説明

洗浄用ブラシ

【課題】ガラス基板の表面に付着した研磨剤や不純物を除去する洗浄工程において、ガラス基板の表面にキズをつけてしまうのを防止可能な洗浄用ブラシを提供すること。
【解決手段】この洗浄用ブラシ1は、被洗浄体を洗浄するための洗浄用ブラシであり、回転軸4を中心に回転する円筒形状のブラシ本体2と、ブラシ本体2の外周面上に配列された複数のブラシ片3とを具備する。各ブラシ片3は、短辺3aと長辺3bとからなる長方形の先端面3dを有し、短辺3aは、回転軸4に対して垂直な辺であり、長辺3bは、回転軸4に対して平行な辺であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄体を洗浄するための洗浄用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高記録密度化に適したHDD装置などの磁気ディスク用基板の一つとして、ガラス基板が用いられている。ガラス基板は、金属の基板に比べて剛性が高いので、磁気ディスク装置の高速回転化に適している。また、ガラス基板は、平滑で平坦な表面が得られるので、磁気ヘッドの浮上量を低下させることができ、S/N比の向上及び高記録密度化に適している。
【0003】
一般に、磁気ディスク用ガラス基板の製造工程では、ガラス基板の表面を精度の高い面に仕上げるために、表面を研磨材によって研磨する研磨工程が行われる。また、研磨工程の後には、ガラス基板の表面に付着した研磨材、研磨屑、その他の不純物を除去する洗浄工程が行われる。
この洗浄工程は、突起の付いた洗浄用ブラシでガラス基板の表面をブラッシングすることによって行われることが知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-246187号公報
【特許文献2】特開2008-119621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、突起の付いた洗浄用ブラシでガラス基板の表面をブラッシングする場合、図6に示すように、ガラス基板に対する洗浄用ブラシの押し付け圧力が所定値(図6の場合、400付近)を超えてしまうと、ガラス基板の表面に付着した研磨材や不純物を除去しようとして、ガラス基板の表面にキズをつけ易くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ガラス基板の表面に付着した研磨剤や不純物を除去する洗浄工程において、ガラス基板の表面にキズをつけてしまうのを防止可能な洗浄用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄用ブラシは、被洗浄体を洗浄するための洗浄用ブラシであって、回転軸を中心に回転する円筒形状のブラシ本体と、前記ブラシ本体の外周面上に配列された複数のブラシ片とを具備し、各ブラシ片は、短辺と長辺とからなる長方形の先端面を有し、前記短辺は、前記回転軸に対して垂直な辺であり、前記長辺は、前記回転軸に対して平行な辺であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、各ブラシ片の先端面が長方形であり、当該長方形の短辺が、回転軸に対して垂直、すなわち、ブラシ本体の周方向に対して平行となる。このため、被洗浄体に対する各ブラシ片の接触面は、ブラシ本体の周方向の幅が均一で短い線形状となる。このような接触面では、被洗浄体に対する押付け圧力が、接触面内で略均一に分散される。したがって、被洗浄体に対する押付け圧力が接触面の一部に集中することによって、被洗浄体に対してキズをつけてしまうのを防止できる。
【0009】
また、上記洗浄用ブラシにおいて、前記各ブラシ片の基端部は、前記ブラシ本体の外周面上に固定されており、前記ブラシ片の前記基端部から前記先端面までの高さに対する、前記短辺の長さの比は、0.1〜0.5であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ブラシ本体の周方向に対して平行となる短辺の長さを、周方向に対して垂直となるブラシ片の高さに対して、十分に短くできる。このため、ブラシ片をブラシ本体の周方向に曲がり易くすることができる。
【0011】
また、上記洗浄用ブラシにおいて、前記各ブラシ片は、断面が前記先端面と同一形状をなす平板形状の長方体であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ブラシ片が薄い平板形状の長方体であるため、円柱形状のブラシ片と比較して、ブラシ片の柔軟性を高めることができる。
【0013】
また、上記洗浄用ブラシにおいて、前記長辺の長さに対する、前記短辺の長さの比は、0.05〜0.2であることを特徴とする。
【0014】
また、上記洗浄用ブラシにおいて、前記各ブラシ片は、ブラシ本体と同様、ポリビニルアセタール系多孔質素材から構成されることを特徴とする。
【0015】
また、上記洗浄用ブラシにおいて、前記被洗浄体は、磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラス基板の表面に付着した研磨剤や不純物を除去する洗浄工程において、ガラス基板の表面にキズをつけてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄用ブラシの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る洗浄用ブラシのブラシ片を拡大した模式図である。
【図3】(a)本発明の実施形態に係るブラシ片の先端面と、(b)本発明の実施形態に係るブラシ片のガラス基板に対する接触面とを示す図である。
【図4】(a)比較例に係るブラシ片の先端面と、(b)比較例に係るブラシ片のガラス基板に対する接触面とを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るブラシ片を有する洗浄用ブラシと比較例に係るブラシ片を有する洗浄用ブラシとの欠陥数の比較結果を示す図である。
【図6】従来の洗浄用ブラシの押付け圧力に対するガラス基板上の欠陥数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係る洗浄用ブラシの構成について説明する。この洗浄用ブラシは、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の洗浄工程で用いられるが、磁気ディスク用ガラス基板以外の基板の洗浄にも用いることが可能である。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄用ブラシの斜視図である。図1に示すように、洗浄用ブラシ1は、円筒形状のブラシ本体2と、ブラシ本体2の外周面上に配列された複数のブラシ片3と、ブラシ本体2の回転軸4とから構成される。ブラシ本体2の外周面に設けられた複数のブラシ片3は、回転軸4と平行にブラシ片列を形成するように配列される。かかるブラシ片列は、ブラシ本体2の周方向2aの全面に形成される。また、隣接するブラシ片列は、各ブラシ片3の隙間を埋めるように交互に配置される。
【0020】
図2は、洗浄用ブラシ1のブラシ片3を拡大した模式図である。図2に示すように、ブラシ片3は、短辺3aと長辺3bとからなる長方形の先端面3dを有する。短辺3aは、ブラシ本体2の回転軸4に対して垂直な辺であり、長辺3bは、ブラシ本体2の回転軸4に対して平行な辺である。なお、長辺3bの長さに対する短辺3aの長さの比は、0.05〜0.2であることが望ましい。
【0021】
また、ブラシ片3は、ブラシ片3の断面が先端面3dと同一形状をなす平板形状の長方体である。ブラシ片3の基端部3eは、先端面3dと同一形状であり、ブラシ本体2の外周面上に固定されている。ここで、ブラシ片3の基端部3eから先端面3dまでの高さ3cに対する短辺3aの長さの比は、0.1〜0.5であることが望ましい。
【0022】
また、ブラシ片3は、柔軟性と適度な反発弾性を示す素材、例えば、ポリビニルアセタール系多孔質素材から構成される。なお、ブラシ本体2も、ブラシ片3と同様に、ポリビニルアセタール系多孔質素材から構成されていてもよい。
【0023】
次に、以上のように構成された洗浄用ブラシ1を用いたガラス基板5の洗浄方法について、比較例を用いて説明する。
【0024】
図3(a)は、本発明の実施形態に係るブラシ片3の先端面3dを示す図であり、同図(b)は、本発明の実施形態に係るブラシ片3のガラス基板5に対する接触面3fを示す図である。図4(a)は、比較例となる洗浄用ブラシ1のブラシ片6の先端面6bを示す図であり、同図(b)は、比較例となる洗浄用ブラシ1のブラシ片6のガラス基板5に対する接触面6cを示す図である。
【0025】
ガラス基板5の洗浄は、ブラシ本体2の外周面上に配列された各ブラシ片3を、ガラス基板5の洗浄面5aに接触させることによって行われる。具体的には、ブラシ片3は、ブラシ本体2の周方向2aにガラス基板5によって押圧された変形状態(図3(b)参照)と、ガラス基板5から離れた変形解除状態(図3(a)参照)を頻繁に繰り返すことによって、ガラス基板5の洗浄面5aをブラッシングする。このブラッシング作用により、ガラス基板5の洗浄面5aに付着した研磨材、研磨屑、その他の不純物が除去される。
【0026】
ここで、本実施形態に係る洗浄用ブラシ1では、図3(a)に示すように、ブラシ片3の先端面3dは長方形であり、当該長方形の短辺3aが回転軸4に対して垂直である。ここで、図1に示すように、回転軸4はブラシ本体2の周方向2aに対して垂直であるため、短辺3aはブラシ本体2の周方向2aに対して平行となる。このため、図3(b)に示すように、ガラス基板5の洗浄面5aに対するブラシ片3の接触面3fは、ブラシ本体2の周方向2aに対する幅が均一で短い線形状となる。
【0027】
このような接触面3fでは、洗浄面5aに対する押付け圧力が、接触面3f内で略均一に分散され、接触面3f内の一部に集中することがない。したがって、洗浄面5aに対する押付け圧力が所定値を超え難くなり、洗浄面5aに対してキズをつけてしまう確率も低くなる。
【0028】
一方、比較例となる洗浄用ブラシでは、図4(a)に示すように、ブラシ片6の先端面6bは直径6aの円形である。このため、図4(b)に示すように、ブラシ片6の先端面6bの円周部分の角が、ガラス基板5の洗浄面5aに点接触した後、徐々に変形していく。したがって、ガラス基板5の洗浄面5aに対するブラシ片6の接触面6cは、非線形の歪んだ形状となる。
【0029】
このような接触面6cでは、洗浄面5aに対する押付け圧力が、接触面6c内の一部分6d、すなわち、洗浄面5aに点接触した部分6dに集中してしまう。したがって、部分6dに接触する洗浄面5aに対する押付け圧力が所定値を超え易くなり、部分6dに接触する洗浄面5aにキズをつけてしまう確率が高くなる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る洗浄用ブラシ1では、ガラス基板5の洗浄面5aに対する各ブラシ片3の接触面3fは、ブラシ本体2の周方向2aの幅が均一で短い線形状となる。このような接触面3fでは、ガラス基板5の洗浄面5aに対する押付け圧力が、接触面3f内で略均一に分散される。したがって、ガラス基板5の洗浄面5aに対する押付け圧力が接触面の一部に集中することによって、ガラス基板5の洗浄面5aに対してキズをつけてしまうのを防止できる。
【0031】
また、本実施形態に係る洗浄用ブラシ1のブラシ片3では、ブラシ本体2の周方向2aに対して平行となる短辺3aの長さが、周方向2aに対して垂直方向の高さ3cに対して十分に短いため、ブラシ片3をブラシ本体2の周方向2aに曲がり易くすることができる。また、ブラシ片3は、断面が先端面3dと同一形状をなす平板形状の長方体であるため、円柱形状のブラシ片6と比較して、ブラシ片3の柔軟性を高めることができる。また、ブラシ片3の素材としては、ポリビニルアセタール系多孔質素材を用いているため、ブラシ片3は、柔軟性と適度な反発弾性を有する。
【0032】
このように、本実施形態に係る洗浄用ブラシ1では、ブラシ片3の形状や素材によって、ブラシ片3が柔軟性と適度な反発弾性を有するため、ガラス基板5の洗浄面5aに対するブラシ片3の押付け圧力が過剰となりすぎない。したがって、ガラス基板5の洗浄面5aに対する押付け圧力が過剰となることによって、ガラス基板5の洗浄面5aにキズをつけてしまうことも防ぐことができる。
【0033】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
以下の(1)切り出し工程、(2)形状加工工程、(3)粗面化工程、(4)精ラッピング工程、(5)端面研磨工程、(6)主表面研磨工程、(7)化学強化工程、(8)洗浄工程、(9)検査工程を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0035】
なお、磁気ディスク用ガラス基板を製造するための板状のガラス素材はフロート法により製造した。フロート法では、融液を溶融スズの上に流し、そのまま固化させる。板ガラスの両面はガラスの自由表面とガラス/スズの界面であるため研磨せずにRaが0.001μm以下の鏡面をなす板状のガラス素材を得た。
【0036】
(1)切り出し工程
フロート法で製造した厚さ0.95mmのアルミノシリケートガラスからなる板状ガラス素材を所定の大きさの四角形に切断したものを使用し、そのトップ面にガラスカッターで、磁気ディスク用ガラス基板となされる領域の外周側及び内周側の略周縁を描く円形の切り筋を形成した。なお、このアルミノシリケートガラスとしては、SiO:58質量%〜75質量%、Al:5質量%〜23質量%、LiO:3質量%〜10質量%、NaO:4質量%〜13質量%を含有する化学強化用ガラスを使用した。次いで、上記切り筋を形成した板状ガラスのトップ面側を全体的にヒータで加熱し、上記切り筋を板状ガラスのボトム面側に進行させて所定の直径を有するガラス基板5(鏡面板ガラス)を切り出した。
【0037】
(2)形状加工工程
次に、外周端面及び内周端面の研削をして外径を65mmφ、内径(中心部の円孔の直径)を20mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板5の端面の表面粗さは、Rmaxで2μm程度であった。
【0038】
(3)粗面化工程
4.0MのHFを用い、これに緩衝剤としてKOHを加えてなる処理液を調製した。この処理液のpHは4.55であった。この処理液にガラス基板5を浸漬して、ガラス表面にフロスト加工を行った。フロスト加工の処理温度は50℃であり、処理時間は420秒とした。このフロスト加工においては、HFが腐食因子であり、KFが防食因子として働く。このフロスト加工により、鏡面ガラス基板5の表面全体がほぼ均一の表面粗さRa=0.01μm〜0.4μm程度になった。なお、粗面化工程で目標とする表面粗さは、後の精ラッピング工程で使用する固定砥粒の粒度との関係で決めることが望ましい。
【0039】
(4)精ラッピング工程(表面研削工程)
粗面化されたガラス基板5の主表面を、固定砥粒研磨パッドを用いて研削した。固定砥粒研磨パッドとして、ダイヤモンドシートを用いた。ダイヤモンドシートは、ダイヤモンド粒子を研削砥粒として備えたものである。ダイヤモンドシートは、基材としてPETからなるシートを備えている。ダイヤモンド粒子の平均粒径はB=4μmであった。
【0040】
精ラッピング工程では、粗面化されたガラス基板5をラッピング装置にセットして、ダイヤモンドシートを用いてディスク表面をラッピングすることにより、高加工レートで表面粗さRaを0.1μm以下で、平坦度を6μm以下とすることができた。
【0041】
このように、事前にガラス基板5の主表面が粗面化工程で粗面化されているので、微細な固定砥粒の引っ掛かりとなる凸部がガラス基板5の主表面に形成され、固定砥粒が素材表面を滑ってしまう不具合を防止でき、精ラッピング工程における加工レートは、表面研磨開始から高加工レートを実現することができる。ここでの加工レートは6.0μm/分であった。
【0042】
(5)端面研磨工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板5を回転させながらガラス基板5の端面(内周、外周)の表面の粗さを、Rmaxで0.4μm、Raで0.1μm程度に研磨した。
【0043】
(6)主表面研磨工程
次に、上述したラッピング工程で残留した傷や歪みの除去するための第1研磨工程を、両面研磨装置を用いて行った。両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下研磨定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板5を密着させ、このキャリアを太陽歯車と内歯歯車とに噛合させ、上記ガラス基板5を上下研磨定盤によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板5の研磨面との間に研磨液を供給して回転させることによって、ガラス基板5が研磨定盤上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャとして硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)を用い、第1研磨工程を実施した。
【0044】
次いで、上記の第1研磨工程で使用したものと同じ両面研磨装置を用い、ポリシャを軟質ポリシャ(スウェード)の研磨パッドに替えて第2研磨工程を実施した。この第2研磨工程は、上述した第1研磨工程で得られた平坦な表面を維持しつつ、例えばガラス基板5の主表面の表面粗さをRmaxで3nm程度以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨加工である。
【0045】
(7)化学強化工程
次に、ガラス基板5に化学強化を施した。ガラス基板5の表面に存在するイオン(例えば、アルミノシリケートガラス使用の場合、Li及びNa)よりもイオン半径の大きなイオン(Na及びK)にイオン交換する。ガラス基板5の表面において(例えば、ガラス基板5の表面から約5μmまで)、イオン半径の大きい原子とイオン交換を行って、ガラス表面に圧縮応力を与えることでガラス基板5の剛性を上げている。このようにして、本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
【0046】
(8)洗浄工程
ガラス基板5の表面に付着した研磨剤、研磨屑、不純物を除去するために、平板形状のブラシ片3を有する洗浄用ブラシ1を用いて、スクラブ洗浄を行った。スクラブ洗浄の洗浄時間は10秒とし、洗浄用ブラシ1の回転数は300rpmとした。また、平板形状のブラシ片3の素材として、ポリビニルアセタール系多孔質素材を使用した。
【0047】
なお、本実施例では、洗浄工程を便宜的に化学強化工程の後に記載したが、洗浄工程は、精ラッピング工程(表面研削工程)から第1研磨工程および第2研磨工程までの各工程間でも適宜行われる。
【0048】
(9)検査工程
ガラス基板5の両主表面について、記録面を形成するためのスペックを満足しているか否かを検査した。具体的には、化学強化されたガラス基板5の両主表面について、平板形状のブラシ片3を有する洗浄用ブラシ1を用いて洗浄を行った後、ガラス基板5の表面上のキズ、汚れ(パーティクル)、素材要因、形状変化等の欠陥を検査した。この結果、図5に示すように、平板形状のブラシ片3を有する洗浄用ブラシ1を用いた場合のガラス基板5の表面上の欠陥数は、38であった。
【0049】
(比較例)
比較例では、平板形状のブラシ片3を有する洗浄用ブラシ1の代わりに、円柱形状のブラシ片6を有する洗浄用ブラシ1を用いて、洗浄工程を行った。スクラブ洗浄の洗浄時間は10秒とし、洗浄用ブラシ1の回転数は300rpmとした。また、円柱形状のブラシ片6の素材として、ポリビニルアセタール系多孔質素材を使用した。
【0050】
このような洗浄工程の後、検査工程を行った。なお、上記以外の各工程の条件は、実施例と同様とした。この結果、図5に示すように、円柱形状のブラシ片6を有する洗浄用ブラシ1を用いた場合のガラス基板5の表面上の欠陥数は、54となった。
【0051】
以上説明したように、実施例及び比較例における検査工程の結果、ガラス基板5の表面上の欠陥数は、図5に示すように、平板形状のブラシ片3を用いてガラス基板5の表面を洗浄した場合は「38」であるのに対して、円柱形状のブラシ片6を用いてガラス基板5の表面を洗浄した場合は「54」となった。
【0052】
すなわち、平板形状のブラシ片3を有する洗浄用ブラシ1を用いて洗浄工程を行うことにより、ガラス基板の表面にキズをつけてしまうのを防ぐことができたため、円柱形状のブラシ片6を有する洗浄用ブラシ1を用いて洗浄工程を行った場合と比較して、ガラス基板5の表面上の欠陥数を軽減することができた。
【0053】
本発明は、上記実施の携帯に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施形態における材質、個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…ブラシ
2…ブラシ本体
3…ブラシ片(平板形状)
3a…短辺
3b…長辺
3c…高さ
3d…先端面
3e…基端面
3f…接触面
4…回転軸
5…ガラス基板
5a…洗浄面
6…ブラシ片(円柱形状)
6a…直径
6b…先端面
6c…接触面
6d…接触面の一部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体を洗浄するための洗浄用ブラシであって、
回転軸を中心に回転する円筒形状のブラシ本体と、
前記ブラシ本体の外周面上に配列された複数のブラシ片とを具備し、
各ブラシ片は、短辺と長辺とからなる長方形の先端面を有し、
前記短辺は、前記回転軸に対して垂直な辺であり、
前記長辺は、前記回転軸に対して平行な辺であることを特徴とする洗浄用ブラシ。
【請求項2】
前記各ブラシ片の基端部は、前記ブラシ本体の外周面上に固定されており、
前記ブラシ片の前記基端部から前記先端面までの高さに対する、前記短辺の長さの比は、0.1〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄用ブラシ。
【請求項3】
前記各ブラシ片は、断面が前記先端面と同一形状をなす平板形状の長方体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄用ブラシ。
【請求項4】
前記長辺の長さに対する、前記短辺の長さの比は、0.05〜0.2であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄用ブラシ。
【請求項5】
前記各ブラシ片は、ポリビニルアセタール系多孔質素材から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄用ブラシ。
【請求項6】
前記被洗浄体は、磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の洗浄用ブラシ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−227766(P2010−227766A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76018(P2009−76018)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】