減速装置
【課題】寸法精度の高い合成樹脂の射出成形品からなる間欠回転部材(ゼネバ歯車)を備えた減速装置を提供する。
【解決手段】回転部材2と、該回転部材2が1回転する毎に、該回転部材2に突設された駆動ピン2aにより所定角度だけ間欠的に回転する合成樹脂製の間欠回転部材3とをもって、減速装置を構成する。間欠回転部材3には、駆動ピン2aを挿入可能な複数の駆動ピン挿入溝3aを放射状に形成する。また、各駆動ピン挿入溝3aの間には、駆動ピン挿入溝3aを跨いで、その両側を連結する溝連結部6を形成する。これにより、射出成形時の合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝3aの変形を防止できる。
【解決手段】回転部材2と、該回転部材2が1回転する毎に、該回転部材2に突設された駆動ピン2aにより所定角度だけ間欠的に回転する合成樹脂製の間欠回転部材3とをもって、減速装置を構成する。間欠回転部材3には、駆動ピン2aを挿入可能な複数の駆動ピン挿入溝3aを放射状に形成する。また、各駆動ピン挿入溝3aの間には、駆動ピン挿入溝3aを跨いで、その両側を連結する溝連結部6を形成する。これにより、射出成形時の合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝3aの変形を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠回転部材を用いた減速装置に係り、特に、合成樹脂の射出成形品からなる間欠回転部材の寸法精度を高める手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用ステアリングの回転角度を検出するための回転センサとして、ゼネバ歯車(間欠回転部材)を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この回転センサは、ステアリングシャフトと共に回転するロータにロータギアが設けられ、ステアリングシャフトの周囲に固定されたステータに、ロータギアと噛み合う伝達ギアと、この伝達ギアに形成されたゼネバドグ(間欠回転部材の駆動ピン)によって間欠的に回転されるゼネバ歯車とが設けられている。また、ロータには、鉄等の導電性の材料からなり、周方向に幅が可変のリング部材と、このリング部材と対向に配置されたコイルとからなるロータセンシング部が設けられ、ゼネバ歯車には、段階的に異なる幅を有するリング状の銅箔板と、これと対向に配置された検出コイルとが設けられている。
【0003】
したがって、特許文献1に開示の回転センサは、ロータセンシング部を構成するコイルの出力信号からステアリングシャフトの1回転以内の回転角度を検出することができると共に、ゼネバ歯車と対向に配置された検出コイルの出力信号からステアリングシャフトの回転数を検出することができ、これによって、−900°〜+900°の回転範囲内のステアリングシャフトの回転角検出を可能にしている。
【0004】
なお、特許文献1に開示のゼネバ歯車は、回転軸の周方向に複数のスリット(駆動ピン挿入溝)が放射状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−191300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の回転センサのように、ゼネバ歯車を用いた装置においては、装置の軽量化及び低コスト化を図るため、合成樹脂の射出成形品からなるゼネバ歯車を用いることが検討されている。
【0007】
しかしながら、ゼネバ歯車は、比較的大型の本体部に細長いスリットを放射状に形成してなるので、射出成形法により製造すると、合成樹脂が硬化収縮したときに、その形状効果によりスリットの開口部が狭まるように変形し、特にスリットの数が多くなるほど変形が大きくなるため、寸法精度の高いゼネバ歯車を製造することが困難である。このため、このゼネバ歯車を回転センサに適用すると、ゼネバ歯車の回転を高精度に規制することが困難となり、検出信号の出力タイミングがずれて、回転数の正確な検出が困難になる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、寸法精度の高い合成樹脂の射出成形品からなる、寸法精度の高い間欠回転部材を備えた減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するため、第1に、回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材と、前記駆動ピン挿入溝内に挿入可能に形成された前記間欠回転部材の駆動ピンを備えた回転部材とを有し、前記回転部材に対して前記間欠回転部材を減速回転する減速装置において、前記間欠回転部材に、前記駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成するという構成にした。
【0010】
上述のように、合成樹脂を射出成形することによって間欠回転部材を製造すると、合成樹脂の硬化収縮が生じ、間欠回転部材の形状効果により、駆動ピン挿入溝の開口部が狭まるように間欠回転部材が変形する。しかし、間欠回転部材に、駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成すると、この溝連結部が補強部材として機能し、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝の変形を防止又は抑制することができるので、スリットの形状やスリットの数に影響されることなく、寸法精度の高い間欠回転部材を得ることができる。
【0011】
本発明は第2に、前記第1の減速装置において、前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面間に設けるという構成にした。
【0012】
かかる構成によると、溝連結部によって駆動ピン挿入溝の壁面間が補強されるので、合成樹脂の硬化収縮時に駆動ピン挿入溝の壁面に不均一な力が作用しにくく、当該壁面の傾斜を防止することができる。
【0013】
本発明は第3に、前記第1の減速装置において、前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く、前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に設けるという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、溝連結部を駆動ピン挿入溝の壁面間に設けないので、間欠回転部材を厚型化することなく駆動ピン挿入溝の深さを確保することができる。よって、駆動ピン挿入溝と回転部材に備えられた駆動ピンとの係合を確実に行うことができ、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。
【0015】
本発明は第4に、前記第3の減速装置において、前記駆動ピン挿入溝の壁面と前記溝連結部の表面との間に、段差を設けるという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、段差を設けた分だけ溝連結部と回転部材に備えられた駆動ピンとが干渉しにくくなるので、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。
【0017】
本発明は第5に、前記第3又は第4の減速装置において、前記溝連結部に沿って信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列が検出されるように、前記溝連結部にコードパターンを形成するという構成にした。
【0018】
かかる構成によると、溝連結部を信号検出用のコードパターンとして兼用できるので、溝連結部とコードパターンとを別個に形成する必要がなく、多回転絶対角検出装置に適用される間欠回転部材の構成を簡略化できる。また、間欠回転部材の構成が簡略化されることから、間欠回転部材に対する信号検出手段の配列を容易化することができる。
【0019】
本発明は第6に、前記第1乃至第4の減速装置において、前記駆動ピン挿入溝の壁面間又は前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に、前記駆動ピン挿入溝を覆う前記溝連結部を設けるという構成にした。
【0020】
かかる構成によると、間欠回転部材の形状を単純化できるので、形状効果による間欠回転部材の変形をより確実に防止することができる。
【0021】
本発明は第7に、前記第1乃至第6の減速装置において、前記間欠回転部材の表面側又は裏面側に信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列を検出されるように、前記間欠回転部材の回転軸と同心に、前記溝連結部とは別個のコードパターンを形成するという構成にした。
【0022】
かかる構成によると、溝連結部とは別個のコードパターンを備えるので、多回転絶対角検出装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の減速装置は、回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材に、駆動ピン挿入溝を跨いでその両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成するので、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝の変形を防止又は抑制することができ、合成樹脂製の間欠回転部材の寸法精度を高めることができる。よって、駆動ピンによる間欠回転部材の回転制御を高精度に行うことができ、多回転絶対角検出装置に適用した場合に高精度の回転数信号の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る減速装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る減速装置に適用される間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図3】第2実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図4】第3実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図5】第4実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図6】多回転絶対角検出装置の機構部の第1例を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】多回転絶対角検出装置に備えられる磁気センサの構成図である。
【図9】多回転絶対角検出装置に備えられる信号処理部の構成図である。
【図10】多回転絶対角検出装置の動作説明図である。
【図11】多回転絶対角検出装置の機構部の第2例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る減速装置の実施形態を、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る減速装置の構成図、図2は第1実施形態に係る減速装置に適用される間欠回転部材の一部拡大斜視図、図3は第2実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図、図4は第3実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図、図5は第4実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【0026】
第1実施形態に係る減速装置は、図1に示すように、回転部材2と、該回転部材2が1回転する毎に、該回転部材2に突設された駆動ピン2aにより所定角度だけ間欠的に回転する合成樹脂製の間欠回転部材3とから主に構成されている。間欠回転部材3は、射出成型法により製造される。
【0027】
間欠回転部材3は、駆動ピン2aを挿入可能な6つの駆動ピン挿入溝3aが間欠回転部材3の回転軸を中心に等間隔な放射状に形成されており、回転部材2が1回転する毎に駆動ピン挿入溝3aの1ピッチ分、即ち、60度ずつ間欠的に回転し、その回転の前後では停止する。
【0028】
間欠回転部材3の裏面側には、図2に示すように、駆動ピン挿入溝3aを跨いで、該駆動ピン挿入溝3aの両側を連結する溝連結部6が、間欠回転部材3の裏面との間に若干の段差3bを有するように全周にわたって形成されている。このように、間欠回転部材3に、駆動ピン挿入溝3aを跨いでその両側を連結する溝連結部6を形成すると、この溝連結部6が補強部材として機能し、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝3aの変形を防止又は抑制できるので、寸法精度の高い間欠回転部材とすることができる。したがって、この間欠回転部材3を備えた減速装置を多回転絶対角検出装置に適用した場合、高精度の回転数信号の検出が可能になると共に、回転センサの軽量化及び低コスト化を図ることができる。また、溝連結部6の表面と間欠回転部材3の裏面との間に若干の段差3bを設けると、溝連結部6と回転部材2に突設された駆動ピン2aとが干渉しにくくなるので、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。なお、駆動ピン挿入溝3aの溝深さdが十分に大きく、溝連結部6と駆動ピン2aとの干渉を生じない場合には、段差3bを省略することもできる。
【0029】
本例の間欠回転部材3においては、溝連結部6が、これに沿って信号検出手段を配置したとき、間欠回転部材3の回転に伴って所要のデジタル信号を検出するためのコードパターンになっている。このようにすると、溝連結部6を回転検出用のコードパターンとして兼用できるので、溝連結部6とコードパターンとを別個に形成する必要がなく、間欠回転部材3の構成を簡略化できると共に、間欠回転部材3に対する信号検出手段の配列を容易化することができる。なお、信号検出手段としては、光学式、磁気式又は抵抗式などの各種のものを用いることができ、溝連結部6は、使用する信号検出手段の種類に応じた適宜の物性を有するように構成される。
【0030】
さらに、本例の間欠回転部材3には、図1に示すように、溝連結部6と同心状に配置された突条をもって、第2のコードパターン7が形成されている。もちろん、コードパターンが不要な用途に適用する場合には、これを省略することもできる。
【0031】
第2実施形態に係る間欠回転部材3は、図3に示すように、駆動ピン挿入溝3aの溝長さLに比べて細幅に形成された1本の溝連結部6を、駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたことを特徴とする。このようにすると、間欠回転部材3の射出成形時に、溝連結部6が補強部材として機能するので、合成樹脂の硬化収縮を生じた場合にも、駆動ピン挿入溝3aの壁面が傾斜しにくく、高精度の間欠回転部材3を製造することができる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0032】
第3実施形態に係る間欠回転部材3は、図4に示すように、駆動ピン挿入溝3aの溝長さに比べて細幅に形成された複数本(図4の例では、2本)の溝連結部6を、駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたことを特徴とする。このように、溝連結部6の本数を増加することにより、射出成形時における駆動ピン挿入溝3aの変形をより小さくすることができる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0033】
第4実施形態に係る間欠回転部材3は、図5に示すように、駆動ピン挿入溝3aを完全に覆うように溝連結部6を形成したことを特徴とする。このようにすると、間欠回転部材3の形状を極めて簡略化できるので、形状効果による間欠回転部材3の変形をより確実に防止することができる。なお、図5の例では、溝連結部6を駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたが、かかる構成に代えて、溝連結部6を、間欠回転部材3の表面側又は裏面側に形成することもできる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0034】
なお、第2実施形態乃至第5実施形態に係る間欠回転部材3についても、第1実施形態に係る間欠回転部材3と同様に、必要に応じて所要数のコードパターンを形成することができる。これにより、多回転絶対角検出装置への適用が可能になる。
【0035】
以下、本発明に係る減速装置を用いた多回転絶対角検出装置を、第1実施形態に係る減速装置を用いた場合を例にとって説明する。
【0036】
〈多回転絶対角検出装置の第1例〉
図6は多回転絶対角検出装置の機構部の第1例を示す平面図、図7は図6のA−A線に沿う断面図、図8は多回転絶対角検出装置に備えられる磁気センサの構成図、図9は多回転絶対角検出装置に備えられる信号処理部の構成図、図10は多回転絶対角検出装置の動作説明図である。
【0037】
図6及び図7に示すように、本例の多回転絶対角検出装置の機構部は、回転体1と、回転体1の回転に連動し回転体1に対して増速回転する従動回転部材2(図1乃至図5に示した回転部材2を適用する。)と、従動回転部材2に突設される駆動ピン2aと係合して回転体1に対し減速回転するゼネバ歯車からなる間欠回転部材3(図1乃至図5に示した間欠回転部材3を適用する。)と、従動回転部材2の回転中心に取り付けられた磁石4と、磁石4と対向に配置され、従動回転部材2の1回転を1周期とするsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号を出力する磁気センサ5と、間欠回転部材3の回転軸を中心とする円周上に形成された第1及び第2のコードパターン6,7と、第1コードパターン6に対向して配置された第1乃至第6の検出素子8〜13と、第2コードパターン7に対向して配置された第7検出素子14と、磁気センサ5及び第1乃至第7の検出素子8〜14を実装する回路基板15とから主に構成されている。なお、本例の多回転絶対角検出装置では、第1検出手段が磁石4及び磁気センサ5から構成され、第2検出手段が第1,第2のコードパターン6,7と第1乃至第7の検出素子8〜14とから構成される。
【0038】
回転体1は、例えば自動車のステアリングシャフトなどに連結され、1回転以上の有限の角度範囲内で回転する。本例においては、中立位置(0度の位置)を中心として±2.5回転の角度範囲(±900°)で回転するものとする。
【0039】
回転体1と従動回転部材2とは、回転体1の外周部に形成された第1歯車21と従動回転部材2の外周部に形成された第2歯車22とを噛み合わせることにより連結されている。本例においては、第1歯車21の歯数が第2歯車22の歯数よりも多く設定されており、回転体1に対して従動回転部材2が増速回転するようになっている。回転体1に対する従動回転部材2の増速比は、後述する1セクタに割り振る角度の大きさによって決定されるが、本例においては、第1歯車の歯数を72、第2歯車の歯数を60として増速比が6/5に設定されており、回転体1が±2.5回転する間に従動回転部材2は±3回転する。従動回転部材2の下面には、図2に示すように、間欠回転部材3を間欠回転させるための駆動ピン2aが突設されている。
【0040】
磁気センサ5は、図7に示すように、回路基板15に実装され、所要のクリアランスを介して磁石4と対向に配置される。この磁気センサ5は、図8に示すように、4個の磁気検出素子5a〜5dからなり、各磁気検出素子5a〜5dは、短辺方向に磁化された2つの長方形の磁気抵抗素子5A,5Aの組みから構成されている。各磁気検出素子5a〜5dは、磁化方向が互いに直交するように組み合わされて、計8つの磁気抵抗素子5Aを抵抗素子とするブリッジ回路(図示略)が構成され、図示しない固定部材に固定された基板上に設けられる。それらの磁気抵抗素子5Aは、異方性磁気抵抗効果をもつ強磁性体膜からなり、その抵抗値が磁気センサに作用する磁界の向き(磁界の方向変化)に応じて変化することを利用して従動回転部材2の回転角を検出する。なお、磁気検出素子としては、磁気抵抗素子のほかにホール素子、磁気誘導素子などを用いることもできるが、直流駆動することができ、温度変化による出力変動が小さいことから磁気抵抗素子が特に適する。
【0041】
各磁気検出素子5a〜5dは、磁石4の回転中心Xと同心の円周上に等分に配置される。したがって、磁石4の回転に伴い、磁気検出素子5a〜5dからは、図10(C)に示すように、位相が磁石4の回転周期の1/4(90°)ずつずれたsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が出力される。なお、本例の多回転角検出装置は、回転体1が1回転する間に磁石4が1.2回転するように歯車21,22の歯数が設定されているので、回転体1が1回転する間に磁気検出素子5a〜5dからは、sinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が1.2周期分出力される。このように第1検出手段を構成すると、簡単な構成でアナログ信号を容易に生成することができる。
【0042】
間欠回転部材3は、上述のように、駆動ピン2aを挿入可能な6つの駆動ピン挿入溝3aが間欠回転部材3の回転軸を中心に放射状に形成されており、従動回転部材2が1回転(360°回転)する毎に駆動ピン挿入溝3aの1ピッチ分、即ち、60度ずつ間欠的に回転し、その回転の前後では停止する。
【0043】
第1及び第2のコードパターン6,7は、遮光板をもって構成されており、光学式の信号検出手段を用いて信号の検出が行えるようになっている。
【0044】
第1乃至第7の検出素子8〜14としては、発光素子と受光素子とが一体に形成されたフォトインタラプタが用いられる。これら第1乃至第7の検出素子8〜14は、第1又は第2のコードパターン6,7を介してその両側に発光素子と受光素子とが配置されるようにして回路基板15に実装される。本例において、図6に示す第1,第2のコードパターン6,7、及び第1乃至第7の検出素子8〜14の配列は、図10(E)に示すタイミングでD1〜D7のデジタル信号が出力されるように適宜設定される。
【0045】
次に、本例に係る多回転絶対角検出装置の信号処理部50について説明する。図9に示すように、本例の信号処理部50は、磁気センサ5から出力されるsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号を増幅する第1乃至第4の増幅器31〜34と、増幅されたsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号をA/D変換する第1乃至第4のA/D変換器35〜38と、A/D変換されたsinθ、cosθ、−sinθ又は−cosθからtan−1θの信号、すなわちsinθ/cosθ、−sinθ/−cosθ、cosθ/−sinθ又は−cosθ/sinθをそれぞれ算出すると共に、算出されたtan−1θの信号の1周期(180°)を1セクタ(300度)にするための演算を行う演算部30と、演算部30から出力される信号(アナログ信号)、及び第1乃至第7の検出素子8〜14から入力される信号(デジタル信号)に基づいて回転体1の回転角度を検出する角度検出部40とから主に構成されている。なお、角度検出部40は、予め記憶しているセクタと6ビットコード列及び7ビットコード列との対応関係に基づいて、第1乃至第7の検出素子8〜14から入力される信号からセクタを識別し、識別したセクタと演算部30から出力される信号とによって回転体1の回転角度を決定する。また、演算部30で複数に分割されるセクタ数は、回転体1に対する間欠回転部材3の減速比、具体的には回転体1の第1歯車21の歯数、従動回転部材2の第2歯車22の歯数、及び従動回転部材2の駆動ピン2aと係合する間欠回転部材3の溝3aの数に基づいて適宜設定される。
【0046】
次に、図10に基づいて多回転絶対角検出装置の動作を説明する。図10において、(A)は、回転体1及び従動回転部材2の回転角の関係、(B)は、回転体1の回転角と間欠回転部材3の回転角との関係、(C)は、回転体1の回転角に応じた磁気センサ5の出力信号、(D)は、回転体1の回転角に応じた演算部30からの出力信号、(E)は、回転体1の回転角に応じた第1乃至第7検出素子8〜14からの出力信号の説明図であり、(F)は、回転体1の回転角に応じたグレイコード1,2及び1ビットコードを示す説明図である。
【0047】
図10に示すように、回転体1が±900°回転(±2.5回転)すると、従動回転部材2が±1080°回転(±3回転)し、回転体1が300°回転する毎に間欠回転部材3が60°ずつ間欠的に回転する。また、従動回転部材2が回転体1と連動し回転すると、磁気センサ5から、sinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が出力され、演算部30から、回転体1の全可動範囲が6セクタをなすように、それらの各信号に基づいて演算された1周期300°の逆正接信号が出力される。角度検出部40は、演算部30から出力される逆正接信号であるアナログ信号と、第1乃至第7検出素子8〜14からの出力信号に基づいて組合わせたデジタルコード、すなわち後述するグレイコード1,2及び1ビットコードとを対応させて回転体1の絶対角度を検出する。以下、回転体1及び従動回転部材2の角度0°を0セクタに対応させて、グレイコード1,2とセクタとの関係を説明する。
【0048】
グレイコード1は、第1、第3及び第5の検出素子8,10,12の出力信号D1,D3,D5の組合せから作成される3ビットのグレイコードであり、回転体1が300度回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ回転体1の360度を超える有限の角度範囲の両端のグレイコードが同一になるように構成されている。グレイコード2は、第2、第4及び第6の検出素子9,11,13の出力信号D2,D4,D6から作成される3ビットのグレイコードであり、グレイコード1と同様に、300°回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ両端のグレイコードが同一になるように構成されている。
【0049】
グレイコード1のコード切換部とグレイコード2のコード切換部は、相互にずれるように設定される。グレイコード1とグレイコード2のコード切換部は、図10(D)に示す逆正接信号が直線上に立ち上がる部分から急激に立ち下がる部分への切り換わり量が各検出素子8〜13の取付誤差などに起因してずれる領域と重複しないように設定される。
【0050】
このようにすると、グレイコード1とグレイコード2とを組合わせた6ビットコードは、回転体1の回転にしたがって、例えば図10(F)に示すように、0セクタからプラス方向に「101101」、「001101」、「001001」へと1ビットずつ変化すると共に、マイナス方向へも同様に変化する循環型グレイコード列をなす。なお、それらの6ビットコードのうち、互いに異なるコードのグレイコード1,2を組合わせた6ビットコードは、セクタの切り換わる領域(セクタ切換領域)に対応し、一方、同一コードのグレイコード1,2を組合わせた6ビットコードは、セクタ切換領域を除いた領域に対応する。
【0051】
したがって、角度検出部40では、6ビットコードに基づいてセクタを識別できる。例えば、6ビットコード「101101」はそのコードの並びから0セクタに対応し、6ビットコード「001001」は+1セクタに対応することが判る。また、6ビットコード「001101」は0セクタと+1セクタ間に介在するセクタ切換領域に対応することが判るので、演算部30から出力されるtan−1θの信号の値を参照することによってどちらのセクタに対応するのかを正しく識別できる。例えば、「001101」に対応する演算部30からの出力値がAであるとき、出力値Aが所定値(例えば演算部30からの出力信号の最大値と最小値の平均値)よりも小さいことから+1セクタに対応することが判り、その結果+1セクタであることを正しく識別できる。
【0052】
ところで、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障すると、6ビットコード列に基づきその故障を直ちに判別できる場合と、その故障を判別できずに誤ったセクタを識別してしまう場合とが生じる。例えば、0セクタに対応する6ビットコードが「101101」であるところ、第2検出素子9が故障して「1」だけを出力して「111101」となる場合、本例による循環型グレイコードにはこのようなコードが存在しないので、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障していることを直ちに判別できる。一方、−1セクタと0セクタ間のセクタ切換領域にある本来0セクタ(6ビットコードが「101100」)が、もし第1検出素子8が故障して「0」を出力すると共に、間欠回転部材3などの寸法誤差や取付誤差の影響でコード切換部に位相ずれが生じて「001101」となる場合、演算部30からの出力値Aを参照して0セクタと+1セクタ間のセクタ切換領域「001101」であると判断してしまい、セクタ1と誤って判別することになる。
【0053】
そこで、6ビットコードに第7検出素子14の出力信号D7による1ビットコードを組合わせた7ビットコードに基づいてセクタを検出すれば、もし検出素子に故障が生じた場合、その故障の存在を判別することができ、セクタを誤って識別して角度検出するという問題を回避することができる。たとえば上述のように、−1セクタと0セクタ間のセクタ切換領域内の6ビットコード「101100」について、第1検出素子8が故障して「0」を出力し、かつ間欠回転部材3の寸法誤差や取付誤差の影響でコード切換部に位相ずれが生じて「001101」となる場合、6ビットコード「001101」に1ビットコード「1」を組合わせた7ビットコード「0011011」に基づきセクタを検出すれば、本例による7ビットコードにはこのようなコードが存在しないので、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障していることを判別できる。この1ビットコードは、セクタ切換領域と重複しないように、セクタ切換領域の直前で立上りかつ直後で立ち下がるデジタル信号にすると共に、ひとつおきのセクタ切換領域の一方を「1」、他方を「0」に設定することによって構成される。なお、1ビットコードの立上り位置及び立下り位置とセクタ切換領域との間に設定する位相差の大きさを、間欠回転部材3の寸法誤差や取付誤差の影響などで生じるコード切換部の位相ずれの大きさよりも小さく設定すると、7ビットコードでセクタを検出しても第1乃至第6の検出素子8〜13のうちのひとつが故障したことを判別できないことがある。
【0054】
このように、本例の多回転絶対角検出装置は、信号処理部においてデジタル信号に基づいて回転体1の全可動範囲±2.5回転(±900度)を複数のセクタに分割し、各セクタ内の回転角度を磁気センサ5から出力される信号から演算により求められるアナログ信号、すなわちtan−1θに対応させて回転体1の絶対角度を検出するので、信号処理部における角度検出を複雑化することなく、簡単な信号処理によって360度以上の角度範囲内の絶対角度を高精度に検出することができる。また、各セクタ内の角度を単調増加又は単調減少するデータに基づいて求めることができ、回転体の絶対角度を容易に検出することができる。さらに本例は、デジタル信号である6ビットコードが循環型グレイコードであるため、どの6ビットコードを回転中立位置に設定しても、回転体1の360度を超える有限の角度範囲内で回転体1が300度回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ両端の6ビットコードが同一となるので、それら6ビットコードのうち任意のひとつを選択して回転中立位置に対応させるだけで多回転絶対角検出装置の回転中立位置を設定でき、多回転絶対角検出装置の回転中立位置を極めて容易に設定できる。また、本例の多回転絶対角検出装置は、間欠回転部材3としてゼネバ歯車を用いたので、信頼性及び静粛性に優れる。
【0055】
〈多回転絶対角検出装置の第2例〉
第2例に係る多回転絶対角検出装置は、図11に示すように、回転体1と従動回転部材2との間に、回転体1の回転を従動回転部材2に伝達する中間回転部材23を配置したことを特徴とする。
【0056】
中間回転部材23は、歯数が異なる第3歯車24(歯数50)と第4歯車25(歯数30)を同心に形成したものであって、第3歯車24は回転体1に形成された第1歯車21と噛み合わされ、第4歯車25は従動回転部材2に形成された第2歯車22と噛み合わされる。その他の構成については、第1例に係る多回転絶対角検出装置と同じであるので、説明を省略する。
【0057】
図11の構成によれば、回転体1に対する間欠回転部材3の減速比が、回転体1に対する従動回転部材2の増速比と、中間回転部材23に対する従動回転部材2の減速比と、従動回転部材2に対する間欠回転部材3の減速比との積算値となり、従動回転部材2を介装しない第1実施形態の構成の減速比よりも大きく設定できるため、ゼネバ歯車のように減速比を大きくすると極端に大型化する間欠回転部材3を大きくすることなく全体の減速比を大きく設定できるので、多回転絶対角検出装置の小型化を図ることができる。
【0058】
なお、前記多回転絶対角検出装置においては、デジタルコード検出手段を遮光板とフォトインタラプタの組合せをもって形成したが、透孔や切り欠きなどの光学パターンとフォトインタラプタとの組合せ、磁気パターンと磁気検出素子との組合せ、又は抵抗体パターンと集電ブラシとの組合せなどをもって構成することもできる。
【0059】
また、前記多回転絶対角検出装置においては、合計7個の検出素子を用いて「グレイコード1」、「グレイコード2」及び「1ビットのコード」を生成したが、各検出素子の取付誤差等が問題にならない場合には、合計3個の検出素子を用いて3ビットのセクタ識別用グレイコードを1つだけ生成すれば足りる。
【符号の説明】
【0060】
2 回転部材(従動回転部材)
2a 駆動ピン
3 間欠回転部材
3a 駆動ピン挿入溝
6 溝連結部(第1コードパターン)
7 第2コードパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠回転部材を用いた減速装置に係り、特に、合成樹脂の射出成形品からなる間欠回転部材の寸法精度を高める手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用ステアリングの回転角度を検出するための回転センサとして、ゼネバ歯車(間欠回転部材)を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この回転センサは、ステアリングシャフトと共に回転するロータにロータギアが設けられ、ステアリングシャフトの周囲に固定されたステータに、ロータギアと噛み合う伝達ギアと、この伝達ギアに形成されたゼネバドグ(間欠回転部材の駆動ピン)によって間欠的に回転されるゼネバ歯車とが設けられている。また、ロータには、鉄等の導電性の材料からなり、周方向に幅が可変のリング部材と、このリング部材と対向に配置されたコイルとからなるロータセンシング部が設けられ、ゼネバ歯車には、段階的に異なる幅を有するリング状の銅箔板と、これと対向に配置された検出コイルとが設けられている。
【0003】
したがって、特許文献1に開示の回転センサは、ロータセンシング部を構成するコイルの出力信号からステアリングシャフトの1回転以内の回転角度を検出することができると共に、ゼネバ歯車と対向に配置された検出コイルの出力信号からステアリングシャフトの回転数を検出することができ、これによって、−900°〜+900°の回転範囲内のステアリングシャフトの回転角検出を可能にしている。
【0004】
なお、特許文献1に開示のゼネバ歯車は、回転軸の周方向に複数のスリット(駆動ピン挿入溝)が放射状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−191300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の回転センサのように、ゼネバ歯車を用いた装置においては、装置の軽量化及び低コスト化を図るため、合成樹脂の射出成形品からなるゼネバ歯車を用いることが検討されている。
【0007】
しかしながら、ゼネバ歯車は、比較的大型の本体部に細長いスリットを放射状に形成してなるので、射出成形法により製造すると、合成樹脂が硬化収縮したときに、その形状効果によりスリットの開口部が狭まるように変形し、特にスリットの数が多くなるほど変形が大きくなるため、寸法精度の高いゼネバ歯車を製造することが困難である。このため、このゼネバ歯車を回転センサに適用すると、ゼネバ歯車の回転を高精度に規制することが困難となり、検出信号の出力タイミングがずれて、回転数の正確な検出が困難になる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、寸法精度の高い合成樹脂の射出成形品からなる、寸法精度の高い間欠回転部材を備えた減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するため、第1に、回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材と、前記駆動ピン挿入溝内に挿入可能に形成された前記間欠回転部材の駆動ピンを備えた回転部材とを有し、前記回転部材に対して前記間欠回転部材を減速回転する減速装置において、前記間欠回転部材に、前記駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成するという構成にした。
【0010】
上述のように、合成樹脂を射出成形することによって間欠回転部材を製造すると、合成樹脂の硬化収縮が生じ、間欠回転部材の形状効果により、駆動ピン挿入溝の開口部が狭まるように間欠回転部材が変形する。しかし、間欠回転部材に、駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成すると、この溝連結部が補強部材として機能し、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝の変形を防止又は抑制することができるので、スリットの形状やスリットの数に影響されることなく、寸法精度の高い間欠回転部材を得ることができる。
【0011】
本発明は第2に、前記第1の減速装置において、前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面間に設けるという構成にした。
【0012】
かかる構成によると、溝連結部によって駆動ピン挿入溝の壁面間が補強されるので、合成樹脂の硬化収縮時に駆動ピン挿入溝の壁面に不均一な力が作用しにくく、当該壁面の傾斜を防止することができる。
【0013】
本発明は第3に、前記第1の減速装置において、前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く、前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に設けるという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、溝連結部を駆動ピン挿入溝の壁面間に設けないので、間欠回転部材を厚型化することなく駆動ピン挿入溝の深さを確保することができる。よって、駆動ピン挿入溝と回転部材に備えられた駆動ピンとの係合を確実に行うことができ、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。
【0015】
本発明は第4に、前記第3の減速装置において、前記駆動ピン挿入溝の壁面と前記溝連結部の表面との間に、段差を設けるという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、段差を設けた分だけ溝連結部と回転部材に備えられた駆動ピンとが干渉しにくくなるので、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。
【0017】
本発明は第5に、前記第3又は第4の減速装置において、前記溝連結部に沿って信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列が検出されるように、前記溝連結部にコードパターンを形成するという構成にした。
【0018】
かかる構成によると、溝連結部を信号検出用のコードパターンとして兼用できるので、溝連結部とコードパターンとを別個に形成する必要がなく、多回転絶対角検出装置に適用される間欠回転部材の構成を簡略化できる。また、間欠回転部材の構成が簡略化されることから、間欠回転部材に対する信号検出手段の配列を容易化することができる。
【0019】
本発明は第6に、前記第1乃至第4の減速装置において、前記駆動ピン挿入溝の壁面間又は前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に、前記駆動ピン挿入溝を覆う前記溝連結部を設けるという構成にした。
【0020】
かかる構成によると、間欠回転部材の形状を単純化できるので、形状効果による間欠回転部材の変形をより確実に防止することができる。
【0021】
本発明は第7に、前記第1乃至第6の減速装置において、前記間欠回転部材の表面側又は裏面側に信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列を検出されるように、前記間欠回転部材の回転軸と同心に、前記溝連結部とは別個のコードパターンを形成するという構成にした。
【0022】
かかる構成によると、溝連結部とは別個のコードパターンを備えるので、多回転絶対角検出装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の減速装置は、回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材に、駆動ピン挿入溝を跨いでその両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成するので、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝の変形を防止又は抑制することができ、合成樹脂製の間欠回転部材の寸法精度を高めることができる。よって、駆動ピンによる間欠回転部材の回転制御を高精度に行うことができ、多回転絶対角検出装置に適用した場合に高精度の回転数信号の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る減速装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る減速装置に適用される間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図3】第2実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図4】第3実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図5】第4実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【図6】多回転絶対角検出装置の機構部の第1例を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】多回転絶対角検出装置に備えられる磁気センサの構成図である。
【図9】多回転絶対角検出装置に備えられる信号処理部の構成図である。
【図10】多回転絶対角検出装置の動作説明図である。
【図11】多回転絶対角検出装置の機構部の第2例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る減速装置の実施形態を、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る減速装置の構成図、図2は第1実施形態に係る減速装置に適用される間欠回転部材の一部拡大斜視図、図3は第2実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図、図4は第3実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図、図5は第4実施形態に係る間欠回転部材の一部拡大斜視図である。
【0026】
第1実施形態に係る減速装置は、図1に示すように、回転部材2と、該回転部材2が1回転する毎に、該回転部材2に突設された駆動ピン2aにより所定角度だけ間欠的に回転する合成樹脂製の間欠回転部材3とから主に構成されている。間欠回転部材3は、射出成型法により製造される。
【0027】
間欠回転部材3は、駆動ピン2aを挿入可能な6つの駆動ピン挿入溝3aが間欠回転部材3の回転軸を中心に等間隔な放射状に形成されており、回転部材2が1回転する毎に駆動ピン挿入溝3aの1ピッチ分、即ち、60度ずつ間欠的に回転し、その回転の前後では停止する。
【0028】
間欠回転部材3の裏面側には、図2に示すように、駆動ピン挿入溝3aを跨いで、該駆動ピン挿入溝3aの両側を連結する溝連結部6が、間欠回転部材3の裏面との間に若干の段差3bを有するように全周にわたって形成されている。このように、間欠回転部材3に、駆動ピン挿入溝3aを跨いでその両側を連結する溝連結部6を形成すると、この溝連結部6が補強部材として機能し、合成樹脂の硬化収縮に起因する駆動ピン挿入溝3aの変形を防止又は抑制できるので、寸法精度の高い間欠回転部材とすることができる。したがって、この間欠回転部材3を備えた減速装置を多回転絶対角検出装置に適用した場合、高精度の回転数信号の検出が可能になると共に、回転センサの軽量化及び低コスト化を図ることができる。また、溝連結部6の表面と間欠回転部材3の裏面との間に若干の段差3bを設けると、溝連結部6と回転部材2に突設された駆動ピン2aとが干渉しにくくなるので、動作信頼性の高い減速装置とすることができる。なお、駆動ピン挿入溝3aの溝深さdが十分に大きく、溝連結部6と駆動ピン2aとの干渉を生じない場合には、段差3bを省略することもできる。
【0029】
本例の間欠回転部材3においては、溝連結部6が、これに沿って信号検出手段を配置したとき、間欠回転部材3の回転に伴って所要のデジタル信号を検出するためのコードパターンになっている。このようにすると、溝連結部6を回転検出用のコードパターンとして兼用できるので、溝連結部6とコードパターンとを別個に形成する必要がなく、間欠回転部材3の構成を簡略化できると共に、間欠回転部材3に対する信号検出手段の配列を容易化することができる。なお、信号検出手段としては、光学式、磁気式又は抵抗式などの各種のものを用いることができ、溝連結部6は、使用する信号検出手段の種類に応じた適宜の物性を有するように構成される。
【0030】
さらに、本例の間欠回転部材3には、図1に示すように、溝連結部6と同心状に配置された突条をもって、第2のコードパターン7が形成されている。もちろん、コードパターンが不要な用途に適用する場合には、これを省略することもできる。
【0031】
第2実施形態に係る間欠回転部材3は、図3に示すように、駆動ピン挿入溝3aの溝長さLに比べて細幅に形成された1本の溝連結部6を、駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたことを特徴とする。このようにすると、間欠回転部材3の射出成形時に、溝連結部6が補強部材として機能するので、合成樹脂の硬化収縮を生じた場合にも、駆動ピン挿入溝3aの壁面が傾斜しにくく、高精度の間欠回転部材3を製造することができる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0032】
第3実施形態に係る間欠回転部材3は、図4に示すように、駆動ピン挿入溝3aの溝長さに比べて細幅に形成された複数本(図4の例では、2本)の溝連結部6を、駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたことを特徴とする。このように、溝連結部6の本数を増加することにより、射出成形時における駆動ピン挿入溝3aの変形をより小さくすることができる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0033】
第4実施形態に係る間欠回転部材3は、図5に示すように、駆動ピン挿入溝3aを完全に覆うように溝連結部6を形成したことを特徴とする。このようにすると、間欠回転部材3の形状を極めて簡略化できるので、形状効果による間欠回転部材3の変形をより確実に防止することができる。なお、図5の例では、溝連結部6を駆動ピン挿入溝3aの壁面間に設けたが、かかる構成に代えて、溝連結部6を、間欠回転部材3の表面側又は裏面側に形成することもできる。その他については、第1実施形態に係る減速装置と同じである。
【0034】
なお、第2実施形態乃至第5実施形態に係る間欠回転部材3についても、第1実施形態に係る間欠回転部材3と同様に、必要に応じて所要数のコードパターンを形成することができる。これにより、多回転絶対角検出装置への適用が可能になる。
【0035】
以下、本発明に係る減速装置を用いた多回転絶対角検出装置を、第1実施形態に係る減速装置を用いた場合を例にとって説明する。
【0036】
〈多回転絶対角検出装置の第1例〉
図6は多回転絶対角検出装置の機構部の第1例を示す平面図、図7は図6のA−A線に沿う断面図、図8は多回転絶対角検出装置に備えられる磁気センサの構成図、図9は多回転絶対角検出装置に備えられる信号処理部の構成図、図10は多回転絶対角検出装置の動作説明図である。
【0037】
図6及び図7に示すように、本例の多回転絶対角検出装置の機構部は、回転体1と、回転体1の回転に連動し回転体1に対して増速回転する従動回転部材2(図1乃至図5に示した回転部材2を適用する。)と、従動回転部材2に突設される駆動ピン2aと係合して回転体1に対し減速回転するゼネバ歯車からなる間欠回転部材3(図1乃至図5に示した間欠回転部材3を適用する。)と、従動回転部材2の回転中心に取り付けられた磁石4と、磁石4と対向に配置され、従動回転部材2の1回転を1周期とするsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号を出力する磁気センサ5と、間欠回転部材3の回転軸を中心とする円周上に形成された第1及び第2のコードパターン6,7と、第1コードパターン6に対向して配置された第1乃至第6の検出素子8〜13と、第2コードパターン7に対向して配置された第7検出素子14と、磁気センサ5及び第1乃至第7の検出素子8〜14を実装する回路基板15とから主に構成されている。なお、本例の多回転絶対角検出装置では、第1検出手段が磁石4及び磁気センサ5から構成され、第2検出手段が第1,第2のコードパターン6,7と第1乃至第7の検出素子8〜14とから構成される。
【0038】
回転体1は、例えば自動車のステアリングシャフトなどに連結され、1回転以上の有限の角度範囲内で回転する。本例においては、中立位置(0度の位置)を中心として±2.5回転の角度範囲(±900°)で回転するものとする。
【0039】
回転体1と従動回転部材2とは、回転体1の外周部に形成された第1歯車21と従動回転部材2の外周部に形成された第2歯車22とを噛み合わせることにより連結されている。本例においては、第1歯車21の歯数が第2歯車22の歯数よりも多く設定されており、回転体1に対して従動回転部材2が増速回転するようになっている。回転体1に対する従動回転部材2の増速比は、後述する1セクタに割り振る角度の大きさによって決定されるが、本例においては、第1歯車の歯数を72、第2歯車の歯数を60として増速比が6/5に設定されており、回転体1が±2.5回転する間に従動回転部材2は±3回転する。従動回転部材2の下面には、図2に示すように、間欠回転部材3を間欠回転させるための駆動ピン2aが突設されている。
【0040】
磁気センサ5は、図7に示すように、回路基板15に実装され、所要のクリアランスを介して磁石4と対向に配置される。この磁気センサ5は、図8に示すように、4個の磁気検出素子5a〜5dからなり、各磁気検出素子5a〜5dは、短辺方向に磁化された2つの長方形の磁気抵抗素子5A,5Aの組みから構成されている。各磁気検出素子5a〜5dは、磁化方向が互いに直交するように組み合わされて、計8つの磁気抵抗素子5Aを抵抗素子とするブリッジ回路(図示略)が構成され、図示しない固定部材に固定された基板上に設けられる。それらの磁気抵抗素子5Aは、異方性磁気抵抗効果をもつ強磁性体膜からなり、その抵抗値が磁気センサに作用する磁界の向き(磁界の方向変化)に応じて変化することを利用して従動回転部材2の回転角を検出する。なお、磁気検出素子としては、磁気抵抗素子のほかにホール素子、磁気誘導素子などを用いることもできるが、直流駆動することができ、温度変化による出力変動が小さいことから磁気抵抗素子が特に適する。
【0041】
各磁気検出素子5a〜5dは、磁石4の回転中心Xと同心の円周上に等分に配置される。したがって、磁石4の回転に伴い、磁気検出素子5a〜5dからは、図10(C)に示すように、位相が磁石4の回転周期の1/4(90°)ずつずれたsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が出力される。なお、本例の多回転角検出装置は、回転体1が1回転する間に磁石4が1.2回転するように歯車21,22の歯数が設定されているので、回転体1が1回転する間に磁気検出素子5a〜5dからは、sinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が1.2周期分出力される。このように第1検出手段を構成すると、簡単な構成でアナログ信号を容易に生成することができる。
【0042】
間欠回転部材3は、上述のように、駆動ピン2aを挿入可能な6つの駆動ピン挿入溝3aが間欠回転部材3の回転軸を中心に放射状に形成されており、従動回転部材2が1回転(360°回転)する毎に駆動ピン挿入溝3aの1ピッチ分、即ち、60度ずつ間欠的に回転し、その回転の前後では停止する。
【0043】
第1及び第2のコードパターン6,7は、遮光板をもって構成されており、光学式の信号検出手段を用いて信号の検出が行えるようになっている。
【0044】
第1乃至第7の検出素子8〜14としては、発光素子と受光素子とが一体に形成されたフォトインタラプタが用いられる。これら第1乃至第7の検出素子8〜14は、第1又は第2のコードパターン6,7を介してその両側に発光素子と受光素子とが配置されるようにして回路基板15に実装される。本例において、図6に示す第1,第2のコードパターン6,7、及び第1乃至第7の検出素子8〜14の配列は、図10(E)に示すタイミングでD1〜D7のデジタル信号が出力されるように適宜設定される。
【0045】
次に、本例に係る多回転絶対角検出装置の信号処理部50について説明する。図9に示すように、本例の信号処理部50は、磁気センサ5から出力されるsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号を増幅する第1乃至第4の増幅器31〜34と、増幅されたsinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号をA/D変換する第1乃至第4のA/D変換器35〜38と、A/D変換されたsinθ、cosθ、−sinθ又は−cosθからtan−1θの信号、すなわちsinθ/cosθ、−sinθ/−cosθ、cosθ/−sinθ又は−cosθ/sinθをそれぞれ算出すると共に、算出されたtan−1θの信号の1周期(180°)を1セクタ(300度)にするための演算を行う演算部30と、演算部30から出力される信号(アナログ信号)、及び第1乃至第7の検出素子8〜14から入力される信号(デジタル信号)に基づいて回転体1の回転角度を検出する角度検出部40とから主に構成されている。なお、角度検出部40は、予め記憶しているセクタと6ビットコード列及び7ビットコード列との対応関係に基づいて、第1乃至第7の検出素子8〜14から入力される信号からセクタを識別し、識別したセクタと演算部30から出力される信号とによって回転体1の回転角度を決定する。また、演算部30で複数に分割されるセクタ数は、回転体1に対する間欠回転部材3の減速比、具体的には回転体1の第1歯車21の歯数、従動回転部材2の第2歯車22の歯数、及び従動回転部材2の駆動ピン2aと係合する間欠回転部材3の溝3aの数に基づいて適宜設定される。
【0046】
次に、図10に基づいて多回転絶対角検出装置の動作を説明する。図10において、(A)は、回転体1及び従動回転部材2の回転角の関係、(B)は、回転体1の回転角と間欠回転部材3の回転角との関係、(C)は、回転体1の回転角に応じた磁気センサ5の出力信号、(D)は、回転体1の回転角に応じた演算部30からの出力信号、(E)は、回転体1の回転角に応じた第1乃至第7検出素子8〜14からの出力信号の説明図であり、(F)は、回転体1の回転角に応じたグレイコード1,2及び1ビットコードを示す説明図である。
【0047】
図10に示すように、回転体1が±900°回転(±2.5回転)すると、従動回転部材2が±1080°回転(±3回転)し、回転体1が300°回転する毎に間欠回転部材3が60°ずつ間欠的に回転する。また、従動回転部材2が回転体1と連動し回転すると、磁気センサ5から、sinθ、cosθ、−sinθ、−cosθの各信号が出力され、演算部30から、回転体1の全可動範囲が6セクタをなすように、それらの各信号に基づいて演算された1周期300°の逆正接信号が出力される。角度検出部40は、演算部30から出力される逆正接信号であるアナログ信号と、第1乃至第7検出素子8〜14からの出力信号に基づいて組合わせたデジタルコード、すなわち後述するグレイコード1,2及び1ビットコードとを対応させて回転体1の絶対角度を検出する。以下、回転体1及び従動回転部材2の角度0°を0セクタに対応させて、グレイコード1,2とセクタとの関係を説明する。
【0048】
グレイコード1は、第1、第3及び第5の検出素子8,10,12の出力信号D1,D3,D5の組合せから作成される3ビットのグレイコードであり、回転体1が300度回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ回転体1の360度を超える有限の角度範囲の両端のグレイコードが同一になるように構成されている。グレイコード2は、第2、第4及び第6の検出素子9,11,13の出力信号D2,D4,D6から作成される3ビットのグレイコードであり、グレイコード1と同様に、300°回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ両端のグレイコードが同一になるように構成されている。
【0049】
グレイコード1のコード切換部とグレイコード2のコード切換部は、相互にずれるように設定される。グレイコード1とグレイコード2のコード切換部は、図10(D)に示す逆正接信号が直線上に立ち上がる部分から急激に立ち下がる部分への切り換わり量が各検出素子8〜13の取付誤差などに起因してずれる領域と重複しないように設定される。
【0050】
このようにすると、グレイコード1とグレイコード2とを組合わせた6ビットコードは、回転体1の回転にしたがって、例えば図10(F)に示すように、0セクタからプラス方向に「101101」、「001101」、「001001」へと1ビットずつ変化すると共に、マイナス方向へも同様に変化する循環型グレイコード列をなす。なお、それらの6ビットコードのうち、互いに異なるコードのグレイコード1,2を組合わせた6ビットコードは、セクタの切り換わる領域(セクタ切換領域)に対応し、一方、同一コードのグレイコード1,2を組合わせた6ビットコードは、セクタ切換領域を除いた領域に対応する。
【0051】
したがって、角度検出部40では、6ビットコードに基づいてセクタを識別できる。例えば、6ビットコード「101101」はそのコードの並びから0セクタに対応し、6ビットコード「001001」は+1セクタに対応することが判る。また、6ビットコード「001101」は0セクタと+1セクタ間に介在するセクタ切換領域に対応することが判るので、演算部30から出力されるtan−1θの信号の値を参照することによってどちらのセクタに対応するのかを正しく識別できる。例えば、「001101」に対応する演算部30からの出力値がAであるとき、出力値Aが所定値(例えば演算部30からの出力信号の最大値と最小値の平均値)よりも小さいことから+1セクタに対応することが判り、その結果+1セクタであることを正しく識別できる。
【0052】
ところで、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障すると、6ビットコード列に基づきその故障を直ちに判別できる場合と、その故障を判別できずに誤ったセクタを識別してしまう場合とが生じる。例えば、0セクタに対応する6ビットコードが「101101」であるところ、第2検出素子9が故障して「1」だけを出力して「111101」となる場合、本例による循環型グレイコードにはこのようなコードが存在しないので、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障していることを直ちに判別できる。一方、−1セクタと0セクタ間のセクタ切換領域にある本来0セクタ(6ビットコードが「101100」)が、もし第1検出素子8が故障して「0」を出力すると共に、間欠回転部材3などの寸法誤差や取付誤差の影響でコード切換部に位相ずれが生じて「001101」となる場合、演算部30からの出力値Aを参照して0セクタと+1セクタ間のセクタ切換領域「001101」であると判断してしまい、セクタ1と誤って判別することになる。
【0053】
そこで、6ビットコードに第7検出素子14の出力信号D7による1ビットコードを組合わせた7ビットコードに基づいてセクタを検出すれば、もし検出素子に故障が生じた場合、その故障の存在を判別することができ、セクタを誤って識別して角度検出するという問題を回避することができる。たとえば上述のように、−1セクタと0セクタ間のセクタ切換領域内の6ビットコード「101100」について、第1検出素子8が故障して「0」を出力し、かつ間欠回転部材3の寸法誤差や取付誤差の影響でコード切換部に位相ずれが生じて「001101」となる場合、6ビットコード「001101」に1ビットコード「1」を組合わせた7ビットコード「0011011」に基づきセクタを検出すれば、本例による7ビットコードにはこのようなコードが存在しないので、第1乃至第6検出素子8〜13のうちのひとつが故障していることを判別できる。この1ビットコードは、セクタ切換領域と重複しないように、セクタ切換領域の直前で立上りかつ直後で立ち下がるデジタル信号にすると共に、ひとつおきのセクタ切換領域の一方を「1」、他方を「0」に設定することによって構成される。なお、1ビットコードの立上り位置及び立下り位置とセクタ切換領域との間に設定する位相差の大きさを、間欠回転部材3の寸法誤差や取付誤差の影響などで生じるコード切換部の位相ずれの大きさよりも小さく設定すると、7ビットコードでセクタを検出しても第1乃至第6の検出素子8〜13のうちのひとつが故障したことを判別できないことがある。
【0054】
このように、本例の多回転絶対角検出装置は、信号処理部においてデジタル信号に基づいて回転体1の全可動範囲±2.5回転(±900度)を複数のセクタに分割し、各セクタ内の回転角度を磁気センサ5から出力される信号から演算により求められるアナログ信号、すなわちtan−1θに対応させて回転体1の絶対角度を検出するので、信号処理部における角度検出を複雑化することなく、簡単な信号処理によって360度以上の角度範囲内の絶対角度を高精度に検出することができる。また、各セクタ内の角度を単調増加又は単調減少するデータに基づいて求めることができ、回転体の絶対角度を容易に検出することができる。さらに本例は、デジタル信号である6ビットコードが循環型グレイコードであるため、どの6ビットコードを回転中立位置に設定しても、回転体1の360度を超える有限の角度範囲内で回転体1が300度回転する毎に1ビットずつ変化し、かつ両端の6ビットコードが同一となるので、それら6ビットコードのうち任意のひとつを選択して回転中立位置に対応させるだけで多回転絶対角検出装置の回転中立位置を設定でき、多回転絶対角検出装置の回転中立位置を極めて容易に設定できる。また、本例の多回転絶対角検出装置は、間欠回転部材3としてゼネバ歯車を用いたので、信頼性及び静粛性に優れる。
【0055】
〈多回転絶対角検出装置の第2例〉
第2例に係る多回転絶対角検出装置は、図11に示すように、回転体1と従動回転部材2との間に、回転体1の回転を従動回転部材2に伝達する中間回転部材23を配置したことを特徴とする。
【0056】
中間回転部材23は、歯数が異なる第3歯車24(歯数50)と第4歯車25(歯数30)を同心に形成したものであって、第3歯車24は回転体1に形成された第1歯車21と噛み合わされ、第4歯車25は従動回転部材2に形成された第2歯車22と噛み合わされる。その他の構成については、第1例に係る多回転絶対角検出装置と同じであるので、説明を省略する。
【0057】
図11の構成によれば、回転体1に対する間欠回転部材3の減速比が、回転体1に対する従動回転部材2の増速比と、中間回転部材23に対する従動回転部材2の減速比と、従動回転部材2に対する間欠回転部材3の減速比との積算値となり、従動回転部材2を介装しない第1実施形態の構成の減速比よりも大きく設定できるため、ゼネバ歯車のように減速比を大きくすると極端に大型化する間欠回転部材3を大きくすることなく全体の減速比を大きく設定できるので、多回転絶対角検出装置の小型化を図ることができる。
【0058】
なお、前記多回転絶対角検出装置においては、デジタルコード検出手段を遮光板とフォトインタラプタの組合せをもって形成したが、透孔や切り欠きなどの光学パターンとフォトインタラプタとの組合せ、磁気パターンと磁気検出素子との組合せ、又は抵抗体パターンと集電ブラシとの組合せなどをもって構成することもできる。
【0059】
また、前記多回転絶対角検出装置においては、合計7個の検出素子を用いて「グレイコード1」、「グレイコード2」及び「1ビットのコード」を生成したが、各検出素子の取付誤差等が問題にならない場合には、合計3個の検出素子を用いて3ビットのセクタ識別用グレイコードを1つだけ生成すれば足りる。
【符号の説明】
【0060】
2 回転部材(従動回転部材)
2a 駆動ピン
3 間欠回転部材
3a 駆動ピン挿入溝
6 溝連結部(第1コードパターン)
7 第2コードパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材と、前記駆動ピン挿入溝内に挿入可能に形成された前記間欠回転部材の駆動ピンを備えた回転部材とを有し、前記回転部材に対して前記間欠回転部材を減速回転する減速装置において、
前記間欠回転部材に、前記駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成したことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く、前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の減速装置。
【請求項4】
前記駆動ピン挿入溝の壁面と前記溝連結部の表面との間に、段差を設けたことを特徴とする請求項3に記載の減速装置。
【請求項5】
前記溝連結部に沿って信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列が検出されるように、前記溝連結部にコードパターンを形成したことを特徴とする請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項6】
前記駆動ピン挿入溝の壁面間又は前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に、前記駆動ピン挿入溝を覆う前記溝連結部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項7】
前記間欠回転部材の表面側又は裏面側に信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列を検出されるように、前記間欠回転部材の回転軸と同心に、前記溝連結部とは別個のコードパターンを形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項1】
回転軸の周方向に複数の駆動ピン挿入溝が放射状に形成された合成樹脂製の間欠回転部材と、前記駆動ピン挿入溝内に挿入可能に形成された前記間欠回転部材の駆動ピンを備えた回転部材とを有し、前記回転部材に対して前記間欠回転部材を減速回転する減速装置において、
前記間欠回転部材に、前記駆動ピン挿入溝を跨いで、その両側を連結する1又は複数の溝連結部を形成したことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記溝連結部を、前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く、前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の減速装置。
【請求項4】
前記駆動ピン挿入溝の壁面と前記溝連結部の表面との間に、段差を設けたことを特徴とする請求項3に記載の減速装置。
【請求項5】
前記溝連結部に沿って信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列が検出されるように、前記溝連結部にコードパターンを形成したことを特徴とする請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項6】
前記駆動ピン挿入溝の壁面間又は前記駆動ピン挿入溝の壁面を除く前記間欠回転部材の表面間又は裏面間に、前記駆動ピン挿入溝を覆う前記溝連結部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項7】
前記間欠回転部材の表面側又は裏面側に信号検出手段を配置したとき、前記間欠回転部材の回転に伴って前記信号検出手段から所要のデジタル信号列を検出されるように、前記間欠回転部材の回転軸と同心に、前記溝連結部とは別個のコードパターンを形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の減速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−175056(P2010−175056A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21561(P2009−21561)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]