説明

減圧弁

【課題】減圧作動に対する一次圧の影響を抑えて二次圧を所定圧力に制御し、圧力変動に対して良好に応答させ、しかも減圧部材に付設したシール部材の寿命を長くする。
【解決手段】減圧弁室(10)に開口する出口路(11)の周囲に弁座(18)を形成する。減圧部材(19)にシール部材(20)を弁座(18)に対面させて設ける。作動室内のピストン部材を減圧部材(19)と連係する。減圧部材(19)と減圧弁室(10)内面との間に第1シール部(24)を設け、第1シール部(24)での第1シール面積(S1)を弁座シール面積(S0)よりも広くする。減圧部材(19)内にガス導入路(25)を形成し、入口路(9)を第1シール部(24)と弁座(18)との間の弁室内空間(A)に連通する。弁室内空間(A)よりも上流側で、ハウジング(5)と減圧部材(19)との間に第2シール部(26)を設ける。第2シール部(26)での第2シール面積(S2)を、第1シール面積(S1)と弁座シール面積(S0)との面積差と略等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減圧弁に関し、減圧部材の減圧作動に対する一次圧の影響を抑えて二次圧を所定圧力に制御できるうえ、圧力変動に対しても良好に応答でき、しかも減圧部材に設けたシール部材の寿命を長くできる、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の減圧弁には、減圧部材に設けて弁座に接離させるシール部材が、流入ガスの噴流に曝されて早期に損耗することを防止するため、減圧弁室に開口する出口路開口端の周囲に弁座を形成して、この弁座に対面させて上記のシール部を減圧部材に設けたものがある(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術1という。)。
【0003】
この従来技術1は、ハウジング内に入口路と減圧弁室と出口路とが順に形成してあり、この減圧弁室に開口する上記の出口路の開口端の周囲に弁座が形成してある。上記の減圧弁室内には減圧部材が弁座に対し進退可能に挿入してあり、この減圧部材にシール部材が上記の弁座に対面させて設けてある。上記のハウジング内には作動室が設けてあり、この作動室にピストン部材が摺動自在に挿入してある。このピストン部材の片側には受圧室が形成してあり、この受圧室を上記の出口路に連通して、この受圧室に流入するガス圧で上記のピストン部材を減圧弁室から離隔する方向に押圧するとともに、このピストン部材を開弁バネで減圧弁室側へ付勢してある。そして上記の出口路に開弁操作部材を挿通して、この開弁操作部材を介して上記の減圧部材と上記のピストン部材とを連係させてある。
【0004】
この従来技術1の減圧弁は、減圧弁室に流入したガスが減圧部材と弁座との間を流通して出口路に流出する。このとき、減圧部材に設けたシール部材は、出口路開口端の周囲に形成した弁座に対面しているため、減圧弁室から出口路へのガスの流れに対し、減圧部材の背面側に配置された状態となっており、減圧弁室を通過するガスがこのシール部材に吹き付けられることが防止されている。
そして、減圧弁室から流出したガスは上記の受圧室内に流入して上記のピストン部材に作用し、この二次圧と上記の開弁バネの弾圧力とのバランスにより、開弁操作部材を介して減圧部材を弁座に対し進退移動させ、これにより減圧弁室から流出するガス圧力が所定圧力に減圧される。
【0005】
しかしながらこの従来技術1では、上記のシール部材が弁座へ当接した際のシール面積分だけ、上記の減圧部材が減圧弁室内のガス圧力、即ち一次圧を受けて弁座側に付勢される。このため、例えばガス容器内の貯蔵ガスの消費等により一次圧力が変化すると、減圧部材がその影響を受けて進退移動し、この結果、二次圧が所定圧力から変動する問題があった。
【0006】
一方、一次圧が変動しても二次圧を所定圧力に維持できるように、上記の減圧部材の弁座当接部とは異なる部位にシール部を設けて一次圧を作用させた減圧弁がある(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術2という。)。
【0007】
即ちこの従来技術2は、例えば図5に示すように、ハウジング(51)内に装着空間(52)を形成して、この装着空間(52)内へハウジング(51)から第1筒部(53)と第2筒部(54)とを互いに対向させて突出してある。この第1筒部(53)内には入口路(55)が形成してあり、第2筒部(54)内には出口路(56)が形成してある。この第1筒部(53)の外側には、筒状の減圧部材(57)が進退移動可能に外嵌してあり、この減圧部材(57)の内部に減圧弁室(58)が形成してある。
【0008】
第2筒部(54)の先端には、上記の減圧部材(57)と対面させて弁座(59)が形成してあり、この弁座(59)にシール部材(60)を付設してある。上記の減圧部材(57)は、この弁座(59)に対し進退移動してシール部材(60)と接離するように構成してある。シール部材(60)から離隔した状態では、上記の入口路(55)と減圧弁室(58)と出口路(56)とが順に連通する。減圧部材(57)がシール部材(60)に当接した状態では、減圧弁室(58)と出口路(56)との連通が遮断される。
【0009】
上記の装着空間(52)には、ピストン部材(61)が装着空間(52)の内周面に保密摺動自在に挿入してあり、このピストン部材(61)と上記の減圧部材(57)とを一体に連結してある。このピストン部材(61)の片側には上記の出口路(56)と連通する受圧室(62)が形成してあり、この受圧室(62)内のガス圧力で減圧部材(57)が弁座(59)側へ近接する方向にピストン部材(61)を押圧してある。一方、上記のピストン部材(61)の他の片側には装着空間(52)内に開弁バネ(63)が配置してある。この開弁バネ(63)の弾圧力で、減圧部材(57)が弁座(59)から離隔する方向にピストン部材(61)を付勢してある。
【0010】
上記の減圧部材(57)と第1筒部(53)との間にはシール部(64)が保密摺動可能に設けてあり、上記の減圧弁室(58)は、このシール部(64)と上記の弁座(59)との間に形成される。このシール部(64)のシール面積(S)は、減圧部材(57)が弁座(59)のシール部材(60)へ当接した際の弁座シール面積(S0)とほぼ等しい広さに設定してある。
【0011】
この従来技術2では、減圧部材が減圧弁室に流入したガスの一次圧を受ける際、弁座シール面積(S0)と、シール部のシール面積(S)がほぼ等しいことから、この一次圧により減圧部材を弁座側へ付勢する押圧力が、弁座から離隔する方向へ付勢する押圧力と相殺される。この結果、減圧部材は一次圧の変動の影響をほとんど受けずに、ピストン部材に加わる受圧室内のガス圧力と開弁バネの弾圧力とのバランスで進退移動するので、ガスの消費などにより一次圧力が変化しても、二次圧が開弁バネの弾圧力に対応した所定圧力に維持される。
【0012】
しかしながら、この従来技術2では、上記の弁座に付設したシール部材が、減圧弁室を介して入口路の開口端に臨んでいるため、この減圧弁室に流入して出口路へ流出する高圧のガスがこのシール部材に噴き付けられ、この結果、このシール部材が早期に劣化する問題があった。さらにこの従来技術2では、減圧部材が筒状に形成されて減圧弁室の周壁を構成しており、大形で質量が大きいことから、急激な圧力変動に対する応答性が低く、二次圧を所定圧力に良好に維持できない虞もあった。
【0013】
【特許文献1】特開平2−11599号公報
【特許文献2】特開2004−38982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、減圧部材の減圧作動に対する一次圧の影響を抑えて二次圧を所定圧力に制御できるうえ、圧力変動に対しても良好に応答でき、しかも減圧部材に設けたシール部材の寿命を長くできる、減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明は減圧弁に関し、ハウジング(5)内に、入口路(9)と減圧弁室(10)と出口路(11)とを順に形成し、上記の減圧弁室(10)に開口する上記の出口路(11)の開口端の周囲に弁座(18)を形成し、上記の減圧弁室(10)内に減圧部材(19)を上記の弁座(18)に対し進退可能に挿入して、この減圧部材(19)にシール部材(20)を弁座(18)に対面させて設け、上記のハウジング(5)内に作動室(14)を設け、この作動室(14)にピストン部材(27)を保密摺動自在に挿入して、このピストン部材(27)の片側に受圧室(28)を形成し、この受圧室(28)を上記の出口路(11)に連通して、この受圧室(28)に流入するガス圧で上記のピストン部材(27)を減圧弁室(10)から離隔する方向に付勢するとともに、ハウジング(5)内に設けた開弁バネ(30)でこのピストン部材(27)を減圧弁室(10)側へ付勢し、上記の出口路(11)に開弁操作部材(21)を挿通して、この開弁操作部材(21)を介して上記の減圧部材(19)と上記のピストン部材(27)とを互いに連係させた減圧弁であって、
上記の減圧部材(19)と減圧弁室(10)の内面との間に、第1シール部(24)を保密摺動自在に設け、この第1シール部(24)による第1シール面積(S1)を、弁座(18)へ当接したシール部材(20)による弁座シール面積(S0)よりも広く設定し、上記の減圧部材(19)内にガス導入路(25)を形成し、このガス導入路(25)を介して上記の入口路(9)を、上記の第1シール部(24)と弁座(18)との間の弁室内空間(A)に連通し、この弁室内空間(A)よりも上流側で、ハウジング(5)またはこれに固定した部材(22)と上記の減圧部材(19)との間に、第2シール部(26)を保密摺動自在に設け、この第2シール部(26)による第2シール面積(S2)を、上記の第1シール面積(S1)と弁座シール面積(S0)との面積差と略等しい広さに設定したことを特徴とする。
【0016】
上記の入口路から減圧弁室に流入して出口路に向かうガスは、減圧部材の弁座と対面する部位を迂回するように流れる。そしてこの減圧部材に設けたシール部材は、出口路開口端の周囲に形成した弁座に対面させてあり、減圧弁室から出口路へのガスの流れに対し、減圧部材の背面側に配置された状態となっているため、このシール部材が、減圧弁室を通過するガスの噴流に曝されることがない。
【0017】
上記のガスは、減圧部材と弁座との隙間を通過して出口路へ流出する。このとき、第1シール部と弁座との間の弁室内空間に流入したガスの一次圧により、弁座シール面積とこれよりも大きい第1シール面積との面積差に応じて、減圧部材が弁座から離隔する方向へ押圧される。これに対し上記の第2シール部に加わる一次圧により、減圧部材が第2シール面積に応じて弁座側へ押圧される。この第2シール面積は上記の面積差と略等しい広さであることから、減圧部材に加わる一次圧の押圧力は互いに相殺される。なお、ここで上記の第2シール面積が上記の面積差と略等しい広さとは、各部材の製作上の寸法公差や組付誤差などによる相違がある場合を含む。
【0018】
上記の出口路へ流出したガスは、一部が上記の受圧室内に流入し、上記のピストン部材を開弁バネの弾圧力に抗して押圧する。上記の減圧部材はこのピストン部材に開弁操作部材を介して連係してあるので、受圧室内に流入したガスの二次圧と開弁バネの弾圧力とのバランスで弁座に対し進退移動し、これにより出口路へ流出するガスの二次圧が所定圧力に維持される。
【0019】
上記の減圧部材は、減圧弁室内に挿入できるように小形に形成され、上記の第1シール部や第2シール部が形成されておればよく、減圧部材や減圧弁室は特定の構造や形状に限定されない。しかし上記の入口路側から減圧弁室内に向けて筒状の固定部材を挿入して、この固定部材をハウジングに保密状に固定し、この固定部材に上記の減圧部材を摺動可能に嵌合して、この固定部材と減圧部材との間に上記の第2シール部を設け、この固定部材の内部空間を介して上記の入口路をガス導入路に連通した場合には、減圧部材を一層小形に形成することができ、圧力変動に対する応答性を向上して、二次圧を所定圧力により精緻に制御できるので好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏することができる。
(1)上記の第2シール面積を、弁座シール面積とこれよりも大きい第1シール面積との面積差と略等しい広さに設定してあるので、減圧部材に加わる一次圧の押圧力は互いに相殺され、減圧部材の減圧作動に対する一次圧の影響を抑えることができる。
【0021】
(2)減圧弁室内に挿入される減圧部材は小形で軽量に形成されるので、急激な圧力変動に対しても良好に応答することができる。
【0022】
(3)入口路から減圧弁室に流入したガスは、減圧部材の弁座と対面する部位を迂回するように流れ、この減圧部材に設けたシール部材は、このガスの流れに対し減圧部材の背面側に配置されるので、このシール部材は、減圧弁室を通過するガスの噴流に曝されることがなく、ガスの吹付けによる劣化を防止して寿命を長くすることができる。
【0023】
(4)上記の入口路側から減圧弁室内に向けて筒状の固定部材を挿入して、この固定部材をハウジングに保密状に固定し、この固定部材に上記の減圧部材を摺動可能に嵌合して、この固定部材と減圧部材との間に上記の第2シール部を設け、この固定部材の内部空間を介して上記の入口路をガス導入路に連通した場合は、減圧部材を一層小形に形成することができ、圧力変動に対する応答性を向上して、二次圧を所定圧力により精緻に制御することができる。
【0024】
(5)上記のハウジングを、互いに離脱可能に連結固定された第1ハウジング部分と第2ハウジング部分とから構成して、第1ハウジング部分内に装着空間を形成するとともに、第2ハウジング部分内に上記の作動室を形成し、上記の装着空間を蓋する状態に区画部材を第1ハウジング部分に固定して、この区画部材と第1ハウジング部分との間に上記の減圧弁室を形成するとともに、この区画部材に上記の出口路を透設した場合には、減圧弁を弁室側ユニットと作動室側ユニットとから構成して互いに着脱可能に結合できる。この結果、弁室側ユニットを共用にして、作動室側ユニットのピストン部材や開弁バネを選定するだけで二次圧を所定の圧力に容易に変更して設定でき、安価に実施できるうえ、作動室側ユニットを変更するだけで、ハウジングに開口するガス出口の位置を変更できるので、ガス流路などの設計変更に対し容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す、減圧弁の断面図であり、図2は減圧部材によるシール面積の関係を説明する、弁室側ユニットの断面図である。
【0026】
図1に示すように、この減圧弁(1)はブロック状の減圧弁ユニット(2)に形成された装着穴(3)に装着されており、減圧弁ユニット(2)内に形成されたガス流路(4)を介して、例えば燃料電池などのガス消費機器に連結される。
上記の減圧弁(1)は、ハウジング(5)の外面のうち、上記の装着穴(3)から突出する一端に入口ノズル(6)を形成して、この入口ノズル(6)の端面にガス入口(7)が開口してあり、装着穴(3)の底部と対面する他端に、ガス出口(8)が開口してある。このハウジング(5)内には、上記のガス入口(7)とガス出口(8)との間に、入口路(9)と減圧弁室(10)と出口路(11)とが順に形成してある。
【0027】
上記のハウジング(5)は、上記の入口ノズル(6)側の第1ハウジング部分(5a)とガス出口(8)側の第2ハウジング部分(5b)とからなり、ボルト(12)で互いに離脱可能に固定してある。この第1ハウジング部分(5a)内には装着空間(13)が、第2ハウジング部分(5b)内には作動室(14)がそれぞれ互いに対面させて形成してあり、この第1ハウジング部分(5a)が弁室側ユニット(15)を構成し、第2ハウジング部分(5b)が作動室側ユニット(16)を構成している。
【0028】
上記の第1ハウジング部分(5a)には、上記の装着空間(13)を蓋する状態に有底筒状の区画部材(17)が螺着固定してある。この区画部材(17)内には、装着空間(13)に臨ませて上記の減圧弁室(10)が形成してあり、この区画部材(17)の底部の区画壁(17a)に上記の出口路(11)が透設してある。
【0029】
上記の減圧弁室(10)内には、この減圧弁室(10)に開口する上記の出口路(11)の開口端の周囲に弁座(18)が形成してあり、この弁座(18)に対し進退可能に減圧部材(19)が挿入してある。この減圧部材(19)には弁座(18)と対面する位置にシール部材(20)が付設してあり、減圧部材(19)の進退移動により上記の弁座(18)と接離するようにしてある。またこの減圧部材(19)の先端には開弁操作部材(21)が突設してあり、上記の出口路(11)内に挿通してある。
【0030】
上記の第1ハウジング部分(5a)には、上記の入口路(9)側から減圧弁室(10)内に向けて筒状の固定部材(22)が挿入してあり、この固定部材(22)の入口路側端部が第1ハウジング部分(5a)の内面に保密状に固定してある。この固定部材(22)の減圧弁室側の外周面には、上記の減圧部材(19)の後端部が外嵌してある。またこの減圧部材(19)と装着空間(13)の内面との間には付勢バネ(23)が装着してあり、この付勢バネ(23)の弾圧力で上記の減圧部材(19)を弁座(18)側へ付勢してある。
【0031】
上記の減圧部材(19)の外周面には、減圧弁室(10)の内周面との間に第1シール部(24)が保密摺動自在に設けてある。第1シール部(24)と弁座(18)との間で、減圧弁室(10)の内面と減圧部材(19)の外面との間に弁室内空間(A)が形成される。上記の減圧部材(19)の内部にはガス導入路(25)が形成してあり、上記の固定部材(22)の内部空間(22a)とこのガス導入路(25)とを順に介して、上記の入口路(9)を上記の弁室内空間(A)に連通してある。この弁室内空間(A)よりも上流側には、減圧部材(19)と上記の固定部材(22)との間に第2シール部(26)が保密摺動自在に設けてある。なお、この第2シール部(26)と上記の第1シール部(24)との間の減圧部材(19)の外面は、装着空間(13)を介して大気に連通してある。
【0032】
図2に示すように、上記の第1シール部(24)による第1シール面積(S1)は、弁座(18)へ当接したシール部材(20)による弁座シール面積(S0)よりも広く設定してある。一方、上記の第2シール部(26)による第2シール面積(S2)は、上記の第1シール面積(S1)と弁座シール面積(S0)との面積差(S1-S0)と略等しい広さに設定してある。
【0033】
図1に示すように、上記の作動室側ユニット(16)を構成する第2ハウジング部分(5b)には、上記の作動室(14)内にピストン部材(27)が進退移動自在に挿入してある。このピストン部材(27)の外周面は作動室(14)の内周面に保密摺動させてあり、このピストン部材(27)の片側に受圧室(28)が形成してある。この受圧室(28)には上記の出口路(11)の下流側端部が開口してあり、出口路(11)からこの受圧室(28)に流入したガスの二次圧で、上記のピストン部材(27)が減圧弁室(10)から離隔する方向に押圧される。
【0034】
一方、上記の作動室(14)には、このピストン部材(27)を挟んで受圧室(28)とは反対側に筒状のバネ受部材(29)が挿入してあり、このバネ受部材(29)とピストン部材(27)との間に開弁バネ(30)が装着してある。ピストン部材(27)は、この開弁バネ(30)の弾圧力により減圧弁室(10)側へ付勢される。
【0035】
前記の出口路(11)に挿通された開弁操作部材(21)は、先端を上記のピストン部材(27)に突き当ててある。この開弁操作部材(21)は、減圧部材(19)を介して前記の付勢バネ(23)でピストン部材(27)側に付勢されているので、減圧部材(19)はこの開弁操作部材(21)を介してピストン部材(27)と連係した状態となっており、ピストン部材(27)に追随して弁座(18)に対し進退移動する。
【0036】
上記のピストン部材(27)には、第2ハウジング部分(5b)に開口したガス出口(8)側に筒状の小径部(31)が延設してあり、この小径部(31)を上記のバネ受部材(29)内に保密摺動可能に挿入してある。このピストン部材(27)の内部には、上記の小径部(31)に亘ってガス導出路(32)が透設してあり、このガス導出路(32)と上記のバネ受部材(29)の内部空間(29a)とを順に介して、上記の受圧室(28)を上記のガス出口(8)に連通してある。
【0037】
次に、上記の減圧弁の作動について説明する。
ガス入口(7)から入口路(9)と固定部材(22)の内部空間(22a)とガス導入路(25)を順に経て減圧弁室(10)の弁室内空間(A)に流入したガスは、弁座(18)と減圧部材(19)との間を通過することで減圧されて出口路(11)へ流出する。このとき、ガス導入路(25)から弁室内空間(A)に流入したガスは、減圧部材(19)のうちの弁座(18)と対面する部位を迂回して流れる。このため、減圧部材(19)のこの部位に付設されたシール部材(20)は、上記のガスの噴流に曝されることがない。
【0038】
上記の減圧部材(19)は、弁室内空間(A)へ流入したガスにより、弁座シール面積(S0)に加わる一次圧で弁座(18)側へ押圧され、第1シール部(24)に加わる一次圧で弁座(18)から離隔する方向に押圧される。この第1シール部(24)の第1シール面積(S1)は、弁座シール面積(S0)よりも大きいことから、減圧部材(19)はその面積差(S1-S0)に加わる一次圧で弁座(18)から離隔する方向に押圧される。しかしながら、この弁室内空間(A)よりも上流側の上記の第2シール部(26)では、第2シール面積(S2)に加わる一次圧で減圧部材(19)が弁座(18)側へ押圧される。この第2シール面積(S2)は、上記の第1シール面積(S1)と弁座シール面積(S0)との面積差に略等しいことから、この第2シール部(S2)に加わる一次圧の押圧力が、上記の弁室内空間(A)に加わる一次圧の押圧力と略等しくなり、互いに相殺される。この結果、減圧部材(19)は弁座(18)に対し進退移動する際に、ガスの消費等の一次圧の変動による影響をほとんど受けることがない。
【0039】
上記の弁室内空間(A)から出口路(11)へ流出したガスは、一部が上記の受圧室(28)内に流入し、残部が上記のガス導出路(32)とバネ受部材(29)の内部空間(29a)とを順に経て、前記のガス出口(8)へ流出し、ガス流路(4)から図外のガス消費機器へ案内される。このとき、上記の受圧室(28)に流入したガスの二次圧と前記の開弁バネ(30)の弾圧力とのバランスで、上記のピストン部材(27)が進退移動する。上記の減圧部材(19)は、前記の開弁操作部材(21)を介してこのピストン部材(27)に連係させてあるので、ピストン部材(27)の進退移動に追随して弁座(18)に対し進退移動し、これにより上記の二次圧が所定の設定圧力に維持される。
【0040】
即ち、上記の受圧室(28)に流入するガスの二次圧が高くなると、上記の開弁バネ(30)の弾圧力に抗して、ピストン部材(27)が二次圧に押圧されて減圧弁室(10)から離隔する方向に移動する。このピストン部材(27)に開弁操作部材(21)を介して連係している上記の減圧部材(19)は、これに追随して弁座(18)に近接するので、この弁座(18)と減圧部材(19)との間の間隙が狭くなり、この結果、この間隙から流出するガスの二次圧が低下して所定の圧力に維持される。
逆に上記の受圧室(A)に流入するガスの二次圧が低くなると、この二次圧に抗して、上記のピストン部材(27)が開弁バネ(30)の弾圧力に付勢されて減圧弁室(10)側へ移動する。上記の減圧部材(19)は、開弁操作部材(21)を介しピストン部材(27)に押圧されて弁座(18)から離隔するので、この弁座(18)と減圧部材(19)との間の間隙が広くなり、この結果、この間隙から流出するガスの二次圧が上昇して所定圧力に維持される。
【0041】
上記の第1実施形態では、減圧部材(19)とピストン部材(27)とが、減圧部材(19)の先端に突設した開弁操作部材(21)を介して互いに連係してある。しかし、本発明ではこの開弁操作部材をピストン部材に突設してもよく、或いは減圧部材やピストン部材とは別の部材で構成してもよい。さらにこの開弁操作部材は、減圧部材とピストン部材の両者に固定することも可能である。
【0042】
しかし上記の第1実施形態のように、開弁操作部材(21)の先端を、ピストン部材(27)に突き当ててピストン部材(27)と分離可能に構成してあると、第1ハウジング部分(5a)と第2ハウジング部分(5b)との固定を解除するだけで弁室側ユニット(15)と作動室側ユニット(16)とを簡単に分離することができ、一方のユニットを簡単に交換できるうえ、二次圧が異常に高くなった場合などに、出口路よりも下流側の流路に滞留するガスを入口路側へ容易に流すことができる利点がある。
【0043】
即ち、例えば前記のガス流路(4)やガス消費機器の故障等で二次圧が異常に高くなった場合、ピストン部材(27)は減圧弁室(10)から離隔する方向に移動する。しかし、減圧部材(19)は付勢バネ(23)でピストン部材(27)側に押圧されているだけであるので、この付勢力よりも弁座シール面積(S0)に加わる二次圧の押圧力が大きくなると、減圧部材(19)は弁座(18)から離隔する。このため、入口路(9)内のガスを二次圧よりも低下させると、出口路(11)内のガスは減圧弁室(10)を通過して入口路(9)へ流出する。またこの減圧弁(1)を容器弁に付設した場合は、上記のガス出口(8)を充填口に兼用させ、このガス出口(8)から高圧のフレッシュガスを流入させると、ピストン部材(27)や減圧部材(19)が同様に作動するので、このフレッシュガスを出口路(11)と減圧弁室(10)と入口路(9)とを順に経てガス容器へ充填させることができる。
【0044】
上記の第1実施形態では、ガス入口(7)と入口路(9)と出口路(11)とガス出口(8)とを同一直線上に配置したので、減圧弁ユニット(2)への減圧弁(1)の装着や減圧弁ユニット(2)内のガス流路(4)の形成などを簡単にでき、好ましい。しかし本発明では、例えば、図3に示す第2実施形態のように、ガス出口(8)をハウジング(5)外面の任意の位置に形成することができる。
【0045】
即ち、この第2実施形態では、第2ハウジング部分(5b)の外周面にガス出口(8)を開口してあり、受圧室(28)とその周側面に透設したガス導出路(32)とを順に介して、区画部材(17)に透設した出口路(11)をこのガス出口(8)に連通してある。上記の出口路(11)から受圧室(28)に流入したガスは、入口路(9)とは直交方向に折れ曲り、ガス導出路(32)を経てガス出口(8)から流出する。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0046】
図4は本発明の第3実施形態を示す減圧弁の断面図である。
上記の第1実施形態や第2実施形態では、第1ハウジング部分(5a)内の入口路(9)側から減圧弁室(10)内に向けて固定部材(22)を挿入し、この固定部材(22)と減圧部材(19)との間に第2シール部(26)を設けたので、減圧部材(19)を小形に形成できて好ましい。これに対しこの第3実施形態では、第1ハウジング部分(5a)の内面と減圧部材(19)の入口路側端部との間に第2シール部(26)を保密摺動可能に設けてある。この第3実施形態では、上記の固定部材を省略して部品点数を少なくできるうえ、減圧部材(19)等の組付を簡略にできて、安価に実施できる利点がある。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0047】
上記の各実施形態で説明した減圧弁は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、ハウジングや減圧部材、減圧弁室、弁座、区画部材、受圧室、開弁操作部材、ピストン部材、固定部材、バネ受部材など、各部材の形状や構造、配置等を、これらの実施形態等に限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものであり、また、取り扱う流体も、水素ガスなどの特定の種類に限定されないことはいうまでもない。
【0048】
例えば上記の実施形態では第1ハウジング部分で弁室側ユニットを構成し、第2ハウジング部分で作動室側ユニットを構成したが、本発明では1つのハウジング内に減圧弁室と作動室とを形成してもよい。また上記の実施形態では減圧弁を減圧弁ユニットに装着する場合について説明したが、本発明の減圧弁は配管路の中間部だけでなく、容器弁のハウジングに組み込んでもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の減圧弁は、減圧部材の減圧作動に対する一次圧の影響を抑えて二次圧を所定圧力に制御できるうえ、圧力変動に対しても良好に応答でき、しかも減圧部材に設けたシール部材の寿命を長くできるので、水素ガス供給路など、各種のガス設備の配管路やガス容器に付設される減圧弁に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、減圧弁の断面図である。
【図2】第1実施形態の減圧弁の、弁室側ユニットの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す、減圧弁の断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す、減圧弁の断面図である。
【図5】従来技術2を示す、減圧弁の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…減圧弁
5…ハウジング
5a…第1ハウジング部分
5b…第2ハウジング部分
9…入口路
10…減圧弁室
11…出口路
13…装着空間
14…作動室
17…区画部材
18…弁座
19…減圧部材
20…シール部材
21…開弁操作部材
22…固定部材
22a…固定部材(22)の内部空間
24…第1シール部
25…ガス導入路
26…第2シール部
27…ピストン部材
28…受圧室
30…開弁バネ
A…弁室内空間
S0…弁座シール面積
S1…第1シール面積
S2…第2シール面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(5)内に、入口路(9)と減圧弁室(10)と出口路(11)とを順に形成し、
上記の減圧弁室(10)に開口する上記の出口路(11)の開口端の周囲に弁座(18)を形成し、
上記の減圧弁室(10)内に減圧部材(19)を上記の弁座(18)に対し進退可能に挿入して、この減圧部材(19)にシール部材(20)を弁座(18)に対面させて設け、
上記のハウジング(5)内に作動室(14)を設け、この作動室(14)にピストン部材(27)を保密摺動自在に挿入して、このピストン部材(27)の片側に受圧室(28)を形成し、
この受圧室(28)を上記の出口路(11)に連通して、この受圧室(28)に流入するガス圧で上記のピストン部材(27)を減圧弁室(10)から離隔する方向に付勢するとともに、ハウジング(5)内に設けた開弁バネ(30)でこのピストン部材(27)を減圧弁室(10)側へ付勢し、
上記の出口路(11)に開弁操作部材(21)を挿通して、この開弁操作部材(21)を介して上記の減圧部材(19)と上記のピストン部材(27)とを互いに連係させた減圧弁であって、
上記の減圧部材(19)と減圧弁室(10)の内面との間に、第1シール部(24)を保密摺動自在に設け、この第1シール部(24)による第1シール面積(S1)を、弁座(18)へ当接したシール部材(20)による弁座シール面積(S0)よりも広く設定し、
上記の減圧部材(19)内にガス導入路(25)を形成し、このガス導入路(25)を介して上記の入口路(9)を、上記の第1シール部(24)と弁座(18)との間の弁室内空間(A)に連通し、
この弁室内空間(A)よりも上流側で、ハウジング(5)またはこれに固定した部材(22)と上記の減圧部材(19)との間に、第2シール部(26)を保密摺動自在に設け、この第2シール部(26)による第2シール面積(S2)を、上記の第1シール面積(S1)と弁座シール面積(S0)との面積差(S1-S0)と略等しい広さに設定したことを特徴とする、減圧弁。
【請求項2】
上記の入口路(9)側から減圧弁室(10)内に向けて筒状の固定部材(22)を挿入して、この固定部材(22)をハウジング(5)に保密状に固定し、
この固定部材(22)に上記の減圧部材(19)を摺動可能に嵌合して、この固定部材(22)と減圧部材(19)との間に上記の第2シール部(26)を設け、この固定部材(22)の内部空間(22a)を介して上記の入口路(9)をガス導入路(25)に連通した、請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
上記のハウジング(5)を、互いに離脱可能に固定された第1ハウジング部分(5a)と第2ハウジング部分(5b)とから構成して、第1ハウジング部分(5a)内に装着空間(13)を形成するとともに、第2ハウジング部分(5b)内に上記の作動室(14)を形成し、
上記の装着空間(13)を蓋する状態に、区画部材(17)を第1ハウジング部分(5a)に固定して、この区画部材(17)と第1ハウジング部分(5a)との間に上記の減圧弁室(10)を形成するとともに、この区画部材(17)に上記の出口路(11)を透設した、請求項1または請求項2に記載の減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−176693(P2008−176693A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11303(P2007−11303)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】