流体制御弁
【課題】スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることのできる流体制御弁を提供する。
【解決手段】流体制御弁は、スリーブ部材10内に摺動可能に収容されたスプール20と、スプール20を摺動方向に付勢するスプリング23a,23bとを備える。流体制御弁は、スプール20の軸線方向に延びるようにスプール20に形成された中間部20c(強磁性体部分)と、スプール20の軸線方向に直交する方向において中間部20cを挟んで対向して配置されて互いの間に軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成された永久磁石50a,50bと、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されて対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界を通電により発生させるコイル40a,40bとを備える。
【解決手段】流体制御弁は、スリーブ部材10内に摺動可能に収容されたスプール20と、スプール20を摺動方向に付勢するスプリング23a,23bとを備える。流体制御弁は、スプール20の軸線方向に延びるようにスプール20に形成された中間部20c(強磁性体部分)と、スプール20の軸線方向に直交する方向において中間部20cを挟んで対向して配置されて互いの間に軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成された永久磁石50a,50bと、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されて対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界を通電により発生させるコイル40a,40bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通を制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流体制御弁として、スリーブ内に収容されたスプールを摺動させることにより流体通路の流路面積を調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。図14に示すように、特許文献1に記載の流体制御弁900は、外部と連通する複数の流体通路が形成された円筒状のスリーブ931内に、軸線方向の位置によって径の異なるスプール932を摺動可能に収容している。スプール932の軸線方向の一端側に、スプール932を駆動するリニアソレノイド機構911を設けるとともに、スプール932の軸線方向の他端側にスプリング収容室943を設けてリターンスプリング944を収容している。リターンスプリング944は、スプール932をリニアソレノイド機構911側に付勢している。そして、リニアソレノイド機構911によってリターンスプリング944の付勢力に抗してスプール932を移動させて、スプール932の位置を調整することにより流体の流通を制御している。
【特許文献1】特開平10−122412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の流体制御弁900では、スプール932の軸線方向にリニアソレノイド機構911が設けられているため、スプール932の軸線方向における流体制御弁900の長さが長くなることが避けられない。
【0004】
また、エアシリンダや電動シリンダ等の他の駆動機構を備える流体制御弁においても、スプールの軸線方向にこれらの駆動機構が設けられるため、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さが長くなることは避けられない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることのできる流体制御弁を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明は、外部と連通する複数の流体通路が形成されたスリーブ部材と、前記スリーブ部材内に摺動可能に収容された柱状のスプールと、前記スプールを摺動方向に付勢する付勢手段とを備え、前記付勢手段による付勢力に抗して前記スプールをその軸線方向に摺動させることにより前記流体通路の流路面積をそれぞれ調整する流体制御弁において、前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成された永久磁石と、前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルとを備えることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成する永久磁石とを備えるため、この軸線方向に延びる強磁性体部分は永久磁石から磁力を受ける。また、永久磁石は、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成されているため、スプールの軸線方向において永久磁石の範囲内に強磁性体部分が位置する。
【0008】
ここで、前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルを備えるため、対向する永久磁石を貫く磁界をコイルの通電により発生させることよって、軸線方向に並んだ反対向きの磁界の一方が弱められるとともに他方が強められる。このため、スプールの軸線方向において磁界の弱められた側から強められた側へ強磁性体部分を移動させるように磁力が作用し、付勢手段の付勢力に抗してスプールを移動させることができる。その結果、強磁性体部分の形成されたスプールをその軸線方向に直交する方向に配置されたコイルの通電により移動させるため、コイルやシリンダ等の駆動機構をスプールの軸線方向に設ける必要がなく、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることができる。なお、流体通路の流路面積を調整する態様としては、流体通路の流路面積を連続的に大きく又は小さくする、流体通路の状態を全開と全閉とで切り換える等を含むものとする。
【0009】
永久磁石は、スプールの軸線方向において強磁性体部分よりも長く形成されているため、スプールの軸線方向において永久磁石の範囲内に強磁性体部分が位置する。そして、コイルの通電によって、強磁性体部分はスプールの軸線方向において永久磁石の長さの範囲で移動する。
【0010】
ここで、第2の発明は、第1の発明において、前記コイルに通電されていない状態において、前記軸線方向の一方において前記強磁性体部分の端面から前記永久磁石の端面までの長さが、前記流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするために前記スプールを摺動させる長さに等しく設定されているため、コイルの通電によってスプールの軸線方向において永久磁石の長さの範囲で強磁性体部分を移動させることにより、流体通路の少なくとも1つを容易に全開または全閉まで調整することができる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有することを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備えるため、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを延長することなく、スプールを移動させる力を大きくすることができる。
【0013】
ここで、スプールを挟んで連結部と反対側には磁路が形成されていない。そして、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有するため、スプールと連結部との間の部分、及び連結部と反対側の磁路が形成されていない部分に流体通路を形成することができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体通路を効率的に配置することができる。
【0014】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備えるため、スプールの軸線方向に磁路が形成されるものの、スプールの駆動機構を設ける場合と比較してその長さを短くすることができる。そして、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有するため、磁路の形成されていない方向であるスプールの軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を形成することができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか発明において、前記対向して配置された永久磁石は、前記スプールの軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石からなるため、一対の永久磁石のみによって磁界を形成することができる。その結果、永久磁石の数を少なくすることができるため、流量制御弁の製造コストを低減することができる。
【0017】
スプールにおいて強磁性体部分とその他の部分とが異なる材質で形成される場合には、これらの部分を接合する必要があり、その接合部分の強度が低下するおそれがある。
【0018】
この点、第6の発明は、第1〜第5のいずれか発明において、前記スプールにおいて前記強磁性体部分を除く部分は強磁性体ではない鉄系の材質で形成されており、前記強磁性体部分は前記鉄系の材質を焼きなますことにより生成される強磁性体で形成されているため、スプールを強磁性体ではない鉄系の材質で一体に成形し、強磁性体にする部分のみを焼きなますことにより、強磁性体部分とその他の強磁性体ではない部分とを形成することができる。その結果、スプールの強度を高くすることができるとともに、接合工程を省略することができる。
【0019】
スプールはスリーブ部材内に収容されているため、スリーブ部材を透過させてスプールの強磁性体部分に磁界を作用させる必要がある。このため、スリーブ部材が強磁性体で形成されている場合には、スプールの強磁性体部分に磁界を作用させることが困難となる。
【0020】
この点、第7の発明は、第1〜第6のいずれか発明において、前記スリーブ部材は強磁性体ではない合成樹脂により形成されているため、スリーブ部材を透過させてスプールの強磁性体部分に磁界を作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図である。
【0022】
図1に示すように、流体制御弁は断面が矩形状に形成されたスリーブ部材10を備えている。スリーブ部材10の短手方向の中央付近には、長手方向に延びるようにシリンダ16が形成されている。シリンダ16は、スリーブ部材10を貫通するように形成されるとともに、その開口部がOリング25a,25b及びキャップ26a,26bによってシールされている。スリーブ部材10は、強磁性体以外の材質で形成されており、例えば強磁性体ではない合成樹脂により形成されている。
【0023】
シリンダ16には、円柱状のスプール20がシリンダ16の軸線に沿って摺動可能に収容されている。シリンダ16の軸線とスプール20の軸線とは一致している。シリンダ16の軸線方向において、スプール20はシリンダ16よりも短く形成されており、シリンダ16においてスプール20の両端よりも延長している部分は、それぞれスプリング23a,23bの収容室16a,16bとなっている。スプール20の軸線方向の端面にはそれぞれ凹部22a,22bが形成されている。そして、スプリング23a,23bのスプール20に当接する端部が凹部22a,22bにそれぞれ嵌合している。これらのスプリング23a,23bによってスプール20が軸線方向においてそれぞれ反対向きに等しい力で付勢されており、それらの付勢力の釣合う位置がスプール20の中立位置となっている。なお、スプリング23a,23bは、スプールを摺動方向に付勢する付勢手段を構成する。
【0024】
シリンダ16の軸線方向の両端部付近にはそれぞれ摺動軸受け24a,24bが設けられており、スプール20を摺動可能に支持している。また、スプール20には、その中心軸に沿って貫通する貫通孔21が形成されている。そして、スプール20が摺動する際に、収容室16a,16bのうち圧力の高い一方から低い一方へと収容室16a,16b内の流体が移動する。これにより、スプール20が摺動する際に、収容室16a,16b内の流体が圧力を受けることにより抵抗が増大することを抑制することができる。
【0025】
また、スリーブ部材10には、それぞれ外部と連通する供給通路11、第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。供給通路11は、スリーブ部材10においてスプール20の軸線方向に垂直な側面に開口するとともに、スプール20と後述するヨークの垂直部30cとの間を通って直線状に延びている。供給通路11と上記シリンダ16とに対してそれぞれ垂直に連通する第1供給通路12及び第2供給通路14が供給通路11の上流側から順に直線状に形成されている。第1供給通路12及び第2供給通路14のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。第1排出通路13及び第2排出通路15は、それぞれシリンダ16に対して垂直に連通している。すなわち、排出通路13,15は、スプール20に対してヨークの垂直部30cと反対側で連通するとともにスプール20を挟んで垂直部30cと反対側において外部に連通している。これらの供給通路12,14及び排出通路13,15は上記ヨークの垂直部30cに対して垂直に形成されている。第1供給通路12と第2供給通路14とはスプール20の軸線方向に並んで平行に形成されており、第1排出通路13と第2排出通路15とはスプール20の軸線方向に並んで平行に形成されている。このように、供給通路11、第1供給通路12、第2供給通路14、第1排出通路13及び第2排出通路15は、スプール20の中心軸を含みヨークの垂直部30cに垂直な平面に沿って形成されている。これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0026】
スプール20は、軸線方向の端に配置された端部20a,20bと、それらの端部20a,20bに挟まれて軸線方向の中間に配置された中間部20cとからなる。端部20a,20bは、強磁性体ではない材質で形成されており、具体的にはアルミニウムにより形成されている。中間部20cは、強磁性体で形成されており、具体的には鋼により形成されている。スプール20において端部20a,20bの外周面には、スプール20の軸線方向の幅が供給通路12,14の径に略等しい溝27,28がそれぞれ形成されている。これらの溝27,28は、スプール20が中立位置(図1の位置)にあるときに、それぞれ半分の幅が第1供給通路12,第2供給通路14にそれぞれ重なる位置に形成されている。そして、スプール20の軸線方向において、溝27,溝28が第1供給通路12,第2供給通路14にそれぞれ重なる幅が大きくなるほど流路面積が大きくなり、スプール20を通過して第1排出通路13,第2排出通路15にそれぞれ流通する流体の量が多くなる。したがって、スプール20の摺動方向(軸線方向)における位置を調整することにより、第1供給通路12から第1排出通路13に流通する流体の量および第2供給通路14から第2排出通路15に流通する流体の量を制御することができる。なお、供給通路12,14の一方が全開のときには他方は全閉となり、供給通路12,14の一方が半分の開度のときには他方も半分の開度となる。
【0027】
図2に排出通路13,15の開口側から流体制御弁を見た正面図を示すとともに、図3に供給通路11の開口側から流体制御弁を見た側面図を示す。
【0028】
図2,3に示すように、スリーブ部材10には、スプール20の軸線方向の両端部にその軸線方向に垂直な矩形板状の側壁部10a,10bが設けられている。また、ヨーク30には、垂直部30cを基端として垂直に張り出すように対向部30d,30eが設けられている。このように側壁部10aと側壁部10bとの間において、対向部30dと対向部30eとが垂直部30cによって連結されており、これらの対向部30d,30e及び垂直部30cからなるヨーク30によって磁路が形成されている。これらの対向部30d,30e及び垂直部30cは、スプール20の軸線方向に積層された鋼板によって一体に形成されている。
【0029】
対向部30dとシリンダ16(スプール20)との間には軸線方向が対向部30dに垂直なコイル40aが設けられており、対向部30eとシリンダ16(スプール20)との間には軸線方向が対向部30eに垂直なコイル40bが設けられている。したがって、対向部30dと対向部30eとによって、コイル40a、スプール20及びコイル40bが挟まれている。対向部30d及び対向部30eは、互いに平行に設けられるとともに、排出通路13,15の両中心軸を含む平面に対して平行になっている。また、これらの対向部30d,30e、コイル40a,40b、排出通路13,15は、コイル40a,40bの軸線方向において対称に形成されている。
【0030】
図4に図1の4−4線断面を示すとともに、図5に図2の5−5線断面を示す。
【0031】
図4,5に示すように、ヨーク30の対向部30d,30eの中央付近には、円柱状の凸部30a,30bがそれぞれ設けられている。凸部30a,30bは、シリンダ16の近傍まで延びており、その端面がシリンダ16の周面の形状に沿った円弧状となっている。凸部30a,30bは、対向部30d,30eにそれぞれ垂直に一体で形成されている。凸部30a,30bは、シリンダ16に対しても垂直に延びている。
【0032】
シリンダ16と凸部30aとの間には永久磁石50aが設けられており、シリンダ16と凸部30bとの間には永久磁石50bが設けられている。永久磁石50a,50bは、シリンダ16の周面の形状に沿った円弧状の断面でスプール20軸線方向に延びるように形成されており、凸部30a,30bの端面にそれぞれ固定されている。永久磁石50aと永久磁石50bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されている。そして、対向する一対の永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列されている。具体的には、永久磁石50aはスプール20の軸線方向に沿ってスプール20の端部20a側がS極で端部20b側がN極となるように配置されており、永久磁石50bはスプール20の軸線方向に沿ってスプール20の端部20a側がN極で端部20b側がS極となるように配置されている。永久磁石50a,50bは共に、スプール20の軸線方向においてN極部分とS極部分とが等しい長さで形成されている。こうして、矢印A及び矢印Bで示すように、永久磁石50aと永久磁石50bとの間にスプール20の軸線方向に並んだ反対向きの磁界が形成されている。
【0033】
上記ヨーク30の凸部30a,30bは上記コイル40a,40bのそれぞれの鉄心となっており、凸部30a,30bの周りに導線を巻くことによりコイル40a,40bが形成されている。これらのコイル40a,40bは、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されており、矢印Cで示すように、対向する永久磁石50a,50b及びスプール20の中間部20cを貫く磁界を通電により発生させる。また、これと反対向きに通電することにより、コイル40a,40bは矢印Cと反対向きの磁界を発生させる。
【0034】
ヨーク30は、対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部30d及び対向部30eを備えている。垂直部30cは、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eを一方側(供給通路11を挟んでシリンダ16と反対側)から連結している。すなわち、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eの他方側(シリンダ16を挟んで供給通路11と反対側)には、対向部30d,30eを連結する垂直部が設けられていない。このように形成されたヨーク30によって、矢印Cで示すように、コイル40a,40bの通電により発生する磁界が永久磁石50a,50bに導かれる。なお、ヨーク30の垂直部30cは、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿って対向部30d,30eを一方側から連結する連結部を構成し、ヨーク30は、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導く磁路形成部を構成する。
【0035】
スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bはスプール20の中間部20c(強磁性体部分)よりも長く形成されており、具体的には永久磁石50a,50bは中間部20cの2倍の長さに形成されている。したがって、スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bの中央部に中間部20cが位置する中立状態では、永久磁石50a,50bのN極およびS極に中間部20cが半分ずつ重なっている。コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向のスプリング23a側において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、上記第1供給通路12を全開にするとともに上記第2供給通路14を全閉にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されている。コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向のスプリング23b側において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、上記第1供給通路12を全閉にするとともに上記第2供給通路14を全開にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されている。そして、スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bに中間部20cが重なっていない範囲が中間部20cの移動する範囲となる。すなわち、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で中間部20cは移動する。
【0036】
永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとの間には、シリンダ16の内壁を構成するスリーブ部材10の合成樹脂が存在している。すなわち、永久磁石50a,50b及びコイル40a,40bから発生する磁界はスリーブ部材10を透過してスプール20の中間部20cに作用する。このため、スリーブ部材10において永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとに挟まれる部分は、磁界を効率的に透過させるためにシリンダ16の剛性を確保することのできる最低限の厚みで形成されている。
【0037】
コイル40a,40bに通電されていない状態では矢印Cで示す磁界が発生しておらず、永久磁石50a,50bにより矢印A及び矢印Bで示す磁界が発生している。この状態において、アルミニウムにより形成された端部20a,20bは磁力の作用を受けない。鋼により形成された中間部20cは磁力の作用を受けるが、スプール20の軸線方向においてその磁力は釣合っている。また、スプール20を摺動方向に付勢する上記スプリング23a,23bの付勢力の作用により、コイル40a,40bに通電されていない中立状態では、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの中央に中間部20cが位置する。
【0038】
次に、このように構成された流体制御弁の動作について説明する。
【0039】
スプール20を軸線方向に移動させる場合には、コイル40a,40bに通電する方向およびその電流の大きさを制御する。例えば、コイル40a,40bに通電して、矢印Cで示すように永久磁石50bから永久磁石50aの方向へ貫く磁界を発生させると、矢印Aで示す永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は弱められ、矢印Bで示す永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう磁界は強められる。
【0040】
そして、例えば図6に示すように、永久磁石50aと永久磁石50bとの間において、永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は消滅し、矢印Dで示す永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう強い磁界が形成される。この磁界がスプール20の中間部20cに作用して、スプール20には軸線方向においてスプリング23a側へ移動させる力が作用する。
【0041】
その結果、図7に示すように、スプリング23aの付勢力に効してスプール20が供給通路11の開口する方向へ移動し、第1供給通路12および第1排出通路13の流路面積が大きくなるとともに、第2供給通路14および第2排出通路15の流路面積が小さくなる。ここで、コイル40a,40bの通電量を大きくするほど発生する磁界が強くなるため、永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は弱くなるとともに、永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう磁界が強くなる。したがって、コイル40a,40bの通電量を制御することにより、スプール20を移動させる磁力の大きさ、ひいてはスプール20の移動量を制御することができる。
【0042】
また、スプール20を軸線方向の反対側へ移動させる場合には、コイル40a,40bの通電方向を反対にするとともに、その通電量を制御することによりスプール20の移動量を制御することができる。このようにして、供給通路12,14の流路面積を調整して流体の流量を制御することができる。
【0043】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
スプール20の軸線方向に延びるようにスプール20に形成された中間部20c(強磁性体部分)と、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されて互いの間に軸線方向に並んだ反対向きの磁界(図4に矢印A及び矢印Bで示す磁界)を形成する永久磁石50a,50bとを備えるため、この軸線方向に延びる中間部20cは永久磁石50a,50bから磁力を受ける。また、永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成されているため、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの範囲内に中間部20cが位置する。
【0045】
ここで、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されて対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界(図4に矢印Cで示す磁界)を通電により発生させるコイル40a,40bを備えるため、対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界をコイル40a,40bの通電により発生させることよって、軸線方向に並んだ反対向きの磁界の一方が弱められるとともに他方が強められる。このため、スプール20の軸線方向において磁界の弱められた側から強められた側へ中間部20cを移動させるように磁力が作用し、スプリング23a,23bの付勢力に抗してスプール20を移動させることができる。その結果、中間部20cの形成されたスプール20をその軸線方向に直交する方向に配置されたコイル40a,40bの通電により移動させるため、コイルやシリンダ等の駆動機構をスプール20の軸線方向に設ける必要がなく、スプール20の軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることができる。
【0046】
永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成されているため、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの範囲内に中間部20cが位置する。そして、コイル40a,40bの通電によって、中間部20cはスプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で移動する。
【0047】
ここで、コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向の一方において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されているため、コイル40a,40bの通電によってスプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で中間部20cを移動させることにより、流体通路の少なくとも1つを容易に全開または全閉まで調整することができる。
【0048】
対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部30d,30eと、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eを一方側から連結する垂直部30cとからなり、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導くヨーク30(磁路形成部)を備えるため、スプール20の軸線方向における流体制御弁の長さを延長することなく、スプール20を移動させる力を大きくすることができる。
【0049】
ここで、スプール20を挟んで垂直部30cと反対側には磁路が形成されていない。そして、スリーブ部材10に形成された複数の流体通路は、スプール20と垂直部30cとの間を通ってスプール20に連通する供給通路11,12,14と、スプール20に対して垂直部30cと反対側で連通するとともにスプール20を挟んで垂直部30cと反対側において外部に連通する排出通路13,15とを有するため、スプール20と垂直部30cとの間の部分、及び垂直部30cと反対側の磁路が形成されていない部分に流体通路を形成することができる。その結果、スプール20を移動させる力をヨーク30により大きくしつつ、流体通路を効率的に配置することができる。
【0050】
対向して配置された永久磁石は、スプール20の軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石50a,50bからなるため、一対の永久磁石50a,50bのみによって磁界を形成することができる。その結果、永久磁石の数を少なくすることができるため、流量制御弁の製造コストを低減することができる。
【0051】
スプール20はスリーブ部材10内に収容されているため、スリーブ部材10を透過させてスプール20の中間部20c(強磁性体部分)に磁界を作用させる必要がある。このため、スリーブ部材10が強磁性体で形成されている場合には、スプール20の中間部20cに磁界を作用させることが困難となる。
【0052】
この点、本実施形態によれば、スリーブ部材10は強磁性体ではない合成樹脂により形成されているため、スリーブ部材10を透過させてスプール20の中間部20cに磁界を作用させることができる。また、スリーブ部材10において永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとに挟まれる部分は、磁界を効率的に透過させるためにシリンダ16の剛性を確保することのできる最低限の厚みで形成されている。このため、スプール20の中間部20cに作用する磁力を大きくすることができ、磁力の大きい永久磁石を採用したり、コイルの通電量を大きくしたりする必要がない。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、磁路を形成するヨークの構成およびスリーブ部材に形成される流体通路の構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図8は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図であり、図9は図8の9−9線断面図である。
【0055】
図8,9に示すように、スリーブ部材110には、対向する永久磁石50a,50bの間において同一の平面に沿って延びるように、供給通路111,第1供給通路112,第2供給通路114,第1排出通路13,第2排出通路15が形成されている。供給通路111は、スプール20の軸線方向と直交する方向において外部と連通している。供給通路112,114は、供給通路111にそれぞれ連通するとともにシリンダ16(スプール20)に対してそれぞれ垂直に連通している。供給通路112と排出通路13とは、スプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通し、供給通路114と排出通路15とは、スプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通している。すなわち、供給通路112と排出通路13とは、スプール20を挟んで互いに反対側でスプール20に連通し、供給通路114と排出通路15とは、スプール20を挟んで互いに反対側でスプール20に連通している。第1供給通路112及び第2供給通路114のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。排出通路13,15は、スプール20の軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通している。なお、これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0056】
ヨーク130は、スプール20の軸線方向の端部側を通って対向部130d,130eを連結するように形成されている。具体的には、ヨーク130は、永久磁石50a,50b及びコイル40a,40bを挟む対向部130d,130eを備えている。対向部130d,130eは、コイル40a,40bの軸線方向に垂直な矩形板状にそれぞれ形成されている。垂直部130c(連結部)は、スプール20の軸線方向の両端部側を通ってそれらの対向部130d,130eをそれぞれ連結している。これらの対向部130d,130eと垂直部130cとからなるヨーク130によって磁路が形成されている。これらの対向部130d,130e及び垂直部130cは、排出通路13,15が延びる方向に積層された鋼板によって一体に形成されている。このように形成されたヨーク130によって、矢印Cで示すように、コイル40a,40bの通電により発生する磁界が永久磁石50a,50bに導かれる。
【0057】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて以下の優れた効果が得られる。
【0058】
対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部130d,130eと、スプール20の軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部130d,130eを連結する垂直部130cとからなり、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導くヨーク130を備えるため、スプール20の軸線方向にヨーク130の垂直部130cが設けられるものの、スプール20の駆動機構を設ける場合と比較してその長さを短くすることができる。そして、スリーブ部材110の複数の流体通路は、対向する永久磁石50a,50bの間においてスプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともにスプール20の軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する供給通路111及び排出通路13,15を有するため、磁路の形成されていない方向であるスプール20の軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を形成することができる。その結果、スプール20を移動させる力をヨーク130により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0059】
ヨーク130の垂直部130cは、スプール20の軸線方向の両端部側に形成されているため、垂直部130cが一方の端部側にのみ形成される場合と比較して効率的に磁界を導くことができる。その結果、スプール20を移動させる力をより大きくすることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第3の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、第1の実施形態に準じた部材については200を加えた符号を付すことにより説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、スリーブ部材に形成される流体通路の構成およびその通路の流路面積を調整するスプールの構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図10は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図であり、図11は図10の11−11線断面図である。
【0062】
図10,11に示すように、スリーブ部材210には、それぞれ外部と連通する供給通路211、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218が形成されている。供給通路211は、スリーブ部材210においてスプール220の軸線方向に垂直な側面に開口するとともに、スプール220とヨーク230の垂直部230cとの間を通って直線状に延びている。そして、供給通路211と上記シリンダ216とに対してそれぞれ垂直に連通する第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217が供給通路211の上流側から順に直線状に形成されている。第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218が形成されている。第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218は、それぞれシリンダ216に対して垂直に連通している。すなわち、排出通路213,215,218は、スプール220に対してヨーク230の垂直部230cと反対側で連通するとともにスプール220を挟んで垂直部230cと反対側において外部に連通している。
【0063】
これらの供給通路212,214,217及び排出通路213,215,218はヨーク230の垂直部230cに対して垂直に形成されている。第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217はスプール220の軸線方向に並んで平行に形成されており、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218はスプール220の軸線方向に並んで平行に形成されている。このように、供給通路211、第1供給通路212、第2供給通路214、第3供給通路217、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218は、スプール220の中心軸を含みヨーク230の垂直部230cに垂直な平面に沿って形成されている。これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0064】
スプール220は、軸線方向の端に配置された端部220a,220bと、それらの端部220a,220bに挟まれて軸線方向の中間に配置された中間部220cとからなる。端部220a,220bは、強磁性体ではない材質で形成されており、具体的にはアルミニウムにより形成されている。中間部220cは、強磁性体で形成されており、具体的には鋼により形成されている。スプール220において、端部220aの外周面にはスプール220の軸線方向の幅が供給通路212の径に略等しい溝227が形成され、端部220bの外周面にはスプール220の軸線方向の幅が供給通路214,217の径に略等しい溝228,229がそれぞれ形成されている。第2供給通路214を閉じるためには、スプール220の軸線方向において中間部220cは供給通路214の径と等しい幅が必要になる。ここでは、スプール220の軸線方向において中間部220cの幅は供給通路214の径よりも大きく形成されており、具体的には供給通路214の径の略2倍に形成されている。スプール220が中立位置(図10,11の位置)にあるときに、第1供給通路212及び第3供給通路217は全閉となり,第2供給通路214は全開となる。そして、スプール220の軸線方向において、これらの溝227〜229が各供給通路に重なる幅が大きくなるほど流路面積が大きくなり、スプール220を通過して各排出通路に流通する流体の量が多くなる。したがって、スプール220の摺動方向(軸線方向)における位置を調整することにより、各通路を流通する流体の量を制御することができる。
【0065】
スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bはスプール220の中間部220c(強磁性体部分)よりも長く形成されており、具体的には永久磁石250a,250bは中間部220cの2倍の長さに形成されている。したがって、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bの中央部に中間部220cが位置する中立状態では、永久磁石250a,250bのN極およびS極に中間部220cが半分ずつ重なっている。さらに、スプール220の軸線方向において、永久磁石250aにおいてS極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにN極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なり、永久磁石25bbにおいてN極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにS極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なっている。コイル240a,240bに通電されていない状態において、スプール220の軸線方向のスプリング223a側において中間部220cの端面から永久磁石250a,250bの端面までの長さが、上記第1供給通路212を全開にするとともに上記第2供給通路214を全閉にするためにスプール220を摺動させる長さに等しく設定されている。コイル240a,240bに通電されていない状態において、スプール220の軸線方向のスプリング223b側において中間部220cの端面から永久磁石250a,250bの端面までの長さが、上記第2供給通路214を全閉にするとともに上記第3供給通路217を全開にするためにスプール220を摺動させる長さに等しく設定されている。
【0066】
そして、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bに中間部220cが重なっていない範囲が中間部220cの移動する範囲となる。すなわち、スプール220の軸線方向において永久磁石250a,250bの長さの範囲で中間部220cは移動する。スプール220を摺動方向に付勢するスプリング223a,223bの付勢力の作用により、コイル240a,240bに通電されていない中立状態では、スプール220の軸線方向において永久磁石250a,250bの中央に中間部220cが位置する。
【0067】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて以下の優れた効果が得られる。
【0068】
スプール220の軸線方向において、永久磁石250aにおいてS極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにN極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なり、永久磁石25bbにおいてN極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにS極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なっている。そして、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bの長さの範囲で中間部220cは移動するため、コイル240a,240bの通電によりスプール220を溝227,228の幅だけ移動させることができ、供給通路212,214,217をそれぞれ全閉から全開まで調整することができる。
【0069】
第2供給通路214を閉じるためには、スプール220の軸線方向において中間部220cは供給通路214の径と等しい幅が必要になる。本実施形態は、スプール220の軸線方向において中間部220cの幅は供給通路214の径よりも大きく形成されており、具体的には供給通路214の径の略2倍に形成されているため、中間部220cを貫く磁界をより広い範囲で受けることができる。その結果、スプール220を移動させる力をより大きくすることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第4の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、永久磁石の構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図12は流体制御弁の流体通路を含む平面に垂直な平面で切断した断面図であり、図13は図12の13−13線断面図である。
【0072】
図12,13に示すように、シリンダ16と凸部30aとの間には永久磁石351a,352aが設けられており、シリンダ16と凸部30bとの間には永久磁石351b,352bが設けられている。これらの永久磁石は、シリンダ16の周面の形状に沿った円弧状の断面でスプール20軸線方向に延びるように形成されており、同様に円弧状で軸線方向に延びるように形成された凸部30a,30bの端面にそれぞれ固定されている。永久磁石351aと永久磁石351bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置され、永久磁石352aと永久磁石352bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されている。永久磁石351aと永久磁石352aとは、スプール20の軸線方向に並んで配置され、永久磁石351bと永久磁石352bとは、スプール20の軸線方向に並んで配置されている。
【0073】
これらの永久磁石は、いずれもスプール20の軸線方向に直行する方向に磁極が配列されたラジアル異方性の永久磁石である。永久磁石351aと永久磁石352aとは、互いに磁極の配列が反対になっており、具体的には永久磁石351aはスプール20側がS極になり、永久磁石352aはスプール20側がN極になっている。永久磁石351bと永久磁石352bとは、互いに磁極の配列が反対になっており、具体的には永久磁石351bはスプール20側がN極になり、永久磁石352bはスプール20側がS極になっている。永久磁石351a,352aはスプール20の軸線方向の長さが等しく形成されており、永久磁石351b,352bはスプール20の軸線方向の長さが等しく形成されている。こうして、矢印Aで示すように永久磁石352aのN極から永久磁石352bのS極に向かう磁界が形成され、矢印Bで示すように永久磁石351bのN極から永久磁石351aのS極に向かう磁界が形成されている。すなわち、これらの永久磁石によって、スプール20の軸線方向に並んだ反対向きの磁界が形成されている。
【0074】
スプール20の軸線方向において、永久磁石351a,352aを合計した長さと、永久磁石351b,352bを合計した長さとは、スプール20の中間部20c(強磁性体部分)よりもそれぞれ長く形成されており、具体的には永久磁石351a,352a,351b,352bは共に中間部20と等しい長さに形成されている。したがって、スプール20の軸線方向において、永久磁石351a及び永久磁石352a(永久磁石351b及び永久磁石352b)の境界部に中間部20cが位置する中立状態では、永久磁石351a,352a,351b,352bに中間部20cがそれぞれ半分ずつ重なっている。そして、スプール20の軸線方向において、永久磁石351a,351bに中間部20cが重なっていない範囲および永久磁石352a,352bに中間部20cが重なっていない範囲が中間部20cの移動する範囲となる。すなわち、スプール20の軸線方向において永久磁石351a及び永久磁石352a(永久磁石351b及び永久磁石352b)の長さの範囲で中間部20cは摺動する。
【0075】
以上詳述した本実施形態の構成によっても、第1の実施形態に準じた効果が得られる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0077】
上記各実施形態では、円柱状のスプールを採用したが、四角柱状のスプール等、その他の断面形状を有する柱状のスプールを採用することもできる。
【0078】
上記各実施形態では、シリンダの軸線方向の両端部付近にそれぞれ摺動軸受けを設けたが、これらの摺動軸受けに代えてスプールの両端部の外周に摺動抵抗の小さい部材を一体的に設ける、あるいは摺動軸受けを省略することもできる。
【0079】
上記各実施形態では、流体通路の流路面積を調整する態様として、流体通路の流路面積を連続的に大きく又は小さくするようにしたが、流体通路の状態を全開と全閉とで切り換えるようにしてもよい。
【0080】
上記各実施形態では、スプール20の端部20a,20b及びスプール220の端部220a,220bについて、全体を強磁性体ではないアルミニウムにより形成したが、永久磁石およびコイルの発生する磁界の影響を無視することのできる位置にこれらが配置されていれば、スプールの端部に強磁性体の部分を含んでいてもよい。
【0081】
上記第2の実施形態では、ヨーク130の垂直部130cをスプール20の軸線方向の両端部側に形成したが、ヨーク130の垂直部130cをスプール20の軸線方向の一端部側にのみ形成することもできる。また、ヨーク130の垂直部130cを省略することもできる。このような構成によれば、スプール20を移動させる力は小さくなるものの、スプール20の軸線方向において流体制御弁の長さを短くすることができる。
【0082】
上記第各実施形態では、スプール及び非永久磁石を挟むようにコイルを対向して配置したが、永久磁石に対してスプールの軸線方向に直交する方向の一方にのみコイルを配置することもできる。この場合であっても、コイルの通電により発生する磁界を永久磁石に導く磁路形成部を備える構成等により、スプールを移動させる力を確保することができる。
【0083】
上記第各実施形態では、スプールの中心軸を含みヨークの垂直部に垂直な平面、すなわちヨークの対向部に平行な平面に沿って供給通路および排出通路を形成したが、対向する永久磁石の間であればこの平面に対して傾斜する平面に沿って供給通路および排出通路を形成してもよい。また、供給通路および排出通路を必ずしも特定の平面に沿って形成しなくてもよい。
【0084】
上記各実施形態では、1つの供給通路から複数の供給通路に分岐する流体通路を採用したが、それぞれ独立した複数の供給通路からなる流体通路を採用することもできる。その場合には、第2の実施形態と同様に、対向する永久磁石およびコイルを挟む対向部と、スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなる磁路形成部を備えることにより、対向する永久磁石の間において各供給通路を直線状に形成して磁路の形成されていない方向であるスプールの軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通させることができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0085】
上記各実施形態では、供給通路11側からスプール20を通過して排出通路13,15側へ流体を流通させる流体制御弁、あるいは供給通路111側からスプール20を通過して排出通路13,15側へ流体を流通させる流体制御弁等として本発明を具現化したが、同一の構成において、排出通路13,15側からスプール20を通過して供給通路11側へ流体を流通させる流体制御弁、あるいは排出通路13,15側からスプール20を通過してそれぞれ供給通路111側へ流体を流通させる流体制御弁等として本発明を具現化することもできる。
【0086】
上記各実施形態では、スリーブ部材10,110,210を強磁性体ではない合成樹脂により形成したが、アルミニウム等の強磁性体ではない金属により形成することもできる。
【0087】
上記各実施形態では、スプール20の中間部20cを強磁性体で形成し、端部20a,20bをアルミニウムで形成している、あるいはスプール220の中間部220cを強磁性体で形成し、端部220a,220bをアルミニウムで形成しているため、異なる材質からなる中間部と端部とを接合する必要がある。これに対して、強磁性体ではない鉄系の材質によりスプールの中間部と端部とを一体に成形し、中間部のみを焼きなますことにより、中間部を強磁性体にするとともに端部を強磁性体ではない材質にすることもできる。このような構成によれば、中間部と端部とが一体で形成されているため、強度を高くすることができるとともに、接合工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図2】図1の流体制御弁の構成を示す正面図。
【図3】図1の流体制御弁の構成を示す側面図。
【図4】図1の4−4線断面図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図4の流体制御弁の動作を示す断面図。
【図7】図1の流体制御弁の動作を示す断面図。
【図8】第2の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】第3の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【図12】第4の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図13】図12の13−13線断面図。
【図14】従来の流体制御弁の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0089】
10…スリーブ部材、20…スプール、20c…強磁性体部分としての中間部、23a,23b…付勢手段としてのスプリング、40a,40b…コイル、50a,50b…永久磁石。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通を制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流体制御弁として、スリーブ内に収容されたスプールを摺動させることにより流体通路の流路面積を調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。図14に示すように、特許文献1に記載の流体制御弁900は、外部と連通する複数の流体通路が形成された円筒状のスリーブ931内に、軸線方向の位置によって径の異なるスプール932を摺動可能に収容している。スプール932の軸線方向の一端側に、スプール932を駆動するリニアソレノイド機構911を設けるとともに、スプール932の軸線方向の他端側にスプリング収容室943を設けてリターンスプリング944を収容している。リターンスプリング944は、スプール932をリニアソレノイド機構911側に付勢している。そして、リニアソレノイド機構911によってリターンスプリング944の付勢力に抗してスプール932を移動させて、スプール932の位置を調整することにより流体の流通を制御している。
【特許文献1】特開平10−122412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の流体制御弁900では、スプール932の軸線方向にリニアソレノイド機構911が設けられているため、スプール932の軸線方向における流体制御弁900の長さが長くなることが避けられない。
【0004】
また、エアシリンダや電動シリンダ等の他の駆動機構を備える流体制御弁においても、スプールの軸線方向にこれらの駆動機構が設けられるため、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さが長くなることは避けられない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることのできる流体制御弁を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明は、外部と連通する複数の流体通路が形成されたスリーブ部材と、前記スリーブ部材内に摺動可能に収容された柱状のスプールと、前記スプールを摺動方向に付勢する付勢手段とを備え、前記付勢手段による付勢力に抗して前記スプールをその軸線方向に摺動させることにより前記流体通路の流路面積をそれぞれ調整する流体制御弁において、前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成された永久磁石と、前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルとを備えることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成する永久磁石とを備えるため、この軸線方向に延びる強磁性体部分は永久磁石から磁力を受ける。また、永久磁石は、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成されているため、スプールの軸線方向において永久磁石の範囲内に強磁性体部分が位置する。
【0008】
ここで、前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルを備えるため、対向する永久磁石を貫く磁界をコイルの通電により発生させることよって、軸線方向に並んだ反対向きの磁界の一方が弱められるとともに他方が強められる。このため、スプールの軸線方向において磁界の弱められた側から強められた側へ強磁性体部分を移動させるように磁力が作用し、付勢手段の付勢力に抗してスプールを移動させることができる。その結果、強磁性体部分の形成されたスプールをその軸線方向に直交する方向に配置されたコイルの通電により移動させるため、コイルやシリンダ等の駆動機構をスプールの軸線方向に設ける必要がなく、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることができる。なお、流体通路の流路面積を調整する態様としては、流体通路の流路面積を連続的に大きく又は小さくする、流体通路の状態を全開と全閉とで切り換える等を含むものとする。
【0009】
永久磁石は、スプールの軸線方向において強磁性体部分よりも長く形成されているため、スプールの軸線方向において永久磁石の範囲内に強磁性体部分が位置する。そして、コイルの通電によって、強磁性体部分はスプールの軸線方向において永久磁石の長さの範囲で移動する。
【0010】
ここで、第2の発明は、第1の発明において、前記コイルに通電されていない状態において、前記軸線方向の一方において前記強磁性体部分の端面から前記永久磁石の端面までの長さが、前記流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするために前記スプールを摺動させる長さに等しく設定されているため、コイルの通電によってスプールの軸線方向において永久磁石の長さの範囲で強磁性体部分を移動させることにより、流体通路の少なくとも1つを容易に全開または全閉まで調整することができる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有することを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備えるため、スプールの軸線方向における流体制御弁の長さを延長することなく、スプールを移動させる力を大きくすることができる。
【0013】
ここで、スプールを挟んで連結部と反対側には磁路が形成されていない。そして、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有するため、スプールと連結部との間の部分、及び連結部と反対側の磁路が形成されていない部分に流体通路を形成することができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体通路を効率的に配置することができる。
【0014】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備えるため、スプールの軸線方向に磁路が形成されるものの、スプールの駆動機構を設ける場合と比較してその長さを短くすることができる。そして、前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有するため、磁路の形成されていない方向であるスプールの軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を形成することができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか発明において、前記対向して配置された永久磁石は、前記スプールの軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石からなるため、一対の永久磁石のみによって磁界を形成することができる。その結果、永久磁石の数を少なくすることができるため、流量制御弁の製造コストを低減することができる。
【0017】
スプールにおいて強磁性体部分とその他の部分とが異なる材質で形成される場合には、これらの部分を接合する必要があり、その接合部分の強度が低下するおそれがある。
【0018】
この点、第6の発明は、第1〜第5のいずれか発明において、前記スプールにおいて前記強磁性体部分を除く部分は強磁性体ではない鉄系の材質で形成されており、前記強磁性体部分は前記鉄系の材質を焼きなますことにより生成される強磁性体で形成されているため、スプールを強磁性体ではない鉄系の材質で一体に成形し、強磁性体にする部分のみを焼きなますことにより、強磁性体部分とその他の強磁性体ではない部分とを形成することができる。その結果、スプールの強度を高くすることができるとともに、接合工程を省略することができる。
【0019】
スプールはスリーブ部材内に収容されているため、スリーブ部材を透過させてスプールの強磁性体部分に磁界を作用させる必要がある。このため、スリーブ部材が強磁性体で形成されている場合には、スプールの強磁性体部分に磁界を作用させることが困難となる。
【0020】
この点、第7の発明は、第1〜第6のいずれか発明において、前記スリーブ部材は強磁性体ではない合成樹脂により形成されているため、スリーブ部材を透過させてスプールの強磁性体部分に磁界を作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図である。
【0022】
図1に示すように、流体制御弁は断面が矩形状に形成されたスリーブ部材10を備えている。スリーブ部材10の短手方向の中央付近には、長手方向に延びるようにシリンダ16が形成されている。シリンダ16は、スリーブ部材10を貫通するように形成されるとともに、その開口部がOリング25a,25b及びキャップ26a,26bによってシールされている。スリーブ部材10は、強磁性体以外の材質で形成されており、例えば強磁性体ではない合成樹脂により形成されている。
【0023】
シリンダ16には、円柱状のスプール20がシリンダ16の軸線に沿って摺動可能に収容されている。シリンダ16の軸線とスプール20の軸線とは一致している。シリンダ16の軸線方向において、スプール20はシリンダ16よりも短く形成されており、シリンダ16においてスプール20の両端よりも延長している部分は、それぞれスプリング23a,23bの収容室16a,16bとなっている。スプール20の軸線方向の端面にはそれぞれ凹部22a,22bが形成されている。そして、スプリング23a,23bのスプール20に当接する端部が凹部22a,22bにそれぞれ嵌合している。これらのスプリング23a,23bによってスプール20が軸線方向においてそれぞれ反対向きに等しい力で付勢されており、それらの付勢力の釣合う位置がスプール20の中立位置となっている。なお、スプリング23a,23bは、スプールを摺動方向に付勢する付勢手段を構成する。
【0024】
シリンダ16の軸線方向の両端部付近にはそれぞれ摺動軸受け24a,24bが設けられており、スプール20を摺動可能に支持している。また、スプール20には、その中心軸に沿って貫通する貫通孔21が形成されている。そして、スプール20が摺動する際に、収容室16a,16bのうち圧力の高い一方から低い一方へと収容室16a,16b内の流体が移動する。これにより、スプール20が摺動する際に、収容室16a,16b内の流体が圧力を受けることにより抵抗が増大することを抑制することができる。
【0025】
また、スリーブ部材10には、それぞれ外部と連通する供給通路11、第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。供給通路11は、スリーブ部材10においてスプール20の軸線方向に垂直な側面に開口するとともに、スプール20と後述するヨークの垂直部30cとの間を通って直線状に延びている。供給通路11と上記シリンダ16とに対してそれぞれ垂直に連通する第1供給通路12及び第2供給通路14が供給通路11の上流側から順に直線状に形成されている。第1供給通路12及び第2供給通路14のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。第1排出通路13及び第2排出通路15は、それぞれシリンダ16に対して垂直に連通している。すなわち、排出通路13,15は、スプール20に対してヨークの垂直部30cと反対側で連通するとともにスプール20を挟んで垂直部30cと反対側において外部に連通している。これらの供給通路12,14及び排出通路13,15は上記ヨークの垂直部30cに対して垂直に形成されている。第1供給通路12と第2供給通路14とはスプール20の軸線方向に並んで平行に形成されており、第1排出通路13と第2排出通路15とはスプール20の軸線方向に並んで平行に形成されている。このように、供給通路11、第1供給通路12、第2供給通路14、第1排出通路13及び第2排出通路15は、スプール20の中心軸を含みヨークの垂直部30cに垂直な平面に沿って形成されている。これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0026】
スプール20は、軸線方向の端に配置された端部20a,20bと、それらの端部20a,20bに挟まれて軸線方向の中間に配置された中間部20cとからなる。端部20a,20bは、強磁性体ではない材質で形成されており、具体的にはアルミニウムにより形成されている。中間部20cは、強磁性体で形成されており、具体的には鋼により形成されている。スプール20において端部20a,20bの外周面には、スプール20の軸線方向の幅が供給通路12,14の径に略等しい溝27,28がそれぞれ形成されている。これらの溝27,28は、スプール20が中立位置(図1の位置)にあるときに、それぞれ半分の幅が第1供給通路12,第2供給通路14にそれぞれ重なる位置に形成されている。そして、スプール20の軸線方向において、溝27,溝28が第1供給通路12,第2供給通路14にそれぞれ重なる幅が大きくなるほど流路面積が大きくなり、スプール20を通過して第1排出通路13,第2排出通路15にそれぞれ流通する流体の量が多くなる。したがって、スプール20の摺動方向(軸線方向)における位置を調整することにより、第1供給通路12から第1排出通路13に流通する流体の量および第2供給通路14から第2排出通路15に流通する流体の量を制御することができる。なお、供給通路12,14の一方が全開のときには他方は全閉となり、供給通路12,14の一方が半分の開度のときには他方も半分の開度となる。
【0027】
図2に排出通路13,15の開口側から流体制御弁を見た正面図を示すとともに、図3に供給通路11の開口側から流体制御弁を見た側面図を示す。
【0028】
図2,3に示すように、スリーブ部材10には、スプール20の軸線方向の両端部にその軸線方向に垂直な矩形板状の側壁部10a,10bが設けられている。また、ヨーク30には、垂直部30cを基端として垂直に張り出すように対向部30d,30eが設けられている。このように側壁部10aと側壁部10bとの間において、対向部30dと対向部30eとが垂直部30cによって連結されており、これらの対向部30d,30e及び垂直部30cからなるヨーク30によって磁路が形成されている。これらの対向部30d,30e及び垂直部30cは、スプール20の軸線方向に積層された鋼板によって一体に形成されている。
【0029】
対向部30dとシリンダ16(スプール20)との間には軸線方向が対向部30dに垂直なコイル40aが設けられており、対向部30eとシリンダ16(スプール20)との間には軸線方向が対向部30eに垂直なコイル40bが設けられている。したがって、対向部30dと対向部30eとによって、コイル40a、スプール20及びコイル40bが挟まれている。対向部30d及び対向部30eは、互いに平行に設けられるとともに、排出通路13,15の両中心軸を含む平面に対して平行になっている。また、これらの対向部30d,30e、コイル40a,40b、排出通路13,15は、コイル40a,40bの軸線方向において対称に形成されている。
【0030】
図4に図1の4−4線断面を示すとともに、図5に図2の5−5線断面を示す。
【0031】
図4,5に示すように、ヨーク30の対向部30d,30eの中央付近には、円柱状の凸部30a,30bがそれぞれ設けられている。凸部30a,30bは、シリンダ16の近傍まで延びており、その端面がシリンダ16の周面の形状に沿った円弧状となっている。凸部30a,30bは、対向部30d,30eにそれぞれ垂直に一体で形成されている。凸部30a,30bは、シリンダ16に対しても垂直に延びている。
【0032】
シリンダ16と凸部30aとの間には永久磁石50aが設けられており、シリンダ16と凸部30bとの間には永久磁石50bが設けられている。永久磁石50a,50bは、シリンダ16の周面の形状に沿った円弧状の断面でスプール20軸線方向に延びるように形成されており、凸部30a,30bの端面にそれぞれ固定されている。永久磁石50aと永久磁石50bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されている。そして、対向する一対の永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列されている。具体的には、永久磁石50aはスプール20の軸線方向に沿ってスプール20の端部20a側がS極で端部20b側がN極となるように配置されており、永久磁石50bはスプール20の軸線方向に沿ってスプール20の端部20a側がN極で端部20b側がS極となるように配置されている。永久磁石50a,50bは共に、スプール20の軸線方向においてN極部分とS極部分とが等しい長さで形成されている。こうして、矢印A及び矢印Bで示すように、永久磁石50aと永久磁石50bとの間にスプール20の軸線方向に並んだ反対向きの磁界が形成されている。
【0033】
上記ヨーク30の凸部30a,30bは上記コイル40a,40bのそれぞれの鉄心となっており、凸部30a,30bの周りに導線を巻くことによりコイル40a,40bが形成されている。これらのコイル40a,40bは、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されており、矢印Cで示すように、対向する永久磁石50a,50b及びスプール20の中間部20cを貫く磁界を通電により発生させる。また、これと反対向きに通電することにより、コイル40a,40bは矢印Cと反対向きの磁界を発生させる。
【0034】
ヨーク30は、対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部30d及び対向部30eを備えている。垂直部30cは、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eを一方側(供給通路11を挟んでシリンダ16と反対側)から連結している。すなわち、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eの他方側(シリンダ16を挟んで供給通路11と反対側)には、対向部30d,30eを連結する垂直部が設けられていない。このように形成されたヨーク30によって、矢印Cで示すように、コイル40a,40bの通電により発生する磁界が永久磁石50a,50bに導かれる。なお、ヨーク30の垂直部30cは、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿って対向部30d,30eを一方側から連結する連結部を構成し、ヨーク30は、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導く磁路形成部を構成する。
【0035】
スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bはスプール20の中間部20c(強磁性体部分)よりも長く形成されており、具体的には永久磁石50a,50bは中間部20cの2倍の長さに形成されている。したがって、スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bの中央部に中間部20cが位置する中立状態では、永久磁石50a,50bのN極およびS極に中間部20cが半分ずつ重なっている。コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向のスプリング23a側において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、上記第1供給通路12を全開にするとともに上記第2供給通路14を全閉にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されている。コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向のスプリング23b側において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、上記第1供給通路12を全閉にするとともに上記第2供給通路14を全開にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されている。そして、スプール20の軸線方向において、永久磁石50a,50bに中間部20cが重なっていない範囲が中間部20cの移動する範囲となる。すなわち、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で中間部20cは移動する。
【0036】
永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとの間には、シリンダ16の内壁を構成するスリーブ部材10の合成樹脂が存在している。すなわち、永久磁石50a,50b及びコイル40a,40bから発生する磁界はスリーブ部材10を透過してスプール20の中間部20cに作用する。このため、スリーブ部材10において永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとに挟まれる部分は、磁界を効率的に透過させるためにシリンダ16の剛性を確保することのできる最低限の厚みで形成されている。
【0037】
コイル40a,40bに通電されていない状態では矢印Cで示す磁界が発生しておらず、永久磁石50a,50bにより矢印A及び矢印Bで示す磁界が発生している。この状態において、アルミニウムにより形成された端部20a,20bは磁力の作用を受けない。鋼により形成された中間部20cは磁力の作用を受けるが、スプール20の軸線方向においてその磁力は釣合っている。また、スプール20を摺動方向に付勢する上記スプリング23a,23bの付勢力の作用により、コイル40a,40bに通電されていない中立状態では、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの中央に中間部20cが位置する。
【0038】
次に、このように構成された流体制御弁の動作について説明する。
【0039】
スプール20を軸線方向に移動させる場合には、コイル40a,40bに通電する方向およびその電流の大きさを制御する。例えば、コイル40a,40bに通電して、矢印Cで示すように永久磁石50bから永久磁石50aの方向へ貫く磁界を発生させると、矢印Aで示す永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は弱められ、矢印Bで示す永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう磁界は強められる。
【0040】
そして、例えば図6に示すように、永久磁石50aと永久磁石50bとの間において、永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は消滅し、矢印Dで示す永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう強い磁界が形成される。この磁界がスプール20の中間部20cに作用して、スプール20には軸線方向においてスプリング23a側へ移動させる力が作用する。
【0041】
その結果、図7に示すように、スプリング23aの付勢力に効してスプール20が供給通路11の開口する方向へ移動し、第1供給通路12および第1排出通路13の流路面積が大きくなるとともに、第2供給通路14および第2排出通路15の流路面積が小さくなる。ここで、コイル40a,40bの通電量を大きくするほど発生する磁界が強くなるため、永久磁石50aのN極から永久磁石50bのS極へ向かう磁界は弱くなるとともに、永久磁石50bのN極から永久磁石50aのS極へ向かう磁界が強くなる。したがって、コイル40a,40bの通電量を制御することにより、スプール20を移動させる磁力の大きさ、ひいてはスプール20の移動量を制御することができる。
【0042】
また、スプール20を軸線方向の反対側へ移動させる場合には、コイル40a,40bの通電方向を反対にするとともに、その通電量を制御することによりスプール20の移動量を制御することができる。このようにして、供給通路12,14の流路面積を調整して流体の流量を制御することができる。
【0043】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
スプール20の軸線方向に延びるようにスプール20に形成された中間部20c(強磁性体部分)と、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されて互いの間に軸線方向に並んだ反対向きの磁界(図4に矢印A及び矢印Bで示す磁界)を形成する永久磁石50a,50bとを備えるため、この軸線方向に延びる中間部20cは永久磁石50a,50bから磁力を受ける。また、永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成されているため、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの範囲内に中間部20cが位置する。
【0045】
ここで、永久磁石50a,50bに対してスプール20の軸線方向に直交する方向に配置されて対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界(図4に矢印Cで示す磁界)を通電により発生させるコイル40a,40bを備えるため、対向する永久磁石50a,50bを貫く磁界をコイル40a,40bの通電により発生させることよって、軸線方向に並んだ反対向きの磁界の一方が弱められるとともに他方が強められる。このため、スプール20の軸線方向において磁界の弱められた側から強められた側へ中間部20cを移動させるように磁力が作用し、スプリング23a,23bの付勢力に抗してスプール20を移動させることができる。その結果、中間部20cの形成されたスプール20をその軸線方向に直交する方向に配置されたコイル40a,40bの通電により移動させるため、コイルやシリンダ等の駆動機構をスプール20の軸線方向に設ける必要がなく、スプール20の軸線方向における流体制御弁の長さを短くすることができる。
【0046】
永久磁石50a,50bは、スプール20の軸線方向において中間部20cよりも長く形成されているため、スプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの範囲内に中間部20cが位置する。そして、コイル40a,40bの通電によって、中間部20cはスプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で移動する。
【0047】
ここで、コイル40a,40bに通電されていない状態において、スプール20の軸線方向の一方において中間部20cの端面から永久磁石50a,50bの端面までの長さが、流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするためにスプール20を摺動させる長さに等しく設定されているため、コイル40a,40bの通電によってスプール20の軸線方向において永久磁石50a,50bの長さの範囲で中間部20cを移動させることにより、流体通路の少なくとも1つを容易に全開または全閉まで調整することができる。
【0048】
対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部30d,30eと、スプール20の軸線方向に直交する面Tに沿ってそれらの対向部30d,30eを一方側から連結する垂直部30cとからなり、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導くヨーク30(磁路形成部)を備えるため、スプール20の軸線方向における流体制御弁の長さを延長することなく、スプール20を移動させる力を大きくすることができる。
【0049】
ここで、スプール20を挟んで垂直部30cと反対側には磁路が形成されていない。そして、スリーブ部材10に形成された複数の流体通路は、スプール20と垂直部30cとの間を通ってスプール20に連通する供給通路11,12,14と、スプール20に対して垂直部30cと反対側で連通するとともにスプール20を挟んで垂直部30cと反対側において外部に連通する排出通路13,15とを有するため、スプール20と垂直部30cとの間の部分、及び垂直部30cと反対側の磁路が形成されていない部分に流体通路を形成することができる。その結果、スプール20を移動させる力をヨーク30により大きくしつつ、流体通路を効率的に配置することができる。
【0050】
対向して配置された永久磁石は、スプール20の軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石50a,50bからなるため、一対の永久磁石50a,50bのみによって磁界を形成することができる。その結果、永久磁石の数を少なくすることができるため、流量制御弁の製造コストを低減することができる。
【0051】
スプール20はスリーブ部材10内に収容されているため、スリーブ部材10を透過させてスプール20の中間部20c(強磁性体部分)に磁界を作用させる必要がある。このため、スリーブ部材10が強磁性体で形成されている場合には、スプール20の中間部20cに磁界を作用させることが困難となる。
【0052】
この点、本実施形態によれば、スリーブ部材10は強磁性体ではない合成樹脂により形成されているため、スリーブ部材10を透過させてスプール20の中間部20cに磁界を作用させることができる。また、スリーブ部材10において永久磁石50a,50bとスプール20の中間部20cとに挟まれる部分は、磁界を効率的に透過させるためにシリンダ16の剛性を確保することのできる最低限の厚みで形成されている。このため、スプール20の中間部20cに作用する磁力を大きくすることができ、磁力の大きい永久磁石を採用したり、コイルの通電量を大きくしたりする必要がない。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、磁路を形成するヨークの構成およびスリーブ部材に形成される流体通路の構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図8は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図であり、図9は図8の9−9線断面図である。
【0055】
図8,9に示すように、スリーブ部材110には、対向する永久磁石50a,50bの間において同一の平面に沿って延びるように、供給通路111,第1供給通路112,第2供給通路114,第1排出通路13,第2排出通路15が形成されている。供給通路111は、スプール20の軸線方向と直交する方向において外部と連通している。供給通路112,114は、供給通路111にそれぞれ連通するとともにシリンダ16(スプール20)に対してそれぞれ垂直に連通している。供給通路112と排出通路13とは、スプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通し、供給通路114と排出通路15とは、スプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通している。すなわち、供給通路112と排出通路13とは、スプール20を挟んで互いに反対側でスプール20に連通し、供給通路114と排出通路15とは、スプール20を挟んで互いに反対側でスプール20に連通している。第1供給通路112及び第2供給通路114のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路13及び第2排出通路15が形成されている。排出通路13,15は、スプール20の軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通している。なお、これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0056】
ヨーク130は、スプール20の軸線方向の端部側を通って対向部130d,130eを連結するように形成されている。具体的には、ヨーク130は、永久磁石50a,50b及びコイル40a,40bを挟む対向部130d,130eを備えている。対向部130d,130eは、コイル40a,40bの軸線方向に垂直な矩形板状にそれぞれ形成されている。垂直部130c(連結部)は、スプール20の軸線方向の両端部側を通ってそれらの対向部130d,130eをそれぞれ連結している。これらの対向部130d,130eと垂直部130cとからなるヨーク130によって磁路が形成されている。これらの対向部130d,130e及び垂直部130cは、排出通路13,15が延びる方向に積層された鋼板によって一体に形成されている。このように形成されたヨーク130によって、矢印Cで示すように、コイル40a,40bの通電により発生する磁界が永久磁石50a,50bに導かれる。
【0057】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて以下の優れた効果が得られる。
【0058】
対向する永久磁石50a,50bおよびコイル40a,40bを挟む対向部130d,130eと、スプール20の軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部130d,130eを連結する垂直部130cとからなり、コイル40a,40bの通電により発生する磁界を永久磁石50a,50bに導くヨーク130を備えるため、スプール20の軸線方向にヨーク130の垂直部130cが設けられるものの、スプール20の駆動機構を設ける場合と比較してその長さを短くすることができる。そして、スリーブ部材110の複数の流体通路は、対向する永久磁石50a,50bの間においてスプール20の互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともにスプール20の軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する供給通路111及び排出通路13,15を有するため、磁路の形成されていない方向であるスプール20の軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を形成することができる。その結果、スプール20を移動させる力をヨーク130により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0059】
ヨーク130の垂直部130cは、スプール20の軸線方向の両端部側に形成されているため、垂直部130cが一方の端部側にのみ形成される場合と比較して効率的に磁界を導くことができる。その結果、スプール20を移動させる力をより大きくすることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第3の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、第1の実施形態に準じた部材については200を加えた符号を付すことにより説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、スリーブ部材に形成される流体通路の構成およびその通路の流路面積を調整するスプールの構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図10は流体制御弁の流体通路を含む平面で切断した断面図であり、図11は図10の11−11線断面図である。
【0062】
図10,11に示すように、スリーブ部材210には、それぞれ外部と連通する供給通路211、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218が形成されている。供給通路211は、スリーブ部材210においてスプール220の軸線方向に垂直な側面に開口するとともに、スプール220とヨーク230の垂直部230cとの間を通って直線状に延びている。そして、供給通路211と上記シリンダ216とに対してそれぞれ垂直に連通する第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217が供給通路211の上流側から順に直線状に形成されている。第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217のそれぞれの延長線上に直線状の第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218が形成されている。第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218は、それぞれシリンダ216に対して垂直に連通している。すなわち、排出通路213,215,218は、スプール220に対してヨーク230の垂直部230cと反対側で連通するとともにスプール220を挟んで垂直部230cと反対側において外部に連通している。
【0063】
これらの供給通路212,214,217及び排出通路213,215,218はヨーク230の垂直部230cに対して垂直に形成されている。第1供給通路212、第2供給通路214及び第3供給通路217はスプール220の軸線方向に並んで平行に形成されており、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218はスプール220の軸線方向に並んで平行に形成されている。このように、供給通路211、第1供給通路212、第2供給通路214、第3供給通路217、第1排出通路213、第2排出通路215及び第3排出通路218は、スプール220の中心軸を含みヨーク230の垂直部230cに垂直な平面に沿って形成されている。これらの通路はいずれも断面円形状に同一の径で形成されている。
【0064】
スプール220は、軸線方向の端に配置された端部220a,220bと、それらの端部220a,220bに挟まれて軸線方向の中間に配置された中間部220cとからなる。端部220a,220bは、強磁性体ではない材質で形成されており、具体的にはアルミニウムにより形成されている。中間部220cは、強磁性体で形成されており、具体的には鋼により形成されている。スプール220において、端部220aの外周面にはスプール220の軸線方向の幅が供給通路212の径に略等しい溝227が形成され、端部220bの外周面にはスプール220の軸線方向の幅が供給通路214,217の径に略等しい溝228,229がそれぞれ形成されている。第2供給通路214を閉じるためには、スプール220の軸線方向において中間部220cは供給通路214の径と等しい幅が必要になる。ここでは、スプール220の軸線方向において中間部220cの幅は供給通路214の径よりも大きく形成されており、具体的には供給通路214の径の略2倍に形成されている。スプール220が中立位置(図10,11の位置)にあるときに、第1供給通路212及び第3供給通路217は全閉となり,第2供給通路214は全開となる。そして、スプール220の軸線方向において、これらの溝227〜229が各供給通路に重なる幅が大きくなるほど流路面積が大きくなり、スプール220を通過して各排出通路に流通する流体の量が多くなる。したがって、スプール220の摺動方向(軸線方向)における位置を調整することにより、各通路を流通する流体の量を制御することができる。
【0065】
スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bはスプール220の中間部220c(強磁性体部分)よりも長く形成されており、具体的には永久磁石250a,250bは中間部220cの2倍の長さに形成されている。したがって、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bの中央部に中間部220cが位置する中立状態では、永久磁石250a,250bのN極およびS極に中間部220cが半分ずつ重なっている。さらに、スプール220の軸線方向において、永久磁石250aにおいてS極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにN極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なり、永久磁石25bbにおいてN極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにS極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なっている。コイル240a,240bに通電されていない状態において、スプール220の軸線方向のスプリング223a側において中間部220cの端面から永久磁石250a,250bの端面までの長さが、上記第1供給通路212を全開にするとともに上記第2供給通路214を全閉にするためにスプール220を摺動させる長さに等しく設定されている。コイル240a,240bに通電されていない状態において、スプール220の軸線方向のスプリング223b側において中間部220cの端面から永久磁石250a,250bの端面までの長さが、上記第2供給通路214を全閉にするとともに上記第3供給通路217を全開にするためにスプール220を摺動させる長さに等しく設定されている。
【0066】
そして、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bに中間部220cが重なっていない範囲が中間部220cの移動する範囲となる。すなわち、スプール220の軸線方向において永久磁石250a,250bの長さの範囲で中間部220cは移動する。スプール220を摺動方向に付勢するスプリング223a,223bの付勢力の作用により、コイル240a,240bに通電されていない中立状態では、スプール220の軸線方向において永久磁石250a,250bの中央に中間部220cが位置する。
【0067】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて以下の優れた効果が得られる。
【0068】
スプール220の軸線方向において、永久磁石250aにおいてS極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにN極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なり、永久磁石25bbにおいてN極の半分がスプール220の溝227と一致するように重なるとともにS極の半分がスプール220の溝228と一致するように重なっている。そして、スプール220の軸線方向において、永久磁石250a,250bの長さの範囲で中間部220cは移動するため、コイル240a,240bの通電によりスプール220を溝227,228の幅だけ移動させることができ、供給通路212,214,217をそれぞれ全閉から全開まで調整することができる。
【0069】
第2供給通路214を閉じるためには、スプール220の軸線方向において中間部220cは供給通路214の径と等しい幅が必要になる。本実施形態は、スプール220の軸線方向において中間部220cの幅は供給通路214の径よりも大きく形成されており、具体的には供給通路214の径の略2倍に形成されているため、中間部220cを貫く磁界をより広い範囲で受けることができる。その結果、スプール220を移動させる力をより大きくすることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁を具現化した第4の実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、永久磁石の構成が第1の実施形態から変更されている。なお、図12は流体制御弁の流体通路を含む平面に垂直な平面で切断した断面図であり、図13は図12の13−13線断面図である。
【0072】
図12,13に示すように、シリンダ16と凸部30aとの間には永久磁石351a,352aが設けられており、シリンダ16と凸部30bとの間には永久磁石351b,352bが設けられている。これらの永久磁石は、シリンダ16の周面の形状に沿った円弧状の断面でスプール20軸線方向に延びるように形成されており、同様に円弧状で軸線方向に延びるように形成された凸部30a,30bの端面にそれぞれ固定されている。永久磁石351aと永久磁石351bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置され、永久磁石352aと永久磁石352bとは、スプール20の軸線方向に直交する方向においてスプール20の中間部20cを挟んで対向して配置されている。永久磁石351aと永久磁石352aとは、スプール20の軸線方向に並んで配置され、永久磁石351bと永久磁石352bとは、スプール20の軸線方向に並んで配置されている。
【0073】
これらの永久磁石は、いずれもスプール20の軸線方向に直行する方向に磁極が配列されたラジアル異方性の永久磁石である。永久磁石351aと永久磁石352aとは、互いに磁極の配列が反対になっており、具体的には永久磁石351aはスプール20側がS極になり、永久磁石352aはスプール20側がN極になっている。永久磁石351bと永久磁石352bとは、互いに磁極の配列が反対になっており、具体的には永久磁石351bはスプール20側がN極になり、永久磁石352bはスプール20側がS極になっている。永久磁石351a,352aはスプール20の軸線方向の長さが等しく形成されており、永久磁石351b,352bはスプール20の軸線方向の長さが等しく形成されている。こうして、矢印Aで示すように永久磁石352aのN極から永久磁石352bのS極に向かう磁界が形成され、矢印Bで示すように永久磁石351bのN極から永久磁石351aのS極に向かう磁界が形成されている。すなわち、これらの永久磁石によって、スプール20の軸線方向に並んだ反対向きの磁界が形成されている。
【0074】
スプール20の軸線方向において、永久磁石351a,352aを合計した長さと、永久磁石351b,352bを合計した長さとは、スプール20の中間部20c(強磁性体部分)よりもそれぞれ長く形成されており、具体的には永久磁石351a,352a,351b,352bは共に中間部20と等しい長さに形成されている。したがって、スプール20の軸線方向において、永久磁石351a及び永久磁石352a(永久磁石351b及び永久磁石352b)の境界部に中間部20cが位置する中立状態では、永久磁石351a,352a,351b,352bに中間部20cがそれぞれ半分ずつ重なっている。そして、スプール20の軸線方向において、永久磁石351a,351bに中間部20cが重なっていない範囲および永久磁石352a,352bに中間部20cが重なっていない範囲が中間部20cの移動する範囲となる。すなわち、スプール20の軸線方向において永久磁石351a及び永久磁石352a(永久磁石351b及び永久磁石352b)の長さの範囲で中間部20cは摺動する。
【0075】
以上詳述した本実施形態の構成によっても、第1の実施形態に準じた効果が得られる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0077】
上記各実施形態では、円柱状のスプールを採用したが、四角柱状のスプール等、その他の断面形状を有する柱状のスプールを採用することもできる。
【0078】
上記各実施形態では、シリンダの軸線方向の両端部付近にそれぞれ摺動軸受けを設けたが、これらの摺動軸受けに代えてスプールの両端部の外周に摺動抵抗の小さい部材を一体的に設ける、あるいは摺動軸受けを省略することもできる。
【0079】
上記各実施形態では、流体通路の流路面積を調整する態様として、流体通路の流路面積を連続的に大きく又は小さくするようにしたが、流体通路の状態を全開と全閉とで切り換えるようにしてもよい。
【0080】
上記各実施形態では、スプール20の端部20a,20b及びスプール220の端部220a,220bについて、全体を強磁性体ではないアルミニウムにより形成したが、永久磁石およびコイルの発生する磁界の影響を無視することのできる位置にこれらが配置されていれば、スプールの端部に強磁性体の部分を含んでいてもよい。
【0081】
上記第2の実施形態では、ヨーク130の垂直部130cをスプール20の軸線方向の両端部側に形成したが、ヨーク130の垂直部130cをスプール20の軸線方向の一端部側にのみ形成することもできる。また、ヨーク130の垂直部130cを省略することもできる。このような構成によれば、スプール20を移動させる力は小さくなるものの、スプール20の軸線方向において流体制御弁の長さを短くすることができる。
【0082】
上記第各実施形態では、スプール及び非永久磁石を挟むようにコイルを対向して配置したが、永久磁石に対してスプールの軸線方向に直交する方向の一方にのみコイルを配置することもできる。この場合であっても、コイルの通電により発生する磁界を永久磁石に導く磁路形成部を備える構成等により、スプールを移動させる力を確保することができる。
【0083】
上記第各実施形態では、スプールの中心軸を含みヨークの垂直部に垂直な平面、すなわちヨークの対向部に平行な平面に沿って供給通路および排出通路を形成したが、対向する永久磁石の間であればこの平面に対して傾斜する平面に沿って供給通路および排出通路を形成してもよい。また、供給通路および排出通路を必ずしも特定の平面に沿って形成しなくてもよい。
【0084】
上記各実施形態では、1つの供給通路から複数の供給通路に分岐する流体通路を採用したが、それぞれ独立した複数の供給通路からなる流体通路を採用することもできる。その場合には、第2の実施形態と同様に、対向する永久磁石およびコイルを挟む対向部と、スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなる磁路形成部を備えることにより、対向する永久磁石の間において各供給通路を直線状に形成して磁路の形成されていない方向であるスプールの軸線方向に直行する方向において外部とそれぞれ連通させることができる。その結果、スプールを移動させる力を磁路形成部により大きくしつつ、流体の流動抵抗を減少させることができる。
【0085】
上記各実施形態では、供給通路11側からスプール20を通過して排出通路13,15側へ流体を流通させる流体制御弁、あるいは供給通路111側からスプール20を通過して排出通路13,15側へ流体を流通させる流体制御弁等として本発明を具現化したが、同一の構成において、排出通路13,15側からスプール20を通過して供給通路11側へ流体を流通させる流体制御弁、あるいは排出通路13,15側からスプール20を通過してそれぞれ供給通路111側へ流体を流通させる流体制御弁等として本発明を具現化することもできる。
【0086】
上記各実施形態では、スリーブ部材10,110,210を強磁性体ではない合成樹脂により形成したが、アルミニウム等の強磁性体ではない金属により形成することもできる。
【0087】
上記各実施形態では、スプール20の中間部20cを強磁性体で形成し、端部20a,20bをアルミニウムで形成している、あるいはスプール220の中間部220cを強磁性体で形成し、端部220a,220bをアルミニウムで形成しているため、異なる材質からなる中間部と端部とを接合する必要がある。これに対して、強磁性体ではない鉄系の材質によりスプールの中間部と端部とを一体に成形し、中間部のみを焼きなますことにより、中間部を強磁性体にするとともに端部を強磁性体ではない材質にすることもできる。このような構成によれば、中間部と端部とが一体で形成されているため、強度を高くすることができるとともに、接合工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図2】図1の流体制御弁の構成を示す正面図。
【図3】図1の流体制御弁の構成を示す側面図。
【図4】図1の4−4線断面図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図4の流体制御弁の動作を示す断面図。
【図7】図1の流体制御弁の動作を示す断面図。
【図8】第2の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】第3の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【図12】第4の実施形態に係る流体制御弁の構成を示す断面図。
【図13】図12の13−13線断面図。
【図14】従来の流体制御弁の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0089】
10…スリーブ部材、20…スプール、20c…強磁性体部分としての中間部、23a,23b…付勢手段としてのスプリング、40a,40b…コイル、50a,50b…永久磁石。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と連通する複数の流体通路が形成されたスリーブ部材と、前記スリーブ部材内に摺動可能に収容された柱状のスプールと、前記スプールを摺動方向に付勢する付勢手段とを備え、前記付勢手段による付勢力に抗して前記スプールをその軸線方向に摺動させることにより前記流体通路の流路面積をそれぞれ調整する流体制御弁において、
前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、
前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成された永久磁石と、
前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルと
を備えることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
前記コイルに通電されていない状態において、前記軸線方向の一方において前記強磁性体部分の端面から前記永久磁石の端面までの長さが、前記流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするために前記スプールを摺動させる長さに等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、
前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、
前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記対向して配置された永久磁石は、前記スプールの軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記スプールにおいて前記強磁性体部分を除く部分は強磁性体ではない鉄系の材質で形成されており、前記強磁性体部分は前記鉄系の材質を焼きなますことにより生成される強磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記スリーブ部材は強磁性体ではない合成樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項1】
外部と連通する複数の流体通路が形成されたスリーブ部材と、前記スリーブ部材内に摺動可能に収容された柱状のスプールと、前記スプールを摺動方向に付勢する付勢手段とを備え、前記付勢手段による付勢力に抗して前記スプールをその軸線方向に摺動させることにより前記流体通路の流路面積をそれぞれ調整する流体制御弁において、
前記スプールの軸線方向に延びるように前記スプールに形成された強磁性体部分と、
前記スプールの軸線方向に直交する方向において前記強磁性体部分を挟んで対向して配置されて互いの間に前記軸線方向に並んだ反対向きの磁界を形成するとともに、前記スプールの軸線方向において前記強磁性体部分よりも長く形成された永久磁石と、
前記永久磁石に対して前記スプールの軸線方向に直交する方向に配置されて前記対向する永久磁石を貫く磁界を通電により発生させるコイルと
を備えることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
前記コイルに通電されていない状態において、前記軸線方向の一方において前記強磁性体部分の端面から前記永久磁石の端面までの長さが、前記流体通路の少なくとも1つを全開または全閉にするために前記スプールを摺動させる長さに等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向に直交する面に沿ってそれらの対向部を一方側から連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、
前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記スプールと前記連結部との間を通って前記スプールに連通する流体通路と、前記スプールに対して前記連結部と反対側で連通するとともに前記スプールを挟んで前記連結部と反対側において外部に連通する流体通路とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記対向する永久磁石および前記コイルを挟む対向部と、前記スプールの軸線方向の端部側を通ってそれらの対向部を連結する連結部とからなり、前記コイルの通電により発生する磁界を前記永久磁石に導く磁路形成部を備え、
前記スリーブ部材の複数の流体通路は、前記対向する永久磁石の間において前記スプールの互いに反対となる両側面にそれぞれ連通するとともに前記スプールの軸線方向と直交する方向において外部とそれぞれ連通する流体通路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記対向して配置された永久磁石は、前記スプールの軸線方向に沿って互いに磁極が反対向きに配列された一対の永久磁石からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記スプールにおいて前記強磁性体部分を除く部分は強磁性体ではない鉄系の材質で形成されており、前記強磁性体部分は前記鉄系の材質を焼きなますことにより生成される強磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記スリーブ部材は強磁性体ではない合成樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−121661(P2010−121661A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293867(P2008−293867)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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