説明

液体噴射装置及びその製造方法

【課題】 FPC等の配線基板を省略して部品点数を減らすとともに、製造工程を簡略化することが可能な液体噴射装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 インクジェットヘッド1は、ノズル20と圧力室16とを含む複数の個別インク流路2と圧電アクチュエータ3とを有し、個別インク流路2は、積層された複数枚のプレートにより形成されており、複数の圧力室16を形成する圧力室プレート13と絶縁材料からなりノズル20を形成するノズルプレート14との間に圧電アクチュエータ3が配設され、ノズルプレート14の圧電アクチュエータ3側の面に、複数の個別電極32と夫々接続される複数の配線部34が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置としては、例えば、液体を噴射するノズルと、このノズルに連通する圧力室と、圧力室の容積を変化させるアクチュエータとを有し、アクチュエータにより圧力室内の液体に圧力を付与してノズルから液体を噴射するように構成されているものがある。その中でも、例えば、特許文献1にはノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドが記載されている。このインクジェットヘッドのアクチュエータは、複数の圧力室を覆うように設けられた複数枚の圧電シートと、最上層の圧電シートの上面に複数の圧力室と夫々対向するように形成された複数の個別電極、及び、最上層の圧電シートの下面に形成された共通電極とを備えている。圧電シートの上面に形成された複数の個別電極は、ランド部において半田等によりフレキシブルプリント配線板(FPC)と電気的に接続され、さらに、このFPCはドライバIC(駆動装置)に接続されている。そして、ドライバICからFPCを介して複数の個別電極に対して選択的に駆動電圧が印加されたときには、その個別電極と共通電極とに挟まれた圧電シートの部分が変形して、圧力室内のインクに圧力が付与される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−136663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載のインクジェットヘッドでは、複数の個別電極とドライバICとを電気的に接続するFPC等の配線部材が必要となるため、その分、製造コストが高くなってしまう。また、近年、画質の向上及びインクジェットヘッドの小型化の両方の要求を満足させるために、複数の圧力室をより高密度に配置する試みがなされているが、複数の圧力室を高密度に配置すると、これら複数の圧力室に夫々対向する複数の個別電極も高密度に配置する必要がある。しかし、密集して配置された複数の個別電極のランド部とFPCとを夫々半田等により接続することは非常に困難である。また、その電気的接続の信頼性を高めるために接続構造が複雑になる傾向があり、製造工程が複雑化するため製造コストの面で不利である。
【0005】
本発明の目的は、FPC等の配線部材を省略して部品点数を減らすとともに、製造工程を簡素化することが可能な液体噴射装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、液体を噴射する複数のノズルとこれら複数のノズルに夫々に連通する複数の圧力室とを夫々含む複数の液体流路と、前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させるアクチュエータとを備える液体噴射装置であって、前記液体流路は、積層された複数枚のプレートにより形成されており、前記複数のプレートに含まれる、前記複数の圧力室を形成する圧力室プレートと、少なくともこの圧力室プレートと対向する面において絶縁性を有し前記ノズルが形成されたノズルプレートとの間に、前記アクチュエータが配設され、前記アクチュエータは、前記複数の圧力室を覆う振動板と、この振動板の前記複数の圧力室と反対側の面に設けられた圧電層と、この圧電層の前記振動板と反対側の面において前記複数の圧力室と夫々対向する位置に形成された複数の個別電極とを有し、前記ノズルプレートの前記アクチュエータ側の面に、前記複数の個別電極と夫々接続される複数の配線部が形成されている液体噴射装置が提供される。
【0007】
この液体噴射装置は、アクチュエータを用いて複数の圧力室の容積を選択的に変化させることにより、その圧力室内の液体に圧力を付与してノズルから液体を噴射するように構成されている。ここで、複数の液体流路は複数枚のプレートにより形成され、これら複数枚のプレートに含まれる、圧力室プレートと絶縁材料からなるノズルプレートとの間にアクチュエータが配設されている。そして、ノズルプレートのアクチュエータ側の面には、アクチュエータの複数の個別電極と夫々接続される複数の配線部が形成されている。このように、複数の個別電極に接続される複数の配線部が、絶縁材料からなるノズルプレートに形成されているため、ノズルプレートに従来のFPC等の配線部材の機能をも持たせてこの配線部材を省略することができ、部品点数を減らして液体噴射装置の製造コストを低減することができる。また、駆動装置をノズルプレート上に配置することも可能となる。さらに、ノズルプレートをアクチュエータに接着すると同時に、複数の個別電極と複数の配線部とを電気的に接続することが可能になり、製造工程を簡素化することができる。
【0008】
本発明の液体噴射装置は、前記第1の形態において、前記液体流路は、前記アクチュエータを貫通するように形成されていてもよい。この場合、圧力室プレートとノズルプレートとの間にアクチュエータを配置することが可能になる。
【0009】
本発明の液体噴射装置は、上記形態において、前記圧電層には、前記液体流路の一部を構成する貫通孔が形成され、この貫通孔の内面に、前記液体が前記圧電層に浸透するのを防止する保護膜が形成されていてもよい。この保護膜により、液体が圧電層に浸透するのを防止することができる。特に、液体が導電性を有する場合には、この導電性の液体により個別電極間が短絡するのを防止できる。
【0010】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記ノズルプレートは、可撓性を有する絶縁材料で構成されていてもよい。従って、可撓性を有するFPC等のように、ノズルプレートを引き回すことが可能になり、配線部に接続される駆動装置等の配置自由度が高まる。
【0011】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記ノズルプレートの前記複数の個別電極と対向する部分に夫々複数の凹部が形成されていてもよい。従って、個別電極に駆動電圧が供給されて圧電層が変形したときに、その圧電層の変形が、ノズルプレートやこのノズルプレートと圧電層とを接着する接着材により妨げられず、アクチュエータの駆動効率が向上する。
【0012】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記振動板の前記複数の個別電極と対向する部分に夫々複数の凹部が形成されていてもよい。従って、この振動板の凹部が形成された面に一様な厚さで圧電層を形成すると、圧電層の個別電極が形成される部分に、振動板の凹部に対応する凹部が形成される。そのため、個別電極に駆動電圧が供給されて圧電層が変形しても、この圧電層の変形がノズルプレートにより妨げられることがなく、アクチュエータの駆動効率が向上する。
【0013】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記ノズルプレートと前記圧電層とが、圧縮された状態で導電性を有する異方性導電材料により接着されていてもよい。この場合、異方性導電材料により、圧電層とノズルプレートの接着と、個別電極と配線部との電気的接続を同時に行うことができ、製造工程を簡素化できる。
【0014】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の間の接続エリアでは前記異方性導電材料は圧縮されて導電性を有し、前記接続エリア以外のエリアでは前記異方性導電材料は導電性を有しなくてもよい。異方性導電材料は、個別電極の接点部と配線部の端子部の電気接続部では導電性を有するが、それ以外の部分では導電性を有しないため、配線部に駆動電圧が印加されたときに、配線部の端子部以外の部分により圧電層に不必要な静電容量が発生するのを極力抑制することができ、アクチュエータの駆動効率が向上する。
【0015】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部との間の離隔距離は、それ以外の部分における前記ノズルプレートと前記圧電層との間の離隔距離よりも小さくてもよい。この場合には、個別電極と配線部の間の異方性導電材料のみ圧縮してこれらを電気的に接続することが容易になる。
【0016】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、前記複数の配線部は、前記ノズルプレートの前記アクチュエータ側の面において、前記複数のノズル及び前記複数の圧力室と対向しない領域に形成されていてもよい。配線部がノズルと対向しない領域に形成されているため、配線部に液体が付着することがなく、特に、液体が導電性を有する場合に配線部同士の短絡を防止できる。また、配線部が圧力室と対向しない領域に形成されているため、配線部が液体噴射時の圧電層の変形を妨げることもない。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、前記形態において、さらに、前記複数の圧力室に連通する共通液室を有し、この共通液室は、前記アクチュエータに関して前記ノズルと反対側に配置されていてもよい。このように、共通液室がノズルと反対側に配置されているため、ノズルの配置スペースを広く確保できるため、その配置自由度が高まり、ノズルをより高密度に配置することが可能になる。
【0018】
本発明の液体噴射装置においては、さらに、前記ノズルは下方に向いており、前記共通液室は前記ノズルより上方に配置されていてもよい。この場合には、液体流路内に混入した気泡を、共通液室側へ排出することが容易になる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、前記アクチュエータと前記共通液室との間に前記複数の圧力室が形成されていてもよい。この場合には、共通液室は圧力室の上方に形成されるため、共通液室を配置するスペースを広く確保することができる。
【0020】
本発明の液体噴射装置において、前記共通液室から前記複数の圧力室を通って前記ノズルに連通する個別液体流路が形成され、前記個別液体流路の前記共通液室側ほど上方に向かって延在するように傾けて配置されてもよい。この場合には、圧力室内に形成される個別液体流路は、液体の流れの上流側ほど鉛直上方に向かって延在するので、液体流路内に混入した気泡は、圧力室内に留まることなく確実に共通液室側へ排出される。
【0021】
本発明の液体噴射装置において、前記可撓性を有する絶縁材料がポリイミドであってもよい。ポリイミドは可撓性を有する絶縁材料であるだけでなく、撥液性があるためノズルプレート表面での液体の流れが円滑になる。
【0022】
本発明の液体噴射装置において、前記液体噴射装置がインクジェットヘッドであってもよい。この場合、複数の個別電極をFPC等の配線部材との間で半田等により電気的に接続しないため、個別電極を高密度に配置することができる。
【0023】
本発明のインクジェットプリンタは本発明の液体噴射装置を備えていてもよい。この場合、インクジェットヘッドの個別電極と圧電アクチュエータを駆動するICとの間を接続する配線にFPC等の配線部材を使用しないため、これらの間の電気的接続の信頼性が高い。
【0024】
本発明の液体噴射装置の製造方法は、前記第1の形態の液体噴射装置を製造する方法であって、前記ノズルプレートの前記圧電層に接着される面に前記配線部を形成する配線部形成工程と、前記ノズルプレートを前記アクチュエータに接着する接着工程とを備え、前記接着工程において、前記配線部の端子部を前記個別電極の接点部に導通状態で接着するとともに、前記端子部以外の前記ノズルプレート部分を前記圧電層に絶縁状態で接着してもよい。この場合、ノズルプレート及びアクチュエータの接着と、アクチュエータ側の個別電極及びノズルプレート側の配線部の電気的接続を同時に行うことができ、製造工程を簡素化できる。また、配線部の端子部以外の部分を圧電層に絶縁状態で接着することにより、圧電層に不必要な静電容量が発生するのを極力抑制することができ、アクチュエータの駆動効率が向上する。
【0025】
本発明の液体噴射装置の製造方法は、前記接着工程の前に、前記ノズルプレート又は前記圧電層の接着面に異方性導電材料を付着させる付着工程を備え、前記接着工程において、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の一方の表面に付着した前記異方性導電材料に、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の他方を接触させ、この部分の前記異方性導電層を圧縮して前記個別電極と前記配線部とを導通状態で接続しながら、その他の部分の前記異方性導電材料によりノズルプレートを圧電層に接着してもよい。この場合には、ノズルプレートとアクチュエータの接着と個別電極と配線部との電気的接続とを1種類の異方性導電材料を用いて同時に行うことができるため、使用する接着材の種類を減らして製造コストを低減できる。
【0026】
本発明の液体噴射装置の製造方法は、前記接着工程の前に、前記振動板に、前記液体流路の一部を構成する孔を形成する孔形成工程と、この振動板の前記圧力室と反対側の表面に圧電材料の粒子を堆積させることにより、振動板の前記孔が形成されていない領域にのみ前記圧電層を形成する圧電層形成工程とを備えてもよい。このように、振動板に貫通孔を形成してから、圧電材料の粒子を振動板に堆積させることにより、孔が形成されていない領域にのみ圧電層を形成するため、圧電層を形成すると同時に、この圧電層に貫通孔を形成することができる。
【0027】
本発明の液体噴射装置の製造方法は、前記圧電層形成工程において前記圧電層の前記振動板の孔に対応する位置に形成され、前記液体流路の一部を構成する貫通孔の内面に、液体が圧電層に浸透するのを防止する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えてもよい。この場合、液体が貫通孔の内面から圧電層に浸透してしまうのを保護膜により防止できる。特に、液体が導電性を有する場合に、この導電性の液体により個別電極同士が短絡してしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態はノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例である。まず、インクジェットヘッド1を備えたインクジェットプリンタ100について簡単に説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ101と、このキャリッジ101に設けられて記録用紙Pに対してインクを噴射するシリアル式のインクジェットヘッド1と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ102を主に備えている。インクジェットヘッド1は、キャリッジ101と一体的に図1の左右方向(走査方向)へ移動して、その下面のインク噴射面に形成されたノズル20(図2〜図7参照)の出射口から記録用紙Pに対してインクを噴射する。そして、インクジェットヘッド1により記録された記録用紙Pは、搬送ローラ102により前方(紙送り方向)へ排出される。
【0029】
次に、インクジェットヘッド1について図2〜図7を参照して説明する。このインクジェットヘッド1は積層された複数枚のプレートにより構成されており、インクジェットヘッド1は、インクを噴射する複数のノズル20とこれら複数のノズル20に夫々に連通する複数の圧力室16とを夫々含む複数の個別インク流路2と、複数の圧力室16の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータ3とを備えている。
【0030】
図3に示すように、複数の個別インク流路2は、圧電アクチュエータ3の振動板30及び圧電層31を含む複数のプレートにより形成されている。これら複数のプレートは、上方から、マニホールドプレート10,11、ベースプレート12、圧力室プレート13、圧電アクチュエータ3の振動板30及び圧電層31、そして、ノズルプレート14の順に積層されている。ここで、マニホールドプレート10,11、ベースプレート12及び圧力室プレート13は夫々ステンレス鋼等の金属板であり、後述するマニホールド17や圧力室16等のインク流路をエッチングにより容易に形成することができる。一方、ノズルプレート14は、可撓性を有する合成樹脂材料、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料により形成される。
【0031】
まず、圧電アクチュエータ3以外のプレートについて順に説明する。2枚のマニホールドプレート10,11には、複数の圧力室16に連なるマニホールド17が形成されている。図2、図3に示すように、このマニホールド17は、平面視で複数の圧力室16の全てと重なるように形成されており、マニホールド17には、図示しないインク供給源からインク供給孔18を介してインクが供給される。また、2枚のマニホールドプレート10,11の間には、マニホールド17内でインクに混ざった塵等を除去するフィルタ19が設けられている。ベースプレート12には、マニホールド17と複数の圧力室16とを夫々連通させる複数の連通孔21が形成されている。
【0032】
圧力室プレート13には、図2に示すように平面に沿って配列された複数の圧力室16が形成されている。これら複数の圧力室16は、紙送り方向(図2の上下方向)に2列に配列されている。各圧力室16は、平面視で略楕円形状に形成されており、その長軸方向が左右方向(走査方向)となるように配置されている。また、各圧力室16は、図2における右端部においてベースプレート12に形成された連通孔21を介してマニホールド17に連通している。
【0033】
ノズルプレート14の、平面視で複数の圧力室16の図2における左端部と夫々重なる位置には、鉛直方向において下方へ向いた複数のノズル20が形成されている。図3〜図5に示すように、このノズルプレート14は、圧電アクチュエータ3の圧力室16と反対側の面に、圧縮された状態で導電性を有する異方性導電材料からなる接着材22により接着されている。そして、圧電アクチュエータ3は、圧力室プレート13とノズルプレート14の間に配設されており、マニホールド17及び圧力室16とノズル20とが圧電アクチュエータ3を挟んで互いに反対側に配置されている。このように、マニホールド17が圧電アクチュエータ3に関してノズル20と反対側に配置されているため、ノズル20を配置できる領域が広くなってその配置自由度が高まり、ノズル20をより高密度に配置することが可能になる。また、ノズル20は鉛直方向において下方に向いており、マニホールド17はノズル20よりも鉛直方向における上方に配置されているため、個別インク流路2内に混入した気泡がそれ自身の浮力によりマニホールド17へ移動しやすくなり、気泡をマニホールド17側へ排出することが容易になる。さらに、図4に示すように、インクジェットヘッド1がインクジェットプリンタ100が設置される面(水平面)に対して、矢印aの方向に僅かに傾斜して配置されて、ノズル20が斜め下方へ向いている場合には、破線の矢印で示すように、個別インク流路2内の気泡がさらにマニホールド17まで移動しやすくなる。
【0034】
このように、マニホールド17がノズル20よりも鉛直方向における上方側に配置されていると、個別インク流路2内に混入した気泡をその浮力によってマニホールド17へ移動させやすくなるが、特に、図4に示すように、個別インク流路2がインクの流れの上流側ほど鉛直方向における上方側に向かって延在するように形成されていれば、個別インク流路2内に混入した気泡をより確実にマニホールド17へ移動させることができる。すなわち、インクジェットヘッド1を水平面に対して傾斜して配置すれば、個別インク流路2内に混入した気泡をより確実にマニホールド17へ移動させることができる。
【0035】
そして、圧力室プレート13に形成された圧力室16とノズルプレート14に形成されたノズル20は、圧電アクチュエータ3の振動板30及び圧電層31に夫々形成された貫通孔35,36を介して連通している。また、ノズルプレート14の圧電アクチュエータ3側の面には、複数の個別電極32と夫々接続され且つ走査方向の一方(図2の右方)へ延びる複数の配線部34が形成され、さらに、ノズルプレート14の複数の配線部34が形成された面には、これら複数の配線部34に接続されたドライバIC38が配置されている。配線部34及びドライバIC38については、後ほど詳しく説明する。そして、図3、図5に示すように、インクジェットヘッド1内に、マニホールド17から圧力室16を経て、圧電アクチュエータ3を貫通してノズル20に至る、個別インク流路2が形成されている。
【0036】
次に、圧電アクチュエータ3について説明する。図2〜図7に示すように、圧電アクチュエータ3は、複数の圧力室16の下側を覆う振動板30と、この振動板30の複数の圧力室16と反対側の面に設けられた圧電層31と、この圧電層31の振動板30と反対側の面において複数の圧力室16と夫々対向する位置に形成された複数の個別電極32とを有する。
【0037】
振動板30は、平面視で略矩形状の金属板であり、例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金などからなる。この振動板30は、複数の圧力室16を塞ぐように圧力室プレート13の下面に接合されている。また、この振動板30は、複数の個別電極32に対向して個別電極32と振動板30との間の圧電層31に電界を作用させる共通電極を兼ねており、配線部40(図2参照)を介してグランド電位に保持されている。振動板30の下面には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電層31が形成されている。この圧電層31は、複数の圧力室16に跨って連続的に形成されている。
【0038】
振動板30と圧電層31の、平面視で圧力室16の図2における左端部と重なる位置には、夫々個別インク流路2の一部を構成する貫通孔35,36が形成されており、これら貫通孔35,36において個別インク流路2が圧電アクチュエータ3を貫通して、圧力室16とノズル20が連通している。ここで、圧電層31が貫通孔36において個別インク流路2に露出していると、導電性を有するインクが圧電層31に浸透して、このインクにより複数の個別電極32同士が短絡してしまう虞がある。そこで、本実施形態のインクジェットヘッドでは、貫通孔35,36の内面に、個別インク流路2を流れるインクが圧電層31に浸透するのを防止する保護膜37が形成されている。この保護膜37は、例えば、酸化ケイ素や窒化ケイ素からなる。
【0039】
圧電層31の下面には、圧力室16よりも一回り小さい楕円形の平面形状を有する複数の個別電極32が形成されている。これら複数の個別電極32は、平面視で、対応する圧力室16の中央部に重なる位置に夫々形成されている。また、個別電極32は金などの導電性材料からなる。さらに、図2〜図5及び図7に示すように、複数の個別電極32の長手方向端部(図2〜図5及び図7の右端部)からは、夫々、ノズルプレート14に形成された複数の配線部34を介してドライバIC38と電気的に接続される複数の接点部32aが、平面視で圧力室16と重ならない領域まで延びている。そして、複数の配線部34と接点部32aを介してドライバIC38から複数の個別電極32に対して選択的に駆動電圧が印加される。
【0040】
次に、圧電アクチュエータ3の作用について説明する。複数の個別電極32に対してドライバIC38から選択的に駆動電圧が印加されると、駆動電圧が供給された圧電層31上側の個別電極32とグランド電位に保持されている圧電層31下側の共通電極としての振動板30の電位が異なる状態となり、個別電極32と振動板30の間に挟まれた圧電層31の部分に上下方向の電界が生じる。すると、駆動電圧が印加された個別電極32の直下の圧電層31の部分が分極方向である上下方向と直交する水平方向に収縮する。このとき、この圧電層31の収縮に伴って振動板30が圧力室16側に凸となるように変形するため、圧力室16内の容積が減少して圧力室16内のインクに圧力が付与され、圧力室16に連通するノズル20からインクが噴射される。
【0041】
ところで、ノズルプレート14は可撓性を有する絶縁材料で形成され、図2〜図5及び図7に示すように、このノズルプレート14の圧電アクチュエータ3側の面に、端部(図2の左端部)に複数の個別電極32の接点部32aと夫々接続される端子部34aを有し、走査方向の一方向(図2の右方)へ延びる複数の配線部34が形成されている。これら複数の配線部34の個別電極32と反対側の端部はドライバIC38に接続され、ドライバIC38はノズルプレート14に配置されている。このように、複数の個別電極32とドライバIC38とが、ノズルプレート14に形成された複数の配線部34を介して電気的に接続されているため、従来は必要であったFPC等の配線部材が不要になり、部品点数を減らしてインクジェットヘッド1の製造コストを低減することができる。また、ノズルプレート14は、可撓性を有する絶縁材料で形成されているため、従来から使用されているFPC等の可撓性を有する配線部材と同様に、図3、図4に示すようにノズルプレート14を引き回すことが可能になり、ドライバIC38等の配置自由度が高まる。
【0042】
尚、図2に示すように、ノズルプレート14の複数の配線部34が形成された面には、さらに、共通電極としての振動板30をドライバIC38を介してグランド電位に保持する為の配線部40が形成されている。さらに、図2、図3に示すように、ノズルプレート14には、インクジェットプリンタ100の制御装置(図示省略)とドライバIC38とを接続する複数の配線部41も形成されている。
【0043】
ここで、ノズルプレート14は、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)、あるいは、異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste:ACP)からなる接着材22により接着されている。この異方性導電材料は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂の中に導電性粒子を分散させたものであり、圧縮されていな状態では絶縁性を有し、圧縮された状態では導電性を有する。そして、この接着材22は、個別電極32の接点部32aと配線部34の端子部34aの間の接続エリアでは圧縮されて導電性を有し、接着材22により接点部32aと端子部34aとが電気的に接続されている。しかし、接点部32aと端子部34aの電気接続部以外の部分では接着材22は圧縮されておらず絶縁性を有する。従って、この接点部32aと端子部34aの電気接続部以外の部分で、配線部34と振動板30との間に挟まれる圧電層31に不必要な静電容量が発生するのを抑制できるため、圧電アクチュエータ3の駆動効率が向上する。
【0044】
また、図5に示すように、個別電極32の接点部32aと、ノズルプレート14に形成された配線部34の端子部34aとの間の離隔距離(図5のD1)は、それ以外の部分におけるノズルプレート14と圧電層31との間の離隔距離(図5のD2)よりも小さくなっている。そのため、ノズルプレート14を圧電層31へ押しつけてノズルプレート14と圧電層31を接着する際に、個別電極32の接点部32aと配線部34の端子部34aの間の接着材22のみを圧縮して、個別電極32と配線部34とを電気的に接続することが容易になる。
【0045】
さらに、図2〜図5に示すように、ノズルプレート14の、複数の個別電極32と対向する部分には、夫々、矩形の平面形状を有する複数の凹部14aが形成されている。従って、個別電極32に駆動電圧が印加されて圧電層31が変形したときに、この圧電層31の変形が、ノズルプレート14やこのノズルプレート14と圧電層31とを接着する接着材22により妨げられず、圧電アクチュエータ3の駆動効率が向上する。尚、凹部14aは複数の個別電極32に亙って共通に形成されているわけではなく、図2に示すように、複数の個別電極32に対して夫々複数の凹部14aが個別に形成されているため、凹部14aの間の部分によってノズルプレート14の剛性がある程度確保されている。そのため、例えば、ノズル20からのパージ動作(気泡排出動作)後にワイパー等でインク噴射面(ノズルプレート14の下面)を拭く場合などに、ノズルプレート14が撓んでしまうのを防止できる。さらに、図2に示すように、これら複数の凹部14aの間の領域、即ち、複数のノズル20及び複数の圧力室16と対向しない領域に、複数の配線部34が形成されている。そのため、配線部34に導電性のインクが付着することがなく、配線部34同士の短絡を防止できる。また、個別電極32に駆動電圧が印加されたときに、配線部34が圧電層31の変形を妨げることもない。
【0046】
次に、前述したインクジェットヘッド1を製造する方法について説明する。まず、ノズルプレート14以外の複数のプレート(圧電アクチュエータ3の振動板30及び圧電層31を含む)を積層させる工程について図8を参照して説明する。図8(a)に示すように、まず、振動板30に個別インク流路2の一部を構成する貫通孔35をエッチング等により形成し(孔形成工程)、圧力室16が形成された圧力室プレート13と振動板30とを、金属拡散接合、あるいは、接着材等により接合する。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、振動板30の圧力室プレート13と反対側の表面に、圧電素子の粒子を堆積させて熱処理を施すことにより、振動板30の貫通孔35が形成されていない領域にのみ圧電層31を形成する(圧電層形成工程)。ここで、圧電素子を振動板30に堆積させる方法としては、例えば、超微粒子材料を高速で衝突させて堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)を用いて形成できる。その他、スパッタ法、あるいは、CVD(化学蒸着)法を用いることもできる。尚、振動板30に圧電素子の粒子を堆積させて圧電層31を形成すると、圧電層31の、振動板30の貫通孔35に対応する位置に、貫通孔35と同じく個別インク流路2の一部を構成する貫通孔36が同時に形成されることになる。
【0048】
そして、図8(c)に示すように、圧電層31の振動板30と反対側の面において、圧力室16と対向する領域に、スクリーン印刷や蒸着法等を用いて、個別電極32を形成し、さらに個別電極32に連なる接点部32aを形成する。さらに、図8(d)に示すように、振動板30と圧電層31に形成された貫通孔35,36の内面に、AD法、スパッタ法、あるいは、CVD法等を用いて、インクが圧電層31に浸透するのを防止する保護膜37を形成する(保護膜形成工程)。そして、圧力室プレート13の圧電アクチュエータ3と反対側の面に、ベースプレート12と2枚のマニホールドプレート10,11を接合する。尚、2枚のマニホールドプレート10,11、ベースプレート12、圧力室プレート13、及び、振動板30の、5枚の金属製プレートを先に拡散接合等により一度に接合してから、振動板30の圧力室16と反対側の面に圧電層31を形成してもよい。
【0049】
次に、ノズルプレート14を形成する工程について図9を参照して説明する。図9(a)に示すように、ノズルプレート14を圧電層31に接着したときに、複数の個別電極32に夫々対向することになる領域に複数の凹部14aを形成するとともに、エキシマレーザー加工等により複数のノズル20を形成する。次に、図9(b)に示すように、凹部14aよりも右側の部分に右方へ延びる配線部34(及び端子部34a)を形成する。そして、図9(c)に示すように、圧電層31に接着されるノズルプレート14の上面に、スクリーン印刷等により異方性導電材料からなる接着材22をスクリーン印刷等により付着させる(付着工程)。この付着工程においては、接着材22を、ノズルプレート14の圧電層31と接着される部分にのみパターニングして付着させてもよいが、接着材22をノズルプレート14の全面に付着させてもよい。この場合でも、ノズルプレート14の個別電極32に対向する部分に凹部14aが形成されているため、個別電極32に駆動電圧が印加されたときの圧電層31の変形が、ノズルプレート14やこのノズルプレート14に付着した接着材22により妨げられない。
【0050】
そして、図10に示すように、ノズルプレート14を圧電アクチュエータ3の圧電層31に接着材22により接着する(接着工程)。このとき、個別電極32の接点部32aを、配線部34の端子部34aの表面に付着した接着材22に接触させ、この部分の接着材22を圧縮して個別電極32と前記配線部34とを導通状態で接続するとともに、配線部34のその他の部分を圧縮されていない接着材22により絶縁状態で圧電層31に接着する。同時に、ノズルプレート14の配線部34以外の部分に付着した接着材22により、ノズルプレート14と圧電層31とを接着する。尚、個別電極32と配線部34は5μm程度の厚みを有するため、個別電極32の接点部32aと、ノズルプレート14に形成された配線部34の端子部34aとの間の離隔距離(図5のD1)は、それ以外の部分におけるノズルプレート14と圧電層31との間の離隔距離(図5のD2)よりも小さい。そのため、ノズルプレート14と圧電アクチュエータ3の圧電層31を接着する際に、ノズルプレート14を圧電層31に対して均等に押圧するだけで、個別電極32の接点部32aと配線部34の端子部34aの間の接着材22のみを圧縮することができ、個別電極32と配線部34を電気的に接続することが容易になる。
【0051】
尚、ノズル20の周辺部の厚さ(ノズルプレート14の図9における左端部)を、配線部34が形成される部分(ノズルプレート14の図9における右端部)の厚さよりも僅かに薄くすることにより、個別電極32の接点部32aと、ノズルプレート14に形成された配線部34の端子部34aとの間の離隔距離(図5のD1)を、それ以外の部分におけるノズルプレート14と圧電層31との間の離隔距離(図5のD2)よりも小さくしてもよい。
【0052】
以上説明したインクジェットヘッド1及びその製造方法によれば、次のような効果が得られる。圧電アクチュエータ3の複数の個別電極32とこれら複数の個別電極32に駆動電圧を供給するドライバIC38とを接続する複数の配線部34が、絶縁材料からなるノズルプレート14に形成されており、ノズルプレート14にFPC等の配線部材の機能を持たせてこの配線部材を省略することができるため、部品点数を減らしてインクジェットヘッド1の製造コストを低減することができる。また、ノズルプレート14上にドライバIC38を配置することができる。さらに、ノズルプレート14は可撓性を有するため、FPC等と同様に引き回すことができ、ドライバIC38の配置自由度が高まる。さらに、ノズルプレート14を圧電アクチュエータ3に接着すると同時に、複数の個別電極32と複数の配線部34とを電気的に接続することが可能になり、インクジェットヘッド1の製造工程を簡素化できる。
【0053】
また、圧電アクチュエータ3の圧電層31とノズルプレート14の接着工程において、圧電層31とノズルプレート14を異方性導電材料からなる接着材22により接着するため、個別電極32と配線部34との電気的接続を1種類の接着材22により一度に行うことができ、さらに製造工程を簡素化して、製造コストを低減できる。さらに、個別電極32と配線部34との間の接着材22は圧縮されて導電性を有するが、その他の部分の接着材22は圧縮されず絶縁性を有するため、個別電極32と配線部34との電気接続部以外の部分で、配線部34と振動板30との間に挟まれる圧電層31に不必要な静電容量が発生するのを抑制することができるため、圧電アクチュエータ3の駆動効率が向上する。
【0054】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0055】
[第1変更形態]
前記実施形態では、ノズルプレートの個別電極32と対向する部分に凹部が形成されているが、圧電層側に凹部が形成されていてもよい。例えば、図11に示すように、振動板30Aの複数の個別電極32と対向する部分に夫々複数の凹部30aが形成され、圧電層31Aに、振動板30Aの凹部30aに対応する凹部31aが形成されていてもよい。この場合、凹部30aが形成された振動板30Aの面に、AD法やCVD法等により一様な厚さで圧電層31Aを形成することにより、圧電層31Aの凹部31aも同時に形成することができる。尚、この場合には、圧電層31A側に接着材22を付着させてから、ノズルプレート14Aを圧電層31Aに接着することになる。
【0056】
[第2変更形態]
ノズルプレート14(又は圧電層31)に接着材22を付着させる付着工程において、接着材22をパターニングして付着させる場合には、接着材22によりノズルプレート14と圧電層31との間に隙間が形成され、この隙間により、圧電層31の変形がノズルプレート14やこのノズルプレート14に付着した接着材22により阻害されにくくなるため、図12に示すように、ノズルプレート14B(又は圧電層31)の凹部を省略してもよい。尚、接着材22をパターニングして付着させるには、前述のスクリーン印刷の他に、ノズルプレート14(14B)の全面に接着材22を付着させてから、圧電層31と接着されない部分の接着材22をレーザー等により部分的に除去することによっても可能である。
【0057】
[第3変更形態]
圧電層31に形成された個別電極32の接点部32aとノズルプレート14に形成された配線部34の端子部34aとの電気的接続と、この電気接続部以外の部分における圧電層31とノズルプレート14の接着を、別々の接着材料により行うこともできる。例えば、個別電極32と配線部34の電気的接続には導電性ペーストを用い、他の部分における圧電層31とノズルプレート14の接着には非導電性の接着材を用いてもよい。但し、この場合には、個別電極32と配線部34の電気的接続と、圧電層31とノズルプレート14の接着を、同時に行うことができるように、導電性ペーストと非導電性の接着材には、互いの硬化温度が近いものを使用することが好ましい。
【0058】
[第4変更形態]
ノズルプレートをステンレス鋼等の金属材料で形成し、この金属プレートの一表面にAD法、スパッタ法、あるいは、CVD法などによりアルミナ等の絶縁性材料の薄膜を形成することにより、この薄膜が形成された面においてノズルプレートが絶縁性を有するようにしてもよい。この場合、ノズルプレートの薄膜が形成された面を、圧電アクチュエータ3に対向し且つ複数の配線部34が形成される面とすればよい。
【0059】
[第5変更形態]
前記実施形態ではベースプレートを介して上方にマニホールドが形成され、下方に圧力室が形成されていたが、マニホールドの位置は圧力室の上方に限定されない。マニホールドの一部が圧力室と同じ高さに形成されていてもよく、例えば、圧力室の下面とマニホールドの下面が同じ高さであってもよい。図13に示すインクジェットヘッド200は、マニホールド117が形成されたマニホールドプレート112と、圧力室116が形成された圧力室プレート113と、振動板30及び圧電層31を有する圧電アクチュエータ3と、異方性導電層22と、ノズルプレート14とを備える。圧電アクチュエータ3の振動板30側には圧力室プレート113を介してマニホールドプレート112が接合され、圧電アクチュエータ3の圧電層31側には異方性導電層22を介してノズルプレート14が接合される。ここで、振動板30は圧力室116の下面を画成すると共に、マニホールド117の下面も画成している。すなわち、圧力室116の下面とマニホールド117の下面は同じ高さに形成されている。このように、マニホールドの一部が圧力室と同じ高さに形成されている場合には、インクジェットヘッドの厚さを薄くすることができる。
【0060】
前記実施形態は、インクを噴射するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、インク以外の液体を噴射する他の液体噴射装置に本発明を適用することもできる。例えば、導電ペーストを噴射して基板上に配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に噴射して有機エレクトロルミッセンスディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に噴射して光導波路等の光学デバイスを形成したりする場合などに用いられる、種々の液体噴射装置にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】傾斜して配置されたインクジェットヘッドの図3相当の断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】ノズルプレート14以外の複数のプレートを積層させる工程を示す図であり、(a)は圧力室プレートと振動板の接合工程、(b)は圧電層形成工程、(c)は個別電極の形成工程、(d)は保護膜形成工程、(e)はマニホールドプレート及びベースプレートとの接合工程を夫々示す。
【図9】ノズルプレートの形成工程を示す図であり、(a)はノズル及び凹部を形成する工程、(b)は配線部を形成する工程、(c)は接着材の付着工程を夫々示す。
【図10】ノズルプレート以外の積層された複数のプレートにノズルプレートを接着した状態を示す図である。
【図11】第1変更形態の図5相当の断面図である。
【図12】第2変更形態の図5相当の断面図である。
【図13】圧力室の隣にマニホールドが配置されたインクジェットヘッドの図5相当の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェットヘッド
2 個別インク流路
3 圧電アクチュエータ
13 圧力室プレート
14B ノズルプレート
14,14A,14B ノズルプレート
14a 凹部
16 圧力室
17 マニホールド
20 ノズル
22 接着材
30,31A 振動板
30a 凹部
31,31A 圧電層
32 個別電極
32a 接点部
34 配線部
34a 端子部
35 貫通孔
36 貫通孔
37 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置であって、
液体を噴射する複数のノズルとこれら複数のノズルに夫々に連通する複数の圧力室とを夫々含む複数の液体流路と、
前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させるアクチュエータと備え、
前記液体流路は、積層された複数枚のプレートにより形成されており、
前記複数のプレートに含まれる、前記複数の圧力室を形成する圧力室プレートと、少なくともこの圧力室プレートと対向する面において絶縁性を有し前記ノズルが形成されたノズルプレートとの間に、前記アクチュエータが配設され、
前記アクチュエータは、前記複数の圧力室を覆う振動板と、この振動板の前記複数の圧力室と反対側の面に設けられた圧電層と、この圧電層の前記振動板と反対側の面において前記複数の圧力室と夫々対向する位置に形成された複数の個別電極とを有し、
前記ノズルプレートの前記アクチュエータ側の面に、前記複数の個別電極と夫々接続される複数の配線部が形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体流路は、前記アクチュエータを貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記圧電層には、前記液体流路の一部を構成する貫通孔が形成され、この貫通孔の内面に、前記液体が前記圧電層に浸透するのを防止する保護膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記ノズルプレートは、可撓性を有する絶縁材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記ノズルプレートの前記複数の個別電極と対向する部分に夫々複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記振動板の前記複数の個別電極と対向する部分に夫々複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ノズルプレートと前記圧電層とが、圧縮された状態で導電性を有する異方性導電材料により接着されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の間の接続エリアでは前記異方性導電材料は圧縮されて導電性を有し、前記接続エリア以外のエリアでは前記異方性導電材料は導電性を有しないことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部との間の離隔距離は、それ以外の部分における前記ノズルプレートと前記圧電層との間の離隔距離よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記複数の配線部は、前記ノズルプレートの前記アクチュエータ側の面において、前記複数のノズル及び前記複数の圧力室と対向しない領域に形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項11】
さらに、前記複数の圧力室に連通する共通液室を有し、
この共通液室は、前記アクチュエータに関して前記ノズルと反対側に配置されていることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記ノズルは下方に向いており、前記共通液室は前記ノズルより上方に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記アクチュエータと前記共通液室との間に前記複数の圧力室が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記共通液室から前記複数の圧力室を通って前記ノズルに連通する個別液体流路が形成され、前記個別液体流路の前記共通液室側ほど上方に向かって延在するように傾けて配置されることを特徴とする請求項12に記載の液体噴射装置。
【請求項15】
前記可撓性を有する絶縁材料がポリイミドであることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項16】
前記液体噴射装置がインクジェットヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項17】
請求項16に記載の液体噴射装置を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項18】
請求項1の液体噴射装置を製造する方法であって、
前記ノズルプレートの前記圧電層に接着される面に前記配線部を形成する配線部形成工程と、
前記ノズルプレートを前記アクチュエータに接着する接着工程とを備え、
前記接着工程において、前記配線部の端子部を前記個別電極の接点部に導通状態で接着するとともに、前記端子部以外の前記ノズルプレート部分を前記圧電層に絶縁状態で接着することを特徴とする液体噴射装置の製造方法。
【請求項19】
前記接着工程の前に、前記ノズルプレート又は前記圧電層の接着面に異方性導電材料を付着させる付着工程を備え、
前記接着工程において、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の一方の表面に付着した前記異方性導電材料に、前記個別電極の接点部と前記配線部の端子部の他方を接触させ、この部分の前記異方性導電層を圧縮して前記個別電極と前記配線部とを導通状態で接続しながら、その他の部分の前記異方性導電材料によりノズルプレートを圧電層に接着することを特徴とする請求項18に記載の液体噴射装置の製造方法。
【請求項20】
前記接着工程の前に、前記振動板に、前記液体流路の一部を構成する孔を形成する孔形成工程と、この振動板の前記圧力室と反対側の表面に圧電材料の粒子を堆積させることにより、振動板の前記孔が形成されていない領域にのみ前記圧電層を形成する圧電層形成工程とを備えたことを特徴とする請求項18に記載の液体噴射装置の製造方法。
【請求項21】
前記圧電層形成工程において前記圧電層の前記振動板の孔に対応する位置に形成され、前記液体流路の一部を構成する貫通孔の内面に、液体が圧電層に浸透するのを防止する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることを特徴とする請求項20に記載の液体噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−116953(P2006−116953A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275211(P2005−275211)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】