子への結合を介して結合しているメチル基を示している。例えば:
【0100】
【化19】

は、
【0101】
【化20】

を表している。
【0102】
また、本明細書中の本文、スキーム、実施例、構造式および任意の表における、原子価が満たされていない任意の炭素またはヘテロ原子は、水素原子またはその原子価を満たす原子を有すると仮定されることにも注意するべきである。
【0103】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた、本明細書中で意図される。用語「プロドラッグ」は、本明細書中で使用されるとき、被験体への投与の際に、代謝または化学的なプロセスによる化学変換を経て、式IもしくはIIの化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物をもたらす薬物前駆体である化合物のことを示す。プロドラッグについての論考は、T.Higuchi and V.Stella,Pro−Drugs as Novel Delivery Systems(1987)A.C.S.Symposium SeriesのVolume 14およびBioreversible Carriers in Drug Design,(1987)Edward B.Roche,ed.,American Pharmaceutical Association and Pergamon Pressに記載されており、これらの両方ともが、本明細書中で参考として援用される。
【0104】
例えば、式IまたはIIの化合物あるいはその化合物の薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物またはエステルが、カルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、酸基の水素原子と、ある基(例えば、(C−C)アルキル、(C−C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、ガンマ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル(例えば、β−ジメチルアミノエチル)、カルバモイル−(C−C)アルキル、N,N−ジ(C−C)アルキルカルバモイル−(C1−C2)アルキルおよびピペリジノ−、ピロリジノ−またはモルホリノ(C−C)アルキルなど)との置換によって形成されるエステルを含み得る。
【0105】
同様に、式IまたはIIの化合物が、アルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子と、ある基(例えば、(C−C)アルカノイルオキシメチル、1−((C−C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C−C)アルカノイルオキシ)エチル、(C−C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C−C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C−C)アルカノイル、α−アミノ(C−C)アルカニル、アリールアシルおよびα−アミノアシルまたはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、各α−アミノアシル基は、独立して、天然に存在するL−アミノ酸、−P(O)(OH)、−P(O)(O(C−C)アルキル)またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール型のヒドロキシル基の除去によって生じるラジカル)などから選択される)との置換によって形成され得る。
【0106】
式IまたはIIの化合物が、アミン官能基を組み込む場合、プロドラッグは、アミン基中の水素原子と、ある基(例えば、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル(ここで、RおよびR’は、各々独立して(C−C10)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ベンジルであるか、またはR−カルボニルは、天然のα−アミノアシルもしくは天然のα−アミノアシルである)、−C(OH)C(O)OY(ここで、Yは、(C−C)アルキルまたはベンジルである)、−C(OY)Y(ここで、Yは、(C−C)アルキルであり、Yは、(C−C)アルキル、カルボキシ(C−C)アルキル、アミノ(C−C)アルキルまたはモノ−N−もしくはジ−N,N−(C−C)アルキルアミノアルキルである)、−C(Y)Y(ここで、Yは、メチルであり、Yは、モノ−N−もしくはジ−N,N−(C−C)アルキルアミノモルホリノ、ピペリジン−1−イルまたはピロリジン−1−イルである)など)との置換によって形成され得る。
【0107】
本発明の1つ以上の化合物は、非溶媒和物の形態、ならびに薬学的に許容可能な溶媒(例えば、水、エタノールなど)との溶媒和物の形態として存在し得、そして本発明は、溶媒和と非溶媒和の形態の両方ともを包含すると意図される。「溶媒和物」とは、1つ以上の溶媒分子との本発明の化合物の物理的結合を意味する。この物理的結合は、様々な程度のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)に関与する。ある特定の場合において、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が、結晶性の固体の結晶格子に組み込まれているとき、単離することが可能である。「溶媒和物」は、液相と単離可能な溶媒和物との両方ともを包含する。適当な溶媒和物の例としては、エタノラート、メタノラートなどが挙げられるが、これらに限定されない。「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0108】
本発明の1つ以上の化合物は、必要に応じて、溶媒和物に変換され得る。溶媒和物の調製方法は、一般に公知である。従って、例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceutical Sci,93(3),601−611(2004)では、水からの調製方法と同様に、酢酸エチル中における抗真菌性フルコナゾールの溶媒和物の調製方法が記載されている。溶媒和物、半溶媒和物(hemisolvate)、水和物などの類似の調製方法は、E.C.van Tonderら、AAPS PharmSciTech.,5(1),article 12(2004);およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.,603−604(2001)によって説明されている。代表的で非限定的なプロセスは、外界温度よりも高い温度において、所望の量の所望の溶媒(有機溶媒もしくは水またはそれらの混合物)に本発明の化合物を溶解する工程、およびその溶液を、結晶を形成するのに十分な速度で冷却し、次いで、標準的な方法によって単離する工程を含む。例えば、I.R.分光法などの分析手法により、溶媒和物(または水和物)として結晶中に溶媒(または水)が存在することが示される。
【0109】
「有効量」または「治療有効量」とは、mGluR、特にmGluR1に拮抗し、そして適当な患者において所望の治療的、寛解的、阻害的または予防的効果をもたらすのに有効な本発明の化合物または組成物の量を説明すると意味される。
【0110】
「カプセル」とは、活性成分を含んでいる組成物を保持または含有するために、メチルセルロース、ポリビニルアルコールまたは変性ゼラチンもしく変性デンプンから作製された特別な容器または封入物を説明すると意味される。堅いカプセルは、代表的には、比較的高いゲル強度の骨ゼラチンと豚皮膚ゼラチンとの混合物から作製される。カプセル自体は、少量の色素、不透明剤(opaquing agent)、可塑剤および保存剤を含み得る。
【0111】
「錠剤」とは、適当な希釈剤とともに活性成分を含んでいる、加圧されているか、または成形された固体剤形を説明すると意味される。錠剤は、湿式造粒、乾式造粒によって得られた混合物または顆粒の加圧または圧縮によって調製され得る。
【0112】
「経口ゲル」とは、親水性(hydrophillic)半固体マトリックスに分散または可溶化された活性成分のことを説明すると意味される。
【0113】
「構成用粉末(Powders for constitution)」とは、水または液分に懸濁され得る活性成分および適当な希釈剤を含む粉末混合物のことをいう。
【0114】
「希釈剤」とは、通常、組成物または投与形態物の大部分を構成する物質のことをいう。適当な希釈剤としては、糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール);コムギ、トウモロコシ、イネおよびジャガイモ由来のデンプン;ならびに微結晶性セルロースなどのセルロースが挙げられる。組成物中の希釈剤の量は、組成物全体の約10〜約90重量%、好ましくは、約25〜約75%、より好ましくは、約30〜約60重量%、なおもより好ましくは、約12〜約60%の範囲であり得る。
【0115】
「崩壊剤」とは、組成物を壊して(崩壊して)、薬物を放出するのを助けるために組成物に加えられる材料のことをいう。適当な崩壊剤としては、デンプン;カルボキシメチルスターチナトリウムなどの「冷水溶性」加工デンプン;天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、ローカストビーンガム、カラヤゴム、グアールガム、トラガカントゴムおよび寒天);セルロース誘導体(例えば、メチルセルロースおよびカルボキシルメチルセルロースナトリウム);微結晶性セルロースおよび架橋微結晶性セルロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム);アルギン酸塩(例えば、アルギン酸およびアルギン酸ナトリウム);ベントナイトなどの粘土;ならびに発泡性の混合物が挙げられる。組成物中の崩壊剤の量は、組成物の約2〜約15重量%、より好ましくは、約4〜約10重量%の範囲であり得る。
【0116】
「結合剤」とは、粉末をともに結合または「接着」させて、顆粒を形成することによって、それらを凝集性にし、その処方物において「接着剤」として作用する物質のことをいう。結合剤は、希釈剤または増量剤(bulking agent)においてすでに利用可能な凝集強度を増大させる。適当な結合剤としては、スクロースなどの糖;コムギ、トウモロコシ、イネおよびジャガイモ由来のデンプン;天然ゴム(例えば、アラビアゴム、ゼラチンおよびトラガカントゴム);海藻の誘導体(例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸アンモニウムカルシウム(ammonium calcium alginate));セルロース材料(例えば、メチルセルロースおよびカルボキシルメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース);ポリビニルピロリドン;ならびにケイ酸マグネシウムアルミニウムなどの無機物が挙げられる。組成物中の結合剤の量は、組成物の約2〜約20重量%、より好ましくは、約3〜約10重量%、なおもより好ましくは、約3〜約6重量%の範囲であり得る。
【0117】
「潤滑剤」とは、摩擦または摩耗を低減することによって、圧縮した後の錠剤、顆粒などをその鋳型または金型から取り出すことができるようにするために、その投与形態に加えられる物質を説明すると意味される。適当な潤滑剤としては、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸カリウム);ステアリン酸;高融点ろう;および水溶性潤滑剤(例えば、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールおよびd’l−ロイシン)が挙げられる。潤滑剤は、顆粒の表面上および顆粒と錠剤を加圧する部分との間に存在しなければならないので、通常、加圧の前のまさしく最後の工程において加えられる。組成物中の潤滑剤の量は、組成物の約0.2〜約5重量%、好ましくは、約0.5〜約2%、より好ましくは、約0.3〜約1.5重量%の範囲であり得る。
【0118】
「滑沢剤(Glident)」とは、固化を防止し、流動がなめらかで一様であるように顆粒の流動特性を改善する材料のことを意味する。適当な滑沢剤としては、二酸化ケイ素およびタルクが挙げられる。組成物中の滑沢剤の量は、組成物全体の約0.1%〜約5重量%、好ましくは、約0.5〜約2重量%の範囲であり得る。
【0119】
「着色剤」とは、組成物または投与形態物に着色をもたらす賦形剤のことをいう。そのような賦形剤としては、食品用色素および適当な吸着剤(例えば、粘土または酸化アルミニウム)に吸着された食品用色素が挙げられ得る。着色剤の量は、その組成物の約0.1〜約5重量%、好ましくは、約0.1〜約1%で変動し得る。
【0120】
「バイオアベイラビリティ」とは、活性薬物成分または治療的部分が、投与される剤形から体循環に吸収される速度および程度のことをいい、その速度および程度は、ある基準またはコントロールと比較するときのものである。錠剤を調製するための従来の方法は、公知である。そのような方法としては、乾燥法(例えば、直接加圧する方法および圧縮によって作製される顆粒を加圧する方法)もしくは湿潤法または他の特別な手順が挙げられる。投与のための他の形態(例えば、カプセル、坐剤など)を作製するための従来の方法もまた周知である。
【0121】
式IおよびIIの化合物は、本発明の範囲内でもある塩を形成する。本明細書中での式IまたはIIの化合物との言及は、他に示されない限り、その塩の言及を含むと理解される。用語「塩」とは、本明細書中で使用されるとき、無機酸および/または有機酸により形成される酸性塩、ならびに無機塩基および/または有機塩基により形成される塩基性塩のことを指す。さらに、式IまたはIIの化合物が、塩基性部分(例えば、ピリジンまたはイミダゾールであるがこれらに限定されない)と酸性部分(例えば、カルボン酸であるがこれらに限定されない)との両方を含むとき、両性イオン(「分子内塩」)が形成され得、それは、本明細書中で使用されるとき、用語「塩」の範囲内に含まれる。薬学的に許容可能な(すなわち、無毒性であり、生理的に許容可能な)塩が好ましいが、他の塩もまた有用である。式IまたはIIの化合物の塩は、例えば、式IまたはIIの化合物と、ある量(例えば、等量)の酸または塩基とを、その塩が沈殿するような溶媒または水性溶媒中で反応させることによって形成され得、その後、凍結乾燥され得る。塩基性(または酸性)の薬学的化合物から製薬学的に有用な塩の形成に適していると一般に考えられている酸(および塩基)は、例えば、S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1−19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201−217;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;The Orange Book(Food & Drug Administration,Washington,D.C.そのウェブサイトにて公開);およびP.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(Eds.),Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(2002)Int’l.Union of Pure and Applied Chemistry,pp.330−331で論考されている。これらの開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0122】
代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩(例えば、本明細書中で言及されるもの)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られている)、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0123】
代表的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、アルミニウム塩、亜鉛塩、有機塩基(例えば、有機アミン)との塩(例えば、ベンザチン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンとともに形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミン、ピペラジン、フェニルシクロヘキシルアミン、コリン、トロメタミンおよびアミノ酸(例えば、アルギニン、リシン)との塩などが挙げられる。塩基性窒素含有基は、薬剤(例えば、ハロゲン化低級アルキル(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチル)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)など)と四級化(quarternized)され得る。
【0124】
そのような酸性塩および塩基性塩のすべてが、本発明の範囲内の薬学的に許容可能な塩であると意図され、すべての酸性塩および塩基性塩が、本発明の目的で、対応する化合物の遊離型と等価であると見なされる。
【0125】
本発明の化合物の薬学的に許容可能なエステルとしては、以下の群:(1)エステル配置のカルボン酸部の非カルボニル部分が、直鎖または分枝鎖のアルキル(例えば、アセチル、n−プロピル、t−ブチルまたはn−ブチル)、アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル)、アリール(例えば、必要に応じて、例えば、ハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコシキまたはアミノで置換されたフェニル)から選択されるヒドロキシ基のエステル化によって得られるカルボン酸エステル;(2)スルホン酸エステル(例えば、アルキルスルホニルまたはアラルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル));(3)アミノ酸エステル(例えば、L−バリルまたはL−イソロイシル);(4)ホスホン酸エステル、および(5)一リン酸、二リン酸、または三リン酸エステルが挙げられる。リン酸エステルは、例えば、C1−20アルコールもしくはその反応性の誘導体または2,3−ジ(C6−24)アシルグリセロールによってさらにエステル化され得る。
【0126】
式I、IIの化合物ならびにその塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグは、それらの互変異性体(例えば、アミドまたはイミノエーテル)として存在し得る。そのような互変異性体のすべてが、本発明の一部として本明細書中で意図される。
【0127】
本発明の化合物(本化合物の塩、溶媒和物およびプロドラッグ、ならびにプロドラッグの塩および溶媒和物を含む)のすべての立体異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体など)、例えば、様々な置換基上に不斉炭素が存在するために生じ得る異性体(鏡像異性体(不斉炭素が存在しない場合でさえも生じ得る)、回転異性体、アトロプ異性体およびジアステレオ異性体を含む)が、本発明の範囲内に意図される。例えば、式IまたはIIの化合物が、二重結合または縮合環を含む場合、シス型とトランス型の両方とも、ならびに混合物が、本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物の個別の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まなくてもよいし、例えば、ラセミ体としてか、または他のすべての立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合されていてもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって定義されているようなS配置またはR配置を有し得る。用語「塩」、「溶媒和物」、「エステル」、「プロドラッグ」などの使用は、本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ラセミ体またはプロドラッグの塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグに対して等価に適用されると意図される。
【0128】
ジアステレオ異性体の(Diasteromeric)混合物は、当業者に周知の方法(例えば、クロマトグラフィおよび/または分別結晶法)によって、それらの物理化学的差異に基づいて個別のジアステレオ異性体に分離され得る。鏡像異性体は、適切な任意の活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモッシャー(Mosher)の酸塩化物などのキラル補助剤)との反応によって鏡像異性体の混合物をジアステレオ異性体の混合物に変換し、そのジアステレオ異性体を分離し、個別のジアステレオ異性体を対応する純粋な鏡像異性体に変換(例えば、加水分解)することによって分離され得る。また、式IまたはIIの化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であり得、それらは、本発明の一部としてみなされる。鏡像異性体はまた、キラルHPLCカラムを使用することによって分離され得る。
【0129】
式IおよびIIの化合物の多型、ならびに式IおよびIIの化合物の塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグの多型は、本発明に含まれると意図される。
【0130】
本発明はまた、1つ以上の原子が、通常天然に存在する原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されている事実以外は、本明細書中に列挙される化合物と同一である、本発明の同位体標識された化合物も包含する。本発明の化合物に組み入れられ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clが挙げられる。
【0131】
式IまたはIIの特定の同位体標識された化合物(例えば、Hおよび14Cで標識された化合物)は、化合物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化同位体(すなわち、H)および炭素−14同位体(すなわち、14C)は、その調製および検出が容易であるために、特に好ましい。さらに、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体による置換は、代謝安定性が高い(例えば、インビボ半減期が長いか、または必要用量が少ない)ことから生じる特定の治療的利点をもたらし得、それゆえ、いくつかの場合においてそれらが好ましいことがある。式IまたはIIの同位体標識された化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬を同位体標識された適切な試薬で置き換えることによって、本明細書の後ろに記載されるスキームおよび/または実施例に開示される手順と類似の手順に従って調製され得る。
【0132】
本発明に記載の化合物は、薬理学的特性を有する;特に、式IまたはIIの化合物は、mGluR(代謝調節型グルタミン酸レセプター)アンタゴニスト、より詳細には、選択的mGluR1アンタゴニストであり得る。従って、本発明の化合物は、mGluR、より詳細には、mGluR1の機能を阻害することによって処置可能かまたは予防可能な状態の処置または予防に有用である。そのような状態としては、興奮性のアミノ酸伝達の過剰な刺激または不適切な刺激に関連する、種々の急性および慢性の神経性障害、ならびにグルタミン酸機能不全(glutamate−deficient function)に導く状態が挙げられる。
【0133】
処置可能かまたは予防可能な急性の神経性障害の例としては、心臓バイパス手術後および心臓移植後の大脳の障害、脳虚血、脳卒中(虚血性または出血性)、脊髄損傷(外傷、梗塞/虚血または炎症に起因)、頭部外傷、周産期低酸素症、心拍停止および低血糖神経損傷が挙げられるが、これらに限定されない。処置可能かまたは予防可能な慢性の神経性障害の例としては、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDS誘発性痴呆、遺伝性運動失調、眼球損傷および網膜症、認知障害ならびに特発性および薬物誘発性のパーキンソン病が挙げられるが、これらに限定されない。式IまたはIIの化合物によって処置可能かまたは予防可能なグルタミン酸機能不全に関連する他の状態としては、筋痙攣、痙攣(例えば、癲癇)、痙縮、片頭痛(月経性片頭痛を含む)、精神病(例えば、精神分裂病および双極性障害)、尿失禁、不安および関連障害(例えば、パニック発作)、嘔吐、脳浮腫、遅発性ジスキネジア、うつ、薬剤耐性および薬物離脱(例えば、オピエート、ベンゾジアゼピン、ニコチン、コカインまたはエタノール)ならびに禁煙が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
式IまたはIIの化合物はまた、神経因性(神経損傷)または炎症性(組織損傷)であり得る疼痛の処置または予防に有用である。これらの化合物は、特に神経因性疼痛の処置または予防に有用である。本明細書中で使用される神経因性疼痛とは、創傷、圧迫、感染、癌、虚血などまたは真性糖尿病などの代謝障害によって引き起こされる、神経、神経叢または神経周囲軟部組織の損傷または変性に伴う機能異常に起因して疼痛閾値などの低下が継続する疼痛感覚の異常な状態のことをいう。神経因性疼痛は、中枢神経または末梢神経のいずれかの損傷によって引き起こされる疼痛を含む。神経因性疼痛はまた、モノニューロパシーまたは多発ニューロパシーのいずれかによって引き起こされる疼痛を含む。いくつかの実施形態において、神経因性疼痛は、糖尿病によって誘発される。他の実施形態において、神経因性疼痛は、神経圧迫によって誘発される。
【0135】
本発明の化合物によって処置可能かまたは予防可能な神経因性疼痛の例としては、異痛症(通常は疼痛を誘発しない機械的刺激または熱刺激によって誘導される疼痛感覚)、痛覚過敏(通常は有通性である刺激に対する過剰な応答)、知覚過敏(接触刺激に対する過剰な応答)、糖尿病性多発ニューロパシー、エントラップメントニューロパシー、癌疼痛、中枢性疼痛、陣痛、心筋梗塞疼痛、脳卒中後の疼痛、膵臓の疼痛、大腸の疼痛、筋痛、術後疼痛、集中治療に関連する疼痛、歯周病(歯肉炎および歯根膜炎を含む)に関連する疼痛、月経痛、片頭痛、持続性頭痛(例えば、群発性頭痛または慢性の緊張性頭痛)、持続性の疼痛状態(例えば、線維筋痛症または筋筋膜性疼痛)、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、関節炎の疼痛(例えば、変形性関節症または関節リウマチによる疼痛)、滑液包炎、AIDSに関連する疼痛、内臓の疼痛(例えば、間質性膀胱炎および過敏性腸症候群(IBS))、脊髄の外傷および/または変性に起因する疼痛、火傷痛、関連痛、疼痛の高感度の記憶および疼痛対処に関連するニューロンのメカニズムが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、異痛症および痛覚過敏の処置または予防に対して特に有用である。
【0136】
式IまたはIIの化合物はまた、患者の炎症または炎症性疾患に関連する疼痛の処置または予防に有用である。本発明の化合物によって処置可能かまたは予防可能な炎症または炎症性疾患に関連する疼痛は、局所的な炎症性反応および/または全身性炎症であり得る体組織の炎症が存在する場合に生じ得る。例えば、本発明の化合物は、炎症性疾患関連の疼痛を処置または予防するために使用され得、その炎症性疾患としては、臓器移植片拒絶;心臓、肺、肝臓または腎臓の移植を含む臓器移植から生じる再酸素化傷害;関節炎、関節リウマチ、変形性関節症および高い骨吸収に関連する骨疾患を含む関節の慢性炎症性疾患;炎症性肺疾患(例えば、喘息、成人呼吸窮迫症候群および慢性閉塞性気道疾患);角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎および眼内炎を含む眼の炎症性疾患;歯肉炎および歯根膜炎を含む歯肉の慢性炎症性疾患;結核;ハンセン病;尿毒性合併症、糸球体腎炎およびネフローゼを含む腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬および湿疹を含む皮膚の炎症性疾患;神経系の慢性脱髄性疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびウイルス性または自己免疫性の脳炎を含む中枢神経系の炎症性疾患;I型およびII型の真性糖尿病を含む自己免疫疾患;糖尿病性の白内障、緑内障、網膜症、腎症(例えば、ミクロアルブミン尿症(microaluminuria)および進行性糖尿病性腎症)、多発ニューロパシー、モノニューロパシー、自律神経性ニューロパシー、足壊疽、アテローム硬化性冠動脈疾患、末梢動脈疾患、非ケトン性高血糖性高浸透圧性昏睡、足潰瘍、関節障害および皮膚または粘膜の合併症(例えば、感染、脛の斑点、カンジダ感染症およびリポイド類壊死症)を含む糖尿病性合併症;免疫複合体性血管炎および全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患(例えば、心筋症、虚血性心臓疾患、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症);ならびに、子癇前症、慢性肝不全、脳および脊髄の外傷ならびに癌を含む重要な炎症性成分を有し得る他の様々な疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明の化合物はまた、身体の全身性炎症(例えば、グラム陽性ショックまたはグラム陰性ショック、出血性ショックまたはアナフィラキシーショック、炎症促進性サイトカインに応答して癌の化学療法によって誘発されるショック(例えば、炎症促進性サイトカイン関連のショック)および癌の処置として投与される化学療法剤によって誘発されるショックを含む炎症性疾患に関連する疼痛の処置または予防のために使用され得る。
【0138】
本発明の1つの局面は、選択的にmGluR1に拮抗する必要のある細胞においてその拮抗を行う方法に関し、その方法は、前記細胞と式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む。
【0139】
用語「代謝調節型(metabatropic)グルタミン酸レセプター(例えば、mGluR1)のアンタゴニスト」とは、代謝調節型グルタミン酸レセプター(例えば、mGluR1)に結合するが、応答を誘発せず、それによって、アゴニスト作用を阻止する、すなわち、mGluR(例えば、mGluR1)の機能を阻害する化合物のことをいう。従って、mGluR(例えば、mGluR1)媒介性のプロセスおよび応答は、mGluR(例えば、mGluR1)のアンタゴニストを用いて阻害することができる。好ましくは、アンタゴニストは、選択的にグループIのmGluRに拮抗する。より好ましくは、本発明のアンタゴニストは、mGluR1の選択的アンタゴニストである。mGluR1の選択的アンタゴニストは、mGluR1に拮抗するが、他のmGluRにわずかに弱く拮抗するか、もしくは実質的に全く拮抗しないか、またはそれがmGluR1に拮抗するときのIC50よりも少なくとも10か、または100もしくは1000倍さえも高いIC50で他のmGluRに少なくとも拮抗するアンタゴニストである。最も好ましいアンタゴニストは、低濃度で選択的にmGluR1に拮抗することができるアンタゴニスト、例えば、100nM以下の濃度で50%以上のレベルの拮抗作用を引き起こすアンタゴニストである。
【0140】
本発明の別の局面は、mGluR1に関連する疾患または状態を処置または予防する必要のある哺乳動物(例えば、ヒト)においてその処置または予防を行う方法に関し、その方法は、治療有効量の少なくとも1つの式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を前記哺乳動物に投与する工程を含む。
【0141】
好ましい用量は、式IまたはIIの化合物の約0.001〜500mg/kg体重/日である。特に好ましい用量は、式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の約0.01〜25mg/kg体重/日である。
【0142】
本発明の化合物はまた、上記の障害または状態の処置のための1つ以上の追加の治療薬と組み合わせる(一緒に投与するか、または連続して投与する)ときに有用であり得る。そのような追加の治療薬は、非オピオイド鎮痛薬(例えば、アセチルサリチル酸、トリサルチル酸コリンマグネシウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ジフルシナル(diflusinal)およびナプロキセン);ならびにオピオイド鎮痛薬(例えば、モルヒネ、ヒドロモルホン、メタドン、レボルファノール、フェンタニール、オキシコドンおよびオキシモルホン)を含む疼痛管理薬剤であり得る。他のそのような治療薬は、非ステロイド抗炎症剤、抗片頭痛剤、Cox−II阻害剤、制吐薬、β−アドレナリン遮断薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、Ca2+チャネル遮断薬、抗癌剤、尿失禁(UI)を処置または予防するための薬剤、アルツハイマー病を処置するための薬剤、炎症性腸疾患(IBD)を処置または予防するための薬剤、炎症性腸症候群(IBS)を処置または予防するための薬剤、パーキンソン病および振せん麻痺を処置するための薬剤、不安を処置するための薬剤、癲癇を処置するための薬剤、脳卒中を処置するための薬剤、精神病を処置するための薬剤、ハンチントン舞踏病を処置するための薬剤、ALSを処置するための薬剤、嘔吐を処置するための薬剤、ジスキネジーを処置するための薬剤、またはうつを処置するための薬剤、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0143】
一定用量として処方する場合、そのような複合生成物は、本明細書中に記載される用量範囲内の本発明の化合物、およびその用量範囲内の他の薬学的に活性な薬剤または処置を用いる。複合処方物が不適当であるときは、式IまたはIIの化合物はまた、公知の治療薬と連続的に投与され得る。本発明は、投与の順序に限定されない;式IまたはIIの化合物は、公知の治療薬の投与の前に投与されてもよいし、その後に投与されてもよい。そのような手法は、当業者ならびに主治医の技術の範囲内である。
【0144】
従って、1つの局面において、本発明は、ある量の式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の少なくとも1つと、ある量の上で列挙した1つ以上の追加の治療薬とを組み合わせたものを含み、ここで、その化合物/処置の量は、所望の治療的効果をもたらす。
【0145】
本発明の化合物の薬理学的特性は、多くの薬理学的アッセイによって確認され得る。代謝調節型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)に対する本発明の化合物の選択的拮抗活性は、当該分野で公知の方法、例えば、実施例に記載されているような方法を用いることによってアッセイされ得る。
【0146】
疼痛を処置または予防するための式IまたはIIの化合物の作用は、様々な動物モデルによって、例えば、以下の試験によって評価され得る:
ホルマリンテスト:マウスを静かに拘束し、30μlのホルマリン溶液(食塩水中1.5%)を、27ゲージ針を装着した微量注射器を用いてマウスの右後肢の足底表面の皮下に注射する。ホルマリン注射後、マウスをすぐにPlexiglas観察チャンバー(30×20×20cm)に戻し、ホルマリン注射に対する動物の侵害受容性応答を、60分に亘って観察する。注射された足を舐める行動および振り回す行動の持続時間を、観察時間全体に亘って5分毎に記録して、定量した。注射の直後から5分後までが、記録の初期(第1相)である。ホルマリン注射の約10〜15分後からが、後期(第2相)である。
【0147】
坐骨神経のL5およびL6脊髄神経の結紮(神経因性疼痛モデル):少し変更を加えた以外は、Kim and Chung(1992)によって先に報告されている方法に従い、右坐骨神経のL5およびL6脊髄神経を結紮することによって末梢性ニューロパシーを生じさせる。簡潔には、ラットをクロラール水和物(400mg/kg,i.p.)で麻酔し、腹臥位にさせ、そして右の傍脊椎筋をL4−S2レベルにおける棘突起から単離する。L4−L5脊髄神経を同定するために、小さい骨鉗子を用いてL5横突起を慎重に取り出す。右のL5およびL6脊髄神経を単離し、そして7/0絹糸できつく結紮する。完全な止血を確認し、創傷を縫合する。
【0148】
坐骨神経の慢性絞窄損傷(CCI)(神経因性疼痛モデル):Bennett & Xie(1987)によって報告された方法に従って手術を行う。ラットをクロラール水和物(400mg/kg,i.p.)で麻酔し、中央から上(mid−thigh)のレベルの共通の坐骨神経を露出する。神経の三叉(nerve trifurcation)から約1cmの近位位置において、1mm間隔で4箇所の神経のまわりを緩く結紮した(4/0絹糸)。結紮によって、表在性神経鞘血管系を介した循環が遅延するが、停止はしない。第2の群の動物には、結紮の配置(偽手術)以外は同じ手順を行った。
【0149】
カラギナン(炎症性疼痛モデル):各動物の右後肢の足底下(subplantar level)に0.1mLのカラギナンを注射する(25GA針)。カラギナンまたは薬物の投与の前に、試験前の値(Pre−test)を測定しておく。後処置プロトコールでは、カラギナン処置によって痛覚過敏が確立された3時間後に、薬物投与の様々な時点において、ラットを試験する。前処置プロトコールでは、薬物投与の1時間後に、ラットをカラギナンで処置し、そして3時間後にそのラットを試験する。
【0150】
フロイントアジュバント誘導性関節炎モデル(炎症性疼痛モデル):パラフィンオイルおよび乳化剤、マンニドモノオレエートの混合物(フロイント完全アジュバント)中に、熱殺菌し、乾燥させたMycobacterium tuberculosis(H37 Ra,Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)の500mg用量を含む100mLの足底下注射を1回、動物に行う。コントロール動物には、0.1mLのミネラルオイル(フロイント完全アジュバント中)を注射する。
【0151】
触覚異痛症の測定(行動試験):行動試験は、処置に対して盲検として観察者によって行われ、また、概日リズムの変動を回避するために明期サイクル中に行われる。一連の調整されたSemmes−Weinstein(Stoelting,IL)von Freyフィラメントを用いて、0.25〜15gの範囲の屈曲力で、触覚感度を評価する。ラットを、金属メッシュの底を備えた透明のプラスチック箱の中に入れ、実験を始める前に、その環境に慣らした。von Freyフィラメントを同側の後肢の足底中央(midplantar)の表面に対して垂直に当て、刺激強度を連続的に上げたり下げたりすること(フィラメントの押し付けの「押し引き(up−down)」パラダイム)によって機械的異痛症を判定する。データは、Dixonノンパラメトリックテスト(Chaplanら、1994)を用いて解析する。刺激後に足を舐める行動または激しい震えは、疼痛様応答と考えられる。
【0152】
熱痛覚過敏(行動試験):熱侵害受容の指標として、肢を引っ込めるまでの時間を測定することによって、放射熱に対する熱痛覚過敏を評価する(Hargreavesら、1998)。痛覚過敏に対する感度であるので、足底試験(Basile,Comerio,Italy)を選択する。簡潔には、この試験は、ラットが置かれているガラス平面の下に配置された可動性の赤外線源からなる。3つの個別のパースペックス箱において、3匹のラットを同時に試験することができる。その赤外線源を、後肢の足底表面の真下に置き、肢を引っ込めるまでの時間(PWL)を、そのラットが後肢を熱源から離すのに要する時間として定義する。PWLを各ラットの両後肢について3回測定し、各肢についての平均値をラットの熱疼痛閾値として示す。放射熱源を調節することにより、10〜12秒のベースライン時間を得る。その装置のカットオフを21秒に固定することにより、組織損傷を防ぐ。
【0153】
体重負荷(行動試験):後肢の重量配分を測定するために、両足圧力差痛覚測定器(incapacitance tester)を用いる。各後肢が別々の圧力プレート上に載るように配置された、曲がったプレキシガラスチャンバー内にラットを入れる。この体重負荷試験は、任意のストレスまたは刺激を加えずに、関節炎のラットの病理学的状態を直接測定することであり、それゆえ、この試験では、その動物の自発的な疼痛行動を測定する。
【0154】
活性成分を単独で投与することが可能であるとき、薬学的組成物としてその活性成分を含ませることが好ましい。本発明の組成物は、上で定義したような少なくとも1つの活性成分を、1つ以上の許容可能なそのキャリア、アジュバントまたはビヒクルおよび必要に応じて他の治療薬とともに含む。キャリア、アジュバントまたはビヒクルの各々は、組成物の他の成分と適合性であり、かつ、処置する必要のある哺乳動物に対して有害でないという意味において許容可能でなければならない。
【0155】
従って、本発明はまた、式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物またはエステルの少なくとも1つおよび薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルの少なくとも1つを含む薬学的組成物に関する。
【0156】
本発明によって記載される化合物からの薬学的組成物の調製のために、不活性で薬学的に許容可能なキャリアは、固体または液体のいずれかであり得る。固体の形態の調製物としては、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。散剤および錠剤は、約5〜約95パーセントの活性成分から構成され得る。適当な固体キャリアは、当該分野で公知であり、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖またはラクトースである。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固体剤形として使用され得る。様々な組成物に対する薬学的に許容可能なキャリアおよび製造方法の例は、A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvaniaに見られ得る。
【0157】
液体の形態の調製物としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。例として、非経口注射用の水もしくは水−プロピレングリコール溶液、または経口用の溶液、懸濁液およびエマルジョンのための甘味料および乳白剤の添加が挙げられ得る。液体の形態の調製物はまた、鼻腔内投与用の溶液も含み得る。
【0158】
吸入に適したエアロゾル調製物としては、溶液および粉末の形態の固体が挙げられ得、それらは、不活性な圧縮ガス、例えば、窒素などの薬学的に許容可能なキャリアと併用され得る。
【0159】
経口または非経口のいずれかの投与に向けて、使用の直前に、液体の形態の調製物に変換することが意図されている固体の形態の調製物もまた含まれる。そのような液体の形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0160】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達可能であり得る。その経皮的組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/またはエマルジョンの形態をとり得、この目的のために当該分野で通常のマトリックスタイプまたはレザバタイプの経皮パッチ中に含まれ得る。
【0161】
本発明の化合物はまた、皮下に送達され得る。
【0162】
好ましくは、本化合物は、経口投与される。
【0163】
好ましくは、本薬学的調製物は、単位剤形である。そのような形態において、その調製物は、適切な量の活性な成分、例えば、所望の目的を達成する有効量を含む適当な大きさの単位用量に分割される。
【0164】
調製物の単位用量中の活性な化合物の量は、特定の適用に応じて、約1mg〜約100mg、好ましくは、約1mg〜約50mg、より好ましくは、約1mg〜約25mgで変更され得るか、または調節され得る。
【0165】
実際に使用される用量は、患者が必要とする量および処置する状態の重症度に依存して変動し得る。特定の状況に対して適正な投与レジメンを決定することは、当該分野の技術範囲内である。便宜上、必要に応じて、1日の総用量を分割し、その日のうちに数回に分けて投与してもよい。
【0166】
本発明の化合物および/またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの投与の量および頻度は、年齢、患者の状態および大きさならびに処置する症状の重症度などの因子を考慮して、主治医の判断によって調節され得る。経口投与用の代表的な1日あたりの推奨投与レジメンは、2〜4回の分割量で、約1mg/日〜約500mg/日、好ましくは、1mg/日〜200mg/日の範囲であり得る。
【0167】
本発明の別の局面は、治療有効量の式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物またはエステルの少なくとも1つおよび薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルの少なくとも1つを備えるキットである。
【0168】
本発明のさらに別の局面は、ある量の式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物またはエステルの少なくとも1つおよびある量の上で列挙した少なくとも1つの追加の治療薬を備えるキットであり、ここで、その量の2つ以上の成分により、所望の治療的効果がもたらされる。
【0169】
本明細書中に開示される本発明は、以下の調製方法および実施例によって例示されるが、それらは、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきでない。当業者には、代替の機構的経路および類似の構造が明らかであろう。NMRデータが示される場合、Hスペクトルは、Varian VXR−200(200MHz,H)、Varian Gemini−300(300MHz)、Varian Mercury VX−400(400MHz)またはBruker−Biospin AV−500(500MHz)のいずれかにおいて得られたものであり、プロトンの数を伴ったppmとして報告され、多重度は、括弧内に示される。LC/MSデータが示される場合、解析は、Applied Biosystems API−100質量分析計およびC18カラム、10−95%CHCN−HO(0.05%TFAを含む)勾配を用いて実施された。観察された親イオンを示す。
【0170】
以下の溶媒および試薬は、括弧内でそれらの省略形によって呼ばれることがある:
Me=メチル;Et=エチル;Pr=プロピル;Bu=ブチル;Ph=フェニルおよびAc=アセチル
μl=マイクロリットル
AcOEtまたはEtOAc=酢酸エチル
AcOHまたはHOAc=酢酸
ACN=アセトニトリル
atm=気圧
BocまたはBOC=tert−ブトキシカルボニル
DCMまたはCHCl:ジクロロメタン:
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMAP=4−ジメチルアミノピリジン
DMF=ジメチルホルムアミド
DMS=硫化ジメチル
DMSO=ジメチルスルホキシド
EDCl=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド
Fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル
g=グラム
h=時間
HATU=ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LAH=水素化アルミニウムリチウム
LCMS=液体クロマトグラフィ質量分析
min=分
mg=ミリグラム
mL=ミリリットル
mmol=ミリモル
MCPBA=3−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH:メタノール
MS=質量分析
NMR=核磁気共鳴分光法
RTまたはrt=室温(周囲、約25℃).
TEAまたはEtN=トリエチルアミン
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィ
TMS=トリメチルシリル
Tosまたはトシル=p−トルエンスルホニル
Tr=トリフェニルメチル
【実施例】
【0171】
概して、本発明の化合物は、公知の出発物質または容易に調製される出発物質、当業者に公知の方法および以下で説明する以下の方法から調製され得る。化合物の立体異性体および互変異性体のすべてが意図される。
【0172】
【化21】

【0173】
【化22】

【0174】
【化23】

【0175】
【化24】

他の関連する経路/化学もまた意図される。
【0176】
(実験手順)
(方法A)
4mLのアセトニトリル中の0.042g(0.12mmol)の化合物1の溶液に、0.023g(0.13mmol)のN−ブロモスクシンイミド(NBS)の溶液を加えた。混合物を同じ温度で3時間撹拌し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の4%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.03gの化合物2が得られた。C1720BrNOSに対する算出MS=409.1;測定値m/z=409.0。化合物8を化合物7から同じように調製した。C1618Sに対する算出MS=360.1;測定値m/z=360.1。
【0177】
(方法B)
4mLのエーテル中の0.10g(0.25mmol)の化合物2の撹拌溶液に、−78℃にて0.25mL(0.4mmol)のn−BuLiを加えた。1時間後、1mLのエーテル中の0.1mLのDMFの溶液を加えた。その混合物を3時間撹拌し、そして30mLの水でクエンチした。それを30mLの酢酸エチルで2回抽出した。併せた有機抽出物を20mLのブラインで洗浄し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の7%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.03gの化合物3が得られた。C1821Sに対する算出MS=357.1;測定値m/z=357.2。
【0178】
(方法C)
4mLのt−BuOH中の、0.022g(0.06mmol)の化合物3と0.020g(0.25mmol)のメチルヒドラジン塩酸塩との混合物を2日間還流しながら撹拌し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の4%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.006gの化合物4が得られた。C1718OSに対する算出MS=340.1;測定値m/z=340.2。
【0179】
(方法D)
密閉チューブ内の3mLのトルエン中の、0.20g(0.5mmol)の化合物2、0.36g(1mmol)のエトキシビニルトリブチルスズ、0.04g(触媒)のPd(PPhおよび0.2g(1.5mmol)のジイソプロピルエチルアミンとの混合物を、マイクロ波照射(Personalchemistry)を用いて20分間180℃に加熱した。それを濃縮した;残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1〜4%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.13gの化合物5が得られた。C2127Sに対する算出MS=399.2;測定値m/z=399.2。化合物21を化合物17bから同じように調製した。C2017ClNSに対する算出MS=398.1;測定値m/z=398.0。
【0180】
(方法E)
6mLのアセトニトリル中の0.10g(0.25mmol)の化合物5の撹拌溶液に、室温にて0.375g(2.5mmol)のヨウ化ナトリウムおよび0.27g(2.5mmol)のクロロトリメチルシランを加えた。30分後、それを30mLの飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチし、40mLの塩化メチレンで2回抽出した。併せた有機抽出物を20mLのブラインで洗浄し、濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の4%メタノールで溶出する分取TLCで精製することより、0.028gの化合物6が得られた。C1819OSに対する算出MS=339.1;測定値m/z=339.1。
【0181】
(方法F)
2mLの濃硫酸中の0.066g(0.2mmol)の化合物1の溶液に、0.2mLの濃硝酸を0℃で加えた。その混合物を室温で1時間撹拌し、そして20mLの氷水に注ぎ込んだ。それを炭酸ナトリウムで塩基性化し、そして30mLの塩化メチレンで2回抽出した。併せた有機抽出物を20mLのブラインで洗浄し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の4%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.021gの化合物7が得られた。C17ONSに対する算出MS=374.1;測定値m/z=374.1。
【0182】
(方法G)
1mLのギ酸中の0.06g(0.17mmol)の化合物8の懸濁液に、0.28g(5mmol)の鉄粉および2mLの6N HClを加えた。その混合物を3時間、還流しながら撹拌し、そして60mLの飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチした。それを、50mLの塩化メチレンで3回抽出した。併せた有機抽出物を40mLのブラインで洗浄し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の8%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.021gの化合物9が得られた。C1718OSに対する算出MS=340.1;測定値m/z=340.1。
【0183】
(方法H)
密閉されたチューブ内の8mLのアセトニトリル中の、0.3g(0.8mmol)の化合物7と1mLの28%水酸化アンモニウムとの混合物を2時間100℃に加熱し、そして室温まで冷却した。それを5mLのメタノールで希釈し、濾過することにより、0.24gの化合物10が得られた。C1516Sに対する算出MS=346.1;測定値m/z=346.1。
【0184】
(方法I)
25mLのメタノール中の、0.17g(0.5mmol)の化合物10と0.03gの10%Pd/Cとの混合物を室温にて90時間水素雰囲気下(風船形フラスコ)で撹拌した。それを150mLのメタノールで希釈し、濾過し、そして濃縮することにより、0.14gの化合物11が得られた。C1518OSに対する算出MS=316.1;測定値m/z=316.1
(方法J)
3mLのHCOOH−HCl(濃)−HO(1:1:1)中の0.048g(0.15mmol)の化合物11の混合物を18時間加熱還流し、そして濃縮した。その残渣を、1mLのHCOOHおよび10mLのo−キシレン中でさらに24時間撹拌し、そして濃縮した。その残渣を塩化メチレン中の7%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.016gの化合物12が得られた。C1616OSに対する算出MS=326.1;測定値m/z=326.2。
【0185】
(方法K)
2mLの濃塩酸中の0.048g(0.15mmol)の化合物11の撹拌溶液に、1mLの水中の0.014g(0.2mmol)の亜硝酸ナトリウムの溶液を室温でゆっくりと加えた。1時間後、それを50mLの飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチし、50mLの塩化メチレンで2回抽出することにより、不純物を除去した。固体を濾過により回収し、水および塩化メチレンで洗浄し、そして乾燥することにより、0.038gの化合物13が得られた。C1515OSに対する算出MS=327.1;測定値m/z=327.2。
【0186】
(方法L)
525mLの塩化メチレン中の18.5g(57.2mmol)の化合物14bの撹拌溶液に、−78℃で16.2mL(172mmol)の三臭化ホウ素を加えた。その反応物を2時間に亘って室温に温め、さらに20時間撹拌した。それを−78℃に冷却し、50mLのメタノールでクエンチし、そして1時間加熱還流した。その混合物を濃縮した;残渣を200mLの飽和炭酸水素ナトリウムとともに撹拌し、そして濾過することにより、15.1gの化合物15bが得られた。C1612Sに対する算出MS=310.1;測定値m/z=310.1。化合物15aを化合物14aから同じように調製した。C15ClNSに対する算出MS=330.0;測定値m/z=330.2。
【0187】
(方法M)
50mLの酢酸中の5.0g(16.2mmol)の化合物15bの撹拌懸濁液に、17.8(1M,17.8ol)の臭素酢酸溶液を室温で加えた。その混合物を6時間撹拌し、濃縮することにより、7.07gの生成物16bを酢酸塩として得た。C1611BrNSに対する算出MS=390.0;測定値m/z=389.9。化合物16aを化合物15aから同じように調製した。C15BrClNSに対する算出MS=407.9;測定値m/z=407.9。
【0188】
(方法N)
7.07g(15.8mmol)の化合物16bと100mLのPOClとの混合物を4時間加熱還流し、そして過剰なPOClを真空下で蒸発させた。その残渣を飽和NaHCOで希釈し、900mLの塩化メチレンで抽出した。併せた有機抽出物を濃縮し、その残渣を、塩化メチレン中の5%アセトンで溶出するクロマトグラフィに供することにより、5.05gの化合物17bが得られた。C1611BrClNOSに対する算出MS=408.0;測定値m/z=408.0。化合物17aを化合物16aから同じように調製した。C15BrClOSに対する算出MS=333.1;測定値m/z=333.2。
【0189】
(方法O)
密閉チューブ内の、14mLのトルエン−トリフルオロメチルベンゼン(1:1)および1mLのDMF中の、0.43g(1mmol)の化合物17a、0.38g(1.2mmol)のビニルトリブチルスズ、0.10g(触媒)のPd(PPhおよび0.2g(1.5mmol)のジイソプロピルエチルアミンの混合物を、マイクロ波照射(Personalchemistry)を用いて40分間140℃に加熱した。同じ反応をさらに3回行った。併せた反応混合物を濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中1〜4%アセトンで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.52gの化合物18aが得られた。C1710ClOSに対する算出MS=374.0;測定値m/z=374.2。化合物18bを化合物17bから同じように調製した。C1813ClNOSに対する算出MS=354.1;測定値m/z=354.1。
【0190】
(方法P)
70mLのTHF−HO(7:3)中の0.24g(0.64mmol)の化合物18aの懸濁液に、tert−ブタノール(2.5重量%)中の1.3g(6.1mmol)の過ヨウ素酸ナトリウムおよび1mLの四酸化オスミウムを加えた。その混合物を室温で3日間撹拌した。それを30mLの25%Naでクエンチし、70mLの塩化メチレンで3回抽出した。併せた有機抽出物を30mLのブラインで洗浄し、濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の1〜4%アセトンで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.165gの化合物19aが得られた。C16ClSに対する算出MS=376.0;測定値m/z=376.2。化合物19bを、化合物18bから同じように調製した。C1711ClNSに対する算出MS=356.0;測定値m/z=356.0。
【0191】
(方法Q)
15mLのtert−ブタノール中の0.04g(0.1mmol)の化合物19aと0.1g(過剰)のヒドラジン一水和物との混合物を70℃で3時間撹拌した。その沈渣を濾過により回収し、次いで、逆相HPLC(C−18 BHKカラム,95〜5%水/5〜95%MeCN/0.1%HCOOH)で精製することにより、0.008gの化合物20aが得られた。C16ClNOSに対する算出MS=354;測定値m/z=354.2。化合物20bを化合物19bから同じように調製した。C1712OSに対する算出MS=334.1;測定値m/z=334.2。
【0192】
(方法R)
1mLの1M HClおよび8mLのTHF中の0.095g(0.24mmol)の化合物21の溶液を、16時間還流しながら撹拌し、そして濃縮した。その残渣を20mLの塩化メチレンと10mLの飽和炭酸水素ナトリウムとの間で分離させた。その水相を10mLの塩化メチレンで2回抽出した。併せた有機抽出物を40mLのブラインで洗浄し、そして濃縮することにより、0.086gの化合物22を固体として得た。C1813ClNSに対する算出MS=370.0;測定値m/z=370.0。
【0193】
(方法S)
28mLのメタノール中の0.07g(0.19mmol)の化合物22の撹拌溶液に、0.007g(0.19mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを数回に分けて加えた。25分後、それを2mLの水でクエンチし、そして濃縮した。その残渣を40mLの塩化メチレンと20mLの水との間で分離した。その水相を30mLの塩化メチレンで抽出した。併せた有機抽出物を濃縮した;その残渣を、塩化メチレン中の5%アセトンで溶出する分取TLCで精製することにより、0.023gの化合物23が得られた。C1815ClNSに対する算出MS=372.1;測定値m/z=372.0。
【0194】
(方法T)
2.5mLのTHF中の0.023g(0.062mmol)の化合物23および0.003g(0.124mmol)の60%NaH (油中)の懸濁液を2時間還流しながら撹拌し、室温に冷却し、そして1mLの水でクエンチした。それを濃縮し、そしてその残渣を10mLの塩化メチレンと5mLの水との間で分離させた。その水相を20mLの塩化メチレンで2回抽出した。併せた有機抽出物を濃縮した;その残渣を、塩化メチレン中の15%アセトンで溶出する分取TLCで精製することにより、0.010gの化合物24が得られた。C1814Sに対する算出MS=336.1;測定値m/z=336.1。
【0195】
(方法U)
60mLの酢酸中の1.32g(4.1mmol)の化合物25bの撹拌懸濁液に、室温にて5mL(1M,5mmol)の臭素酢酸溶液を加えた。その混合物を20分間撹拌し、そして濃縮した。その残渣を80mLのメタノールとともに撹拌し、そして濾過することにより、1.28gの化合物26bが得られた。C1612BrNSに対する算出MS=405.0;測定値m/z=405.2。化合物26aを化合物25aから同じように調製した。C1612BrNOSに対する算出MS=387.0;測定値m/z=387.1。
【0196】
(方法V)
密閉チューブ内の12mLのトルエン−トリフルオロメチルベンゼン(1:1)中の、0.60g(1.5mmol)の化合物26b、1.1g(3mmol)のエトキシビニルトリブチルスズ、0.10g(触媒)のPd(PPhおよび0.645g(5.0mmol)のジイソプロピルエチルアミンの混合物を、マイクロ波照射(Personalchemistry)を用いて3時間180℃に加熱した。それを濃縮した;1mLの塩酸(1M)および8mLのTHF中の残渣を、3時間、還流しながら撹拌し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン中の1〜4%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.13gの化合物27bが得られた。C1813Sに対する算出MS=349.1;測定値m/z=349.2。化合物27aを化合物26aから同じように調製した。C1813OSに対する算出MS=333.1;測定値m/z=333.2。
【0197】
(方法W)
密閉チューブ内の4mLのDMF中の、0.23g(0.6mmol)の化合物25aおよび0.19g(1.2mmol)のキサントゲン酸カリウムの懸濁液を160℃で7時間撹拌し、溶媒を真空下で蒸発させた。その残渣を40mLの塩化メチレン−メタノール(1:1)とともに撹拌し、そして濾過することにより、0.17gの化合物28を淡黄色固体として得た。C1711OSに対する算出MS=383.0;測定値m/z=383.1。
【0198】
(方法X)
3mLのDMF中の0.035g(0.09mmol)の化合物28の撹拌溶液に、0.028g(0.2mmol)の炭酸カリウムを加えた。30分後、1mLのDMF中の0.017g(0.12mmol)のヨードメタンの溶液を加え、その混合物を、室温でさらに30分間撹拌した。それを濃縮し、その残渣を50mLの塩化メチレンおよび30mLの水に溶解した。その水相を20mLの塩化メチレンで抽出した。併せた有機抽出物を20mLのブラインで洗浄し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1〜4%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.027gの化合物29が得られた。C1813OSに対する算出MS=397.0;測定値m/z=397.1。
【0199】
(方法Y)
5mLのDMF中の0.105g(0.27mmol)の化合物29の撹拌懸濁液に0.72g(1.3mmol)のナトリウムメトキシドを加えた。その混合物を室温で18時間撹拌し、1滴の水でクエンチし、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1〜5%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.048gの化合物30が得られた。C1711に対する算出MS=367.0;測定値m/z=367.1。
【0200】
(方法Z:)
8mLのDMF中の0.08g(0.24mmol)の化合物27aの溶液に0.14g(1mmol)の炭酸カリウムおよび0.1g(過剰)のヨードメタンを加えた。その混合物を室温で18時間撹拌し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1%〜5%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、粗生成物が得られ、それを、塩化メチレン中のメタノールで溶出する分取TLCでさらに精製することにより、0.026gの化合物31が得られた。C1915OSに対する算出MS m/z=347.1;測定値m/z=347.2。
【0201】
(方法AA)
密閉されたチューブ内の4mLのトルエンおよび1mLのトリフルオロメチルベンゼン中の、0.3g(0.74mmol)の化合物26c、0.4g(1.2mmol)のアリルトリブチルスズ(allylltributyltin)および0.26g(2mmol)のジイソプロピルエチルアミンおよび0.08gのPd(PPhの混合物を、175℃で30分間加熱した(マイクロ波中、personalChemistry)。それを濃縮し、その残渣を、塩化メチレン中の4%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.1gの化合物32が得られた。C1814ClNOSに対する算出MS m/z=369.1;測定値m/z=369.2。
【0202】
(方法AB)
30mLのTHF−HO(1:1)中の0.12g(0.33mmol)の化合物32の撹拌懸濁液に、0.3mLのOsO(t−BuOH中、2.5重量%)および0.077g(0.66mmol)のNMOを加えた。その混合物を、室温で2日間撹拌し、そして5mLのチオ亜硫酸ナトリウムでクエンチした。それを濃縮し、その残渣を200mLの塩化メチレン−メタノール(1:1)とともに撹拌し、次いで濾過した。その濾液を濃縮した;その残渣を、塩化メチレン中の8%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.038gの化合物33が得られた。C1816ClNSに対する算出MS m/z=403;測定値m/z=403.2。
【0203】
(方法AC)
30mLのHO中の0.037g(0.1mmol)の化合物33、0.04g(0.2mmol)の過ヨウ素酸ナトリウムの混合物を、室温で90時間撹拌し、そして濃縮した。その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1%〜5%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.028gの化合物34が得られた。C1710ClNOSに対する算出MS m/z=353.0;測定値m/z=353.2。
【0204】
(方法AD)
10mLのMeCN中の0.19g(0.44mmol)の化合物17a、0.1g(過剰)のヒドロキシエチルアミンの混合物を100℃で1日間撹拌し、室温に冷却した。その反応物を濾過し、そして4mLのメタノールで洗浄することにより、0.16gの化合物37aが得られた。C1713BrClNSに対する算出MS m/z=453.0;測定値m/z=453.2。
【0205】
以下の化合物を同じように調製した:
【0206】
【化25】

【0207】
【化26】

(方法AE)
密閉されたチューブ内の7mLのトルエン中の、0.12g(0.27mmol)の化合物37、0.1g(0.44mmol)のPd(OAc)ならびに0.2g(0.5mmol)のラセミ−2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルおよび0.18g(0.55mmol)のCsCOの混合物を、20時間125℃に加熱した。それを濃縮した;その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1%〜5%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.037gの化合物38aが得られた。C1711ClNSに対する算出MS m/z=371.1;測定値m/z=371.2。以下の化合物を同じように調製した:
【0208】
【化27】

(方法AF)
15mLのTFA中の0.25g(0.7mmol)の化合物39および1.2mLの硝酸の混合物を、1時間、還流しながら撹拌し、次いで、室温に冷却し、そして濃縮した。その残渣を、1%NHOHを含むジクロロメタン中の5%メタノールで溶出する分取TLCで精製することにより、0.15gの化合物40a(C15ClNSに対する算出MS m/z=374.0;測定値m/z=374.2)および0.08gの化合物40b(C1611ClNSに対する算出MS m/z=388.0,測定値m/z=388.2)が得られた。
【0209】
(方法AG)
5mLの濃HCl中の0.14g(約0.38mmol)の化合物40aおよび0.25gの塩化スズの混合物を、18時間還流しながら撹拌し、次いで、濃縮した。この残渣に、1mLのHCOOH、0.02gのp−トルエンスルホン酸および10mLのo−キシレンを加えた。その混合物を、2日間還流しながら撹拌し、濃縮した。その残渣を、塩化メチレン+1%水酸化アンモニウム中の1%〜5%メタノールで溶出するクロマトグラフィで精製することにより、0.012gの化合物35が得られた。C16ClNOSに対する算出MS m/z=354.0;測定値m/z=354.2。
【0210】
以下の化合物をそれぞれ40aおよび40bから同じように調製した:
【0211】
【化28】

(IC50測定)
hmGluR1レセプターを安定して発現するCHO細胞株を樹立した。アッセイの前日に、細胞を100μlの容量中50,000細胞/ウェルの濃度で増殖培地に分割し、黒色透明底96ウェルプレートに蒔いた。2〜6時間後、細胞がプレートに十分接着したら、増殖培地を、GPT(1U/mL)およびピルビン酸ナトリウム,1mMを補充したDMEM高グルコースからなるアッセイ培地(100μL)に置き換えた。一晩インキュベートさせた後、培地を廃棄し、製造者の指示書に従って調製されたCalcium 3 Assay Reagent Kit(Molecular Devices,#R8033)の色素に細胞を2時間添加した。96−チップピペッター/蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR384;Molecular Devices)を用いて、6秒間のベースライン測定後にアゴニストキスカル酸塩刺激に対する細胞内のカルシウムの流動を蛍光の増加により測定した。試験化合物をキスカル酸塩の刺激の10分前に加えた。試験化合物に対するIC50測定値を、標準的な用量反応曲線におけるEC80値に対応するキスカル酸塩1μMに対して求めた。
【0212】
以下の表において、mGluR1のIC50値が20nM未満(<20nM)の化合物には、文字「A」を割り当て;IC50値が20〜100nM未満(10〜<100nM)の化合物には、文字「B」を割り当て;IC50値が100〜1000nMの化合物には、文字「C」を割り当て;そして、IC50値が1000nM超(>1000nM)の化合物には、文字「D」を割り当てる。
【0213】
【化29】

【0214】
【化30】

【0215】
【化31】

代表的な化合物に対する特定のIC50値を以下の表3に示す。
【0216】
【化32】

【0217】
【化33】

本発明の広範な概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更がなされ得ることを当業者は理解するであろう。それゆえ、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲内の改変にまで及ぶことが意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であって、
ここで:
Wは、S、OまたはN(R10)であり;
Xは、NまたはCR3であり;
Yは、NまたはCRであり:
およびJは、各々独立してC(R)またはNであり;
は、−H、−NR、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)R、−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)Rおよび−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、独立して、H、ハロ、−CN、−NHC(O)R、−NHSO、−NR、−OR、−C(O)R、−C(O)R、−C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、H、−C(O)OR、−SO、−C(O)NRならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、独立して、H、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;または
およびRまたはRおよびRは、同じ窒素原子に結合するとき、必要に応じて該窒素原子と共に、該窒素原子に加えて独立してO、NまたはSから独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の複素環式環を形成し;
は、H、ハロ、−OR、−NO、−CN、−NRC(O)R、−NRSO、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)NR、ならびに必要に応じて、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)C(O)NRおよび−NRSOの少なくとも1つで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
10は、H、−C(O)R、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され、
Aは、CHR、CR、O、S、N、NR、C=OおよびC=Sからなる群から選択され;
Bは、N、NR、CHR、CR、O、S、C=O、C=SおよびC−S−Rからなる群から選択され;
Dは、CHR、O、SおよびNRからなる群から選択され;そして
mは、1〜3である、化合物。
【請求項2】
【化2】

が、
【化3】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがSおよびZであり、そしてXがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
WがSであり、JがCRであり、JがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
WがSであり、JがCRであり、JがNであり、ZおよびXがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
AおよびBが、CHRおよびCRからなる群から選択され、DがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
AがCHRまたはCRであり、BがNまたはNRであり;DがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
AがNまたはNRであり、DがNRであり、BがCHRまたはCRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
AおよびBが、CHRおよびCRからなる群から選択され、DがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
AおよびBが、CHRおよびCRからなる群から選択され、DがSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
AおよびBが、CHRおよびCRからなる群から選択され、DがCRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
AがNまたはNRであり、BがCHRまたはCRであり、DがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
AがOであり、BがCHRまたはCRであり、DがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
AがSであり、BがC=O、C=SおよびC−S−Rからなる群から選択され、DがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
WがSであり、Rがシクロヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
WがSであり、Rがp−メチルフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
WがSであり、Rがp−メトキシフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
WがSであり、Rがp−ハロフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、以下に示される化合物:
【化4】

【化5】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
式II:
【化6】

の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であって、
ここで:
Wは、S、OまたはN(R10)であり;
Xは、NまたはCRであり;
Yは、NまたはCRであり;
およびJは、各々独立してC(R)またはNであり;
は、−H、−NR、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)R、−N(R)C(O)NR
;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)S(O)Rおよび−N(R)C(O)NR;ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、H、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
およびRは、独立して、H、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択されるか;または
およびRまたはRおよびRは、同じ窒素原子に結合するとき、必要に応じて該窒素原子と共に、該窒素原子に加えて独立してO、NまたはSから独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の複素環式環を形成し;
は、H、ハロ、−OR、−NO、−CN、−NRC(O)R、−NRSO、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)NR、ならびに必要に応じて、ハロ、−CN、−NO、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)NR、−N(R)C(O)R、−OS(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−N(R)C(O)NRおよび−NRSOの少なくとも1つで置換されている、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
は、必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
10は、H、−C(O)R、−C(O)OR、−SO、−C(O)NR、ならびに必要に応じて少なくとも1つのRで置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基からなる群から選択され;
11は、ハロであり;
12は、−NR1314であり;
13は、Hまたはアルキルであり;そして
14は、ヒドロキシ置換基で置換されたアルキルである、化合物。
【請求項21】
WがSであり、ZおよびXがNである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
WがSであり、JがCRであり、JがNである、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
WがSであり、JがCRであり、JがNであり、ZおよびXがNである、請求項
20に記載の化合物。
【請求項24】
WがSであり、Rがp−メチルフェニルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項25】
WがSであり、Rがp−ハロフェニルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項26】
11がブロモである、請求項20に記載の化合物。
【請求項27】
前記化合物が、以下に示される化合物:
【化7】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項28】
請求項1もしくは2に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物および少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む、薬学的組成物。
【請求項29】
請求項19もしくは27に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物および少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む、薬学的組成物。
【請求項30】
1つ以上の追加の治療薬をさらに含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
1つ以上の追加の治療薬をさらに含む、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記追加の治療薬が、疼痛管理に適した治療薬、抗不安剤、抗片頭痛剤および尿失禁の
処置に適した治療薬からなる群から選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記追加の治療薬が、疼痛管理に適した治療薬、抗不安剤、抗片頭痛剤および尿失禁の処置に適した治療薬からなる群から選択される、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
代謝調節型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)活性に対して選択的に拮抗する必要のある細胞において、代謝調節型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)活性を選択的に拮抗する方法であって、該細胞と、治療有効量の請求項1もしくは20に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルとを接触させる工程を含む、方法。
【請求項35】
代謝調節型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)の機能に関連する疾患または状態を処置する必要のある哺乳動物において、代謝調節型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)の機能に関連する疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の請求項1もしくは20に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを投与する工程を含む、方法。
【請求項36】
前記疾患または状態が、疼痛である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患または状態が、神経因性疼痛である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患または状態が、異痛症である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患または状態が、痛覚過敏である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記疾患または状態が、炎症または炎症性疾患に関連する疼痛である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
疼痛管理に適した1つ以上の追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記追加の治療薬が、オピオイド鎮痛薬である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記追加の治療薬が、非オピオイド鎮痛薬である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患または状態が、筋痙攣、痙攣、痙縮、片頭痛、精神病、尿失禁、不安および関連障害、嘔吐、脳浮腫、遅発性ジスキネジア、うつ、薬剤耐性および薬物離脱ならびに禁煙からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記疾患または状態が、不安である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
1つ以上の追加の抗不安剤を投与する工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または状態が、片頭痛である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
1つ以上の追加の抗片頭痛剤を投与する工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患または状態が、尿失禁である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
尿失禁の処置に適した1つ以上の追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記疾患または状態が、心臓バイパス手術後または心臓移植後の大脳の障害、脳虚血、脳卒中、脊髄損傷、頭部外傷、周産期低酸素症、心拍停止、低血糖神経損傷、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDS誘発性痴呆、遺伝性運動失調、眼球損傷および網膜症、認知障害ならびに特発性または薬物誘発性のパーキンソン病からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
単離され、精製された形態の、請求項1または20に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−508966(P2009−508966A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532391(P2008−532391)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/036858
【国際公開番号】WO2007/038209
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】