説明

温度補償されている分光器及び光学機器

【課題】温度変化が起こったとしても分散特性の変化が十分に小さく、温度補償されている分光器とそのような分光器を使用した光学機器を提供する。
【解決手段】光が出射する出射部と、出射部の光出射側に配置された分散素子と、分散素子による分散光が入射する入射部と、出射部と入射部との間に配置され、分散光の入射部への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるような温度補償素子と、を備える。また、光学機器は、このような温度補償されている分光器を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償されている分光器及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分光技術を用いた装置が数多く提案されている。特許文献1には回折格子を用いた分光装置が、特許文献2には回折格子を用いた内視鏡がそれぞれ開示されている。また、特許文献3には、プリズムとデジタルマイクロミラーを用いて分光を行う顕微鏡が開示されている。
【0003】
また、特許文献4には光アドドロップ多重化装置という名称で、波長選択スイッチの基本的な構成が開示されている。
【0004】
ここで、波長選択スイッチとは、ROADM(大容量ネットワークに用いられる、波長多重化された光信号を、光信号のまま分岐/挿入が行えるシステムや技術)におけるノードにおかれるデバイスで、波長多重されている光信号の伝送経路の切換えを波長毎に行う光スイッチである。
【0005】
各ノードでは波長選択スイッチによって、波長多重された光信号から任意の波長の光信号を取り出すことや、波長多重された光信号に任意の波長の光を混ぜることが可能である。この波長選択スイッチにおいても回折格子が用いられている。
【0006】
また、特許文献5においては、光分散装置であって、分散素子として回折素子を備え、回折素子は温度に対して鈍感で、出射角度が変化しないものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−187550号公報
【特許文献2】特開2007−135989号公報
【特許文献3】特開2000−199855号公報
【特許文献4】特許第3937403号明細書
【特許文献5】特表2003−509714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5では、温度変化によって分散特性が変化することを課題としてあげその対策を行っている。しかし、温度変化によって分散特性が変化することの原因を回折格子の基板の熱膨張に求めているが、大気の屈折率の変化や分散素子内を光線が通る場合は、温度変化による分散素子自身の屈折率の変化が、分散特性の変化の主たる原因となりうる。
【0009】
特に高い屈折率をもつ材料を分散素子に使用している場合はその変化が大きい。このような理由で、従来の分光器では、温度変化に対する安定した分散特性をもつことは困難であった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は温度変化が起こったとしても分散特性の変化が十分に小さい分光器とそのような分光器を使用した光学機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分光器は、光が出射する出射部と、出射部の光出射側に配置された分散素子と、分散素子による分散光が入射する入射部と、出射部と入射部との間に配置され、分散光の入射部への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるような温度補償素子と、を備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、出射部から出射する光が波長多重された信号光であって、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(1)を満足することが望ましい。
【0013】
【数1】

【0014】
ただし、
θ1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する角度、
θ2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する角度、
Δθは、使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量である。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記分散素子はイマージョングレーティングであって、前記温度補償素子は偏向プリズムであることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記分散素子の媒質と前記温度補償素子の媒質とが同一であることが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記分散素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなり、
前記温度補償素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなり、
以下の数式(6)、(7)を同時に満たすことが望ましい。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、以下の数式(9)を満たすことが望ましい。
【0019】
【数2】

【0020】
また、本発明の光学機器は、上述の分光器と、
前記出射部と前記分散素子との間に配置された光学系と、
前記分散素子と前記入射部との間に配置された光偏向部材と、
を備え、
前記光偏向部材は複数の偏向素子で構成され、
前記複数の偏向素子は、互いに独立して制御可能であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記分散素子によって分散された前記信号光のうち、前記隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が以下の式(2)を満足することが望ましい。
【0022】
【数3】

【0023】
ただし、
y1は、波長λ1の信号光が前記入射部に到達する位置、
y2は、波長λ2の信号光が前記入射部に到達する位置、
Δyは、前記使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、温度変化が起こったとしても分散特性の変化が十分に小さい分光器とそのような分光器を使用した光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる顕微鏡を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる顕微鏡を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる波長選択スイッチを示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態にかかる波長選択スイッチを示す図である。
【図5】本発明の分散素子を説明する図である。
【図6】本発明の分散素子を説明する他の図である。
【図7】本発明の光学機器が備えるマイクロミラーアレイを説明する他の図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す平面図である。
【図9】実施例1に係る分光器の構成を示す図である。
【図10】実施例2に係る分光器の構成を示す図である。
【図11】実施例の偏向プリズムにおける光の偏向を示す図である。
【図12】実施例のグレーティングにおける光の分散を示す図である。
【図13】実施例のマイクロミラーアレイへの入射光を示す図である。
【図14】(a)はθ1、θ2を示す図、(b)はy1、y2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、初めに本発明の分光器及び光学機器に用いる分散素子について説明する。次に、この分散素子を備える光学機器について説明する。
【0027】
図6(b)は、本発明に係る分散素子200を示している。図6(b)において、分散素子200は屈折率が1よりも大きい媒質で形成されている。より具体的には、分散素子200はプリズムで構成されている。
【0028】
分散素子200は、光が入射する入射面201a、光が出射する出射面201b及び回折光学面201cを有する。ここで、回折光学面201cは、入射面201aから出射面201bに至る光路中に設けられている。分散素子200では、プリズムの同一面が入射面201aと出射面201bになっている。回折光学面201cには、反射型回折格子Gが形成されている。このように、分散素子200は、いわゆるイマージョングレーティングの構成を有している。
【0029】
上記のように、分散素子200は、反射型回折格子Gに対して光線が入射する側及び回折する側が、使用波長に対し透明で一様な媒質にて埋められている。媒質は、一般的には固体または液体である。例えば、シリコンを用いることができる。
【0030】
さらに、分散素子200は、図6(c)に示すように、別体の反射型回折格子Gを形成した平面部材230を、プリズム220に接合した構成としても良い。このとき、平面部材230とプリズム220とは、同一の媒質で形成することが望ましい。
【0031】
また、変形例として、図6(a)に示す分散素子300のような、透過型グリズムの構成とすることもできる。なお、参考として、図6(d)は、通常の反射回折格子の構成を示している。
【0032】
次に、図5を用いて、分散素子200をさらに詳細に説明する。図5において、分散素子200は屈折率が1よりも大きい媒質で形成されている。図5の分散素子200もプリズムで構成されている。分散素子200は、光が入射する入射面201a、光が出射する出射面201b及び回折光学面201cを有する。ここで、回折光学面201cは、入射面201aから出射面201bに至る光路中に設けられている。
【0033】
ここで、分散素子200に光が入射してから出射するまでについて詳細に検討する。
図5において、頂角が34度、入射面201aに対して12度入射で、かつ出射面201bに対して12度出射となるような媒質や格子本数を考えてみる。
【0034】
まずは、媒質が空気、つまり単なる反射型回折格子の場合を考えてみる。上述の入射角と出射角となるような格子本数は707.73本/mmである。また、各波長の出射角は以下の表1のとおりである。また、分散角は0.09307度となる。
【0035】
次に、分散素子200(プリズム)において、その媒質がOHARA社のS−BSL7である場合、使用波長における屈折率はおよそ1.5となる。このときの格子本数は1075.1本/mmである。また、各波長の出射角は以下の表1のとおりであり、分散角は0.13547度となる。この分散角は大気の場合と比べて1.46倍になっている。
【0036】
また、分散素子200(プリズム)において、その媒質がOHARA社のS−LAH60である場合、使用波長における屈折率がおよそ1.8となる。このときの格子本数は1293.6本/mmで、各波長の出射角は以下の表1のとおりであり、分散角は0.16061度となる。この分散角は大気の場合と比べて1.73倍になっている。
【0037】
また、分散素子(プリズム)において、その媒質がシリコンである場合、使用波長における屈折率がおよそ3.475となる。このときの格子本数は2509.9本/mmで、各波長の出射角は以下の表1のとおりであり、分散角は0.23298度となる。この分散角は大気の場合と比べて3.28倍になっている。
【0038】
【表1】

【0039】
なお上述の格子本数は以下の数式(3)、(4)で計算できる。
【0040】
【数4】

【0041】
ここで、n、θ、m(=1)、λ、pは、それぞれ、分散素子200(プリズム)の媒質の屈折率、入射角12度の光線が媒質に入ったときの屈折角、回折次数、使用波長、格子ピッチである。
【0042】
これらのことより、従来の反射型回折格子400(図6(a))よりも分散素子200の方が、格子本数が大きい回折格子が利用できるようになる。このため、分散を大きくすること、すなわち高い波長分解能が得られる。分散素子200の媒質の屈折率nを上げることにより、さらに格子本数を多くできる。このため、高分散な(波長分解能高い)分散素子が実現できる。
【0043】
なお、分散素子200では、内部に光線が入射する面と、内部から出射する面201aが共通であり、かつ、その面における入射角と出射角がほぼ等しいことが望ましい。このようにしておけば、その共通面に施すAR(反射防止)コートが1種類でよく、透過率を高くすることができる。また、ARコートの設計、施工も1種類で済ますことができる。
【0044】
なお、回折光学面Gにおける溝本数は1200本/mm以上であることが望ましい。
また、分散素子200の波長分解能Rは、次の数式(5)を満たしていることが望ましい。
【0045】
【数5】

【0046】
ここで、λは使用波長、Δλは隣接する分解したい2波長の差である。どちらの場合も高い波長分解能が得られる。
【0047】
つづいて、上述の構成の分散素子を適用した分光器及び光学機器について説明する。なお、以下の説明では、温度補償素子として偏向プリズムを使っている。
【0048】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る分光器及び光学機器について説明する。本光学機器は、顕微鏡(走査型光学顕微鏡装置)の蛍光検出系である。
【0049】
図1は、第1実施形態にかかる走査型光学顕微鏡装置の蛍光検出系の構成を示す図である。本実施形態の光学機器は、波長が488nm、568nm、647nmのレーザービームを同時発振するマルチラインKr−Arレーザー14と、波長が351nmのレーザービームを発振するArレーザー15を光源とする。各レーザーを出射したレーザービームはファイバーカップリングレンズ17を経てシングルモードファイバー18を通り走査型光学顕微鏡本体19へ導入される。マルチラインKr−Arレーザー14から発せられるレーザービームはレーザーラインフィルター16により励起波長を選択できる。
【0050】
走査型光学顕微鏡本体19に導入された各レーザービームは、ビームコリメートレンズ20で適切なビーム径を有する平行光束に変換され、ダイクロイックミラー21によってマルチラインKr−Arレーザー14からのレーザービームとArレーザー15からのレーザービームとが混合される。混合されたレーザービームは、励起用ダイクロイックミラー4で反射されてガルバノメータミラー等のX−Y走査光学系5で偏向され、瞳リレーレンズ6、対物レンズ7を介して、標本8上をレーザースポットによって走査することになる。
【0051】
レーザービームの照射により励起された標本8からの蛍光は、対物レンズ7からダイクロイックミラー4に至る経路を戻り、ダイクロイックミラー4を透過して結像レンズ10で集光され、共焦点絞り11を通過する。共焦点絞り11を通りコリメートレンズ22で平行光化された光束は、偏向プリズム12を経てグレーティング23に入射する。
グレーティング23としては、図5、図6の分散素子200と同様の構成の分散素子を用いる。
【0052】
グレーティング23に入射した光は、その各レーザー波長に特有の角度に分散されて出射され、さらに集光レンズ24を経てミラーアレイ25上に結像される。
なお、集光レンズ24は、シリンドリカルレンズ等スペクトル分解方向に屈折力を有する光学系との置き換えも可能である。
【0053】
ミラーアレイ25としては、図7に示す、デジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device、適宜「DMD」と呼ぶ)を用いることができる。
【0054】
図7は、ミラーアレイ(DMD)25の斜視構成を示す。複数のマイクロミラーM(偏向素子)が軸Yに沿って、1次元に配置されている。そして、マイクロミラーMは、軸x、軸yのまわりにそれぞれ独立して傾斜可動に制御される。この構成によれば、グレーティング23からの各レーザー波長の出射角度はミラーアレイ25上の位置情報に置き換えられ、ミラーアレイ25を形成する微小ミラー素子(M)26の位置がそのまま各レーザー波長に対応することになる。
【0055】
各微小ミラー素子26はそこに入射した光束を光検出装置27a〜27dへ向けて反射する偏向角と光トラップ28へ向けて反射する偏向角の計5つの選択可能な反射角度を有し、その角度選択は入力部31を経てコントローラ29からの電気信号で1素子単位で行うことができる。また、レーザーや蛍光色素に対応する何らかの入力を入力部31で行うと、コントローラ29がメモリー部30に記憶されている各微小ミラー素子26の角度を呼出し、いつでも最適な測定状態を再現できるようになっている。また、所定の微小ミラー素子26の角度のみをメモリー部30に記憶させることもできる。
【0056】
多重化された蛍光の分散光は、レーザー波長に対応する微小ミラー素子26が入射光を光トラップ28へ向けて反射し、且つ蛍光波長に対応する微小ミラー素子26がその蛍光毎に別々の光検出装置27a〜27dへ向けて反射させることで達成され、各光検出装置27a〜27dでその強度が検出される。このように、本実施形態の装置では、多重化される蛍光色素の数によらず1度の反射のみによって分散が行われるため、光量損失が極めて少なくなる。
【0057】
図1において、ピンホール11は光が出射する出射部、コリメートレンズ22はピンホール11の光出射側に配置された光学系、グレーティング23はコリメートレンズ22の光出射側に配置された分散素子、DMD25はグレーティング23の光出射側に配置された光偏向部材、光検出装置27a〜27dはDMD25からの光が入射する入射部である。
【0058】
ここで、偏向プリズム12は、コリメートレンズ22からの入射光を偏向してグレーティング23へ出射させるプリズムである。この偏向プリズム12は、ミラーアレイ25からの分散光の入射部(光検出装置27a〜27d)への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるように、形状、配置、媒質その他の条件が設定されている。偏向プリズム12の媒質としては、グレーティング23と同一であることが好ましい。また、偏向プリズム12は、出射部としての共焦点絞り(ピンホール)11から、入射部としての光検出装置27a、27b、27c、27dへの光路中であれば、任意の位置に配することができる。
偏向プリズム12の材質とグレーティング23の材質は同じであることが望ましい。具体的にはシリコンが望ましい。シリコンは屈折率nが通常のガラス屈折率に比べて大きく、かつ、 屈折率の温度係数の絶対値|dn/dT|も通常のガラスのそれに比べて大きい。したがってシリコンを材質としてグレーティングを構成すると、温度変化が起きたときに分散角や射出の方向が大きく変わるという問題がある。ところが偏向プリズム12とグレーティング23が同じ材質だとシリコンの屈折率の変化をキャンセルできる。
つまり、温度変化が起きたときでも分散角や射出の方向を変えないようにすることができる。偏向プリズム12はコリメートレンズ22とグレーティング23の間に配置される。また、偏向プリズム12の具体的な形状は図8の710か図9の810に示したようなプリズム形状である。
さらには、偏向プリズム12の材質とグレーティング23の材質は異なっていてもかまわない。
温度補償素子は屈折率n、 屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるプリズムであるとする。また、グレーティング23は屈折率n、 屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるとする。
例えばプリズムの媒質をSchott製のSF4、グレーティングの媒質をSchott製のNFK5とするときには、温度0度下で波長1547.7nmの光に対して、
=1.7187
dn/dT=5.275×10-6
=1.4730
dn/dT=-1.363×10-6
である。
ただし、dn/dT、dn/dTは使用温度範囲の0℃から80℃の平均温度係数である。
このとき、
|n/n|=1.17
|(dn/dT)/(dn/dT)|=3.87
となる。
このため、次式(6)、(7)を満足する。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
また、このとき、以下の式(8)を満足する。このため、式(9)を満足する。
【0059】
【数6】

数式(6)、(7)を同時に、もしくは数式(9)を満たしているときには、偏向プリズム12の材質とグレーティング23の材質は異なっていても、温度変化が起きたときの分散角や射出の方向が変わらないようにすることができる。
加えて、偏向プリズム12の材質とグレーティング23の材質が異なる場合には材質の選択肢が増え、数式(9)を満たす範囲の中でより適切な材料を選ぶことができる。一般的な光学ガラスの中から材料を選ぶときには入手性が高いものが多いので、材料の調達時に有利になる。同時に、材料の屈折率nや屈折率の温度係数dn/dTが詳しくわかっているものが多いので詳細な光学設計が可能となる。
【0060】
ここで、使用温度範囲とは、本発明の分光器及び光学機器を使用する温度範囲であって、例えば、0°Cから40°Cの範囲である。
【0061】
また、出射部としてのピンホール11と、分散素子としてのグレーティング23と、入射部としての光検出装置27a、27b、27c、27dと、偏向プリズム12と、を備える分光器において、出射部から出射する光は波長多重された信号光であって、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(1)を満足することが好ましい。
【0062】
【数7】

【0063】
ただし、
θ1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する角度、
θ2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する角度、
Δθは、使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量である。
予め分散素子によって分散された、隣り合うλ1、λ2の波長をもつ信号光が、DMDの隣り合う所定の微小ミラーにそれぞれ当たっていたとして、数式(1)を満たすように顕微鏡の蛍光検出系を構成する。これにより、温度が変わってグレーティング23の屈折率が変化し、分散特性が変化したとしても、λ1、λ2の波長の光は、DMDの所定の微小ミラーに入射する。この結果、各々の微小ミラーの角度を制御することにより、λ1、λ2を分離することができる。
また、グレーティング23の媒質と偏光プリズム12の媒質が同一のときは上記の効果に加えて、温度変化を起こしたときの屈折率変化の不確定度がひとつ減る。これにより、光学設計の確実性が上がる。また、加工の際に材料の取り違えを避けられるといった効果がある。
このように、好ましくは、温度補償素子と分散素子との屈折率と温度係数(温度変化に対する屈折率の変化量)とが略等しいことが望ましい。
【0064】
また、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(2)を満足することが好ましい。
【0065】
【数8】

【0066】
ただし、
y1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する位置、
y2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する位置、
Δyは、使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量である。
【0067】
上記式において、θ1、θ2については図14(a)に示す通りである。図14(a)において、23はグレーティングである。また、図14(a)では、図1におけるレンズ24は配置されていない。一方、y1、y2については図14(b)に示す通りである。図14(b)において、グレーティング23は図示を省略している。そして、図14(b)においては、入射部の前に図1と同様にレンズ24が配置されている。グレーティング23はレンズ24の焦点位置に配置されているので、λ1とλ2の光は光軸に平行な光となって、入射部に到達する。
【0068】
また、DMD25は複数の微小ミラーで構成されている。微小ミラーの各々は、互いに独立して制御可能となっている。
第1実施形態では、従来のプリズム(回折光学面なし)に代えて、第2実施形態の分散素子を用いている。そのため、試料からの蛍光を高い波長分解能で分散することができる。
このように顕微鏡の蛍光検出系を構成することにより、温度が変わってグレーティング23の屈折率が変化し、分散特性が変化したとしても、それぞれのレーザー波長は、DMDの所定の微小ミラーに入射する。これにより、レーザー波長と蛍光波長を分離する能力は損なわれない。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光学機器について説明する。本光学機器は、顕微鏡の照明光学系である。
【0070】
図2は、第2実施形態にかかる走査型光学顕微鏡装置の照明光学系の概略構成を示す図である。
図2に示す走査型光学顕微鏡装置の照明光学系は、特定の波長で照明することができる。第2実施形態の顕微鏡は、分散素子としてグレーティングを用いて構成した分光照明装置を有する顕微鏡として構成されている。
【0071】
光源101から出射した光は、コレクターレンズ102、投影レンズ121を介して集光されて、矩形開口、または、ピンホール開口を構成した絞り103の位置で一旦結像してランプの像を作る。その後、絞り103を通り抜けた光は、レンズ122に入射し、レンズ122を介して無限遠に投影される。無限遠に投影された光は、偏向プリズム112を経てグレーティング104に入射し、短波長から長波長にわたって分散(波長分散)される。
【0072】
グレーティング104として、図5、図6の分散素子200と同様の構成の分散素子を用いる。分散された光は、レンズ123に入射し、DMD105に導かれる。DMD105は、第1実施形態と同様に、図7に示す複数のマイクロミラーMを有している。
【0073】
絞り103の位置にスリットを配置した場合、スリットは、DMD105の上に分散された形で投影される。DMD105は、微小ミラー群で構成されていて、個々の微小ミラーの角度を変えることで、所望の波長の光のみを選択的に反射してレンズ124に導く。
【0074】
たとえば、短波長の光が投影されているDMD105の部分のみオンにして、標本に短波長の光のみ導くことができる。DMD105でオンになった部分の光のみが導かれたレンズ124では、分散されスリット像を無限遠に投影する。
【0075】
無限遠に投影された分散されたスリット像は、グレーティング106に入射する。グレーティング106を介して分散によって波長分散した光は、グレーティング106を介して再合成されて一つの光軸上に集められた後、レンズ125に入射する。
【0076】
入射した光は、レンズ125を介して絞り103の像として一旦結像し、視野絞り128を経た後、レンズ126を介して投影され、ダイクロイックミラー107で反射される。反射され絞り103の像は、対物レンズ108の後ろ側焦点位置で結像する。そして、標本9の面ではケーラー照明になり、標本109を照明する。
【0077】
さらに、この照明系を蛍光観察に用いる場合は、照明光が標本109を励起する光となり、標本109から発せられた蛍光がダイクロイックミラー107を透過し、励起光の漏れ光をカットする吸収フィルター127を経て、結像レンズ110を介してCCD111上に結像する。
【0078】
図2において、光源101は光が出射する出射部、レンズ102(投影レンズ121、レンズ122)は光源101の光出射側に配置された光学系、グレーティング104はレンズ102(投影レンズ121、レンズ122)の光出射側に配置された本実施形態の分散素子、DMD105はグレーティング104の光出射側に配置された光偏向部材、顕微鏡光学系(ダイクロイックミラー107、対物レンズ108、標本109)はDMD105からの光が入射する入射部である。
【0079】
ここで、偏向プリズム112は、レンズ122からの入射光を偏向してグレーティング104側へ出射させるプリズムである。この偏向プリズム112は、DM105からの分散光の入射部(顕微鏡光学系)への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるように、形状、配置、媒質その他の条件が設定されている。偏向プリズム112の媒質としては、グレーティング104と同一であることが好ましい。また、偏向プリズム112は、出射部としての光源101から、入射部としての顕微鏡光学系への光路中であって、DM105からの反射光の進行を妨げない任意の位置に配置することができる。
偏向プリズム112の材質とグレーティング104の材質は同じであることが望ましい。具体的にはシリコンが望ましい。シリコンは屈折率nが通常のガラス屈折率に比べて大きく、かつ、 屈折率の温度係数の絶対値|dn/dT|も通常のガラスのそれに比べて大きい。したがってシリコンを材質としてグレーティングを構成すると、温度変化が起きたときに分散角や射出の方向が大きく変わるという問題がある。ところが偏向プリズム112とグレーティング104が同じ材質だとシリコンの屈折率の変化をキャンセルできる。
つまり、温度変化が起きたときでも分散角や射出の方向を変えないようにすることができる。偏向プリズム112はレンズ122とグレーティング104の間に配置される。また、偏向プリズム112の具体的な形状は図8の710か図9の810に示したようなプリズム形状である。
さらには、偏向プリズム112の材質とグレーティング104の材質は異なっていてもかまわない。
温度補償素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるプリズムであるとし、グレーティング104は屈折率n、 屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるとする。例えばプリズムの媒質をSchott製のSF4、グレーティングの媒質をSchott製のNFK5とするときには、温度0度下で波長1547.7nmの光に対して、
=1.7187
dn/dT=5.275×10-6
=1.4730
dn/dT=-1.363×10-6
である。
ただし、dn/dT、dn/dTは使用温度範囲の0℃から80℃の平均温度係数である。
このとき、
|n/n|=1.17
|(dn/dT)/(dn/dT)|=3.87
となる。
このため、次式(6)、(7)を満足する。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
を満たす。
また、このとき、以下の式(8)を満足する。このため、式(9)を満足する。
【0080】
【数9】

数式(6)、(7)を同時に、もしくは数式(9)を満たしているときには、偏向プリズム112の材質とグレーティング104の材質は異なっていても、温度変化が起きたときの分散角や射出の方向が変わらないようにすることができる。加えて、偏向プリズム112の材質とグレーティング104の材質が異なる場合には材質の選択肢が増え、数式(9)を満たす範囲の中でより適切な材料を選ぶことができる。一般的な光学ガラスの中から材料を選ぶときには入手性が高いものが多いので、材料の調達時に有利になる。同時に材料の屈折率nや屈折率の温度係数dn/dTが詳しくわかっているものが多いので詳細な光学設計が可能となる。
【0081】
ここで、使用温度範囲とは、本発明の分光器及び光学機器を使用する温度範囲であって、例えば、0°Cから40°Cの範囲である。
【0082】
また、出射部としての光源101と、分散素子としてのグレーティング104と、入射部としての顕微鏡光学系と、偏向プリズム112と、を備える分光器において、出射部から出射する光は波長多重された信号光であって、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(1)を満足することが好ましい。
【0083】
【数10】

【0084】
ただし、
θ1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する角度、
θ2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する角度、
Δθは、使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量である。
照明光として利用したい波長λ1があたるマイクロミラーはオンとし、波長λ1に隣り合う、照明光として利用しない波長λ2があたるマイクロミラーをオフとすることにより照明光の波長を選択している。温度が変わってグレーティング104の屈折率が変化し、分散特性が変化したとしても、数式(1)を満たすように顕微鏡の照明光学系を構成する。これにより、λ1、λ2の波長は温度が変化する前と同じマイクロミラーにそれぞれあたる。すなわちマイクロミラーの制御に変更は必要ないという効果が得られる。
また、グレーティング104の媒質と偏光プリズム112の媒質が同一のときは上記の効果に加えて、温度変化を起こしたときの屈折率変化の不確定度がひとつ減ることにより、光学設計の確実性が上がる。また、加工の際に材料の取り違えを避けられるといった効果がある。
【0085】
また、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(2)を満足することが好ましい。
【0086】
【数11】

【0087】
ただし、
y1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する位置、
y2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する位置、
Δyは、使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量である。
このように顕微鏡の照明光学系を構成することにより、温度が変わってグレーティング104の屈折率が変化し分散特性が変化したとしても、光源101からのそれぞれの波長の光はDMD105の所定のマイクロミラーに当たることになり、所定の波長の光のみを選択的に反射してレンズ124に導くことができる。
【0088】
DMD105は複数の微小ミラーで構成されている。微小ミラーの各々は、互いに独立して制御可能となっている。
第2実施形態では、従来の回折格子(プリズムなし)に代えて、本実施形態の分散素子を用いている。そのため、光源101からの照明光を高い波長分解能で分散することができる。
【0089】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る光学機器について図3、図8を参照して説明する。本光学機器は、波長選択スイッチである。
図3は、第3実施形態にかかる波長選択スイッチの構成を示す斜視図である。
【0090】
第3実施形態は、いわゆる透過型の波長選択スイッチ500である。この波長選択スイッチ500は、複数の光ファイバからなるファイバアレイ501と、マイクロレンズアレイ502と、偏向プリズム512と、グレーティング503と、レンズ504と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)モジュールであるマイクロミラーアレイ505とを備えている。
【0091】
ファイバアレイ501内の各光ファイバとマイクロレンズアレイ502内の各マイクロレンズは対になっている。この対がアレイ状に配置されている。ファイバアレイ501は光入出力ポートとして機能する。その光ファイバのひとつ(以下、「第1の光ファイバ」という。)から、波長多重された信号光が、グレーティング503に向けて出射される。光ファイバから射出した光は、マイクロレンズアレイ502で平行光束に変換され、偏向プリズム512を経て、グレーティング503に入射する。
【0092】
グレーティング503としては、図5、図6に示した分散素子を用いる。グレーティング503は、入射した波長多重光を帯状に分散する。
【0093】
レンズ504はグレーティング503によって分散された光を、光偏向部材であるマイクロミラーアレイ505上の波長ごとの所定位置に導く。
【0094】
ここで、グレーティング503は、例えば、頂角34度のシリコンプリズムに反射型グレーティングGが形成されている、いわゆるイマージョングレーティングである。回折面はシリコンで満たされおり、1mmあたり2500本の溝が形成されている。
【0095】
MEMSモジュールであるマイクロミラーアレイ505は、グレーティング503で帯状に分散された光の波長に対応する複数のマイクロミラーMのアレイ(MEMSミラーアレイ)を有する。
【0096】
マイクロミラーMは、図7を用いて説明したように、それぞれのミラーがローカルのx軸とy軸の周りに回転が可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。
【0097】
ミラーアレイの複数のマイクロミラーMにより、入射方向とは異なる、同じ方向(A)に反射された光は、レンズ504によりグレーティング503上に統合され、回折後は再び多波長成分の同一光束となる。これに対して、異なるマイクロミラーにより、入射方向ともAとも異なる方向に反射された光は、レンズ504によりグレーティング503上にリレーされ、回折されるが、Aの方向に反射された光とは統合されない。
【0098】
これらの光はファイバアレイ501の入力ポート以外のいずれかのファイバ(以下、「第2の光ファイバ」という。)に入射する。また、前記Aの方向に反射した光と、A以外の方向に反射した光は異なるファイバに入射する。
【0099】
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光は、波長ごとにマイクロミラーアレイのそれぞれのミラーMの傾き角により選択的に第2の光ファイバに入射させることができる。
【0100】
なお、この実施例ではひとつの光入力ポートから複数の光出力ポートへの結合に関して説明したが、複数の光入力ポートからひとつの光出力ポートへの結合を行うことも可能である。
【0101】
第3実施形態において、ファイバアレイ501(第1の光ファイバ)は光が出射する出射部、マイクロレンズアレイ502はファイバアレイ501の光出射側に配置された光学系、グレーティング503はマイクロレンズアレイ502の光出射側に配置された分散素子、マイクロミラーアレイ505はグレーティング503の光出射側に配置された光偏向部材、ファイバアレイ501(第2の光ファイバ)はマイクロミラーアレイ505からの光が入射する入射部である。
【0102】
ここで、偏向プリズム512は、マイクロレンズアレイ502からの入射光を偏向してグレーティング503へ出射させるプリズムである。この偏向プリズム512は、マイクロミラーアレイ505からの分散光の入射部(第2の光ファイバ)への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるように、形状、配置、媒質その他の条件が設定されている。偏向プリズム512の媒質としては、グレーティング503と同一であることが好ましい。また、偏向プリズム512は、ファイバアレイ501のうちの出射部としてのファイバから、入射部としてのファイバへの光路中であれば、任意の位置に配することができる。
偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は同じであることが望ましい。具体的にはシリコンが望ましい。シリコンは屈折率nが通常のガラス屈折率に比べて大きく、かつ、 屈折率の温度係数の絶対値|dn/dT|も通常のガラスのそれに比べて大きい。したがってシリコンを材質としてグレーティングを構成すると、温度変化が起きたときに分散角や射出の方向が大きく変わるという問題がある。ところが偏向プリズム512とグレーティング503が同じ材質だとシリコンの屈折率の変化をキャンセルできる。
つまり、温度変化が起きたときでも分散角や射出の方向を変えないようにすることができる。偏向プリズム512はマイクロレンズアレイ502とグレーティング503の間に配置される。また、偏向プリズム512の具体的な形状は図8の710か図9の810に示したようなプリズム形状である。
さらには、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は異なっていてもかまわない。
温度補償素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるプリズムであるとし、グレーティング503は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるとする。例えばプリズムの媒質をSchott製のSF4、グレーティングの媒質をSchott製のNFK5とするときには、温度0度下で波長1547.7nmの光に対して、
=1.7187
dn/dT=5.275×10-6
=1.4730
dn/dT=-1.363×10-6
である。
ただし、dn/dT、dn/dTは使用温度範囲の0℃から80℃の平均温度係数である。
このとき、
|n/n|=1.17
|(dn/dT)/(dn/dT)|=3.87
となる。
このため、次式(6)、(7)を満足する。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
また、このとき、以下の式(8)を満足する。このため、式(9)を満足する。
【0103】
【数12】

数式(6)、(7)を同時に、もしくは数式(9)を満たしているときには、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は異なっていても、温度変化が起きたときの分散角や射出の方向が変わらないようにすることができる。
加えて、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質が異なる場合には材質の選択肢が増え、数式(9)を満たす範囲の中でより適切な材料を選ぶことができる。一般的な光学ガラスの中から材料を選ぶときには入手性が高いものが多いので、材料の調達時に有利になる。と同時に材料の屈折率nや屈折率の温度係数dn/dTが詳しくわかっているものが多いので詳細な光学設計が可能となる。
【0104】
ここで、使用温度範囲とは、本発明の分光器及び光学機器を使用する温度範囲であって、例えば、0°Cから80°Cの範囲である。
【0105】
また、出射部としてのファイバアレイ501(第1の光ファイバ)と、分散素子としてのグレーティング503と、入射部としてのファイバアレイ501(第2の光ファイバ)と、偏向プリズム512と、を備える分光器において、出射部から出射する光は波長多重された信号光であって、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(1)を満足することが好ましい。
【0106】
【数13】

【0107】
ただし、
θ1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する角度、
θ2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する角度、
Δθは、使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量である。
【0108】
さらに、分散素子によって分散された信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が次式(2)を満足することが好ましい。
【0109】
【数14】

【0110】
ただし、
y1は、波長λ1の信号光が入射部に到達する位置、
y2は、波長λ2の信号光が入射部に到達する位置、
Δyは、使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量である。
【0111】
つづいて、第3実施形態にかかる波長選択スイッチの適用例を説明する。図8は、第3実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す平面図である。
この波長選択スイッチは、いわゆる透過型の波長選択スイッチであって、複数の光ファイバからなるファイバアレイ701と、レンズ702と、フォーカシングレンズ703と、第1バルクレンズ704と、偏向プリズム710と、反射部材705と、グレーティング720と、第2バルクレンズ706と、MEMSモジュールであるマイクロミラーアレイ730とを備えている。
【0112】
図8に示す波長選択スイッチにおいて、ファイバアレイ701は光が出射する出射部、レンズ702、フォーカシングレンズ703、及び、第1バルクレンズ704はファイバアレイ701の光出射側に配置された光学系、グレーティング720はレンズ702の光出射側に配置された分散素子、マイクロミラーアレイ730はグレーティング720の光出射側に配置された光偏向部材、ファイバアレイ701はマイクロミラーアレイ730からの光が入射する入射部である。
【0113】
図8に示す、ファイバアレイ701、偏向プリズム710、グレーティング720、第2バルクレンズ706、及び、マイクロミラーアレイ730は、図3における、ファイバアレイ501、偏向プリズム512、グレーティング503、レンズ504、及び、マイクロミラーアレイ505に、それぞれ対応するため、その詳細な説明は省略する。
【0114】
第3実施形態では、従来の回折格子(プリズムなし)に代えて、本実施形態の分散素子を用いている。そのため、ファイバアレイ501からの光を高い波長分解能で分散することができる。
数式(1)または数式(2)を満たすように波長選択スイッチが構成されることにより、温度が変わってグレーティング503または720の屈折率が変化し分散特性が変化したとしても、グレーティング503または720で分光されたそれぞれの波長の光は、温度が変わる前と同じマイクロミラーにあたる。したがって温度変化が起きたとしても、ミラーの中心に当たる波長がITUグリッドから外れてしまう、ITUグリッドエラーが起きたり、それに伴って信号光の透過帯域(バンド幅)が狭くなったりすることはなく、良好な波長選択スイッチの性能を保ち続ける。
また、グレーティング503または720の媒質と偏光プリズム512または710の媒質が同一のときは上記の効果に加えて、温度変化を起こしたときの屈折率変化の不確定度がひとつ減ることにより、光学設計の確実性が上がる。また、加工の際に材料の取り違えを避けられるといった効果がある。
【0115】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る光学機器について図4を参照しつつ説明する。本光学機器は、波長選択スイッチである。上記第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付す。図4は、第4実施形態にかかる波長選択スイッチの構成を示す斜視図である。
【0116】
第4実施形態は、いわゆる反射型の波長選択スイッチ600である。この波長選択スイッチ600は、複数の光ファイバからなるファイバアレイ501と、マイクロレンズアレイ502と、偏向プリズム512と、グレーティング503と、反射光学部材601と、MEMSモジュールであるマイクロミラーアレイ505とを備えている。
【0117】
ファイバアレイ501内の各光ファイバとマイクロレンズアレイ502内の各マイクロレンズは、1対1に対応する対になっている。この対がアレイ状に配置されている。ファイバアレイ501は光入出力ポートとして機能する。その光ファイバのひとつ(以下、「第1の光ファイバ」という。)から、波長多重された信号光が、グレーティング503に向けて出射される。光ファイバから射出した光は、マイクロレンズアレイ502で平行光束に変換され、偏向プリズム512を経て、グレーティング503に入射する。
【0118】
グレーティング503としては、図5、図6に示した分散素子を用いる。グレーティング503は、入射した波長多重光を帯状に分散する。
【0119】
反射光学部材601はグレーティング503によって分散された光を、光偏向部材であるマイクロミラーアレイ505上の波長ごとの所定位置に導く。反射光学部材601は、例えば、凹面鏡を用いることができる。
【0120】
ここで、グレーティング503は、例えば、頂角34度のシリコンプリズムに反射型グレーティングGが形成されている、いわゆるイマージョングレーティングである。回折面はシリコンで満たされおり、1mmあたり2500本の溝が形成されている。
【0121】
MEMSモジュールであるマイクロミラーアレイ505は、グレーティング503とで帯状に分散された光の波長に対応するマイクロミラーMのアレイ(MEMSミラーアレイ)を有する。
【0122】
マイクロミラーMは、図7を用いて説明したように、それぞれのミラーがローカルのx軸とy軸の周りに回転が可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。
【0123】
ミラーアレイの複数のマイクロミラーMにより、入射方向とは異なる、同じ方向(A)に反射された光は、反射光学部材601によりグレーティング503上に統合され、回折後は再び多波長成分の同一光束となる。これに対して、異なるマイクロミラーにより、入射方向ともAとも異なる方向に反射された光は、反射光学部材601によりグレーティング503上にリレーされ、回折されるが、Aの方向に反射された光とは統合されない。
【0124】
これらの光はファイバアレイ501の入力ポート以外のいずれかのファイバ(以下、「第2の光ファイバ」という。)に入射する。また、前記Aの方向に反射した光と、A以外の方向に反射した光は異なるファイバに入射する。
【0125】
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光に関して、波長ごとにマイクロミラーアレイのそれぞれのミラーMの傾き角により選択的に第2の光ファイバに入射させることができる。
【0126】
なお、この実施例ではひとつの光入力ポートから複数の光出力ポートへの結合に関して説明したが、複数の光入力ポートからひとつの光出力ポートへの結合を行うことも可能である。
【0127】
第4実施形態において、ファイバアレイ501(第1の光ファイバ)は光が出射する出射部、マイクロレンズアレイ502はファイバアレイ501光出射側に配置された光学系、グレーティング503はマイクロレンズアレイ502の光出射側に配置された分散素子、マイクロミラーアレイ505はグレーティング503の光出射側に配置された光偏向部材、ファイバアレイ501(第2の光ファイバ)はマイクロミラーアレイ505からの光が入射する入射部である。
【0128】
第4実施形態では、従来の回折格子(プリズムなし)に代えて、本実施形態の分散素子を用いている。そのため、ファイバアレイ501からの光を高い波長分解能で分散することができる。また、透過型の波長選択スイッチに比較して、光学系を小型化できる。
【0129】
偏向プリズム512については、第3実施形態の偏向プリズムと同一であるため、その説明は省略する。
その他の構成、作用、効果は第3実施形態と同様である。
すなわち、数式(1)または数式(2)を満たすように波長選択スイッチが構成されることにより、温度が変わってグレーティング503の屈折率が変化し分散特性が変化したとしても、グレーティング503で分光されたそれぞれの波長の光は、温度が変わる前と同じマイクロミラーにあたる。したがって温度変化が起きたとしても、ミラーの中心に当たる波長がITUグリッドから外れてしまう、ITUグリッドエラーが起きたり、それに伴って信号光の透過帯域(バンド幅)が狭くなったりすることはなく、良好な波長選択スイッチの性能を保ち続ける。
また、グレーティング503の媒質と偏光プリズム512の媒質が同一のときは上記の効果に加えて、温度変化を起こしたときの屈折率変化の不確定度がひとつ減ることにより、光学設計の確実性が上がる。また、加工の際に材料の取り違えを避けられるといった効果がある。
偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は同じであることが望ましい。具体的にはシリコンが望ましい。シリコンは屈折率nが通常のガラス屈折率に比べて大きく、かつ、 屈折率の温度係数の絶対値|dn/dT|も通常のガラスのそれに比べて大きい。したがってシリコンを材質としてグレーティングを構成すると、温度変化が起きたときに分散角や射出の方向が大きく変わるという問題がある。ところが偏向プリズム512とグレーティング503が同じ材質だとシリコンの屈折率の変化をキャンセルできる。
つまり、温度変化が起きたときでも分散角や射出の方向を変えないようにすることができる。偏向プリズム512はマイクロレンズアレイ502とグレーティング503の間に配置される。また、偏向プリズム512の具体的な形状は図8の710か図9の810に示したようなプリズム形状である。
さらには、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は異なっていてもかまわない。
温度補償素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるプリズムであるとし、グレーティング503は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなるとする。例えばプリズムの媒質をSchott製のSF4、グレーティングの媒質をSchott製のNFK5とするときには、温度0度下で波長1547.7nmの光に対して、
=1.7187
dn/dT=5.275×10-6
=1.4730
dn/dT=-1.363×10-6
である。
ただし、dn/dT、dn/dTは使用温度範囲の0℃から80℃の平均温度係数である。
このとき、
|n/n|=1.17
|(dn/dT)/(dn/dT)|=3.87
となる。
このため、次式(6)、(7)を満足する。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
また、このとき、以下の式(8)を満足する。このため、式(9)を満足する。
【0130】
【数15】

数式(6)、(7)を同時に、もしくは数式(9)を満たしているときには、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質は異なっていても、温度変化が起きたときの分散角や射出の方向が変わらないようにすることができる。
加えて、偏向プリズム512の材質とグレーティング503の材質が異なる場合には材質の選択肢が増え、数式(9)を満たす範囲の中でより適切な材料を選ぶことができる。一般的な光学ガラスの中から材料を選ぶときには入手性が高いものが多いので、材料の調達時に有利になる。同時に、材料の屈折率nや屈折率の温度係数dn/dTが詳しくわかっているものが多いので詳細な光学設計が可能となる。
【実施例】
【0131】
次に、本発明に係る分光器の実施例について、図9から図14を参照して説明する。図9は、実施例1に係る分光器の構成を示す図である。図10は、実施例2に係る分光器の構成を示す図である。図11は、実施例の偏向プリズム810における光の偏向を示す図である。図12は、実施例のグレーティング820における光の分散を示す図である。図13は、実施例のマイクロミラーアレイ830への入射光を示す図である。図14(a)はθ1、θ2を示す図である。図14(b)はグレーティング820とマイクロミラーアレイ830の間に集光光学系を備えた上で、y1、y2を示す図である。なお、図9から図13においては、出射部、入射部、出射部と分光素子との間の光学系の図示は省略している。
【0132】
実施例1、2に係る分光器においては、図示しない出射部からの出射光が偏向プリズム810によって偏向され、この偏向光は、グレーティング820に入射して波長ごとに分散されてマイクロミラーアレイ830の所定位置へ入射する。グレーティング820は図5、図6に示すものを、マイクロミラーアレイ830は図7に示すものを、それぞれ用いる。また、偏向プリズム810は、上述の実施形態の偏向プリズムを用いる。
【0133】
実施例1では、偏向プリズム(プリズム)810及びグレーティング820(イマージョングレーティング)の材質としてシリコン相当の屈折率を有するものを設定した。
【0134】
実施例2では、偏向プリズム(プリズム)810の材質としてSF4(Schott)相当の屈折率を有するものと、グレーティング820(イマージョングレーティング)の材質としてNFK5(Schott)相当の屈折率を有するものとを設定した。
【0135】
ここで、計算条件について説明する。
偏向プリズム(プリズム)810への入射角A1は、偏向プリズム810の第1面811への入射角である。偏向プリズム810からの射出角A3は、第2面812からの射出角である。偏向プリズム810の頂角A2は、第1面811と第2面812の延長線が互いに交わる点の内角である(図11)。
【0136】
グレーティング(イマージョングレーティング)820への入射角A4は、グレーティング820の第1面821への入射角である。回折面のピッチP1は、回折面822における格子のピッチである(図12)。
【0137】
最終面への入射角A5は、マイクロミラーアレイ830のミラー面831への入射角である(図13)。
【0138】
以上の各条件について、分散光の波長として第1波長及び第2波長を設定した。さらに、使用温度範囲内の温度変化に対応する温度として、0°Cと80°Cを用いた。
【0139】
上述の条件に基づいて行った計算結果としての実施例1を次の表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
また、実施例2を次の表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
ここで、θ1、θ2は、波長λ1、λ2の信号光がそれぞれ入射部に到達する角度であって、表2、表3では、第1波長の光と第2波長の光がそれぞれ最終面へ入射する角度A5に相当する。
【0144】
Δθは、使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量であって、表2、表3では、第1の波長の光について、0°Cにおける入射角A5と80°Cにおける入射角A5の差を取っている。
【0145】
実施例1、2によれば、|Δθ/(θ1−θ2)|は0.1より小さくなっており、使用温度範囲内で温度変化があっても、分散特性の変化を小さく抑えることができていることが分かる。
【0146】
なお、図9から図13では図示を省略しているが、マイクロミラーアレイ830で反射された光の進行方向に、光検出器を配置しても良い。さらに、マイクロミラーアレイ830と光検出器の間に集光用の光学系を配置してもよい。また、図8において、マイクロミラーアレイ730に代えて光検出器を配置してもよい。このようにすることで、分光器として機能させることができる。この場合、第2バルクレンズ706が集光用の光学系に該当することになる。
【0147】
光検出器としては、マイクロミラーアレイ830を用いる場合、例えば2次元アレイセンサを用いれば良い。このようにすると、マイクロミラーアレイ830で反射方向を変化させても、反射光を受光することができる。また、マイクロミラーアレイ830の代わりに通常のミラー(反射方向が変えられない)を用いる場合、光検出器として1次元アレイセンサを用いれば良い。
【0148】
図9のグレーティング820より後を図14(b)としたものは、実施例3における分光器である。図14(b)の入射部に相当するのが光検出器である。図14(b)が備える集光光学系の焦点距離を60mmとし、適当に原点を取ったときのy座標の計算結果は、表2の最も下の行に示してある。
【0149】
図10のグレーティング820より後を図14(b)としたものは、実施例4における分光器である。図14(b)の入射部に相当するのが光検出器である。図14(b)が備える集光光学系の焦点距離を60mmとし、適当に原点を取ったときのy座標の計算結果は、表3の最も下の行に示してある。
【0150】
ここで、y1、y2は、波長λ1、λ2の信号光がそれぞれ入射部に到達する位置であって、表2、表3では、第1波長の光と第2波長の光がそれぞれ最終面へ入射する位置に相当する。
【0151】
Δyは、使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量であって、表2、表3では、第1の波長の光について、0°Cにおける位置y1と80°Cにおける位置y1の差を取っている。
【0152】
実施例3、4によれば、|Δy/(y1−y2)|は0.1より小さくなっており、使用温度範囲内で温度変化があっても、分散特性の変化を小さく抑えることができていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上のように、本発明にかかる分散素子は、高い波長分解能で分散する場合に有用である。
【符号の説明】
【0154】
11 ピンホール(出射部)
12 偏向プリズム
22 コリメートレンズ
23 グレーティング(分散素子)
25 DMD(光偏向部材)
27a、27b、27c、27d 光検出装置(入射部)
101 光源(出射部)
102 レンズ
104 グレーティング(分散素子)
105 DMD(光偏向部材)
112 偏向プリズム
200 分散素子
201a 入射面
201b 射出面
201c 回折光学面
220 プリズム
230 平面部材
300 分散素子
400 分散素子
500 波長選択スイッチ
501 ファイバアレイ(出射部、入射部)
502 マイクロレンズアレイ
503 グレーティング(分散素子)
504 レンズ
505 マイクロミラーアレイ(MEMSモジュール、光偏向部材)
512 偏向プリズム
600 波長選択スイッチ
601 反射光学部材
701 ファイバアレイ(出射部、入射部)
710 偏向プリズム
720 グレーティング(分散素子)
730 マイクロミラーアレイ(光偏向部材)
M マイクロミラー
G 回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が出射する出射部と、
前記出射部の光出射側に配置された分散素子と、
前記分散素子による分散光が入射する入射部と、
前記出射部と前記入射部との間に配置され、前記分散光の前記入射部への入射角度が使用温度範囲内の温度変化に対してほぼ一定になるような温度補償素子と、
を備えることを特徴とする分光器。
【請求項2】
前記出射部から出射する光が波長多重された信号光であって、
前記分散素子によって分散された前記信号光のうち、隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が以下の式(1)を満足する請求項1に記載の分光器。
【数1】

ただし、
θ1は、波長λ1の信号光が前記入射部に到達する角度、
θ2は、波長λ2の信号光が前記入射部に到達する角度、
Δθは、前記使用温度範囲内の温度変化による角度θ1の変化量である。
【請求項3】
前記分散素子はイマージョングレーティングであって、前記温度補償素子は偏向プリズムであることを特徴とする請求項2に記載の分光器。
【請求項4】
前記分散素子の媒質と前記温度補償素子の媒質とが同一であることを特徴とする請求項3に記載の分光器。
【請求項5】
前記分散素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなり、
前記温度補償素子は屈折率n、屈折率の温度係数dn/dTの媒質からなり、
以下の数式(6)、(7)を同時に満たすことを特徴とする請求項3に記載の分光器。
1≦|n/n|≦1.2 (6)
1≦|(dn/dT)/(dn/dT)|≦4 (7)
【請求項6】
以下の数式(9)を満たすことを特徴とする請求項5に記載の分光器。
【数2】

【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の分光器と、
前記出射部と前記分散素子との間に配置された光学系と、
前記分散素子と前記入射部との間に配置された光偏向部材と、
を備え、
前記光偏向部材は複数の偏向素子で構成され、
前記複数の偏向素子は、互いに独立して制御可能であることを特徴とする光学機器。
【請求項8】
前記分散素子によって分散された前記信号光のうち、前記隣り合う波長λ1、λ2をそれぞれ備える2つの信号光が以下の式(2)を満足する請求項7に記載の光学機器。
【数3】

ただし、
y1は、波長λ1の信号光が前記入射部に到達する位置、
y2は、波長λ2の信号光が前記入射部に到達する位置、
Δyは、前記使用温度範囲内の温度変化による位置y1の変化量である。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−156680(P2010−156680A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267656(P2009−267656)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】