説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の総合発光輝度の切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供する。
【解決手段】コントローラ4は、液晶表示器2の総合発光輝度が高い状態から低い状態への切り替え時、つまり、目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるときに、バックライト発光輝度を制御する第1信号を、液晶表示器2の描画出力を制御する第2信号の出力後所定の遅延時間が経過してから出力している。これにより、従来の液晶表示装置において発生した不具合、すなわち制御手段から第2信号が出力された時期から実際に液晶表示器の描画出力が切り替わる時期までの遅れ時間内に、バックライト発光輝度が上昇した状態且つ描画出力が以前の高い状態のままで、総合発光輝度が高くなり、一瞬ぴかっと光るように見える現象の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものであり、特に自動車等に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置として、液晶表示器の背後に配置されたバックライトを備え、バックライトからの光で液晶表示器を透過照明して視認させる構成であって、制御手段に入力される外部信号の変化に応じてバックライトの発光輝度、および液晶表示器に表示される表示データそのものの諧調、たとえばRGB出力等の描画出力の両方を同時に調節することにより、液晶表示器の総合的な表示輝度を調節できるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−194736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の液晶表示装置は、液晶表示器に描画動作をおこなわせる描画回路と、バックライトに発光動作をおこなわせる駆動回路と、外部から入力される検出信号の変化に対応して描画回路および駆動回路を作動させる制御手段を備えている。この制御手段は、検出信号が入力されるとそれに基づいて目標総合発光輝度、目標発光輝度および目標描画出力を決定し且つ駆動回路へ第1信号を出力する第1制御部と、液晶表示器の表示画像制御を行うとともに第1制御部から目標描画出力に関する信号を受けて描画回路へ第2信号を出力する第2制御部とを備えている。
【0004】
第1制御部から、駆動回路へ第1信号が、第2制御部へは目標描画出力情報信号が、それぞれ同時に発信される。駆動回路は、第1信号を受けてバックライトを駆動し、バックライトの発光輝度がステップ状に目標発光輝度に切り替わる。これに対して、液晶表示器の描画出力は、バックライトの発光輝度が目標発光輝度へ切り替わる時刻よりも遅れて目標描画出力へ切り替わる。
【0005】
これは、第1信号を受信すると駆動回路が直ちにバックライトを駆動するので、バックライトは、第1信号が発信されるとほぼ同時に目標発光輝度へ切り替わるのに対して、第2制御部において目標描画出力情報信号を受信してから第2信号を描画回路へ出力するまでにわずかながら時間を要するのと、描画回路による液晶表示器の画像表示は所定の時間間隔で実行されているため、描画回路が第2信号を受けてから液晶表示器の画像表示が第2信号に基づくものに切り替わるまでに時間を要しているためである。
【0006】
従来の液晶表示装置における総合発光輝度の切り替え作動について説明する。
【0007】
ここでは、液晶表示装置は自動車に搭載されるコンビネーションメータに適用されている。この場合、外部から入力される検出信号は、ライトコントロールスイッチのポジション信号と、ユーザが任意で設定できる明るさ設定信号である。
【0008】
液晶表示装置のバックライトの発光輝度は昼間、つまりライトコントロールスイッチがオフポジションである時には高レベルに、夜間、つまりライトコントロールスイッチが車幅灯ポジションまたは前照灯ポジションにある時には低レベルにそれぞれ駆動されている。一方、液晶の諧調による明るさは、ユーザが任意で誠意定できる設定信号により決定され、このバックライトの発光輝度と液晶の諧調により総合発光輝度が決定される。
【0009】
昼間時にユーザが任意で設定できる明るさと昼間時のバックライトの明るさにより決定された総合輝度は、夜間のユーザが任意で設定できる明るさと夜間時のバックライトの明るさにより決定される総合輝度より暗く設定できることが可能であり、以下はその状態での動作について説明する。
【0010】
先ず、昼間から夜間になり、ライトコントロールスイッチがオフポジションから車幅灯ポジションに切り替えられた場合について説明する。バックライトの発光輝度は、昼間の高レベルから直ちに低レベルへステップ状に切り替わる。一方、液晶表示器の描画出力は、バックライトの発光輝度切り替わり時刻から或る時間だけ遅れて、昼間の低レベルから高レベルへ切り替わる。すなわち、上述の遅れ時間の間は、バックライトの発光輝度が低レベルであり、液晶表示器の描画出力も低レベルとなっていて、液晶表示装置の総合発光輝度がかなり低い状態となっている。
【0011】
次に、夜間から昼間になり、ライトコントロールスイッチが車幅灯ポジションからオフポジションに切り替えられた場合について説明する。バックライトの発光輝度は、夜間の低レベルから直ちに高レベルへステップ状に切り替わる。一方、液晶表示器の描画出力は、バックライトの発光輝度切り替わり時刻から或る時間だけ遅れて、夜間の高レベルから低レベルへ切り替わる。すなわち、上述の遅れ時間の間は、バックライトの発光輝度が高レベルであり、液晶表示器の描画出力も高レベルとなっていて、液晶表示装置の総合発光輝度がかなり高い状態となっている。
【0012】
次に、以上説明した切り替え動作時における液晶表示装置の見え方について、すなわち、運転者からどのように見えるかについて説明する。
【0013】
先ず、昼間から夜間になり、ライトコントロールスイッチがオフポジションから車幅灯ポジションに切り替えられたときは、上述した遅れ時間だけ液晶表示装置の総合発光輝度がかなり低い状態となり、その後正常な総合発光輝度になる。これを運転者が見ると、上述した遅れ時間だけ液晶表示器が一瞬暗くなるように見える。
【0014】
一方、夜間から昼間になり、ライトコントロールスイッチが車幅灯ポジションからオフポジションに切り替えられたときは、上述した遅れ時間だけ液晶表示装置の総合発光輝度がかなり高い状態となり、その後正常な総合発光輝度になる。これを運転者が見ると、上述した遅れ時間だけ液晶表示器が一瞬ぴかっと光ったように見える。
【0015】
一般的に視認者の視覚に対する刺激の強さは、液晶表示器の画面が一瞬暗くなる場合は弱いが、液晶表示器の画面が一瞬明るくなる、つまりぴかっと光る場合は強い。したがって、液晶表示器の画面が一瞬ぴかっと光る現象に対して運転者は敏感に反応するので、液晶表示装置の商品性を低下させるおそれがある。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、液晶表示装置の総合発光輝度の切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0018】
本発明の請求項1に記載の液晶表示装置は、液晶表示器と、液晶表示器の背面側に配置された液晶表示器を透過照明するバックライトと、液晶表示器に描画動作をおこなわせるように液晶表示器を駆動する描画回路と、バックライトに発光動作をおこなわせるように駆動する駆動回路と、バックライトの発光輝度と液晶表示器の描画出力とを変化させることにより液晶表示器の外部に対する発光輝度である総合発光輝度を調節する制御手段と、を備え、制御手段は外部から入力される検出信号の変化に対応して、実現すべき総合発光輝度である目標総合発光輝度を決定するとともに、目標総合発光輝度を実現するためのバックライトの発光輝度である目標バックライト発光輝度および液晶表示器の描画出力である目標描画出力を決定し、制御手段は、バックライトの発光輝度を目標バックライト発光輝度へ切り替えるための第1指示信号を駆動回路へ出力し、制御手段は、液晶表示器の描画出力を目標描画出力へ切り替えるための第2指示信号を描画回路へ出力する液晶表示装置であって、目標総合発光輝度として昼間総合発光輝度および夜間総合発光輝度が、目標バックライト発光輝度として昼間バックライト発光輝度および夜間バックライト発光輝度が、目標描画出力として昼間描画出力および夜間描画出力がそれぞれ設定され、昼間総合発光輝度は昼間バックライト発光輝度および昼間描画出力により実現され、夜間総合発光輝度は夜間バックライト発光輝度および夜間描画出力により実現され、昼間総合発光輝度は夜間総合発光輝度よりも低く、昼間バックライト発光輝度は夜間バックライト発光輝度よりも高く、昼間描画出力は夜間描画出力よりも低くそれぞれ設定することができ、制御手段は、目標総合発光輝度が夜間総合発光輝度であるときにおいては、第1信号および第2指示信号を同時に出力し、制御手段は、目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるときにおいては、第2指示信号を出力後所定時間が経過してから第1指示信号を出力し、駆動回路は第1信号を受けてバックライト発光輝度を変化させるとともに、描画回路は第2信号を受けて描画出力を変化させることを特徴としている。
【0019】
液晶表示器の描画出力を制御している描画回路は、所定の時間周期毎に描画出力を切り替えている。このため、描画回路に第2信号が入力された場合、上述した時間周期と同期したタイミングにおいてのみ描画出力が切り替えられる。したがって、描画回路に第2信号が入力されてから、実際に液晶表示器の描画出力が目標描画出力へ切り替わるまでには遅れ時間が存在している。一方、バックライトの発光輝度は、駆動回路に第1信号が入力されると直ちに目標バックライト発光輝度へ切り替えられる。言い換えると、バックライトの発光輝度は、描画回路に第2信号が入力されるとほとんど同時に目標バックライト発光輝度へ切り替えられる。すなわち、上述した遅れ時間内においては、バックライト発光輝度は既に目標バックライト発光輝度に切り替わっているにもかかわらず、液晶表示器の描画出力が已然として切り替え前の状態のままである。
【0020】
目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるときには、目標バックライト発光輝度は上昇され且つ目標描画出力は低下される。このため、従来の液晶表示装置においては、上述した遅れ時間内においては、バックライト発光輝度が上昇した状態且つ描画出力は以前の高い状態のままで、総合発光輝度が非常に高くなり、一瞬ぴかっと光るように見えてしまい商品性が低下するという問題が発生していた。
【0021】
これに対して、本発明の請求項1に記載の液晶表示装置では、目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるときには、制御手段は、第2指示信号を出力後所定時間が経過してから第1指示信号を出力する構成としている。これにより、バックライトの発光輝度が目標発光輝度に切り替わるタイミングを、描画回路に第2信号が入力された時点よりも遅らせて、バックライト発光輝度が上昇した状態且つ描画出力は以前の高い状態のままである時間を短縮することがでる。したがって、従来の液晶表示装置における、液晶表示装置の総合発光輝度の切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項2に記載の液晶表示装置は、所定時間は、描画回路が第2信号を受けてから描画回路による液晶表示器の描画出力切り替えが完了するまでの時間相当であることを特徴としている。
【0023】
上述の構成によれば、バックライトの発光輝度が目標発光輝度に切り替わるタイミングと液晶表示器の描画出力が目標描画出力に切り替わった時点とを一致させることができる。したがって、従来の液晶表示装置における、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項3に記載の液晶表示装置は、制御手段は、検出信号が入力されるとそれに基づいて目標総合発光輝度、目標発光輝度および目標描画出力を決定し且つ駆動回路へ第1信号を出力する第1制御部と、液晶表示器の表示画像制御を行うとともに第1制御部において決定された目標描画出力に基づいて描画回路へ第2信号を出力する第2制御部とを備えることを特徴としている。
【0025】
上述の構成においては、制御手段は、外部から制御手段に入力される信号を処理する制御部と、液晶表示器の表示動作を制御する制御部との2つの制御部を備えている。これにより、外部から入力される信号の種類の増減、表示情報の増減の要求に容易に対応可能としつつ、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0026】
本発明の請求項4に記載の液晶表示装置は、検出信号は車両のライトコントロールスイッチのポジション信号であることを特徴としている。
【0027】
通常、車両の運転者は、車両周囲の明るさに応じてライトコントロールスイッチを操作してその選択ポジションを切り替える。すなわち、ライトコントロールスイッチの選択されたポジションを検出することにより車両周囲の明るさを判定することができる。
【0028】
これにより、液晶表示装置の周囲の明るさが変化しても、液晶表示器の視認性を常に良好に維持しつつ、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0029】
この場合、本発明の請求項5に記載の液晶表示装置のように、ライトコントロールスイッチがオフポジションから車幅灯ポジションへ切り替えられると制御手段は総合発光輝度を昼間総合発光輝度から夜間総合発光輝度へ切り替え、ライトコントロールスイッチが車幅灯ポジションからオフポジションへ切り替えられると制御手段は総合発光輝度を夜間総合発光輝度から昼間総合発光輝度へ切り替える構成とすれば、液晶表示装置の周囲の明るさの変化に対応して液晶表示器の視認性を確実に最適状態に維持しつつ、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0030】
本発明の請求項6に記載の液晶表示装置は、検出信号は車両に設置されて車室外の照度を検出する照度検出装置からの出力信号であることを特徴としている。
【0031】
上述の構成によれば、車両周囲の明るさを正確に検出することができる。これにより、液晶表示装置の周囲の明るさが変化しても、液晶表示器の視認性を常に良好に維持しつつ、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【0032】
この場合、本発明の請求項7に記載の液晶表示装置のように、出力信号に基づいて制御手段により算出された照度が予め定められた照度である閾値照度未満であるときは、制御手段は総合発光輝度として夜間総合発光輝度を選択し、出力信号に基づいて制御手段により算出された照度が閾値照度以上であるときは、制御手段は総合発光輝度として昼間総合発光輝度を選択する構成とすれば、液晶表示装置の周囲の明るさの変化に対応して液晶表示器の視認性を確実に最適状態に維持しつつ、液晶表示器の総合発光輝度切り替え時に発生する総合発光輝度の一瞬の増大を抑制して、良好な見映えの液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明にかかる液晶表示装置の実施の形態について、液晶表示装置を自動車に搭載されたコンビネーションメータ1に適用した場合を例に図1〜図5を参照して説明する。
【0034】
コンビネーションメータ1は、自動車の車室内運転席前方のインストルメントパネル内に配置され、自動車の運転に必要な情報や自動車各部の作動状態に関する情報を、運転者に向けて表示している。コンビネーションメータ1は、液晶表示器2を備え、上述した各種情報のすべてを、この液晶表示器2に形成された画像として表示するものである。言い換えると、コンビネーションメータ1は、情報を表示する表示手段としては、液晶表示器2のみを備えている。
【0035】
液晶表示器2の表示画面上には、図1に示すように、自動車の走行速度を指示するスピードメータS、エンジンの回転速度を指示するタコメータT、エンジン冷却水温度を指示する水温計W、燃料タンク内の残存燃料量を指示するフューエルメータF等が形成されている。
【0036】
液晶表示器2としては、たとえば、TFT(Thin Film Transistor)型のドットマトリクスタイプ液晶パネルが用いられている。液晶表示器2は、その背後(図2の右側)に配置された光源であるバックライト3により透過照明されて発光表示される。バックライト3は、詳しくは、供給された電力を光に変換する発光ダイオード(図示せず)と発光ダイオードが発する光を、液晶表示器2の全域を均一な明るさで照射するように液晶表示器2の背面に導く導光体(図示せず)とから構成されている。導光体は、透光性材質、たとえば、無色透明のアクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂等から平板状に形成されている。導光体は、その平面形状が液晶表示器1の平面形状とほぼ同一に作られており、導光体の全面が均一な明るさで発光することにより、液晶表示器2の表示画面全体が均一な輝度で透過照明される。液晶表示器2としての発光輝度である総合発光輝度は、バックライト3の発光輝度であるバックライト発光輝度および液晶表示器2の描画出力の両者の合成出力として形成される。
【0037】
次に、本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1の電気回路構成について、図3に示す、電気回路構成図に基づいて説明する。
【0038】
コンビネーションメータ1は、電気回路的には、図3に示すように、液晶表示器2、バックライト3、コントローラ4、コントローラ4から出力される第1信号に基づいてバックライト3を所望の発光輝度で点灯させる駆動回路5、コントローラ4から出力される第2信号に基づいて液晶表示器2を駆動する描画回路6、バックライト3の発光輝度を運転者が自分の好みにより調節するための輝度調節器8、自動車の灯火の点灯状態を切り替えるライトコントロールスイッチ9等から構成されている。コントローラ4には、図3に示すように、常時バッテリ11から電力が供給されている。また、コントローラ4には、図3に示すように、イグニッションスイッチ10が接続されている。イグニッションスイッチ10がオンされて自動車が作動状態となると、コントローラ4は、イグニッションスイッチ10を介してそれを検知してコンビネーションメータ1の表示動作を開始する。コンビネーションメータ1は、上述した各構成要素のほかにも、図示しない多数の要素、たとえば自動車の走行速度を検出する車速センサ、エンジン回転速度を検出する回転センサ、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ、燃料タンク(図示せず)内の残存燃料量を検出する液面センサ等を備えており、それらの要素はコントローラ4に接続されている。しかし、本発明の特徴である液晶表示器2の総合発光輝度制御とは直接的な関わりがないので説明を省略している。
【0039】
コントローラ4は、たとえばマイクロコンピュータ等から構成されている。コントローラ4は、機能的には、図3に示すように、第1制御部41および第2制御部42から構成されている。第1制御部41には、ライトコントロールスイッチ9から検出信号としてのポジション信号と、輝度調節器8からの運転者の好みの明るさ調整信号が入力される。第1制御部41は、この2つの信号に基づいて液晶表示器2の制御すべき総合発光輝度である目標総合発光輝度を決定するとともに、その目標総合発光輝度に対応した目標バックライト発光輝度および目標描画出力を決定する。そして、第1制御部41は、バックライトの発光輝度を目標バックライト発光輝度とするための第1信号を駆動回路5へ出力する。第1制御部41は、決定した目標描画出力を第2制御部42へ出力する。第2制御部42は、第1制御部から目標描画出力情報を入力されると、それに基づいて、液晶表示器2の描画出力を目標描画出力とするための第2信号を描画回路6へ出力する。
【0040】
輝度調節器8は、運転者の操作により、昼間時、すなわち後述するライトコントロールスイッチ9のオフポジション選択時のTFT諧調と、夜間時、すなわちライトコントロールスイッチ9の車幅灯ポジションあるいは前照灯ポジション選択時のTFT諧調とを個別に設定される。輝度調節器8からの選択信号は、図3に示すように、第1制御部41に入力され、第1制御部41は、この選択信号とライトコントロールスイッチ9からのポジション信号とに基づいて決定した目標描画出力を第2制御部42へ出力する。
【0041】
ライトコントロールスイッチ9は、たとえば、オフポジション、車幅灯ポジション、前照灯ポジションの3つのポジションを備えており、各ポジションに対応した3種類の信号のいずれか一つ、すなわち検出信号がコントローラ4に入力され、それによって、コントローラ4は、ライトコントロールスイッチ9においてどのポジションが選択されているか認識することができる。
【0042】
次に、本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1の作動、特に液晶表示器2の総合発光輝度制御動作について説明する。
【0043】
作動説明の前提として、輝度調節器8においては昼間および夜間の各描画出力が、それぞれ図4の表に示す値に設定されている。その結果として、液晶表示器2の昼間および夜間の各総合発光輝度も、それぞれ図4の表に示す値に設定されている。ここで、昼間とは、ライトコントロールスイッチ9がオフポジションにあるときであり、夜間とは、ライトコントロールスイッチ9が車幅灯ポジションあるいは前照灯ポジションにあるときである。したがって、ライトコントロールスイッチ9がオフポジションおよび車幅灯ポジション間で切り替えられたときには、コントローラ4は、液晶表示器2の総合発光輝度を切り替える制御をおこなうが、ライトコントロールスイッチ9が車幅灯ポジションおよび前照灯ポジション間で切り替えられたときには、コントローラ4は、液晶表示器2の総合発光輝度を夜間状態に維持し続ける。コントローラ4は、上述したように、ライトコントロールスイッチ9の選択されたポジションに応じて液晶表示器2の総合発光輝度を制御している。したがって、時間的には昼間であっても、トンネル内を走行しているとき、あるいは雨天で雲が厚くて暗いとき等において、ライトコントロールスイッチ9が車幅灯ポジションあるいは前照灯ポジションに設定されると、液晶表示器2の総合発光輝度を「夜間」状態にする。
【0044】
次に、実際に自動車が走行している状態を例に、コントローラ4により実行される液晶表示器2の総合発光輝度制御動作について、図5に基づいて説明する。図5は、昼間時に自動車が走行中、トンネルを通過した場合を示している。図5(a)は、ライトコントロールスイッチ9の選択ポジションの時間推移を、(b)は、バックライト3の発光輝度の時間推移を、(c)は、液晶表示器2の描画出力の時間推移を、(d)は、液晶表示器2の総合発光輝度の時間推移を、それぞれ示すタイミングチャートである。
【0045】
以下に、コンビネーションメータ1のコントローラ4による液晶表示器2の総合発光輝度制御動作について時間を追って説明する。昼間時で周囲が明るいため、ライトコントロールスイッチ9はオフポジションが選択されている。これにより、コントローラ4は、液晶表示器2の総合発光輝度を昼間モードに制御している。すなわち、図5(b)、(c)に示すように、バックライト発光輝度は100%に、描画出力は10%に設定されて、総合発光輝度は図5(d)に示すように10%となっている。
【0046】
自動車がトンネル入り口に差し掛かり、時刻t10において運転者がライトコントロールスイッチ9をオフポジションから車幅灯ポジションへ切り替えた。これを受けて、コントローラ4の第1制御部41は、液晶表示器2の目標総合発光輝度、目標バックライト発光輝度および目標描画出力を判定し、駆動回路5へ第1信号を、第2制御部42へ目標描画出力情報を同時に出力する。第2制御部42は第2信号を描画回路6へ出力する。この場合、目標総合発光輝度が夜間総合発光輝度であるので、第1信号と第2信号とは同時に出力される。駆動回路5は第1信号を受けてバックライト発光輝度を変える。これにより、バックライト発光輝度は、図5(b)に示すように、時刻t10に直ちに100%から25%に切り替わる。一方、描画回路6による液晶表示器2の画像表示は所定の時間間隔で実行されているため、描画回路6が第2信号を受けてから液晶表示器2の描画出力が切り替わるまでに遅れ時間Tdが発生し、実際に液晶表示器2の描画出力が切り替わるのは、図5(c)に示すように、時刻t11になる。この遅れ時間Tdの間は、バックライト発光輝度は25%に切り替わっているが、描画出力は10%のままである。したがって、遅れ時間Tdの間は、液晶表示器2の総合発光輝度は、図5(d)に示すように、2.5%と暗い状態になっている。時刻t11に液晶表示器2の描画出力が100%に切り替わると、液晶表示器2の総合発光輝度は、正規の25%になる。
【0047】
この状態でトンネル内を走行した後、自動車がトンネル出口に差し掛かり、時刻t12において運転者がライトコントロールスイッチ9を車幅灯ポジションからオフポジションへ切り替えた。これを受けて、コントローラ4の第1制御部41は、液晶表示器2の目標総合発光輝度、目標バックライト発光輝度および目標描画出力を判定する。今度は、目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるので、第1信号は、第2信号と同時に出力されるのではなく、第2信号が出力されてから、所定時間である遅延時間TD経過後に出力される。すなわち、第1制御部41は、時刻t12に第2制御部42へ目標描画出力情報を出力する。同時にタイマーによる計時を開始し、タイマー計時時間が予め設定されている遅延時間TDに達した時刻、すなわち時刻t14に、第1制御部41は、第1信号を駆動回路5へ出力する。これにより、時刻t14にバックライト発光輝度は、図5(b)に示すように、昼間発光輝度である100%に切り替わる。一方、液晶表示器2の描画出力は、時刻t12に描画回路6が第2信号を受けてから遅れ時間Td経過後の時刻t13に、図5(c)に示すように、昼間描画出力である10%に切り替わる。
【0048】
すなわち、時刻t12にライトコントロールスイッチ9を車幅灯ポジションからオフポジションへ切り替えられた場合、液晶表示器2の総合発光輝度は、時刻t12から時刻t13までの時間は、図5(d)に示すように、夜間総合発光輝度である25%のままである。時刻t13から時刻t14間での時間は、バックライト発光輝度が依然として夜間バックライト発光輝度である25%、且つ描画出力が昼間描画出力である10%となるため、液晶表示器2の総合発光輝度は、図5(d)に示すように、2.5%になる。時刻t14以降は、バックライト発光輝度が昼間バックライト発光輝度である100%、且つ描画出力が昼間描画出力である10%となるため、液晶表示器2の総合発光輝度は、図5(d)に示すように、昼間総合発光輝度である10%になる。このように、本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1においては、コントローラ4が、液晶表示器2の総合発光輝度切り替え制御を行う際に、目標総合発光輝度が夜間総合発光輝度である場合には遅れ時間Tdの間、および目標総合発光輝度が夜間総合発光輝度である場合には(遅延時間TD−遅れ時間Td)の間、総合発光輝度が2.5%まで低下する。この、総合発光輝度が一瞬低下する現象は、一般的に視認者の視覚に対する刺激の強さは、液晶表示器の画面が一瞬暗くなる場合は弱いことから、ほとんど目立たない。これにより、従来の液晶表示装置の液晶表示器の総合発光輝度切り替え制御時に発生した不具合、つまり目標総合発光輝度が夜間総合発光輝度である場合に液晶表示器の総合発光輝度が一瞬高くなってぴかっと光る現象の発生を阻止することができる。
【0049】
ここで、図5から明らかなように、遅延時間TDを短縮して遅れ時間Tdに近づけることで、総合発光輝度が2.5%である時間を短くすることができる。しかし、遅延時間TDが遅れ時間Tdより短くなってしまうと、(遅れ時間Td−遅延時間TD)の間は、バックライト発光輝度が昼間バックライト発光輝度である100%、且つ描画出力が夜間描画出力である100%となるため、液晶表示器2の総合発光輝度が一瞬高くなってぴかっと光る現象が発生する。したがって、遅れ時間TDは、遅れ時間Tdよりも必ず長くなるように設定されている。
【0050】
以上説明した、本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1においては、コントローラ4は、液晶表示器2の総合発光輝度が高い状態から低い状態へ切り替えるとき、つまり、目標総合発光輝度が昼間総合発光輝度であるときに、バックライト発光輝度を制御する第1信号を、液晶表示器2の描画出力を制御する第2信号の出力後所定の遅延時間が経過してから出力している。このため、コントローラ4から第2信号が出力された時刻から実際に液晶表示器2の描画出力が切り替わる時刻までの遅れ時間内おいては、描画出力は夜間描画出力、すなわち100%であるが、バックライト発光輝度も未だ第1信号が出力されていないので夜間バックライト発光輝度、すなわち25%である。すなわち、総合発光輝度は夜間総合発光輝度である25%のままである。これにより、従来の液晶表示装置において発生した不具合、すなわち制御手段から第2信号が出力された時期から実際に液晶表示器の描画出力が切り替わる時期までの遅れ時間の間に、バックライト発光輝度が上昇した状態且つ描画出力は以前の高い状態のままで、総合発光輝度が非常に高くなり、一瞬ぴかっと光るように見えてしまい商品性が低下するという現象の発生を抑制することができる。
【0051】
なお、以上説明した本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1においては、コントローラ4が液晶表示器2の総合発光輝度を切り替える制御を行うための検出信号を、ライトコントロールスイッチ9の選択ポジション信号としているが、これに換えて、自動車の車外照度を検出する照度検出器(図示せず)の出力信号を用いても良い。この場合、コントローラ4が照度検出器(図示せず)の出力信号に基づいて車外照度を算出するとともに、算出された照度が予め定められた照度である閾値照度未満であるときは、コントローラ4が目標総合発光輝度として夜間総合発光輝度を選択し、算出された照度が閾値照度以上であるときは、コントローラ4が目標総合発光輝度として昼間総合発光輝度を選択するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態によるコンビネーションメータ1の正面図である。
【図2】図1中のII−II線断面図である。
【図3】コンビネーションメータ1の電気回路構成を説明する模式図である。
【図4】コンビネーションメータ1の液晶表示器2の総合発光輝度制御に関わる各種パラメータの設定条件を説明する一覧表である。
【図5】(a)は、ライトコントロールスイッチ9の選択ポジションの時間推移を、(b)は、バックライト3の発光輝度の時間推移を、(c)は、液晶表示器2の描画出力の時間推移を、(d)は、液晶表示器2の総合発光輝度の時間推移を、それぞれ示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 コンビネーションメータ(液晶表示装置)
2 液晶表示器
3 バックライト(光源)
4 コントローラ(制御手段)
41 第1制御部
42 第2制御部
5 駆動回路
6 描画回路
8 輝度調節器
9 ライトコントロールスイッチ
10 イグニッションスイッチ
11 バッテリ
F 燃料計
S スピードメータ
T タコメータ
TD 遅延時間
Td 遅れ時間
t10〜t14 時刻
W 水温計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示器と、
前記液晶表示器の背面側に配置された前記液晶表示器を透過照明するバックライトと、
前記液晶表示器に描画動作をおこなわせるように前記液晶表示器を駆動する描画回路と、
前記バックライトに発光動作をおこなわせるように駆動する駆動回路と、
前記バックライトの発光輝度と前記液晶表示器の描画出力とを変化させることにより前記液晶表示器の外部に対する発光輝度である総合発光輝度を調節する制御手段と、を備え、
前記制御手段は外部から入力される検出信号の変化に対応して、実現すべき総合発光輝度である目標総合発光輝度を決定するとともに、前記目標総合発光輝度を実現するための前記バックライトの発光輝度である目標バックライト発光輝度および前記液晶表示器の描画出力である目標描画出力を決定し、
前記制御手段は、前記バックライトの発光輝度を前記目標バックライト発光輝度へ切り替えるための第1指示信号を前記駆動回路へ出力し、
前記制御手段は、前記液晶表示器の描画出力を前記目標描画出力へ切り替えるための第2指示信号を前記描画回路へ出力する液晶表示装置であって、
前記目標総合発光輝度として昼間総合発光輝度および夜間総合発光輝度が、前記目標バックライト発光輝度として昼間バックライト発光輝度および夜間バックライト発光輝度が、前記目標描画出力として昼間描画出力および夜間描画出力がそれぞれ設定され、
前記昼間総合発光輝度は前記昼間バックライト発光輝度および前記昼間描画出力により実現され、
前記夜間総合発光輝度は前記夜間バックライト発光輝度および前記夜間描画出力により実現され
前記昼間描画出力及び、前記夜間描画出力はユーザが任意で出力を調整できる機能を備え、
前記昼間総合発光輝度は前記夜間総合発光輝度よりも低く、前記昼間バックライト発光輝度は前記夜間バックライト発光輝度よりも高く、前記昼間描画出力は前記夜間描画出力よりも低くそれぞれ設定することが可能であり、
前記制御手段は、前記目標総合発光輝度が前記夜間総合発光輝度であるときにおいては、前記第1信号および前記第2指示信号を同時に出力し、
前記制御手段は、前記目標総合発光輝度が前記昼間総合発光輝度であるときにおいては、前記第2指示信号を出力後所定時間が経過してから前記第1指示信号を出力し、
前記駆動回路は前記第1信号を受けて前記バックライト発光輝度を変化させるとともに、前記描画回路は前記第2信号を受けて前記描画出力を変化させることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記描画回路が前記第2信号を受けてから前記描画回路による前記液晶表示器の描画出力切り替えが完了するまでの時間相当であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出信号が入力されるとそれに基づいて前記目標総合発光輝度、前記目標発光輝度および前記目標描画出力を決定し且つ前記駆動回路へ前記第1信号を出力する第1制御部と、前記液晶表示器の表示画像制御を行うとともに前記第1制御部において決定された前記目標描画出力に基づいて前記描画回路へ前記第2信号を出力する第2制御部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記検出信号は車両のライトコントロールスイッチのポジション信号であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記ライトコントロールスイッチがオフポジションから車幅灯ポジションへ切り替えられると、前記制御手段は前記総合発光輝度を前記昼間総合発光輝度から前記夜間総合発光輝度へ切り替え、
前記ライトコントロールスイッチが車幅灯ポジションからオフポジションへ切り替えられると、前記制御手段は前記総合発光輝度を前記夜間総合発光輝度から前記昼間総合発光輝度へ切り替えることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記検出信号は車両に設置されて車室外の照度を検出する照度検出装置からの出力信号であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記出力信号に基づいて前記制御手段により算出された照度が予め定められた照度である閾値照度未満であるときは、前記制御手段は前記総合発光輝度として前記夜間総合発光輝度を選択し、
前記出力信号に基づいて前記制御手段により算出された照度が前記閾値照度以上であるときは、前記制御手段は前記総合発光輝度として前記昼間総合発光輝度を選択することを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−37000(P2009−37000A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201344(P2007−201344)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】