説明

流路デバイスの製造方法

【課題】結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成する流路デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明によると、第1の幅を有する第1領域と、第1の幅より広い第2の幅を有する第2領域と、一端が第1領域に接続し、他端が第2領域に接続する接続領域と、を含む流路を備えた流路デバイスの製造方法であって、一主面が{110}面であるシリコン基板を準備し、シリコン基板の一主面上に{110}面と{111}面の交線に沿った第1の端部と、交線に直交し<111>方向に延びる第2の端部と、を含むマスクパターンを形成し、マスクパターンを介して結晶異方性エッチングを行うことにより、シリコン基板の一主面に前記流路を形成すること、を含み、第2領域の両側にそれぞれ配置された第2の端部は、互いに第1領域との距離が異なるように形成されることを特徴とする流路デバイスの製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して様々な流路デバイスが作製されている。例えば、μ−TAS(Micro Total Analysis)等のマイクロチップは、数cm角の大きさのチップの内部にマイクロ流路と呼ばれるマイクロメートルオーダーの幅の流路を有し、マイクロ流路が合流したり、分岐したりする構造を有する。マイクロチップは、マイクロ流路に微量の溶液を流して、溶液の反応や分離、分析を行うシステムである。(特許文献1)また、このような微量の溶液の制御が可能な流路デバイスは、流体の噴射、例えば、インクジェット装置のヘッド部材等にも利用されている。(特許文献2参照)。上記の微細な流路を有する流路デバイスは、省液性、駆動時の省電力に対応しており、環境負荷の小さい技術であるとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−25685号公報
【特許文献2】特開2010−4608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流路デバイスは、典型的にはシリコン、ガラス、樹脂などの材料を用い、例えば、シリコン基板にフォトリソグラフィによってマスクパターンを形成し、このマスクパターンを介してエッチングを施すことで、流路を形成して作製することができる。流路形成は、ウェットエッチングやドライエッチングにより行うことが常法であり、安価に作製するためにウェットエッチングを用いることがある。
【0005】
ウェットエッチングには、シリコンの結晶性に関係なく等方的にエッチングが進行する等方性エッチングと、シリコンの結晶性によりエッチングレートが異なることを利用した結晶異方性エッチングがある。等方性エッチングでは設計寸法通りに流路を形成することが難しいため、結晶異方性エッチングにより流路を形成することがある。しかしながら、結晶異方性エッチングでは、流路のパターンによっては設計通りに加工することが困難である場合がある。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成する流路デバイスの製造方法を提供することを目的とする。また、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成するための流路デバイスの製造に用いるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、第1の幅を有する第1領域と、前記第1の幅より広い第2の幅を有する第2領域と、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する接続領域と、を含む流路を備えた流路デバイスの製造方法であって、一主面が{110}面であるシリコン基板を準備し、前記シリコン基板の前記一主面上に{110}面と{111}面の交線に沿った第1の端部と、前記交線に直交し<111>方向に延びる第2の端部と、を含むマスクパターンを形成し、前記マスクパターンを介して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記シリコン基板の一主面に前記流路を形成すること、を含み、前記第2領域の両側にそれぞれ配置された前記第2の端部は、互いに前記第1領域との距離が異なるように形成されることを特徴とする流路デバイスの製造方法が提供される。
【0007】
本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法は、一主面が{110}面であるシリコン基板において、第2領域の両側にそれぞれ配置する第2の端部を、互いに第1領域との距離が異なるように形成するため、結晶異方性エッチングにより、流路の接続領域の左右の形状が概略同形状となり、安定的に流路を形成することができる。
【0008】
前記マスクパターンの形成に先立ち、前記一主面が{110}面であるシリコン基板に前記<111>方向の辺と前記<111>方向に直交する方向の辺とを有する矩形形状又は矩形形状の開口を有する補正用マスクパターンを形成し、前記補正用マスクパターンを介して結晶異方性エッチングを行い、当該結晶異方性エッチングのエッチングレートの違いにより生じる高速領域及び低速領域であって、前記高速領域に対して、エッチングされた前記<111>方向の辺の第1の距離、およびエッチングされた前記<111>方向に直交する方向の辺の第2の距離と、前記低速領域に対して、エッチングされた前記<111>方向の辺の第3の距離、およびエッチングされた前記<111>方向に直交する方向の辺の第4の距離と、を求め、第1〜第4の距離から前記第2の端部の位置を決定してもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法は、予め矩形形状のマスクパターンを用いて、一主面に対して左右のエッチングレートを求めることにより、結晶異方性エッチングを施したときに、流路の接続領域の左右の形状が概略同形状となり、安定的に流路を形成することができる。
【0010】
前記流路デバイスの製造方法において、前記第1の距離をA、前記第2の距離をB、前記第3の距離をC、前記第4の距離をDとし、前記高速領域の前記第1の距離に対応する側の前記第2の端部の幅を第3の幅Xとしたとき、式(1)を満たす前記第1の距離に対する第3の幅の倍率dを求め、
d=X/A・・・(1)
かつ式(2)を満たす前記第2の距離と前記倍率の積と、前記第4の距離と前記倍率の積との差αを求め、
α=d(B−D)・・・(2)
前記第2領域の両側にそれぞれ配置された前記第2の端部の前記第1領域に対する距離の差がαに相当するように構成してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法は、予め求めたエッチングレートを用いて、一主面が{110}面であるシリコン基板において、第2領域の両側にそれぞれ配置する第2の端部を、互いに第1領域との距離が異なるように形成するため、結晶異方性エッチングにより、流路の接続領域の左右の形状が概略同形状となり、安定的に流路を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成する流路デバイスの製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の流路デバイスの構成を説明する模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法を説明する平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法を説明する平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法を説明する平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法を説明する平面図である。
【図6】従来の製造工程の問題点を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る流路デバイスの製造方法について説明する。但し、本発明の流路デバイスの製造方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本発明の理解を容易するため、本発明の流路デバイスの構成を説明した後、従来の製造工程の問題点について説明を行うこととする。
【0016】
流路デバイスの構成
図1は、本発明の実施形態に係る流路デバイスの構成を説明する図であり、図1(a)は流路デバイスの典型的な断面図であり、図1(b)は、流路デバイス100の一部の平面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、流路デバイス100は、シリコン基板1に結晶異方性エッチングによって流路3が形成されて構成される。シリコン基板1は、一主面(基板の上面)が面方位{110}の面を有する基板である。シリコン基板の厚さに制限はなく適宜設定できるが、例えば、100μm〜1mmの範囲としてもよい。流路3は、流体を流す通路であり、通常、流体の流れ方向に沿って配設されている。流体は、図1(b)の上方向から下方向、或いはその逆に流れる。流路3の深さに制限はなく適宜設定できるが、例えば、10μm〜300μmの範囲としてもよい。流路デバイス100には、図示していないパターンの流路を備えていてもよい。なお、流路デバイスは、シリコン基板のみから構成されるものに限定されず、MEMS製造で常用される基板を適宜積層した構造であってもよい。なお、本明細書において、面方位を{110}のように表しているが、これは(110)に代表され、結晶構造の対称性により(110)と等価となる面方位を含むものとする。
【0018】
図1(b)に示すように、流路3は、第1領域11、第2領域12、及び接続領域13を含む。第1領域11は、流路3の中で幅の狭い第1の幅を有する領域であり、両側の側壁が実質的に面方位{111}の面により構成されている。第1領域11の幅を拡張するように、第1領域11に接続領域13の一端が接続されている。接続領域13の他端に第2領域12が接続されている。第2領域12は、第1領域よりも幅が広く設定された第2の幅を有する領域であり、両側の側壁が実質的に面方位{111}の面により構成されている。第2領域12は、第1領域11の両側にそれぞれ所定値(図のX、X)分だけ平行に拡充された側壁を有する。XとXは同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。したがって、第1領域11、第2領域12、及び接続領域13は、連続して流体が通過可能な領域として存在する。
【0019】
従来の問題点
図6は、従来の製造工程の問題点を説明する模式図であり、図6(a)は、流路を形成するための従来のマスクパターンについて説明する図であり、図6(b)は、図6(a)のマスクパターン590(図の斜線部)を介して結晶異方性エッチングの結果得られた流路デバイス500の加工形状について説明する図である。
【0020】
マスクパターン590は、上記の第1領域、第2領域、及び接続領域を含む流路を形成するためのエッチングマスクである。マスクパターン590は、シリコン基板の一主面上に{110}面と{111}面の交線に沿った端部(第1端部591)と、当該交線に直交し<111>方向に延びる端部(第2端部592(592a及び592b))と、を含む。マスクパターン590を介して、TMAH(4メチル水酸化アンモニウム)水溶液、KOH(水酸化カリウム)水溶液などによる結晶異方性エッチングによりシリコン基板を加工する。
【0021】
マスクパターン590を用いた結晶異方性エッチング後のシリコン基板の一例を図6(b)に示す。結晶異方性エッチングでは、第1端部591は、{110}面と{111}面の交線に沿っているため、エッチングが進行して{111}面でエッチングが略停止する。一方、第2端部592から進行したエッチングは、一主面に対して、左右の<111>方向に互いにエッチングの進行具合が異なる。図5では、左を第2端部592a、右を第2端部592bとしている。第2端部592aから進行するエッチングレートが、第2端部592bから進行するエッチングレートよりも高い場合、図6(b)のような加工形状となる。
【0022】
説明のために図6(b)では、第2端部592b側に破線で設計パターンを図示している。当初、第1領域521と接続領域523の接続部が両側壁側においても揃うように設計しているにも関わらず、加工後においては、それらが左右非対称の不揃いになっていることが分かる(図6(b)では不揃いを強調するために一点鎖線を付加している)。また、第2領域522と接続領域523の接続部についても同様に不揃いになっていることが分かる。このように、第1領域及521及び/又は第2領域522と、接続領域523の接続部分が両側で左右非対称となると、期待する流路特性が得られない場合がある。以上に説明した加工不具合を解消するために、本発明は完成された。
【0023】
流路デバイスの製造方法
本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法は、結晶異方性エッチングのエッチングレートの違いを考慮してマスクパターンを補正する工程を含むことを特徴とする。マスクパターンを補正する工程について説明を行う。図2〜図5は、本発明の一実施形態に係る流路デバイスの製造方法を説明する平面図であり、適宜これら図面を参照することとする。
【0024】
(1)解析モデルの設定
図2に示すように、シリコン基板の上面が{110}面である矩形の凸条30をモデルとして設定する。凸条30の長辺は{110}面と{111}面の交線(<111>方向に直交する方向)に沿い、凸条30の短辺は<111>方向に沿っている。凸条30の上面には図示しないが補正用マスクパターンが形成されている。なお、解析モデルは上記に限らず、矩形の開口を有する補正用マスクパターンが基板に形成されたものをモデルに定めてもよい。また、結晶方向を<111>のように表しているが、これは[111]に代表され、結晶構造の対称性により[111]と等価となる方向を含むものとする。
【0025】
(2)解析モデルに対する結晶異方性エッチング結果の解析
図2(a)に示す凸条30に対して、結晶異方性エッチングを所定時間行った結果を図2(b)に示す。図2(b)の左右から進行するエッチングは、実際にはそれぞれにエッチングレートの差がある。例えば、図の右側から進行するエッチングレートが図の左側から進行するエッチングレートよりも高い場合に図示のような加工形状となる。なお、図の斜線部で示す図形(図形40a、40b)は、結晶異方性エッチングにより除去された凸条30の一部を表す。図形40aは、高速領域に相当し、図形40bは低速領域に相当する。図2(b)を結晶異方性エッチング後のモデルとして設定する。結晶異方性エッチング後のモデルは、実際に結晶異方性エッチングを施した結果を観察して求めてもよいし、シミュレーションにより求めてもよい。
【0026】
図形40aはエッチングレートが速い高速領域の底辺A、高さBの直角三角形であり、図形40bはエッチングレートが遅い低速領域の底辺C、高さDの直角三角形である。直角三角形の斜辺を含む面は、エッチングを停止した時に露出する面である。なお、A、B、C、Dの各値は、基板、エッチングの条件等によって異なるものである。各加工時に予め、各条件下において、A〜Dの値を取得することが好ましい。図形40a、40bはそれぞれ、前述した第2端部592a、592bに対して結晶異方性エッチングを施して除去される部位と相似関係にある。
【0027】
(3)補正前マスクパターンの表示
流路デバイスを形成するためのマスクパターンであって、結晶異方性エッチングのエッチングレートの差を考慮する前のマスクパターン50を図3(a)の斜線部として示す。第2領域が第1領域よりも両側に拡充されている、第2端部52a、52bの値をそれぞれX、Xとする。説明の便宜上、XとXは同じ値で図示しているが、異なる値であってもよい。なお、第1端部51と第2端部52aを含む線、第1端部51と第2端部52bを含む線により囲まれた領域は、シリコン基板がエッチングマスクに覆われず露出した領域を表している。
【0028】
(4)図形の配置
図形40a、40bを所定の倍率(d)で拡大又は縮小し、各々の相似図形である図形41a、41bを作製する。dは凸条30から求めたA〜Dの値を、形成する流路3の寸法に適用するための、エッチングレートの速い高速領域側の第2端部52aに対するAの比であって、式(1)を満たすものである。
d=X/A ・・・(1)
【0029】
各直角三角形の直交する2辺を補正前のマスクパターンの対応する第1端部、第2端部に合わせて配置する。図形41aの第1領域側にある頂点と図形41bの第1領域側にある頂点との差をαとすると、αは式(2)を満たすものである。
α=d(B−D) ・・・(2)
【0030】
(5)マスクパターンの補正
図4(a)に示すように、第2端部52bを求めたαの値だけ、第1領域側にシフトさせる。シフトした後の関係において、第2端部62aと第2端部62bは、互いに第1領域との距離が異なるように形成される。本発明においては、エッチングレートの速い高速領域側を基準として、エッチングレートの遅い低速領域側の第2端部62bの位置を決定する。以上のように補正されたマスクパターン60を用いて結晶異方性エッチングを行うとよい。
【0031】
(6)流路デバイスの作製
一主面が{110}面であるシリコン基板を準備する。例えば、このシリコン基板に熱酸化を行い、シリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜をフォトリソグラフィによりパターニングする。例えば、フォトマスクを用いて当該フォトリソグラフィを実行する場合は、上記補正方法に基づいてフォトマスクのパターン補正されていることになる。また、例えば、直描により当該フォトリソグラフィを実施する場合は、上記補正方法に基づいてマスクパターン形成のための描画データが作成されていることになる。したがって、シリコン酸化膜のフォトリソグラフィに先立ち、フォトマスクのマスクデータの補正や、直描における描画データの補正がなされることになる。フォトマスクにおけるマスクデータの補正、直描における描画データの補正は、ソフトウェアなどを用いた従来公知の方法により行うことが可能である。
【0032】
パターニングされたシリコン酸化膜は、上記のマスクパターン60を含むように構成される。マスクパターン60を介してTMAH水溶液を用いた結晶異方性エッチングを行う。図5は、図4(a)のマスクパターン60(斜線部)と、図4(b)のエッチングにより形成された流路3とを重ねあわせた図である。図5において、エッチングにより形成された流路3は破線で示す。マスクパターン60を介した結晶異方性エッチングにより、第1領域11、一端が第1領域11に接続され第1領域11の幅を両側に拡張する接続領域13と、接続領域13の他端に接続された第2領域12を含む流路3を備えた流路デバイスが作製される。以上、マスクパターンを補正することにより、第1領域11及び/又は第2領域12と、接続領域13の接続部分が両側で揃うように、流路を形成することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態において、マスクパターン60を設計するために用いた2つの直角三角形において、A:BとC:Dの比は概略等しいが、完全には一致しない。したがって、マスクパターン60を用いて形成された接続領域13は概略対称な形状であって、完全な対称性を有するものではない。
【0034】
以上説明したように、本発明によると、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成する流路デバイスの製造方法を提供することできる。また、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成するための流路デバイスの製造に用いるマスクを提供することできる。本発明により製造される流路は、結晶異方性エッチングにより安定的に流路を形成されるため、微量の溶液の制御が可能な流路デバイスを提供することができ、省液性に優れた装置の実現を期待できる。
【符号の説明】
【0035】
1:基板、3:流路、11:第1領域、12:第2領域、13:接続領域、30:凸条、40a:図形、40b:図形、50:マスクパターン、51:第1端部、52a:第2端部、52b:第2端部、60:マスクパターン、61:第1端部、62a:第2端部、62b:第2端部、100:流路デバイス、91:第1端部、92:第2端部、92a:第2端部、92b:第2端部、マスクパターン590

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の幅を有する第1領域と、前記第1の幅より広い第2の幅を有する第2領域と、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する接続領域と、を含む流路を備えた流路デバイスの製造方法であって、
一主面が{110}面であるシリコン基板を準備し、
前記シリコン基板の前記一主面上に{110}面と{111}面の交線に沿った第1の端部と、前記交線に直交し<111>方向に延びる第2の端部と、を含むマスクパターンを形成し、
前記マスクパターンを介して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記シリコン基板の一主面に前記流路を形成すること、を含み、
前記第2領域の両側にそれぞれ配置された前記第2の端部は、互いに前記第1領域との距離が異なるように形成されることを特徴とする流路デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記マスクパターンの形成に先立ち、前記一主面が{110}面であるシリコン基板に前記<111>方向の辺と前記<111>方向に直交する方向の辺とを有する矩形形状又は矩形形状の開口を有する補正用マスクパターンを形成し、
前記補正用マスクパターンを介して結晶異方性エッチングを行い、
当該結晶異方性エッチングのエッチングレートの違いにより生じる高速領域及び低速領域であって、前記高速領域に対して、エッチングされた前記<111>方向の辺の第1の距離、およびエッチングされた前記<111>方向に直交する方向の辺の第2の距離と、前記低速領域に対して、エッチングされた前記<111>方向の辺の第3の距離、およびエッチングされた前記<111>方向に直交する方向の辺の第4の距離と、を求め、
第1、第2、第3及び第4の距離から前記第2の端部の位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の流路デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1の距離をA、前記第2の距離をB、前記第3の距離をC、前記第4の距離をDとし、
前記高速領域の前記第1の距離に対応する側の前記第2の端部の幅を第3の幅Xとしたとき、式(1)を満たす前記第1の距離に対する第3の幅の倍率dを求め、
d=X/A・・・(1)
かつ式(2)を満たす前記第2の距離と前記倍率の積と、前記第4の距離と前記倍率の積との差αを求め、
α=d(B−D)・・・(2)
前記第2領域の両側にそれぞれ配置された前記第2の端部の前記第1領域に対する距離の差がαに相当するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の流路デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99802(P2013−99802A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243663(P2011−243663)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】