液体噴射装置及びギヤポンプ
【課題】 液体吸引量のバラツキを低減することができる液体噴射装置及びギヤポンプを提供する。
【解決手段】 ハウジング21の底面に形成された呼び水部29は、軸シール部材48の基盤部49によって封止され、呼び水部29と基盤部49の上面48aとによって略円柱状の呼び水室PRが形成される。そして、ハウジング21の底面に突設された第1バネ座32と軸シール部材48に形成された第2バネ座48dとの間には、コイルばねSが配設される。クリーニング時にギヤポンプGPが吸引開始した際に、その負圧で軸シール部材48が撓み、呼び水室PRの容積が縮小し、呼び水室PR内のインクはハウジング21内に吸引される。そして、クリーニング後は、コイルばねSの作用によって、軸シール部材48が元に戻り、呼び水室PRはインクで満たされる。
【解決手段】 ハウジング21の底面に形成された呼び水部29は、軸シール部材48の基盤部49によって封止され、呼び水部29と基盤部49の上面48aとによって略円柱状の呼び水室PRが形成される。そして、ハウジング21の底面に突設された第1バネ座32と軸シール部材48に形成された第2バネ座48dとの間には、コイルばねSが配設される。クリーニング時にギヤポンプGPが吸引開始した際に、その負圧で軸シール部材48が撓み、呼び水室PRの容積が縮小し、呼び水室PR内のインクはハウジング21内に吸引される。そして、クリーニング後は、コイルばねSの作用によって、軸シール部材48が元に戻り、呼び水室PRはインクで満たされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及びギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギヤポンプは、他のポンプに比べて構造が簡単である利点を有している。このギヤポンプとして、例えば、図16に示すようなギヤポンプ100がある。このギヤポンプ100は、ハウジング101内の収容室102に駆動歯車103及び従動歯車104を備えている。駆動歯車103が、図示しない駆動軸の回転により回転すると、従動歯車104は、図示しない従動軸に支持されながら駆動歯車103に従動して回転する。このとき、前記収容室102内の吸引室105のインクが、駆動歯車103及び従動歯車104の歯溝と収容室102の側面106とに閉じこめられて、吐出室107に送り出される。このギヤポンプ100をDCモータあるいはステッピングモータで駆動して、モータの回転数を制御することにより、インクの吸引量を選択できる。そして、ノズル1本当たりの吸引量を常に一定に保つようにし、良好な印字を保つために必要な吸引量以上にインクを消費するのを防止していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−328730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のギヤポンプ100は、収容室102内にインクがない状態では、その負圧発生能力が低下しているため、吸引量のバラツキが大きくなっていた。詳述すると、クリーニングの際は、まず図示しない記録ヘッドからギヤポンプ100までインクを吸引し、クリーニングに必要な負圧発生能力が確保された後、即ちキャップ内部に十分な負圧が発生できるようになってからも、一定時間ポンプを駆動するシーケンスを予め組んでいた。このとき、クリーニング前半のギヤポンプ100までインクが到達するまでの時間のバラツキが多いと、それに伴い、ギヤポンプ100の駆動時間からクリーニング前半のギヤポンプ100までインクが到達するまでの時間を減算した時間である、実質的なクリーニングの時間のバラツキが多くなっていた。
【0004】
すなわち、例えば、クリーニング前半のギヤポンプ100の負圧発生能力が高く、短時間でギヤポンプ100までインクが到達する場合には、キャップ内に十分な負圧が発生した状態でのクリーニングである実質的なクリーニングの時間が長時間になってしまい、この結果、クリーニング時に多量のインクを消費してしまっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、液体吸引量のバラツキを低減することができる液体噴射装置及びギヤポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を吐出する液体噴射ヘッドを、流路を介して吸引加圧ポンプに接続されたキャップ手段により封止して、前記吸引加圧ポンプが発生する負圧により、前記液体噴射ヘッドから液体を排出させる液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えた。
【0007】
この発明によれば、吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えたので、例えば、吸引加圧ポンプ駆動開始時に、誘導液体貯留室内の液体を呼び水として機能させることができるため、短時間で液体噴射ヘッドから吸引加圧ポンプまで液体を呼び込むことができる。こ
の結果、液体が液体噴射ヘッドから吸引加圧ポンプまで到達する時間のバラツキが小さくなるため、例えば、液体噴射ヘッドから液体を吸引する時間のバラツキが小さくなる。従って、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0008】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小する。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小するので、例えば、吸引加圧ポンプ駆動開始時に発生した負圧により、誘導液体貯留室の容積が縮小する。従って、誘導液体貯留室内の液体を吸引加圧ポンプに供給することができる。
【0009】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、前記吸引加圧ポンプのうち前記キャップ手段側に設けられた。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの誘導液体貯留室は、吸引加圧ポンプのうちキャップ手段(上流)側に設けられたので、吸引加圧ポンプが吸引を開始した際に、即座に誘導液体貯留室内の液体を吸引加圧ポンプ内に吸引することができる。従って、吸引開始後、即座に吸引加圧ポンプの負圧発生能力を向上させることができるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0010】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室に、前記誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えた。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの誘導液体貯留室に、誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えたので、例えば、吸引加圧ポンプが吸引を終了した際に、付勢手段によって誘導液体貯留室の容積を拡大することができる。従って、誘導液体貯留室内に確実に液体を貯留することができる。
【0011】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプは、ギヤポンプである。
この発明によれば、吸引加圧ポンプは、ギヤポンプであるので、吸引加圧ポンプの小型化・薄型化を図ることができるとともに、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0012】
本発明のギヤポンプは、ハウジングに設けられた収容室内に駆動歯車及び従動歯車を備え、前記駆動歯車及び従動歯車の回転により、吸引側から吐出側に流体を導出するギヤポンプにおいて、前記収容室に連通し、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、前記誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、前記可撓性部材は、前記誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、前記誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させる。
【0013】
この発明によれば、収容室に連通するとともに、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、その誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、可撓性部材は、誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させる。この結果、例えば、ギヤポンプ駆動開始時に、誘導液体貯留室の液体を呼び水として機能させることができるので、ギヤポンプの負圧発生能力が向上し、短時間で液体噴射ヘッドからギヤポンプまで液体を呼び込むことができる。従って、液体が液体噴射ヘッドからギヤポンプまで到達する時間のバラツキが小さくなるため、液体噴射ヘッドから液体を吸引する時間のバラツキが小さくなるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0014】
このギヤポンプにおいて、前記誘導液体貯留室は、前記収容室より上流側に備えられた。
この発明によれば、誘導液体貯留室は、収容室より上流側に備えられたので、例えば、ギヤポンプが吸引を開始した際に、即座に誘導液体貯留室内の液体を収容室に呼び込むことができる。従って、ギヤポンプが吸引を開始した際に、即座にギヤポンプの負圧発生能力を向上させることができるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0015】
このギヤポンプにおいて、前記可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材である。
この発明によれば、可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材であるため、可撓性部材(誘導液体貯留室)のために新たに部品を追加する必要がないので、装置全体を小型化し、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1は、本実施形態のプリンタの概略を説明するための斜視図である。図2は、本実施形態の記録ヘッドへのインク供給系を説明するためのブロック図である。
【0017】
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンタ1は、略直方形状のフレーム2を備えている。このフレーム2の上面には、給紙トレイ3が設けられ、さらに、フレーム2の前面には、排紙トレイ4が設けられている。この給紙トレイ3及び排紙トレイ4は、図示しないヒンジ構造によってフレーム2に対して折り畳み収容可能となるように構成されている。
【0018】
このフレーム2内には、その長手方向にプラテン5が配設され、このプラテン5上には、図示しない紙送り機構によって、給紙トレイ3からフレーム2内に挿入された記録用紙が給送されるようになっている。そして、この給送された記録用紙は、排紙トレイ4からフレーム2外へ排出されるようになっている。
【0019】
前記フレーム2内には、プラテン5と平行となるようにガイド部材6が架設されている。このガイド部材6には、同ガイド部材6に沿って移動可能なキャリッジ7が挿通支持されている。また、前記フレーム2には、キャリッジモータ(図示しない)が取着され、このキャリッジモータは、一対のプーリ(図示しない)に掛け装されたタイミングベルト(図示しない)を介してキャリッジ7が駆動連結されている。このように構成することによって、キャリッジモータが駆動すると、その駆動力はタイミングベルトを介してキャリッジ7に伝達される。この駆動力を受けてキャリッジ7は、ガイド部材6に案内されプラテン5と平行(主走査方向)に往復移動するようになっている。
【0020】
一方、前記キャリッジ7の下面(プラテン5と対向する面)には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド8が設けられている。この記録ヘッド8は、前記記録用紙に対向するようにノズル形成面8a(図2参照)を有し、このノズル形成面8aには、1列あたりn個(nは自然数)のノズルN(図2参照)からなるノズル列(図示せず)が6列形成されている。本実施例では、説明の便宜上1列あたりn個のノズルNからなるノズル列を6列形成したが、この限りではなく1列あたりのノズルNの数及びノズル列の数は、適宜変更しても良い。
【0021】
この記録ヘッド8には、フレーム2内に設けられた第1及び第2のインクカートリッジ9,10から、後述するように、各ノズルにそれぞれ対応した色(本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダ)の液体としてのインクが供給されるようになっている。そして、記録ヘッド8に流入したインクは、圧電素
子8b(図2参照)によって加圧され、同記録ヘッド8の前記ノズルNからインク滴として吐出されることによってドットを形成する。つまり、記録ヘッド8に形成された各ノズルNからは、それぞれ対応する色である、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダが吐出されるようになっている。
【0022】
前記プリンタ1では、キャリッジ7を往復移動させながらインク滴を記録用紙に吐出させ印刷するための領域を印刷領域としている。さらに、プリンタ1には、非印刷時にノズルNを封止するための非印刷領域が設けられ、その非印刷領域には、図1に示すように、キャップホルダ11が設けられている。
【0023】
前記キャップホルダ11には、記録ヘッド8のノズル形成面8aと対向するように、可撓性を有するキャップ手段としてのキャップ部材12が設けられている。キャップホルダ11は、図示しない昇降機構を介して、キャップ部材12を記録ヘッド8のノズル形成面8aに密着させることによって、各ノズルNを封止するようになっている。また、図2に示すように、キャップ部材12は、その底部に同キャップ部材12内と連通する第1及び第2の連通口12a,12bが形成され、この第1の連通口12aにはチューブT1を介してキャップホルダ11外にてキャップ開放バルブ13が接続されている。このキャップ開放バルブ13は、キャップ部材12とノズル形成面8aを密着させることによって形成される空間を適宜開放するようになっている。さらに、第2の連通口12bは、流路としてのチューブT2を介して吸引加圧ポンプとしてのギヤポンプGPの吸引口(図示しない)に接続されている。このギヤポンプGPは、駆動歯車35、従動歯車40を備えていて、駆動モータDMから駆動力が伝達されると同駆動歯車35、従動歯車40が回転駆動されて、キャップ部材12に負圧をかけるようになっている。つまり、キャップ開放バルブ13が閉じている状態であって、キャップ部材12によって前記ノズル形成面8aを封止している際に、ギヤポンプGPを駆動させることによって、ノズル形成面8aのノズルNに負圧をかけてクリーニングすることができるようになっている。
【0024】
このギヤポンプGPの排出口(図示しない)は、チューブT3を介してチェックバルブ14が接続され、このチェックバルブ14には、チューブT4を介して第1のインクカートリッジ9の流体導入部材9aが接続されている。
【0025】
この第1のインクカートリッジ9は、区画板15により2つの収容部に区画されており、一方の収容部にはブラックのインクを貯留するインクパックBK、他方の収容部にはインクを吸収するインク吸収体16を収容している。このインクパックBKは、チューブT5を介して前記キャリッジ7の記録ヘッド8に接続されている。このインク吸収体16は、例えば、スポンジ等の吸水性を有する多孔質材料である。そして、第1のインクカートリッジ9には、ギヤポンプGPによってキャップ部材12から吸引された流体としての廃インク及び流体としての空気が流体導入部材9aから導入されるようになっている。このとき、第1のインクカートリッジ9内に流入する廃インクは、インク吸収体16によって吸収されるようになっている。また、インクパックBKは導入された空気によって加圧される。なお、第1のインクカートリッジ9に流入した廃インク、空気はチェックバルブ14によって、ギヤポンプGP側への逆流を防止される。
【0026】
前記第1のインクカートリッジ9の空気導出部材9bには、チューブT6を介して第2のインクカートリッジ10の空気導入部材10aが接続されていて、同第1のインクカートリッジ9及び同第2のインクカートリッジ10は互いに連通している。そして、第1のインクカートリッジ9に導入された空気を、空気導出部材9b、チューブT6、空気導入部材10aを介して第2のインクカートリッジ10内に供給するようになっている。この第2のインクカートリッジ10は、区画板17によって区画される各収容部に、それぞれシアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダのインクをそれぞれ貯留す
るインクパックC,M,Y,LC,LMを収容している。この各インクパックC,M,Y,LC,LMは、それぞれチューブT7〜T11を介して、前記キャリッジ7の記録ヘッド8に接続されている。この各インクパックC,M,Y,LC,LMは、第2のインクカートリッジ10内に導入された空気によって加圧されると、各インクパックC,M,Y,LC,LM内のインクが押し出されてチューブT7〜T11を介して記録ヘッド8にそれぞれ供給される。また、この第2のインクカートリッジ10の空気導出部材10bには、チューブT12を介して、同第2のインクカートリッジ10内を適宜開放制御する開閉バルブ装置18が接続されている。
【0027】
このように構成することによって、ギヤポンプGPを駆動すると、クリーニングが行われる。すなわち、キャップ部材12から廃インク及び空気が吸引され、この廃インク及び空気は、キャップ部材12→チューブT2→ギヤポンプGP→チューブT3→チェックバルブ14→チューブT4を順に流動した後、第1のインクカートリッジ9内に流入する。このとき、第1のインクカートリッジ9内に流入する廃インクは、上述したインク吸収体16によって吸収されるので、同第1のインクカートリッジ9内には、流入した空気(以下、加圧空気という)だけ流動する。そして、この加圧空気は、第1のインクカートリッジ9内からチューブT6を介して第2のインクカートリッジ10に流入される。このとき、開閉バルブ装置18は閉じているため、第1及び第2のインクカートリッジ9,10は蓄圧される。
【0028】
第1及び第2のインクカートリッジ9,10内の空気圧は常に偏倚がなく同等であるので、ギヤポンプGPが駆動すると、両第1及び第2のインクカートリッジ9,10内のそれぞれのインクパックBK,C,M,Y,LC,LMは、上述した加圧空気によって加圧されるようになっている。これによって、各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMに貯留されたインクは、それぞれ前記キャリッジ7の記録ヘッド8に圧送されるようになっている。
【0029】
つまり、本実施形態のプリンタ1では、ギヤポンプGPがキャップ部材12に負圧をかけるクリーニング用のポンプ、及び各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMを加圧する加圧用のポンプを兼ねるようになっている。そして、ギヤポンプGPを駆動すると、キャップ部材12に負圧をかけて廃インク及び空気を吸引するとともに、各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMを加圧し、記録ヘッド8に各インクを圧送するようになっている。
【0030】
また、プリンタ1は、コントローラCTを備えている。このコントローラCTは、プリンタ1を制御するための駆動制御回路を備えていて、前記キャップ開放バルブ13、前記開閉バルブ装置18、駆動モータDMに、それぞれを駆動するための駆動信号SG1〜SG3を供給し駆動制御するようになっている。そして、前記駆動モータDMが駆動すると、図示しない駆動機構を介して前記ギヤポンプGPが駆動されるようになっている。
【0031】
(ギヤポンプGP)
次に、ギヤポンプGPについて、図3〜図15に従って説明する。図3はギヤポンプGPの全体斜視図、図4はギヤポンプGPの分解斜視図である。図3に示すように、ギヤポンプGPは、ハウジング21、上側封止部A及び下側封止部Bを備えている。ハウジング21の底面側に配設された下側封止部Bからは、駆動軸22が突出している。この駆動軸22は、前記駆動機構に連結され、前記駆動モータDMの駆動により回転する。
【0032】
(ハウジング21、駆動歯車35及び従動歯車40)
まず、ハウジング21について図5〜図8に従って説明する。図5及び図6は、ハウジング21とハウジング21に収容される駆動歯車35及び従動歯車40の斜視図である。
図7は駆動歯車35及び従動歯車40を収容したハウジング21の平面図、図8はハウジング21の底面図である。
【0033】
図5に示すように、ハウジング21は、略直方体形状に形成され、その上面21aには、駆動歯車35及び従動歯車40を収容する収容室23が凹設されている。この収容室23は、第1の収容室24と第2の収容室25とから構成されている。図7に示すように、第1及び第2の収容室24,25は、円状に凹設され、その一部において重なり合って、全体として収容室23を形成している。また、収容室23の内周面には、第1及び第2の収容室24,25にそれぞれ挟まれるように、吸引部26及び吐出部27が凹設されている。
【0034】
また、図7に示すように、収容室23の底面であって、吸引部26側には、導入口28が形成されている。導入口28は、ハウジング21を貫通し、図8に示すように、ハウジング21の底面21bに形成された呼び水部29の底面で開口している。この呼び水部29は、底面21bに形成された溝部21cを避けて、底面21bに凹設されている。さらに、図7に示すように、収容室23の底面であって、吐出部27側には、吐出口30が形成されている。吐出口30は、ハウジング21内を貫通し、図8に示すように、底面21bで開口している。底面21b側で開口した吐出口30は、底面21bに形成された溝部21cに連通している。
【0035】
図5及び図13に示すように、収容室23の底面であって、従動歯車40と対向する位置には、第1の軸受部21dが円筒状に凹設されている。第1の軸受部21dの深さは、ハウジング21の半分くらいの深さとなっている。この第1の軸受部21dは、従動歯車40の従動軸44を支持する。また、図7に示すように、ハウジング21の上面21aには、収容室23の開口を囲むように、突条21eが楕円状に突設されている。この突条21eは、上面21aの収容室23の開口から若干離間した位置に形成されている。
【0036】
図6及び図8に示すように、ハウジング21の底面21bであって、呼び水部29の図8における左側には、凹部21fが形成されている。図8に示すように、凹部21fの底面には、第2の軸受部31が貫通形成されている。図5に示すように、第2の軸受部31は、ハウジング21内を貫通し、第1の収容室24の中央位置で開口している。この第2の軸受部31には、駆動歯車35に連結される駆動軸22が回転可能に支持される。また、図6に示すように、ハウジング21に形成された呼び水部29の底面であって、第1の軸受部21dと同心円状に位置するようにして、第1バネ座32が円筒状に突出形成されている。
【0037】
また、図5に示すように、ハウジング21の上面21aの四隅には、円筒状の嵌挿部34が形成されている。各嵌挿部34は、ボルトBT(図4参照)を螺合可能に嵌挿する螺合孔R1を有し、図6に示すように、この螺合孔R1はハウジング21内を貫通し、底面21bで開口している。また、図5に示すように、上面21aの両縁には、支持板SPが立設されている。
【0038】
次に、駆動歯車35及び従動歯車40について説明する。図6に示すように、駆動歯車35は、平歯車であって、その中央に第1の軸孔38を備えている。第1の軸孔38は、断面略長方形状に形成され、下面35bのみにおいて開口している。また、図5に示すように、駆動歯車35の上面35aには、環状突部36が突設されている。また、図6に示すように、駆動歯車35の下面35bには、第1の軸孔38の周囲に環状突部37が形成されている。
【0039】
駆動歯車35と歯合する従動歯車40は、平歯車であって、図6に示すように中央に第
2の軸孔43を備えている。第2の軸孔43は、下面40bのみにおいて開口している。また、図5に示すように、従動歯車40の上面40aには、環状突部41が形成されている。さらに、図6に示すように、下面40bには、第2の軸孔43の周囲に環状突部42が突設されている。
【0040】
これらの駆動歯車35及び従動歯車40は、図7に示すように、互いに歯合した状態で第1の収容室24及び第2の収容室25にそれぞれ収容されている。第1の収容室24に収容された駆動歯車35の第1の軸孔38(図6参照)には、その下面35b側から、ハウジング21の第2の軸受部31に貫通された駆動軸22(図4参照)が貫挿される。また、第2の収容室25に収容された従動歯車40の第2の軸孔43(図6参照)には、その下面40b側から、ハウジング21の第1の軸受部21dに支持された従動軸44(図5参照)が貫挿される。
【0041】
そして、図7に示すように、収容室23内には、駆動歯車35及び従動歯車40に区画されることにより、吸引室45及び吐出室46が形成される。これらの吸引室45及び吐出室46は、駆動歯車35及び従動歯車40の歯合位置を挟むように設けられている。吸引室45は、その一側面が吸引部26によって構成され、吐出室46は、その一側面が吐出部27によって構成されている。
【0042】
吸引室45には、ハウジング21に形成された呼び水部29及び導入口28を介してインクが外部より流入される。そして、駆動歯車35及び従動歯車40が、駆動軸22の回転により図7中r1方向及びr2方向にそれぞれ回転すると、吸引室45内(吸引側)のインクが、収容室23の内周面と、駆動歯車35及び従動歯車40の歯溝とからなる空間に閉じこめられて吐出室46側(吐出側)に移送される。そして、駆動歯車35及び従動歯車40の歯先が収容室23の内周面から離間すると、閉じこめられたインクが吐出室46に吐出される。その結果、吸引室45は比較的低圧になり、吐出室46は、吸引室45に比べて高圧の状態になる。吐出室46内のインクは、駆動歯車35及び従動歯車40から順次送り出されるインクの圧力により、吐出口30を介して、溝部21c(図8参照)に押し出される。
【0043】
(下側封止部B)
次に、ハウジング21の呼び水部29等を閉塞する下側封止部Bについて説明する。この下側封止部Bは、図4に示すように、可撓性部材、封止部材としての軸シール部材48及び下カバー55を備えている。図9及び図10は、軸シール部材48の斜視図、図11及び図12は、下カバー55の斜視図、図13及び図14はギヤポンプGPの部分断面図である。
【0044】
まず、軸シール部材48について説明する。図9に示すように、軸シール部材48は、エラストマからなり、板状に形成された基盤部49を備えている。基盤部49の上面48aには、有蓋円筒状の第1のシール部50が形成されている。第1のシール部50の外周面下側には、肉厚部51が形成されている。また、第1のシール部50の蓋部52には、開口部53が貫通形成されている。図10に示すように、第1のシール部50内に設けられた軸孔50aは、下面48bで開口している。さらに、基盤部49の上面48a及び下面48bには、第1シール突条48cがそれぞれ形成されている。
【0045】
また、図9及び図10に示すように、基盤部49の上面48a及び下面48bであって、第1のシール部50の右側には、円環状の第2バネ座48dがそれぞれ形成されている。この第2バネ座48dよりも、図中右側には、連通孔48eが貫通形成されている。また、基盤部49の端であって、第1のシール部50よりも図9中奥側には、連通溝48fが軸シール部材48の長手方向と平行に延びるように貫通形成されている。さらに、基盤
部49の上面48a及び下面48bには、この連通溝48fを囲むように第3シール突条48gがそれぞれ形成されている。そして、基盤部49の上面48a及び下面48bには、基盤部49の周縁に沿って、第4シール突条48hが形成されている。この基盤部49の外側面の2箇所には、外側に突出した固定片48iがそれぞれ形成されている。各固定片48iは、孔48jをそれぞれ備えている。
【0046】
この軸シール部材48は、ハウジング21の底面21bに形成された2つの突部21h(図6参照)が、固定片48iの孔48jに貫挿され、第1のシール部50が、ハウジング21の凹部21fに嵌着されることで、ハウジング21に対して固定される。
【0047】
また、図13に示すように、基盤部49は、ハウジング21の底面21b側から、ハウジング21の呼び水部29を閉塞するように配設されている。さらに、軸シール部材48がハウジング21に固定されると、基盤部49に形成された連通溝48fは、ハウジング21の底面21bに形成された溝部21c(図8参照)と連結される。そして、基盤部49に形成された連通孔48eは、ハウジング21に形成された呼び水部29の内側に配置される(図8参照)。図13に示すように、この呼び水部29(収容室の開口)は、軸シール部材48の基盤部49によって封止され、呼び水部29と基盤部49の上面48aとによって略円柱状の誘導液体貯留室としての呼び水室PR(図8及び図13参照)が形成される。そして、図13に示すように、ハウジング21の底面に突設された第1バネ座32と軸シール部材48に形成された第2バネ座48dとの間には、付勢手段としてのコイルばねSが配設される。このコイルばねSのバネ荷重W1により、軸シール部材48は下カバー55に当接するようになっている。また、コイルばねSのバネ荷重W1は、クリーニング時の負圧では伸縮するが、それ以外の圧力では伸縮しない程度に設定されている。例えば、クリーニング後にキャップ部材12やチューブT2に残留したインクを排出するために、キャップ部材12を記録ヘッド8から外した後にする吸引(以下、空吸引という)の負圧では伸縮しない程度に設定されている。
【0048】
次に、下カバー55について図11及び図12に従って説明する。下カバー55は、板状のカバー基盤部56を備えている。カバー基盤部56の両側面に設けられた段差面には、掛止部Kが突出形成されている。また、図11に示すように、カバー基盤部56であって、下カバー55の上面55aには、略中央に、第1圧接部55cが上面55aから若干突出するように形成されている。第1圧接部55cは、軸シール部材48の下面48b側から下カバー55が取着された際に、軸シール部材48に形成された第1シール突条48cに圧接されるようになっている。
【0049】
さらに、下カバー55の上面55aには、第2及び第3圧接部55d,55eが形成されている。第2圧接部55dは、第1圧接部55cの図11中右側に、上面55aから若干突出するように形成され、軸シール部材48の下面48bから下カバー55が取着された際に、軸シール部材48の第2バネ座48dに圧接される。第3圧接部55eは、略楕円状に若干突出するように形成されており、軸シール部材48の第3及び第4シール突条48g,48h(図10参照)に圧接される。
【0050】
図11及び図12に示すように、第1圧接部55cの内側には、第1の軸孔57が形成されている。第1の軸孔57は、カバー基盤部56及び下カバー55の底面55bに形成された第1の軸受部58を貫通している。さらに、下カバー55の上面55aには、第1の軸孔57に連通する、空気溝59が形成されている。この空気溝59は、直線状に上面55aに凹設されており、一端が第1の軸孔57に連通し、他端が上面55aで開口した空気孔60に連通している。空気孔60は、図13に示すように、カバー基盤部56内に、その厚み方向に延びるように形成され、カバー基盤部56の底面55bに形成された抵抗体収容部61の内側に連通している。図12に示すように、抵抗体収容部61は円筒状
に形成されており、下カバー55の底面55b側で開口している。この抵抗体収容部61には、多孔質金属材料(焼結メタル)からなる抵抗体62が嵌着される。この抵抗体62は、空気孔60側に流入する空気量を制限する抵抗体として機能する。
【0051】
また、第1の軸受部58には、第2のシール部63が嵌着される。第2のシール部63は、エラストマからなり、大径部64と小径部65とから構成される。大径部64は、略円筒状に形成され、第1の軸受部58に対し、しまり嵌めとなるような内径を有している。小径部65は、有底円筒状に形成されており、駆動軸22の外径よりも若干大きな内径を有している。そして、小径部65の底部66には、開口部67が貫通形成されている。この開口部67には、駆動軸22が摺接するように貫挿される。
【0052】
図13に示すように、第2のシール部63が下カバー55に嵌着されると、嵌着された第2のシール部63の開口部67から駆動軸22が突出する。また、開口部67は、駆動軸22に対する接触面圧を高め、隙間から第1の軸孔57に空気が流入しないように気密性を保持している。尚、第2のシール部63は、第1のシール部50のように、ハウジング21側に空気を流入させることなく、シールする。
【0053】
また、図11に示すように、カバー基盤部56の上面55aの端部には、吐出溝69が凹設されている。吐出溝69には、吐出孔70が連通しており、吐出孔70はカバー基盤部56内と、下カバー55の底面55bに形成された吐出部71内を貫通し、図12に示すように吐出部71の下面で開口している。
【0054】
また、図11に示すように、カバー基盤部56の第3圧接部55eの内側の隅部には、導入孔72が開口している。導入孔72は、カバー基盤部56、下カバー55の底面55bに形成された導入部73(図12参照)を貫通し、導入部73の下面で開口している。
【0055】
図11に示すように、下カバー55の上面55aの4箇所には、円筒状の嵌挿部74が形成され、各嵌挿部74は、前記した各ボルトBTを螺合可能に嵌挿する螺合孔R2を有している。この螺合孔R2はカバー基盤部56内を貫通し、下カバー55の底面55bで開口している。
【0056】
図4に示すように、ハウジング21の底面21bに固定された軸シール部材48の下面48b側に下カバー55を配設し、ハウジング21の各螺合孔R1に螺合した各ボルトBTが、下カバー55の各螺合孔R2に螺合して図示しないナットで締結されると、下カバー55は、軸シール部材48を挟んだ状態でハウジング21に対して固定された状態になる。すると、下カバー55の導入部73に形成された導入孔72、軸シール部材48に形成された連通孔48e、ハウジング21に形成された呼び水部29と軸シール部材48の基盤部49とで構成される呼び水室PRが互いに連通される。つまり、導入孔72は、連通孔48e、前記呼び水室PRを介して、ハウジング21の収容室23に連通する導入口28に連通する。
【0057】
また、下カバー55の吐出部71に形成された吐出孔70、吐出溝69、軸シール部材48に形成された連通溝48f、ハウジング21に形成された溝部21cが互いに連通される。つまり、吐出孔70は、吐出溝69、連通溝48f及び溝部21cを介して、ハウジング21の収容室23に連通する吐出口30に連通される。
【0058】
従って、下カバー55の導入孔72から導入されたインクは、軸シール部材48に形成された連通孔48eを介して呼び水部29(呼び水室PR)に導入される。すなわち、呼び水室PRは、ギヤポンプGP内のうちキャップ部材12側(上流側)に位置している。そして、呼び水室PRに吐出されたインクは、図8中各矢印方向に示すように、第1バネ
座32と呼び水部29内周面との間隙、第1バネ座32と呼び水部29の外周面との間隔等を介して、導入口28に向かって流れる。導入口28から吸引室45に導入されたインクは、駆動歯車35及び従動歯車40の回転により、吸引室45から吐出室46に移送され、吐出口30から、溝部21c、連通溝48f、吐出溝69を介して流出する。そして、吐出溝69から流出したインクは、吐出溝69に連結された下カバー55の吐出孔70を介して外部に排出されるようになっている。
【0059】
また、下カバー55が、図13に示すように、軸シール部材48を挟んだ状態でハウジング21に対して固定されると、下カバー55に形成された抵抗体収容部61は、その内部が、同じく下カバー55に形成された空気孔60、空気溝59を介して、軸シール部材48の第1のシール部50の軸孔50aと連通する。つまり、抵抗体62内を通過した空気は、空気孔60及び空気溝59を通って、第1のシール部50の内側に流入可能になっている。このとき、抵抗体62によって、第1のシール部50に流入する空気量は制限されている。
【0060】
また、図13に示すように、下カバー55とハウジング21との間に挟まれた軸シール部材48は、その第4シール突条48hが、下カバー55の第3圧接部55eと、ハウジング21の底面21bとの間で圧接されて、ハウジング21の呼び水部29と軸シール部材48とで形成された呼び水室PRの気密性を保持するようになっている。また、軸シール部材48の第3シール突条48gは、第3圧接部55e及びハウジング21の溝部21cの周囲の底面21bとの間で圧接されて、溝部21c、軸シール部材48の連通溝48f、下カバー55の吐出溝69とを気密状態に封止して、インク流路の気密性を保持している。
【0061】
次に、呼び水室PRについて図13及び図14にしたがって説明する。
クリーニング開始時であって、キャップ部材12が記録ヘッド8に密着し、まだギヤポンプGPが吸引を開始していない状態においては、前記コイルばねSによるバネ荷重W1が、呼び水室PRを構成する軸シール部材48に加わっている。また、軸シール部材48には、呼び水室PRに供給されているインクの加圧力P1も加わっている。
【0062】
次に、ギヤポンプGPが吸引を開始すると、図14に示すように、呼び水室PR内には負圧P2が発生し、軸シール部材48は、前記コイルばねSによるバネ荷重W1に抗して前記ハウジング21側に変位する。このとき、軸シール部材48の変位に要する変位反力をWdとする。なお、このとき、P2>W1+P1+Wdとなっている。軸シール部材48が撓むことによって呼び水室PRの容積が縮小すると、呼び水室PR内のインクは導入口28を介して全てハウジング21内に吸引され、そのインクは呼び水として機能する。
【0063】
詳しくは、ハウジング21内に吸引されたインクにより、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上する。この結果、記録ヘッド8から吸引されるインクの流速は早まり、記録ヘッド8から吸引したインクが短時間でギヤポンプGPまで到達するので、この到達までの時間(以下、到達時間という)のバラツキに対して、記録ヘッド8からのインクがギヤポンプGPに到達後の吸引時間(以下、実吸引時間という)の割合が大きくなる。すなわち、到達時間に吸引するインク量のバラツキに対して実吸引時間に吸引するインク量の割合が大きくなる。従って、到達時間に吸引するインク量と実吸引時間に吸引するインク量との和である総吸引量のバラツキを低減することができる。
【0064】
そして、クリーニングが終了、すなわちギヤポンプGPが吸引を停止すると、図13に示すように、コイルばねSの作用により軸シール部材48が下カバー55側に変位し、呼び水室PRの容積が拡大し、負圧P3を発生する。このとき、キャップ部材12及びチューブT2内には、記録ヘッド8から吸引したインクが充満しており、そのインクが負圧P
3により呼び水室PR内に吸引される。これにより、再び呼び水室PRはインクで満たされ、次回のクリーニング時の呼び水が確保される。
【0065】
次回の呼び水を確保後、キャップ部材12、チューブT2内にはまだインクが残っているので、キャップ部材12を記録ヘッド8から外して空吸引を行う。このとき呼び水室PR内には負圧P4が発生するが、負圧P4はバネ荷重W1よりも小さいため、コイルばねSの作用により、軸シール部材48は撓まない。従って、呼び水室PR内に溜まったインクは、負圧P4が発生してもハウジング21内に吸引されることがなく、次のクリーニング開始時に呼び水として機能する。
【0066】
(上側封止部A)
次に、上側封止部Aについて図13、図15に従って説明する。図15は、上側封止部Aの分解斜視図である。図15に示すように、上側封止部Aは、封止板75、パッキン77、押板78、及び規制部材80を備えている。
【0067】
図15に示すように、封止板75は、金属板からなり、略楕円状に形成されている。この封止板75は、図13に示すように、ハウジング21の上面21aであって、突条21eの内側に位置するように設けられている。そして、封止板75は、収容室23側の面が、収容室23に収容された駆動歯車35及び従動歯車40の環状突部36,41に当接することで、駆動歯車35及び従動歯車40の軸方向に位置決めされている。
【0068】
この封止板75の外側からは、パッキン77が取着される。図15に示すように、パッキン77は、エラストマ等の可撓性材質からなり、収容室23の開口を覆うことができる大きさの略長方形の板状に形成されている。図13に示すように、パッキン77は、その下面77bに凹部77cが形成されている。さらに、図15に示すように、パッキン77の両側には、支持部77dが凹設されている。また、パッキン77の各隅部には、各ボルトBTを貫挿する4つの貫挿孔H3が貫通形成されている。図13に示すように、パッキン77が、封止板75の上から配設され、外部から押圧力等が加えられると、パッキン77の下面77bがハウジング21の突条21eに圧接されて、その圧接された部分が弾性変形し、突条21eに対して密着する。その結果、収容室23の開口は気密状態に封止される。また、このとき、パッキン77の凹部77cに封止板75が収容されるようになっている。
【0069】
パッキン77の上面77a側からは、押板78が取着される。図15に示すように、押板78は、四角枠状に形成されており、内側に開口部78cを有している。押板78の各隅部には、各ボルトBTを貫挿する4つの貫挿孔H4が貫通形成されている。また、押板78の上面78aには、規制部材80が取着される。
【0070】
規制部材80は、略枠状に形成された本体部81と、本体部81の両側から下方に向かって延びる2つの腕部82とを有している。各腕部82は、略L字状に形成され、その先端が内側に向かって折り曲げられている。腕部82の先端には、孔が形成されている。さらに、本体部81の各隅部には、ボルトBTを貫挿するための貫挿孔H5が形成されている。
【0071】
図3及び図15に示すように、本体部81の内側に設けられた開口部83の両側には、2つの規制部84が、細長い板状片を2箇所で折り曲げることによりクランク状に形成されている。
【0072】
図13に示すように、規制部84は、内側に張り出した第1の水平部H1と、第1の水平部から垂直方向下方に延びる垂直部Pと、垂直部から内側に向かって折り曲げられた第
2の水平部H2とからなる。第2の水平部H2の下面には、プレス加工することにより突出形成された押圧部85が設けられている。また、規制部84の垂直部Pは、押板78の厚みとほぼ同じ長さになっている。
【0073】
図3に示すように、規制部材80が押板78の上から取着されると、規制部材80の腕部82の先端部の孔に、下カバー55の掛止部K(図12参照)が係合される。また、パッキン77は、ハウジング21の支持板SPの内側に嵌合するように配設される。このとき、腕部82は、パッキン77の支持部77dに嵌合する。そして、各貫挿孔H3〜H5に各ボルトが貫挿され、下カバー55の螺合孔R2から突出したボルトBTの先端に図示しないナットが締結される。
【0074】
その結果、規制部材80により、押板78、パッキン77、封止板75及びハウジング21が、下カバー55に対して固定される。すると、図13に示すように、規制部材80の押圧部85がパッキン77の上面77aに当接し、その当接面を下方に押圧する状態になる。
【0075】
次に、上記のように構成したギヤポンプGPの作用について説明する。クリーニングの際は、前記昇降機構が駆動して、記録ヘッド8のノズル開口面をキャップ部材12により封止する。そして、プリンタ1のコントローラCTから、所定のタイミングで駆動命令が出力されると、前記駆動モータDMが駆動し、駆動軸22が逆方向に回転する。その結果、図7に示すように、駆動歯車35がr1方向に回転し、従動歯車40は駆動歯車35との歯合により、r2方向に回転する。
【0076】
このとき、負圧P2によって軸シール部材48が撓むことにより、呼び水室PR内に溜まっているインクがハウジング21内に吸引され、呼び水として機能するため、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上する。この結果、インクの総吸引量のバラツキを低減することができるため、予め組んだクリーニングに必要な最低吸引量を確保するシーケンスとの乖離が小さくなる。従って、例えば、到達時間に吸引する吸引量が最低吸引量よりも多くなってしまい、クリーニング時に消費するインク量が増加するのを防ぐことができる。
【0077】
キャップ部材12から吸引室45に流入し、駆動歯車35及び従動歯車40により吐出室46側に送り出されたインクは、吐出口30→溝部21c→連通溝48f→吐出溝69→吐出孔70を介して、吐出部71に接続されたチューブT3に導出される。チューブT3内に流入したインクは、チェックバルブ14、チューブT4を介して、第1のインクカートリッジ9内に排出される。その結果、キャップ部材12内が負圧状態になり、記録ヘッド8のノズルからインクや気泡等の流体が排出される。
【0078】
クリーニングが終了すると、前記軸シール部材48がコイルばねSの作用により下カバー55側に付勢され、呼び水室PRの容積が拡大し、負圧P3が発生する。そして、キャップ部材12内に溜まったインクはチューブT2、導入孔72、連通孔48eを介して呼び水室PR内に流入し、呼び水室PR内はインクで満たされる。
【0079】
その後、キャップ部材12が記録ヘッド8から離れるが、このときにまだキャップ部材12、チューブT2内にインクが残っている。そして、それらのインクはキャップ部材12を記録ヘッド8から外した状態でギヤポンプGPを駆動(空吸引)することにより、キャップ部材12→チューブT2→呼び水室PR→チューブT3→チェックバルブ14→チューブT4を介して第1のインクカートリッジ9内に流入する。
【0080】
このときに呼び水室PR内に発生する負圧P4はコイルばねSによるバネ荷重W1よりも小さいため、軸シール部材48は撓まず、呼び水室PR内のインクがハウジング21内
に吸引されることはない。この結果、呼び水室PR内には、次回のクリーニング時に呼び水として機能するインクで満たされる。
【0081】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、ギヤポンプGPに呼び水室PRを設けたので、クリーニング時にギヤポンプGPが吸引開始した際にハウジング21内にインクを吸引することができる。この結果、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上し、短時間で記録ヘッド8からギヤポンプGPまでインクを吸引することができるので、記録ヘッド8からギヤポンプGPまでインクが到達する時間のバラツキを低減することができる。そのため、キャップ部材12から吸引するインク量のバラツキが小さくなるので、予め組んであるクリーニングに必要な最低吸引量を確保するシーケンスとの乖離が小さくなる。従って、例えば、吸引量が最低吸引量よりも多くなってしまい、クリーニング時に消費するインク量が増加するのを防ぐことができる。
【0082】
(2)本実施形態によれば、呼び水室PRは、ギヤポンプGP内のうちキャップ部材12側(上流側)に位置しているので、ギヤポンプGPが吸引を開始した際に、即座に呼び水室PR内のインクをハウジング21内に吸引することができる。従って、クリーニング開始後、即座にギヤポンプGPの負圧発生能力を向上させることができるので、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0083】
(3)本実施形態によれば、呼び水室PRは、呼び水室PR内の負圧に応じて容積が可変であるので、ギヤポンプGPが吸引を開始した際に、容積が縮小し、即座に呼び水室PR内のインクをハウジング21内に吸引することができる。また、ギヤポンプGPが吸引を終了したときには、容積が元に戻り、次のクリーニング時に使用するインク(呼び水)を確保することができる。この結果、例えば、インク(呼び水)をハウジング21内に吸引したり、呼び水室PR内にインク(呼び水)を確保したりするための装置を特別に設ける必要がない。従って、簡単で小型の構成でありながらも、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0084】
(4)本実施形態によれば、呼び水室PRを構成する軸シール部材48は、ギヤポンプGPのパッキンとして機能しながらも、ダイヤフラムとして機能する。この結果、ダイヤフラムのために新たな部品を追加する必要がなく、部品点数を低減することができる。従って、製造コストを増加することなく、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0085】
(5)本実施形態によれば、呼び水室PR内に配置されたコイルばねSのバネ荷重W1は、クリーニング時の負圧では伸縮し、空吸引の負圧では伸縮しない程度に設定したので、クリーニング開始時には軸シール部材48が撓むが、空吸引時には軸シール部材48が撓まない。従って、クリーニング後に呼び水室PR内にインク(呼び水)を確保した後に空吸引を行っても、軸シール部材48は撓まないので、呼び水を確保しながらも、チューブT2等に残っている不要なインクを第1のインクカートリッジ9内に排出することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、呼び水室PRをギヤポンプGPに具体化して好適な効果を得たが、これをギヤポンプGP以外のベーンポンプ等、内部のインクの量に応じてその負圧発生能力が変化するポンプに適用してもよい。このようにすることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
○上記実施形態では、ギヤポンプGPを、プリンタ1ではなく、他の装置に搭載するよ
うにしてもよい。他の装置においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
○上記実施形態では、液体噴射装置をプリンタ1に具体化したが、この限りではなく、他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化するようにしてもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態のプリンタの概略を説明するための斜視図。
【図2】同じく、記録ヘッドへのインク供給系を説明するためのブロック図。
【図3】同じく、プリンタに搭載されるギヤポンプの斜視図。
【図4】同じく、ギヤポンプの分解斜視図。
【図5】同じく、ギヤポンプのハウジング、駆動歯車、従動歯車を説明する斜視図。
【図6】同じく、ギヤポンプのハウジング、駆動歯車、従動歯車を説明する斜視図。
【図7】同じく、駆動歯車及び従動歯車を収容した状態のハウジングの平面図。
【図8】同じく、ハウジングの下面図。
【図9】同じく、ギヤポンプの下側封止部を構成する軸シール部材の斜視図。
【図10】同じく、軸シール部材の斜視図。
【図11】同じく、下側封止部を構成する下カバーの斜視図。
【図12】同じく、下カバーの斜視図。
【図13】同じく、ギヤポンプの断面図。
【図14】同じく、クリーニング時のギヤポンプの断面図。
【図15】同じく、ギヤポンプの上側封止部の分解斜視図。
【図16】同じく、従来のギヤポンプの説明図。
【符号の説明】
【0089】
GP…ギヤポンプ、PR…呼び水室、S…コイルばね、1…プリンタ、8…記録ヘッド、12…キャップ部材、21…ハウジング、23…収容室、29…呼び水部、32…第1バネ座、35…駆動歯車、40…従動歯車、45…吸引室、46…吐出室、48…軸シール部材、48d…第2バネ座。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及びギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギヤポンプは、他のポンプに比べて構造が簡単である利点を有している。このギヤポンプとして、例えば、図16に示すようなギヤポンプ100がある。このギヤポンプ100は、ハウジング101内の収容室102に駆動歯車103及び従動歯車104を備えている。駆動歯車103が、図示しない駆動軸の回転により回転すると、従動歯車104は、図示しない従動軸に支持されながら駆動歯車103に従動して回転する。このとき、前記収容室102内の吸引室105のインクが、駆動歯車103及び従動歯車104の歯溝と収容室102の側面106とに閉じこめられて、吐出室107に送り出される。このギヤポンプ100をDCモータあるいはステッピングモータで駆動して、モータの回転数を制御することにより、インクの吸引量を選択できる。そして、ノズル1本当たりの吸引量を常に一定に保つようにし、良好な印字を保つために必要な吸引量以上にインクを消費するのを防止していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−328730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のギヤポンプ100は、収容室102内にインクがない状態では、その負圧発生能力が低下しているため、吸引量のバラツキが大きくなっていた。詳述すると、クリーニングの際は、まず図示しない記録ヘッドからギヤポンプ100までインクを吸引し、クリーニングに必要な負圧発生能力が確保された後、即ちキャップ内部に十分な負圧が発生できるようになってからも、一定時間ポンプを駆動するシーケンスを予め組んでいた。このとき、クリーニング前半のギヤポンプ100までインクが到達するまでの時間のバラツキが多いと、それに伴い、ギヤポンプ100の駆動時間からクリーニング前半のギヤポンプ100までインクが到達するまでの時間を減算した時間である、実質的なクリーニングの時間のバラツキが多くなっていた。
【0004】
すなわち、例えば、クリーニング前半のギヤポンプ100の負圧発生能力が高く、短時間でギヤポンプ100までインクが到達する場合には、キャップ内に十分な負圧が発生した状態でのクリーニングである実質的なクリーニングの時間が長時間になってしまい、この結果、クリーニング時に多量のインクを消費してしまっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、液体吸引量のバラツキを低減することができる液体噴射装置及びギヤポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を吐出する液体噴射ヘッドを、流路を介して吸引加圧ポンプに接続されたキャップ手段により封止して、前記吸引加圧ポンプが発生する負圧により、前記液体噴射ヘッドから液体を排出させる液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えた。
【0007】
この発明によれば、吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えたので、例えば、吸引加圧ポンプ駆動開始時に、誘導液体貯留室内の液体を呼び水として機能させることができるため、短時間で液体噴射ヘッドから吸引加圧ポンプまで液体を呼び込むことができる。こ
の結果、液体が液体噴射ヘッドから吸引加圧ポンプまで到達する時間のバラツキが小さくなるため、例えば、液体噴射ヘッドから液体を吸引する時間のバラツキが小さくなる。従って、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0008】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小する。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小するので、例えば、吸引加圧ポンプ駆動開始時に発生した負圧により、誘導液体貯留室の容積が縮小する。従って、誘導液体貯留室内の液体を吸引加圧ポンプに供給することができる。
【0009】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、前記吸引加圧ポンプのうち前記キャップ手段側に設けられた。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの誘導液体貯留室は、吸引加圧ポンプのうちキャップ手段(上流)側に設けられたので、吸引加圧ポンプが吸引を開始した際に、即座に誘導液体貯留室内の液体を吸引加圧ポンプ内に吸引することができる。従って、吸引開始後、即座に吸引加圧ポンプの負圧発生能力を向上させることができるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0010】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室に、前記誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えた。
この発明によれば、吸引加圧ポンプの誘導液体貯留室に、誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えたので、例えば、吸引加圧ポンプが吸引を終了した際に、付勢手段によって誘導液体貯留室の容積を拡大することができる。従って、誘導液体貯留室内に確実に液体を貯留することができる。
【0011】
この液体噴射装置において、前記吸引加圧ポンプは、ギヤポンプである。
この発明によれば、吸引加圧ポンプは、ギヤポンプであるので、吸引加圧ポンプの小型化・薄型化を図ることができるとともに、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0012】
本発明のギヤポンプは、ハウジングに設けられた収容室内に駆動歯車及び従動歯車を備え、前記駆動歯車及び従動歯車の回転により、吸引側から吐出側に流体を導出するギヤポンプにおいて、前記収容室に連通し、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、前記誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、前記可撓性部材は、前記誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、前記誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させる。
【0013】
この発明によれば、収容室に連通するとともに、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、その誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、可撓性部材は、誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させる。この結果、例えば、ギヤポンプ駆動開始時に、誘導液体貯留室の液体を呼び水として機能させることができるので、ギヤポンプの負圧発生能力が向上し、短時間で液体噴射ヘッドからギヤポンプまで液体を呼び込むことができる。従って、液体が液体噴射ヘッドからギヤポンプまで到達する時間のバラツキが小さくなるため、液体噴射ヘッドから液体を吸引する時間のバラツキが小さくなるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0014】
このギヤポンプにおいて、前記誘導液体貯留室は、前記収容室より上流側に備えられた。
この発明によれば、誘導液体貯留室は、収容室より上流側に備えられたので、例えば、ギヤポンプが吸引を開始した際に、即座に誘導液体貯留室内の液体を収容室に呼び込むことができる。従って、ギヤポンプが吸引を開始した際に、即座にギヤポンプの負圧発生能力を向上させることができるので、液体吸引量のバラツキを低減することができる。
【0015】
このギヤポンプにおいて、前記可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材である。
この発明によれば、可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材であるため、可撓性部材(誘導液体貯留室)のために新たに部品を追加する必要がないので、装置全体を小型化し、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1は、本実施形態のプリンタの概略を説明するための斜視図である。図2は、本実施形態の記録ヘッドへのインク供給系を説明するためのブロック図である。
【0017】
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンタ1は、略直方形状のフレーム2を備えている。このフレーム2の上面には、給紙トレイ3が設けられ、さらに、フレーム2の前面には、排紙トレイ4が設けられている。この給紙トレイ3及び排紙トレイ4は、図示しないヒンジ構造によってフレーム2に対して折り畳み収容可能となるように構成されている。
【0018】
このフレーム2内には、その長手方向にプラテン5が配設され、このプラテン5上には、図示しない紙送り機構によって、給紙トレイ3からフレーム2内に挿入された記録用紙が給送されるようになっている。そして、この給送された記録用紙は、排紙トレイ4からフレーム2外へ排出されるようになっている。
【0019】
前記フレーム2内には、プラテン5と平行となるようにガイド部材6が架設されている。このガイド部材6には、同ガイド部材6に沿って移動可能なキャリッジ7が挿通支持されている。また、前記フレーム2には、キャリッジモータ(図示しない)が取着され、このキャリッジモータは、一対のプーリ(図示しない)に掛け装されたタイミングベルト(図示しない)を介してキャリッジ7が駆動連結されている。このように構成することによって、キャリッジモータが駆動すると、その駆動力はタイミングベルトを介してキャリッジ7に伝達される。この駆動力を受けてキャリッジ7は、ガイド部材6に案内されプラテン5と平行(主走査方向)に往復移動するようになっている。
【0020】
一方、前記キャリッジ7の下面(プラテン5と対向する面)には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド8が設けられている。この記録ヘッド8は、前記記録用紙に対向するようにノズル形成面8a(図2参照)を有し、このノズル形成面8aには、1列あたりn個(nは自然数)のノズルN(図2参照)からなるノズル列(図示せず)が6列形成されている。本実施例では、説明の便宜上1列あたりn個のノズルNからなるノズル列を6列形成したが、この限りではなく1列あたりのノズルNの数及びノズル列の数は、適宜変更しても良い。
【0021】
この記録ヘッド8には、フレーム2内に設けられた第1及び第2のインクカートリッジ9,10から、後述するように、各ノズルにそれぞれ対応した色(本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダ)の液体としてのインクが供給されるようになっている。そして、記録ヘッド8に流入したインクは、圧電素
子8b(図2参照)によって加圧され、同記録ヘッド8の前記ノズルNからインク滴として吐出されることによってドットを形成する。つまり、記録ヘッド8に形成された各ノズルNからは、それぞれ対応する色である、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダが吐出されるようになっている。
【0022】
前記プリンタ1では、キャリッジ7を往復移動させながらインク滴を記録用紙に吐出させ印刷するための領域を印刷領域としている。さらに、プリンタ1には、非印刷時にノズルNを封止するための非印刷領域が設けられ、その非印刷領域には、図1に示すように、キャップホルダ11が設けられている。
【0023】
前記キャップホルダ11には、記録ヘッド8のノズル形成面8aと対向するように、可撓性を有するキャップ手段としてのキャップ部材12が設けられている。キャップホルダ11は、図示しない昇降機構を介して、キャップ部材12を記録ヘッド8のノズル形成面8aに密着させることによって、各ノズルNを封止するようになっている。また、図2に示すように、キャップ部材12は、その底部に同キャップ部材12内と連通する第1及び第2の連通口12a,12bが形成され、この第1の連通口12aにはチューブT1を介してキャップホルダ11外にてキャップ開放バルブ13が接続されている。このキャップ開放バルブ13は、キャップ部材12とノズル形成面8aを密着させることによって形成される空間を適宜開放するようになっている。さらに、第2の連通口12bは、流路としてのチューブT2を介して吸引加圧ポンプとしてのギヤポンプGPの吸引口(図示しない)に接続されている。このギヤポンプGPは、駆動歯車35、従動歯車40を備えていて、駆動モータDMから駆動力が伝達されると同駆動歯車35、従動歯車40が回転駆動されて、キャップ部材12に負圧をかけるようになっている。つまり、キャップ開放バルブ13が閉じている状態であって、キャップ部材12によって前記ノズル形成面8aを封止している際に、ギヤポンプGPを駆動させることによって、ノズル形成面8aのノズルNに負圧をかけてクリーニングすることができるようになっている。
【0024】
このギヤポンプGPの排出口(図示しない)は、チューブT3を介してチェックバルブ14が接続され、このチェックバルブ14には、チューブT4を介して第1のインクカートリッジ9の流体導入部材9aが接続されている。
【0025】
この第1のインクカートリッジ9は、区画板15により2つの収容部に区画されており、一方の収容部にはブラックのインクを貯留するインクパックBK、他方の収容部にはインクを吸収するインク吸収体16を収容している。このインクパックBKは、チューブT5を介して前記キャリッジ7の記録ヘッド8に接続されている。このインク吸収体16は、例えば、スポンジ等の吸水性を有する多孔質材料である。そして、第1のインクカートリッジ9には、ギヤポンプGPによってキャップ部材12から吸引された流体としての廃インク及び流体としての空気が流体導入部材9aから導入されるようになっている。このとき、第1のインクカートリッジ9内に流入する廃インクは、インク吸収体16によって吸収されるようになっている。また、インクパックBKは導入された空気によって加圧される。なお、第1のインクカートリッジ9に流入した廃インク、空気はチェックバルブ14によって、ギヤポンプGP側への逆流を防止される。
【0026】
前記第1のインクカートリッジ9の空気導出部材9bには、チューブT6を介して第2のインクカートリッジ10の空気導入部材10aが接続されていて、同第1のインクカートリッジ9及び同第2のインクカートリッジ10は互いに連通している。そして、第1のインクカートリッジ9に導入された空気を、空気導出部材9b、チューブT6、空気導入部材10aを介して第2のインクカートリッジ10内に供給するようになっている。この第2のインクカートリッジ10は、区画板17によって区画される各収容部に、それぞれシアン、マゼンダ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンダのインクをそれぞれ貯留す
るインクパックC,M,Y,LC,LMを収容している。この各インクパックC,M,Y,LC,LMは、それぞれチューブT7〜T11を介して、前記キャリッジ7の記録ヘッド8に接続されている。この各インクパックC,M,Y,LC,LMは、第2のインクカートリッジ10内に導入された空気によって加圧されると、各インクパックC,M,Y,LC,LM内のインクが押し出されてチューブT7〜T11を介して記録ヘッド8にそれぞれ供給される。また、この第2のインクカートリッジ10の空気導出部材10bには、チューブT12を介して、同第2のインクカートリッジ10内を適宜開放制御する開閉バルブ装置18が接続されている。
【0027】
このように構成することによって、ギヤポンプGPを駆動すると、クリーニングが行われる。すなわち、キャップ部材12から廃インク及び空気が吸引され、この廃インク及び空気は、キャップ部材12→チューブT2→ギヤポンプGP→チューブT3→チェックバルブ14→チューブT4を順に流動した後、第1のインクカートリッジ9内に流入する。このとき、第1のインクカートリッジ9内に流入する廃インクは、上述したインク吸収体16によって吸収されるので、同第1のインクカートリッジ9内には、流入した空気(以下、加圧空気という)だけ流動する。そして、この加圧空気は、第1のインクカートリッジ9内からチューブT6を介して第2のインクカートリッジ10に流入される。このとき、開閉バルブ装置18は閉じているため、第1及び第2のインクカートリッジ9,10は蓄圧される。
【0028】
第1及び第2のインクカートリッジ9,10内の空気圧は常に偏倚がなく同等であるので、ギヤポンプGPが駆動すると、両第1及び第2のインクカートリッジ9,10内のそれぞれのインクパックBK,C,M,Y,LC,LMは、上述した加圧空気によって加圧されるようになっている。これによって、各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMに貯留されたインクは、それぞれ前記キャリッジ7の記録ヘッド8に圧送されるようになっている。
【0029】
つまり、本実施形態のプリンタ1では、ギヤポンプGPがキャップ部材12に負圧をかけるクリーニング用のポンプ、及び各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMを加圧する加圧用のポンプを兼ねるようになっている。そして、ギヤポンプGPを駆動すると、キャップ部材12に負圧をかけて廃インク及び空気を吸引するとともに、各インクパックBK,C,M,Y,LC,LMを加圧し、記録ヘッド8に各インクを圧送するようになっている。
【0030】
また、プリンタ1は、コントローラCTを備えている。このコントローラCTは、プリンタ1を制御するための駆動制御回路を備えていて、前記キャップ開放バルブ13、前記開閉バルブ装置18、駆動モータDMに、それぞれを駆動するための駆動信号SG1〜SG3を供給し駆動制御するようになっている。そして、前記駆動モータDMが駆動すると、図示しない駆動機構を介して前記ギヤポンプGPが駆動されるようになっている。
【0031】
(ギヤポンプGP)
次に、ギヤポンプGPについて、図3〜図15に従って説明する。図3はギヤポンプGPの全体斜視図、図4はギヤポンプGPの分解斜視図である。図3に示すように、ギヤポンプGPは、ハウジング21、上側封止部A及び下側封止部Bを備えている。ハウジング21の底面側に配設された下側封止部Bからは、駆動軸22が突出している。この駆動軸22は、前記駆動機構に連結され、前記駆動モータDMの駆動により回転する。
【0032】
(ハウジング21、駆動歯車35及び従動歯車40)
まず、ハウジング21について図5〜図8に従って説明する。図5及び図6は、ハウジング21とハウジング21に収容される駆動歯車35及び従動歯車40の斜視図である。
図7は駆動歯車35及び従動歯車40を収容したハウジング21の平面図、図8はハウジング21の底面図である。
【0033】
図5に示すように、ハウジング21は、略直方体形状に形成され、その上面21aには、駆動歯車35及び従動歯車40を収容する収容室23が凹設されている。この収容室23は、第1の収容室24と第2の収容室25とから構成されている。図7に示すように、第1及び第2の収容室24,25は、円状に凹設され、その一部において重なり合って、全体として収容室23を形成している。また、収容室23の内周面には、第1及び第2の収容室24,25にそれぞれ挟まれるように、吸引部26及び吐出部27が凹設されている。
【0034】
また、図7に示すように、収容室23の底面であって、吸引部26側には、導入口28が形成されている。導入口28は、ハウジング21を貫通し、図8に示すように、ハウジング21の底面21bに形成された呼び水部29の底面で開口している。この呼び水部29は、底面21bに形成された溝部21cを避けて、底面21bに凹設されている。さらに、図7に示すように、収容室23の底面であって、吐出部27側には、吐出口30が形成されている。吐出口30は、ハウジング21内を貫通し、図8に示すように、底面21bで開口している。底面21b側で開口した吐出口30は、底面21bに形成された溝部21cに連通している。
【0035】
図5及び図13に示すように、収容室23の底面であって、従動歯車40と対向する位置には、第1の軸受部21dが円筒状に凹設されている。第1の軸受部21dの深さは、ハウジング21の半分くらいの深さとなっている。この第1の軸受部21dは、従動歯車40の従動軸44を支持する。また、図7に示すように、ハウジング21の上面21aには、収容室23の開口を囲むように、突条21eが楕円状に突設されている。この突条21eは、上面21aの収容室23の開口から若干離間した位置に形成されている。
【0036】
図6及び図8に示すように、ハウジング21の底面21bであって、呼び水部29の図8における左側には、凹部21fが形成されている。図8に示すように、凹部21fの底面には、第2の軸受部31が貫通形成されている。図5に示すように、第2の軸受部31は、ハウジング21内を貫通し、第1の収容室24の中央位置で開口している。この第2の軸受部31には、駆動歯車35に連結される駆動軸22が回転可能に支持される。また、図6に示すように、ハウジング21に形成された呼び水部29の底面であって、第1の軸受部21dと同心円状に位置するようにして、第1バネ座32が円筒状に突出形成されている。
【0037】
また、図5に示すように、ハウジング21の上面21aの四隅には、円筒状の嵌挿部34が形成されている。各嵌挿部34は、ボルトBT(図4参照)を螺合可能に嵌挿する螺合孔R1を有し、図6に示すように、この螺合孔R1はハウジング21内を貫通し、底面21bで開口している。また、図5に示すように、上面21aの両縁には、支持板SPが立設されている。
【0038】
次に、駆動歯車35及び従動歯車40について説明する。図6に示すように、駆動歯車35は、平歯車であって、その中央に第1の軸孔38を備えている。第1の軸孔38は、断面略長方形状に形成され、下面35bのみにおいて開口している。また、図5に示すように、駆動歯車35の上面35aには、環状突部36が突設されている。また、図6に示すように、駆動歯車35の下面35bには、第1の軸孔38の周囲に環状突部37が形成されている。
【0039】
駆動歯車35と歯合する従動歯車40は、平歯車であって、図6に示すように中央に第
2の軸孔43を備えている。第2の軸孔43は、下面40bのみにおいて開口している。また、図5に示すように、従動歯車40の上面40aには、環状突部41が形成されている。さらに、図6に示すように、下面40bには、第2の軸孔43の周囲に環状突部42が突設されている。
【0040】
これらの駆動歯車35及び従動歯車40は、図7に示すように、互いに歯合した状態で第1の収容室24及び第2の収容室25にそれぞれ収容されている。第1の収容室24に収容された駆動歯車35の第1の軸孔38(図6参照)には、その下面35b側から、ハウジング21の第2の軸受部31に貫通された駆動軸22(図4参照)が貫挿される。また、第2の収容室25に収容された従動歯車40の第2の軸孔43(図6参照)には、その下面40b側から、ハウジング21の第1の軸受部21dに支持された従動軸44(図5参照)が貫挿される。
【0041】
そして、図7に示すように、収容室23内には、駆動歯車35及び従動歯車40に区画されることにより、吸引室45及び吐出室46が形成される。これらの吸引室45及び吐出室46は、駆動歯車35及び従動歯車40の歯合位置を挟むように設けられている。吸引室45は、その一側面が吸引部26によって構成され、吐出室46は、その一側面が吐出部27によって構成されている。
【0042】
吸引室45には、ハウジング21に形成された呼び水部29及び導入口28を介してインクが外部より流入される。そして、駆動歯車35及び従動歯車40が、駆動軸22の回転により図7中r1方向及びr2方向にそれぞれ回転すると、吸引室45内(吸引側)のインクが、収容室23の内周面と、駆動歯車35及び従動歯車40の歯溝とからなる空間に閉じこめられて吐出室46側(吐出側)に移送される。そして、駆動歯車35及び従動歯車40の歯先が収容室23の内周面から離間すると、閉じこめられたインクが吐出室46に吐出される。その結果、吸引室45は比較的低圧になり、吐出室46は、吸引室45に比べて高圧の状態になる。吐出室46内のインクは、駆動歯車35及び従動歯車40から順次送り出されるインクの圧力により、吐出口30を介して、溝部21c(図8参照)に押し出される。
【0043】
(下側封止部B)
次に、ハウジング21の呼び水部29等を閉塞する下側封止部Bについて説明する。この下側封止部Bは、図4に示すように、可撓性部材、封止部材としての軸シール部材48及び下カバー55を備えている。図9及び図10は、軸シール部材48の斜視図、図11及び図12は、下カバー55の斜視図、図13及び図14はギヤポンプGPの部分断面図である。
【0044】
まず、軸シール部材48について説明する。図9に示すように、軸シール部材48は、エラストマからなり、板状に形成された基盤部49を備えている。基盤部49の上面48aには、有蓋円筒状の第1のシール部50が形成されている。第1のシール部50の外周面下側には、肉厚部51が形成されている。また、第1のシール部50の蓋部52には、開口部53が貫通形成されている。図10に示すように、第1のシール部50内に設けられた軸孔50aは、下面48bで開口している。さらに、基盤部49の上面48a及び下面48bには、第1シール突条48cがそれぞれ形成されている。
【0045】
また、図9及び図10に示すように、基盤部49の上面48a及び下面48bであって、第1のシール部50の右側には、円環状の第2バネ座48dがそれぞれ形成されている。この第2バネ座48dよりも、図中右側には、連通孔48eが貫通形成されている。また、基盤部49の端であって、第1のシール部50よりも図9中奥側には、連通溝48fが軸シール部材48の長手方向と平行に延びるように貫通形成されている。さらに、基盤
部49の上面48a及び下面48bには、この連通溝48fを囲むように第3シール突条48gがそれぞれ形成されている。そして、基盤部49の上面48a及び下面48bには、基盤部49の周縁に沿って、第4シール突条48hが形成されている。この基盤部49の外側面の2箇所には、外側に突出した固定片48iがそれぞれ形成されている。各固定片48iは、孔48jをそれぞれ備えている。
【0046】
この軸シール部材48は、ハウジング21の底面21bに形成された2つの突部21h(図6参照)が、固定片48iの孔48jに貫挿され、第1のシール部50が、ハウジング21の凹部21fに嵌着されることで、ハウジング21に対して固定される。
【0047】
また、図13に示すように、基盤部49は、ハウジング21の底面21b側から、ハウジング21の呼び水部29を閉塞するように配設されている。さらに、軸シール部材48がハウジング21に固定されると、基盤部49に形成された連通溝48fは、ハウジング21の底面21bに形成された溝部21c(図8参照)と連結される。そして、基盤部49に形成された連通孔48eは、ハウジング21に形成された呼び水部29の内側に配置される(図8参照)。図13に示すように、この呼び水部29(収容室の開口)は、軸シール部材48の基盤部49によって封止され、呼び水部29と基盤部49の上面48aとによって略円柱状の誘導液体貯留室としての呼び水室PR(図8及び図13参照)が形成される。そして、図13に示すように、ハウジング21の底面に突設された第1バネ座32と軸シール部材48に形成された第2バネ座48dとの間には、付勢手段としてのコイルばねSが配設される。このコイルばねSのバネ荷重W1により、軸シール部材48は下カバー55に当接するようになっている。また、コイルばねSのバネ荷重W1は、クリーニング時の負圧では伸縮するが、それ以外の圧力では伸縮しない程度に設定されている。例えば、クリーニング後にキャップ部材12やチューブT2に残留したインクを排出するために、キャップ部材12を記録ヘッド8から外した後にする吸引(以下、空吸引という)の負圧では伸縮しない程度に設定されている。
【0048】
次に、下カバー55について図11及び図12に従って説明する。下カバー55は、板状のカバー基盤部56を備えている。カバー基盤部56の両側面に設けられた段差面には、掛止部Kが突出形成されている。また、図11に示すように、カバー基盤部56であって、下カバー55の上面55aには、略中央に、第1圧接部55cが上面55aから若干突出するように形成されている。第1圧接部55cは、軸シール部材48の下面48b側から下カバー55が取着された際に、軸シール部材48に形成された第1シール突条48cに圧接されるようになっている。
【0049】
さらに、下カバー55の上面55aには、第2及び第3圧接部55d,55eが形成されている。第2圧接部55dは、第1圧接部55cの図11中右側に、上面55aから若干突出するように形成され、軸シール部材48の下面48bから下カバー55が取着された際に、軸シール部材48の第2バネ座48dに圧接される。第3圧接部55eは、略楕円状に若干突出するように形成されており、軸シール部材48の第3及び第4シール突条48g,48h(図10参照)に圧接される。
【0050】
図11及び図12に示すように、第1圧接部55cの内側には、第1の軸孔57が形成されている。第1の軸孔57は、カバー基盤部56及び下カバー55の底面55bに形成された第1の軸受部58を貫通している。さらに、下カバー55の上面55aには、第1の軸孔57に連通する、空気溝59が形成されている。この空気溝59は、直線状に上面55aに凹設されており、一端が第1の軸孔57に連通し、他端が上面55aで開口した空気孔60に連通している。空気孔60は、図13に示すように、カバー基盤部56内に、その厚み方向に延びるように形成され、カバー基盤部56の底面55bに形成された抵抗体収容部61の内側に連通している。図12に示すように、抵抗体収容部61は円筒状
に形成されており、下カバー55の底面55b側で開口している。この抵抗体収容部61には、多孔質金属材料(焼結メタル)からなる抵抗体62が嵌着される。この抵抗体62は、空気孔60側に流入する空気量を制限する抵抗体として機能する。
【0051】
また、第1の軸受部58には、第2のシール部63が嵌着される。第2のシール部63は、エラストマからなり、大径部64と小径部65とから構成される。大径部64は、略円筒状に形成され、第1の軸受部58に対し、しまり嵌めとなるような内径を有している。小径部65は、有底円筒状に形成されており、駆動軸22の外径よりも若干大きな内径を有している。そして、小径部65の底部66には、開口部67が貫通形成されている。この開口部67には、駆動軸22が摺接するように貫挿される。
【0052】
図13に示すように、第2のシール部63が下カバー55に嵌着されると、嵌着された第2のシール部63の開口部67から駆動軸22が突出する。また、開口部67は、駆動軸22に対する接触面圧を高め、隙間から第1の軸孔57に空気が流入しないように気密性を保持している。尚、第2のシール部63は、第1のシール部50のように、ハウジング21側に空気を流入させることなく、シールする。
【0053】
また、図11に示すように、カバー基盤部56の上面55aの端部には、吐出溝69が凹設されている。吐出溝69には、吐出孔70が連通しており、吐出孔70はカバー基盤部56内と、下カバー55の底面55bに形成された吐出部71内を貫通し、図12に示すように吐出部71の下面で開口している。
【0054】
また、図11に示すように、カバー基盤部56の第3圧接部55eの内側の隅部には、導入孔72が開口している。導入孔72は、カバー基盤部56、下カバー55の底面55bに形成された導入部73(図12参照)を貫通し、導入部73の下面で開口している。
【0055】
図11に示すように、下カバー55の上面55aの4箇所には、円筒状の嵌挿部74が形成され、各嵌挿部74は、前記した各ボルトBTを螺合可能に嵌挿する螺合孔R2を有している。この螺合孔R2はカバー基盤部56内を貫通し、下カバー55の底面55bで開口している。
【0056】
図4に示すように、ハウジング21の底面21bに固定された軸シール部材48の下面48b側に下カバー55を配設し、ハウジング21の各螺合孔R1に螺合した各ボルトBTが、下カバー55の各螺合孔R2に螺合して図示しないナットで締結されると、下カバー55は、軸シール部材48を挟んだ状態でハウジング21に対して固定された状態になる。すると、下カバー55の導入部73に形成された導入孔72、軸シール部材48に形成された連通孔48e、ハウジング21に形成された呼び水部29と軸シール部材48の基盤部49とで構成される呼び水室PRが互いに連通される。つまり、導入孔72は、連通孔48e、前記呼び水室PRを介して、ハウジング21の収容室23に連通する導入口28に連通する。
【0057】
また、下カバー55の吐出部71に形成された吐出孔70、吐出溝69、軸シール部材48に形成された連通溝48f、ハウジング21に形成された溝部21cが互いに連通される。つまり、吐出孔70は、吐出溝69、連通溝48f及び溝部21cを介して、ハウジング21の収容室23に連通する吐出口30に連通される。
【0058】
従って、下カバー55の導入孔72から導入されたインクは、軸シール部材48に形成された連通孔48eを介して呼び水部29(呼び水室PR)に導入される。すなわち、呼び水室PRは、ギヤポンプGP内のうちキャップ部材12側(上流側)に位置している。そして、呼び水室PRに吐出されたインクは、図8中各矢印方向に示すように、第1バネ
座32と呼び水部29内周面との間隙、第1バネ座32と呼び水部29の外周面との間隔等を介して、導入口28に向かって流れる。導入口28から吸引室45に導入されたインクは、駆動歯車35及び従動歯車40の回転により、吸引室45から吐出室46に移送され、吐出口30から、溝部21c、連通溝48f、吐出溝69を介して流出する。そして、吐出溝69から流出したインクは、吐出溝69に連結された下カバー55の吐出孔70を介して外部に排出されるようになっている。
【0059】
また、下カバー55が、図13に示すように、軸シール部材48を挟んだ状態でハウジング21に対して固定されると、下カバー55に形成された抵抗体収容部61は、その内部が、同じく下カバー55に形成された空気孔60、空気溝59を介して、軸シール部材48の第1のシール部50の軸孔50aと連通する。つまり、抵抗体62内を通過した空気は、空気孔60及び空気溝59を通って、第1のシール部50の内側に流入可能になっている。このとき、抵抗体62によって、第1のシール部50に流入する空気量は制限されている。
【0060】
また、図13に示すように、下カバー55とハウジング21との間に挟まれた軸シール部材48は、その第4シール突条48hが、下カバー55の第3圧接部55eと、ハウジング21の底面21bとの間で圧接されて、ハウジング21の呼び水部29と軸シール部材48とで形成された呼び水室PRの気密性を保持するようになっている。また、軸シール部材48の第3シール突条48gは、第3圧接部55e及びハウジング21の溝部21cの周囲の底面21bとの間で圧接されて、溝部21c、軸シール部材48の連通溝48f、下カバー55の吐出溝69とを気密状態に封止して、インク流路の気密性を保持している。
【0061】
次に、呼び水室PRについて図13及び図14にしたがって説明する。
クリーニング開始時であって、キャップ部材12が記録ヘッド8に密着し、まだギヤポンプGPが吸引を開始していない状態においては、前記コイルばねSによるバネ荷重W1が、呼び水室PRを構成する軸シール部材48に加わっている。また、軸シール部材48には、呼び水室PRに供給されているインクの加圧力P1も加わっている。
【0062】
次に、ギヤポンプGPが吸引を開始すると、図14に示すように、呼び水室PR内には負圧P2が発生し、軸シール部材48は、前記コイルばねSによるバネ荷重W1に抗して前記ハウジング21側に変位する。このとき、軸シール部材48の変位に要する変位反力をWdとする。なお、このとき、P2>W1+P1+Wdとなっている。軸シール部材48が撓むことによって呼び水室PRの容積が縮小すると、呼び水室PR内のインクは導入口28を介して全てハウジング21内に吸引され、そのインクは呼び水として機能する。
【0063】
詳しくは、ハウジング21内に吸引されたインクにより、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上する。この結果、記録ヘッド8から吸引されるインクの流速は早まり、記録ヘッド8から吸引したインクが短時間でギヤポンプGPまで到達するので、この到達までの時間(以下、到達時間という)のバラツキに対して、記録ヘッド8からのインクがギヤポンプGPに到達後の吸引時間(以下、実吸引時間という)の割合が大きくなる。すなわち、到達時間に吸引するインク量のバラツキに対して実吸引時間に吸引するインク量の割合が大きくなる。従って、到達時間に吸引するインク量と実吸引時間に吸引するインク量との和である総吸引量のバラツキを低減することができる。
【0064】
そして、クリーニングが終了、すなわちギヤポンプGPが吸引を停止すると、図13に示すように、コイルばねSの作用により軸シール部材48が下カバー55側に変位し、呼び水室PRの容積が拡大し、負圧P3を発生する。このとき、キャップ部材12及びチューブT2内には、記録ヘッド8から吸引したインクが充満しており、そのインクが負圧P
3により呼び水室PR内に吸引される。これにより、再び呼び水室PRはインクで満たされ、次回のクリーニング時の呼び水が確保される。
【0065】
次回の呼び水を確保後、キャップ部材12、チューブT2内にはまだインクが残っているので、キャップ部材12を記録ヘッド8から外して空吸引を行う。このとき呼び水室PR内には負圧P4が発生するが、負圧P4はバネ荷重W1よりも小さいため、コイルばねSの作用により、軸シール部材48は撓まない。従って、呼び水室PR内に溜まったインクは、負圧P4が発生してもハウジング21内に吸引されることがなく、次のクリーニング開始時に呼び水として機能する。
【0066】
(上側封止部A)
次に、上側封止部Aについて図13、図15に従って説明する。図15は、上側封止部Aの分解斜視図である。図15に示すように、上側封止部Aは、封止板75、パッキン77、押板78、及び規制部材80を備えている。
【0067】
図15に示すように、封止板75は、金属板からなり、略楕円状に形成されている。この封止板75は、図13に示すように、ハウジング21の上面21aであって、突条21eの内側に位置するように設けられている。そして、封止板75は、収容室23側の面が、収容室23に収容された駆動歯車35及び従動歯車40の環状突部36,41に当接することで、駆動歯車35及び従動歯車40の軸方向に位置決めされている。
【0068】
この封止板75の外側からは、パッキン77が取着される。図15に示すように、パッキン77は、エラストマ等の可撓性材質からなり、収容室23の開口を覆うことができる大きさの略長方形の板状に形成されている。図13に示すように、パッキン77は、その下面77bに凹部77cが形成されている。さらに、図15に示すように、パッキン77の両側には、支持部77dが凹設されている。また、パッキン77の各隅部には、各ボルトBTを貫挿する4つの貫挿孔H3が貫通形成されている。図13に示すように、パッキン77が、封止板75の上から配設され、外部から押圧力等が加えられると、パッキン77の下面77bがハウジング21の突条21eに圧接されて、その圧接された部分が弾性変形し、突条21eに対して密着する。その結果、収容室23の開口は気密状態に封止される。また、このとき、パッキン77の凹部77cに封止板75が収容されるようになっている。
【0069】
パッキン77の上面77a側からは、押板78が取着される。図15に示すように、押板78は、四角枠状に形成されており、内側に開口部78cを有している。押板78の各隅部には、各ボルトBTを貫挿する4つの貫挿孔H4が貫通形成されている。また、押板78の上面78aには、規制部材80が取着される。
【0070】
規制部材80は、略枠状に形成された本体部81と、本体部81の両側から下方に向かって延びる2つの腕部82とを有している。各腕部82は、略L字状に形成され、その先端が内側に向かって折り曲げられている。腕部82の先端には、孔が形成されている。さらに、本体部81の各隅部には、ボルトBTを貫挿するための貫挿孔H5が形成されている。
【0071】
図3及び図15に示すように、本体部81の内側に設けられた開口部83の両側には、2つの規制部84が、細長い板状片を2箇所で折り曲げることによりクランク状に形成されている。
【0072】
図13に示すように、規制部84は、内側に張り出した第1の水平部H1と、第1の水平部から垂直方向下方に延びる垂直部Pと、垂直部から内側に向かって折り曲げられた第
2の水平部H2とからなる。第2の水平部H2の下面には、プレス加工することにより突出形成された押圧部85が設けられている。また、規制部84の垂直部Pは、押板78の厚みとほぼ同じ長さになっている。
【0073】
図3に示すように、規制部材80が押板78の上から取着されると、規制部材80の腕部82の先端部の孔に、下カバー55の掛止部K(図12参照)が係合される。また、パッキン77は、ハウジング21の支持板SPの内側に嵌合するように配設される。このとき、腕部82は、パッキン77の支持部77dに嵌合する。そして、各貫挿孔H3〜H5に各ボルトが貫挿され、下カバー55の螺合孔R2から突出したボルトBTの先端に図示しないナットが締結される。
【0074】
その結果、規制部材80により、押板78、パッキン77、封止板75及びハウジング21が、下カバー55に対して固定される。すると、図13に示すように、規制部材80の押圧部85がパッキン77の上面77aに当接し、その当接面を下方に押圧する状態になる。
【0075】
次に、上記のように構成したギヤポンプGPの作用について説明する。クリーニングの際は、前記昇降機構が駆動して、記録ヘッド8のノズル開口面をキャップ部材12により封止する。そして、プリンタ1のコントローラCTから、所定のタイミングで駆動命令が出力されると、前記駆動モータDMが駆動し、駆動軸22が逆方向に回転する。その結果、図7に示すように、駆動歯車35がr1方向に回転し、従動歯車40は駆動歯車35との歯合により、r2方向に回転する。
【0076】
このとき、負圧P2によって軸シール部材48が撓むことにより、呼び水室PR内に溜まっているインクがハウジング21内に吸引され、呼び水として機能するため、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上する。この結果、インクの総吸引量のバラツキを低減することができるため、予め組んだクリーニングに必要な最低吸引量を確保するシーケンスとの乖離が小さくなる。従って、例えば、到達時間に吸引する吸引量が最低吸引量よりも多くなってしまい、クリーニング時に消費するインク量が増加するのを防ぐことができる。
【0077】
キャップ部材12から吸引室45に流入し、駆動歯車35及び従動歯車40により吐出室46側に送り出されたインクは、吐出口30→溝部21c→連通溝48f→吐出溝69→吐出孔70を介して、吐出部71に接続されたチューブT3に導出される。チューブT3内に流入したインクは、チェックバルブ14、チューブT4を介して、第1のインクカートリッジ9内に排出される。その結果、キャップ部材12内が負圧状態になり、記録ヘッド8のノズルからインクや気泡等の流体が排出される。
【0078】
クリーニングが終了すると、前記軸シール部材48がコイルばねSの作用により下カバー55側に付勢され、呼び水室PRの容積が拡大し、負圧P3が発生する。そして、キャップ部材12内に溜まったインクはチューブT2、導入孔72、連通孔48eを介して呼び水室PR内に流入し、呼び水室PR内はインクで満たされる。
【0079】
その後、キャップ部材12が記録ヘッド8から離れるが、このときにまだキャップ部材12、チューブT2内にインクが残っている。そして、それらのインクはキャップ部材12を記録ヘッド8から外した状態でギヤポンプGPを駆動(空吸引)することにより、キャップ部材12→チューブT2→呼び水室PR→チューブT3→チェックバルブ14→チューブT4を介して第1のインクカートリッジ9内に流入する。
【0080】
このときに呼び水室PR内に発生する負圧P4はコイルばねSによるバネ荷重W1よりも小さいため、軸シール部材48は撓まず、呼び水室PR内のインクがハウジング21内
に吸引されることはない。この結果、呼び水室PR内には、次回のクリーニング時に呼び水として機能するインクで満たされる。
【0081】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、ギヤポンプGPに呼び水室PRを設けたので、クリーニング時にギヤポンプGPが吸引開始した際にハウジング21内にインクを吸引することができる。この結果、ギヤポンプGPの負圧発生能力が向上し、短時間で記録ヘッド8からギヤポンプGPまでインクを吸引することができるので、記録ヘッド8からギヤポンプGPまでインクが到達する時間のバラツキを低減することができる。そのため、キャップ部材12から吸引するインク量のバラツキが小さくなるので、予め組んであるクリーニングに必要な最低吸引量を確保するシーケンスとの乖離が小さくなる。従って、例えば、吸引量が最低吸引量よりも多くなってしまい、クリーニング時に消費するインク量が増加するのを防ぐことができる。
【0082】
(2)本実施形態によれば、呼び水室PRは、ギヤポンプGP内のうちキャップ部材12側(上流側)に位置しているので、ギヤポンプGPが吸引を開始した際に、即座に呼び水室PR内のインクをハウジング21内に吸引することができる。従って、クリーニング開始後、即座にギヤポンプGPの負圧発生能力を向上させることができるので、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0083】
(3)本実施形態によれば、呼び水室PRは、呼び水室PR内の負圧に応じて容積が可変であるので、ギヤポンプGPが吸引を開始した際に、容積が縮小し、即座に呼び水室PR内のインクをハウジング21内に吸引することができる。また、ギヤポンプGPが吸引を終了したときには、容積が元に戻り、次のクリーニング時に使用するインク(呼び水)を確保することができる。この結果、例えば、インク(呼び水)をハウジング21内に吸引したり、呼び水室PR内にインク(呼び水)を確保したりするための装置を特別に設ける必要がない。従って、簡単で小型の構成でありながらも、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0084】
(4)本実施形態によれば、呼び水室PRを構成する軸シール部材48は、ギヤポンプGPのパッキンとして機能しながらも、ダイヤフラムとして機能する。この結果、ダイヤフラムのために新たな部品を追加する必要がなく、部品点数を低減することができる。従って、製造コストを増加することなく、ギヤポンプGPのインク吸引量のバラツキを低減することができる。
【0085】
(5)本実施形態によれば、呼び水室PR内に配置されたコイルばねSのバネ荷重W1は、クリーニング時の負圧では伸縮し、空吸引の負圧では伸縮しない程度に設定したので、クリーニング開始時には軸シール部材48が撓むが、空吸引時には軸シール部材48が撓まない。従って、クリーニング後に呼び水室PR内にインク(呼び水)を確保した後に空吸引を行っても、軸シール部材48は撓まないので、呼び水を確保しながらも、チューブT2等に残っている不要なインクを第1のインクカートリッジ9内に排出することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、呼び水室PRをギヤポンプGPに具体化して好適な効果を得たが、これをギヤポンプGP以外のベーンポンプ等、内部のインクの量に応じてその負圧発生能力が変化するポンプに適用してもよい。このようにすることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
○上記実施形態では、ギヤポンプGPを、プリンタ1ではなく、他の装置に搭載するよ
うにしてもよい。他の装置においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
○上記実施形態では、液体噴射装置をプリンタ1に具体化したが、この限りではなく、他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化するようにしてもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態のプリンタの概略を説明するための斜視図。
【図2】同じく、記録ヘッドへのインク供給系を説明するためのブロック図。
【図3】同じく、プリンタに搭載されるギヤポンプの斜視図。
【図4】同じく、ギヤポンプの分解斜視図。
【図5】同じく、ギヤポンプのハウジング、駆動歯車、従動歯車を説明する斜視図。
【図6】同じく、ギヤポンプのハウジング、駆動歯車、従動歯車を説明する斜視図。
【図7】同じく、駆動歯車及び従動歯車を収容した状態のハウジングの平面図。
【図8】同じく、ハウジングの下面図。
【図9】同じく、ギヤポンプの下側封止部を構成する軸シール部材の斜視図。
【図10】同じく、軸シール部材の斜視図。
【図11】同じく、下側封止部を構成する下カバーの斜視図。
【図12】同じく、下カバーの斜視図。
【図13】同じく、ギヤポンプの断面図。
【図14】同じく、クリーニング時のギヤポンプの断面図。
【図15】同じく、ギヤポンプの上側封止部の分解斜視図。
【図16】同じく、従来のギヤポンプの説明図。
【符号の説明】
【0089】
GP…ギヤポンプ、PR…呼び水室、S…コイルばね、1…プリンタ、8…記録ヘッド、12…キャップ部材、21…ハウジング、23…収容室、29…呼び水部、32…第1バネ座、35…駆動歯車、40…従動歯車、45…吸引室、46…吐出室、48…軸シール部材、48d…第2バネ座。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する液体噴射ヘッドを、流路を介して吸引加圧ポンプに接続されたキャップ手段により封止して、前記吸引加圧ポンプが発生する負圧により、前記液体噴射ヘッドから液体を排出させる液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、前記吸引加圧ポンプのうち前記キャップ手段側に設けられたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室に、前記誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプは、ギヤポンプであることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
ハウジングに設けられた収容室内に駆動歯車及び従動歯車を備え、前記駆動歯車及び従動歯車の回転により、吸引側から吐出側に流体を導出するギヤポンプにおいて、
前記収容室に連通し、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、
前記誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、
前記可撓性部材は、前記誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、前記誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させることを特徴とするギヤポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のギヤポンプにおいて、
前記誘導液体貯留室は、前記収容室より上流側に備えられたことを特徴とするギヤポンプ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のギヤポンプにおいて、
前記可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材であることを特徴とするギヤポンプ。
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する液体噴射ヘッドを、流路を介して吸引加圧ポンプに接続されたキャップ手段により封止して、前記吸引加圧ポンプが発生する負圧により、前記液体噴射ヘッドから液体を排出させる液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプは、誘導液体貯留室を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、その内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、容積が縮小することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室は、前記吸引加圧ポンプのうち前記キャップ手段側に設けられたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプの前記誘導液体貯留室に、前記誘導液体貯留室の容積を拡大する方向に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記吸引加圧ポンプは、ギヤポンプであることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
ハウジングに設けられた収容室内に駆動歯車及び従動歯車を備え、前記駆動歯車及び従動歯車の回転により、吸引側から吐出側に流体を導出するギヤポンプにおいて、
前記収容室に連通し、液体を貯留する誘導液体貯留室を備え、
前記誘導液体貯留室は、少なくともその一面が可撓性部材から構成され、
前記可撓性部材は、前記誘導液体貯留室の内部の負圧が予め定めた基準負圧以上になったとき、前記誘導液体貯留室の容積が縮小する方向に変位して、前記誘導液体貯留室内に貯留した液体を前記収容室内に流入させることを特徴とするギヤポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のギヤポンプにおいて、
前記誘導液体貯留室は、前記収容室より上流側に備えられたことを特徴とするギヤポンプ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のギヤポンプにおいて、
前記可撓性部材は、前記収容室の開口を封止する封止部材であることを特徴とするギヤポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−1201(P2006−1201A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181565(P2004−181565)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]