説明

液晶表示装置

【課題】FFSモードの液晶表示装置の電源オフ後の焼付きなどの表示不良を防止できる簡便な構造の液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この発明に係る液晶表示装置は、電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、画素電極のそれぞれは隣り合う画素電極と所定の抵抗値を有する高抵抗部により互いに電気的に接続されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置、特にフリンジフィールドスイッチングモードの液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインプレーンスイッチング(In-Plane Switching 以下、IPSと言う)モードの液晶表示装置は、対向する基板間に挟持された液晶に横電界を印加して表示を行う表示方式であり、IPSモードは、TN(Twisted Nematic)モードと比較して視野角特性に優れており、高画質化への要求を満足することが可能な表示方式である。しかし、IPSモードの液晶表示装置では、画素電極と共通電極とを金属膜により形成し、同一の基板上に対向配置する構成が一般的であるので、このような構造の液晶表示装置は、通常のTNモードと比べて画素開口率を大きくすることが困難であり、そのため光利用効率が低いという欠点があった。
【0003】
そこで、IPSモードの液晶表示装置における開口率及び透過率を改善するために、フリンジフィールドスイッチング(Fringe Field Switching 以下、FFSと言う)モードが提案された(例えば、特許文献1)。
FFSモードの液晶表示装置は、対向する基板間に狭持された液晶にフリンジ電界を印加して表示を行う表示方式である。この方式では上層に設けられたスリットを有する画素電極と、絶縁膜を介して下層に設けられた共通電極との間に発生するフリンジ電界で液晶を駆動する構成となっている。FFSモードの液晶表示装置では、画素電極と共通電極とを透明導電膜により形成しているため、IPSモードより開口率及び透過率が向上することになる。また、FFSモードの液晶表示装置では、これら透明導電膜間によって補助容量が形成されるため、補助容量形成部による透過率ロスを少なくすることができる。
【0004】
また、このFFSモードの方式では、画素電極と信号線との間に寄生容量が発生し、液晶表示装置の焼付きなどの表示品位が劣化することが知られている。例えば、液晶表示装置の電源をオフした後で画素電極に電荷が長時間保持されたままとなり、配向膜や液晶層に長時間にわたってほぼ一定の電界が印加されることにより液晶パネルに焼付き現象を生じる場合がある。この対策として、画素電極を駆動する薄膜トランジスターの特性をデプレッション型とすることにより、電源オフの後に画素電極に保持された電荷が薄膜トランジスターを介して比較的短時間に放電されることとなり、焼付き低減が可能になるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−89255号公報
【特許文献2】特開2009−237447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のFFSモードの液晶表示装置では、画素電極を駆動する薄膜トランジスターをデプレッション型とすることで電源オフ時の焼付きを防止できるとしていたが、薄膜トランジスターは動作時の温度や長時間動作させることでトランジスター特性が変化する場合があり、デプレッション型の特性から外れたトランジスター特性になる場合があるため、特定の条件においては焼付き防止効果が得られなくなる場合があった。
【0007】
また、FFSモードの液晶表示装置において、上層に設けられたスリットを有する共通電極と、絶縁膜を介して下層に設けられた画素電極との間に発生するフリンジ電界で液晶を駆動する構成とした場合、画素電極の上層下層ともに絶縁膜で覆われた構造となり、電源オフ時に画素電極に電荷が保持されやすくなり、焼付きが大きくなることがあった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、FFSモードの液晶表示装置の電源オフ後の焼付きなどの表示不良を防止できる簡便な構造の液晶表示装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る液晶表示装置は、平行に設けられた複数の走査線と、走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、走査線及び信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、画素電極のそれぞれは隣り合う画素電極と所定の抵抗値を有する高抵抗部により互いに電気的に接続されたものであることを特徴とする。
【0010】
また、この発明係る液晶表示装置は、平行に設けられた複数の走査線と、走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、走査線及び信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、画素電極のそれぞれは信号線あるいは走査線と所定の抵抗値を有する高抵抗部により電気的に接続されたものでもある。
【0011】
さらに、この発明係る液晶表示装置は、平行に設けられた複数の走査線と、走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、走査線及び信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、画素電極のそれぞれは所定の抵抗値を有する高抵抗部により接地されたものでもある。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る液晶表示装置は、上記のように構成したことにより、液晶表示装置の電源をオフした後に画素電極に保持された電荷を短時間で放出することができるので、焼付きのような表示不良を防ぐことができ、表示品位を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板全体を示す平面図である。
【図2】本発明の前提となるTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。
【図3】本発明の前提となるTFTアレイ基板の画素とCF基板の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素とCF基板の断面図である
【図6】本発明の実施の形態2に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素とCF基板の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係わる液晶表示装置のTFTアレイ基板の画素とCF基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
まず、本発明の液晶表示装置の全体構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)アレイ基板の構成を示す平面図である。特記する場合を除いて、この液晶表示装置の全体構成は全ての実施の形態において共通である。また、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することである。
【0015】
図1において、本実施の形態に係わる液晶表示装置はTFTアレイ基板に画素電極と共通電極が形成されたFFSモードの液晶表示装置である。液晶表示装置は、基板10の上に形成されている。基板10は、例えば、TFTアレイ基板等のアレイ基板である。基板10には、基板10の周囲部分である表示領域41と、表示領域41を囲むように設けられた額縁領域42とが設けられている。
【0016】
表示領域41には、複数の走査線(ゲート配線)43と複数の信号線(ソース配線)44とが形成されている。複数の走査線43は、表示領域内41で互いに平行に設けられている。同様に、複数の信号線44も平行に設けられている。また、走査線43と信号線44とは、互いに交差するように形成されている。ここで、隣接する走査線43と信号線44とで囲まれた領域が画素47となる。そのため、基板10の中には、画素47がマトリクス状に配列されることとなる。また、共通電極7が走査線と平行に配置されている。
【0017】
基板10の額縁領域42には、走査信号駆動回路45と表示信号駆動回路46とが設けられている。走査線43は表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板10の端部で走査信号駆動回路45に接続される。信号線44も同様に、表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板10の端部で表示信号駆動回路46と接続される。図面の煩雑さを避けるため図示していないが、走査信号駆動回路45及び表示信号駆動回路46の近傍には、外部配線が接続されている。また、共通電極7も基板額縁まで延伸され外部配線と接続される(図示を省略)。
【0018】
上記の回路構成を用いて回路駆動がなされる。具体的には、走査信号駆動回路45、及び表示信号駆動回路46に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路45は外部からの制御信号に基づいて、走査信号を走査線43に供給する。この走査信号によって、走査線43が順次選択されていく。表示信号駆動回路46は外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号を信号線44に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素47に供給することができる。
【0019】
画素47内には、少なくとも1つのTFT50が形成されている。TFT50は信号線44と走査線43の交差点近傍に配置される。例えば、このTFT50が画素電極に表示電圧を供給する。即ち、走査線43からの走査信号によって、スイッチング素子であるTFT50がオンする。これにより、信号線44から、TFT50のドレイン電極に接続された画素電極に表示電圧が印加される。さらに、画素電極は、スリットを有する共通電極(対向電極)と絶縁膜を介して対向配置されている。画素電極と共通電極との間には、表示電圧に応じたフリンジ電界が生じる。また、基板10の表面には、配向膜が形成されている。なお、画素47には高抵抗部51が配置されているが、画素47の詳細な構成については後述する。
【0020】
つぎに、本発明の前提となる画素構成について、図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3においては、理解の容易さを図るために、図1で示している画素の構成から高抵抗部51を省略している。図2は、TFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。図3は図2の断面図である。なお断面位置は図2のA−A’線に沿った位置に対応している。図3では、TFTアレイ基板とCF基板を重ねあわせて図示している。ここでは、例示的にチャネルエッチ型のTFT50が形成されている場合について説明をする。
【0021】
図2及び図3において、ガラス等の透明な絶縁性の基板10上に、その一部がゲート電極1を構成する走査線43が形成されている。走査線43は、基板10上において一方向に直線的に延在するように配設されている。ゲート電極1及び走査線43は、例えばCr、Al、Ta、Ti、Mo、W、Ni、Cu、Au、Agやこれらを主成分とする合金膜、またはこれらの積層膜によって形成されている。
【0022】
ゲート電極1及び走査線43を覆うように、第1の絶縁膜であるゲート絶縁膜11が設けられている。ゲート絶縁膜11は、窒化シリコン、酸化シリコン等の絶縁膜により形成されている。そして、TFT50の形成領域では、ゲート絶縁膜11を介してゲート電極1の対面に半導体層2が設けられている。ここでは、半導体層2は走査線43と重なるようゲート絶縁膜11の上に形成され、この半導体層2と重複する領域の走査線43がゲート電極1となる。半導体層2は、例えば、非晶質シリコン、多結晶ポリシリコン等により形成されている。
【0023】
また、半導体層2上の両端に、導電性不純物がドーピングされたオーミックコンタクト膜3がそれぞれ形成されている。オーミックコンタクト膜3に対応する半導体層2の領域は、ソース・ドレイン領域となる。具体的には、図3中の左側のオーミックコンタクト膜3に対応する半導体層2の領域がソース領域となる。そして、図3中の右側のオーミックコンタクト膜3に対応する半導体層2の領域がドレイン領域となる。このように、半導体層2の両端にはソース・ドレイン領域が形成されている。そして、半導体層2のソース・ドレイン領域に挟まれた領域がチャネル領域となる。半導体層2のチャネル領域上には、オーミックコンタクト膜3は形成されていない。オーミックコンタクト膜3は、例えば、リン(P)等の不純物が高濃度にドーピングされた、n型非晶質シリコンやn型多結晶シリコンなどにより形成されている。
【0024】
オーミックコンタクト膜3の上に、ソース電極4及びドレイン電極5が形成されている。具体的には、ソース領域側のオーミックコンタクト膜3上に、ソース電極4が形成されている。そして、ドレイン領域側のオーミックコンタクト膜3の上に、ドレイン電極5が形成されている。このように、チャネルエッチ型のTFT50が構成されている。そして、ソース電極4及びドレイン電極5は、半導体層2のチャネル領域の外側へ延在するように形成されている。すなわち、ソース電極4及びドレイン電極5は、オーミックコンタクト膜3と同様、半導体層2のチャネル領域上には形成されない。
【0025】
ソース電極4は、半導体層2のチャネル領域の外側へ延在し、信号線44と繋がっている。信号線44は、ゲート絶縁膜11上に形成され、基板10上において走査線43と交差する方向に直線的に延在するように配設されている。したがって、ソース配線44は、走査線43との交差部において分岐してから走査線43に沿って延在し、ソース電極4となる。
【0026】
ドレイン電極5は、半導体層2のチャネル領域の外側へ延在し、画素電極6と電気的に接続している。すなわち、ドレイン電極5は、TFT50の外側へと延在する延在部を有している。そして、この延在部において、ドレイン電極5と画素電極6とが電気的に接続する。ソース電極4、ドレイン電極5、及びソース配線44は、例えばCr、Al、Ta、Ti、Mo、W、Ni、Cu、Au、Agやこれらを主成分とする合金膜、またはこれらの積層膜によって形成されている。
【0027】
画素電極6の上には層間絶縁膜12が形成され、層間絶縁膜12の上にはスリットを有する共通電極7が配置されている。画素電極6及び共通電極7は例えばInとSnとOの化合物や、InとZnとOの化合物などの導電性を持つ透明な膜で形成されている。層間絶縁膜12は、窒化シリコン、酸化シリコン等の絶縁膜により形成されている。
【0028】
そして、基板10には、対向基板20が対向して配置されている。対向基板20は、例えば、カラーフィルター基板(CF基板)であり、視認側に配置される。対向基板20には、カラーフィルター21、ブラックマトリクス(BM)22、及び配向膜24等が形成されている。基板10と対向基板20との間には液晶19が狭持される。即ち、基板10と対向基板20との間には液晶19が導入されている。さらに、基板10と対向基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等が設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、偏光板、位相差板及びバックライトユニット等が配設される。偏光板、位相差板、バックライトユニットについては図示を省略している。
【0029】
つぎに、画素の駆動について説明する。画素電極6と共通電極7との間のフリンジ電界によって液晶19が駆動され、基板間の液晶19の配向方向が変化する。これにより、液晶層19を通過する光の偏光状態が変化する。偏光状態によって、対向基板20側の偏光板を通過する光量は変化する。即ち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶19の配向方向は、印加される表示電圧によって変化するので、表示電圧を制御することによって視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。つまり、画素47ごとに表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。
【0030】
ここで、図1で示した画素構成から高抵抗部51を省略した場合の問題点について説明する。図2および図3は、高抵抗部51を省略した場合の画素構造を示した模式図である。図において、画素電極6は上下を絶縁膜に覆われた構造となっているため、液晶表示装置の電源がオフとなり液晶パネルに印加される電圧がオフとなった後も電荷が保持されやすい構造となってしまう。画素電極6に電荷が長時間保持された状態では画素電極6と共通電極7の間に長時間電圧が印加されることとなり、液晶19および配向膜13などで電気分極やイオン吸着などの現象が発生し、液晶表示装置に焼付きなどの表示不良が発生することがあり、表示品位が低下することがある。
【0031】
そこで、画素電極6に電荷が長時間保持されることを防ぐため、図1に示したように、本実施の形態では画素電極と隣接する画素電極の間を高抵抗部51で電気的に接続している。画素電極が他の電極と電気的に接続しているため、液晶表示装置の電源をオフした後に画素電極に保持された電荷が他の電極を伝って短時間で放出することができるので、焼付きのような表示不良を防ぐことができ、表示品位向上という効果が得られる。
【0032】
画素電極と隣接する画素電極の間を高抵抗部51で電気的に接続する方法について、具体的に以下説明する。
図4、図5は本実施形態における液晶表示装置に用いられる画素構成について示している。図4は、TFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。図5は図4断面図である。断面位置は図4のB−B’線に沿った位置に対応している。なお、図5はTFTアレイ基板とCF基板をあわせた断面である。ここでは、例示的にチャネルエッチ型のTFT50が形成されている場合について説明をする。
【0033】
画素電極6とこれに隣接する画素の画素電極8とは高抵抗部51を介して電気的に接続されている。ここで、高抵抗部51はTFT50と同時に形成が可能となるように半導体層2を用いることができる。半導体層2と画素電極6及び隣接画素電極8はTFT50と同様にオーミックコンタクト層3及びソース電極4及びドレイン電極5と同一の金属層を介してオーミック接続がなされている。このような構成にすることにより、高抵抗部51をTFT50と同一の工程で形成することができるので、追加の工程が必要無く安価に所定の性能を得ることができる。また、このような構造にすることで、画素電極に保持された電荷を短時間で放出する効果を得ることができる。
【0034】
また、半導体層2は非晶質のSiや結晶質のSiや非晶質のSiと結晶質のSiの混合層としたものを用いることにより、TFT50と高抵抗部51の双方に必要となる性能を得ることができる。
【0035】
なお、上述のように高抵抗部51を用いて画素電極同士だけを電気的に接続した場合には画素電極に保持された電荷が平均化されるだけで電荷が除去できなくなることがありうる。これを防ぐためには図1に示す額縁領域42において、表示領域41の最も外側の画素電極と共通電極7とを高抵抗部51を介して電気的に接続してやればよい。共通電極7を介して接地されることにより、画素電極に保持された電荷を短時間で放出する効果がある。また、画素電極と接続するのは共通電極7以外の電極でも良い。例えば、画素電極と走査線44を接続することで同様の効果が得られる。さらに、チャネルエッチ型以外のTFTについても同様に電気的に接続することにより、同様の効果を得ることが可能となる。
【0036】
実施の形態2.
図6、図7は本実施形態における液晶表示装置に用いられる画素構成について示している。図6は、TFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。図7は図6の断面図である。断面位置は図6のC−C’線に沿った位置に対応している。なお、図7ではTFTアレイ基板とCF基板をあわせて図示している。ここでは、チャネルエッチ型のTFT50が形成されている場合について例示的に説明をする。また、画素構成以外の液晶表示装置の全体構成は実施の形態1と共通であるので、本実施形態に特有の構成を中心に以下説明する。
【0037】
画素電極6と信号線44は高抵抗部51を介して電気的に接続されている。ここで、高抵抗部51はTFT50と同時に形成が可能となるように半導体層2を用いることができる。半導体層2と画素電極はTFT50と同様にオーミックコンタクト層3及びソース電極4及びドレイン電極5と同一の金属層を介してオーミック接続がなされている。走査線とはオーミックコンタクト層3を介して接続されている。画素電極6と高抵抗部51を介して電気的に接続する信号線44は、該当する画素電極6に信号を与えている信号線44でもよく、該当する画素電極6に信号を与えていない異なる信号線でも良い。また画素電極6の両側に配置されている2つの信号線44に同時に高抵抗部51を介して電気的に接続しても良い。また、半導体層2は非晶質のSiや結晶質のSiや非晶質のSiと結晶質のSiを混合層としたものを用いることにより、TFT50と高抵抗部51の双方に必要となる性能を得ることができる。
【0038】
上述のように、高抵抗部51を介して画素電極が信号線と電気的に接続されているため、液晶表示装置の電源をオフした後に画素電極に保持された電荷が信号線を伝って短時間に放出される。したがって、焼付きのような表示不良を防ぐことができ、表示品位向上という効果が得られる。
【0039】
また、高抵抗部51をTFT50と同一の工程で形成することができるので、追加の工程が必要無く安価に所定の性能を得ることができる。なお、チャネルエッチ型以外のTFTについても同様に電気的に接続することにより、同様の効果を得ることが可能となる。
【0040】
実施の形態3.
図8、図9は本実施形態における液晶表示装置に用いられる画素構成について示した模式図である。具体的には、図8はTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。図9は図8の断面図である。断面位置は図8のD−D‘線に沿った位置に対応している。なお、図9ではTFTアレイ基板とCF基板をあわせて図示している。ここでは、チャネルエッチ型のTFT50が形成されている場合について例示的に説明をする。
【0041】
本実施形態は、画素構成以外の液晶表示装置の全体構成は実施の形態1と共通であるが、画素構成は、上述の実施の形態2で説明した画素構成に加え、高抵抗部51を覆うようにゲート絶縁膜11と基板10の間に遮光層52が形成されている。
【0042】
遮光層52は、走査線43及びゲート電極1と同一の工程で形成することにより追加の工程が必要なく所定の性能を達成することができる。
【0043】
高抵抗部51を非晶質Siなどの光照射により比抵抗が変化する材質を用いる場合には、バックライトからの光が高抵抗部51に直接入射するため比抵抗が大幅に変化するが、遮光層52を形成することにより比抵抗の変化を抑えることができ、上述の高抵抗部51による電荷放出効果を安定して達成することができる。
【0044】
なお、遮光層52は高抵抗部51の全体を覆うように配置しているが、部分的に配置してもよい。抵抗変動を最小限に抑えるために必要な領域に部分的に配置しても同等の効果が得られる。また、遮光層52はゲート絶縁膜11と基板10の間に配置したが、それ以外の位置に配置してもよい。さらに、遮光層52は実施の形態1で説明した画素電極6と隣接画素電極8を高抵抗層で接続するような構造に用いても良い。
【0045】
実施の形態4.
上述した実施の形態では、画素電極が共通電極7、信号線等と電気的に接続されているため、液晶表示装置の電源をオフした後に画素電極に保持された電荷が短時間に放出されることを説明した。本実施形態では、この高抵抗部51の抵抗値の最適範囲について説明する。
【0046】
まず、抵抗値の下限について説明する。高抵抗部51の抵抗値が低すぎると、液晶表示装置の表示の際に画素電極6に電荷が保持されなくなり、所定の表示ができなくなる。抵抗値の下限は液晶表示装置の電源がオンの状態で考慮する必要がある。液晶表示装置の画素の静電容量はおおよそ液晶容量48と補助容量49の和で表すことができる。この和は液晶表示装置の画素の大きさや液晶層の厚みや補助容量の大きさにより異なるが、直視型の液晶表示装置の場合はおおよそ0.1〜3pF(ピコファラッド)程度の値をもつ。ここでは1pFとして考える。走査線43は一般的には60Hzの周期でスキャンされるため、16.67msecおきに画素の電荷の書き換えが行われる。液晶に印加される電圧は最大で3〜5V程度であるので、ここでは5Vとして考える。画素に保持される電荷は1回の書き換え周期あたり99%以上保持されていれば表示品位を低減することは無いので、16.67msec後に4.95Vの電圧を維持するためには、電荷保存則とキルヒホッフの法則から計算上1.7TΩ(テラオーム)以上の抵抗があればよい。よって高抵抗部51は1.7TΩが抵抗値のおおよその下限となる。なお抵抗と容量の積であらわす時定数に置き換えると1.7secとなる。
【0047】
つぎに、抵抗値の上限について説明する。高抵抗部51の抵抗値が高すぎると、液晶表示装置の電源をオフした後に電荷が十分に放電されないこととなり、所定の効果が得られないことになる。抵抗値の上限は液晶表示装置の電源がオフの状態で考慮する必要がある。実用的には、焼付き現象を防ぐためには3時間程度で電荷がほぼ放出されればよい。3時間後に電荷が99%放出される抵抗値を計算すると2.4PΩ(ペタオーム)となる。よって高抵抗部51は2.7PΩが抵抗値のおおよその上限となる。なお抵抗と容量の積であらわす時定数に置き換えると2400secとなる。
【0048】
さらに、高抵抗部51の具体的なパターンサイズについて説明する。非晶質のSiを例として説明する。非晶質Siの比抵抗は1×106Ω・m程度であるが、液晶表示装置が電源オンの状態の時でバックライトからの光が入射している場合は比抵抗が低下する。液晶表示装置に用いられるバックライトの光強度は数千cd/m2程度であるが、この程度の光入射時には比抵抗はほぼ1/10に低下する。液晶表示装置の電源オンのときの非晶質Siの比抵抗を1×105Ω・mとし、電源オフの時の比抵抗を1×106Ω・mとする。非晶質Siの膜厚を100nm、長さを20μm、幅を5μmとすれば、電源オン時の抵抗は4TΩとなり、電源オフ時の抵抗は40TΩとなり、前述の上限および下限の範囲内で高抵抗部51を形成することができる。
【0049】
なお、図6及び図7に示すように画素電極6と信号線44を接続するような構造の場合は上記の通りでよいが、図4及び図5に示すように画素電極6と隣接画素電極8を高抵抗部51で接続する場合には、走査線43に印加される電圧により高抵抗層の抵抗が非常に小さくなることを考慮する必要がある。具体的には、液晶表示装置の電源オン時には走査線43の直上及び5μm幅程度の範囲の非晶質Siは非常に抵抗値が低くなるため、走査線43の幅及びその前後5μmの範囲は抵抗が0になるとみなして、走査線43の幅が10μmの時には非晶質Siの長さを40μm、幅を5μm、厚さを100nmとすれば、電源オン時の抵抗は4TΩとなり電源オフ時の抵抗は80TΩとなるので、上述の範囲を満たす。また、実施の形態4に示すように遮光層52を配置した場合には遮光領域の非晶質Siの比抵抗が光非照射時の値として計算すればよい。
【0050】
さらに、高抵抗部51を配置したことによる画素47の開口率の低下について考える。画素47の大きさは例えば100μm×300μm程度であるので、高抵抗部51が画素全体に占める割合は非常に小さい。更に加えて高抵抗部51は構造上画素境界部近傍に配置されることになるが、画素境界部では対向基板20に配置されたブラックマトリックス22が配置されており、高抵抗部51は視認方向から見ると大半の領域がブラックマトリックス22に隠れた位置に配置されるため、高抵抗部51を配置したことによる表示エリアの減少は高抵抗部51の実際の面積より更に小さくてすむ。よって高抵抗部51を配置したことによる開口率の低下は非常に小さく、表示品位低下は非常に小さいといえる。
【0051】
上記のように高抵抗層の抵抗値の上限と下限を規定することにより、液晶表示装置の電源オン時の表示品位を下げることなく液晶表示装置の電源オフ時の焼付きを防止することができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示された範囲は無論のこと、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0053】
1 ゲート電極、2 半導体層、3 オーミックコンタクト層、4 ソース電極、
5 ドレイン電極、6 画素電極、7 共通電極、8 隣接画素電極、10 基板、
11 ゲート絶縁膜、12 層間絶縁膜、13 配向膜、19 液晶、20 対向基板、21 カラーフィルター、22 ブラックマトリックス、23 オーバーコート層、
24 配向膜、41 表示領域、42 額縁領域、43 走査線、44 信号線、
45 走査信号駆動回路、46 表示信号駆動回路、47 画素、48 液晶容量、
49 補助容量、50 TFT、51 高抵抗層、52 遮光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に設けられた複数の走査線と、前記走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、前記走査線及び前記信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、
前記画素電極のそれぞれは、隣り合う画素電極と所定の抵抗値を有する高抵抗部により互いに電気的に接続されたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
平行に設けられた複数の走査線と、前記走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、前記走査線及び前記信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、
前記画素電極のそれぞれは、信号線あるいは走査線と所定の抵抗値を有する高抵抗部により電気的に接続されたたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
平行に設けられた複数の走査線と、前記走査線と交差する方向に設けられた複数の信号線と、前記走査線及び前記信号線で区画された領域にそれぞれ画素電極と共通電極とを有し、これらの電極間に印加した電圧によりフリンジ電界を発生させて液晶を駆動するフリンジ・フィールド・スィッチングモードの液晶表示装置において、
前記画素電極のそれぞれは、所定の抵抗値を有する高抵抗部により接地されたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
高抵抗部の抵抗値が1.7TΩ〜2.4PΩであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
非晶質Siまたは結晶質Siのいずれか一方、あるいはこれらの混合層を用いて所定の抵抗値を有する高抵抗部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
高抵抗部に入射する外光を遮光する遮光層を備えたことを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−237671(P2011−237671A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110178(P2010−110178)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】