説明

液体散布装置、フラットパネルディスプレイの製造装置、フラットパネルディスプレイ、太陽電池パネルの製造装置および太陽電池パネル

【課題】所定のタイミング毎にインクジェットヘッド等の噴射ヘッドの高さ位置のチェックを行うことにより、噴射ヘッドの保護を図ることを目的とする。
【解決手段】搬送テーブル20とインクジェットヘッド30とを相対移動させて間欠送りを行うリニアモータ手段21と、インクジェットヘッド30をインク散布エリアA1と退避エリアA2との間を水平移動させるヘッドスライド機構26と、インクジェットヘッド30の高さ位置を検出する高さ検出センサ41、42と、を備え、高さ位置検出センサ41、42は、ヘッドスライド機構26がインクジェットヘッド30を退避エリアA2からインク散布エリアA1に水平移動させるごとにインクジェットヘッド30の高さ位置を検出し、検出したインクジェットヘッド30の高さ位置が適正である場合にのみリニアモータ手段21が駆動するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上に液体を散布する液体散布装置、この液体散布装置を適用したフラットパネルディスプレイの製造装置、このフラットパネルディスプレイの製造装置により製造されたフラットパネルディスプレイ、前記の液体散布装置を適用した太陽電池パネルの製造装置およびこの太陽電池パネルの製造装置により製造された太陽電池パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしての液晶ディスプレイは、ガラス等の透明薄板からなるTFT基板とカラーフィルタ基板とを接合させたものから構成され、TFT基板とカラーフィルタ基板との間にはセルギャップと呼ばれる微小な隙間が形成される。セルギャップは複数のスペーサビーズの凝集体からなるスペーサにより確保され、この空間に液晶が封入される。スペーサは粒径が3〜5μmの球状とした微小粒子からなり、TFT基板又はカラーフィルタ基板の何れか一方に多数分散した配置を行う。
【0003】
スペーサは基板上のブラックマトリクス領域に限定的に配置される。このために、スペーサビーズを溶剤に均一に分散させた液体からなるスペーサインクを用いて、ブラックマトリクス領域にスペーサインクを着弾させるようにして散布している。スペーサインクを供給する方式としては、特許文献1のようなインクジェット方式が採用されている。この特許文献1で示すようなインクジェット方式は、微小なノズルを1列に複数配列したインクジェットヘッドを用いて、各ノズルから基板に向けてスペーサインクの液滴を噴射するようにしている。インクジェットヘッドは搬送テーブルの上部に固定して配置しており、インクジェットヘッドを基板の搬送方向に対して直交または斜めに配置している。そして、基板を搬送テーブルに搭載して1方向に間欠送りしている間に、この間欠送りのタイミングに合わせてインクジェットヘッドの各ノズルからインクを基板に向けて散布している。
【特許文献1】特開2007−025334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に散布されるインクはブラックマトリクス領域に限定的に分散配置されなくてはならず、極めて高い着弾精度が要求されることから、基板とインクジェットヘッドとの間隔は極めて微小に設定される。基板の交換時には、インクジェットヘッドと基板との交差ポイントにインクジェットヘッドを待機させた状態で、基板をインクジェットヘッドの下部に搬入する。このときに、インクジェットヘッドの高さ位置に僅かなずれを生じて、両者が干渉する位置にあると、インクジェットヘッドに基板が衝突する。特に、基板は搬送テーブルに搭載されて比較的高速に搬入されてくることから、インクジェットヘッドに生じる変形ないしは破損等が大きくなることがある。インクジェットヘッドの各ノズルは精密部品からなるため、僅かに変形しただけでも交換をしなければならない。このため、ランニングコストが高くなり、またその間は処理を行えないことから、スループットに大きな影響を与える。
【0005】
インクジェットヘッドの高さ位置の調整は、インクジェットヘッドを最初に装置に組み付けたときに行い、基本的にはその後には行われない。また、分解・修理等のメンテナンスを行ったときには、再度調整を行うことはある。従って、一旦インクジェットヘッドを装置に組み付けた後には故障や破損等が生じない限りは、改めて高さ位置の調整が行われることはない。
【0006】
しかしながら、インクジェットヘッドは可動部材であり、繰り返してインク噴射を行っていると、徐々に位置ずれを生じる可能性がある。基板とインクジェットヘッドとの間隔は微小であるため、徐々に生じたずれによっても、やはり衝突する可能性がある。また、インクジェットヘッドから繰り返しインクを噴射すると、インクが乾燥してノズルに固着し、インクの噴射不良や不吐出等を生じるため、定期的にメンテナンスが行われる。メンテナンス時には、インクジェットヘッドを取り外して再度装着するため、取り付け精度によっては、やはりインクジェットヘッドと基板とが干渉することがある。
【0007】
そこで、本発明は、所定のタイミング毎にインクジェットヘッド等の噴射ヘッドの高さ位置のチェックを行うことにより、噴射ヘッドの保護を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の液体散布装置は、基板を搭載する搬送テーブルを間欠送りしている間に、微粒子を含む液体を下方に向けて噴射する噴射口を1列または複数列に配列して設けた噴射ヘッドから前記基板に対して前記液体を散布する液体散布装置であって、前記搬送テーブルと前記噴射ヘッドとを相対移動させて前記間欠送りを行う相対移動手段と、前記噴射ヘッドを、前記基板上への前記液体の散布位置と、この位置から水平方向に退避した退避位置との間を水平移動させるヘッド移動手段と、前記噴射ヘッドの高さ位置を検出するヘッド位置検出手段と、を備え、前記ヘッド位置検出手段は、前記ヘッド移動手段が前記噴射ヘッドを前記退避位置から前記散布位置に水平移動させるごとに前記噴射ヘッドの高さ位置を検出し、検出した前記噴射ヘッドの高さ位置が適正である場合にのみ前記相対移動手段が駆動すること、を特徴とする。
【0009】
この液体散布装置によれば、噴射ヘッドを退避位置から散布位置に水平移動させるごとに高さ位置の検出を行い、正常であると判定した場合にのみ相対移動手段が駆動することで、噴射ヘッドの高さ位置に異常が生じている場合には、噴射ヘッドと基板とは相対移動しなくなる。このため、噴射ヘッドと基板とが干渉しなくなり、噴射ヘッドの保護を図ることができるようになる。
【0010】
本発明の請求項2の液体散布装置は、請求項1記載の液体散布装置において、前記ヘッド移動手段は、1枚の基板に対しての前記液体の散布が完了するごとに、前記噴射ヘッドを、前記散布位置から前記退避位置に水平移動させ、また前記退避位置から前記散布位置に水平移動させること、を特徴とする。
【0011】
この液体散布装置によれば、1枚の基板に対しての液体散布終了後に、噴射ヘッドは散布位置から退避位置に移動し、また退避位置から散布位置に移動することから、基板の交換時(液体散布終了後の基板を搬出し、次の基板を搬入するとき)に必ず噴射ヘッドの高さ位置を検出することになる。このため、頻繁に噴射ヘッドの高さ位置のチェックを行うことができ、より噴射ヘッドの安全性を確保することができるようになる。
【0012】
本発明の請求項3の液体散布装置は、請求項1記載の液体散布装置において、前記ヘッド移動手段は、前記基板に近接・離間させる方向に昇降動作を行い、前記ヘッド移動手段に設定された下降幅が適正であるか否かを検出し、適正である場合にのみ前記相対移動手段が駆動すること、を特徴とする。
【0013】
この液体散布装置によれば、噴射ヘッドの高さ位置が適正であったとしても、ヘッド移動手段に設定された下降幅が誤っている場合には、基板と噴射ヘッドとを相対移動させないようにしているため、噴射ヘッドの保護の万全を図ることができるようになる。
【0014】
本発明の請求項4の液体散布装置は、請求項1記載の液体散布装置において、前記ヘッド位置検出手段は、前記噴射ヘッドの両端の高さ位置をそれぞれ検出する2台のセンサであること、を特徴とする。
【0015】
この液体散布装置によれば、噴射ヘッドはある程度の長さを有しているため、その両端の高さ位置を検出することにより、噴射ヘッドに傾きが生じているような場合でも、高さ位置が不適正であることを認識できるようになる。これにより、噴射ヘッドを確実に保護することができるようになる。
【0016】
本発明の請求項5の液体散布装置は、請求項1記載の液体散布装置において、前記噴射ヘッドの高さ位置が適正でない場合には、その旨を報知する報知手段を備えたこと、を特徴とする。
【0017】
この液体散布装置によれば、噴射ヘッドの高さ位置の異常を検出したときに報知しているため、例えば作業者等に即時に異常を了知させることができ、迅速に復旧措置をとることができるようになる。
【0018】
本発明の請求項6のフラットパネルディスプレイの製造装置は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体散布装置を備えたこと、を特徴とする。また、本発明の請求項7のフラットパネルディスプレイは、請求項6記載のフラットパネルディスプレイの製造装置により製造されたこと、を特徴とする。
【0019】
噴射ヘッドとしてスペーサビーズを混在させたインクジェットヘッドとして用いたときには、フラットパネルディスプレイを製造する製造装置に液体散布装置を適用することができる。この場合の液体は、ブラックマトリクス領域に分散配置させるスペーサビーズを混在させたインクとなる。フラットパネルディスプレイとしては、他に、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等を適用することができる。
【0020】
本発明の請求項8の太陽電池パネルの製造装置は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体散布装置を備えたこと、を特徴とする。また、本発明の請求項9の太陽電池パネルは、請求項8記載の太陽電池パネルの製造装置により製造されたことを特徴とする。
【0021】
噴射ヘッドとして金属粒子等を混在させた液体を噴射する噴射ヘッドとして用いたときには、太陽電池パネルを製造する製造装置に液体散布装置を適用することができる。太陽電池パネルは、パネルセル内の発電電気を外部へ取り出すための金属配線や金属膜、太陽光を電気に変換するためのシリコン膜、ITO(透明導電膜)等をガラス基板上に形成する。このときに、ナノ単位の金属粒子を液体に混在させて、噴射ヘッドから液体を噴射させて、ガラス基板上に金属膜の形成や金属配線の描画等を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、噴射ヘッドを退避位置から散布位置に水平移動させるごとに、噴射ヘッドの高さ位置を検出して、適正であることを確認してはじめて噴射ヘッドと基板とを相対移動させるようにしているため、経年変化や噴射ヘッドのメンテナンス時等においても頻繁に高さ位置のチェックが行われるため、噴射ヘッドと基板とが干渉することなく、噴射ヘッドの保護を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下においては、フラットパネルディスプレイの1つである液晶ディスプレイの製造装置を例示して、ヘッドクリーニング装置を説明したものである。従って、噴射ヘッドはインクジェットヘッドとして、液体はインクとして、液体中の粒子はスペーサビーズとして説明しているが、これに限定されない。例えば、太陽電池の製造装置に適用する場合には、液体中に混在される粒子はナノ単位の金属粒子となる。
【0024】
図1において、基板1はガラス等の透明性の薄板である。基板1としては、TFT回路が形成されたTFT基板やカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板を適用することができるが、ここでは、基板1はカラーフィルタ基板であるものとして説明する。基板1は、主に画素領域2とブラックマトリクス領域3とを有している。画素領域2はRGBの各色の画素を構成する画素領域であり、画素領域2の間はブラックマトリクス領域3により区画形成されている。ブラックマトリクス領域3にはスペーサ4が格子状に均一に散布され、スペーサ4によりカラーフィルタ基板とTFT基板とが接合されたときに、所定間隙となるセルギャップを形成する。そして、スペーサ4により形成される両基板の間の隙間に液晶を封入することにより液晶パネルが形成される。スペーサ4は、カラーフィルタ基板側だけではなく、TFT基板側に形成するものであってもよい。
【0025】
図2にインク散布装置10を示す。インク散布装置10は、ベース11の上に設置されており、搬送テーブル20とリニアモータ手段21とX軸ガイド22とガントリ23とインクジェット機構24とを主に有している。インクジェット機構24は、ヘッドブロック25とヘッドスライド機構26とヘッド上下機構27とヘッドシフト機構28とヘッド回転機構29とを備えて概略構成している。ヘッドブロック25には4つのインクジェットヘッド30A、30B、30C、30D(総称してインクジェットヘッド30とする)が備えられており、各インクジェットヘッド30に1列に配列されている多数のノズルからインクが噴射される。図2では、ヘッドブロック25は4つのインクジェットヘッド30を備えているが、1つのインクジェットヘッド30を備えるものであってもよい。この場合には、ヘッドブロック30ではなくインクジェットヘッド30をインクジェット機構24に備えるようにする。また、ヘッドブロック25が1つの例を示しているが、複数のヘッドブロック25を備えるものであってもよい。また、ヘッドブロック25は基板の搬送方向に対して直交する方向に配置しているが、基板の搬送方向に対して傾斜するように設けてもよい。基板の搬送方向に対して傾斜するように設けることで、インクジェットヘッド30の各ノズル間の間隔よりも狭小にインクを散布することが可能になる。
【0026】
基板1は搬送テーブル20に搭載されて、真空吸着手段等で固定的に保持されている。搬送テーブル20は、リニアモータ手段21により駆動されて、ガイドレールであるX軸ガイド22に沿って図中のX方向に搬送される。リニアモータ手段21は、固定子21Fと可動子21Mとにより構成される。固定子21Fは、超電導コイルにより構成されており、コイルに流れる電流により磁界を発生させる。固定子21Fは可動子21Mの移動方向、つまり図中のX方向に向けて直線的に延在されるように配置している。可動子21Mはエンコーダ付きのモータであり、超電導磁石を搭載している。固定子21Fに発生した磁界と可動子21Mの超電導磁石とにより、可動子21Mが推進されて、固定子21Fに沿って移動する。搬送テーブル20は間欠送りがされるようにするため、可動子21Mの動作も間欠送りとなる。
【0027】
図2の構成では、搬送テーブル20がリニアモータ手段21により搬送されて、インクジェット機構24はガントリ23で静止状態にしてインクを散布するようにしている。このため、インクジェット機構24と搬送テーブル20とを相対移動させる相対移動手段としては、リニアモータ手段21になる。ただし、搬送テーブル20を静止状態にしておき、インクジェット機構24を一方向に移動させて相対移動させるようにしてインクを散布するものであってもよい。
【0028】
インクジェット機構24は、制御装置31に電気的に接続されており、制御装置31からの指令により、インクジェット機構24に備えられる各機構が制御される。制御装置31はコンピュータ32に接続されており、コンピュータ32により制御装置31の制御内容を変更することができるようになっている。ヘッドスライド機構26は、搬送テーブル20を跨ぐように門型をしたガントリ23に装着されており、インクジェット機構24全体をY方向に移動させるものである。ヘッド上下機構27は、Z方向(基板1に対して近接・離間する上下方向)にヘッドブロック25を昇降動作させる機構である。ヘッドシフト機構28は、X方向にヘッドブロック25を微小に移動させる機構であり、ヘッド回転機構29は、ヘッドブロック25を任意の角度で回転させる機構である。
【0029】
インク散布装置10は、Y方向に大きく2つのエリアに分かれている。1つが、搬送テーブル20が搬送されてインクの散布が行われるインク散布エリアA1であり、もう1つが、インクジェット機構24を退避させるスペースである退避エリアA2である。退避エリアA2には、第1の高さ検出センサ41と第2の高さ検出センサ42とをベース11上に固定して配置している。第1の高さ検出センサ41は上部に位置するヘッドブロック25の一端の高さ位置を検出しており、第2の高さ検出センサ42はヘッドブロック25の他端の高さ位置を検出している。そして、第1の高さ検出センサ41と第2の高さ検出センサ42とは制御装置31に電気的に接続されており、検出した高さ位置の情報を制御装置31に出力する。第1の高さ検出センサ41および第2の高さ検出センサ42としては、例えばレーザ変位計等を用いることができる。
【0030】
インクジェット機構24は、インク散布エリアA1と退避エリアA2との間を往復移動することが可能なようになっている。インクジェット機構24のヘッドスライド機構26が制御装置31の制御により、ガントリ23をY方向に移動することにより、インク散布エリアA1と退避エリアA2との間をインクジェット機構24が往復移動する。
【0031】
インク散布装置10には、搬送テーブル20に搭載された基板1がリニアモータ手段21により順次搬送されてきて、ヘッドブロック25の各インクジェットヘッド30によりインクが散布される。可動子21Mを間欠送りして、そのタイミングに合わせてインクを噴射していくことで、基板1にはマトリクス状にインクが着弾し、ブラックマトリクス領域3にスペーサ4が分散配置されていく。基板1上の全ての箇所に対するインク散布処理が終了したときには、可動子21Mを制御して、搬送テーブル20を滑走させてインク散布装置10から搬出していく。そして、次の基板1がインク散布装置10に搬入される。可動子21Mは、制御装置31と電気的に接続されており、制御装置31からの指令に基づいて、動作の停止・開始を行うようにしている。
【0032】
インク散布処理終了後の基板1を搬出して、次の基板1を搬入するまでの間、インクジェット機構24はそのままの位置で待機することもできるが、一度退避エリアA2に退避させるようにしている。退避エリアA2に退避させたインクジェット機構24は、前述したメンテナンス等を行うこともでき、またメンテナンスの必要がなければ、そのまま退避エリアA2で待機させることもできる。
【0033】
インクジェット機構24は、図3のような状態で、退避エリアA2に位置している。この状態から、再びインク散布処理を開始するときには、図4のように、ガントリ23をY方向にインクジェット機構24のヘッドスライド機構26が移動してインク散布エリアA1に戻る。この時点では、インク散布エリアA1には、搬送テーブル20はまだ搬入されていない。そして、この状態から、ヘッド上下機構27によりヘッドブロック25を予め設定されている下降幅の分だけ下降させる。下降した位置が、インクを基板1に散布する最適な高さ(インク散布高さ)となり、所謂ティーチングポイントになる。インク散布高さは、実際にインクを散布する高さ位置であり、基板1との間は極めて微小に設定されている。そして、図5に示すように、インク散布高さで待機しているヘッドブロック25の下方に、搬送テーブル20に搭載された基板1が搬入され、インク散布処理が開始される。
【0034】
インクジェット機構24のY方向の移動およびZ方向の下降動作は、全て搬送テーブル20がインク散布装置10に搬入されるまでの間に行う。基板1にインクを散布するという点では、基板1がインク散布装置10に搬入された後に、インクジェット機構24をインク散布エリアA1に移動して、インク散布高さまで下降してから、インク散布処理を開始するようにしてもよい。しかし、前述してきたように、予めインクジェット機構24をY方向およびZ方向に移動しておいて、インク散布高さに位置させることで、インク散布処理を行うための準備が完了した状態で搬送テーブル20が搬入され、即時にインク散布処理を開始することができる。これにより、処理効率の向上を図ることができる。
【0035】
インクジェット機構24が退避エリアA2に位置していたときに、メンテナンス等を行うことや経年変化等により、Z方向の高さ位置に誤差を生じることがある。メンテナンスを行うときには、通常はヘッドブロック25を取り外して、メンテナンスを行い、再度ガントリ23に装着するようにしている。このため、ヘッドブロック25を再度装着したときに高さ位置にずれを生じる場合がある。また、前述したように、退避エリアA2に設けた洗浄槽により洗浄を行う場合には、ヘッドブロック25はインクジェット機構24に取り付けられたまま洗浄することが可能であるが、昇降動作を行い、また洗浄時にヘッドブロック25に衝撃が与えられることから、高さ位置にずれを生じる場合がある。さらに、インクジェット機構24はガントリ23を繰り返し往復移動することから、移動時に徐々に高さ方向に狂いを生じることもあり、このような経年変化により、高さ位置に徐々にずれを生じる場合もある。このように、ヘッドブロック25の高さ位置にずれを生じた状態で、搬送テーブル20を搬入すると、待機しているヘッドブロック25に基板1または搬送テーブル20が衝突する。ヘッドブロック25の各インクジェットヘッド30は僅かに変形ないしは破損を生じただけでも交換しなければならなくなるため、ランニングコストの上昇やスループットの低下といった問題を招来する。
【0036】
従って、ヘッドブロック25の高さ位置が適正であるか否かのチェックを、インク散布装置10にヘッドブロック25を組み付けたときだけではなく、頻繁に行うようにする。このために、ヘッドブロック25が退避エリアA2からインク散布エリアA1に水平移動するごとにヘッドブロック25の高さ位置のチェックを行い、適正であるときのみ、可動子21Mを制御して、搬送テーブル20をインク散布装置10に搬入させるようにする。まず、退避エリアA2において、図3のように、第1の高さ検出センサ41と第2の高さ検出センサ42とにより、ヘッドブロック25の両端の高さ位置を検出する。制御装置31には、ヘッドブロック25の両端の高さ位置の適正範囲を予め記憶しており、第1の高さ検出センサ41および第2の高さ検出センサ42から出力された高さ位置の情報が予め記憶されている適正範囲内にあるか否かを判定する。ヘッドブロック25の両端のうち何れか一方が予め記憶されている適正範囲外にあると判定されたときには、ヘッドブロック25の高さ位置が適正でないものとして検出する。ヘッドブロック25の両端の高さ位置を検出することで、両端の高さ位置に差が生じて傾斜したような場合でも適正でないことを検出できる。制御装置31に予め記憶している適正範囲としては、インク散布装置10を最初に設置したときに理想的な高さ位置として測定された値に対して許容誤差を持たせた範囲とすることができる。
【0037】
基本的には、ヘッドブロック25の高さ位置が適正であれば、ヘッドブロック25と基板1との干渉を回避することができる。ただし、ヘッド上下機構27に設定された下降幅、つまりティーチングポイントに誤りがある場合には、ヘッドブロック25の高さ位置が適正であったとしても、干渉が生じる。つまり、ヘッドブロック25の下降幅は、ヘッドブロック25の種類やインクの種類等を変更したときには、変更可能なようになっており、コンピュータ32により下降幅の設定値を更新することは可能である。従って、コンピュータ32を操作すれば下降幅の値の変更を行うことができるが、本来変更を行ってはならない状況下で、誤って下降幅の値の変更が行われることがある。この場合に、変更前よりも低い値に設定されると、過剰にヘッドブロック25が下降して、搬送テーブル20と衝突する。
【0038】
そこで、下降幅が適正であるか否かの検出も行うようにしている。この下降幅の最適値は、インク散布装置10を最初に設置したときに基板1との間隔を最適に調整したときの値になり、当該値は制御装置31に記憶されている。このため、制御装置31は、最初に記憶された下降幅の値と設定された下降幅との値とを比較し、異なっていることを検出したときには、下降幅が適正でないと判定する。これは、下降幅が更新されたことを検出することによっても判定することができる。
【0039】
従って、(1)ヘッドブロック25の高さが適正であるか否か、および(2)下降幅が適正であるか否か、の二重の条件をクリアした場合にのみ、可動子21Mを駆動させて、搬送テーブル20をインク散布装置10に搬入させるようにする。これにより、ヘッドブロック25と基板1とが確実に干渉しなくなるため、ヘッドブロック25の保護を図ることができるようになる。
【0040】
前記(1)および(2)の適正のチェックについては、ヘッドブロック25を退避エリアA2からインク散布エリアA1に移行するごとに行うようにしているが、このときの移行タイミングとしては、1枚の基板1に対してのインク散布処理が完了するごと、複数枚の基板に対してのインク散布処理が完了するごと、等の任意のタイミングとすることができる。このとき、前記の適正チェックを頻繁に行うと、その分だけタイムロスが生じ、全体のスループットの低下が生じるが、その分、ヘッドブロック25の保護の万全を図ることができる。この意味で、1枚の基板1ごとに適正チェックを行うことが望ましい。また、ヘッドブロック25のメンテナンスを行うときにはある程度の時間を要することになり、メンテナンスと同時に高さ位置の適正チェックを行っても、それほどタイムロスにはならない。一方、メンテナンスを行うときには、ヘッドブロック25の着脱等が行われるため、高さ位置にずれを生じやすく、メンテナンスのタイミングで高さ位置の適正チェックを行うことで、ヘッドブロック25の万全な保護を図りつつ、タイムロスを最小限に抑制することができる。
【0041】
また、制御装置31にブザーやアラーム等の報知手段を設けておき、前記(1)または(2)のいずれかが適正でないと判定したときには、ブザーやアラームを鳴動させることにより、迅速に且つ確実に作業員等にその旨を報知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】スペーサが散布される基板の構成説明図である。
【図2】インク散布装置の全体構成を示す外観図である。
【図3】ヘッドブロックが退避エリアに位置しているときの説明図である。
【図4】ヘッドブロックがインク散布エリアに位置しているときの説明図である。
【図5】ヘッドブロックが下降して、基板が搬入されたときの説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基板 10 インク散布装置
20 搬送テーブル 21 リニアモータ手段
24 インクジェット機構 25 ヘッドブロック
30 インクジェットヘッド 31 制御装置
32 コンピュータ 41 第1の高さ検出センサ
42 第2の高さ検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搭載する搬送テーブルを間欠送りしている間に、微粒子を含む液体を下方に向けて噴射する噴射口を1列または複数列に配列して設けた噴射ヘッドから前記基板に対して前記液体を散布する液体散布装置であって、
前記搬送テーブルと前記噴射ヘッドとを相対移動させて前記間欠送りを行う相対移動手段と、
前記噴射ヘッドを、前記基板上への前記液体の散布位置と、この位置から水平方向に退避した退避位置との間を水平移動させるヘッド移動手段と、
前記噴射ヘッドの高さ位置を検出するヘッド位置検出手段と、を備え、
前記ヘッド位置検出手段は、前記ヘッド移動手段が前記噴射ヘッドを前記退避位置から前記散布位置に水平移動させるごとに前記噴射ヘッドの高さ位置を検出し、検出した前記噴射ヘッドの高さ位置が適正である場合にのみ前記相対移動手段が駆動すること、を特徴とする液体散布装置。
【請求項2】
前記ヘッド移動手段は、1枚の基板に対しての前記液体の散布が完了するごとに、前記噴射ヘッドを、前記散布位置から前記退避位置に水平移動させ、また前記退避位置から前記散布位置に水平移動させること、を特徴とする請求項1記載の液体散布装置。
【請求項3】
前記ヘッド移動手段は、前記基板に近接・離間させる方向に昇降動作を行い、
前記ヘッド移動手段に設定された下降幅が適正であるか否かを検出し、適正である場合にのみ前記相対移動手段が駆動すること、を特徴とする請求項1記載の液体散布装置。
【請求項4】
前記ヘッド位置検出手段は、前記噴射ヘッドの両端の高さ位置をそれぞれ検出する2台のセンサであること、を特徴とする請求項1記載の液体散布装置。
【請求項5】
前記噴射ヘッドの高さ位置が適正でない場合には、その旨を報知する報知手段を備えたこと、を特徴とする請求項1記載の液体散布装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体散布装置を備えたこと、を特徴とするフラットパネルディスプレイの製造装置。
【請求項7】
請求項6記載のフラットパネルディスプレイの製造装置により製造されたフラットパネルディスプレイ。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体散布装置を備えたこと、を特徴とする太陽電池パネルの製造装置。
【請求項9】
請求項8記載の太陽電池パネルの製造装置により製造された太陽電池パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291709(P2009−291709A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147659(P2008−147659)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】