説明

流路開閉用の水門駆動装置

【課題】 この流路開閉用の水門駆動装置は,緊急時等に水門の自重降下させた場合に水門が流路の底面に到達した時及び水門の停止状態で動力伝達装置に発生するモータの慣性エネルギーをオイルダンバで吸収し,動力伝達装置の減速機等に負荷されるて損傷することを防止する。
【解決手段】 この流路開閉用の水門駆動装置は,ウォームギヤ35が減速機5のケース39に固定されたウォームホイール37とそれに噛み合うウォーム36を設けたウォーム軸38とを有する。ウォーム軸38の一端はケーシング12に回転自在に支持された手動ハンドル7のハンドルボス23に連結され,また,ウォーム軸38の他端はケーシング12に回転自在に支持されたオイルダンバ17に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,水路,浄水場等の流路を開閉する扉体,ゲート,バルブ等の水門を上下往復移動させ,流路の水の流れを調整する流路開閉用の水門駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,流路開閉用の水門駆動装置は,例えば,図5に示すように,水路,浄水場等の流路に建造された土台等のベース26にスタンド15を設置し,スタンド15で支持された水門支持手段を構成するピンラック10に流路を開閉するゲート,扉体,バルブ等の水門20を取り付け,ピンラック10に長手方向に沿って設けたラックピン16に噛み合うピニオン9をモータ又は手動ハンドルで回転駆動し,水門20を流路に対して上下方向に往復移動させて流路を開閉するものである。上記流路開閉用の水門駆動装置は,一般に,水門20が取り付けられたピンラック10,ラックピン16に噛み合うピニオン9を設けたピニオン軸11,ピニオン軸11に回転を伝達する出力軸を備えた動力伝達装置,動力伝達装置における伝動軸に回転を与えるサーボモータ等のモータ,及び出力軸に回転を与える手動ハンドルを備えている。また,動力伝達装置には,水門20を保持するブレーキ,モータの回転を断接するクラッチ,及び水門20を自重で降下させるための自重降下レバーが設けられている。
【0003】
従来,流路を流れる水等の流体の流れを制御するゲートを駆動するクラッチ等を組み込んだ弁駆動用アクチュエータが知られている。該弁駆動用アクチュエータは,回転軸に固定され且つ端面にドグ歯を備えた筒体,及び前記回転軸上を摺動可能であり且つ端面に前記筒体の前記ドグ歯に噛み合うドグ歯を備えたスリーブから成る動力伝達装置における噛み合いクラッチにおいて,一方のドグ歯は低い歯たけと高い歯たけに交互に形成され,他方のドグ歯の間の歯溝は前記低い歯たけのドグ歯と前記高い歯たけの前記ドグ歯とが噛み合う幅を有し,前記他方のドグ歯は前記低い歯たけのドグ歯と前記高い歯たけのドグ歯の間の歯溝に噛み合って動力を伝達するものである。また,動力伝達装置において,手動ハンドルと手動切換レバーの操作がスピンドルを回転駆動する回転軸に駆動連結され,回転軸及び操作軸が互いに並列に配置されている。上記回転軸は,ウォームが設けられた回転軸とスリーブが摺動可能にスプラインが嵌合した回転軸から構成されている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,手動ハンドルで回転される回転軸が軸受によって取付本体に回転可能に支持された弁駆動用アクチュエータ装置が知られている。該弁駆動用アクチュエータ装置は,回転軸と操作軸が互いに並列に配置されており,手動ハンドルと手動切換レバーの操作がスピンドルを回転駆動する回転軸に駆動連結されている。回転軸は,ウォームを設けた回転軸と,スリーブを摺動可能に嵌合したスプラインを備えた回転軸とから構成されている。ウォームは,トルクスプリングによりスラスト方向に支持されている。スピンドルにかかるトルクがウォームホイールに伝達され,ウォームホイールにトルクがかかると,ウォームはトルクスプリングのばね力に抗してスラスト方向に押され,トルクスプリングを撓ませつつ移動するものである。ウォームホイールにかかるトルクの大小に比例してウォームが回転軸の軸方向に移動するものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,従来のバルブアクチュエータは,ウォームホィール,スリーブ及びステムブッシュが駆動装置から伝達装置を通じて回転されるウォームによって一体構造で回転される構造に構成されている。伝達装置は,雌ねじを回転させてスピンドルを上下移動させるため,ステムブッシュに固定されたウォームホイールと,ウォームホイールに噛み合って駆動手段からの回転が伝達されるウォームを有している。ハウジングに軸受を介してスリーブが回転可能に配設されている。スリーブの嵌合部には,雌ねじを備えたステムブッシュがスプラインやキーによって固定されている。また,スリーブの外周部にはウォームギヤを構成するウォームホィールがスプライン,キー,圧入等によって固定されている。トルク検出は,ウォーム軸にトルクスプリングを介して組み込まれたトルクセンサによって検出して設定することができる(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−108239号公報
【特許文献2】特開2001−248746号公報
【特許文献3】特開2004−257420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,従来のバルブアクチュエータでは,モータの動力慣性エネルギーは,ウォーム軸等の駆動系に皿ばね等のスプリングを挿入し,スプリングにエネルギーを蓄える構造に構成されている。また,水門が閉方向で停止することで,モータの慣性エネルギー,又は水門の停止時に発生する衝撃力が大きいと,皿ばねの形状が大きくなり,皿ばねの枚数が多くなり,そのため外形が大きなものになるという問題があった。また,サーボモータを使用したバルブアクチュエータは,自重降下時に,調速機能により高速回転している状態で水門が全閉になると,モータが高速回転から急激に停止するため,モータの慣性エネルギーがゲート,減速機等に作用し,減速機等の破損につながる原因になっていた。また,停電等の電気系が故障している際には,モータによる駆動及び制御が不能になるが,その状態で水門を閉鎖しなければならない緊急時に,自重降下レバーによってロックを解除し,水門の自重で降下させた場合に,モータは空転しており,次いで,水門が流路の底面に衝突して停止した場合に,衝撃による衝撃力がモータに伝達されたり,モータの慣性エネルギーが動力伝達装置に伝達されたりして好ましくなかった。
【0007】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,扉体,バルブ,ゲート等の水門を上下往復移動させる水門支持手段のピンラック又はラックを上下往復移動可能に駆動するものであり,水門が閉鎖した時,水門が急激に停止した時に,動力伝達装置に伝達されるモータの慣性エネルギー及び水門の自重降下時に水門が流路の底面に衝突して発生する衝撃力をウォームギヤを構成するウォーム軸に対して設けたオイルダンバによって吸収し,モータ,減速機等に異常な負荷がかかるのを防止し,装置そのものの耐久性を向上させることができる流路開閉用の水門駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は,流路を開閉する水門,該水門を上下往復移動させて前記流路を開閉するため駆動するモータ,前記水門を手動で上下往復移動させる手動ハンドル,及び前記モータ又は前記手動ハンドルによる回転運動を前記水門の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置を有し,前記動力伝達装置は,前記モータのモータ出力軸に連結された伝動軸,前記伝動軸に組み込まれた無励磁作動保持ブレーキ,前記伝動軸に入力側が連結された減速機,前記手動ハンドルによる回転を前記減速機のケースに伝達するウォームギヤ,前記モータと前記伝動軸との連結状態を切り離して前記水門を自重降下させるため操作される前記伝動軸に組み込まれた自重降下レバー,及び前記減速機の出力側に連結された出力軸によって作動される前記水門を取り付けた水門支持手段を備えていることから成る流路開閉用の水門駆動装置において,
前記ウォームギヤは,前記減速機の前記ケースに固定されたウォームホイールと前記ウォームホイールに噛み合うウォームを設けたウォーム軸とを有し,前記ウォーム軸の一端をケーシングに回転自在に支持された前記手動ハンドルのハンドルボスに支持し,前記ウォーム軸の他端を前記ケーシングに回転自在に支持されたオイルダンバに支持したことを特徴とする流路開閉用の水門駆動装置に関する。
【0009】
また,前記オイルダンバは,前記ケーシングに回転自在に支持された端部と前記ウォーム軸を嵌入する中空部が形成された筒部とを備えたダンパ本体,前記ダンパ本体の前記中空部と前記ウォーム軸の端面とで形成されたオイルが充填されたオイル室,前記オイル室と前記オイルが収容される前記ケーシング内とを連通するオリフィス,及び前記オリフィスの開口量を調節する調整スクリューから構成されている。
【0010】
また,前記オイルダンバは,前記動力伝達装置に伝達される前記モータの慣性エネルギー及び前記水門の上下移動の停止時に前記動力伝達装置に発生する衝撃力を吸収するものである。
【0011】
また,この流路開閉用の水門駆動装置は,前記モータ又は前記手動ハンドルで回転駆動される前記出力軸にはピニオンを備えたピニオン軸が設けられ,前記水門支持手段には前記ピニオンに噛み合うラックピンを備えたピンラック又は前記ピニオンに噛み合うラックを備えたギヤラックが設けられているものである。
【0012】
また,この流路開閉用の水門駆動装置において,前記減速機は前記入力軸が前記伝動軸に連結された一次減速機と該一次減速機の後流に連結された二次減速機から構成され,前記手動ハンドルは前記一次減速機の前記ケースに連結されている。
【発明の効果】
【0013】
この流路開閉用の水門駆動装置は,上記のように,モータからの出力を減速機等を介して水門を支持した水門支持手段に伝達する動力伝達装置におけるウォームギヤを構成するウォーム軸に対してオイルダンバが組み込まれているので,水門が流路の底面に到達して動力伝達装置の伝動軸の回転が急激に停止,即ち,伝動軸に過大な負荷がかかった状態になると,オイルダンバがモータの慣性エネルギー及び水門が自重降下して流路の底面に衝突して発生する衝撃力を吸収し,減速機やモータの損傷を防止することができ,装置そのものの耐久性を向上し,安全性,信頼性に富んだものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置の実施例を説明する。この流路開閉用の水門駆動装置は,水路,浄水場等の流路を開閉するためゲート,扉体,バルブ等の水門(以下,総称)を上下往復移動させて駆動するものであり,サーボモータ等のモータ又は手動ハンドルの回転を出力軸に伝達する動力伝達装置にオイルダンバを組み込み,動力伝達装置における減速機等の部品にモータの慣性エネルギーや水門が閉じる時に発生する衝撃力が動力伝達装置における減速機等に過大に負荷されることを防止し,装置そのものの耐久性を向上させることを特徴としている。
【0015】
以下,図面を参照して,この発明による流路開閉用の水門駆動装置の実施例を説明する。この流路開閉用の水門駆動装置は,概して,水路,浄水場等の流路を開閉するため配設されたゲート,扉体,バルブ等の水門20,水門20を上下往復移動させて流路を開閉するため駆動するモータ1,水門20を手動で上下往復移動させる手動ハンドル7,及びモータ1又は手動ハンドル7による出力軸34の回転を水門20の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置14を有している。水門支持手段を構成するピンラック10は,水門20が取り付けられ,ベース26に設置されたスタンド15に上下移動可能に支持されている。この流路開閉用の水門駆動装置は,モータ1及び手動ハンドル7の回転を解放して水門20を自重降下させるための自重降下レバー2が動力伝達装置14において設けられている。モータ1は,ACサーボモータ等のサーボモータで構成されている。
【0016】
動力伝達装置14は,モータ1のモータ出力軸22,モータ出力軸22に連結された伝動軸4,伝動軸4に設けられた無励磁作動保持ブレーキ3,伝動軸4に入力軸31が連結された減速機5(一次減速機),減速機5のケース39を介して連結された手動ハンドル7,手動ハンドル7の回転を減速機5のケース39を介して出力軸32に作動連結するウォームギヤ35,減速機5の出力軸32に入力軸33が連結された減速機6(二次減速機),減速機6の出力軸34に連結されたピニオン9を備えたピニオン軸11,及びピニオン9に噛み合うラックピン16を備え且つ水門20を取り付けた水門支持手段を構成するピンラック10から構成されている。即ち,動力伝達装置14において,水門20とモータ1との間の駆動系には差動歯車機構を利用した差動歯車減速機等から構成された減速機5,6を直列に二段に配設されている。一次減速機5は,ケース39,及びケース39に組み込み支持された入力軸31と出力軸32から構成されている。手動ハンドル7は,減速機5のケース39にウォームギヤ35を介して組み込まれている。また,この流路開閉用の水門駆動装置では,ピニオン軸11は,一次減速機5及び二次減速機6を介してモータ1のモータ出力軸22に対して実質的に同一軸心上に配設されており,装置全体がコンパクトに簡素化された構造に構成されている。
【0017】
この流路開閉用の水門駆動装置において,手動ハンドル7による回転を減速機5のケース39に伝達するウォームギヤ35は,減速機5のケース39に固定されたウォームホイール37とウォームホイール37に噛み合うウォーム36を設けたウォーム軸38とを有している。この流路開閉用の水門駆動装置は,特に,ウォーム軸38の一端がスタンド15に設けられたケーシング12に軸受42で回転自在に支持された手動ハンドル7のハンドルボス23に支持され,ウォーム軸38の他端がケーシング12に軸受42で回転自在に支持されたオイルダンバ17に支持されていることを特徴としている。ハンドルボス23は,手動ハンドル7の軸にキー24で固定されている。実施例では,オイルダンバ17は,主として,ケーシング12に回転自在に支持された端部47とウォーム軸38を嵌入する中空部49が形成された筒部27とを備えたダンパ本体18,ダンパ本体18の中空部49とウォーム軸38の端面45とで形成されたオイルが充填されたオイル室28,オイル室28とオイルが収容されるケーシング12内のギヤ室46とを連通するオリフィス40,及びオリフィス40の開口量を調節する調整スクリュー41から構成されている。オリフィス40は,ダンパ本体18に形成された連通孔25を通じてギヤ室46に連通している。
【0018】
また,この流路開閉用の水門駆動装置における動力伝達装置14に組み込まれたオイルダンバ17は,動力伝達装置14に伝達されるモータ1の慣性エネルギー及び水門20の上下移動の停止時に動力伝達装置14に発生する衝撃力を吸収することを特徴としている。即ち,オイルダンバ17は,水門20が降下限界位置即ち流路の底面に到達した時に発生する衝撃力を吸収し,また,水門20が流路を全閉して伝動軸4の回転停止時に残存するモータ1の慣性エネルギーを吸収し,動力伝達装置14にかかる過剰負荷を緩和するものである。更に,オイルダンバ17は,水門20が流路を全閉する時にリバンドして伝動軸4が逆転することによる衝撃を吸収し,動力伝達装置14にかかる過剰負荷を緩和するものである。
【0019】
動力伝達装置14の最終出力軸となる出力軸34は,ピニオン9を備えたピニオン軸11であり,また,水門支持手段はピニオン9に噛み合うラックピン16を備えたピンラック10である。ピンラック10は,スタンド15に取り付けられたローラピン21に回転自在なローラ13にガイドされてスムーズに上下移動できるように構成されている。動力伝達装置14は,ピンラック10を上下移動させるため,モータ1のモータ出力軸22からの回転力を一対の減速機5,6を介して最終減速段の出力軸34と一体のピニオン軸11に伝達する。
【0020】
モータ1は,水門20の位置を調整可能に作動するACサーボモータで構成されている。減速機5のケース39は軸受30によってスタンド15に回転自在に支持されている。減速機5は,入力軸31の回転を減速して出力軸32の回転へと伝達される。また,減速機6は,入力軸33の回転を減速して出力軸34の回転へと伝達される。この実施例では,水門20の位置を検出する位置検出器が減速機5の出力軸32に設けられている。この流路開閉用の水門駆動装置は,位置検出器が設けられているので,モータ1による水門20の駆動の時は勿論のこと,手動ハンドル7による水門20の駆動の時にも,水門20の現在位置が常に情報としてコントローラに認識されており,水門20を常に高精度に所望の位置に移動させることができる。勿論,この流路開閉用の水門駆動装置では,最終減速段の出力軸34に位置検出器を設けることもできる。
【0021】
この流路開閉用の水門駆動装置において,手動ハンドル7は,ウォームギヤ35を介して動力伝動装置14に作動連結されている。手動ハンドル7に設けられたウォームギヤ35は,ウォーム軸38に設けたウォーム36とそれに噛み合うウォームホイール37から構成されている。ウォームホイール37と減速機5のケース39とはボルト29によって締結されている。ウォーム36の回転はウォームホイール37に減速伝達されて回転するが,ウォームホイール37からは,その回転がウォーム36には伝達されない構造であり,従って,手動ハンドル7によってウォーム36が回転する時には,ウォームホイール37が回転し,ウォームホイール37の回転が減速機5のケース39を介して出力軸32に伝達されることになるので,手動ハンドル7の回転の減速比は減速機5ではほとんど減速されずに,手動ハンドル7の回転はウォームギヤ35で減速されるようになっている。
【0022】
また,無励磁作動保持ブレーキ3は,動力伝達装置14を通じて水門20を所定の位置に保持し,非常時にはブレーキ解放機構を構成する自重降下レバー2の作動によって水門20を自重降下させると共にサーボモータ1によりダイナミックブレーキで水門20の降下を制御し,流路を水門20で閉鎖する機能を有している。サーボモータ1は,例えば,永久磁石をロータに設け,巻線をステータに巻き上げた同期電動機即ち永久磁石式発電・電動機が使用されている。永久磁石式発電・電動機は,ステータに巻き上げた巻線に電流を流すと,ロータが回転し,トルクが発生する電動機モードとして機能し,また,自重等によってロータを回転させれば,ステータの巻線に電流が発生して発電機モードとして機能する。従って,この実施例では,水門20の降下時に水門20にブレーキをかける場合に,モータ1を発電機モードとして機能させて制動トルクを得るダイナミックブレーキとして働かせる。ブレーキ力は,熱エネルギとして放熱したり,電力として回生することができる。
【0023】
また,無励磁作動保持ブレーキ3は,モータ出力軸22に連結した伝動軸4には,安全性を考慮して一対の無励磁作動保持ブレーキを平行して設けることができる。無励磁作動保持ブレーキ3は,そのケースにシフタが取り付けられる。シフタは,手動による自重降下レバー2の作動によって無励磁作動保持ブレーキ3を解放するように構成されている。無励磁作動保持ブレーキ3は,電源がONすると,モータ1が回転可能になり,減速機5の入力軸31が回転するように構成されている。電源がOFFの時には,アーマチャがブレーキディスクに接し,ブレーキが掛かった状態になり,従って,無励磁作動保持状態になる。無励磁作動保持ブレーキ3は,例えば,一対の無励磁作動保持ブレーキを設けておけば,一方のブレーキ機能が故障した場合に,他方のブレーキ機能を発揮させることができ,安全性に富んだ構成となる。即ち,モータ1にブレーキをかけるときに,2個の無励磁作動保持ブレーキ3の内,一方を付勢してブレーキがかかる状態にしておき,一方が故障した場合に他方を付勢してブレーキがかかるように設定しておくことが好ましい。
【0024】
次に,この流路開閉用の水門駆動装置の作動を説明する。この流路開閉用の水門駆動装置は,モータ1による自動作動の場合には,先ず,無励磁作動保持ブレーキ3の電源がONされると,ブレーキディスクが解放され,モータ1が回転駆動される。モータ1の出力軸22からの駆動力は,減速機5の入力軸31が回転し,この時,減速機5のケース39はウォームギヤ35が回転していないので,固定状態になっている。減速機5の入力軸31が回転すると減速されて減速機5の出力軸32が回転する。減速機5の出力軸32が回転すると,減速機6の入力軸33が回転し,次いで減速機6の出力軸34が回転する。減速機6の出力軸34が回転すると,出力軸34と一体のピニオン軸11が回転してピニオン9が回転し,次いで,ピニオン9に噛み合っているラックピン16を備えたピンラック10が上下往復移動することになる。この際には,水門20が流路の底面に到達するまでは,水門20及びピンラック10によって自重が負荷された状態である。水門20が流路の底面に到達して流路を閉鎖すると,動力伝達装置14へは,モータ1の慣性エネルギーが負荷される状態になるが,この流路開閉用の水門駆動装置では,オイルダンバ17が設けられているので,オイルダンバ17の機能によってモータ1の慣性エネルギーが吸収され,減速機5,6には好ましくない負荷が付与されず,動力伝達装置14の部品の耐久性を向上させることができる。
【0025】
次に,この流路開閉用の水門駆動装置は,手動ハンドル7による手動作動の場合には,無励磁作動保持ブレーキ3は電源がOFFされており,ブレーキディスクが接触状態になって閉状態であり,モータ1の駆動は停止して減速機5の入力軸31の回転が停止している。手動ハンドル7を回転作動すると,ウォームギヤ35のウォーム36が回転してウォームホイール37が回転する。ウォームホイール37は減速機5のケース39に固定されているので,減速機5は軸受30を介して全体的に回転して減速機5の出力軸32が回転する。従って,手動ハンドル7の回転は,ウォームギヤ35で減速されるが,減速機5ではほとんど減速されずにケース39を介して出力軸32へと伝達される。減速機5の出力軸32が回転すると,減速機6の入力軸33が回転し,次いで減速機6の出力軸34が回転する。減速機6の出力軸34が回転すると,出力軸34と一体のピニオン軸11が回転してピニオンであるピニオン9が回転し,次いで,ピニオン9に噛み合っているラックピン16を備えたピンラック10が上下往復移動することになる。この際には,動力伝達装置14には,水門20が流路の底面に到達するまでは,水門20及びピンラック10によって自重が負荷された状態である。水門20が流路の底面に到達して流路を閉鎖すると,動力伝達装置14へかかる自重は無くなる。
【0026】
また,この流路開閉用の水門駆動装置は,緊急の場合には,水門20の自重によって水門20を降下させることができる。この緊急時には,停電等による電気系が故障していない場合又は故障している場合があるが,そのような緊急の場合には,自重降下レバー2を操作し,シフタによって無励磁作動保持ブレーキ3のアーマチャを強制的に動かしてブレーキディスクを解放する。この時,一対の無励磁作動保持ブレーキ3が設けられているので,シフタによってブレーキディスクを解放する。これによって,水門20はその保持状態が解放され,水門20とピンラック10の自重により,水門20とピンラック10とが流路へと下降し,その時にサーボモータ1をダイナミックブレーキとして機能させて水門20に制動をかけつつ降下させ,水門20で流路を閉鎖するように作動する。この時,水門20とピンラック10の降下によってピニオン9が回転し,ピニオン9の回転は減速機6の出力軸34を回転させる。出力軸34の回転は減速機6の入力軸33を回転させ,次いで,減速機5の出力軸32が回転して減速機5の入力軸31が回転する。減速機5の入力軸31の回転は,モータ出力軸22を空転させる。また,動力伝達装置14には,水門20が流路の底面に到達するまでは,水門20及びピンラック10によって自重が負荷された状態である。水門20が流路の底面に到達して流路を閉鎖すると,動力伝達装置14へかかる自重は無くなり,モータ1は空転する。また,水門20が流路の底面に激突して水門20がリバウドして逆転し,逆回転が動力伝達装置14に伝達されたとしても,オイルダンバ17によって吸収され,モータ1への悪影響は防止される。また,水門20が底面に静止すれば,動力伝達装置14の回転は停止するが,モータ1は空転しているが,オイルダンバ17によってモータ1の慣性エネルギーが吸収され,動力伝達装置14へは伝達されず,動力伝達系への悪影響はなくなる。
【0027】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置は,上記実施例では,ピニオン9にはピンラック10のラックピン16が噛み合い,水門支持手段がピンラック10の態様を説明したが,水門支持手段をピンラック10に限らず,例えば,ギヤラックで構成することができることは勿論である。その場合には,ピニオン9はギヤラックのラックの歯部に噛み合うことになる。ギヤラックは,スタンド15に取り付けられたローラピン21に回転自在なローラ13にガイドされてスムーズに上下移動できるように構成される。従って,二次減速機6の出力軸34が回転すると,ピニオン軸11を通じてピニオン9が回転し,ピニオン9の回転運動は,図示していないが,ラックに順次に伝達されてギヤラックが上下移動し,該ギヤラックに取り付けられた水門20が上下移動することになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置は,例えば,流路を開閉するのに設けられた扉体,ゲート,弁体等の水門を上下移動させるアクチュエータに適用され,モータから水門への駆動系にオイルダンバを組み込んで減速機等の損傷を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明による流路開閉用の水門駆動装置を示す概略図である。
【図2】この流路開閉用の水門駆動装置の実施例の要部を断面で示す概略図である。
【図3】図2に示す流路開閉用の水門駆動装置のオイルダンバの要部を示す拡大断面図である。
【図4】図3のオイルダンバが組み込まれた流路開閉用の水門駆動装置を示す断面図である。
【図5】従来の流路開閉用の水門駆動装置におけるピンラックと水門との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 モータ(ACサーボモータ)
2 自重降下レバー
3 無励磁作動保持ブレーキ
4 伝動軸
5 一次減速機
6 二次減速機
7 手動ハンドル
9 ピニオン
10 ピンラック(水門支持手段)
11 ピニオン軸
12 ケーシング
14 動力伝動装置
16 ラックピン
17 オイルダンバ
18 ダンパ本体
20 水門
22 モータ出力軸
23 ハンドルボス
27 筒部
28 オイル室
34 出力軸
35 ウォームギヤ
36 ウォーム
37 ウォームホイール
38 ウォーム軸
39 ケース
40 オリフィス
41 調整スクリュー
47 端部
49 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を開閉する水門,該水門を上下往復移動させて前記流路を開閉するため駆動するモータ,前記水門を手動で上下往復移動させる手動ハンドル,及び前記モータ又は前記手動ハンドルによる回転運動を前記水門の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置を有し,前記動力伝達装置は,前記モータのモータ出力軸に連結された伝動軸,前記伝動軸に組み込まれた無励磁作動保持ブレーキ,前記伝動軸に入力側が連結された減速機,前記手動ハンドルによる回転を前記減速機のケースに伝達するウォームギヤ,前記モータと前記伝動軸との連結状態を切り離して前記水門を自重降下させるため操作される前記伝動軸に組み込まれた自重降下レバー,及び前記減速機の出力側に連結された出力軸によって作動される前記水門を取り付けた水門支持手段を備えていることから成る流路開閉用の水門駆動装置において,
前記ウォームギヤは,前記減速機の前記ケースに固定されたウォームホイールと前記ウォームホイールに噛み合うウォームを設けたウォーム軸とを有し,前記ウォーム軸の一端をケーシングに回転自在に支持された前記手動ハンドルのハンドルボスに支持し,前記ウォーム軸の他端を前記ケーシングに回転自在に支持されたオイルダンバに支持したことを特徴とする流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項2】
前記オイルダンバは,前記ケーシングに回転自在に支持された端部と前記ウォーム軸を嵌入する中空部が形成された筒部とを備えたダンパ本体,前記ダンパ本体の前記中空部と前記ウォーム軸の端面とで形成されたオイルが充填されたオイル室,前記オイル室と前記オイルが収容される前記ケーシング内とを連通するオリフィス,及び前記オリフィスの開口量を調節する調整スクリューから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項3】
前記オイルダンバは,前記動力伝達装置に伝達される前記モータの慣性エネルギー及び前記水門の上下移動の停止時に前記動力伝達装置に発生する衝撃力を吸収することを特徴とする請求項1又は2に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項4】
前記モータ又は前記手動ハンドルで回転駆動される前記出力軸にはピニオンを備えたピニオン軸が設けられ,前記水門支持手段には前記ピニオンに噛み合うラックピンを備えたピンラック又は前記ピニオンに噛み合うラックを備えたギヤラックが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項5】
前記減速機は前記入力軸が前記伝動軸に連結された一次減速機と該一次減速機の後流に連結された二次減速機から構成され,前記手動ハンドルは前記一次減速機の前記ケースに連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流路開閉用の水門駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−225051(P2007−225051A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48418(P2006−48418)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】