説明

治療薬の組み合わせおよび投与の様式ならびに併用療法

本発明は、ナノ粒子組成物のタキサンの有効量を個体に投与することからなる第一の療法、及び例えば放射線療法、手術、化学療法薬の投与又はそれらの組み合わせを含む場合がある第二の療法からなる、増殖性疾患(癌等)を処置する併用療法を提供する。又、メトロノーム投与法に基づきナノ粒子組成物の薬剤タキサンを個体に投与する方法も提供される。本発明は、癌等の増殖性疾患の処置方法を提供する。本発明は、a)タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を個体に投与することからなる第一の療法及びb)化学療法、放射線療法、手術又はそれらの組み合わせ等の第二の療法からなる、増殖性疾患(癌等)の併用治療法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、仮特許出願第60/654,245号(2005年2月18日出願)の優先権を主張し、この出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明はタキサン及び少なくとも1つのその他の治療薬との組み合わせを投与することからなる増殖性疾患を処置するための方法及び組成物、並びに増殖性疾患の処置に有用なその他の処置療法に関する。特に、本発明は、癌の処置に使用される場合があるその他の化学療法薬又は放射線療法と併用するパクリタキセル及びアルブミン(アブラキサンTM等)を含むナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
多くの腫瘍が薬剤及び/又は放射線療法に奏功しないことが、癌の処置において深刻な問題となっている。事実、化学療法の分野においては一定の進歩が見られるにもかかわらず、ヒトで最も良く見られる癌の多くが依然として有効な化学療法によるインターベンションに抵抗性を示している大きな理由の一つに、この問題が含まれている。
【0004】
癌は現在、主に手術、放射線療法及び化学療法という3種類の療法の1つ又は組み合わせによって処置されている。手術は、腫瘍の全て又は一部を身体から摘出する従来からの手法である。一般的に手術は早期癌の処置にのみ有効である。手術は特定の部位、例えば乳、大腸及び皮膚に位置する腫瘍を摘出するには有効である場合があるが、術者がアクセスできない他の部位に位置する腫瘍の処置、又は白血病等の播種性の新生物疾患の処置には使用することができない。癌個体の半数以上は、診断の時点でもはや外科処置が有効な候補者ではなくなっている。外科処置は、術中の血液循環により腫瘍の転移を促進する場合がある。癌個体の大半は、診断又は手術の時点での癌が原因で死亡するのではなく、癌の転移又は再発が原因となって死亡する。
【0005】
その他の療法も有効ではないことが多い。放射線治療は、限局型の早期及び中期癌を有する個体にのみ有効であって、転移を伴う末期癌には有効ではない。放射線治療は一般的に、異常な増殖性組織を含む個体の身体の特定領域に施して、その異常な組織が吸収する線量を最大限にし、隣接する正常な組織が吸収する線量を最小限にする。しかし、異常な組織に選択的に治療的放射線照射を行うことは(不可能でないにしても)困難である。このため、異常な組織に近い正常な組織も、治療期間にわたって、損傷を引き起こしうる放射線の線量に曝露されてしまう。又、個体の身体全体を放射線照射に曝露することを必要とする処置もあり、これは「全身照射」又は「TBL」と呼ばれている。このため、異常な増殖性細胞を破壊するにあたっての放射線療法の有効性は、隣接する正常な細胞に対する細胞毒性作用と天秤にかけられるものである。このため、放射線療法は本来、治療指数が狭く、大半の腫瘍に対しては不十分な処置となる。最良な放射線療法であっても、腫瘍の退縮が不完全であるか、腫瘍が再発するか、全身腫瘍組織量が増加するか、放射線抵抗性腫瘍が誘導されることがある。
【0006】
化学療法は、細胞の複製又は細胞の代謝を阻害するものである。化学療法は有効である場合もあるが、嘔吐、白血球減少(WBC)、脱毛、体重減少及びその他の毒性作用等の重度の副作用が生じる。極めて毒性の高い副作用があるため、無事に化学療法の投与計画を終了することができない癌個体が多い。化学療法が誘発する副作用は、個体のクオリティ・オブ・ライフに著明な影響を与え、個体の処置へのコンプライアンスに重大な影響を与える。又、化学療法薬に伴う副作用は一般的にこれらの薬剤の投与における重要な用量制限毒性(DLT)である。例えば、口内炎は、5−FU、メトトレキセート等の抗代謝性細胞毒性剤及びドキソルビシン等の抗腫瘍性抗生物質をはじめとする幾つかの抗癌剤における重要な用量制限毒性の一つである。これらの化学療法誘発性副作用の多くは重度であれば入院が必要になるか、疼痛治療として鎮痛薬の投与を必要とすることがある。化学療法に対する忍容性が不良であるために化学療法のために死亡する癌個体もいる。抗癌剤の極度の副作用は、こうした薬剤の標的特異性が低いことに起因する。薬剤は、個体の大半の正常な器管並びに目的の標的腫瘍を循環する。副作用を引き起こす標的特異性の低さは、薬剤の分画のみしか正しく標的に向かわないため化学療法の有効性も低下させる。化学療法の有効性は、抗癌剤が標的腫瘍に殆ど留まらないことによっても更に低下する。
【0007】
新生物、腫瘍及び癌は重度で幅広いため、手術、化学療法及び放射線療法の欠点に打ち勝つような有効なこうした疾患及び疾病の処置が大いに必要とされている。
化学療法薬の問題
薬剤耐性の問題は、併用化学療法の重要性を更に高める理由でもある。化学療法により、耐性細胞の発現を避けつつも、すでに薬剤耐性となった既存の細胞を殺す必要があるためである。
【0008】
薬剤耐性とは、疾患が一つの治療薬又は複数の治療薬に反応しない状況に付けられた名称である。薬剤耐性は、疾患がこれまでその薬剤又はその複数の薬剤に反応したことがないことを意味する内因性であるか、以前は反応していた薬剤又は複数の薬剤に疾患が反応することを止めたことを意味する獲得性であるかの何れかである。多剤耐性(MDR)は、1つ以上の機能的及び/又は構造的に関係のない薬剤に対する疾患の交叉耐性を特徴とする、特異的な薬剤耐性である。癌の分野における多剤耐性に関しては、非特許文献1(特にVII章(p.208−213)の「The Multidrug−Resistant Phenotype(MDR)」)、及び非特許文献2でより詳細に考察されている。
【0009】
多剤耐性(MDR)の一種は、P−糖タンパク(P−gp)と呼ばれる膜結合型170〜180kDエネルギー依存性流出ポンプで仲介される。P−糖タンパクは、多数のヒト腫瘍の疎水性の天然製剤に対する内因性及び獲得性耐性において重要な役割を果たしていることが明らかになっている。基質として働き、結果としてP−gpによって無毒化される薬剤には、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、アントラサイクリン類(アドリアマイシン)及びエピポドフィロトキシン類(エトポシド)が含まれる。MDRに伴うP−gpは腫瘍細胞の化学療法薬に対する耐性の主要な決定因子であるが、MDRという現象が多因子性のものであり、多数の異なる機序が係わっていることは明らかである。
【0010】
癌の化学療法及び抗ウイルス性化学療法の主要な合併症は、骨髄細胞への損傷及びその機能の抑制である。具体的には、化学療法は、主として骨髄及び脾臓に認められる造血前駆細胞に損傷を与えるか、破壊し、新しい血球(顆粒球、リンパ球、赤血球、単球、血小板等)の産生を阻害する。例えば、癌個体に5−フルオロウラシルを投与した場合、白血球(リンパ球及び/又は顆粒球)の数が減少し、個体は感染症にかかりやすくなることがある。多くの癌個体は感染症又は化学療法の後の造血障害の結果、死亡する。又、化学療法薬により血小板の生成が減少し、出血傾向が生じる。赤血球の産生の阻害により貧血が生じる。癌個体によっては、造血系及びその他の重要な組織への損傷のリスクにより、良好な抗腫瘍又は抗ウイルスの有効性を提供するのに十分なだけ、化学療法薬の用量を増加させる機会が制限されることが良くある。化学療法薬の反復投与又は高用量の投与は、重篤な長期の造血系の後遺症及び骨髄の枯渇につながる重度の幹細胞枯渇の原因になる。
【0011】
化学療法の副作用の予防又は保護は、癌個体にとって大きな利益である。生命を脅かす副作用があれば、化学療法薬の用量及び投与計画を変更し、副作用を抑えることに集中してきた。顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン11、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、巨核球の発現及び増殖因子、Pixykines、幹細胞因子、FLT−リガンド並びにインターロイキン1、3、6及び7の使用といった別の選択肢が検討対象となり、化学療法の開始前の種々の組織における正常な細胞の数を増加させることになる(Jimenez and Yunis,Cancer Research 52:413−415;1992を参照)。これらの因子による保護の機序は、完全に解明されているわけではないが、細胞毒性剤の投与前の正常な臨界の標的細胞の数の増加に関連する可能性が高く、化学療法後の細胞の生存率の増加に起因するわけではない。
腫瘍の処置における化学療法薬によるターゲティング
固形腫瘍の増殖及び転移は何れも血管新生依存性である(Folkman,J.Cancer Res.,46,467−73(1986);Folkman,J.Nat.Cancer Inst.,82,4−6(1989);Folkman et al.,“Tumor Angiogenesis”,Chapter 10,pp.206−32 in The Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn et al.,eds(W.B.Saunders,1995))。例えば、直径2mm以上に増大した腫瘍は、自らへの血液供給を獲得しなければならず、そのために新しい毛細血管の増殖を誘導することが明らかになっている。これらの新しい血管が腫瘍に包埋されると、血管は腫瘍の増殖に必須の栄養及び増殖因子を供給すると共に、腫瘍細胞が全身循環に入り込む手段となり、肝、肺又は骨といった遠隔部位への転移が起こる(Weidner,New Eng.J.Med.,324(1),1−8(1991))。腫瘍を有する動物に対して薬剤として使用される場合、血管新生の天然の阻害物質は、小さな腫瘍の増殖を予防することができる(O’Reilly,et al.,O’Reilly,et al.,Cell,79,315−28(1994))。事実、プロトコールによっては、こうした阻害物質の投与が処置の中断の後でも腫瘍を退縮させるか休眠させている(O’Reilly,et al.,Cell,88,277−85(1997))。更に、特定の腫瘍に血管新生の阻害物質を供給することで、他の治療計画(化学療法等)に対する腫瘍の反応が強化されることがある(Teischer,et al.,Int.J.Cancer,57,920−25(1994)を参照)。
【0012】
タンパク質チロシンキナーゼは、細胞の増殖及び分化の調節に関与する種々のタンパク質における特異的なチロシル残基のリン酸化を触媒する(A.F.Wilks,Progress in Growth Factor Research,1990,2,97−111;S.A.Courtneidge,Dev.Supp.l,1993,57−64;J.A.Cooper,Semin.Cell Biol.,1994,5(6),377−387;R.F.Paulson,Semin.Immunol.,1995,7(4),267−277;A.C.Chan,Curr.Opin.Immunol.,1996,8(3),394−401)。タンパク質チロシンキナーゼは、受容体型(EGFr、c−erbB−2、c−met、tie−2、PDGFr、FGFr等)又は非受容体型(c−src、Ick、Zap70等)キナーゼに大別される。これらのキナーゼの多くが不適切又は制御不可能に活性化すると、例えば過剰発現又は突然変異により、タンパク質チロシンキナーゼの活性が異常になると、細胞の増殖が制御不可能になることが明らかにされている。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)の活性の上昇は、非小細胞肺癌、膀胱癌及び頭頚部癌に関与しており、c−erbB−2の活性の上昇は乳癌、卵巣癌、胃癌及び膵癌に関与するとされてきた。このように、タンパク質チロシンキナーゼの阻害は、上述のような腫瘍の処置に有用であると考えられる。
【0013】
増殖因子は、典型的には細胞表面上の特異的な受容体に結合することによって、細胞増殖を誘発する物質である。上皮増殖因子(EGF)は種々の細胞のin vivoでの増殖を誘発し、殆どの培養細胞の増殖に必要とされる。EGF受容体は170〜180kDの膜貫通型糖タンパクであり、多岐にわたる種類の細胞で検出される。この受容体の細胞外N末端領域は高度に糖化されており、EGFRに選択的に結合するEGF抗体と結合する。EGFRに競合的に結合する薬剤は、特定の種類の癌を処置するために使用されてきた。何故なら、中胚葉及び外胚葉由来の腫瘍の多くは、EGF受容体を過剰発現するためである。例えば、EGF受容体は、多くのグリオーマ、扁平上皮癌、乳癌、メラノーマ、浸潤性膀胱癌及び食道癌で過剰発現することが明らかになっている。抗腫瘍治療のためEGFR系を利用しようという試みには、一般的にEGFRに対するモノクローナル抗体の使用が関与する。又、原発性ヒト乳腺腫瘍に関する試験では、EGFRの高発現と転移巣の存在、高増殖率と個体の生存期間の短さとの間に相関関係があることが明らかになっている。
【0014】
Herlyn等は、米国特許第5,470,571号で、EGFRを発現するグリオーマの処置における放射線標識Mab425の使用を開示している。Herlyn等は、抗EGFR抗体が癌細胞の成長及び増殖を刺激するか阻害するかの何れかであることを報告している。EGFRに特異性を有する他のモノクローナル抗体は、単独又は細胞毒性化合物と抱合させるかの何れかで、特定の種類の癌の処置に有効であることが報告されている。Bendig等は米国特許第5,558,864号で、EGFRに競合的に結合する治療的抗IGFR Mabを開示している。Heimbrook等は米国特許第5,690,928号で、膀胱癌の処置に対するシュードモナス属由来のエンドトキシンに融合したEGFの使用を開示している。Brown等は米国特許第5,859,018号において、とりわけEGFにより媒介される細胞の過増殖を特徴とする疾患を処置する方法を開示している。
化学療法薬の投与方法
癌と診断された者は、原発腫瘍の部位又は癌が転移した遠隔部位の癌細胞を殺すために、単一又は複数の化学療法薬で処置されることが多い。化学療法は典型的には、単回又は数回の高用量で、数週間から数ヵ月にかけて投与される。しかし、化学療法薬の反復投与又は高用量の投与は、高い毒性及び重度の副作用の原因となることがある。
【0015】
新しい諸試験は、長期の休薬期間を設けずに低用量の細胞毒性剤を頻回に投与するメトロノーム化学療法が、腫瘍の血管系内の活性化した内皮細胞をターゲティングすることを示唆している。多数の前臨床試験が、最大耐用量(MTD)群に比べて、メトロノーム投与法は抗腫瘍作用の有効性が高く、抗血管新生作用が強力で、毒性及び副作用(骨髄抑制等)が低減されることを明らかにしている(Bocci,et al.,Cancer Res,62:6938−6943,(2002);Bocci,et al.,PNAS,vol,100(22):12917−12922,(2003);and Bertolini,et al.,Cancer Res,63(15):4342−4346,(2003))。全ての化学療法薬が同様の作用を発揮するのかどうか、又他に比べてこうした投与法により適合する薬剤が存在するのかどうかについては依然として不明である。しかし、メトロノーム化学療法は、化学療法に伴う主要な欠点の幾つかを乗り越えるのに有効であると考えられる。
化学療法薬
パクリタキセルは薬剤不応性の卵巣癌において著明な抗新生物作用及び抗癌作用を有することが明らかになっており、多岐にわたる腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示しており、極めて低用量で使用する場合には血管新生を抑制する(Grant,et al.,Int.J.Cancer,2003)。しかし、パクリタキセルは水に溶けにくいため、ヒトへの投与には問題がある。事実、元々水性培地に溶けないか溶けにくい薬剤の送達は、経口送達が有効ではない場合には、深刻に損なわれる。従って、現在使用されているパクリタキセル製剤(タキソール(登録商標))は、薬剤を溶解するためのクレモフォール(登録商標)を必要とする。この調剤におけるクレモフォール(登録商標)の存在は、動物(Lorenz,et al.,Agents Actions 7:63−67(1987))及びヒト(Weiss,et al.,J.Clin.Oncol.8:1263−68(1990))において重度の過敏反応を引き起こしてきており、従ってコルチコステロイド(デキサメタゾン)及び抗ヒスタミン薬を投与されている個体には前投薬が必要になる。又、タキソール(登録商標)における調剤ビヒクルであるクレモフォール(登録商標)ELの濃度が臨床的意義を有するほど高ければ、パクリタキセルの抗血管新生作用がなくなることが報告されており、クレモフォール(登録商標)ELと調剤するこの薬剤又は他の抗癌剤は、有効なメトロノーム化学療法を行うために、想定したよりもはるかに高用量で使用する必要があることが示唆されている(Ng,et al.,Cancer Res.,64:821−824(2004))。このように、従来のMTD化学療法に比した場合の低用量パクリタキセルの投与計画に伴う望ましくない副作用がないという利点は損なわれることがある。米国特許2004/0143004号、WO00/64437号も参照されたい。
アブラキサンTMはクレモフォール(登録商標)ELを含まないアルブミン結合パクリタキセルのナノ粒子である
前臨床モデルは、タキソール(登録商標)に比した場合、アブラキサンTMの安全性及び有効性(Desai,et al.,EORTC−NCI−AACR,2004)及び転移性乳癌の個体(O’Shaughnessy,et al.,San Antonio Breast Cancer Symposium,Abstract#1122,Dec.2003)において著明な改善が認められることを示してきている。これはおそらく、アブラキサンTMには界面活性剤(タキソール(登録商標)及びTaxotere(登録商標)にそれぞれ使用されるクレモフォール(登録商標)又はTween(登録商標)80)が存在せず、微小血管の内皮細胞上のgp60/小胞を使用するアルブミンに基づいた輸送機序が優先的に使用されることによるものであると考えられる(Desai,et al.,EORTC−NCI−AACR,2004)。又、クレモフォール(登録商標)及びTween(登録商標)80の何れもが、パクリタキセルとアルブミンの結合を強力に阻害し、おそらくはアルブミンに基づいた輸送を阻害していることが明らかにされている(Desai,et al.,EORTC−NCI−AACR,2004)。
【0016】
IDN5109(Ortataxel)は、現在第II相臨床試験が実施中の新しいタキサンで、多剤耐性表現型(MDR/Pgp)を発現する腫瘍細胞系における交叉耐性がないこと、及びP−糖タンパク(Pgp)を阻害することから選択された(Minderman;Cancer Chemother.Pharmacol.2004;53:363−9)。その疎水性のため、IDN5109は現在界面活性剤であるTween(登録商標)80(Taxotere(登録商標)と同じビヒクル)で調剤されている。タキサン調剤から界面活性剤を除去した場合、例えば、アルブミン結合パクリタキセルのナノ粒子(アブラキサンTM)は、界面活性剤を含む群よりも安全性及び有効性において改善を示した(O’Shaughnessy,et al.,San Antonio Breast Cancer Symposium,Abstract#1122,Dec.2003)。又、Tween(登録商標)80は、タキサン、例えばパクリタキセルとアルブミンとの結合を強力に阻害するため、微小血管の内皮細胞上のgp60受容体を介するアルブミンに基づく薬剤の輸送を阻害しているおそれがある(Desai,et al.,EORTC−NCI−AACR,2004)。
【0017】
イヌサフラン(Colchicum autumnale)及びキツネユリ(Gloriosa superba)の主要なアルカロイドであるコルヒチンの抗腫瘍活性が最初に報告されたのは20世紀始めの頃であった。X線試験及び多数回にわたる全合成の結果、ついにその構造が解明された(Shiau,et al.,J.Pharm.Sci.1978,67(3)394−397を参照)。コルヒチンは、特に胸腺細胞、腸細胞及び造血細胞において、紡錘体毒として働き、その動態を遮断する核分裂毒であると考えられている。紡錘体に対するその作用は、構造及び動きにおいて種々の構造の不安定した線維系に対するコルヒチンの作用のうちの特殊な一例であると考えられている。
【0018】
チオコルヒチン二量体IDN5404は、シスプラチン及びトポテカンA2780−CIS及びA2780−TOPに抵抗性のヒト卵巣細胞亜系において活性を示すため選択された。この作用は、ビンカアルカロイドとしての微小管活性及びカンプトテシンとは異なるトポイソメラーゼI阻害作用という二重の作用機序に起因するものである(Raspaglio,Biochemical Pharmacology 69:113−121(2005))。
【0019】
タキサンのナノ粒子組成物(アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサンTM)等)はタキソール(登録商標)及びTaxotere(登録商標)といった他のタキサンよりも毒性が著明に低く、安全性及び有効性の何れもで転帰が著明に改善されることが明らかになっている。
【0020】
1つ以上の化学療法薬又は他の治療法を組み合わせる併用化学療法(例えば化学療法と放射線療法又は手術及び化学療法を組み合わせる等)は、単一の化学療法薬を投与した場合又は個々の治療法をそれぞれ別に行った場合よりも奏功をみることが明らかになっている。
【0021】
その他の参照文献には、米国特許第2006/0013819号、米国特許第2006/0003931号、WO05/117986号及びWO05/000900号が含まれる。
【0022】
増殖性疾患、特に癌に対するより有効な治療法が必要とされている。
【0023】
本明細書で言及する全ての文献、特許、特許申請書及び公表されている特許申請書の開示内容は、本明細書にその全文を参照文献として組み入れられる。
【非特許文献1】KuzmichおよびTew,「Detoxification Mechanisms and Tumor Cell Resistance to Anticancer Drugs」,Medical Research Reviews,1991年,第11巻,第2号,p.185−217
【非特許文献2】Georges,SharomおよびLing,「Multidrug Resistance and Chemosensitization:Therapeutic Implications,for Cancer Chemotherapy」,Advances in Pharmacology,1990年,第21巻,p.185−220
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の簡潔な要旨)
本発明は、癌等の増殖性疾患の処置方法を提供する。本発明は、a)タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を個体に投与することからなる第一の療法及びb)化学療法、放射線療法、手術又はそれらの組み合わせ等の第二の療法からなる、増殖性疾患(癌等)の併用治療法を提供する。別の態様においては、タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を、メトロノーム投与法に基づいて個体に投与する方法が提供される。
【0025】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を個体に投与することからなる、増殖性疾患(癌等)の処置方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子(アブラキサンTM等)を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を個体に投与することからなる、増殖性疾患(癌等)の処置方法を提供する。幾つかの実施形態において、化学療法薬は抗代謝薬(ヌクレオシド類似体を含む)、白金系薬剤、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、ビンカアルカロイド、プロテアソーム阻害剤、マクロライド及びトポイソメラーゼ阻害剤の何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。幾つかの実施形態において、化学療法薬はカルボプラチン等の白金系薬剤である。
【0026】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子組成物」とも呼ぶ)及び化学療法薬は、同じ組成物又は別々の組成物の何れかとして同時に投与される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬は逐次投与される。例えば、ナノ粒子組成物を化学療法薬の投与の前又は後に投与する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は併用的に行われる。例えば、ナノ粒子組成物の投与期間と化学療法薬の投与期間は互いに重複する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は併用的には行われない。例えば、幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物の投与は化学療法薬の投与の前に終了している。幾つかの実施形態において、化学療法薬の投与は、ナノ粒子組成物の投与の前に終了している。
【0027】
幾つかの実施形態において、第一の療法であるタキサンは、例えば米国特許第6,566,405号に記載のようなナノ粒子のアルブミン結合パクリタキセルであり、アブラキサンTMの商標で購入可能なものである。又、第一の療法であるタキサンは、例えば米国特許申請番号2005/0004002A1号に記載のようなナノ粒子のアルブミン結合ドセタキセルでもある。
【0028】
別の態様においては、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法からなる増殖性疾患(癌等)の処置方法が提供される。幾つかの実施形態において、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子(アブラキサンTM等)を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法からなる増殖性疾患(癌等)の処置方法が提供される。幾つかの実施形態において、第二の療法は放射線療法である。幾つかの実施形態において、第二の療法は手術である。幾つかの実施形態において、第一の療法は第二の療法に先立って実施される。幾つかの実施形態において、第一の療法は第二の療法の後に実施される。
【0029】
別の態様においては、この方法は、タキサンを含む第一の療法及び化学療法薬及び放射線療法又はそれらの組み合わせからなる群から選択される第二の療法を含む併用療法を、増殖性疾患(癌等)を有する哺乳動物に投与することからなる。この併用療法は、逐次又は同時のような種々の方法の何れかで投与される場合があり、逐次投与の場合、タキサンは第二の療法の前又は後に投与される場合があるが、タキサンを含む第一の療法が最初に投与されるのが望ましい。第二の療法は1つ以上の化学療法薬を含むことができることは理解されるものと考える。
【0030】
又、本発明はメトロノーム投与法を提供する。幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が従来の投与計画に準じた最大耐用量の約0.25〜約25%である投与方法が提供される。幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子(アブラキサンTM等)を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が従来の投与計画に準じた最大耐用量の約0.25〜約25%である投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、投与毎のタキサンの用量(パクリタキセル等、例えばアブラキサンTM)は、最大耐用量の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%、22%、24%又は25%の何れか未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも1週間に約1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回(即ち毎日)投与される。幾つかの実施形態において、各投与の間隔は約7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間及び1日間未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30及び36ヵ月間にわたって投与される。
【0031】
幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子(アブラキサンTM等)を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、投与毎のタキサンの用量(パクリタキセル等、例えばアブラキサンTM)は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、22及び25mg/m未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも1週間に約1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回(即ち毎日)投与される。幾つかの実施形態において、各投与の間隔は約7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間及び1日間未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30及び36ヵ月間にわたって投与される。
【0032】
本発明の方法は、一般的に、タキサン及び担体タンパク質を含むナノ粒子を含む組成物の投与からなる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物は、実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、組成物中のアルブミンとパクリタキセルの重量比は約18:1又はそれ未満、例えば約9:1又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、パクリタキセルはアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下で、パクリタキセル/アルブミン組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、平均直径が200nm以下であり、パクリタキセルがアルブミンでコーティングされている。上記の特徴を有する他の組み合わせも検討する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMである。他のタキサン(ドセタキセル及びortataxel等)を含むナノ粒子組成物は、1つ以上の上記の特徴を含む場合もある。
【0033】
本発明のこれら及びその他の態様及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項によって明らかになる。本明細書に記載の種々の実施形態の特性の一つ、幾つか、又は全ては組み合わされて本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子の投与からなる第一の療法と、放射線療法、手術、少なくとも1つの他の化学療法薬の投与又はそれらの組み合わせ等の第二の療法を組み合わせた併用療法を提供する。本発明は又、メトロノーム療法も提供する。
【0035】
本発明は、アブラキサンTMがその優れた抗腫瘍活性及び毒性及び副作用の低さのため、他の治療薬及び/又は投与方法との組み合わせで投与することができ、メトロノーム化学療法において使用できるという発見を含む。薬剤/担体タンパク質ナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の安全性は著明に改善されているため、こうしたナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)との併用化学療法は、他の薬剤との併用化学療法よりも有効であると考えられる。又、放射線療法と併用するナノ粒子組成物の使用は、放射線療法と他の薬剤との併用よりも有効であると考えられる。このため、ナノ粒子組成物(特にアブラキサンTM等のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物)は他の化学療法薬と併用された場合、又は他の治療法と併用された場合、増殖性疾患(癌等)の処置において極めて有効で、手術、放射線療法及び化学療法の欠点を補うものである。
【0036】
本発明はその一実施形態において、癌等の増殖性疾患を処置するための別の一つ又は複数の化学療法薬、放射線療法等の第二の療法と共に、アブラキサンTM等のタキサンを含む第一の療法の使用である。タキサンを含む第一の療法及び第二の療法は、増殖性疾患を有する哺乳物に逐次投与することもできれば、同時投与することができ、場合によっては同じ薬学的組成物中で同時投与することもできる。
【0037】
更に、アブラキサンTMを使用したメトロノーム投与法は、同じ薬剤組成物を使用した従来のMTD投与法に比べて有効であることが明らかになっている。こうしたアブラキサンTMのメトロノーム投与法は、タキソール(登録商標)のメトロノーム投与法よりも有効であることも明らかになっている。
【0038】
本明細書に記載の方法は一般的に、特に増殖性疾患をはじめとする疾患の処置に有用である。本明細書で使用される「処置」とは有益又は目的の臨床的結果を得るための手法である。本発明の目的において、有益又は目的の臨床的結果には、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の低減、疾患の安定期(悪化ではない)、疾患の広がり(転移等)の予防又は遅延、疾患の発現又は再発の予防又は遅延、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善及び寛解(部分寛解又は完全寛解)の何れか一つ又は一つ以上が含まれるが、これらに限定されない。又、「処置」には増殖性疾患の病理学的転帰の減少が含まれる。本発明の方法は処置のこれらの態様の1つ以上を検討するものである。
【0039】
本明細書で使用される「増殖性疾患」とは腫瘍性疾患(良性又は悪性を含む)及び/又は任意の転移として定義され、その腫瘍又は転移がどこにあるかは問題ではなく、より具体的には1つ以上の乳癌、生殖泌尿器癌、肺がん、消化器癌、類表皮癌、メラノーマ、卵巣癌、膵癌、神経芽腫、結腸直腸癌、頭頚部癌からなる群から選択される腫瘍(幾つかの実施形態においては以上からなる群から選択される腫瘍)である。本発明の広い意味において、増殖性疾患は更に、過形成、線維症(特に肺線維症であるが、腎線維症等の他の線維症も)、血管新生、乾癬、アテローム性硬化症及び血管形成術後の狭窄又は再狭窄等といった血管内の平滑筋増殖といった過増殖の病態から選択することもできる。幾つかの実施形態において、増殖性疾患は癌である。幾つかの実施形態において、増殖性疾患は非癌性疾患である。幾つかの実施形態において、増殖性疾患は良性又は悪性腫瘍である。これ以前及びこれ以降に言及する腫瘍、腫瘍性疾患、癌腫又は癌並びに、原発器管又は組織における転移及び/又は別の部位における転移は、二者択一的に又は追加的に、その腫瘍及び転移の位置がどこであってもよいという含意を持つ。
【0040】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、特異的な疾病、病態又は疾患を処置する、例えばその症状の1つ以上を改善、緩和、軽快及び/又は遅延させるのに十分な化合物又は組成物の量を指す。癌又はその他の望ましくない細胞の増殖を引き合いに出す場合、有効量は、腫瘍が退縮するか、腫瘍の増殖速度が低下するか(腫瘍増殖の抑制等)、その他の望ましくない細胞増殖が予防又は遅延されるのに十分な量を含む。幾つかの実施形態において、有効量は、発現を遅延させるのに十分な量である。幾つかの実施形態において、有効量は発現及び/又は再発を予防するか遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の投与によって投与することができる。癌の場合、薬剤又は組成物の有効量は(i)癌細胞の数を減少させる、(ii)腫瘍のサイズを低減させる、(iii)癌細胞が末梢器管に浸潤するのを阻害、遅延、ある程度まで緩徐化及び望ましくは停止させる、(iv)腫瘍の転移を阻害する(例えばある程度まで緩徐化し、望ましくは停止させる)、(v)腫瘍の成長を阻害する、(vi)腫瘍の発現及び/又は再発を予防又は遅延させる、及び/又は(vii)癌に伴う症状の1つ以上をある程度まで緩和することができる。
【0041】
幾つかの実施形態においては、原発性腫瘍の処置法が提供される。幾つかの実施形態においては、転移癌(即ち、原発性腫瘍から転移した癌)の治療法が提供される。幾つかの実施形態においては、進行期の癌の処置法が提供される。幾つかの実施形態においては、進行乳癌、ステージIVの乳癌、局所進行乳癌及び転移性乳癌をはじめとする乳癌(HER2陽性又はHER2陰性)の治療法が提供される。幾つかの実施形態においては、非小細胞肺癌(NSCLC、進行NSCLC等)、小細胞肺癌(SCLC、進行SCLC等)及び肺の進行性の固形悪性腫瘍をはじめとする肺癌の処置法が提供される。幾つかの実施形態においては、卵巣癌、頭頚部癌、胃癌、メラノーマ(転移性メラノーマを含む)、結腸直腸癌、膵癌及び固形腫瘍(進行性固形腫瘍等)の何れかの治療法が提供される。幾つかの実施形態においては、細胞の増殖及び/又は細胞の移動を抑制する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、再狭窄、狭窄、線維症、血管新生、乾癬、アテローム性硬化症及び平滑筋細胞の増殖の何れかの治療法が提供される。又、本発明は、本明細書に記載の増殖性疾患の何れかの発現の遅延方法を提供する。
【0042】
「個体」という用語はヒトを含む哺乳動物である。個体は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類又は霊長類を含むがこれらに限定されない。幾つかの実施形態において、個体はヒトである。個体(ヒト等)は進行癌を有するか、それほどではなくとも少ない全身腫瘍組織量を有する。幾つかの実施形態において、個体は増殖性疾患(癌等)の早期にある。幾つかの実施形態において、個体は増殖性疾患(進行癌等)の進行期にある。幾つかの実施形態において、個体はHER2陽性である。幾つかの実施形態において、個体はHER陰性である。
【0043】
本発明の方法は、アジュバント療法で実践されてよい。「アジュバント療法」とは、個体にすでに増殖性疾患、特に癌の既往があり、一般的には(しかし必ずしもではない)、手術(外科的切除等)、放射線療法及び化学療法を含むがこれらに限定されない処置が奏功しているという臨床的状況を指す。しかし、増殖性疾患(癌等)の既往があることから、これらの個体は疾患を発現するリスクがあるとみなされる。「アジュバント療法」の処置又は投与とは、二次的な処置様式を指す。リスクの程度(アジュバント療法を受ける個体が「ハイリスク」又は「ローリスク」とみなされる場合)は、幾つかの因子によって決定されるが、最初に処置を受けた時点での疾患の程度を考慮することが最も多い。本明細書で提供される方法は、ネオアジュバント療法で実施することもできる。即ち、この方法は一次/根治治療の前に実施することができる。幾つかの実施形態において、個体は以前に処置されたことがある。幾つかの実施形態において、個体は以前に処置されたことがない。幾つかの実施形態において、処置は第一選択の療法である。
【0044】
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態は、それを「構成する」及び/又は「本質的に構成する」態様及び実施形態を含むことを理解されたい。
化学療法薬との併用療法
本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル及びortataxelの何れかである(及び幾つかの実施形態では主として上記の薬剤からなる)。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMを含む。幾つかの実施形態において、科学療法薬は抗代謝薬(ヌクレオシド類似体を含む)、白金系薬剤、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、ビンカアルカロイド、プロテアソーム阻害剤、マクロライド及びトポイソメラーゼ阻害剤の何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。
【0045】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を個体に投与することからなる。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下である。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、組成物中のアルブミンとパクリタキセルの重量比は約18:1又はそれ未満、例えば約9:1又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、パクリタキセルはアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下で、パクリタキセル/アルブミン組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、平均直径が200nm以下であり、パクリタキセルがアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMである。
【0046】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)アブラキサンTMの有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。アブラキサンTMと逐次投与又は併用投与又は同時投与のために望ましい薬剤の組み合わせは、単独投与に比べて強力な抗増殖作用を示す組み合わせで、特に、増殖組織の退縮及び/又は増殖性疾患からの治癒へと導く組み合わせである。
【0047】
本明細書に記載の化学療法薬は、薬剤それ自体、薬学的に許容されるその塩及び薬学的に許容されるそのエステル並びに立体異性体、エナンチオマー、ラセミ混合物等であることができる。記載の単一又は複数の化学療法薬、及びその薬剤を含有する薬学的組成物を投与することができ、この薬学的組成物は薬学的に許容される担体ビヒクル等を含む。
【0048】
化学療法薬はナノ粒子組成物に存在することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、この方法は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を個体に投与することからなる。幾つかの実施形態において、化学療法薬はチオコルヒチン又はその誘導体(例えばnab−5404、nab−5800及びnab−5801をはじめとする二量体チオコルヒチン等)、ラパマイシン又はその誘導体及びゲルダナマイシン又はその誘導体(17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG))の何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。幾つかの実施形態において、化学療法薬はラパマイシンである。幾つかの実施形態において、化学療法薬は17−AAGである。
【0049】
化学療法薬の例及び無制限の一覧を本明細書で検討する。好適な化学療法薬には、例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を阻害する薬剤(コルヒチン及びその誘導体等)、抗血管新生剤、治療用抗体、EGFR標的剤、チロシンキナーゼ標的剤(チロシンキナーゼ阻害剤等)、従来の金属複合体、プロテアソーム阻害剤、抗代謝薬(ヌクレオシド類似体等)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、治療用抗体、レチノイド(all−transレチノイン酸又はその誘導体)、ゲルダナマイシン又はその誘導体(17−AAG等)及びその他の従来の当業界でよく認識されている化学療法薬が含まれる。
【0050】
幾つかの実施形態において、化学療法薬は、アドリアマイシン、コルヒチン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、duanorubicin、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキセート、マイトキサントロン、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシン及びその誘導体、phenesterine、タキサン及びその誘導体(パクリタキセル及びその誘導体、タキソテール及びその誘導体等)、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、ピポスルファン、nab−5404、nab−5800、nab−5801、イリノテカン、HKP、Ortataxel、ゲムシタビン、Herceptin(登録商標)、ビノレルビン、Doxil(登録商標)、カペシタビン、Alimta(登録商標)、Avastin(登録商標)、Velcade(登録商標)、Tarceva(登録商標)、Neulasta(登録商標)、ラパチニブ、ソレフェニブ、その誘導体、当業界で既知の化学療法薬等の何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。幾つかの実施形態において、化学療法薬はチオコルヒチン誘導体及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物である。
【0051】
幾つかの実施形態において、化学療法薬は、カルボプラチン、Navelbine(登録商標)(ビノレルビン)、アントラサイクリン(Doxil(登録商標))、ラパチニブ(GW57016)、Herceptin(登録商標)、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、Alimta(登録商標)、シスプラチン、5−フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド、Avastin(登録商標)、Velcade(登録商標)等を含むが、これらに限定されない抗新生物薬である。
【0052】
幾つかの実施形態において、化学療法薬は、EGFR、ErbB2(Herbとも呼ばれる)、ErbB3、ErbB4又はTNF等、腫瘍の成長に関与する他の因子の拮抗物質である。これと共に1つ以上のサイトカインを個体に投与することが利益をもたらす場合もある。幾つかの実施形態において、治療薬は増殖阻害剤である。増殖阻止剤の好適な用量は、現在使用されている用量であり、増殖阻害剤とタキサンとの作用の組み合わせ(相乗作用)により低用量にすることもできる。
【0053】
幾つかの実施形態において、化学療法薬は、抗VEGF抗体、HER2抗体、インターフェロン及びHGFβ拮抗薬以外の化学療法薬である。
【0054】
本明細書で化学療法薬として引用されるものは、化学療法薬又はその誘導体に適用されるため、本発明はこれらの実施形態の何れ(薬剤;薬剤又は誘導体)をも検討し含む。化学療法薬又は他の化学成分の「誘導体」又は「類似体」は、その化学療法薬又は成分に構造が類似している化合物又はその化学療法薬又は成分と同じ化学的分類に属する化合物を含むが、これらに制限されない。幾つかの実施形態において、化学療法薬又は成分の誘導体又は類似体は、その化学療法薬又は成分と類似の化学的及び/又は物理的特性(例えば官能価を含む)を有する。
【0055】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)チロシンキナーゼ阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)チロシンキナーゼ阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適なチロシンキナーゼ阻害薬には、例えば、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、Tarceva、Sutent(登録商標)(マレイン酸スニチニブ)及びラパチニブが含まれる。幾つかの実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬はラパチニブである。幾つかの実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬はTarcevaである。Tarcevaは低分子量のヒト上皮増殖因子1型/上皮増殖因子受容体(HER1/EGFR)阻害薬であり、第III相臨床試験では進行非小細胞肺癌(NSCLC)個体において生存率を上昇させることを示した。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、転移性乳癌の処置及びネオアジュバント療法における乳癌の処置を含めた、乳癌の処置のためのものである。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、進行固形腫瘍の処置のためのものである。幾つかの実施形態においては、こうした腫瘍を有する哺乳動物にアブラキサンTM及びゲフィチニブを投与することからなる、哺乳動物におけるEGFR発現腫瘍の増殖を阻害する方法が提供され、この場合、このゲフィチニブはパルス療法で投与される。
【0056】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量、及びb)抗代謝薬(例えば、プリン類似体及びピリミジン類似体をはじめとするヌクレオシド類似体等)の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)抗代謝薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。「抗代謝薬」は、代謝物と似た構造の薬剤であるが、生産的な方法で身体が使用することができない薬剤である。多くの抗代謝薬は、核酸、RNA及びDNAの産生に干渉する。例えば、抗代謝薬は、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン、クラドリビン、シトシンアラビノシド(ara−C、cytosar)、ドキシフルリジン、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル等)、UFT、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン(6−チオグアニン等)を含むがこれらに限定されないヌクレオシド類似体であることができる。他の抗代謝薬には、例えばL−アスパラギナーゼ(Elspa)、デカルバジン(DTIC)、2−デオキシ−D−グルコース及びプロカルバジン(matulane)が含まれる。幾つかの実施形態において、ヌクレオシド類似体は、ゲムシタビン、フルオロウラシル及びカペシタビンの何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、転移性乳癌又は局所進行性乳癌の処置のためのものである。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、ネオアジュバント療法における乳癌の処置のためのものである。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、NSCLC、転移性結腸直腸癌、膵癌又は進行固形腫瘍の何れかの処置のためのものである。
【0057】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)アルキル化剤の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)アルキル化剤の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適なアルキル化剤には、シクロホスファミド(Cytoxan)、メクロレタミン、クロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、チオテパ、ブスルファン、アルキルスルホネート、エチレンイミン、ナイトロジェンマスタード類似体、エストラムスチンリン酸ナトリウム、イフォスファミド、ニトロソウレア、ロムスチン及びストレプトゾシンが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、アルキル化剤はシクロホスファミドである。幾つかの実施形態において、シクロホスファミドはナノ粒子組成物の投与の前に投与される。幾つかの実施形態において、本発明の方法は早期の乳癌の処置のためのものである。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法における乳癌の処置のためのものである。
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)白金系の薬剤の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)白金系の薬剤の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適な白金系の薬剤には、カルボプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチンが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、白金系の薬剤はカルボプラチンである。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、乳癌(転移性乳癌及び進行乳癌を含むHER2陽性又はHER2陰性乳癌)、肺癌(進行NSCLC、初回処置のNSCLC、SCLC及び肺の進行固形腫瘍を含む)、卵巣癌、頭頚部癌及びメラノーマ(転移性メラノーマを含む)の処置のためのものである。
【0059】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)アントラサイクリン抗生物質の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)アントラサイクリン抗生物質の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適なアントラサイクリン抗生物質には、Doxil(登録商標)、アクチノマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、マイトキサントロン、バルルビシンが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、アントラサイクリンは、Doxil(登録商標)、エピルビシン及びドキソルビシンの何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、早期の乳癌の処置ためのものである。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法における乳癌の処置のためのものである。
【0060】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)ビンカアルカロイドの有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)ビンカアルカロイドの有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適なビンカアルカロイドには、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))及びVP−16が含まれる。幾つかの実施形態において、本発明の方法はステージIVの乳癌及び肺癌の処置のためのものである。
【0061】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)マクロライドの有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)マクロライドの有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適なマクロライドには、例えば、ラパマイシン、カルボマイシン及びエリスロマイシンが含まれる。幾つかの実施形態において、マクロライドはラパマイシン又はその誘導体である。幾つかの実施形態において、本発明の方法は固形腫瘍の処置のためのものである。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)トポイソメラーゼ阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)トポイソメラーゼ阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、化学療法薬は、例えば、トポイソメラーゼI及びトポイソメラーゼIIの阻害薬をはじめとするトポイソメラーゼ阻害薬である。代表的なトポイソメラーゼIの阻害薬には、イリノテカン及びトポテカン等のカンプトテシンが含まれるが、これに限定されない。代表的なトポイソメラーゼIIの阻害薬には、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド及びテニポシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)抗血管新生薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)抗血管新生薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、転移性乳癌、アジュバント療法又はネオアジュバント療法における乳癌、肺癌(初回治療進行NSCLC及びNSCLC等)、卵巣癌及びメラノーマ(転移性メラノーマを含む)の処置のためのものである。
【0064】
多くの抗血管新生薬が同定されてきており、Carmeliet and Jain(2000)が一覧にしたものを含めて、当業界で既知である。抗血管新生薬は、天然発生したものであるか、天然発生したものではないものであることができる。幾つかの実施形態において、化学療法薬は合成抗血管新生ペプチドである。例えば、小さな合成アポトーシス誘導ペプチドの抗血管新生作用は、腫瘍の微小血管上のCD13受容体(アミノペプチダーゼN)をターゲティングするドメイン、及びインターナリゼーション後のミトコンドリア膜を破壊するドメインという2つの機能ドメインを含むことが以前から報告されている。Nat.Med.1999,5(9):1032−8。第二世代の二量体ペプチドである、GNGRC−GG−d(KLAKLAK)2、いわゆるHKP(ハンターキラーペプチド)は、抗腫瘍活性がより優れていることが明らかになった。従って、幾つかの実施形態において、抗血管新生ペプチドはHKPである。幾つかの実施形態において、抗血管新生薬は、抗VEGF抗体(Abastin(登録商標)等)以外のものである。
【0065】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)ボルテゾミブ(Velcade)等のプロテアソーム阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)ボルテゾミブ(Velcade)等のプロテアソーム阻害薬の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。
【0066】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)治療用抗体の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)治療用抗体の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。好適な治療用抗体には、抗VEGF抗体(Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)等)、抗HER2抗体(Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)等)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)、Campath(アレムツズマブ)、Myelotarg(ゲムツズマブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Rituxan(リツキシマブ)及びBexxar(トシツモマブ)が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、化学療法薬は、VEGF又はHER2に対する抗体以外の治療用抗体である。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、進行乳癌の処置を含むHER2陽性乳癌の処置、転移性癌の処置、アジュバント療法における乳癌の処置及びネオアジュバント療法における癌の処置のためのものである。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、転移性乳癌、アジュバント療法又はネオアジュバント療法における乳癌、肺癌(初回治療進行NSCLC及びNSCLC)、卵巣癌、頭頚部癌及びメラノーマ(転移性メラノーマを含む)の何れかの処置のためのものである。例えば、幾つかの実施形態においては、125mg/mのパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)を、3週間毎週投与して4週目を休薬し、Herceptin(登録商標)を併用して、個体に投与することからなる、個体におけるHER2陽性転移性乳癌の処置方法が提供される。
【0067】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物のタキサンに加えて、2つ以上の化学療法薬が投与される。これらの2つ以上の化学療法薬は、異なる分類に属する化学療法薬であることができる(が必ずしもそうではない)。これらの組み合わせの例を本明細書に記載する。他の組み合わせも検討される。
【0068】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)抗代謝薬(ヌクレオシド類似体、例えばゲムシタビン)の有効量及びc)アントラサイクリン抗生物質(エピルビシン等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)抗代謝薬(ヌクレオシド類似体、例えばゲムシタビン)の有効量及びc)アントラサイクリン抗生物質(エピルビシン等)の有効量を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、ネオアジュバント療法における乳癌の処置のためのものである。例えば、幾つかの実施形態においては、220mg/mのパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)を2週毎、2000mg/mのゲムシタビンを2週毎、50mg/mのエピルビシンを2週毎、個体に投与することからなる、個体における局所進行性/炎症性癌の処置方法が提供される。幾つかの実施形態においては、175mg/mのパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)を2週毎、2000mg/mのゲムシタビンを2週毎、50mg/mのエピルビシンを2週毎、個体に投与することからなる、アジュバント療法における個体の乳癌の処置方法が提供される。
【0069】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)白金系の薬剤(カルボプラチン等)の有効量及びc)治療用抗体(抗HER2抗体(Herceptin(登録商標)等)及び抗VEGF抗体(Avastin(登録商標)等)等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)白金系の薬剤(カルボプラチン等)の有効量及びc)治療用抗体(抗HER2抗体(Herceptin(登録商標)等)及び抗VEGF抗体(Avastin(登録商標)等)等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、進行性乳癌、転移性乳癌、アジュバント療法における乳癌及び肺癌(NSCLC及び進行NSCLCを含む)の何れかの処置のためのものである。幾つかの実施形態においては、75mg/mのパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)及びAUCが2倍のカルボプラチンを、3週間毎週投与して4週目を休薬しながら個体に投与することからなる、個体における転移性癌の処置方法が提供される。幾つかの実施形態において、この方法は更に約2〜4mg/kgのHerceptin(登録商標)を毎週投与することからなる。
【0070】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)白金系の薬剤(カルボプラチン等)の有効量及びc)ビンカアルカロイド(Navelbine(登録商標)等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)白金系の薬剤(カルボプラチン等)の有効量及びc)ビンカアルカロイド(Navelbine(登録商標)等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、本発明の方法は肺癌の処置のためのものである。
【0071】
幾つかの実施形態において、本発明は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)アルキル化剤(シクロホスファミド等)の有効量及びc)アントラサイクリン抗生物質(アドリアマイシン等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)アルキル化剤(シクロホスファミド等)の有効量及びc)アントラサイクリン抗生物質(アドリアマイシン等)を個体に投与することからなる、個体における増殖性疾患(癌等)を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明の方法はアジュバント療法又はネオアジュバント療法における乳癌の処置のためのものである。例えば、幾つかの実施形態においては、260mg/mのパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(アブラキサンTM等)、60mg/mのアドリアマイシン及び600mg/mのシクロホスファミドを2週間に1回個体に投与することからなる、個体における早期の乳癌の処置方法が提供される。
【0072】
その他の実施形態を表1に示す。例えば、幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)カルボプラチンの有効量を個体に投与することからなる、個体における進行性乳癌の処置方法が提供される。幾つかの実施形態において、この方法は更に有効量のHerceptin(登録商標)を個体に投与することからなる。幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)ゲムシタビンの有効量を個体に投与することからなる、個体における転移性乳癌の処置方法が提供される。幾つかの実施形態においては、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)の有効量及びb)カルボプラチンの有効量を個体に投与することからなる、個体における進行性非小細胞肺癌の処置方法が提供される。
【0073】
幾つかの実施形態においては、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル又はortataxel等)及び担体タンパク質(アルブミン等)及び少なくとも1つの他の化学療法薬を含むナノ粒子を含む組成物が提供される。本明細書に記載の組成物は、タキサン及び化学療法薬を、増殖性疾患(癌等)の処置に有効な量、含む場合がある。幾つかの実施形態において、化学療法薬及びタキサンは、本明細書に記載の重量比等の、所定の比率で組成物中に存在する。幾つかの実施形態において、本発明は、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル又はortataxel等)を含むナノ粒子及び少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を含む組成物の有効量の相乗的組成物を提供する。
【0074】
幾つかの実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌等)の処置に使用するタキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む薬学的組成物を提供し、前記の使用は、少なくとも1つの他の化学療法薬の同時及び/又は逐次投与からなる。幾つかの実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌等)の処置に使用する化学療法薬を含む薬学的組成物を提供し、前記の使用は、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む薬学的組成物の同時及び/又は逐次投与からなる。幾つかの実施形態において、本発明は、タキサン含有ナノ粒子組成物、並びに増殖性疾患(癌等)を処置するために同時及び/又は逐次使用する他の1つの化学療法薬を含む組成物を提供する。
投与法
タキサンを含むナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子組成物」とも呼ぶ)及び化学療法薬は、同時(同時投与)及び/又は逐次的(逐次投与)に投与することができる。
【0075】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬(本明細書に記載の特異的な化学療法薬を含む)は同時に投与される。本明細書で使用される「同時投与」という用語は、ナノ粒子組成物と化学療法薬が15分を超えない間隔で、例えば10分、5分又は1分以下の間隔で投与されることを意味する。薬剤が同時に投与される場合、ナノ粒子及び化学療法薬中の薬剤は、同じ組成物(ナノ粒子及び化学療法薬の両方を含む組成物)又は別の組成物(ナノ粒子がある粗生物に含有され、化学療法薬が別の組成物に含有される)に含有されることができる。例えば、タキサン及び化学療法薬は、少なくとも2つの異なるナノ粒子を含む単一の組成物中に存在する場合があり、この組成物中の幾つかのナノ粒子は、タキサン及び担体タンパク質を含み、この組成物中の他のナノ粒子の幾つかは、化学療法薬及び担体タンパク質を含む。本発明はこうした組成物を考慮し、包含する。幾つかの実施形態においては、タキサンのみがナノ粒子に含有される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬中の薬剤の同時投与は、追加用量のタキサン及び/又は化学療法薬と併用することができる。
【0076】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬は逐次投与される。本明細書で使用される「逐次投与」という用語は、ナノ粒子組成物と化学療法薬が15分を超える間隔で、例えば20分、30分、40分、50分又はそれ以上の何れかの間隔以上で投与されることを意味する。ナノ粒子組成物又は化学療法薬の何れを最初に投与してもよい。ナノ粒子組成物及び化学療法薬は別々の組成物に含有され、それらは同じ又は異なる包装に含有される。
【0077】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は併用的に行われる。例えば、ナノ粒子組成物の投与期間と化学療法薬の投与期間は互いに重複する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は併用的には行われない。例えば、幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物の投与は化学療法薬の投与の前に終了している。幾つかの実施形態において、化学療法薬の投与は、ナノ粒子組成物の投与の前に終了している。これらの2回の非併用的投与の間隔は2〜8週間、例えば4週間等であることができる。
【0078】
薬剤を含有するナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与頻度は、治療期間中に投与医師の判断に基づいて調節することができる。別々に投与する場合、薬剤を含有するナノ粒子組成物及び化学療法薬は、異なる投与頻度又は間隔で投与することができる。例えば、薬剤を含有するナノ粒子組成物は週毎に投与することができるのに対し、化学療法薬はそれよりも頻回に、又はそれほど頻回でなく投与することができる。幾つかの実施形態において、薬剤を含有するナノ粒子及び/又は化学療法薬の徐放性調剤を使用することができる。徐放性を達成するための種々の調剤及び機器は当業界で既知である。
【0079】
ナノ粒子組成物及び化学療法薬は、同じ投与経路又は異なる投与経路を使用して投与することができる。幾つかの実施形態において(同時投与及び逐次投与の何れでも)、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬は所定の比で投与される。例えば、幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬の重量比は約1:1である。幾つかの実施形態において、重量比は約0.001:約1〜約1000:約1又は約0.01:約1〜100:約1であることができる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬の重量比は、100:1、50:1、30:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1及び1:1の何れか未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬の重量比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、30:1、50:1、100:1の何れか以上である。他の比も検討される。
【0080】
タキサン及び/又は化学療法薬に必要とされる用量は、各薬剤が単独で投与される場合に通常必要とされる用量よりも低用量であることができる(が必ずしもそうではない)。このため、幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物及び/又は化学療法薬中の薬剤の治療量下域が投与される。「治療量下域」又は「治療レベル下域」は、治療量未満の量、即ちナノ粒子組成物及び/又は化学療法薬中の薬剤が単独で投与される場合に通常使用される量未満の量を指す。この減量は、任意の投与時における投与量の観点及び/又は任意の間隔で投与される量(頻度の減少)の観点を反映することができる。
【0081】
幾つかの実施形態においては、十分量の化学療法薬が投与され、ナノ粒子組成物中の薬剤が同程度まで効果を発揮するのに必要な通常の用量を、少なくとも5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上減量することを可能にする。幾つかの実施形態においては、十分量のナノ粒子組成物中の薬剤が投与され、化学療法薬が同程度まで効果を発揮するのに必要な通常の用量を、少なくとも5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上減量することを可能にする。
【0082】
幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬の両方の用量が、それぞれ単独で投与される場合の通常の用量に比べて減量される。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物中のタキサン及び化学療法薬の両方が、治療量下域、即ち減量されて投与される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び/又は化学療法薬の用量は、実質的に設定した最大耐用量(MTD)未満である。例えば、ナノ粒子組成物及び/又は化学療法薬の用量は、MTDの約50%、40%、30%、20%又は10%未満である。
【0083】
本明細書に記載の投与構成の組み合わせを使用することができる。本明細書に記載の併用療法は、単独で実施しても、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、遺伝子療法等の別の両方と組み合わせて実施してもよい。又、増殖性疾患を発現するリスクの高い個体は、疾患の発現を阻害するか遅延させるための処置を受けることができる。
【0084】
当業者には理解されるように、化学療法薬の適切な用量というものは、その化学療法薬が単独で投与されているか、他の化学療法薬と併用されている臨床治療ですでに使用されている用量にほぼ近い。用量の変更は、処置対象の疾患によって起こる可能性が高い。上述の通り、幾つかの実施形態においては、化学療法薬は減量して投与することができる。
【0085】
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、種々の経路、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内又は経皮といった非経口的に個体(ヒト等)に投与することができる。例えば、ナノ粒子組成物は吸入によって投与し、気道の疾患を処置することができる。この組成物は、肺線維症、閉塞性細気管支炎、肺癌、気管支肺胞癌等といった呼吸器疾患を処置するために使用することができる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は静脈内投与される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は経口投与される。
【0086】
ナノ粒子組成物の投与頻度は、その併用療法の性格及び処置対象の疾患に左右される。代表的な投与頻度には、休薬なしに毎週、毎週、4週間のうち3週間、3週間に1回、2週間に1回、3週間のうち2週間は週1回等が含まれるが、これらに限定されない。表1も参照されたい。
【0087】
ナノ粒子組成物中のタキサンの用量は、その併用療法の性格及び処置対象の疾患に左右される。用量は目的の反応、即ち特定の疾患に対する治療的又は予防的反応を引き出すのに十分である必要がある。タキサン(幾つかの実施形態においてはパクリタキセル)の代表的な用量には、約50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、160mg/m、175mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、260mg/m及び300mg/mが含まれるが、これらに限定されない。例えば、ナノ粒子組成物中のパクリタキセルの用量は、3週間の投与計画で行う場合は100〜400mg/m、又は毎週の投与計画で行う場合は50〜250mg/mであることができる。表1も参照されたい。
【0088】
ナノ粒子組成物のその他の代表的な投与計画(パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えばアブラキサンTM等)には、100mg/mを毎週休薬なし、75mg/mを毎週、4週間のうち3週間、100mg/mを毎週、4週間のうち3週間、125mg/mを毎週、4週間のうち3週間、125mg/mを毎週、3週間のうち2週間、130mg/mを毎週休薬なし、175mg/mを2週間に1回、260mg/mを2週間に1回、260mg/mを3週間に1回、180〜300mg/mを3週間に1回、60〜175mg/mを毎週休薬なし等が含まれるが、これらに限定されない。又、タキサン(単独又は併用療法において)は、本明細書に記載のメトロノーム投与法に従って投与することができる。
【0089】
ナノ粒子組成物(パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えばアブラキサンTM等)及びその他の薬剤の併用療法の代表的な投与計画には、125mg/mを毎週、3週間のうち2週間と825mg/mのXeloda(登録商標)を毎日;260mg/mを2週間に1回と60mg/mのアドリアマイシン及び600mg/mのシクロホスファミドを2週間に1回;220〜340mg/mを3週間に1回とAUCが6倍のカルボプラチンを3週間に1回;100〜150mg/mを毎週とAUCが6倍のカルボプラチンを3週間に1回;175mg/mを2週間に1回と2000mg/mのゲムシタビン及び50mg/mのエピルビシンを2週間に1回;75mg/mを毎週、4週間のうち3週間とAUCが2倍のカルボプラチンを毎週、4週間のうち3週間等が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
幾つかの実施形態において、タキサンのナノ粒子組成物及び化学療法薬は、表1に記載の投与計画の何れかに従って投与される。
【0091】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の1列目から35列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の1列目から35列目に示す投与計画の何れかであることができる。幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の2列目、4〜8列目及び10〜15列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における転移性乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の2列目、4〜8列目及び10〜15列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0092】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の1列目から16列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における進行性乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の1列目から16列目に示す投与計画の何れかであることができる。幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の3列目に記載のように個体に投与することからなる、個体におけるステージIVの乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の3列目に示す投与計画であることができる。
【0093】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の18〜24列目に記載のように個体に投与することからなる、アジュバント療法の個体における乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の18〜24列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0094】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の25〜35列目に記載のように個体に投与することからなる、ネオアジュバント療法の個体における乳癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の25〜35列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0095】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の36〜48列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における肺癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の36〜48列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0096】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の36〜40列目及び42〜43列目に記載のように個体に投与することからなる、個体におけるNSCLC(進行NSCLC及び初回治療NSCLCを含む)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の36〜40列目及び42〜43列目に示す投与計画の何れかであることができる。幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の41列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における肺の進行固形腫瘍を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の41列目に示す投与計画であることができる。幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の48列目に記載のように個体に投与することからなる、個体におけるSCLCを処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の48列目に示す投与計画であることができる。
【0097】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の49〜52列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における卵巣癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の49〜52列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0098】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の53〜55列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における頭頚部癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の53〜55列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0099】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の56〜59列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における固形腫瘍(進行固形腫瘍を含む)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の56〜59列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0100】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の60〜63列目に記載のように個体に投与することからなる、個体におけるメラノーマ(転移性メラノーマを含む)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の60〜63列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0101】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の64列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における転移性結腸直腸癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の64列目に示す投与計画であることができる。
【0102】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量及びb)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量を、表1の65〜66列目に記載のように個体に投与することからなる、個体における膵癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表1の65〜66列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0103】
(表1)
【0104】
【表1−1】

【0105】
【表1−2】

【0106】
【表1−3】

【0107】
【表1−4】

【0108】
【表1−5】

【0109】
【表1−6】

【0110】
【表1−7】

【0111】
【表1−8】

【0112】
【表1−9】

【0113】
【表1−10】

【0114】
【表1−11】

本明細書(例えば表1)で使用される、ABXはアブラキサンTMを、GW572016はラパチニブを、Xelはカペシタビン又はXeloda(登録商標)を指す。ベバシズマブはAbastin(登録商標)とも呼ばれ、トラスツズマブはHerceptin(登録商標)とも呼ばれ、pemtrexedはAlimta(登録商標)とも呼ばれ、セツキシマブはErbitux(登録商標)とも呼ばれ、ゲフィチニブはIressa(登録商標)とも呼ばれる。FECは5−フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミドの併用を指し、ACはアドリアマイシンとシクロホスファミドの併用を指す。TACはFDAが認可する乳癌アジュバント療法の治療計画を指し、RAD001はラパマイシンの誘導体を指し、NSCLCは非小細胞肺癌を、SCLCは小細胞肺癌を指す。
【0115】
本明細書(例えば表1)で使用される、AUCは曲線下面積を、q4wkは4週毎の投与を、q3wkは3週毎の投与を、q2wkは2週毎の投与を、qwkは毎週の投与を指す。qwkx3/4は週毎投与を3週間続けて4週目を休薬することであり、qwkx2/3は週毎投与を2週間続けて3週目を休薬することである。
放射線療法及び手術との併用療法
別の態様において、本発明は、タキサン(特にタキサンを含むナノ粒子)及び担体タンパク質の投与からなる第一の療法及び放射線療法及び/又は手術を含む第二の療法からなる方法を提供する。
【0116】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、a)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)の有効量を含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法からなる。幾つかの実施形態において、タキサンは担体タンパク質(アルブミン等)でコーティングされている。幾つかの実施形態において、第二の療法は放射線療法である。幾つかの実施形態において、第二の療法は手術である。
【0117】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、a)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の方法及びb)放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法からなる。幾つかの実施形態において、第二の療法は放射線療法である。幾つかの実施形態において、第二の療法は手術である。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物には、実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、組成物中のアルブミンとパクリタキセルの重量比は約18:1又はそれ未満、例えば約9:1又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、パクリタキセルはアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下で、パクリタキセル/アルブミン組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、平均直径が200nm以下であり、パクリタキセルがアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMである。
【0118】
ナノ粒子組成物の投与は放射線療法及び/又は手術の前、放射線療法及び/又は手術の後又は放射線療法及び/又は手術と同時に行うことができる。例えば、ナノ粒子組成物の投与は、放射線療法及び/又は手術の前又は後に数分から数時間の間隔をおいて実施することができる。幾つかの実施形態において、第一及び第二の療法の間隔は、タキサン及び放射線療法/手術が依然として併用による有利な効果を細胞に与えることができるようなものである。例えば、ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)は、放射線療法及び/又は手術の約1、3、6、9、12、18、24、48、60、72、84、96、108、120時間未満の何れかに先立って実施することができる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、放射線療法及び/又は手術の約9時間未満前に投与される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、放射線療法及び/又は手術の約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10日間の何れかに先立って実施することができる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)は、放射線療法及び/又は手術の約1、3、6、9、12、18、24、48、60、72、84、96、108、120時間未満の何れか後に実施することができる。幾つかの実施形態においては、この2つの療法の間には数日から数週といった著明な時間間隔を広げるのが望ましい。
【0119】
本明細書で検討される放射線療法には、例えば、γ線、X線(遠隔ビーム)及び腫瘍細胞に対する放射性同位体の直接送達が含まれる。他のDNA損傷因子、例えばマイクロ波及びUV線照射も検討される。放射線は、単独線量が照射されるか、低線量が線量分画計画によって何回かで照射される。本明細書で検討する放射線の合計線量は、約1〜約100Gyであって、例えば、約5〜約80、約10〜約50Gy又は約10Gyを含む。この合計線量は、分画計画に従って照射することができる。例えば、この計画は、分画された2Gyの個々の線量を含む場合がある。放射性同位元素の用量は多岐にわたり、その同位体の半減期及び放射される放射線の強度及び種類によって異なる。
【0120】
放射線療法が放射性同位元素の使用からなる場合、その同位元素は放射性ヌクレオチドを標的組織へ運ぶターゲティング剤、例えば治療用抗体等と抱合させることができる。好適な放射性同位元素には、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57鉄、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨード123、ヨード131、インジウム111、59イオン、32リン、レニウム186、75セレン、35硫黄、テクニチウム99m及び/又はイットリウム90が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
幾つかの実施形態において、十分な線量の放射線が個体に照射され、ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)が同程度まで効果を発揮するのに必要な通常の用量を、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上減量することを可能にする。幾つかの実施形態においては、十分量のナノ粒子組成物中のタキサンが投与され、放射線療法が同程度まで効果を発揮するのに必要な通常の線量を、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上減量することを可能にする。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)及び放射線の両方の用量/線量が、それぞれ単独で投与/照射される場合の通常の用量/線量に比べて減量される。
【0122】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物の投与と放射線療法の併用により、相乗作用が得られる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)は90mg/kgを単回投与され、放射線は80Gyを毎日5回照射される。
【0123】
本明細書に記載する手術には、癌性組織の全て又は一部が物理的に摘出、移動及び/又は破壊される切除術が含まれる。腫瘍の切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的な摘出を指す。腫瘍の切除に加え、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術及び顕微鏡下手術(モース氏手術)が含まれる。表在組織、前癌又は正常組織の摘出も検討される。
【0124】
放射線療法及び/又は手術は、化学療法薬の投与に加えて実施することができる。例えば、個体は最初にタキサンを含有するナノ粒子組成物及び少なくとも1つの他の化学療法薬を投与され、続いて放射線療法及び/又は手術を受ける。あるいは、個体は最初に放射線療法及び/又は手術を受け、続いてナノ粒子組成物及び少なくとも1つの他の化学療法薬を投与される。他の組み合わせも検討される。
【0125】
上記に開示される化学療法薬の投与と併用されるナノ粒子組成物の投与は、放射線療法及び/又は手術と併用されるナノ粒子組成物の投与にも適用される。
【0126】
幾つかの実施形態において、タキサンのナノ粒子組成物及び/又は化学療法薬は、表2に記載の投与計画の何れかに従って、放射線療法と併用して投与される。
【0127】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)表2の1〜5列目に記載の放射線治療を含む第二の療法からなる、個体におけるNSCLCを処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表2の1〜5列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0128】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)表2の6〜9列目に記載の放射線治療を含む第二の療法からなる、個体における頭頚部癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表2の6〜9列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0129】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)表2の10列目に記載の放射線治療を含む第二の療法からなる、個体における膵癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表2の10列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0130】
幾つかの実施形態においては、a)タキサン(パクリタキセル等)及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる第一の療法及びb)表2の11列目に記載の放射線治療を含む第二の療法からなる、個体における胃癌を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物及び化学療法薬の投与は、表2の11列目に示す投与計画の何れかであることができる。
【0131】
(表2)
【0132】
【表2−1】

【0133】
【表2−2】

幾つかの実施形態において、本発明は、増殖性疾患(癌等)の処置に使用するための、タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む薬学的組成物を提供し、前記使用は、放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法からなる。
メトロノーム投与
又、本発明は、メトロノーム投与計画を提供する。タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル又はortataxel等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を、メトロノーム投与計画に基づき個体に投与する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載の処置、疾患発現の遅延の方法及びその他の臨床的状況及び構成に適用することができる。例えば、幾つかの実施形態において、この方法は増殖性疾患(癌等)の処置に有用である。
【0134】
本明細書で使用する「メトロノーム投与計画」は、休薬期間を設けた従来の投与計画に準じて設定された最大耐用量(以下、「標準MTDスケジュール」又は「標準MTD計画」)よりも低用量のタキサンを長期の休薬期間なしに頻回に投与することを指す。メトロノーム投与では、最終的に標準MTDスケジュールに準じて投与される一定の期間で、同じか、少ないか、多い累積用量が投与される。幾つかの場合、これは、各投与時の投与量を減量しつつ、その投与計画を実施する期間及び/又は頻度を増加させることによって達成される。一般的に、本発明のメトロノーム投与法に準じて投与されるタキサンは、個体によりよく耐容される。メトロノーム投与法は維持投与法又は長期投与法とも呼ぶことができる。
【0135】
幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、このナノ粒子は少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔は約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量は、約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。
【0136】
幾つかの実施形態において、投与毎のタキサンの用量(パクリタキセル等)は、任意の従来の投与計画に準じた同じ調剤中の同じタキサン(パクリタキセル等)のMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%、22%、24%又は25%の何れか未満である。従来の投与スケジュールとは、一般的に臨床条件で設定した投与スケジュールを指す。例えば、アブラキサンTMの従来の投与スケジュールは3週毎のスケジュール、即ちその組成物を3週毎に投与するものである。
【0137】
幾つかの実施形態において、タキサン(パクリタキセル等)の投与毎の投与量は、相当するMTDの約0.25%〜約25%であって、例えば、相当するMTD値の約0.25〜約20%、約0.25〜約15%、約0.25〜約10%、約0.25〜約20%及び約0.25〜約25%である。従来の投与スケジュールに従ったタキサンのMTD値は、当業者により既知であるか、容易に決定されることができる。例えば、アブラキサンTMを従来の3週毎の投与スケジュールに従って投与した場合のMTD値は、約300mg/mである。
【0138】
幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25mg/m〜約25mg/mである投与方法が提供される。
【0139】
幾つかの実施形態において、投与毎のタキサン(パクリタキセル等)の用量は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、22、25及び30mg/m未満である。例えば、タキサン(パクリタキセル等)の用量は、約0.25〜約30mg/m、約0.25〜約25mg/m、約0.25〜約15mg/m、約0.25〜約10mg/m及び約0.25〜約5mg/mであることができる。
【0140】
ナノ粒子組成物中のタキサン(パクリタキセル等)の投与頻度には、少なくとも週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回又は毎日が含まれるが、これらに限定されない。通常、各投与の間隔は1週間未満、例えば、6、5、4、3、2又は1日の何れか未満である。幾つかの実施形態において、各投与の間隔は一定である。例えば、投与は毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎又は毎週行うことができる。幾つかの実施形態において、投与は1日2回、1日3回又はより頻回に行うことができる。
【0141】
本明細書に記載のメトロノーム投与計画は、一定の期間、例えば1ヵ月から約3年までの期間にわたって延長することができる。例えば、投与計画は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30及び36ヵ月間にわたって延長することができる。一般的に、投与スケジュールに休薬期間はない。
【0142】
メトロノーム投与法によって投与されるタキサン(パクリタキセル等)の累積量は、同期間に標準的なMTD投与スケジュールに従って投与されるタキサンの用量よりも高用量であることができる。幾つかの実施形態において、メトロノーム投与法によって投与されるタキサン(パクリタキセル等)の累積量は、同期間に標準的なMTD投与スケジュールに従って投与されるタキサンの用量と同じであるか、それよりも低用量である。
【0143】
本明細書で提供される教えは例示に過ぎず、メトロノーム投与法は本命再補に記載の教えに従い、個々の標準MTDスケジュールに基づいてルーチンにデザインすることができ、これらの実験で使用されるメトロノーム投与法は、標準的MTDスケジュールの投与間隔及び期間を変更して至適なメトロノーム投与法に到達する一例にしか過ぎないことを理解されたい。
【0144】
本明細書に記載のメトロノーム投与法は、増殖性疾患の処置として単独で使用されるか、本明細書で記載の併用療法といった併用療法において実施されることができる。幾つかの実施形態において、メトロノーム投与法は、従来のMTD投与法に準じて投与される他の確立された療法と組み合わせて又は連結させて使用することができる。「組み合わせて又は連結させて」とは、本発明のメトロノーム投与法を、確立された療法の標準MTD投与法と同時か、導入療法のクール間に実施して、導入療法によって個体が得ることができた利益を維持し、個体の健康状態又は個体の次クールの導入療法に耐えるための能力を不当に低下させずに腫瘍の成長を抑え続けることを意図することを意味する。例えば、メトロノーム投与法は、MTD化学療法の最初の短いクールの後に採用することができる。
【0145】
本明細書に記載のメトロノーム投与法に基づいて投与されたナノ粒子組成物は、種々の経路、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内又は経皮といった非経口的に個体(ヒト等)に投与することができる。例えば、ナノ粒子組成物は吸入によって投与し、気道の疾患を処置することができる。この組成物は、肺線維症、閉塞性細気管支炎、肺癌、気管支肺胞癌等といった呼吸器疾患を処置するために使用することができる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は経口投与される。
【0146】
幾つかの種々の例示的実施形態を下に提供する。
【0147】
幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が従来の投与法に従った最大耐量の約0.25〜約25%である投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、タキサンは担体タンパク質(アルブミン等)でコーティングされる。幾つかの実施形態において、投与毎のタキサンの用量は、最大耐量の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%、22%、24%又は25%の何れか未満である。幾つかの実施形態において、タキサンは少なくとも週に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回(即ち毎日)の何れかで投与される。幾つかの実施形態において、各投与の間隔は約7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間及び1日間未満である。幾つかの実施形態において、タキサンは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30及び36ヵ月間にわたって投与される。
【0148】
幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子組成物が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が従来の投与法に従った最大耐量の約0.25〜約25%である投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物には、実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、組成物中のアルブミンとパクリタキセルの重量比は約18:1又はそれ未満、例えば約9:1又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、パクリタキセルはアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下で、パクリタキセル/アルブミン組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、平均直径が200nm以下であり、パクリタキセルがアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMである。
【0149】
幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、タキサンは担体タンパク質(アルブミン等)でコーティングされる。幾つかの実施形態において、投与毎のタキサンの用量は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、22及び25mg/m未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも1週間に約1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回(即ち毎日)投与される。幾つかの実施形態において、各投与の間隔は約7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間及び1日間未満である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30及び36ヵ月間にわたって投与される。
【0150】
幾つかの実施形態においては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法であって、そのナノ粒子組成物が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時におけるタキサンの用量が約0.25〜約25mg/mである投与方法が提供される。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物には、実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、組成物中のアルブミンとパクリタキセルの重量比は約18:1又はそれ未満、例えば約9:1又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、パクリタキセルはアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子の平均直径は200nm以下で、パクリタキセル/アルブミン組成物は実質的に界面活性剤(クレモフォール等)が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、平均直径が200nm以下であり、パクリタキセルがアルブミンでコーティングされている。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物はアブラキサンTMである。
【0151】
幾つかの実施形態において、アブラキサンTM(又は他のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物)は、約3〜約10mg/kgの用量で毎日投与される。幾つかの実施形態において、アブラキサンTMは、約6〜約10mg/kgの用量で毎日投与される。幾つかの実施形態において、アブラキサンTMは、約6mg/kgの用量で毎日投与される。幾つかの実施形態において、アブラキサンTMは、約3mg/kgの用量で毎日投与される。
【0152】
又、本発明は、本明細書に記載のメトロノーム投与法で使用される組成物を提供する。幾つかの実施形態においては、タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物であって、前記組成物が個体に本明細書に記載した投与法のようなメトロノーム投与法に準じて投与される組成物が提供される。
本発明のその他の態様
別の態様においては、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル又はortataxel等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することからなる、増殖性疾患の処置方法が提供される。幾つかの実施形態においては、ortataxel及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与することからなる、癌の処置方法が提供される。
【0153】
幾つかの実施形態においては、チオコルヒチン又はその誘導体(二量体チオコルヒチン等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することからなる、増殖性疾患の処置方法が提供される。幾つかの実施形態においては、二量体チオコルヒチン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することからなる、癌の処置方法が提供される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、Nab−5404、Nab−5800及びNab−5801の何れかである(又幾つかの実施形態ではこれらの群から選択される)。
【0154】
幾つかの実施形態においては、パクリタキセルを含むナノ粒子を含む組成物を投与することからなる癌の処置方法であって、そのナノ粒子組成物が表3に記載の投与法の何れかに従って投与される方法が提供される。幾つかの実施形態において、癌はタキサン抵抗性転移性乳癌である。
【0155】
(表3)
【0156】
【表3−1】

【0157】
【表3−2】

ナノ粒子組成物
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含む(種々の実施形態においては実質的にこれらで構成される)ナノ粒子を含む。水に溶けにくい薬剤(タキサン等)のナノ粒子については、米国特許第5,916,596号、第6506405号及び第6537579号及び米国特許2005/0004002A1号に開示されている。下記の説明はタキサンを特定したものであるが、同じ説明がラパマイシン、17−AAG及び二量体チオコルヒチンといった他の薬剤にも適用されることを理解されたい。
【0158】
幾つかの実施形態において、組成物は、直径平均値又は中央値が約1000ナノメートル(nm)以下、例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200及び100nm以下のナノ粒子を含む。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の直径の平均値又は中央値は約200nm以下である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の直径の平均値又は中央値は約100nm以下である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の直径の平均値又は中央値は約20〜約400nmである。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の直径の平均値又は中央値は約40〜約400nmである。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は滅菌濾過が可能である。
【0159】
本明細書に記載のナノ粒子は、乾燥調剤(凍結乾燥組成物等)中に存在するか、生体適合性培地に懸濁して存在することができる。好適な生体適合性培地には、水、緩衝水性培地、生食水、緩衝生食水、任意に緩衝されるアミノ酸溶液、任意に緩衝されるタンパク質溶液、任意に緩衝される糖の溶液、任意に緩衝されるビタミンの溶液、任意に緩衝される合成ポリマーの溶液、脂質含有エマルジョン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
「タンパク質」という用語は、任意の長さ(完全長又は断片を含む)のアミノ酸のポリペプチド又はポリマーを指し、これは直鎖又は分枝鎖であり、修飾アミノ酸を含み、且つ/又は非アミノ酸で分断される場合がある。この用語は又、自然に修飾された、又は例えば、ジスルフィド結合形成、糖化、脂質化、アセチル化、リン化若しくはその他任意の操作のようなインターベンションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも含む。又、この用語には、例えば、1つ以上のアミノ酸の類似体(例えば合成アミノ酸等)並びに当業界で既知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。本明細書に記載のタンパク質は、自然発生、即ち天然源(血液等)から得られるか天然源に由来することができるか、合成されることができる(化学合成又は遺伝子組換えDNA技術による合成等)。
【0161】
好適な担体タンパク質の例には、血液又は血漿に通常認められるタンパク質が挙げられ、これにはアルブミン、IgAを含む免疫グロブリン、リポタンパク質、アポリポタンパクB、α酸糖タンパク、β−2−マクログロブリン、甲状腺グロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X等が含まれるが、これらに限定されない。担体タンパク質は、天然であるか合成されたものの何れかであることができる。幾つかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、ヒト血清アルブミンのようなアルブミンを含む。ヒト血清アルブミン(HSA)は極めて溶けやすいMr65Kの球状タンパク質であり、585個のアミノ酸からなる。HSAは血漿中で最も豊富にあるタンパク質で、ヒト血漿の膠質浸透圧の7〜8割を占める。HSAのアミノ酸配列には合計17個のジスルフィド架橋、1つの遊離チオール(Cys34)及び一つのトリプトファン(Trp214)がある。HSA溶液の静脈内注入は、循環血液量低下ショックの予防及び処置に適応とされてきており(Tullis,JAMA,237,355−360,460−463,(1977)及びHouser,et al.,Surgery Gynecology and Obsterics,150,811−816(1980)を参照)、新生児高ビリルビン血症の処置では交換輸血と併用される(Finlayson,Seminars in Thrombosis and Hemostasis,6,85−120,(1980))。ウシ血清アルブミン等の他のアルブミンも検討される。こうした非ヒトアルブミンの使用は、例えば、これらの組成物をヒトではない哺乳動物に、例えば獣医科で使用するという場合では適切である(家庭のペット及び酪農的内容を含む)。
【0162】
ヒト血清アルブミン(HSA)は複数の疎水性結合部位(脂肪酸については合計8個、HSAの内在性リガンド1個)を有し、多岐にわたるタキサンの組み合わせ、特に中性及び負に荷電した疎水性化合物と結合する(Goodman,et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics 9th ed,McGraw−Hill New York(1996))。2つの高親和性結合部位が、HSAのサブドメインIIA及びIIIAで提案されており、それらは表面近くに荷電したリジン及びアルギニン残基を収容する極めて深い疎水性ポケットであり、極性リガンドの結合点として機能する(Fehske,et al.,Biochem.Pharmacol.,30,687−92(198a),Vorum,Dan.Med.Bull.,46,379−99(1999),Kragh−Hansen,Dan.Med.Bull.,1441,131−40(1990),Curry,et al.,Nat.Struct.Biol.,5,827−35(1998),Sugio,et al.,Protein.Eng.,12,439−46(1999),He,et al.,Nature,358,209−15(199b)及びCarter,et al.,Adv.Protein.Chem.,45,153−203(1994)を参照)。パクリタキセル及びプロポフォルはHSAと結合することが明らかになっている(Paal,et al.,Eur.J.Biochem.,268(7),2187−91(200a),Purcell,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1478(a),61−8(2000),Altmayer,et al.,Arzneimittelforschung,45,1053−6(1995)及びGarrido et al.,Rev.Esp.Anestestiol.Reanim.,41,308−12(1994)を参照)。又、ドセタキセルはヒト血漿タンパク質と結合することが明らかになっている(Urien,et al.,Invest.New Drugs,14(b),147−51(1996)を参照)。
【0163】
組成物中の担体タンパク質(アルブミン等)は一般的に、タキサンの担体として働く。即ち、組成物中の担体タンパク質は、担体タンパク質を含まない組成物に比べて、タキサンがより迅速に水性培地に懸濁できるようにするか、懸濁液を維持するのを助ける。これにより、タキサンを溶解させるための毒性を有する溶媒(又は界面活性剤)を使用せずに済み、それによりタキサンを個体(ヒト等)に投与した場合、1つ以上の副作用を抑えることができる。このため、幾つかの実施形態において、本組成物には実質的にクレモフォール(クレモフォール EL(登録商標)(BASF)等)等の界面活性剤が存在しない(フリー等)。幾つかの実施形態において、ナノ粒子組成物には実質的に界面活性剤が存在しない(フリー等)。組成物中のクレモフォール又は界面活性剤の量が、ナノ粒子組成物を個体に投与した場合に1つ以上の副作用を引き起こさないだけの量である場合、その組成物は「実質的にクレモフォールフリー」又は「実質的に界面活性剤フリー」である。
【0164】
本明細書に記載の組成物中の担体タンパク質の量は、その組成物中の他の構成要素によって様々である。幾つかの実施形態において、組成物は、タキサンを水性懸濁液中で安定させるのに十分な量、例えば、安定したコロイド状懸濁液(安定したナノ粒子の懸濁液等)の形態で安定させるのに十分な量の担体タンパク質を含む。幾つかの実施形態において、担体タンパク質は、水性培地中のタキサンの沈降速度を減少させるだけの量存在する。粒子を含有する組成物の場合、担体タンパク質の量は、タキサンのナノ粒子のサイズ及び密度によって異なる。
【0165】
タキサンは一定期間、例えば少なくとも0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60又は72時間、水性培地で懸濁し続ける場合(肉眼で沈殿又は沈降が確認できない等)、その水性懸濁液中で「安定」している。この懸濁液は必ずしもではないが、一般的に、個体(ヒト等)への投与に好適である。この懸濁液の安定性は、一般的に(しかし必ずしもではない)保存温度(室温等(20〜25℃等))又は冷蔵条件(4℃等)で評価される。例えば、裸眼で綿状沈殿又は粒子の凝集が確認されないか、1000倍の顕微鏡下で確認されないか、懸濁液の調整から15分経ても確認されない場合、その懸濁液は保存温度において安定である。又、安定性は、温度が約40℃よりも高い等といった加速劣化試験条件下でも評価できる。
【0166】
幾つかの実施形態において、担体タンパク質は一定の濃度で水性懸濁液中でタキサンを安定させるのに十分な量存在する。例えば、組成物中のタキサンの濃度は約0.1〜約100mg/mLであり、例えば約0.1〜約50mg/mL、約0.1〜約20mg/mL、約1〜約10mg/mL、約2〜約8mg/mL、約4〜約6mg/mL、約5mg/mLが含まれる。幾つかの実施形態において、タキサンの濃度は少なくとも約1.3mg/mL、1.5mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、40mg/mL及び50mg/mLである。幾つかの実施形態において、担体タンパク質は界面活性剤(クレモフォール等)の使用を避けられる量だけ存在するため、その組成物は界面活性剤(クレモフォール等)フリーであるか、実質的にフリーである。
【0167】
幾つかの実施形態において、液状の形態の組成物は、約0.1〜約50%(w/v)(例えば約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)又は約50%(w/v))の担体タンパク質を含む。幾つかの実施形態において、液状の形態の組成物は、約0.5〜約5%(w/v)の担体タンパク質を含む。
【0168】
幾つかの実施形態において、担体タンパク質、例えばアルブミンのナノ粒子組成物中のタキサンに対する重量比は、十分な量のタキサンが細胞に結合するか、細胞によって輸送されることのできるものである。担体タンパク質のタキサンに対する重量比は種々の担体タンパク質及びタキサンの組み合わせに応じて最適化する必要があるが、一般的に担体タンパク質例えばアルブミンのタキサンに対する重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1又は約9:1である。幾つかの実施形態において、担体タンパク質のタキサンに対する重量比は約18:1又はそれ未満、15:1又はそれ未満、14:1又はそれ未満、13:1又はそれ未満、12:1又はそれ未満、11:1又はそれ未満、10:1又はそれ未満、9:1又はそれ未満、8:1又はそれ未満、7:1又はそれ未満、6:1又はそれ未満、5:1又はそれ未満、4:1又はそれ未満及び3:1又はそれ未満である。
【0169】
幾つかの実施形態において、担体タンパク質は組成物が個体(ヒト等)に著明な副作用なしに投与されることを可能にする。幾つかの実施形態において、担体タンパク質(アルブミン等)は、ヒトへのタキサン投与による1つ以上の副作用を低減するのに有効な量存在する。「タキサン投与による1つ以上の副作用を低減する」という用語は、タキサンに起因する1つ以上の望ましくない作用並びにタキサンを送達するのに使用される送達用ビヒクル(タキサンを注射できるようにするための溶媒等)に起因する副作用を低減、緩和、除去又は回避することを指す。こうした副作用には、例えば、骨髄抑制、神経毒性、過敏性、炎症、静脈被刺激、静脈炎、疼痛、皮膚炎、末梢ニューロパチー、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、静脈塞栓症、管外遊出及びそれらの組み合わせが含まれる。しかし、これらの副作用は単に例示に過ぎず、タキサンに起因する他の副作用又は副作用の組み合わせも軽減することができる。
【0170】
幾つかの実施形態において、組成物はアブラキサンTMを含む。アブラキサンTMはUSPヒトアルブミンで安定させたパクリタキセルの調剤で、注射用生理学的溶液に直接分散させることができる。好適な水性培地、例えば0.9%塩化ナトリウム注射液又は5%ブドウ糖注射液に分散させた場合、アブラキサンTMは安定したパクリタキセルのコロイド状懸濁液を形成する。このコロイド状懸濁液中のナノ粒子の平均粒径は約130ナノメートルである。HSAは水に溶けやすいため、アブラキサンTMは希釈タイプ(パクリタキセル0.1mg/mL)から濃縮タイプ(パクリタキセル20mg/mL)まで、幅広い濃度で再調製することができ、これには例えば約2〜約8mg/mL、約5mg/mLが含まれる。
【0171】
ナノ粒子組成物の製造方法は業界内で既知である。例えば、タキサン(パクリタキセル等)及び担体タンパク質(アルブミン等)を含有するナノ粒子は、高剪断力の条件下(例えば、音波破砕、高圧ホモジナイゼーション等)で調製することができる。これらの方法は、例えば、米国特許第5,916,596号、第6,506,405号及び第6,537,579号及び米国特許2005/0004002A1号に開示されている。
【0172】
要約すれば、タキサン(ドセタキセル等)を有機溶媒に溶解し、その溶液を人血清アルブミン溶液に添加することができる。この混合物を高圧ホモジナイゼーションにかける。その後、有機溶媒を蒸発によって除去することができる。得られた分散液を更に凍結乾燥することができる。好適な有機溶媒には、例えば、ケトン、エステル、エーテル、塩化溶媒及び他の当業界で既知の溶媒が含まれる。例えば、有機溶媒は塩化メチレン及びクロロホルム/エタノールであることができる(例えば比は1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1又は9:aである)。
ナノ粒子組成物中の他の構成要素
本明細書に記載のナノ粒子は、他の物質、調剤又は安定剤を含む組成物中に存在することができる。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を増加させて安定性を上昇させるために、特定の陰性に帯電した構成要素を添加することができる。こうした陰性に帯電した構成要素には、グリコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸及びその他からなる胆汁酸の胆汁塩、以下のホスファチジルコリン:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリン及びジパルミトイルホスファチジルコリンを含むレシチン(卵黄)系のリン脂質を含むリン脂質が含まれるがこれらに限定されない。他のリン脂質には、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)及び他の関連化合物が含まれる。陰性に荷電した界面活性剤又は乳化剤、例えば硫酸コレステリルナトリウム等も添加剤として好適である。
【0173】
幾つかの実施形態において、組成物はヒトへの投与に好適である。幾つかの実施形態において、組成物は、例えば獣医学的コンテキストにおいて家庭のペット及び酪農動物といった哺乳動物への投与に好適である。多岐にわたる好適なナノ粒子組成物の配合剤が存在する(米国特許第5,916,596号及び第6,096,331号を参照)。以下の配合剤及び方法は単に例示的なものであり、制限目的ではない。経口投与に好適な配合剤は、(a)水、生食水又はオレンジジュース等の希釈液に溶解した有効量の化合物といった液体溶液、(b)規定量の活性成分を固形物又は顆粒として含有するカプセル剤、サシェ又は錠剤、(c)しかるべき液体を使用した懸濁液及び(d)好適なエマルジョンからなることができる。錠剤は、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイドシリコンジオキシド、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及び他の調剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、風味剤及び製剤学的に適合する調剤を1つ以上含むことができる。ロゼンジは、風味剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中の活性成分を含み、香錠は活性成分を不活性塩基、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア、エマルジョン、ゲル、並びに活性成分に加えて業界で既知の調剤を含有するその他の成分中に含む。
【0174】
好適な担体、調剤及び希釈剤の例には、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生食水、シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が含まれるが、これらに限定されない。配合剤は更に、潤沢剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、保存剤、甘味剤又は風味剤を含むことができる。
【0175】
非経口投与に好適な配合物は、水性又は非水性の等張性滅菌注射液を含み、これは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び配合剤を意図するレシピエントの血液に適合させるための溶質を含有することができ、水性又は非水性の滅菌懸濁液を含み、これは懸濁剤、可溶化剤、充填剤、安定剤及び保存剤を含むことができる。配合剤は単一用量又は複数用量の入ったアンプル及びバイアル等の封印容器で呈示することができ、使用直前に水等の注射用滅菌液調剤を添加するのみでよい、凍結乾燥状態で保存することができる。即時注射液及び懸濁液は、前述のような滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。注射可能な配合剤が望ましい。
【0176】
幾つかの実施形態において、組成物はpHが約4.5〜9.0、例えば約5.0〜約8.0、約6.5〜約7.5、約6.5〜約7.0の何れかを含むように調剤される。幾つかの実施形態において、組成物のpHは約6以上になるように調剤され、例えば約6.5以上、7以上又は8以上(約8等)が含まれる。又、組成物は、グリセロール等の好適な張性調整剤を添加することにより、血液と等張にすることができる。
キット
本発明は、簡便な方法で使用できるキットも提供する。本発明のキットは、タキサン含有ナノ粒子組成物を含む1つ以上の容器(又は単位用量形態及び/又は製品)及び/又は化学療法薬を含み、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の方法の何れかに準じた使用説明書を更に含む。キットは、更に好適な個体又は処置の選択方法の説明を含む場合もある。本発明のキットに同梱される説明書は通常、ラベル又は添付文書に記載される説明書であるが(例えば、キットに同梱されるペーパーシート)、機械で読み取れる説明書(例えば、磁気又は光学的保存ディスク)も許容される。
【0177】
幾つかの実施形態において、キットはa)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物、b)1つ以上の他の有効量の化学療法薬及びc)増殖性疾患(癌等)を処置するためにナノ粒子及び化学療法薬を同時及び/又は逐次投与する上での説明書を含む。幾つかの実施形態において、タキサンはパクリタキセル、ドセタキセル及びortataxelの何れかである。幾つかの実施形態において、キットはa)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)、b)1つ以上の他の有効量の化学療法薬及びc)増殖性疾患(癌等)を処置するためにナノ粒子及び化学療法薬を同時及び/又は逐次投与するための説明書を含む。
【0178】
幾つかの実施形態において、キットはa)タキサン及び担体タンパク質(アルブミン等)を含むナノ粒子を含む組成物、b)1つ以上の他の有効量の化学療法薬を含むナノ粒子を含む組成物及びc)増殖性疾患(癌等)を処置するためにナノ粒子組成物を同時及び/又は逐次投与するための説明書を含む。幾つかの実施形態において、キットはa)パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物(アブラキサンTM等)、b)1つ以上の他の有効量の化学療法薬を含むナノ粒子を含む組成物及びc)増殖性疾患(癌等)を処置するためにナノ粒子組成物を同時及び/又は逐次投与する上での説明書を含む。
【0179】
ナノ粒子及び化学療法薬は、別々の容器又は単一の容器に存在することができる。キットは、1つの独立した組成物、又は1つの組成物がナノ粒子を含み、1つの組成物が化学療法薬を含むという2つ以上の組成物を含む場合がことが理解される。
【0180】
本発明のキットは好適な包装中に存在する。好適な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟性のある包装(密封Mylar又はポリ袋)等が含まれるが、これらに限定されない。キットは任意には緩衝剤及び解釈用の情報といった追加の構成要素を提供することができる。
【0181】
ナノ粒子組成物の使用に関する説明書には、一般的に、所期の処置のための用量、投与スケジュール及び投与経路の情報が含まれる。容器は、単位個別包装、バルク包装(複数の用量の包装)又はサブユニット包装である場合がある。例えば、本明細書に開示される通り、一定期間、例えば1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月又はそれ以上にわたって個体に有効な処置を提供するのに十分な用量のタキサン(タキサン等)を含有するキットが提供される場合がある。キットは又、複数用量単位のタキサン及び薬学的組成物及び使用説明書を含み、薬局、例えば院内薬局及び調剤薬局で保管及び使用するのに十分な量が包装される場合がある。
【0182】
当業者は本発明の適用範囲及び意図内で幾つかのバリエーションが可能であることを認識する。本発明をこれ以降、下記の制限を設けない実施例を参照にして、詳細に説明する。下記の実施例は本発明を更に説明するものであるが、無論本発明の適用範囲を何れかの方法で制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0183】
実施例1 アブラキサンTM3週毎投与の第III相臨床試験において、タキソール(登録商標)に比べて効果に優れ、毒性が低かったアブラキサンTM
好中球減少及び過敏症の発現率が著明に低下し、ステロイドの前投与の必要がなくなり、ニューロパチーの発現期間が短縮し、短い注入期間で高用量が投与できた。
【0184】
転移性乳癌(MBC)個体を対象に、初の生物学的相互作用を有する溶媒フリーのナノ粒子状のアルブミン結合パクリタキセルであるABI−007(アブラキサンTM)をクレモフォール(登録商標)系のパクリタキセル(タキソール(登録商標))と比較した。タキソール(登録商標)に比した場合のABI−007の有効性の高さと毒性の低さを示した前臨床試験の結果を確認するため、この第III相臨床試験を実施した。個体を3週間サイクルの、前投与なしの30分以上かけたABI−007 260mg/m(iv)処置群(n=229)又は前投与ありの3時間以上かけたタキソール(登録商標) 175mg/m IV処置群(n=225)の何れかに無作為に割り当てた。ABI−007は、タキソール(登録商標)に比べて有意に高い奏功率を示し(19%に対して33%、p=0.001)、腫瘍進行までの時間は有意に長かった(16.9週間に対して23.0週間、HR=0.75、p=0.006)。ABI−007を投与された個体群では全体的な生存期間が長くなる傾向が認められた(55.7週間に対して65.0週間、p=0.374)。計画外の解析において、ABI−007は、第2回又はそれ以降の処置として投与を受けた個体群における生存期間を改善した(46.7週間に対し56.4週間、HR=0.73、p=0.024)。グレード4の好中球減少の発現率は、パクリタキセルの用量が49%高かったのにもかかわらず、ABI−007処置群で有意に低下した(22%に対し9%、p<0.001)。グレード3の感覚ニューロパチーは、タキソール(登録商標)群よりもABI−007群のほうでより認められたが(2%に対し10%、p<0.001)、処置は容易で、タキソール(登録商標)群よりも迅速に改善した(平均日数73日に対して平均日数22日)。重度の(グレード3又は4)投与に起因する過敏症は、ABI−007処置群の個体では前投与を行っておらず、投与時間も短いにもかかわらず全く認められなかった。対照的にタキソール(登録商標)群では、グレード3の過敏症が、標準的な前投与を行っていたにもかかわらず発現した(胸痛:2例、アレルギー反応:3例)。プロトコールに従い、コルチコステロイド及び抗ヒスタミン薬はABI−007群の個体には投与しなかった。但し、ABI−007群の18例(8%)に対しては、嘔吐、筋痛/関節痛又は食欲不振のため、前投薬を投与サイクルの2%において実施したが、タキソール(登録商標)群の224例(>99%)はサイクルの95%において前投薬を受けた。この2処置群で唯一著明な差が認められた臨床検査値は、タキソール(登録商標)処置群の個体における血糖値の高さであり、AE(有害事象)として報告される高脂血症の発現率も高かった(3件[1%]に対し15件[7%]、p=0.003)。全体的に、ABI−007はこの個体集団において、タキソール(登録商標)に比べて有効性及び安全性に優れていることが明らかになった。治療指数が改善され、溶媒系のタキサンでは必要になるステロイド前投与が不要になることにより、このナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルはMBCの処置を大きく前進させるものである。
実施例2 タキサン抵抗性転移性乳癌個体におけるアブラキサンTMの毎週投与
最近行われた第II相臨床試験は、125mg/mのアブラキサンTM(ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)の毎週投与により、タキソール(登録商標)又はTaxotere(登録商標)を投与されたが疾患の進行をみた転移性乳癌個体(即ちタキサン抵抗性の個体)において、長期にわたって疾患をコントロールすることを明らかにした。
【0185】
アブラキサンTMは、活性成分即ちパクリタキセルの腫瘍細胞内濃度を高くすることのできる受容体を介する(gp60)経路を開拓する、初の生物学的相互作用を有する組成物であると考えられている。第II相臨床試験ではタキサン抵抗性の転移性乳癌個体75例を組み入れた。アブラキサンTM 125mg/mを30分かけて毎週点滴投与し、ステロイド/抗ヒスタミン薬の前投与又はG−CSFによる予防は行わなかった。個体は3週間投与を受けて1週間休み、それを28日毎に繰り返した。腫瘍による取り込みを阻害する洗浄剤を含有するタキソール(登録商標)又はTaxotere(登録商標)とは異なり、このアルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルの作用機序は、特にこの処置が困難な個体集団において転帰の改善をもたらすと考えられる。
【0186】
具体的に、データはこの治療歴が長く、以前にタキサンを投与されている個体集団において毎週高用量の125mg/mを投与しているにもかかわらず、末梢ニューロパチーのためアブラキサンTMの投与を中断しなくてはならなかったのは75例中わずか3例(4%)であったことを示した。更に、グレード3の末梢ニューロパチーを来した個体のうち8割は、わすかに1〜2週間の遅れの後、投与を再開することができ、低用量でのアブラキサンTMの投与を平均して更に4ヵ月受けることができた。この迅速な改善は、パクリタキセル単独(クレモフォール(登録商標)はなし)で誘発される末梢ニューロパチーがタキソール(登録商標)で誘発されるものに比べて迅速に改善するという第III相臨床試験からの我々の所見と一致していた。これらのアブラキサンTMの臨床試験の経験により、溶媒による作用から化学療法薬それ自体、即ちパクリタキセルの効果のみを取り出して評価する最初の臨床的機会が得られる。第II相及び第III相臨床試験の何れの経験に基づいても、データは、アブラキサンTMによる末梢ニューロパチーは、タキソール(登録商標)又はTaxotere(登録商標)による末梢ニューロパチーと、期間の点でも個体に与える影響の点でも同等ではないことを示唆している。
【0187】
タキソール(登録商標)又はTaxotere(登録商標)の投与後に見られる末梢ニューロパチーの臨床経験に関して、最近Abraxis Oncologyは腫瘍専門医200名を対象にした調査を完了した。専門医等はタキソール(登録商標)によって誘発された末梢ニューロパチーが改善及び/又は寛解するまでにどれだけかかるかと問われて、25%は「7〜12ヵ月」、23%は「寛解することはない」と答えており、Taxotere(登録商標)についてはそれぞれ29%及び7%が上記の回答をした。これらのデータはTaxotere(登録商標)及びタキソール(登録商標)の添付文書にある声明と合致している。
【0188】
第II相臨床試験の解析データは、この予後不良のタキサン抵抗性転移性乳癌の個体集団(87%が内臓(肺及び肝)疾患、69%が転移部位が3を超える、88%がタキサンの投与にもかかわらず腫瘍が進行)においてアブラキサンTMが効果を発揮していることを示している。所見には、44%でTaxotere(登録商標)抵抗性個体で疾患のコントロールが得られ、39%でタキソール(登録商標)抵抗性個体で疾患のコントロールが得られたことが含まれた。転移が認められる状況でTaxotere(登録商標)単独投与によっても疾患が進行した個体(n=27)のうち、アブラキサンTMの毎週投与の後、19%の奏功率が認められた。転移が認められる状況でタキソール(登録商標)単独投与によっても疾患が進行した個体(n=23)のうち、アブラキサンTMの毎週投与の後、13%の奏功率が認められた。
【0189】
アブラキサンTMは、ステロイド又はG−CSFによる予防なしでも、30分をかけて毎週投与された場合、忍容性に優れていることが明らかになった。グレード4の好中球減少は3%であり(G−CSFの投与なし)、グレード4の貧血は1%であり、重度の過敏症は発現しなかった(前投薬を行わなくても)。この治療歴の長い個体集団において、75%は毒性/有害事象による減量を行わずに高用量125mg/mのアブラキサンTMの毎週投与を受けることができた。グレード3の感覚ニューロパチーを来した個体のうち、77%はアブラキサンTMの投与を低用量(75〜100mg/m)で再開することができ、平均してあと12.2回(1〜28回)のアブラキサンTMの投与を受けることができた。これらのアブラキサンTMを再開した個体のうち、8割(10例中8例)がニューロパチーがグレード1又は2まで改善した後14日以内に投薬を再開することができたことは特筆に価する。これらの結果は、3週毎にアブラキサンTM 260mg/mを投与したピボタル第III相臨床試験で、ニューロパチーの迅速な改善(平均日数22日)が認められた所見を支持している。これら2件の臨床試験をあわせると、パクリタキセルが単独投与された場合、発現するニューロパチーは短期性で処置が容易であることが示唆される。
【0190】
アブラキサンTMは微小血管内皮細胞上のgp60受容体に基づく経路を使用して、アルブミン−パクリタキセル複合体を血管外へ、そして腫瘍の間質へと輸送する。タキソール(登録商標)はこの機序で輸送されないことが明らかになっている。更に、アルブミン結合タンパク質であるSPARCが乳癌では過剰発現しており、腫瘍内のアブラキサンTMの蓄積量の増加に役割を果たしていると考えられている。上記の機序により、一度腫瘍の間質に入ると、アルブミン−パクリタキセル複合体は腫瘍細胞表面に存在するSPARCと結合し、非ライソソーム機序によって腫瘍細胞内に迅速に内部移行することが示唆された。
【0191】
又、現行のタキサン配合剤によく使用されている界面活性剤/溶媒、例えば、クレモフォール(登録商標)、Tween(登録商標)80及びTPGSは、パクリタキセルとアルブミンとの結合を強力に阻害し、それによって経内皮移動が制限される。追加的なデータは、MX−1哺乳動物乳癌異種移植片に対して、同用量でアブラキサンTMはTaxotere(登録商標)に比べて有効性が統計学的に優れていることを明らかにした。
【0192】
結論として、個体の75%は減量なしに完全な高用量で投与を受けた。データは、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルが溶媒クレモフォール(登録商標)なしに単独投与された場合、末梢ニューロパチーは迅速に改善することを示している。追加的なデータは、作用機序が個体の転帰を改善するのに重要な役割を果たしているというエビデンスを更に提供している。
実施例3 アブラキサンTM(ABI−007)は、MDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片において、標的となる抗血管新生アポトーシス誘導ペプチド(HKP)と相乗的に作用する。
【0193】
小さな合成アポトーシス誘導ペプチドの抗血管新生作用は、腫瘍の微小血管上のCD13受容体(アミノペプチダーゼN)をターゲティングするドメイン、及びインターナリゼーション後のミトコンドリア膜を破壊するドメインという2つの機能ドメインからなることが以前から報告されている。Nat.Med.1999,5(9):1032−8を参照されたい。第二世代の二量体ペプチドである、GNGRC−GG−d(KLAKLAK)2、いわゆるHKP(ハンターキラーペプチド)は、抗腫瘍活性がより優れていることが明らかになった。Abastin(登録商標)等の抗血管新生剤が5−フルオロウラシル等の細胞毒性剤と併用されて相乗作用を示すため、MDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片において、血管内皮細胞(Desai,SABCS 2003)中のgp60受容体で輸送されるアルブミンナノ粒子パクリタキセルであるアブラキサンTM(ABI−007)と抗血管新生HKPとの併用を評価した。
【0194】
方法:平均腫瘍容積を100mmとしてMDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片を確率紙、マウスを12〜13例ずつ、HKP処置群、アブラキサンTM処置群又はHKP及びアブラキサンTM処置群の何れかに無作為に割り当てた。HKP(250μg)は静脈内で週1回、16週間投与した。アブラキサンTMは投与の第1週のみ、10mg/kg/日を毎日5日間静脈内投与した。使用したアブラキサンTMの用量は、腫瘍が完全退縮することがないようにそのMTD(30mg/kg/日、毎日×5)よりも実質的に低くしたため、HKPの作用も認めることができた。
【0195】
結果:投与開始から第19週で、腫瘍の容積は対照群(10298mm±2570)及びHKP処置群(4372mm±2470、対照群と比較してp<0.05)又はABI−007処置群(3909mm±506、対照群と比較してp<0.01)で有意に減少した。ABI−007とHKPの併用は、何れの単独投与よりも腫瘍の容積を有意に減少させた(411mm±386、アブラキサンTM単独処置群又はHKP単独処置群に比べてp<0.01)。投与内容はよく忍容された。
【0196】
結論:MDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片に対する、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルであるアブラキサンTM(ABI−007)と血管内ターゲティング抗血管新生二量体ペプチドHKP(CNGRC−GG−d(KLAKLAK)2)の併用は、何れかの薬剤の単独投与例に比べて、腫瘍の容積を有意に減少させた。筆者らの結果は、アブラキサンTMとHKP又はおそらくはAvastin(登録商標)等の抗血管新生剤との併用は有益であることを示唆している。
実施例4 ABI−007のメトロノーム投与:ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルの抗血管新生作用及び抗腫瘍作用
実施例4a
方法:ABI−007の抗血管新生作用を、ラット動脈輪、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)増殖及び管形成(tube formation)アッセイにより評価した。メトロノーム投与におけるABI−007の至適用量を、Balb/c非担癌マウス(n=5/群、用量:1〜30mg/kg、i.p.、毎日×7)の末梢血の循環血管内皮前駆細胞(CEP)の量をフローサイトメトリーで測定することによって決定した(Shaked,et al.,Cancer Cell,7:101−111(2005))。次に、メトロノーム(毎日、i.p.)及びMTD(毎日×5、1サイクル、i.v.)投与法によるABI−007及びタキソール(登録商標)の抗腫瘍作用を評価し、ヒトMDA−MD−231乳癌及びPC3前立腺癌異種移植片を有するSCIDマウスで比較した。
【0197】
結果:5nMのABI−007は、ラット動脈微小血管の増殖、ヒト内皮細胞増殖及び管形成をそれぞれ53%、24%及び75%有意に抑制した(p<0.05)。メトロノーム投与法におけるABI−007の至適用量は、CEP測定に基づき6〜10mg/kgとされた。メトロノーム法によるABI−007(6mg/kg)及びメトロノーム法によらないタキソール(登録商標)(1.3mg/kg)は、何れの異種移植片モデルでの腫瘍増殖も有意に抑制した(p<0.05)。メトロノーム法で投与されたABI−007もタキソール(登録商標)も、体重減少を招かなかった。MTDのABI−007(30mg/kg)は、MTDのタキソール(登録商標)(13mg/kg)よりも効果的に腫瘍増殖を阻害するが、著明な体重減少が前者には認められた。興味深いことに、メトロノーム法によるABI−007の抗腫瘍作用は、MTDのタキソール(登録商標)のそれと近似していた。
【0198】
結論:ABI−007はメトロノーム投与法で使用した場合、強力な抗血管新生作用及び抗腫瘍作用w発揮する。
実施例4b
ラット動脈輪アッセイ。12穴組織培養プレートにMatrigel(Collaborative Biomedical Products[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])をコーティングし、37℃で30分間及び5%CO2でゲル化させた。8〜10週齢の雄のSprague−Dawleyラットから胸部大動脈を摘出し、長さ1mmの輪切りにし、Matrigelをコーティングしたウェルに入れ、追加のMatrigelで覆った。Matrigelの二層目を入れた後、動脈輪をEGM−IIで覆い、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。EGM−IIは、内皮細胞基礎培地(EBM−II;Cambrex[米国メリーランド州ウォーカーズビル])とEGM−II Bulletkit(Cambrex)として提供される内皮細胞増殖因子からなる。その後、培地を、2%FBS、0.25μg/mLアンフォテリシンB及び10μg/mLのゲンタマイシンを追加したEBM−IIに変更した。動脈輪を、ビヒクル(0.9%生食水/アルブミン)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI;12μg/mL)又はABI−007(0.05〜10nMパクリタキセル)を含有するEBM−IIで4日間処理し、5日目に写真撮影した。既知の抗血管新生薬であるCAIを臨床で達成可能な濃度よりも高濃度で使用して、陽性対照とした。4匹のラットの動脈を使用して、実験を4回繰り返した。血管発芽の面積を平方ピクセルで報告し、Adobe Photoshop 6.0を使用して定量化した。
【0199】
図1Aに示す通り、ABI−007はラット動脈微小血管の増殖を、濃度依存的にビヒクル対照に比べて著明に阻害し、5nM(53%の阻害)及び10nM(68%の阻害)では統計学的有意(p<0.05)に達した。ABI−007単独の各濃度で存在するアルブミンの量は、血管新生を阻害しなかった。
【0200】
内皮細胞増殖アッセイ。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;Cambrex)を、EGM−II中で、37℃及び5%CO2で維持した。HUVECを12穴プレートに30000細胞/ウェルの密度で播種し、一晩接着させた。次に培地を吸引し、ビヒクル(0.9%生食水/アルブミン)又はABI−007(0.05〜10nMパクリタキセル)の何れかを含有する新鮮な培地を各ウェルに添加した。48時間後、細胞をトリプシン処理し、Coulter Z1カウンター(Coulter Corp.[米国フロリダ州ハイアリーア])で計数した。全ての実験を3回繰り返した。
【0201】
図1Bに示す通り、ヒト内皮細胞の増殖は5nM及び10nMのABI−007でそれぞれ36%及び41%と著明に阻害された。
【0202】
内皮細胞管形成アッセイ。8穴スライドチャンバーにMatrigelをコーティングし、37℃及び5%CO2で30分間ゲル化させた。HUVECをビヒクル(0.9%生食水/アルブミン)又はABI−007(0.05〜10nMパクリタキセル)の何れかを含有するEGM−II中に30000細胞/ウェルの密度で播種し、37℃及び5%CO2で16時間培養した。培養の後、スライドをPBSで洗浄し、100%メタノールで10秒間固定し、DiffQuick solution II(Dade Behring Inc.[米国デラウェア州ニューアーク])で2分間染色した。管形成を解析するため、各ウェルを2.5倍対物レンズを使用してデジタル写真撮影した。閾値レベルを設定して染色された管をマスクした。MetaMorphソフトウェア(Universal Imaging[米国ペンシルバニア州ダウニングタウン])を使用してピクセル数として相当する面積を測定した。実験を3回繰り返した。
【0203】
図1Cに示す通り、ABI−007は5nM及び10nMの両方で管形成を75%遮断した。
【0204】
循環内皮細胞(CEC)及び循環内皮細胞前駆細胞(CEP)の測定による、ABI−007のin vivoでの至適生物学的用量の決定。6〜8週齢の雌のBalb/cJマウスを以下の8群に無作為に割り当てた(各群n=5)。無処置群、薬剤ビヒクル(0.9%生食水/アルブミン)又はABI−007 1、3、6、10、15又は30mg/kgパクリタキセルの毎日7日間処置群。投与期間の終了時に、心臓穿刺により血液試料を採取し、EDTAを含有するバキュテーナー管(Becton Dickinson[米国ニュージャージー州フランクリンレイクス])に収集した。4色フローサイトメトリーを使用して、CEC及びCEPを計数した。CD45に特異的なモノクローナル抗体を使用して、CD45+の造血細胞を除外した。CEC及びそのCEPサブセットを、マウス内皮マーカー胎仔肝キナーゼ1/VEGF受容体2(flk−1/VEGFR2)、CD13及びCD117(BD Pharmingen[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して示した。核染色(Procount;BD Biosciences[米国カリフォルニア州サンホゼ])を実施して、CEC及びCEPの計数の正確性に血小板又は壊死細胞片が干渉するおそれを除外した。赤血球溶解の後、死亡細胞、血小板及び壊死細胞片を除外するべく設計された解析ゲートを使用して細胞懸濁液をFACSCalibur(BD Biosciences)で評価した。少なくとも100,000事象/試料を得て、CEC及びCEPの率を解析した。次に、CEC及びCEP計数ゲートで収集された事象の率に白血球数の合計を乗じて、CEC及びCEPの絶対数を算出した。染色された細胞の率を測定し、しかるべき陰性対照と比較した。陽性染色は非特異的な背景染色よりも濃いものとして定義した。7−アミノアクチノマイシンD(7AAD)を使用して、生存細胞とアポトーシス誘導細胞及び死亡細胞を計数した。
【0205】
図2は、7日間毎日ABI−007 3、10〜30mg/kgを腹腔内投与した場合に、非担癌Balb/cJマウスにおけるCEPレベルが著明に低下したことを示す。しかし、10〜30mg/kgのABI−007では、毒性の目安となる白血球数が著明に減少した。6mg/kgのABI−007によるCEPレベルの減少は統計学的有意に達しなかったが、白血球数の減少は明らかではなかった。このため、ABI−007のメトロノーム投与におけるin vivoの至適生物学的用量は、3〜10mg/kgと結論づけられる。ある試験では、7日間毎日のタキソール(登録商標) 1.3、3、6又は13mg/kgの腹腔内投与により、生存CEPレベルが著明に減少したのに対し、タキソール(登録商標) 30mg/kg又はそれ以上のメトロノーム投与では、重度の毒性及び場合によっては死亡がマウスにもたらされた。臨床でよく使用されている用量のタキソール(登録商標)を腹腔内投与すると、クレモフォール(登録商標)ELミセル中のパクリタキセルが腹腔で捕捉され、結果としてパクリタキセルの血漿内濃度が殆どなくなることが以前から報告されている(Gelderblom,et al.,Clin.Cancer Res.8:1237−41(2002))。これは、死亡をもたらさなかったメトロノーム投与用タキソール(登録商標)の用量(1.3、3、6及び13mg/kg)が、何故生存CEPレベルを変化させることができなかったかの裏付けとなる。この場合、メトロノーム投与用タキソール(登録商標) 1.3mg/kgの腹腔内投与が、13mg/kgのそれと何ら変わらないことになる。このため、低用量の1.3mg/kgを選択し、続く実験におけるパクリタキセルの投与毎のクレモフォール(登録商標)ELの量を最低限にすることとした。
【0206】
メトロノーム投与法及びMTDのABI−007の抗腫瘍作用を、メトロノーム法及びMTDのタキソール(登録商標)と比較した。American Type Culture Collection(米国バージニア州マナッサス)から、ヒト前立腺癌細胞系PC3及びヒト乳癌細胞系MDA−MD−231を入手した。PC3細胞(5×106)を、6〜8週齢の雄SCIDマウスに皮下注射し、MDA−MB−231細胞(2×106)を雌SCIDマウスの乳腺脂肪体に同所移植した。一次腫瘍の容積が約150〜200mmに達した時点で、マウスを8群に無作為に割り当てた(n=5〜10/群)。各群に、0.9%生食水/アルブミンビヒクル対照、クレモフォール(登録商標)ELビヒクル対照、メトロノーム法によるタキソール(登録商標)(1.3mg/kg、腹腔内投与、毎日)、メトロノーム法によるABI−007(パクリタキセルとして3、6又は10mg/kg、腹腔内投与、毎日)、MTDのタキソール(登録商標)(13mg/kg、腹腔内投与、毎日×5を1サイクルとする)又はMTDのABI−007(パクリタキセルとして30mg/kg、静脈内投与、毎日×5を1サイクルとする)の何れかを投与した。週1回、腫瘍の垂直直径をキャリパーで計測し、その容積を算出した。投与期間の終了時点で、心臓穿刺により血液試料を全ての処置群のマウスから採取した。CEC及びCEPを本明細書に記載の通り計数した。
【0207】
4週間にわたって毎日腹腔内投与されたメトロノーム投与用ABI−007(3、6及び10mg/kg)は、MDA−MB−231及びPC3腫瘍の両方の増殖を有意に(p<0.05)阻害したが、メトロノーム法によるタキソール(登録商標)(1.3mg/kg)ではこの所見は認められなかった(図3A及び図3B)。メトロノーム法により投与されたABI−007も、タキソール(登録商標)も体重減少を引き起こさなかった(図3C及び図3D)。MTDのABI−007(30mg/kg)はMTDのタキソール(登録商標)(13mg/kg)よりも有効に腫瘍の増殖を阻害したが、著明な体重減少が前者で認められ、毒性が示された。又、MTDのABI−007を投与したマウス5例中2例が、最終投与から6日後に一肢の麻痺を来した。この麻痺は一過性で、24〜48時間以内に寛解した。興味深いことに、MDA−MB−231異種移植片モデルにおいて、6mg/kgのメトロノーム投与用ABI−007の抗腫瘍作用は、MTDのタキソール(登録商標)のそれと近似していた(図3A)。メトロノーム投与用ABI−007の用量の10mg/kgへの増量は、著明な腫瘍増殖抑制作用をもたらすとは考えられなかった。これとは対照的に、PC3異種移植片においては、10mg/kgのメトロノーム投与用ABI−007が、3及び6mg/kgよりも高い抗腫瘍作用を示した(図3B)。
【0208】
メトロノーム投与用ABI−007は、MDA−MB−231担癌マウスにおいて、用量依存的に生存CEPのレベルを著明に低下させた(図4A)。生存CEPレベルは、PC3担癌マウスにおいてもメトロノーム投与用ABI−007により用量依存的に低下したが、10mg/kgにおいてのみ統計学的有意性に達した(図4B)。何れの異種移植片モデルにおいても、CEPのレベルはメトロノーム投与用タキソール(登録商標)によって変化しなかった(図4A及び4B)。
【0209】
メトロノーム投与法及びMTDのABI−007及びメトロノーム投与法及びMTDのタキソール(登録商標)の、腫瘍内微小血管の密度に対する作用を試験した。凍結MDA−MB−231及びPC3腫瘍から切り出した5μmの切片を、当業者に既知の標準的な方法により、H&Eで染色し、組織学的検査を行った。微小血管の検出のため、切片をラット抗マウスCD31/PECAM−1抗体(1:1000、BD Pharmingen)で染色した後、テキサスレッド標識ヤギ抗ラット二次抗体(1:200、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.[米国ペンシルバニア州ウェストグローブ])で染色した。独立した集塊又は単一の細胞がCD31/PECAM−1d陽性として染色されている場合に単一の微小血管と規定し、微小血管としてスコア化するのに内腔の存在を必要とはしなかった。各腫瘍のMVDを、Zeiss Axio Vision 3.0蛍光顕微鏡画像化システムの20倍対物レンズで特定した3つの最も濃く染色された視野の平均計数として示した。各ビヒクル対照群又は処置群につき、5つの異なる腫瘍のうち4つを解析した。
【0210】
MDA−MB−231腫瘍では、6及び10mg/kgのメトロノーム投与用ABI−007並びにMTDのABI−007が微小血管密度(MVD)をわずかに低下させたように思われたが、統計学的有意性には達しなかった(図5A)。PC3腫瘍では、3及び10mg/kgのメトロノーム投与用ABI−007がMBDを低下させたようであったが、統計学的有意性には達しなかった(図5A)。興味深いことに、MDA−MB−231モデルでのMVDと生存CEPのレベルには著明な相関関係が存在したが(図5B;r=0.76,P−0.04)、PC3モデルではその相関関係は認められなかった(図5C;r=0.071、P−0.88)。
【0211】
In vivoにおける血管新生の評価を実施した。Matrigelプラグ潅流アッセイを、当業者には既知の方法に若干の修正を加えて実施した。要約すれば、0.5mL Matrigelに500ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;R&D Systems Inc.[米国ミネソタ州ミネアポリス])を添加したものを、0日目に10週齢の雌のBalb/cJマウスの横腹に皮下投与した。3日目に、マウスを8群(それぞれn=5)に無作為に割り当てた。各群に、0.9%生食水/アルブミンビヒクル対照、クレモフォール(登録商標)ELビヒクル対照、メトロノーム法によるタキソール(登録商標)(1.3mg/kg、腹腔内投与、毎日)、メトロノーム法によるABI−007(パクリタキセルとして3、6又は10mg/kg、腹腔内投与、毎日)、MTDのタキソール(登録商標)(13mg/kg、腹腔内投与、毎日×5を1サイクルとする)又はMTDのABI−007(パクリタキセルとして30mg/kg、静脈内投与、毎日×5を1サイクルとする)の何れかを投与した。陰性対照として、更に5例の雌の同週齢のBalb/cJマウスにMatrigelのみを注射した。10日目に、全てのマウスに25mg/mL FITC−デキストラン(Sigma[米国ミズーリ州セントルイス])0.02mLを静脈内注射した。続いて血漿試料を採取した。Matrigelプラグを除去し、Dispase(Collaborative Biomedical Products[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])と共に一晩37℃でインキュベートした後、ホモジナイズした。FL600蛍光プレートリーダーを使用して、蛍光の測定を行った。血管新生の反応は、血漿の蛍光に対するMatrigelプラグの蛍光の比として示した。
【0212】
6及び10mg/kgのメトローム投与法によるABI−007は血管新生を抑制したようであったが、その抑制は統計学的有意性には達しなかった(図6)。血管新生は、それぞれのビヒクル対照群に比べて、3mg/kgのメトロノーム投与用ABI−007、MTDのABI−007、MTD及びメトロノーム投与用タキソール(登録商標)によって変化させられていないようであった(図6)。これらの所見は、本明細書に記載の腫瘍内のMVDの結果と同じであった。
実施例5 ナノ粒子アルブミン結合IDN5109(nab−5109)が、Tween(登録商標)配合剤(Tween(登録商標)−5109、Ortataxel)に比べて有効性に優れ、毒性が低いことを示す。
【0213】
方法:ナノ粒子nab−5109をnab技術を使用して調製し、レーザー光散乱により同定した。ヌードマウスにおけるPgp+DLD−1(パクリタキセル及びドセタキセルに対して抵抗性を備えることが知られる;Vredenburg,et al.,JNCI93:1234−1245,2001)ヒト大腸癌異種移植片(n=5/群)に対するNab−5109及びTween−5109を、用量50mg/kg(Tween(登録商標)−5109、前述でMTDとして紹介)及び75mg/kg(nab−5109)を3日毎に4回静脈内投与して試験を行った。PBS及びヒト血清アルブミン(HSA)も対照群として使用した。
【0214】
結果:Nab−5109で、平均サイズがZAVC=119nmでゼータ電位=−32.7mVのナノ粒子が得られた。Nab−5109を凍結乾燥して、生食水に容易に分散する乾燥粉末にした。In vivoでは、Tween(登録商標)−5109処置群の担癌マウス(50mg/kg、8.8%の体重減少)が、nab−5109処置群の担癌マウス(75mg/kg、3.4%の体重減少)に比べて有意な体重減少を示し(ANOVA,p<0.001)、用量は50%高いにもかかわらずnab−5109は実質的に毒性が低いことが示された。Nab−5109及びTween(登録商標)−5109は有意な腫瘍抑制を示し(ANOVA,p<0.0001、対照群と比較)、腫瘍の増殖はnab−5109(75mg/kg)及びTween(登録商標)−5109(50mg/kg)でそれぞれ36日及び28日遅延した。腫瘍増殖の抑制において、Nab−5109はTween(登録商標)−5109よりも有効であった(ANOVA,p=0.0001)。毒性及び有効性の点で、PBS及びHSA対照群の間に差は認められなかった。
【0215】
結論:ナノ粒子アルブミン結合nab−5109の調製に成功し、Tween(登録商標)−5109よりも50%高い用量で投与しつつ、高用量にもかかわらず毒性は低かった。この高用量75mg/kg(3日毎×4回)で、nab−5109はPgp+DLD−1ヒト大腸癌異種移植片において、Tween(登録商標)−5109によりも有意に優れた有効性を示した。
実施例6 ナノ粒子アルブミン結合(nab)二量体チオコルヒチンであるnab−5404、nab−5800及びnab−5801:アブラキサンTM及びイリノテカンとの抗腫瘍作用の比較評価
方法:ナノ粒子コルヒチンをnab技術を使用して調製した。ヒトMX−1乳癌培養物を使用して、細胞毒性をin vitroで評価した。ヌードマウスにおけるin vivoの抗腫瘍活性(ヒトHT29大腸癌異種移植片)を、イリノテカン及びアブラキサンTMと比較した。nab−コルヒチン及びイリノテカンの用量は20mg/kg、30mg/kg及び40mg/kgとし、3日毎×4回静脈内投与した。アブラキサンTMはそのMTDである30mg/kgを毎日×5回投与した。
【0216】
結果:疎水性のチオコルヒチン二量体で、nab−5404、nab−5800及びnab−5801の平均サイズがZAVC(nm)=119、93及び84のナノ粒子が得られた。ナノ粒子懸濁液を0.22μmのフィルターで滅菌し、凍結乾燥した。In vitroでは、nab−5404が3つの類似体のなかで、MX−1に対して最も強力であり(p≦0.0005、ANOVA)(IC50(μg/mL):nab−5404、nab−5800及びnab−5801でそれぞれ18、36及び77)、in vivoにおいてHT29異種移植片に対しても最も強力であった(p≦0.0001、ANOVA)。腫瘍の容量は、nab−5404の用量40mg/kg、30mg/kg及び20mg/kgでそれぞれ93%、79%及び48%抑制された。これに対し、腫瘍の容量はnab−5800では用量40mg/kg、30mg/kg及び20mg/kgでそれぞれわずかに31%、16%及び21%、nab−5801では17%、30%及び23%しか抑制されなかった。Nab−5404は全ての用量群でイリノテカンよりも有効であり(p≦0.008、ANOVA)、イリノテカンでの腫瘍の容量は、用量40mg/kg、30mg/kg及び20mg/kgでそれぞれわずかに48%、34%及び29%しか抑制されなかった。アブラキサンTMと比較しても、nab−5404は同等の体重減少に基づく等毒性容量(ETD)においては活性が高かった(p<0.0001、ANOVA)。腫瘍の容量は、それぞれのETDにおいて、nab−5404(40mg/kg、4日毎×3回)で93%、アブラキサンTM(30mg/kg、毎日×5回)で80%抑制された。
【0217】
結論:Nab技術を使用して3種類の疎水性二量体チオコルヒチン(IDN5404、IDN5800、IDN5801)を静脈内投与に好適なナノ粒子に変換した。Nab−5404はin vitroでもin vivoでも、nab−5800及びnab−5801に比べて優れた抗腫瘍活性を示した。Nab−5404は同じ用量ではイリノテカンに比べてより強力であった。体重減少によって規定した等毒性用量では、nab−5404はアブラキサンTMよりも強力であった。これらのデータによりnab−5404の更なる調査が求められる。
実施例7 アブラキサンTMとTaxotere(登録商標):毒性及び有効性の前臨床比較試験
方法:アブラキサンTMとTaxotere(登録商標)の毒性を、ヌードマウスを使用して薬剤を4日毎×3回のスケジュールで投与する用量範囲探索試験で比較した。用量レベルはTaxotere(登録商標)7、15、22、33及び50mg/kg及びABX 15、30、60、120及び240mg/kgであった。アブラキサンTM及びTaxotere(登録商標)の抗腫瘍活性を、15mg/kgの3週間の毎週投与により、ヒトMX−1乳癌異種移植片を有するヌードマウスで比較した。
【0218】
結果:マウスを使用した用量漸増試験において、Taxotere(登録商標)の最大耐量(MTD)は15mg/kgであり、致死量(LD100)は50mg/kgであった。これに対し、アブラキサンTMのMTDは120〜240mg/kgであり、LD100は240mg/kgであった。腫瘍試験において、アブラキサンTMは同用量のTaxotere(登録商標)に比べて、腫瘍増殖の抑制において有効であった(29.1%に対して79.8%、p<0.0001、ANOVA)。
【0219】
結論:ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサンTM)はMX−1腫瘍モデルにおいて、同用量で試験した場合、Taxotere(登録商標)よりも優れていた。更に、アブラキサンTMの毒性は、Taxotere(登録商標)よりも著明に低く、それにより実質的に高用量でアブラキサンTMを投与することが可能になると考えられた。これらの結果は、タキソール(登録商標)に比べてアブラキサンTMで認められる高い治療指数と同じであり、界面活性剤の存在がタキサンの輸送、抗腫瘍作用を阻害し、毒性を高めていることが示唆される。別の腫瘍モデルを使用してアブラキサンTMとTaxotere(登録商標)を比較する試験が実施中である。
実施例8 チューブリン及びトポイソメラーゼ−1に対する二重の作用機序を有するナノ粒子アルブミン結合チオコルヒチン二量体(nab−5404):In vitro及びin vivo活性の評価
方法:IDN5404の細胞毒性を、MCF7−S乳癌及びその多剤耐性系であるMCF7−R(pgp+)を使用して試験した。その細胞毒性も、NCI−60ヒト腫瘍細胞系パネルで評価した。ナノ粒子アルブミン結合nab−5404を種々のスケジュールで、ヒトA121卵巣癌異種移植片を植え込まれたSCIDマウスに静脈内投与した。
【0220】
結果:MCF7細胞系に対し、親化合物であるコルヒチンは、MCF7−S細胞に対し3.9±0.2nMというIC50値で腫瘍増殖抑制作用を示した。抵抗性の亜型であるMCF7−Rでは、IC50は66±8.6nMであり、薬剤耐性により約17倍の上昇をみた。IDN5404は何れの細胞系に対しても高い活性を示し、IC50はそれぞれ1.7±0.1及び40±3.8nMであった。これらの結果を、NCI60ヒト腫瘍細胞系パネル内で確認したところ、IDN5404の平均IC50は<10−8Mであり、MCF7−S及びNCF7−R細胞系の間では抵抗性が>10倍であった。COMPAREアルゴリズムで、ビンカアルカロイドと同様のチューブリン結合剤としてのIDN5404が同定され、以前の試験結果が裏付けられた。In vivoのA121卵巣癌異種移植片に対するnab−5404の有効性及び毒性は、用量及びスケジュール依存性であった。ナノ粒子nab−5404はよく忍容され、完全寛解及び治癒をもたらすことができた。即ち、24mg/kgを毎日×5回静脈内投与したところ、5例中5例のマウスが腫瘍のエビデンスなしに長期生存(LTS)した。但し、用量を30mg/kgに増量したところ、5例中5例が毒性により死亡した。3日毎×4回のスケジュールで、30mg/kgでは5例中4例がLTSであり、50mg/kgでは4例中4例がLTSであった。
【0221】
結論:二重の作用機序を有する新しいコルヒチン二量体であるIDN5404は、pgpを発現するシスプラチン及びトポテカン抵抗性細胞系において活性を示した。In vivoでは、ナノ粒子アルブミン結合nab−5404が、A121卵巣癌異種移植片に対して活性を示した。
実施例9 アブラキサンTMと他の薬剤の併用試験
アブラキサンTM(ABX、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)は上記のように有益な特性を有することから、多数の試験において種々の投与法及びスケジュールで、他の抗癌剤並びに放射線療法と併用して使用され、今も使用され続けている。以下にその一覧を示す。
【0222】
【表4−1】

【0223】
【表4−2】

【0224】
【表4−3】

【0225】
【表4−4】

【0226】
【表4−5】

実施例10 ナノ粒子発明薬剤と他の薬剤及び治療法との併用
本明細書に記載のナノ粒子発明薬剤は毒性が低いため、他の抗癌剤及び他の治療法との併用でより有益な転帰を得ることができる。これらには、パクリタキセル、ドセタキセル、他のタキサン及び類似体、ゲルダナマイシン、コルヒチン及び類似体、コンブレタスタチン及び類似体、疎水性ピリミジン化合物、ロマイビチシン及びロマイビチシンをコア構造とする化合物を含む類似体、エポチロン及び類似体、ディスコデルモリド及び類似体等のナノ粒子形態が含まれる。本発明の薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、その他の白金製剤、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、イホスファミド、ゲムシタビン、カペシタビン、ビノレルビン、トポテカン、イリノテカン、タモキシフェン、カンポトテシン、5−FU、EMP、エトポシド、メトトレキセート等と併用することができる。
実施例11 アブラキサンTMとカルボプラチン及びHerceptin(登録商標)の併用
タキソール(登録商標)とカルボプラチンの併用は、転移性乳癌において著明な有効性を示してきた。この併用療法では、週毎のスケジュールでタキソール(登録商標)の用量はわずかに80mg/m以下である。毒性のため、これよりも高用量は忍容されない。又、Herceptin(登録商標)をこの併用療法に組み入れると、HER2陽性個体はより大きな利益を得ることができる。このオープンラベル第II相臨床試験は、ABI−007(アブラキサンTM)とこれらの薬剤との相乗効果を確認するために実施された。実際の試験を開始して、HER−2陽性個体におけるABI−007/カルボプラチンとHerceptin(登録商標)の安全性及び抗腫瘍作用を評価した。ABI−007は、HER−2陽性進行性乳癌を来した個体に、カルボプラチン及びHerceptin(登録商標)と共に、毎週静脈内投与された。3例のコホート集団に75mg/mのABI−007を静脈内投与した後、標的部位でAUC=2のカルボプラチンを毎週及びHerceptin(登録商標)の注入(1週目は4mg/kg、続く週は全て2mg/kg)を1サイクル実施した。これらの個体は皆その後の全てのサイクルにおいても薬剤を極めてよく忍容し、ABI−007の用量は100mg/mまで上昇した。個体6例が今日まで投与を受けた。効果を評価された個体4例のうち、全4例(100%)で奏功がみられた。アブラキサンTMの毒性が低いため、タキソール(登録商標)に比べてより高用量のパクリタキセルを投与することができ、個体に利益をもたらしたことは特筆に価する。
実施例12 アブラキサンTMとカルボプラチンの併用
タキソール(登録商標)とカルボプラチンの併用療法は肺癌において著明な有効性を示してきた。肺癌個体を対象とした3週毎のアブラキサンTMとカルボプラチンの併用に関する別の試験が実施中である。
実施例13 放射線療法とアブラキサンTMの併用
実施例13a
アブラキサンTMは放射線療法と併用されると、治療的効果が増強され、正常組織の毒性も低減される。アブラキサンTMを使用して、腫瘍に対する放射線療法の治療効果を高め、単一及び分画照射に対する腫瘍の反応を高め、放射線に対する正常組織の反応を高め、放射線療法の治療指数を高める。
【0227】
広範に試験が行われたマウス卵巣癌であるOCa−Iを使用する。まず、局所腫瘍の照射に連動させるアブラキサンTM投与の至適なタイミングを計り、最大の抗腫瘍作用が得られるようにする。腫瘍細胞をマウスの右後肢に筋肉内注射し、腫瘍を発現させ、腫瘍のサイズが8mmになった時点で処置を開始する。マウスには10Gyの単独線量の照射、アブラキサンTMの単回投与を行うか、照射の5日前から1日後まで種々の時点でアブラキサンTMを投与する併用療法を行った。パクリタキセルの最大耐量と同じか約1.5倍のアブラキサンTMの用量、即ち90mg/kgを使用する。有効性のエンドポイントは腫瘍の増殖の遅延とする。各群は8匹のマウスからなる。腫瘍を生成し、Aim1に記載のように投与を行う。有効性のエンドポイントは腫瘍の増殖の遅延とする。腫瘍に5、7.5又は10Gyを単独で照射するか、1、1.5又は2Gyに分画して5日連続で照射するかの何れかを行う。アブラキサンTMは腫瘍内部に数日間留まり、5日間の毎日の分画線量に対して増強作用を発揮するため、アブラキサンTMは照射を開始する時点で1回投与する。臨床の放射線療法における最終的な目標は、腫瘍の治癒に至ることであるため、腫瘍の放射線根治性を増強するアブラキサンTMの能力を確認する。分画照射による腫瘍増殖遅延試験で記載した同じスキームを使用するが、線量の範囲は2〜16Gyにして、5連続日で毎日照射を行う(合計線量10〜80Gy)。照射から120日間、腫瘍の退縮及び再増殖を追跡子、TCD50(局所腫瘍の治癒が動物の50%で認められるのに必要な放射線療法の線量)を決定する。放射線療法のみとアブラキサンTM及び放射線療法の併用についての2つのTCD50アッセイがあり、各アッセイは各15匹のマウスを含む10種類の放射線量照射群からなる。治療的効果を得るために、アブラキサンTMをはじめとする何らかの放射線増強剤が、放射線による正常な組織の損傷の増加を上回って腫瘍の放射線への反応を高めなければならない。タキサンによって損なわれる増殖性の高い組織である空腸粘膜への損傷を評価する。空腸微小コロニーアッセイを使用して、放射線に曝露されたマウスの空腸の陰窩の上皮細胞の生存率を測定する。マウスにはX線3〜7Gyの一日線量を5連続日全身照射(WBI)する。WBIの初回照射の24時間前にマウスにアブラキサンTMを、パクリタキセルとして80mg/kg静脈内投与し、WBIの最終照射から3.5日後に屠殺する。組織学的検査のため空腸を調製し、空腸横断面において再生した陰窩の数を計数する。放射線療法生存率曲線を構築するため、再生した印加の数を生存細胞の数に変換する。
実施例13b
本試験の目的は、ABI−007が(a)単独の薬剤としてマウス卵巣癌OCa−1に対して相乗的な腫瘍活性を有するかどうか、又(b)前述の実施例で説明したような併用療法に以下の変更を加えた場合、OCa−1の放射線に対する反応を増強させるかどうかを評価することであった。
【0228】
OCa−1腫瘍細胞をC3Hマウスの後肢に筋肉内注射した。腫瘍の平均直径が7mmに達した時点で、担癌肢に対する局所放射線照射(10Gy)、ABI−007 90mg/kgの静脈内注射による単独療法又はその両方を開始した。至適な治療スケジュールを決定するため、ABI−007を照射の5日前〜9時間前及び24時間後に投与した。治療のエンドポイントは、処置群及び無処置群の腫瘍直径に7〜12mmの差が出た日数として定義される絶対腫瘍増殖遅延(AGD)とした。ABI−007及び放射線療法の併用の処置群では、放射線療法のみで処置された腫瘍のAGDに対する、併用療法処置群とABI−007単独処置群の腫瘍直径に7〜12mmの差が出た日数の比として増強因子(EF)を算出した。エンドポイントである腫瘍の治癒に対する分割照射計画でのABI−007の放射線増強作用を評価するため、TCD50アッセイを実施して、処置から140日後に解析した。5日間の分割照射による5〜80Gyの合計線量は、単独で照射されるか、初回の放射線照射の24時間前にABI−007と併用される。
【0229】
単一の薬剤として、ABI−007はOCa−1の増殖を、無処置腫瘍の16日に比べて著明に遅延させた(37日)。単一の薬剤としてのABI−007は、単独線量10Gyよりも有効であり、29日の遅延が示された。併用療法では、照射から5日前までに投与されたABI−007は超相加的効果を示した。EFは処置間の間隔が9時間、24時間、2、3、4及び5日間で、それぞれ1.3、1.4、2.4、2.3、1.9及び1.6であった。ABI−007を照射後に投与したところ、その併用抗腫瘍治療効果は相加的には届かなかった。ABI−007及び放射線療法の併用療法は、腫瘍の治癒に対して著明な作用を示し、放射線のみで処置した腫瘍でTCD50が55.3Gyであったところが、併用療法で処置した腫瘍ではわずか43.9Gyとなった(EF 1.3)。
【0230】
本試験では、ABI−007がOCa−1に対する単剤の抗腫瘍活性を有し、数日前に投与された場合は放射線療法の作用を増強することが明らかになった。パクリタキセル及びドセタキセルで以前に示されたように、放射線療法の増強は複数の機序の結果によるものである可能性が高く、処置の間隔が短い場合はG2/Mにおける細胞周期停止が、長い場合は腫瘍の再酸素化が係わっていると考えられる。
実施例14 アブラキサンTM及びチロシンキナーゼ阻害剤の併用
ゲフィチニブのパルス投与とアブラキサンTMの使用の併用は、EGFR過剰発現腫瘍の増殖を阻害するのに有用である。120匹のヌードマウスにBT474腫瘍細胞を接種して、BT474異種移植片腫瘍の担癌マウスを少なくとも90匹作製し、それを18処置群(各5匹)に分割する。第1群マウスには対照物質を静脈内投与する。その他の全てのマウスにはアブラキサンTM 50mg/kgを週1回、3週間にわたって静脈内投与する。第2群にはアブラキサンTMのみを投与する。第3、4、5、6、7、8群には、週1回アブラキサンTMを投与する2日前から、ゲフィチニブのパルス投与を用量を増加させて実施する。第9、10、11、12、13群には、週1回アブラキサンTMを投与する1日前から、ゲフィチニブのパルス投与を用量を増加させて実施する。第14、15、16、17、18群には、週1回アブラキサンTMを投与すると共に、ゲフィチニブの毎日投与を用量を増加させて実施する。アブラキサンTMの毎週投与の1又は2日前にパルス投与できるか、アブラキサンTMと共に継続投与できるゲフィチニブの最大耐量を設定する。更に、抗腫瘍作用を測定することで、用量反応関係が存在するかどうか、又2日パルス投与と1日パルス投与の何れが優れているのかが判定される。これらのデータを使用して、パルス投与のゲフィチニブの至適用量、及びアブラキサンTMと併用する毎日継続投与のゲフィチニブの至適用量を選択する。
【0231】
120匹のヌードマウスにBT474腫瘍細胞を接種して、90匹の担癌マウスを作製する。これらのマウスを6処置群に分割する(各15匹)。第1群マウスには対照物質を静脈内投与する。第2群にはアブラキサンTM 50mg/kgを週1回、3週間にわたって静脈内投与する。第3群には経口ゲフィチニブ150mg/kg/日を投与する。第4群にはアブラキサンTM 50mg/kgと共にゲフィチニブを毎日投与する。第5群には、アブラキサンTM 50mg/kgを投与する前に、事前に設定した用量及び期間でゲフィチニブのパルス投与を行う。第6群には事前に設定した用量でゲフィチニブの毎週のパルス投与のみを行う。3週間の投与の後、対照群の腫瘍が最大許容サイズになるまで、処置群のマウスを追跡調査する。
実施例15 進行HER2陽性乳癌の初回治療としての用量強化nabTMパクリタキセル(アブラキサンTM)、カルボプラチン及びトラスツズマブの毎週投与に関する第II相臨床試験
本試験の目的は、進行/転移性(ステージIV腺癌)HER2過剰発現乳癌の個体に対する初回細胞毒性治療として用量強化トラスツズマブ/アブラキサンTM/カルボプラチンの毎週投与の(1)安全性及び忍容性及び(2)客観的奏功率を評価することである。トラスツズマブはモノクローナル抗体であり、Herceptin(登録商標)とも呼ばれ、erbB2受容体の細胞外領域に結合する。
【0232】
要約すれば、最近に化学療法又は放射線療法を受けていない個体を組み入れた。アブラキサンTMの用量は1日目、8日目及び15日目に75mg/mを30分かけて静脈内注入してから、その後のサイクルでは従来の3+3ルールに従って100mg/mに増量した。カルボプラチンAUC=2を1日目、8日目15日目に30〜60分かけて静脈内注入し、その後は29日周期で投与した。トラスツズマブは1日目、8日目、15日目、22日目及び1週目に4mg/kgを、続く全ての週では2mg/kgを30〜90分かけて静脈内注入した。
【0233】
反応を評価できる個体9例中8例で奏功率(確認及び未確認)は63%であり、38%は疾患の安定をみた。最もよく見られる毒性は好中球減少(グレード3:44%、グレード4:11%)及び白血球減少(33%)であった。
【0234】
これらの結果は、トラスツズマブ、アブラキサンTM及びカルボプラチンの併用が、MBCの初回治療として高い抗腫瘍活性を示し、忍容性も許容可能であることを示唆するものである。
実施例16 転移性乳癌の初回治療におけるカペシタビンとnabTMパクリタキセル(アブラキサンTM)の併用に関する第II相臨床試験
本第II相臨床試験の目的は、カペシタビンとアブラキサンTMの併用投与を受けたMBC個体における安全性、有効性(進行までの期間及び全体的生存率)及びQOLを評価することであった。カペシタビンはカルバミン酸フルオロピリミジンであり、Xeloda(登録商標)とも呼ばれ、単独及びタキサン類との併用でMBCの処置において実質的な有効性を示してきた。
【0235】
このオープンラベル一群試験では、アブラキサンTM 125mg/mを1日目及び8日目に3週毎に静脈内注入すると共に、カペシタビン825mg/mを1日目から14日目まで1日2回、3週毎に経口投与した。個体はHER−2/neu陰性であり、予測される寿命は3ヵ月以上であった。個体は転移性疾患に対して化学療法の治療歴はなく、カペシタビンの投与も、フルオロピリミジンの投与も受けたことがなく、パクリタキセルによる化学療法をアジュバント療法として受けていた。
【0236】
個体12例を安全性の解析に組み入れ、解析は最初の6例については完了し、最初の8例については2サイクル後に奏功率が評価可能となった。独特又は予期しない毒性は認められず、グレード4の毒性もグレード1を超えるニューロパチーも認められなかった。個体6例においては、最初の2サイクル(最初の評価時点)のみで奏功データを確認した。2例の個体が6サイクルを完了し、部分寛解1例及び疾患の安定1例が得られた。2サイクルを終了した最初の8例中、2例に部分寛解及び4例に疾患の安定が認められた。
【0237】
これらの結果は、有効量のカペシタビンと週毎投与のアブラキサンTMとの併用が、現時点までは新たな毒性もみられず実行可能であることを示している。アブラキサンTMに起因する毒性は、主として臨床的転帰をみない好中球減少であり、手足症候群がカペシタビンの主要な毒性であった。
実施例17 早期の乳癌患者に対する用量強化ドキソルビシンとシクロホスファミドの投与後のnab−パクリタキセル(アブラキサンTM)の使用に関するパイロット試験
本試験の目的は、早期の乳癌における用量強化ドキソルビシン(アドリアマイシン)とシクロホスファミドの投与後のアブラキサンTMの使用の毒性を評価することであった。
【0238】
患者は早期の手術可能な組織学的検査で確定された乳腺癌を来していた。その患者群にドキソルビシン(アドリアマイシン)60mg/m及びシクロホスファミド600mg/m(AC)を2週毎に4サイクル投与した後、アブラキサンTM 260mg/mを2週毎に4サイクル投与した。
【0239】
患者30例がACの4サイクルを受け、29例中27例がアブラキサンTMの4サイクル投与を受けた。患者の33%がANC(絶対好中球数)の回復不足のためペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標))をアブラキサンTMの投与期間中に投与された。患者9例(31%)で、非血液学的毒性のため、アブラキサンTMを減量した。合計9例がグレード2の、4例がグレード3の末梢ニューロパチー(PN)を来した。PNは平均28日以内に1以上のグレードの改善が認められた。
【0240】
これらの結果は、2週毎を4サイクルのドキソルビシン(60mg/m)とシクロホスファミド(600mg/m)による用量強化療法の後に行う、2週毎に4サイクルのアブラキサンTM(260mg/m)の用量強化は、早期乳癌の患者によく忍容されたことを示す。
実施例18 転移性乳癌の初回治療としてのnab−パクリタキセル(アブラキサンTM)の毎週投与及びHER−2/neu陽性患者に対するトラスツズマブの追加併用
本試験の目的は、アブラキサンの毎週投与を初回治療にし、HER2/neu陽性患者に対してトラスツズマブを追加併用することであった。
【0241】
この第II相オープンラベル試験には、局所進行性又は転移性乳癌を有するHER2陽性患者20例及びHER2陰性患者50例を組み入れた。1日目、8日目及び15日目にアブラキサンTM 125mg/mを30分かけて静脈内投与し、その後1週間休薬した。HER2陽性患者に対しては、トラスツズマブを試験投与と共に投与した。主要エンドポイントは奏功率とし、二次エンドポイントは進行までの時間(TTP)、全体的生存率(OS)及び毒性とした。
【0242】
安全性の試験対象となる集団において、患者23例が平均3サイクルのアブラキサンTMの投与を現時点までで受けている。最もよくみられた投与に起因する有害事象はグレード3の好中球減少(8.7%)で、グレード4の有害事象はなかった。評価可能な患者4例中1例で治療は奏功した。
実施例19 nab−パクリタキセル(アブラキサンTM)及びカルボプラチンの第I相臨床試験
本試験の目的は、カルボプラチンAUC=6と併用するアブラキサンTMの最大耐量を決定し(毎週及び3週毎の両方)、投与順序が薬物動態(PK)に与える影響を比較することであった。
【0243】
組織学的又は細胞学的に悪性腫瘍が確認されており、「標準的治療」を受けた後に疾患の進行をみた患者を組み入れた。第1群にはアブラキサンTMを3週毎に、サイクル1で認められた毒性に基づいて用量を漸増しながら投与し(220、260、300、340mg/m)、その後カルボプラチンAUC=6を投与した。第2群にはアブラキサンTM(100、125、150mg/kg)を毎週(1日目、8日目、15日目、その後1週間休薬)投与した後、カルボプラチンAUC=6を投与した。PKを調査するため、サイクル1ではアブラキサンTMの後にカルボプラチンを、サイクル2では順序を逆にして投与し、最初の6、24、48及び72時間でPKレベルを測定した。
【0244】
3週毎の投与スケジュールでは、好中球減少、血小板減少及びニューロパチーが最もよく見られるグレード3/4の毒性であった(それぞれ3/17)。毎週の投与スケジュールでは、好中球減少5/13が最もよく見られるグレード3/4の毒性であった。最高用量の125mg/mでの毎週投与(n=6)で最も奏功が認められたのは、2例の部分寛解(膵癌、メラノーマ)及び2例の疾患の安定(NSCLC)であった。最高用量の340mg/mでの毎週投与(n=5)で最も奏功が認められたのは、1例の疾患の安定(NSCLC)及び2例の部分寛解(SCLC、食道癌)であった。
【0245】
これらのデータは、アブラキサンTMとカルボプラチンの併用による作用を示すものである。毎週投与のMTDは300mg/mであり、3週毎投与のMTDは100mg/mであった。
実施例20 局所進行性/炎症性乳癌における用量強化ゲムシタビン、エピルビシン及びnab−パクリタキセル(アブラキサンTM)(GEA)の第II相臨床試験
オープンラベルの第II相臨床試験において、誘導/ネオアジュバント療法の投与計画を局所手術を行う前に実施した。投与計画は、ゲムシタビン2000mg/mを2週毎に6サイクル静脈内投与、エピルビシン50mg/mを2週毎に6サイクル、アブラキサンTM 175mg/mを2週毎に6サイクル投与し、それに追加して、ペグフィルグラスチム6mgをDay2に2週毎に皮下投与するというものであった。局所手術後の術後/アジュバント療法の投与計画は、ゲムシタビン2000mg/mを2週毎に4サイクル、アブラキサンTM 220mg/mを2週毎に4サイクル及びペグフィルグラスチム6mgをDay2に2週毎に皮下投与するというものであった。組織学的に確定された局所進行性/炎症性乳腺癌を有する女性を患者群に組み入れた。
実施例21 アブラキサンTMと併用するnab−ラパマイシンの血管平滑筋細胞に対する細胞毒性
濃度を漸増させたnab−ラパマイシン及び0、1、10又は100μMのアブラキサンTM(ABI−007)を入れた96穴プレートに、血管平滑筋細胞(VSMC)を播種した。nab−ラパマイシン及びアブラキサンTMの細胞毒性を評価するため、処理したVSMCをエチジウムホモダイマー1(Invitrogen,Carlsbad CA)で染色し、赤蛍光で解析した。エチジウムホモダイマー1は核酸に高親和性の蛍光染色液であり、死亡細胞の不全の細胞膜を通過して核酸を染色することのみが可能である。図7Aに示す通り、nab−ラパマイシンはそれ自体で、蛍光の増加が示すように細胞を用量依存的に死滅させる作用を示した。nab−ラパマイシンによる細胞死滅は、1μM又は10μMのアブラキサンTMによっては増強されなかった。しかし、100μMのアブラキサンTMによっては大いに増強された(ANOVA、p<0.0001)。図7Aに示すエチジウムホモダイマー1で染色した細胞を、カルセインにも曝露した。カルセインAM(Invitrogen)は、非特異的な細胞質エステラーゼにより蛍光カルセインに加水分解される非蛍光分子である。カルセインAMに曝露された生存細胞は、蛍光産物を生成しそれを保持することができるため、明るい緑色の蛍光を発する。図7Bに示す通り、nab−ラパマイシンは、カルセインによる蛍光染色の量の減少が示すように用量依存性の細胞毒性を示した。この蛍光の減少は、アブラキサンTMとのインキュベーションで用量依存的に増強された。全ての濃度のアブラキサンTMでANOVA統計によればp<0.0001であった。
実施例22 アブラキサンTMと併用するnab−ラパマイシンのHT29(ヒト大腸癌)腫瘍異種移植片に対する細胞毒性
ヌードマウスの右横腹に106のHT29細胞を植え込んだ。腫瘍が触知できるようになり、100〜200mmを超えた時点で投与を開始した。マウスを4群に無作為に割り当てた(各群でn=8)。第1群には生食水を週に3回、4週間静脈内投与した。第2群にはアブラキサンTM 10mg/kgを毎日5日間腹腔内投与した。第3群にはnab−ラパマイシン40mg/kgを週に3回、4週間静脈内投与した。第4群にはnab−ラパマイシン(40mg/kgを週に3回、4週間静脈内投与)及びアブラキサンTM(10mg/kgを毎日5日間腹腔内投与)の両方を投与した。図8に示す通り、腫瘍抑制作用はアブラキサンTMとnab−ラパマイシンの併用群が何れの単独処置群に比べても高かった。
実施例23 アブラキサンTMと併用するnab−ラパマイシンのH358(ヒト肺癌)腫瘍異種移植片に対する細胞毒性
ヌードマウスの右横腹に106のHT29細胞を植え込んだ。腫瘍が触知できるようになり、100〜200mmを超えた時点で投与を開始した。マウスを4群に無作為に割り当てた(各群でn=8)。第1群には生食水を週に3回、4週間静脈内投与した。第2群にはアブラキサンTM 10mg/kgを毎日5日間腹腔内投与した。第3群にはnab−17−AAG 80mg/kgを週に3回、4週間静脈内投与した。第4群にはnab−17−AAG(80mg/kgを週に3回、4週間静脈内投与)及びアブラキサンTM(10mg/kgを毎日5日間腹腔内投与)の両方を投与した。図9に示す通り、腫瘍抑制作用はアブラキサンTMとnab−ラパマイシンの併用群が何れの単独処置群に比べても高かった。
【0246】
前述の発明を図示及び実施例を使用してより明確に理解してもらうため詳細に記述してきたが、当業者には特定の小さな変更や修正は実践されることは明らかである。このため、この記述及び実施例は本発明の適用範囲を限定する意図で捉えられてはならない。
【0247】
本明細書で言及される文献、特許申請及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参考として組み入れられることが個別且つ具体的に示され、全体が本明細書に示される場合と同じ程度に、参考として本明細書により。組み入れられる。
【0248】
本発明の望ましい実施形態は、発明者等に既知の本発明を実施するための最良の方法も含めて、本明細書に記載されている。当業者が上述の説明を読めば、これらの望ましい実施形態の亜型は明らかである。発明者等は当業者が必要であればこうした亜型を使用することを望んでおり、本発明が本明細書に特に具体的に記載がない限り実践されることを意図している。従って、本発明は、準拠法が許可するように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題の変更及び同等物を全て含む。更に、本明細書に特に記載されていないか、文脈上明らかに矛盾していない限り、本発明の可能な変化の全てにおける上述の要素の任意の組み合わせが、本明細書に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1Aは、ラット動脈輪の血管新生に対するABI−007の作用を示す。図1Bは、ヒト内皮細胞の増殖に対するABI−007の作用を示す。図1Cは、内皮細胞の管形成に対するABI−007の作用を示す。
【図2】図2は、メトロノーム投与法におけるABI−007の至適な生物学的用量の測定を示す。図示されているのは、漸増するABI−007の用量に対するBalb/cJマウスの末梢血中の循環血管内皮前駆細胞(CEP)の生存レベルである。Untr’d、未処置の対照群;S/A、生食水/アルブミンビヒクル対照群;バー、平均値±SE。*未処置の対照群と有意差あり(p<0.05)。
【図3】図3A及び3Bは、MDA−MB−231(A)及びPC3(B)腫瘍の担癌SCIDマウスに対するメトロノーム又はMTD投与法で使用されたABI−007及びタキソールの作用を示す。図3C及び3Dは、MDA−MB−231(C)及びPC3(D)腫瘍の担癌SCIDマウスの体重に対するメトロノーム又はMTD投与法で使用されたABI−007及びタキソールの作用を示す。
【図4】図4A及び4Bは、A、生食水/アルブミン;B、クレモフォール EL対照;C、メトロノームタキソール 1.3mg/kg;D、E及びF、メトロノームABI−007、それぞれ3、6及び10mg/kg;G、MTD タキソール;H、MTD ABI−007の投与後のMDA−MB−231(図4A)及びP3(図4B)腫瘍担癌SCIDマウスの末梢血中の循環血管内皮前駆細胞(CEP)の生存レベルの変化を示す。バー、平均値±SE。a 生食水/アルブミンビヒクル対照群と有意差あり(p<0.05)。b クレモフォール ELビヒクル対照群と有意差あり(p<0.05)。
【図5】図5Aは、A、生食水/アルブミン;B、クレモフォール EL対照;C、メトロノームタキソール 1.3mg/kg;D、E及びF、メトロノームABI−007、それぞれ3、6及び10mg/kg;G、MTD タキソール;H、MTD ABI−007の投与後のMDA−MB−231(■)及びPC3(□)腫瘍の異種移植片の腫瘍内の微小血管密度を示す。バー、平均値±SE。図5B及び5Cは、腫瘍内の微小血管密度と、MDA−MB−231(図5B)及びPC3(図5C)腫瘍の担癌SCIDマウスの末梢血中のCEPの生存数の相関関係を示す。
【図6】図6は、Balb/cJマウスの側腹部に皮下注射したマトリゲル・プラグにおける、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が誘発する血管新生に対するメトロノーム又はMTD投与法で使用されたABI−007又はタキソールの作用を示す。A、生食水/アルブミン;B、クレモフォール EL対照;C、メトロノームタキソール 1.3mg/kg;D、E及びF、メトロノームABI−007、それぞれ3、6及び10mg/kg;G、MTD タキソール;H、MTD ABI−007。bFGFを投与せずにマトリゲルを植え込んだ群(−bFGF)を陰性対照とした。バー、平均値±SE。
【図7】図7A及び図7Bは、血管平滑筋細胞に対するnab−ラパマイシンとアブラキサンTMの併用による細胞毒性活性を示す。細胞毒性は、エチジウムホモ二量体1で染色するか(図7A)又はカルセインで染色するか(図7B)によって評価した。
【図8】図8は、HT29ヒト大腸癌異種移植片モデルにおけるnab−ラパマイシンとアブラキサンTMの併用による細胞毒性活性を示す。
【図9】図9は、H358ヒト肺癌異種移植片モデルにおけるnab−17−AAGとアブラキサンTMの併用による細胞毒性活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における増殖性疾患を処置する方法であって、
a)タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量、及び
b)少なくとも1つの他の化学療法薬の有効量
を個体に投与することを含み、前記化学療法薬が、抗代謝薬、白金系薬剤、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、ビンカアルカロイド、プロテアソーム阻害剤、マクロライド及びトポイソメラーゼ阻害剤からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記化学療法薬が抗代謝薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗代謝薬がゲムシタビン、カペシタビン又はフルオロウラシルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学療法薬が白金系薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記白金系薬剤がシスプラチン又はカルボプラチンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化学療法薬がチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がラパチニブである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記増殖性疾患が癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が乳癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が肺癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む前記組成物並びに前記化学療法薬が同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む前記組成物並びに前記化学療法薬が逐次投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記パクリタキセルの重量比が約9:1未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記パクリタキセルの重量比が約9:1未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記個体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
個体における腫瘍を処置する方法であって、
a)タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量を前記個体に投与することを含む第一の療法、及び
b)放射線療法、手術又はそれらの組み合わせを含む第二の療法
からなる、方法。
【請求項22】
前記第二の療法が放射線療法である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記放射線療法が前記第一の療法の前に行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二の療法が手術である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記パクリタキセルの重量比が約9:1未満である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記パクリタキセルの重量比が約9:1未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記個体がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を個体に投与する方法であって、
前記ナノ粒子組成物が少なくとも1ヵ月間にわたって投与され、各投与の間隔が約1週間を超えることがなく、各投与時における前記組成物中のタキサンの用量が、従来の投与計画に準じた最大耐用量の約0.25〜約25%である、方法。
【請求項34】
前記タキサンの用量が、従来の投与計画に準じた最大耐用量の約0.25〜約8%である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が少なくとも週に3回投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記パクリタキセルの重量比が約9:1未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物中の前記ナノ粒子の平均直径が約200nm以下である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ粒子組成物中の前記アルブミンと前記タキサンの重量比が約9:1未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ粒子組成物にクレモフォールが実質的に存在しない、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記個体がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
個体における増殖性疾患を処置する方法であって、
a)タキサン及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量;及び
b)少なくとも1つの他の化学療法薬及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量
を前記個体に投与することを含む、方法。
【請求項45】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化学療法薬がラパマイシンである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記化学療法薬が17AAGである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記個体がヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記増殖性疾患が癌である、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−530248(P2008−530248A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556407(P2007−556407)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/006167
【国際公開番号】WO2006/089290
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507279233)アブラクシス バイオサイエンス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】