説明

液晶セル基板、液晶セル、液晶パネルおよび液晶表示装置

【課題】薄型軽量化が可能であり、かつ、製造における光学特性の制御が容易な、液晶セル基板、液晶パネルおよび液晶表示装置を提供する。
【解決手段】樹脂基板上に光学補償層が積層された液晶セル基板であって、前記光学補償層の屈折率nx、nyおよびnzが、nx≧ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、光学補償層が、光学補償層形成材料を前記樹脂基板または前記樹脂基板とは別の基材に塗布することにより形成されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶セル基板、液晶セル、液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置においては、薄型軽量化や低コスト化を目指し、液晶パネルに使用するガラス基板を樹脂基板に置き換えようと、種々の検討がなされてきた。液晶表示装置の基本的な構成は、それぞれ透明電極を備えた平板上のガラス基板を、一定間隔のギャップとなるようにスペーサーを介して対向配置し、前記ガラス基板間に液晶材料を注入し封止して液晶セルとし、さらに一対のガラス基板の外側面にそれぞれ偏光板を設けるというものである。樹脂基板においては、平滑性、耐熱性の点でガラス基板に劣るため、各層を平滑ガラス基板上に形成、加熱処理後、樹脂基板に転写するという技術が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、光学特性の制御は、光学活性基を有する材料から形成された光学補償層について、光学活性基の配合比を調整する等、困難なものであった。
【0003】
【特許文献1】特許第3162860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、薄型軽量化が可能であり、かつ、製造における光学特性の制御が容易な、液晶セル基板、液晶パネルおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の液晶セル基板は、
樹脂基板上に光学補償層が積層された液晶セル基板であって、前記光学補償層の下記屈折率nx、nyおよびnzが、nx≧ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、光学補償層が、光学補償層形成材料を前記樹脂基板または前記樹脂基板とは別の基材に塗布することにより形成されたものであることを特徴とする。
nx:光学補償層の面内の屈折率が最大となる方向(遅相軸方向)の屈折率
ny:光学補償層の面内で前記nxの方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率
nz:前記nxおよび前記nyの各方向に対し直交する光学補償層の厚み方向の屈折率
ここで、nx≧ny>nzの屈折率分布とは、nx>ny>nzまたはnx=ny>nzの屈折率分布を有するということである。
【0006】
本発明の液晶セルは、一対の液晶セル基板の間に液晶層が挟持された液晶セルであって、前記一対の液晶セル基板の少なくとも一方が、前記本発明の液晶セル基板であることを特徴とする。
【0007】
本発明の液晶パネルは、液晶セルを含む液晶パネルであって、前記液晶セルが、前記本発明の液晶セルであることを特徴とする。
【0008】
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが、前記本発明の液晶パネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶セル基板は、樹脂基板上に光学補償層が積層されたものであるので、従来のガラス基板を使用した液晶セル基板に比べて軽量化、低コスト化が実現できる。さらに、光学補償層が、nx≧ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、光学補償層形成材料を前記樹脂基板または前記樹脂基板とは別の基材に塗布することにより形成されているので、製造時において、光学特性の設計・制御を容易に行うことができる。また、別途に光学補償セルあるいは光学補償フィルム等を設ける必要がなくなるために、液晶セル、液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型軽量化を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液晶セル基板において、前記光学補償層が、前記光学補償層形成材料を前記樹脂基板に塗布して形成されたものであり、前記樹脂基板と前記光学補償層とが直接積層されていることが好ましい。
【0011】
本発明の液晶セル基板において、前記光学補償層が、前記光学補償層形成材料を前記別の基材に塗布して形成した後、前記別の基材から前記樹脂基板に転写して、前記樹脂基板上に積層されたものであり、前記樹脂基板と前記光学補償層とが、接着剤層または粘着剤層を介して積層されていることも好ましい。
【0012】
本発明の液晶セル基板において、液晶セルに配置された場合、前記樹脂基板の光学補償層が形成されている側が、液晶層に対向する側であることが好ましい。
【0013】
本発明の液晶セル基板において、前記光学補償層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一つの非液晶性ポリマーから形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の液晶セル基板において、前記樹脂基板が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフォスファゼン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリジアリルフタレート系樹脂およびポリイソボニルメタクリレート系樹脂からなる群から選択される、少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の液晶セル基板において、前記樹脂基板が、エポキシ系樹脂を含有することが好ましい。
【0016】
本発明の液晶セルにおいて、前記本発明の液晶セル基板が、前記光学補償層側を前記液晶層に対向させた状態で配置されていることが好ましい。
【0017】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0018】
本発明において、「nx=ny」とは、これらが完全に一致する場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、nx=nyと記載する場合には、例えば、実施例に説明する光学補償層の面内の位相差値Re(590)(=(nx−ny)×d、ここでdは光学補償層の厚み(nm))が10nm未満である場合を包含する。
【0019】
本発明の液晶セル基板は、例えば、樹脂基板および光学補償層形成材料を準備する工程、前記樹脂基板上に前記光学補償層形成材料を塗布する工程を含む第一の製造方法(以下、直接法という。)によって製造される。
【0020】
また、本発明の液晶セル基板は、例えば、樹脂基板および光学補償層形成材料を準備する工程、前記樹脂基板とは別の基材上に前記光学補償層形成材料を塗布し、光学補償層を形成する工程、前記樹脂基板上または形成された光学補償層上に接着剤層または粘着剤層を形成する工程、前記樹脂基板と前記光学補償層とを前記接着剤層または粘着剤層を介して貼り合わせる工程、前記光学補償層を前記別の基材上から前記樹脂基板上に転写する工程、を含む第二の製造方法(以下、転写法という。)によっても製造される。
【0021】
前記転写法において、転写工程の前に、前記他の基材を、この他の基材上に形成された前記光学補償層ごと収縮または延伸する工程を含むこともできる。この工程を含むことにより、nx>ny>nzの屈折率分布を有する二軸性の光学補償層を有する液晶セル基板を製造することができる。
【0022】
図1の模式断面図に、本発明の液晶セル基板の構成の一例を示す。同図においては、わかりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なっている。図示のとおり、この液晶セル基板10は、樹脂基板11および光学補償層12が、この順序で積層され構成されている。前記光学補償層12は、塗布により樹脂基板11上に直接形成されている。図1に例示した構成の液晶セル基板は、直接法により製造することができる。
【0023】
図2の模式断面図には、本発明の液晶セル基板の構成のその他の例を示す。この例においては、図示のとおり、前記光学補償層12は、接着剤層または粘着剤層13を介して樹脂基板11上に形成されている。図2に例示した構成の液晶セル基板は、転写法によっても製造することができる。
【0024】
本発明の液晶セル基板に用いることのできる樹脂基板は、透明性や耐衝撃性に優れていることが好ましい。可視光領域の400〜700nmの全波長領域における光透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。また、透明電極膜等を形成する際の耐熱性等の点から、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上であり、最適には160℃以上である。さらに、耐久性や液晶の変質防止等の点から、耐薬品性、光学的等方性、低吸水性、酸素等のガスバリア性等に優れていることが好ましい。
【0025】
樹脂基板は揮発成分の含有量が少ないことが好ましい。揮発成分の含有量は0.1重量%以下であることが好ましい。揮発成分の含有量の少ない樹脂基板を用いることで、樹脂基板との密着力に優れるとともに表面抵抗値が低くそのばらつきも少ないITO等の透明電極膜を形成することのできる液晶セル基板を得ることができる。
【0026】
前記樹脂基板は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフォスファゼン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリジアリルフタレート系樹脂およびポリイソボニルメタクリレート系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。上記樹脂の中では、耐熱性や透明性の点からエポキシ系樹脂が特に好ましい。
【0027】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、含窒素環型、脂環式型、脂肪族型、芳香族型、グリシジルエーテル型、ビフェニル型、ジシクロ型、エステル型、エーテルエステル型、およびそれらの変成型等があげられる。ビスフェノール型としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型およびそれらの水添加のものがあげられる。ノボラック型としては、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型があげられる。含窒素環型としては、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型があげられる。芳香族型としては、ナフタレン型があげられる。これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記各種エポキシ系樹脂の中でも、変色防止性等の点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型を用いることが特に好ましい。
【0028】
前記エポキシ系樹脂としては、一般にエポキシ当量が100〜1000の範囲にあり、軟化点が120℃以下のものが、得られる樹脂基板の柔軟性や強度等の物性の点から好ましい。さらに、シート形成する際の塗工性や展開性等に優れるエポキシ系樹脂含有液を得る点から、塗工時の温度以下、特に常温において液体状態を示す二液混合型のものが好ましい。
【0029】
前記エポキシ系樹脂には、硬化剤、硬化促進剤を、また、必要に応じて老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加物を適宜配合することができる。
【0030】
前記硬化剤については、特に限定はなく、エポキシ系樹脂の組成や硬化温度等の条件に応じて適宜な硬化剤を、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。硬化剤としては、有機酸系化合物類、アミン系化合物類、アミド系化合物類、ヒドラジド系化合物類、イミダゾール系化合物類、イミダゾリン系化合物類、フェノール系化合物類、ユリア系化合物類、ポリスルフィド系化合物類、酸無水物系化合物類等があげられるが、特に、エポキシ系樹脂の耐熱性の向上や変色防止性等の点より酸無水物系硬化剤が好ましく用いられる。
【0031】
前記有機酸系化合物類は、例えば、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等を含む。前記アミン系化合物類は、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、これらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等を含む。前記アミド系化合物類は、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミド等を含む。前記ヒドラジド系化合物類は、例えば、ジヒドラジド等を含む。前記イミダゾール系化合物類は、例えば、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等を含む。前記イミダゾリン系化合物類は、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等を含む。
【0032】
前記硬化剤として好ましく用いられる酸無水物系化合物類の例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物やクロレンディック酸無水物等があげられる。
【0033】
特に無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびメチルヘキサヒドロフタル酸無水物に代表される、無色ないし淡黄色で、分子量が約140〜約200の酸無水物系硬化剤が好ましく用いられる。
【0034】
前記エポキシ系樹脂と前記硬化剤との配合割合は、硬化剤として酸無水物を用いる場合、前記エポキシ系樹脂のエポキシ基1当量に対して酸無水物当量が0.5〜1.5当量となるように前記硬化剤を配合することが好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量である。酸無水物当量が0.5当量未満ではエポキシ系樹脂硬化後の色相が悪くなり、1.5当量を超えるとエポキシ系樹脂の耐湿性が低下する傾向がみられる。なお、他の硬化剤を単独でまたは2種以上を併用して使用する場合にも、その配合量は前記の当量比に準じる。
【0035】
前記硬化促進剤としては、第三級アミン類、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類、有機金属塩類、リン化合物類や尿素系化合物類等があげられるが、特に第三級アミン類、イミダゾール類、リン化合物類を用いることが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる
【0036】
前記硬化促進剤の配合量は、促進効果等に応じて適宜に決定しうるが、エポキシ系樹脂100重量部に対して0.05〜7重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3重量部である。硬化促進剤の配合量が0.05重量部未満では充分な促進効果が得られず、7重量部を超えると樹脂の変色のおそれがある。
【0037】
前記老化防止剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物やホスフィン系化合物等の従来公知のものがあげられる。
【0038】
前記変成剤としては、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の従来公知のものがあげられる。
【0039】
前記界面活性剤は、エポキシ系樹脂を空気との接触下でシート状に成形、硬化処理を行う場合に、平滑な表面を形成すること等を目的に配合するものである。前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等があげられるが、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0040】
前記樹脂基板の形成は、例えばキャスティング成形方式、流延成形方式、射出成形方式、ロール塗工成形方式、押出成形方式、トランスファ成形方式、反応射出成形方式(RIM)等の適宜な方式で行うことができる。
【0041】
樹脂基板の厚さは、薄型化や軽量性、強度や変形防止性等の点より1mm以下が好ましく、より好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.1〜0.5mmの範囲である。なお樹脂基板は、単層物としてもよいし積層物として形成されていてもよく、樹脂基板の前記厚さは、同種または異種の樹脂からなる2層または3層以上の積層物として達成されていてもよい。
【0042】
前記樹脂基板には、透明被膜を設けてもよい。ここで透明被膜は、有機高分子を含有してなる被膜であることが好ましい。前記有機高分子の具体例としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース類、ポリビニルアルコール系樹脂、尿素樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート系樹脂などがあげられる。また、これらの樹脂はそれぞれ単独での使用あるいは2種以上を併用することが可能であり、さらに各種硬化剤、架橋剤などを用いて三次元架橋することも可能である。特に、前記樹脂基板の表面硬度を向上させる場合には、硬化可能な樹脂であることが好ましく、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂などの単独系ないしは複合系が好ましく使用される。また、表面硬度、耐熱性、耐薬品性、透明性などの諸特性を考慮した場合では、有機高分子としてシリコーン系樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは、下記一般式(I)で示される有機ケイ素化合物ないしはその加水分解物から得られるポリマーをあげることができる。
【0043】
SiX4−a−b (I)
(ここで、Rは炭素数1〜10の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基、Xは加水分解性基であり、aおよびbは0または1である。)
前記有機ケイ素化合物は1種または2種以上添加することも可能である。
【0044】
また、シリコーン系樹脂を主成分としてなる被膜形成成分には、シリコーン樹脂の他に、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース類、ポリビニルアルコール系樹脂、尿素樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート系樹脂などを添加することが可能であり、透明性をそこなわず、表面硬度で満足する範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0045】
有機ケイ素化合物は、キュア温度を下げ、硬化をより促進させるためには加水分解して使用することが好ましい。加水分解は純水または塩酸、酢酸あるいは硫酸などの酸性水溶液を添加、撹拌することによって製造される。さらに、純水あるいは酸性水溶液の添加量を調節することによって加水分解の度合いをコントロールすることも容易に可能である。加水分解に際しては、一般式(I)で示される化合物に含まれる加水分解性基と等モル以上、3倍モル以下の純水または酸性水溶液の添加が硬化促進の点で好ましい。
【0046】
加水分解に際しては、アルコール等が生成してくるため無溶媒で加水分解することが可能であるが、加水分解をさらに均一に行なう目的で有機ケイ素化合物と溶媒とを混合した後、加水分解を行なうことも可能である。また、目的に応じて加水分解後のアルコール等を加熱および/または減圧下に適当量除去して使用することも可能であるし、その後に適当な溶媒を添加することも可能である。
【0047】
前記有機高分子は通常揮発性溶媒に希釈して液状組成物として塗布されることが好ましい。前記溶媒としては、特に限定されないが、使用にあたっては前記樹脂基板の表面性状を損なわぬことが要求され、さらには前記有機高分子の安定性、基材に対するぬれ性、揮発性などをも考慮して決められるべきである。また、前記溶媒は1種のみならず2種以上の混合物として用いることも可能である。前記溶媒としてはアルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素あるいは非プロトン性極性溶媒などがあげられる。
【0048】
前記透明被膜には、表面硬度の向上、屈折率の調節、機械的強度の向上、熱的特性の向上、導電性向上などを目的に、無機微粒子などを添加することも好ましい。前記無機微粒子とは被膜状態で透明性を損なわないものであれば特に限定されないが、作業性向上、透明性付与の点から特に好ましい例としては、コロイド状に分散したゾルがあげられる。さらに具体的な例としては、シリカゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、セリアゾル、酸化アンチモンゾル、フッ化マグネシウムゾル、ITO(インジウム・スズ混合酸化物)ゾル、酸化スズゾルなどがあげられる。
【0049】
前記無機微粒子の含有量は、特に限定されないが、効果をより顕著に表すためには、前記透明被膜中に1重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。すなわち、1重量%未満では、明らかな添加の効果が認められず、また、80重量%を超えると前記樹脂基板との接着性不良や、被膜自体のクラックが発生したり、耐衝撃性が低下するなどの問題を生じる場合がある。
【0050】
前記無機微粒子の粒子径は、特に限定されないが、通常は1〜200nm、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは20〜80nmのものが使用される。平均粒子径が200nmを超えるものを使用した場合は、生成する被膜の透明性が悪く、濁りが大きくなる傾向がある。また、前記無機微粒子の分散性を改良するために各種の微粒子表面処理を行ってもよく、あるいは、各種の界面活性剤やアミンなどを添加してもよい。
【0051】
前記透明被膜形成時に使用される液状組成物には、硬化促進、低温硬化などを可能とする目的で各種の硬化剤が併用可能である。硬化剤としては各種エポキシ樹脂硬化剤、あるいは各種有機ケイ素樹脂硬化剤などが使用される。
【0052】
前記硬化剤の具体例としては、各種の有機酸およびそれらの酸無水物、窒素含有有機化合物、各種金属錯化合物、あるいは金属アルコキシド、さらにはアルカリ金属の有機カルボン酸塩、炭酸塩などの各種塩、さらには、過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤などがあげられる。前記硬化剤は2種以上混合して使用することも可能である。前記硬化剤の中でも、液状組成物の安定性、コーティング後の被膜の着色の有無などの点から、特にアルミニウムキレート化合物が有用である。
【0053】
前記透明被膜形成時に使用される液状組成物には、塗布時におけるフローを向上させ、前記透明被膜の平滑性を向上させて被膜表面の摩擦係数を低下させる目的で各種の界面活性剤を添加することも可能であり、特にジメチルポリシロキサンとアルキレンオキシドとのブロックまたはグラフト共重合体、さらにはフッ素系界面活性剤などが有効である。
【0054】
さらに前記透明被膜形成時に使用される液状組成物中には、被膜性能、透明性などを大幅に低下させない範囲で、以下の一般式(II)で表される金属アルコキシド、キレート化合物および/またはその加水分解物等の無機材料を添加することもできる。これらの添加物の併用によって基材との密着性、耐薬品性、表面硬度、耐久性などの諸特性を向上させることができる。
【0055】
M(OR)m (II)
(ここでRはアルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基であり、mは金属Mの電荷数と同じ値である。Mはケイ素、チタン、ジルコン、アンチモン、タンタル、ゲルマニウム、アルミニウムなどである。)
さらに耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤、また耐熱劣化性を向上させる目的で酸化防止剤を添加することも可能である。
【0056】
前記透明被膜は、前記液状組成物を硬化させることによって得られるが、硬化は加熱処理によって行なわれることが好ましい。加熱温度は前記液状組成物の組成、前記樹脂基板を形成する樹脂の耐熱性を考慮して適宜選択されるが、好ましくは50〜250℃の範囲である。
【0057】
前記樹脂基板上に塗布される透明被膜の塗布手段としては、刷毛塗り、浸漬塗り、ロール塗り、スプレー塗装、スピン塗装、流し塗りなどの通常行なわれる塗布方法が容易に使用可能である。
【0058】
前記液状組成物の塗布にあたっては、清浄化、密着性、耐水性等の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段である。特に好ましく用いられる方法としては活性化ガス処理、薬品処理、紫外線処理などがあげられる。
【0059】
前記活性化ガス処理とは、常圧もしくは減圧下において生成するイオン、電子あるいは励起された気体による処理である。これらの活性化ガスを生成させる方法としては、例えばコロナ放電、減圧下での直流、低周波、高周波あるいはマイクロ波による高電圧放電などによるものである。特に減圧下での高周波放電によって得られる低温プラズマによる処理が、再現性、生産性などの点から好ましく使用される。
【0060】
ここで使用されるガスは特に限定されるものではないが、具体例としては酸素、窒素、水素、炭酸ガス、二酸化硫黄、ヘリウム、ネオン、アルゴン、フレオン、水蒸気、アンモニア、一酸化炭素、塩素、一酸化窒素、二酸化窒素などがあげられる。これらは一種のみならず二種以上混合しても使用可能である。前記の中で好ましいガスとしては、酸素を含んだものがあげられ、空気などの自然界に存在するものであっても良い。さらに好ましくは、純粋な酸素ガスが密着性向上に有効である。さらには同様の目的で前記処理に際しては前記樹脂基板の温度を上げることも可能である。
【0061】
一方、薬品処理の具体例としては苛性ソーダなどのアルカリ処理、塩酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムなどの酸処理、有機溶剤処理などがあげられる。
【0062】
以上の前処理は連続的、または段階的に併用して実施することも十分可能である。
【0063】
前記透明被膜の膜厚は特に限定されるものではないが、接着強度の保持、硬度などの点から0.1〜50μmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜10μmの範囲である。また、前記透明被膜の塗布にあたって、作業性向上、被膜厚さ調節などの目的のため、液状組成物は各種溶剤により希釈して用いられる。希釈溶剤としては例えば、水、アルコール、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが目的に応じて種々使用可能であり、必要に応じて混合溶媒を使用することも可能である。前記無機微粒子等の分散性などの点から、水、アルコール、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェニルセロソルブなどの極性溶媒が好ましく用いられる。
【0064】
本発明において、光学補償層形成材料としては、液晶材料、非液晶材料ともに用いることができるが、非液晶材料、特に非液晶性ポリマーであることが好ましい。
【0065】
前記光学補償層は、前記樹脂基板と直接積層されていてもよいし、接着剤層または粘着剤層を介して積層されていてもよい。接着剤層または粘着剤層を介して積層されてなる場合、前記光学補償層は、後述のように、他の基材に一旦形成した後に前記樹脂基板に転写する方法で形成することも可能である。
【0066】
光学補償層形成材料としてカイラル剤を含有した液晶材料を用いる場合、光学補償層は、nx=ny>nzの負の一軸性を示す。カイラル剤とは、液晶材料をコレステリック構造となるように配向する機能を有する化合物である。前記カイラル剤および液晶材料としては、例えば、特開2003−287623号公報に開示されているもの等、従来公知の化合物を使用することができ、前記液晶材料および前記カイラル剤を含有する混合溶液を、ラビング処理等の配向処理がされたポリイミド基板等の配向基材上に塗布した後、前記液晶材料の配向を固定するための重合処理、架橋処理等を施すことにより、光学補償層を得ることができる。
【0067】
本発明における光学補償層は、耐熱性、耐薬品性、透明性等に優れ、剛性にも富むことから、特開2004−46065号公報に記載のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一つの非液晶性ポリマーから形成されていることが好ましい。これらの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0068】
これらの非液晶性ポリマーは、塗布、硬化を行うだけで、nx=ny>nzの負の一軸性を示すが、さらに延伸処理や収縮処理を行うことにより、nx>ny>nzの二軸性を発現させることが可能となり、光学設計が容易になるという利点を有する。また、前記非液晶ポリマーで光学補償層を形成する際には、基材に配向処理が必要ないので、前記樹脂基板に直接塗布する直接法での光学補償層形成が可能である。延伸処理や収縮処理を行って二軸性を発現させた光学補償層を形成する際には、延伸または収縮が可能な別の基材に光学補償層形成材料を塗布して前記処理を行い二軸性を発現させたうえで、転写法により樹脂基板上に積層させることができる。
【0069】
前記非液晶性ポリマータイプの光学補償層の波長分散は、正分散特性であり、バーティカル・アラインメント(VA)モードの液晶セルの正分散特性に類似している。このため、前記非液晶性ポリマータイプの光学補償層を有する本発明の液晶セル基板を、前記VAモードの液晶セルと組み合わせて用いることで、表示特性に優れた液晶パネルおよび液晶表示装置が得られるようになる。前記非液晶性ポリマーとしてポリイミドを用いた場合の本発明の液晶セル基板は、特にVAモードの液晶セルとの相性が良いため、良好な表示特性の液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。そして、前記エポキシ系樹脂を用いた前記樹脂基板とポリイミドを用いた光学補償層とを組み合わせた液晶セル基板は、耐熱性や透明性に優れ、VAモードの液晶セルとの相性も良いため、特に良好な表示特性の液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。ここで、正分散特性とは、例えば、光学補償層の波長分散Wdが、下記式(III)の特性を有することである。
Wd : Re(380)/Re(550)>1 (III)
Re(λ):波長(λ)における下記式(IV)で表される層の面内位相差値
Re(λ)=(nx−ny)・d (IV)
【0070】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲である。前記重量平均分子量は、例えば、標準試料としてポリエチレンオキシド、溶媒としてDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)を使用して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定できる。
【0071】
前述のように、前記光学補償層は、前記樹脂基板上に、前記非液晶性ポリマーを塗布して塗布膜を形成し、前記塗布膜における前記非液晶性ポリマーを固化させることによって、前記樹脂基板上に形成できる。ポリイミドのような前記非液晶性ポリマーは、その性質上、前記樹脂基板の配向の有無に関わらず、nx=ny>nzの光学特性を示す。このため、光学的一軸性、すなわち、厚み方向にのみ位相差を示す光学補償層が形成できるのである。
【0072】
前記樹脂基板上に、前記非液晶性ポリマーを塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のような非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗布する方法や、前記非液晶性ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗布する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗布する方法が好ましい。
【0073】
前記ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、例えば、塗布が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記非液晶性ポリマーが5〜50重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、10〜40重量部の範囲である。
【0074】
前記ポリマー溶液の溶媒としては、前記非液晶性ポリマーを溶解できれば特に制限されず、前記非液晶性ポリマーの種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノ−ル、パラクロロフェノ−ル等のフェノ−ル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0075】
前記ポリマー溶液は、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤、金属類等があげられる。
【0076】
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記非液晶性ポリマーの配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0077】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテ−ト(POM)、ポリカーボネ−ト(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、およびポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレ−ト(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノ−ルノボラック樹脂等があげられる。
【0078】
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50重量%の範囲であり、好ましくは、0〜30重量%の範囲である。
【0079】
前記ポリマー溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗布に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
【0080】
前記塗布膜を形成する非液晶性ポリマーの固化は、例えば、前記塗布膜を乾燥することによって行うことができる。前記乾燥の方法としては、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記非液晶性ポリマーの種類や、前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、温度は、例えば、40〜300℃の範囲であり、好ましくは、50〜250℃の範囲であり、より好ましくは、60〜200℃の範囲である。なお、前記塗布膜の乾燥は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。乾燥時間も特に制限されないが、例えば、10秒〜30分の範囲であり、好ましくは、30秒〜25分の範囲であり、より好ましくは、1〜20分の範囲である。
【0081】
なお、前記光学補償層中に残存する前記ポリマー溶液の溶媒は、その量に比例して樹脂基板の光学特性を経時的に変化させるおそれがあるため、その残存量は、例えば、5%以下が好ましく、より好ましくは、2%以下であり、さらに好ましくは、0.2%以下である。
【0082】
また、前記塗布膜を形成する際に、前記樹脂基板とは別の基材を使用することによって、光学的二軸性、すなわち、nx>ny>nzの屈折率分布を有する光学補償層を形成することもできる。具体的に説明すると、例えば、前述と同様にして、面内において一方向に収縮性を有する基材上に、直接、前記非液晶性ポリマーを塗布して塗布膜を形成した後、前記基板を収縮させる。前記基材が収縮すれば、これに伴って前記基材上の塗布膜も共に面方向において収縮するため、前記塗布膜は、さらに面内において屈折率差が生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。そして、前記塗布膜を形成する非液晶性ポリマーを固化することによって、前記二軸性の光学補償層が形成されるのである。
【0083】
前記基材は、面内において一方向に収縮性を持たせるため、例えば、面内のいずれか一方向において、延伸しておくことが好ましい。このように、予め延伸しておくことによって、前記延伸方向と反対方向に収縮力が発生する。この基材の面内の収縮差を利用して、前記塗布膜を形成する非液晶性ポリマーに面内の屈折率差を付与するのである。延伸前の前記基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは、20〜150μmの範囲であり、より好ましくは、30〜100μmの範囲である。延伸倍率に関しては特に限定されない。
【0084】
前記基材の収縮は、例えば、前述と同様にして前記基材上に塗布膜を形成した後、加熱処理を施すことによって行うことができる。前記加熱処理の条件としては、特に制限されず、例えば、基材の材料の種類等によって適宜決定できるが、例えば、加熱温度は、25〜300℃の範囲であり、好ましくは、50〜200℃の範囲であり、より好ましくは、60〜180℃の範囲である。前記収縮の程度は、特に制限されないが、収縮前の基材の長さを100%として、例えば、0を越え10%以下の収縮割合があげられる。
【0085】
一方、前述と同様に前記樹脂基板とは別の基材上に塗布膜を形成し、前記基材と前記塗布膜とを共に延伸することによって、光学的二軸性、すなわち、nx>ny>nzを示す光学補償層を基材上に形成し、この光学補償層を前記樹脂基板上に転写することもできる。この方法によれば、前記基材と前記塗布膜との積層体を、面内の一方向に共に延伸することによって、前記塗布膜は、さらに面内において屈折率差を生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。
【0086】
前記基材と塗布膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法があげられる。
【0087】
そして、前記積層体の延伸は、例えば、前記基材と前記塗布膜との両方を共に引っ張ることによって行ってもよいが、例えば、つぎの理由から、前記基材のみを延伸することが好ましい。前記基材のみを延伸した場合、この延伸により前記基材に発生する張力によって、前記基材上の前記塗布膜が間接的に延伸される。そして、積層体を延伸するよりも、単層体を延伸する方が、通常、均一な延伸となるため、前述のように基材のみを均一に延伸すれば、これに伴って、前記基材上の前記塗布膜も均一に延伸できるためである。
【0088】
延伸の条件としては、特に制限されず、例えば、前記基材や前記非液晶性ポリマーの種類等に応じて適宜決定できる。また、延伸時の加熱温度は、例えば、前記基材や前記非液晶性ポリマーの種類、それらのガラス転移点(Tg)、添加物の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、80〜250℃の範囲であり、より好ましくは、120〜220℃の範囲であり、さらに好ましくは、140〜200℃の範囲である。特に前記基材の材料のTg付近またはそれ以上の温度であることが好ましい。
【0089】
このように、前記樹脂基板とは別の基材上に前記塗布膜を形成し、前記基材と前記塗布膜とを共に収縮または延伸した後、これを粘着剤層や接着剤層を介して前記樹脂基板に貼り合わせた後、前記基材を剥離することで、転写によって樹脂基板上にnx>ny>nzの屈折率分布を有する(光学的二軸性の)光学補償層を形成できる。
【0090】
前記粘着剤または接着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧粘着剤や接着剤等、従来公知のものが使用できる。これらの中でも、樹脂基板の光学特性の変化を防止する点から、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましい。
【0091】
前記粘着剤層または接着剤層の厚みは、使用目的や接着力等に応じて、適宜、設定され得る。具体的には、前記粘着剤層または接着剤層の厚みは、好ましくは、0.1〜5μmの範囲であり、より好ましくは、0.15〜4μmの範囲であり、さらに好ましくは、0.2〜3μmの範囲である。
【0092】
前記粘着剤層または接着剤層は、その押し込み硬度(Microhardness)が、0.1〜0.5GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5GPaの範囲であり、特に好ましくは0.2〜0.4GPaの範囲であり、ポリウレタン系粘着剤を好適に用いることができる。前記硬度が前記範囲にあると、転写の際に操作性が良好である。なお、前記押し込み硬度は、ビッカーズ硬度との相関性が公知であるため、ビッカーズ硬度にも換算できる。
【0093】
前記押し込み硬度は、例えば、日本電気株式会社(NEC)製の薄膜硬度計(商品名MH4000、商品名MHA−400等)を用いて、押し込み深さと押し込み荷重とから算出することができる。
【0094】
前記光学補償層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。前記光学補償層の厚みは、例えば、0.5〜15μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜10μmの範囲である。
【0095】
前記光学補償層の波長550nmにおける透過率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上である。
【0096】
前記樹脂基板の前記光学補償層形成側の面には、易接着処理が施されていることが好ましい。前記易接着処理は、樹脂材料を塗布する処理であることが好ましい。前記樹脂材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。前記易接着処理が施されることにより、前記光学補償層形成面に易接着層が形成される。前記易接着層の厚みは、好ましくは、5〜100nmの範囲であり、より好ましくは、10〜80nmの範囲である。
【0097】
本発明の液晶セル基板には、カラーフィルターを形成することもできる。カラーフィルターは、前記光学補償層上に形成することが好ましい。前記光学補償層とカラーフィルターとの間には密着力の向上等を目的とした下地層を形成することも好ましい。
【0098】
カラーフィルターは、赤領域、緑領域、青領域およびブラックマトリックスから構成され、これら各色領域は、着色組成物を視認側の透明基板に塗布することにより形成されている。前記着色組成物は、透明樹脂およびその前駆体を含む色素担体と、色素とを有し、好ましくは光重合開始剤をさらに含有する。
【0099】
前記透明樹脂は、可視光領域(例えば、400〜700nm)の全波長領域における透過率が、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。前記透明樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および感光性樹脂等を含む。前記透明樹脂の前駆体は、例えば、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーまたはオリゴマー等を含む。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0100】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等があげられる。
【0101】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等があげられる。
【0102】
前記感光性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有するアクリル化合物、メタクリル化合物またはケイヒ酸を反応させて、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を前記線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物またはα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル化合物またはメタクリル化合物等によりハーフエステル化した樹脂も用いられる。
【0103】
前駆体のモノマーおよびオリゴマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記アクリル酸エステルは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンのアクリル酸エステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等を含む。前記メタクリル酸エステルは、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、β−カルボキシエチルメタクリレート、ポリリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、メチロール化メラミンのメタクリル酸エステル、エポキシメタクリレート等を含む。
【0104】
前記色素としては、有機または無機の顔料を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記顔料の中でも、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。
【0105】
以下に、前記着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0106】
赤領域を形成するための赤色感光性着色組成物としては、例えば、C.I.Pigment Red 1、2、3、7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187,192,200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、279等の赤色顔料を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記赤色感光性着色組成物には、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料等を併用することができる。
【0107】
緑領域を形成するための緑色感光性着色組成物としては、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記緑色感光性着色組成物には、例えば、黄色顔料等を併用することができる。
【0108】
青領域を形成するための青色感光性着色組成物としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等の青色顔料を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記青色感光性着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を併用することができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0109】
ブラックマトリックスを形成するための黒色感光性着色組成物としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等を用いることができる。具体例としては、例えば、C.I.Pigment Black 1、6、7、12、20、31等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記黒色感光性着色組成物には、例えば、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料の混合物を用いることもできる。前記黒色顔料としては、価格、遮光性の大きさからカーボンブラックが好ましい。前記カーボンブラックは、樹脂等で表面処理されていてもよい。また、色調を調整するため、前記黒色感光性着色組成物には、例えば、青色顔料や紫色顔料等を併用することができる。
【0110】
ブラックマトリックスの形状の観点から、前記カーボンブラックのBET法による比表面積は、50〜200m/gの範囲であることが好ましい。前記比表面積を、50m/g以上とすることで、例えば、ブラックマトリックスの形状の劣化を防ぐことができる。前記比表面積を、200m/g以下とすることで、例えば、カーボンブラックへの分散助剤の過度の吸着が防止でき、分散助剤の少量の配合で諸物性を発現させることができる。
【0111】
また、感度の点から、前記カーボンブラックのフタル酸ジブチル(以下、「DBP」という)の吸油量は、120cm/100g以下であることが好ましく、前記吸油量が、少ないほどより好ましい。
【0112】
前記カーボンブラックの平均一次粒径は、20〜50nmの範囲であることが好ましい。前記平均一次粒径を、20nm以上とすることで、例えば、カーボンブラックを高濃度に分散させることが可能となり、経時安定性の良好な感光性黒色組成物を得ることができる。前記平均一次粒径を、50nm以下とすることで、例えば、ブラックマトリックス形状の劣化を防ぐことができる。
【0113】
前記無機顔料としては、例えば、べんがら(赤色酸化鉄(ΙΙΙ))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。前記着色組成物には、調色のために、耐熱性を低下させない範囲で、染料等を含有させることができる。
【0114】
各着色組成物には、例えば、溶剤を含有させることができる。これは、色素を充分に色素担体中に分散させ、透明基板上に所定の乾燥膜厚となるように塗布して、各色領域やブラックマトリックスを形成することを容易にするためである。前記溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0115】
前記着色組成物は、例えば、色素または2種以上の色素を含む色素組成物を、好ましくは光重合開始剤と共に、色素担体および溶剤中に、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライタ一等の分散手段を用いて微細に分散することで、調製することができる。感光性着色組成物が、2種類以上の色素を含む場合は、例えば、各色素を別々に色素担体および溶剤中に微細に分散したものを混合して調製することもできる。前記色素を色素担体および溶剤中に分散する際には、適宜、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤、色素誘導体等の分散助剤を含有させることができる。前記分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の前記顔料の再凝集を防止する効果が大きい。このため、前記分散助剤を用いて顔料を色素担体および溶剤中に分散させた感光性着色組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルターが得られる。
【0116】
前記樹脂型顔料分散剤とは、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、色素担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の色素担体への分散を安定化する働きを有するものである。
【0117】
前記樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、またはこれらの変性物等を用いることができる。前記ポリカルボン酸エステルは、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート等を含む。前記樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ポリ(低級アルキレンイミン)と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド、またはその塩等の油性分散剤も用いることができる。前記樹脂型顔料分散剤としては、例えば、水溶性樹脂または水溶性高分子化合物、ポリエステル系樹脂、変性ポリアクリレート系樹脂、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物樹脂、リン酸エステル系樹脂等も用いることができる。前記水溶性樹脂または水溶性高分子化合物は、例えば、アクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を含む。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0118】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カオチン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。前記アニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等を含む。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等を含む。前記カオチン性界面活性剤は、例えば、アルキル4級アンモニウム塩またはそれらのエチレンオキサイド付加物等を含む。前記両性界面活性剤は、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等を含む。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0119】
前記色素誘導体は、例えば、有機色素に置換基を導入した化合物である。前記有機色素には、例えば、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物等を含む。前記色素誘導体としては、例えば、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0120】
前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等を用いることができる。前記アセトフェノン系化合物は、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等を含む。前記ベンゾイン系化合物は、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等を含む。前記ベンゾフェノン系化合物は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を含む。前記チオキサントン系化合物は、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を含む。前記トリアジン系化合物は、例えば、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等を含む。前記オキシムエステル系化合物は、例えば、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、O−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等を含む。前記ホスフィン系化合物は、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を含む。前記キノン系化合物は、例えば、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を含む。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記光重合開始剤の使用量は、感光性着色組成物の全固形分量を基準として、0.5〜45重量%の範囲であることが好ましい。前記使用量は、より好ましくは、3〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは4〜10重量%の範囲である。
【0121】
さらに、前記各着色組成物は、増感剤を含むことが好ましい。前記増感剤として、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系化合物等を併用することもできる。これらの増感剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。これらの増感剤の中でも、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、より好ましくは、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。前記増感剤の使用量は、光重合開始剤と増感剤の合計量を基準として、0.5〜55重量%の範囲であることが好ましい。前記使用量は、より好ましくは、2.5〜40重量%の範囲であり、さらに好ましくは3.5〜25重量%の範囲である。
【0122】
さらに、前記感光性着色組成物は、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有することもできる。前記多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。前記多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等があげられる。これらの多官能チオールは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記多官能チオールの使用量は、感光性着色組成物の全固形分量を基準として、0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。前記使用量は、より好ましくは、1〜20重量%の範囲である。
【0123】
前記感光性着色組成物は、例えば、溶剤現像型またはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調製することができる。前記着色レジスト材は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または感光性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、溶剤とを含有する組成物中に色素を分散させたものである。前記色素は、感光性着色組成物の全固形分量を基準として、5〜70重量%の範囲で含有させることが好ましい。前記色素は、より好ましくは、20〜50重量%の範囲で含有し、その残部は、色素単体により提供される樹脂質バインダーから実質的になる。
【0124】
前記感光性着色組成物は、例えば、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。前記除去される粗大粒子は、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。
【0125】
各色領域及びブラックマトリックスは、例えば、フォトリソグラフィー法により形成することができる。前記フォトリソグラフィー法によれば、例えば、下記の手順によりカラーフィルターを形成することができる。すなわち、まず溶剤現像型またはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した感光性着色組成物を、透明基板上に、例えば、スプレーコートやスピンコート、スリットコー卜、ロールコート等の塗布方法により、所定乾燥厚となるように塗布する。ついで、必要に応じて、前記乾燥された膜に、この膜と接触または非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤もしくはアルカリ現像液等に浸漬する、またはスプレー等により現像液を噴霧することにより、未硬化部を除去し所望のパターンを形成する。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。このようにして、透明基板上にブラックマトリックス及び各色領域を順次形成することにより、透明基板上にカラーフィルターを形成することができる。前記フォトリソグラフィー法によれば、印刷法より精度の高い各色領域およびブラックマトリックスを形成することができる。なお、前記紫外線露光の感度を上げるために、例えば、着色レジスト材を塗布乾燥し、さらに水溶性またはアルカリ可溶性樹脂等を塗布乾燥し、この膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。前記膜により、酸素による重合阻害を防止することができるからである。前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を含む。
【0126】
前記現像に際して、前記アルカリ現像液としては、例えば、水溶液、有機アルカリ等を用いることができる。前記水溶液は、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等含む。前記有機アルカリは、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等を含む。また、前記現像液には、例えば、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0127】
前記現像処理方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸潰)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0128】
液晶セル基板上への透明電極材からなる薄膜(透明電極膜)の付設は、液晶セル基板を減圧下のチャンバー内に配置して、例えばスパッタリング法や真空蒸着法等の従来に準じた適宜な薄膜形成方式を適用して行うことができ、その減圧条件や処理温度等の蒸着条件も従来に準じることができる。その場合、透明電極膜を所定の電極パターン状態に直接形成することも可能である。液晶セル基板上にカラーフィルターが設けられている場合は、前記透明電極膜は、前記カラーフィルター上に形成する。
【0129】
前記透明電極材としては、例えば酸化インジウム、酸化スズ、ITO(インジウム・スズ混合酸化物)、金、白金、パラジウム等から選ばれる適宜なものを、1種類を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0130】
前記透明電極膜の形成に際しては、必要に応じてSiO層や金属アルコキシドの加水分解・重縮合体等からなる1層または2層以上の適宜な下地層を液晶セル基板に設け、密着力の向上等をさせることもできる。前記下地層としてSiO層を設けると、透明電極膜の形成による反りを防止することもでき好ましい。前記SiO層の形成は、前記した透明電極膜の形成方法に準じた方法等で行うことができる。
【0131】
また金属アルコキシドの加水分解・重縮合体等からなる下地層には、凹凸構造に基づくアンカー効果等による透明電極膜等の密着力のより向上等を目的として、無機酸化物粒子を分散含有させることもできる。その無機酸化物粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化アンチモン、ジルコニア等からなる、適宜な粒子を用いることができ、特にアルミナ粒子が好ましい。
【0132】
本発明の液晶セル基板は、液晶セルの形成に好ましく用いることができる。図3の模式断面図に一例を示すように、液晶セル30の形成は、例えば、液晶セル基板10上に設けた透明電極膜31を電極パターン化した面を対向させて前記液晶セル基板を配置し、その間に液晶層32を封入する従来に準じた方法等により行うことができる。本発明の液晶セル基板10は、樹脂基板11上に光学補償層12が形成されており、前記光学補償層12の側を液晶層32に対向させて配置させることができる。樹脂基板11と光学補償層12とは、接着剤層または粘着剤層(図示せず)を介していてもよい。カラー表示の液晶セルの場合は、視認側の液晶セル基板10上に、ブラックマトリックス36を含むカラーフィルター33を形成した上に透明電極膜31を設ける。カラーフィルター33上には保護膜35を設けることもできる。透明電極膜31上には必要に応じて液晶配列用の配向膜34を設ける。前記液晶セルとしては、例えば、バーティカル・アラインメント(VA)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モード、垂直配向型電界制御複屈折(ECB)モード、光学補償複屈折(OCB)モード等が挙げられる。前記理由により、本発明において、前記液晶セルの液晶配向モードは、前記VAモードであることが、特に好ましい。
【0133】
本発明の液晶パネルは、前記本発明の液晶セルを有することを特徴とし、本発明の液晶表示装置は、前記本発明の液晶パネルを有することを特徴とする。本発明の液晶表示装置は、液晶パネルのバックライト側から光を照射して画面を見る透過型であってもよいし、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る反射型であってもよいし、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
【0134】
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【0135】
本発明の液晶表示装置の特に好ましい用途は、薄型軽量化により使用時の利便性や商品価値が大きく向上するノートパソコンや前記携帯機器、ビデオカメラである。
【実施例】
【0136】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例によってなんら限定ないし制限されない。また、各実施例における各種特性および物性の測定および評価は、下記の方法により実施した。
【0137】
(樹脂基板の厚み)
ミツトヨ社製のマイクロゲージ式厚み計を用いて測定した。
【0138】
(光透過率)
光透過率は、高速分光光度計((株)村上色彩技術研究所製、商品名「CMS−500」、ハロゲンランプ使用)を用いて、λ=550nmにおける透過率を測定した。
【0139】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、JIS C6481(1996年版)に記載のTMA法に準じて測定した。
【0140】
(屈折率測定)
波長λにおける位相差値(Re(λ)、Rth(λ))は、王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。
【0141】
ここで、Re(λ)とは、光学補償層の面内位相差値であり、23℃での波長λ(nm)における式:Re(λ)=(nx−ny)×dにより算出される。また、Rth(λ)とは、光学補償層の厚み方向の位相差値であり、23℃での波長λ(nm)における式:Rth(λ)=(nx−nz)×dにより算出される。ここで、dは、光学補償層の厚み(nm)である。
【0142】
(厚み測定)
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計(大塚電子(株)製、商品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」)を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、デジタルマイクロメーター(アンリツ製(株)、商品名「K−351C型」)を用いて測定した。
【0143】
(押し込み硬度)
押し込み硬度(Microhardness)は、日本電気株式会社(NEC)製の薄膜硬度計(商品名MH4000)を用いて、押し込み深さと押し込み荷重とから算出した。
【0144】
[参考例1]
樹脂基板の作製
下記式(1)で表わされる脂環式エポキシ樹脂100重量部とメチルヘキサヒドロフタル酸無水物125重量部と、トリ−n−ブチルオクチルホスホニウムブロマイド1重量部からなる混合物を型に注入し、120℃で2時間硬化処理して、厚さ0.4mmの樹脂基板を得た。上記樹脂基板の光透過率は92%であり、ガラス転移温度は210℃であった。
【化1】

【0145】
[参考例2]
ポリイミド溶液の調整
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)とから合成された下記式(2)で表される重量平均分子量(Mw)70,000のポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して、15質量%のポリイミド溶液を調製した。なお、ポリイミドの調製等は、文献(F.Li et al. Polymer40(1999)4571−4583)の方法を参照した。
【化2】

【0146】
[実施例1]
液晶セル基板の作製
前記参考例1の一方の側に、樹脂基板に前記参考例2のポリイミド溶液を、塗布厚み30μmで塗布後、120℃で10分間、乾燥させ、光学補償層を有する液晶セル基板を得た。乾燥後のポリイミド層は、厚みが3μm、Re(590)=0nm、Rth(590)=250nmであり、nx=ny>nzの負の一軸性を示した。また、この光学補償層の波長分散は、正分散特性を示した。
【0147】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー」、厚み60μm)に、前記参考例2のポリイミド溶液を塗布厚み30μmで塗布後、120℃で10分間、乾燥させた。次に150℃で縦一軸延伸により10%の延伸を行い、前記PETフィルム上に厚み3μmのポリイミド層を形成した。
つぎに前記参考例1の樹脂基板の一方の側にウレタン系接着剤層(三井武田ケミカル(株)製、商品名「M−631N」、厚み0.2μm、押し込み硬度(Microhardness)0.2GPa)を介して前記ポリイミド層を転写し、光学補償層を有する液晶セル基板を得た。前記ポリイミド層は、Re(590)=55nm、Rth(590)=250nmであり、nx>ny>nzの二軸性を示した。また、この光学補償層の波長分散は、Re(380)=65nm、Re(680)=52nmとなり、正分散特性を示した。
【0148】
実施例1および2で得られた液晶セル基板は耐熱性および透明性が高く、また、上述のとおり光学特性を容易に制御できるものであった。さらに、従来のガラス基板に比べて薄型、軽量化が実現できた。また、前記特許文献1の技術に比べて、容易に光学特性を制御した液晶セル基板を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の液晶セル基板、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置の用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等があげられ、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、本発明の液晶セル基板の構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の液晶セル基板の構成のその他の例を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の液晶セルの構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0151】
10 液晶セル基板
11 樹脂基板
12 光学補償層
13 接着剤層または粘着剤層
30 液晶セル
31 透明電極膜
32 液晶層
33 カラーフィルター
34 配向膜
35 保護膜
36 ブラックマトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板上に光学補償層が積層された液晶セル基板であって、前記光学補償層の下記屈折率nx、nyおよびnzが、nx≧ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、光学補償層が、光学補償層形成材料を前記樹脂基板または前記樹脂基板とは別の基材に塗布することにより形成されたものであることを特徴とする液晶セル基板。
nx:光学補償層の面内の屈折率が最大となる方向(遅相軸方向)の屈折率
ny:光学補償層の面内で前記nxの方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率
nz:前記nxおよび前記nyの各方向に対し直交する光学補償層の厚み方向の屈折率
【請求項2】
前記光学補償層が、前記光学補償層形成材料を前記樹脂基板に塗布して形成されたものであり、前記樹脂基板と前記光学補償層とが直接積層されている請求項1記載の液晶セル基板。
【請求項3】
前記光学補償層が、前記光学補償層形成材料を前記別の基材に塗布して形成した後、前記別の基材から前記樹脂基板に転写して、前記樹脂基板上に積層されたものであり、前記樹脂基板と前記光学補償層とが、接着剤層または粘着剤層を介して積層されている請求項1記載の液晶セル基板。
【請求項4】
液晶セルに配置された場合、前記樹脂基板の光学補償層が形成されている側が、液晶層に対向する側である請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶セル基板。
【請求項5】
前記光学補償層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一つの非液晶性ポリマーから形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶セル基板。
【請求項6】
前記樹脂基板が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフォスファゼン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリジアリルフタレート系樹脂およびポリイソボニルメタクリレート系樹脂からなる群から選択される、少なくとも一種の樹脂を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶セル基板。
【請求項7】
前記樹脂基板が、エポキシ系樹脂を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶セル基板。
【請求項8】
一対の液晶セル基板の間に液晶層が挟持された液晶セルであって、前記一対の液晶セル基板の少なくとも一方が、請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶セル基板であることを特徴とする液晶セル。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶セル基板が、前記光学補償層側を前記液晶層に対向させた状態で配置されている請求項8記載の液晶セル。
【請求項10】
液晶セルを含む液晶パネルであって、前記液晶セルが、請求項8または9記載の液晶セルであることを特徴とする液晶パネル。
【請求項11】
液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが、請求項10記載の液晶パネルであることを特徴とする液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−151126(P2009−151126A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329405(P2007−329405)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】