説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】気泡が滞留するのを防止して液体供給特性及び液体噴射特性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 保護基板30には、複数の圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ部31が圧力発生室12の並設方向に亘って設けられていると共に、リザーバ部31が、保護基板30を厚さ方向に貫通して設けられた第1のリザーバ部33と、流路形成基板10とは反対側の面であって保持部32に相対向する領域側に第1のリザーバ部33に連通して設けられた凹形状を有する第2のリザーバ部34とを具備し、第2のリザーバ部34が、導入口46に相対向する領域に圧力発生室12の長手方向に亘って第1のリザーバ部33に達するまで設けられた深溝部35と、深溝部35の圧力発生室12の並設方向両側に設けられて深溝部35よりも深さの浅い浅溝部36とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室の長手方向一端部側に圧力発生室の短手方向に亘って設けられて各圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接着剤を介して接合されて、連通部と共にリザーバの一部を構成するリザーバ部を有するリザーバ形成基板とを具備するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、リザーバ形成基板の流路形成基板とは反対側の面には、リザーバ部に相対向する領域に可撓部を有するコンプライアンス基板が接合され、このコンプライアンス基板の可撓部によって、リザーバ内へのインクの導入時の圧力変動やインク吐出時の圧力変動を吸収するようになっている。
【0004】
また、流路形成基板に接合されたリザーバ形成基板の圧電素子保持部に相対向する領域にリザーバを設けたものがある(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0005】
これによれば、インクジェット式記録ヘッドを圧力発生室の長手方向で小型化することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−219243号公報(第3〜5図、第6〜8頁)
【特許文献2】特開2001−105611号公報(第6〜8図、第8〜9頁)
【特許文献3】特開2004−106316号公報(第11図、第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、リザーバへのインク供給能力と圧力変動能力を向上するためにはリザーバ部の幅を広げるしかなく、ヘッドが大型化してしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2及び3の構成では、圧力変動を吸収することができず、優れたインク吐出特性を得ることができないという問題がある。さらに、リザーバ形成基板上に圧電素子を駆動するための駆動回路を実装すると、コンプライアンスを生じさせるコンプライアンス基板を配置することができないという問題がある。
【0009】
また、リザーバ部に連通するインク導入口を介してリザーバ部内にインクを導入すると、インク導入口の両側、特にインク導入口から離れたリザーバ部の角部に気泡が滞留してしまい、滞留した気泡が成長してリザーバ部の容積を減少させて供給特性が劣化してしまうと共に、気泡を所望のタイミングで排出することができず、インクと共に気泡が吐出されるなどの不具合が生じてしまうという問題がある。
【0010】
なお、このような問題はインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、気泡が滞留するのを防止して液体供給特性及び液体噴射特性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室がその幅方向に並設された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の前記圧力発生室に相対向する領域に設けられた圧力発生素子と、前記流路形成基板の前記圧力発生素子側の面に接合されると共に、前記圧力発生素子を配置する保持部が一方面側に設けられた保護基板とを具備し、前記保護基板には、複数の圧力発生室の共通の液体室となるリザーバ部が前記圧力発生室の並設方向に亘って設けられていると共に、該リザーバ部が、前記保護基板を厚さ方向に貫通して設けられた第1のリザーバ部と、前記流路形成基板とは反対側の面であって前記保持部に相対向する領域側に前記第1のリザーバ部に連通して設けられた凹形状を有する第2のリザーバ部とを具備し、前記保護基板の前記流路形成基板とは反対側の面に前記リザーバ部に相対向する領域に可撓部が設けられたコンプライアンス基板が設けられていると共に、該コンプライアンス基板の前記第2のリザーバ部に相対向する領域には、前記リザーバ部に液体を導入する導入口が設けられ、前記第2のリザーバ部が、前記導入口に相対向する領域に前記圧力発生室の長手方向に亘って前記第1のリザーバ部に達するまで設けられた深溝部と、該深溝部の前記圧力発生室の並設方向両側に設けられて当該深溝部よりも深さの浅い浅溝部とで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、リザーバ部として第2のリザーバ部を設けることで、液体室の容量を拡大することができ、ヘッドの小型化を図ることができると共に、広い面積の可撓部を設けることができ、圧力変動を確実に吸収させて液体供給特性及び液体噴射特性を向上することができる。また、第2のリザーバ部として、深溝部を設けることで、液体の流量を確保して液体の供給特性が劣化するのを防止することができると共に、浅溝部を設けることで、第2のリザーバ部内の液体の流速を早めて気泡が滞留するのを防止することができる。これにより、液体供給特性及び液体噴射特性を向上することができる。
【0013】
ここで、前記流路形成基板には、複数の圧力発生室に連通して前記液体室の一部を構成する連通部が設けられていることが好ましい。これによれば、連通部によって液体室の容積をさらに確保することができ、優れた液体供給特性及び液体噴射特性を得ることができる。
【0014】
また、前記圧力発生素子には、当該圧力発生素子を駆動する駆動回路が実装されたフレキシブルプリント基板が電気的に接続されていることが好ましい。これによれば、駆動回路を保護基板上に実装する必要がなく、第2のリザーバ部を広い面積で形成することができる。
【0015】
本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。これによれば、液体噴射特性及び液体供給特性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0017】
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
【0018】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。
【0019】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0020】
流路形成基板10の圧力発生室12が開口する面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズル形成部材の一例でノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0021】
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、成膜及びリソグラフィ法により積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300を所定の基板上(流路形成基板10上)に変位可能に設け、当該圧電素子300を駆動させた装置をアクチュエータ装置と称する。なお、本実施形態では、圧力発生室12内のインク(液体)に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として、圧電素子300が設けられている。また、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0022】
圧電体層70は、下電極膜60上に形成される圧電材料からなる。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成した。
【0023】
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、流路形成基板10のインク供給路14とは反対側の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。具体的には、詳しくは後述する保護基板30の圧電素子保持部32の外側まで延設されたリード電極90の端部に、圧電素子300を駆動するための駆動回路120が実装されたフレキシブルプリント基板121が電気的に接続されており、駆動回路120からの駆動信号は、フレキシブルプリント基板121を介してリード電極90に供給される。
【0024】
なお、駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。また、フレキシブルプリント基板121としては、例えば、チップオンフィルム(COF)やテープキャリアパッケージ(TCP)などが挙げられる。
【0025】
さらに、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する保持部である圧電素子保持部32が設けられた保護基板30が接着剤39を介して接合されている。なお、圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0026】
また、保護基板30には、圧力発生室12の並設方向に亘ってリザーバ部31が設けられている。リザーバ部31は、連通部13と連通されて複数の圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100を構成している。
【0027】
ここで、リザーバ部31は、保護基板30を厚さ方向に貫通して設けられた第1のリザーバ部33と、保護基板30の流路形成基板10とは反対側に凹形状に設けられた第2のリザーバ部34とを具備する。
【0028】
第1のリザーバ部33は、流路形成基板10の連通部13に相対向する領域に、保護基板30を厚さ方向に貫通して連通部13に連通するように設けられている。
【0029】
第2のリザーバ部34は、保護基板30の流路形成基板10に接合される面とは反対側の面側に第1のリザーバ部33に連通して設けられた凹形状を有する。また、第2のリザーバ部34は、圧電素子保持部32に相対向する領域側に設けられている。すなわち、リザーバ部31は、保護基板30を厚さ方向に貫通する第1のリザーバ部33と、流路形成基板10とは反対側で第1のリザーバ部33を圧電素子保持部32側に向かって拡幅する拡幅部としての第2のリザーバ部34とで構成されている。そして、本実施形態の複数の圧力発生室12の共通の液体室であるリザーバ100は、第1のリザーバ部33及び第2のリザーバ部34からなるリザーバ部31と、連通部13とで構成されている。
【0030】
このように、リザーバ部31に圧電素子保持部32側に向かって拡幅する第2のリザーバ部34を設けることで、リザーバ100の容量を拡大することができるため、リザーバ部31及び連通部13の圧力発生室12とは反対側の壁の位置を圧力発生室12側に配置することができ、インクジェット式記録ヘッドの圧力発生室12の長手方向の幅方向を小型化することができる。
【0031】
また、リザーバ部31に第2のリザーバ部34を設けることで、コンプライアンス基板40の可撓部44の面積を広げることができる。これにより、リザーバ100にインクが供給された際のリザーバ100内の圧力変動を可撓部44によって確実に吸収させることができると共にインク吐出時の圧力変動を可撓部44によって吸収させることができる。これにより、圧力変動の影響によるクロストークの発生を低減させて、インク吐出特性を向上することができる。
【0032】
また、第2のリザーバ部34は、深溝部35と、深溝部35よりも浅く形成された浅溝部36とで構成されている。
【0033】
深溝部35は、詳しくは後述する保護基板30上に接合されたコンプライアンス基板40に設けられた導入口46に相対向する領域、本実施形態では、複数の圧力発生室12の並設方向の略中央部に設けられ、圧力発生室12の長手方向に亘って第1のリザーバ部33に達するまで設けられている。
【0034】
浅溝部36は、深溝部35の圧力発生室の並設方向の両側に深溝部35よりも深さが浅く設けられている。
【0035】
なお、このような第1のリザーバ部33及び第2のリザーバ部34は、本実施形態では、図2(a)に示すように、圧電素子300とは反対側に向かって幅が徐々に漸大するように設けられている。これは、詳しくは後述する導入口46からリザーバ部31内にインクが導入された際に、並設された複数の圧力発生室12に亘って均等にインクを供給させるためである。
【0036】
このような保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料であるシリコン単結晶基板を用いている。このように、保護基板30を流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることで、インクジェット式記録ヘッドがインク吐出時や製造時などに加熱されても、熱膨張率の違いにより反りが生じてクラック等の破壊が発生するのを防止することができる。
【0037】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によって第1のリザーバ部33及び第2のリザーバ部34の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止された撓み変形可能な可撓部44が設けられている。
【0038】
さらに、コンプライアンス基板40の固定板42は、第2のリザーバ部34に相対向する領域に突出した突出部45を具備し、突出部45にはリザーバ100内にインクを導入するための導入口46が設けられている。すなわち、導入口46は、第2のリザーバ部34に相対向する領域に設けられ、導入口46から導入されたインクは、第2のリザーバ部34から第1のリザーバ部33及び連通部13を介して圧力発生室12に供給される。
【0039】
このとき、保護基板30の第2のリザーバ部34には、導入口46に相対向する領域に深溝部35が設けられているため、深溝部35によって導入口46から供給されるインクの流量を確保することができ、インク供給特性が劣化することがない。すなわち、リザーバ部31の流速を早めるために第2のリザーバ部34の全体を浅く形成すると、流速は早くなるものの、流量を確保することができず、インク供給特性が劣化してしまうが、深溝部35を設けることによって、流量を確保してインク供給特性が劣化するのを防止することができる。
【0040】
また、導入口46から導入されたインクは、浅溝部36上を通過する際に、浅溝部36によってインクの流速を早めて、浅溝部36上、特に第2のリザーバ部34の角部に気泡が滞留するのを防止することができる。すなわち、第2のリザーバ部34に浅溝部36を設けずに、第2のリザーバ部34全体を深溝部35と同じ深さで形成した場合、第2のリザーバ部34の角部を流れるインクの流速が遅くなり、第2のリザーバ部34の角部に気泡が滞留し、滞留した気泡が成長してリザーバ100の容積を減少させて供給特性が劣化してしまうと共に、気泡を所望のタイミングで排出することができず、インクと共に気泡が吐出されるなどの不具合が生じてしまう。
【0041】
したがって、第2のリザーバ部34として導入口46に相対向する深溝部35と浅溝部36とを設けることによって、インクの供給特性を劣化することなく、所望のタイミングで気泡を排出して、優れたインク吐出特性を得ることができる。
【0042】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、流路形成基板10に圧力発生室12の並設方向に亘ってリザーバ100の一部を構成する連通部13を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザーバとしてもよい。また、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバ部31と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。これにより、インクジェット式記録ヘッドの更なる小型化を図ることができる。
【0043】
また、上述した実施形態1では、第2のリザーバ部34として、均一深さの浅溝部36を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、浅溝部を、深溝部35側から圧力発生室12の並設方向の外側に向かって深さが徐々に漸小するように設けてもよい。すなわち、第2のリザーバ部34の両外側に向かって深さが徐々に漸小するようにしてもよい。これにより、特に気泡の滞留し易い第2のリザーバ部34の角部近傍の流速を早めることができ、さらに気泡の滞留を防止することができる。
【0044】
さらに、例えば、上述した実施形態1では、駆動回路120が実装されたフレキシブルプリント基板121をリード電極90に接続するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、保護基板30上のコンプライアンス基板40以外の領域に駆動回路120を実装する領域が確保できる場合には、駆動回路120を保護基板30上に実装し、駆動回路120とリード電極90とをボンディングワイヤ等の接続配線で接続するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態1では、コンプライアンス基板40に1つの可撓部44を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、固定板42に複数の開口部43を設けることで、複数の可撓部44を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、圧力発生室内の液体に圧力を付与する圧力発生素子として、薄膜型(撓み振動型)の圧電素子を例示したが、圧力発生素子は、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子などを使用することができる。また、圧力発生素子として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるものなどを使用することができる。
【0047】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図3は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0048】
図3に示すように、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0049】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0050】
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部(保持部)、 33 第1のリザーバ部、 34 第2のリザーバ部、 35 深溝部、 36 浅溝部、 40 コンプライアンス基板、 41 封止膜、 42 固定板、 43 開口部、 44 可撓部、 45 突出部、 46 導入口、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 121 フレキシブルプリント基板、 300 圧電素子、 320 圧電体能動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室がその幅方向に並設された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の前記圧力発生室に相対向する領域に設けられた圧力発生素子と、前記流路形成基板の前記圧力発生素子側の面に接合されると共に、前記圧力発生素子を配置する保持部が一方面側に設けられた保護基板とを具備し、
前記保護基板には、複数の圧力発生室の共通の液体室となるリザーバ部が前記圧力発生室の並設方向に亘って設けられていると共に、該リザーバ部が、前記保護基板を厚さ方向に貫通して設けられた第1のリザーバ部と、前記流路形成基板とは反対側の面であって前記保持部に相対向する領域側に前記第1のリザーバ部に連通して設けられた凹形状を有する第2のリザーバ部とを具備し、
前記保護基板の前記流路形成基板とは反対側の面に前記リザーバ部に相対向する領域に可撓部が設けられたコンプライアンス基板が設けられていると共に、該コンプライアンス基板の前記第2のリザーバ部に相対向する領域には、前記リザーバ部に液体を導入する導入口が設けられ、
前記第2のリザーバ部が、前記導入口に相対向する領域に前記圧力発生室の長手方向に亘って前記第1のリザーバ部に達するまで設けられた深溝部と、該深溝部の前記圧力発生室の並設方向両側に設けられて当該深溝部よりも深さの浅い浅溝部とで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記流路形成基板には、複数の圧力発生室に連通して前記液体室の一部を構成する連通部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記圧力発生素子には、当該圧力発生素子を駆動する駆動回路が実装されたフレキシブルプリント基板が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−96128(P2009−96128A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271759(P2007−271759)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】