説明

測位システムおよび測位方法

【課題】 読み取り装置の数を増加させることなく移動体の測位精度を上げる。
【解決手段】 測位システム100は、複数の固定アクティブタグ30と、タグリーダー40と、データ処理機70とを備えている。複数の固定アクティブタグ30は、それぞれ電磁波を発信する。タグリーダー40は、複数の固定アクティブタグ30が発信する電磁波をそれぞれ受信する。データ処理機70は、固定アクティブタグ30毎の変動データD1と固定アクティブタグ30毎の基準位置データD2とを固定アクティブタグ30毎に対応させて処理を行うことで、複数の固定アクティブタグ30それぞれとタグリーダー40との間の各領域を対象とした位置の測定(測位)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システムおよび測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象となるエリアにおいて、無線通信によって所定の対象の存在位置を特定するシステムが考案されている。
例えば、以下の特許文献1に示されているシステムでは、網の目状に複数の無線読み取り装置を配置し、RFIDタグからの信号をどの無線読み取り装置が受信したのかを判別することで、RFIDタグを有している者の位置を特定する測位システムが考案されている。また、このシステムでは、RFIDタグから受信する電磁波のゆらぎに基づいて、そのRFIDタグを所持している者の状態判断(移動状態・運動状態等)ができるようになっている。
【特許文献1】特開2002−217811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記測位システムでは、測位精度は、配置される無線読み取り装置の密度に依存することになる。このため、従来の測位システムにおいて測位精度を上げるためには、無線読み取り装置の数を増やして密に配置する必要がある。また、上記測位システムでは、個々の無線読み取り装置が検知する対象エリア内のうちのどのあたりからRFIDタグの信号が発信されているのかについては認識することができない。
【0004】
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、読み取り装置の数を増加させることなく移動体の測位精度を上げることが可能な測位システムおよび測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る測位システムは、複数の発信機と、受信機と、データ処理機とを備えている。複数の発信機は、それぞれ電磁波を発信する。受信機は、複数の発信機が発信する電磁波をそれぞれ受信する。データ処理機は、発信機毎の変動データと発信機毎の基準位置データとを発信機毎に対応させて処理を行うことで、複数の発信機それぞれと受信機との間の各領域を対象とした位置の測定(測位)を行う。ここで、変動データは、複数の発信機から受信機が受信するそれぞれの電磁波の変動を測定することで得られるデータである。また、基準位置データは、複数の発信機の受信機に対する位置を示すデータである。
【0006】
なお、ここでの発信機としては、例えば、RFIDタグ(例えばアクティブタグ)、無線LANを利用したタグ、微弱無線(例えば300MHz程度)の発信機等が含まれる。なお、本測位システムにおける効果を奏するためには、受信機は少なくとも一つあれば足りる。そして、基準位置データは、データ処理機が予め記憶していてもよいし、発信機が移動した後に所定の位置の定着する場合にその移動中の電磁波のゆらぎに基づいて事後的に位置特定して位置データを取得するようにしてもよい。
【0007】
従来の測位システムでは、測位精度は、配置される無線読み取り装置の密度に依存することになる。このため、測位精度を向上させるためには、無線読み取り装置の数を増やして密に配置する必要がある。
これに対して第1発明の測位システムでは、複数の発信機から発信されるそれぞれの電磁波を受信機が受信する。ここで、複数の発信機と受信機との間に移動体(例えば、人間等)が入り込むと、この移動体の動きによって、受信機が受信する電磁波にゆらぎが生ずる。そして、データ処理機は、受信機が受信する各発信機からの電磁波のゆらぎを測定することで発信機毎の変動データを得る。また、データ処理機は、発信機毎に得られる変動データと発信機毎の基準位置データを発信機毎に対応させて解析処理を行うことで、複数の発信機それぞれと受信機との間の各領域を対象とした移動体の位置測定(測位)を行う。
【0008】
これにより、受信機の設置密度を増大させることなく、1つの受信機によって測位精度を向上させることが可能になる。すなわち、従来の、複数の受信機が網の目状に敷き詰められて構成されている測位システムでは、発信機からの電磁波を受信した受信機を特定することによって測位を行っているため、測位精度は受信機の設置間隔によることになる。これに対して、第1発明の測位システムでは、受信機と複数の発信機との間の測位を行うため、受信機の設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で測位することが可能になる。
【0009】
第2発明に係る測位システムは、第1発明の測位システムであって、複数の発信機は、それぞれ受信機に対する相対的な位置が固定されるように配置されている。また、データ処理機は、固定位置データ記憶部を有している。この固定位置データ記憶部は、固定されている複数の発信機の受信機に対するそれぞれの固定位置データを格納している。そして、データ処理機は、固定されている各発信機からの電磁波と各固定位置データとを発信機毎に対応させて解析処理を行うことで測位する。なお、複数の発信機と受信機との位置関係は、単に相対的な位置が固定されているだけでなく、それぞれの絶対的な位置が固定されてもよい。
【0010】
ここでは、複数の発信機の受信機に対する相対的な位置が予め固定されている。そして、予め固定されている固定位置データに基づいて測位を行う。このため、予め固定されている発信機の固定位置データに基づいて測位を行うため、測位精度の信頼性を向上させることができる。
第3発明に係る測位システムは、第1発明または第2発明の測位システムであって、受信機は、複数の発信機に対して非接触に所定の信号を送信する。発信機は、受信機からの所定の信号を受信することにより、電磁波を発生して受信機に対して非接触に応答する。変動データは、発信機が受信機に対して応答する電磁波の時間的変動および/または電磁波の強度変動に関するデータである。
【0011】
ここでは、受信機は、各発信機に対して非接触に所定の信号を送信する。これに対して各発信機は、受信機からの所定の信号を受信することにより、電磁波を発生して受信機に対して非接触に応答する。そして、変動データは、電磁波の時間的変動および/または電磁波の強度変動に関するデータである。このため、ここでの測位システムでは、このような電磁波の時間的変動および/または電磁波の強度変動に関する変動データを、受信機と複数の発信機との交信によって非接触に取得することができるため、変動データの取得が容易になる。
【0012】
第4発明に係る測位システムは、第1発明から第3発明のいずれかの測位システムであって、データ処理機は、測位を行うことで得られたデータの履歴を格納する履歴記憶部を有している。
ここでは、データ処理機によって測位されたデータの履歴が履歴記憶部に格納されている。このため、測位対象の移動体の位置の履歴情報を時系列を追って比較することができるようになり、移動体が移動した様子を把握することが可能になる。
【0013】
例えば、移動体としての人間が測位対象となるエリアから外れていった場合に、位置の履歴を調べることにより、移動していった方向を推測することができるようになる。
第5発明に係る測位システムは、第1発明から第4発明のいずれかの測位システムであって、対象エリアの天井近傍に互いに略均等な距離を保って配置され、受信機を収納するための収納部を有する空調室内機をさらに備えている。
【0014】
ここでは、複数のエリアを対象に測位する場合において、収納部を有する空調室内機が各エリア毎において略均等に配置される。そして、各空調室内機の収納部に複数の受信機を収納することで、受信機をエリア毎に略均等に配置することが可能になる。このため、測位ムラを低減させて、効果的な測位を行うことが可能になる。
なお、空調室内機はそもそも空調効率の観点から天井に均等に配置されることが多い。この場合には特に、天井に均等に配置されている空調室内機の位置を有効に利用することができる。また、受信機が天井近傍に配置されることで、発信機との間の電磁波の障害程度を抑えることができる場合があり、この場合には、測位の信頼性を向上させることができるようになる。
【0015】
第6発明に係る測位システムは、第1発明の測位システムであって、複数の所定移動体の移動に伴って移動するように複数の所定移動体に対して任意に対応付けられた複数の所定発信機をさらに備えている。また、データ処理機は、複数の所定移動体と複数の所定発信機との対応データを格納する対応データ記憶部を有している。このデータ処理機は、測位データと複数の所定発信機の基準位置データとを比較することで所定移動体以外の移動体の位置を測位する。ここで、測位データとは、基準位置データと変動データとに基づいて得られる移動体の位置に関するデータである。また、複数の所定発信機の基準位置データとは、受信機が各所定発信機から受信する電磁波によって測位される位置に関するデータである。
【0016】
ここでは、複数の所定移動体(例えば認証者)に対して所定発信機を対応付ける。そして、対応データ記憶部において、この対応データを格納させる。ここで、データ処理機は、受信機が受信する所定発信機からの電磁波によって各所定発信機の位置を測位する。また、データ処理機は、所定移動体が動くことおよび所定移動体以外の移動体が動くことで生ずる複数の発信機からの電磁波のゆらぎに基づいて、所定移動体および所定移動体以外の移動体の位置を測位する。これにより、各所定発信機の位置と、所定移動体および所定移動体以外の移動体の位置との両位置を重ね合わせる解析処理を行うことで、所定発信機が対応付けられていない所定移動体以外の移動体の位置を把握することが可能になる。
【0017】
例えば、所定発信機を予め認証者を対応付けておことで、上記測位システムにより、認証者以外の不審者の位置を特定することが可能になる。
また、上述した所定発信機が対応付けられる所定移動体は、人間に限られず、例えば、正規なルートによって取り扱われたモノ(正規品)であってもよい。これにより、正規品とそうでないモノとを区別して、正規品でないモノの位置を特定することができるようになる。モノの例としては、貴重品、車等が考えられる。また、修理品に対して所定発信機を対応付けて未修理品と区別するようにしてもよい。
【0018】
第7発明に係る測位システムは、第6発明の測位システムであって、データ処理機は、基準位置データと変動データとに基づいて得られる移動体の数および位置を測定し、受信機による電磁波の受信により所定発信機の数および位置を測定する。さらに、データ処理機は、移動体の数と所定発信機の数とが一致しているか否かを判断する。ここで、数が一致していると判断した場合には、データ処理機は、複数の所定発信機の位置と、移動体の位置とを比較することにより、所定発信機の位置と重複しない場所に位置している移動体の位置を特定する。
【0019】
ここでは、所定発信機は所定移動体に対応付けられるため、移動体の数と所定発信機の数とが一致している場合には、原則として、移動体の位置と所定発信機の位置とは一致もしくは相関がある。しかし、所定発信機を置き去りにして所定移動体が移動している場合には、両位置が一致等しない事態が例外的に生じうる。
これに対して、第7発明の測位システムでは、移動体の数および位置が測定され、所定発信機の数および位置が測定された場合において、データ処理機は、移動体の数と所定発信機の数とが一致していると判断した場合に、移動体の位置と、複数の所定発信機の位置とを比較することにより、所定発信機の位置と重複もしくは相関していない場所に位置している移動体の位置を特定する。これにより、移動体の位置と所定発信機の位置との差分によって、所定発信機を置き去りにして活動している移動体の位置を特定することができる。
【0020】
また、複数の発信機と、所定発信機と、受信機と、からなる1つの測位システムによって、内部犯行者を特定することが可能になる。
第8発明に係る測位方法は、以下の3つの各ステップによって位置の測定(測位)を行う方法である。第1のステップでは、受信機が、複数の発信機からの電磁波を受信する。第2のステップでは、データ処理機が、複数の発信機から受信機が受信するそれぞれの電磁波の変動を測定することで変動データを取得する。第3のステップでは、データ処理機が、発信機毎の変動データと、複数の発信機の受信機に対するそれぞれの基準位置データとを、発信機毎に対応させて処理を行うことで、複数の発信機それぞれと受信機との間の各領域を対象とした測位を行う。
【0021】
なお、ここでの発信機としては、例えば、RFIDタグ(例えばアクティブタグ)、無線LANを利用したタグ、微弱無線(例えば300MHz程度)の発信機等が含まれる。なお、本測位システムにおける効果を奏するためには、受信機は少なくとも一つあれば足りる。そして、基準位置データは、データ処理機が予め記憶していてもよいし、発信機が移動した後に所定の位置の定着する場合にその移動中の電磁波のゆらぎに基づいて事後的に位置特定して位置データを取得するようにしてもよい。
【0022】
従来の測位方法では、測位精度は、配置される無線読み取り装置の密度に依存することになる。このため、測位精度を向上させるためには、無線読み取り装置の数を増やして密に配置する必要がある。
これに対して第8発明の測位方法では、複数の発信機から発信されるそれぞれの電磁波を受信機が受信する。ここで、複数の発信機と受信機との間に移動体(例えば、人間等)が入り込むと、この移動体の動きによって、受信機が受信する電磁波にゆらぎが生ずる。そして、データ処理機は、受信機が受信する各発信機からの電磁波のゆらぎを測定することで発信機毎の変動データを得る。また、データ処理機は、発信機毎に得られる変動データと発信機毎の基準位置データを発信機毎に対応させて解析処理を行うことで、複数の発信機それぞれと受信機との間の各領域を対象とした移動体の位置測定(測位)を行う。
【0023】
これにより、受信機の設置密度を増大させることなく、1つの受信機によって測位精度を向上させることが可能になる。すなわち、従来の、複数の受信機が網の目状に敷き詰められて構成されている測位システムでは、発信機からの電磁波を受信した受信機を特定することによって測位を行っているため、測位精度は受信機の設置間隔によることになる。これに対して、第8発明の測位方法では、受信機と複数の発信機との間の測位を行うため、受信機の設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で測位することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
第1発明に係る測位システムでは、受信機の設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で測位することが可能になる。
第2発明に係る測位システムでは、予め固定されている発信機の固定位置データに基づいて測位を行うため、測位精度の信頼性を向上させることができる。
第3発明に係る測位システムでは、変動データを、受信機と複数の発信機との交信によって非接触に取得することができるため、変動データの取得が容易になる。
【0025】
第4発明に係る測位システムでは、測位対象の移動体の位置の履歴情報を時系列を追って比較することができるようになり、移動体が移動した様子を把握することが可能になる。
第5発明に係る測位システムでは、測位ムラを低減させて、効果的な測位を行うことが可能になる。
【0026】
第6発明に係る測位システムでは、各所定発信機の位置と、所定移動体および所定移動体以外の移動体の位置との両位置を重ね合わせる解析処理を行うことで、所定発信機が対応付けられていない所定移動体以外の移動体の位置を把握することが可能になる。
第7発明に係る測位システムでは移動体の位置と所定発信機の位置との差分によって、所定発信機を置き去りにして活動している移動体の位置を特定することができる。
【0027】
第8発明に係る測位方法では、受信機の設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で測位することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<発明の概略>
本発明では、所定の位置に固定配置された電波発信装置からリーダーが受信する各電磁波のゆらぎに基づいて測位を行う測位システムを提供する。本発明の測位システムでは、概略イメージ図の図1に示すように、複数の電波発信装置とアンテナを備えたリーダーとの間に移動体(例えば、人間等)が入り込むと、この移動体の動きによって、リーダーが受信する電磁波にゆらぎが生ずる。そして、コンピュータを用いて、各電波発信装置毎の電磁波の変動データと各電波発信装置の位置データとを電波発信装置毎に対応させて処理することで、リーダーと複数の電波発信装置との間の測位を行うことができるため、リーダーの設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で移動体を測位できる点に特徴がある。
【0029】
また、上記測位システムを利用しつつ、認可者に対して電波発信装置を所持させることで、不審者、内部犯行者を特定できる点にも特徴がある(他の実施形態(A)参照)。
以下、本発明の測位システムについて、具体的に説明する。
<測位システム100の概略構成>
本発明の一実施形態が採用された測位システム100の外観構成図を図2に、ブロック構成図を図3に、それぞれ示す。
【0030】
測位システム100は、主として、複数の固定アクティブタグ30(31、32、33、34)と、タグリーダー40と、データ処理機70等とから構成されている。この測位システム100は、測位を行う建物の対象エリア5に備え付けられている。そして、タグリーダー40が各固定アクティブタグ30から受信する電磁波のゆらぎを解析処理することで、対象エリア5内における測位を行う。
【0031】
固定アクティブタグ30(31、32、33、34)は、対象エリア5内の所定の位置に固定配置されている。なお、ここでは、RFIDタグの中でも電池を内蔵して数十m程度の距離での交信が可能なアクティブタグを用いている。
タグリーダー40は、対象エリア5内の所定の位置に固定配置され、各固定アクティブタグ30に向けて電磁波を送信し、各固定アクティブタグ30からの応答波としての電磁波を受信する。なお、上述のように、固定アクティブタグ30およびタグリーダー40共に対象エリア5内に固定されているため、固定アクティブタグ30とタグリーダー40との相対的な位置関係が固定された状態となっている。
【0032】
データ処理機70は、固定位置データ記憶部55と、履歴データ記憶部71、制御部75、表示部77とを有している。
固定位置データ記憶部55は、上述した相対的に固定配置された関係にある固定アクティブタグ30とタグリーダー40との位置関係に関する固定位置データD3を格納している。
【0033】
履歴データ記憶部71は、測位された対象のデータに対して時系列データを付することで履歴データとして格納している。
制御部75は、タグリーダー40が受信している各固定アクティブタグ30からの電磁波のゆらぎ(電磁波の時間的変動および強度変動)を測定することで、変動データD1を得る。ここで、タグリーダー40が受信する電磁波は、発信源である固定アクティブタグ30とそれを受信するタグリーダー40との間の領域近傍を、人間10が遮ったり様々な動作を行ったりした場合に、受信する電磁波のゆらぎとなって検出される(図2の2つのグラフ参照)。そして、制御部75は、発信元の電磁波にゆらぎが生じている固定アクティブタグ30(例えば、固定アクティブタグ31、32)を特定する。
【0034】
また、制御部75は、この特定された固定アクティブタグ31、32を含む固定位置データD3を、固定位置データ記憶部55から読み出して、固定アクティブタグ30毎に固定位置データD3と、変動データD1とを対応させる。
そして、制御部75は、変動データD1と固定位置データD3とを、固定アクティブタグ30毎に対応させて測位のための解析処理を行う。
【0035】
例えば、図2において示すように、タグリーダー40と固定アクティブタグ31や固定アクティブタグ32との間の領域近傍に人間10が移動してきた場合におけるタグリーダー40が受信する電磁波のゆらぎは、固定アクティブタグ32からのゆらぎよりも固定アクティブタグ31からのゆらぎのほうが大きくなっている。そして、制御部75が、固定アクティブタグ31からの電磁波と固定アクティブタグ32からの電磁波とのゆらぎ度合いの違いを判断する。これにより、制御部75が、固定アクティブタグ32や固定アクティブタグ31とタグリーダー40との間であって、固定アクティブタグ31側に偏った位置に移動体(人間10)が存在することを把握する。さらに、制御部75は、各固定アクティブタグ30の固定位置データD3を基準として、その固定位置から発信される各固定アクティブタグ30の電磁波の時間的変動に基づいて、タグリーダー40からの距離を把握する。これにより、対象エリア5内における移動体(人間10)の位置を正確に測位することができる。
【0036】
表示部77は、上記解析処理によって得られた測位データ(測位結果)を表示する。
<本実施形態の測位システム100の特徴>
(1)
一般に、従来の測位システムでは、測位精度は、配置される無線読み取り装置の密度に依存することになる。このため、測位精度を向上させるためには、無線読み取り装置の数を増やして密に配置する必要がある。
【0037】
これに対して、上記実施形態における測位システム100では、複数の固定アクティブタグ30から発信されるそれぞれの電磁波をタグリーダー40が受信する。ここで、複数の固定アクティブタグ30とタグリーダー40との間に人間10等の移動体が入り込むと、この移動体の動きによって、タグリーダー40が受信している電磁波にゆらぎが生じる。そして、データ処理機70は、タグリーダー40が受信する各固定アクティブタグ31、32、33、34からの電磁波のゆらぎを測定することで固定アクティブタグ30毎の変動データD1を得る。また、データ処理機70は、固定アクティブタグ30毎に得られる変動データD1と固定アクティブタグ30毎の固定位置データD3とを固定アクティブタグ30毎に対応させて処理を行うことで、複数の固定アクティブタグ31、32、33、34それぞれとタグリーダー40との間の各領域を対象とした人間10等の移動体の測位を行う。
【0038】
これにより、タグリーダー40の設置密度を増大することなく、1つのタグリーダー40によって測位精度を向上させることが可能になる。すなわち、従来の、多数のタグリーダー40が網の目状に敷き詰められて構成される測位システムでは、固定アクティブタグ30からの電磁波を受信したタグリーダー40を特定することによって測位を行っているため、測位精度はタグリーダー40の設置間隔によることになる。これに対して、上記実施形態の測位システム100では、タグリーダー40と複数の固定アクティブタグ30との間の測位を行うことができるため、タグリーダー40の設置間隔により定まる測位精度よりもさらに高い精度で測位することが可能になる。
【0039】
また、従来の測位システムでは、予め対象となる人間10等の移動体に対してRFIDタグを所持させることが前提となっている。
これに対して、上記測位システム100では、このようなRFIDタグを予め所持させなくても、タグリーダー40が受信する電磁波のゆらぎによって測位が可能になっている。このため、測位を行うに際して、測位対象にRFIDタグ予め所持させる必要をなくすることができる。
【0040】
(2)
また、上記実施形態における測位システム100では、複数の固定アクティブタグ30のタグリーダー40に対する絶対的な位置が予め固定されている。そして、予め固定されている固定位置データD3に基づいて測位を行う。このため、あらゆる手段によって正確に測定された固定位置データD3を利用して測位を行うことで、測位精度の信頼性を向上させることができる。
【0041】
(3)
また、上記実施形態における測位システム100では、タグリーダー40は、各固定アクティブタグ30に対して非接触に電磁波を送信する。これに対して各固定アクティブタグ30は、タグリーダー40からの電磁波を受信することにより、応答の電磁波を発生してタグリーダー40に対して非接触に返信する。これにより、このような電磁波の時間的変動や電磁波の強度変動に関する変動データD1を、タグリーダー40と複数の固定アクティブタグ30との交信によって非接触に取得することができるため、変動データD1の取得が容易になる。
【0042】
また、RFIDタグを用いた測位システムによると、100m程度のGPSを用いた測位システムの測位精度よりも測位精度を向上させることができる。しかも、タグリーダー40の設置密度を増大させる必要なく、測位精度を向上させることができる。
(4)
また、上記実施形態における測位システム100では、履歴データ記憶部71において、測位さえたデータの履歴が格納されている。このため、測位対象の人間10の位置の履歴情報を時系列に比較することで、人間10が移動した様子を把握することが可能になる。例えば、人間10が対象エリア5から離れていった場合に、位置の履歴を調べることにより、移動していった方向を推測することができるようになる。
【0043】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態の測位システム100では、RFIDタグを所持していない人を対象として測位する場合を例に挙げて説明を行った。
【0044】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図4に示すように、上記実施形態において説明した固定アクティブタグ30以外の非固定アクティブタグ90を用いた測位システム200であってもよい。この非固定アクティブタグ90は、認可者に対して予め付与されて不審者23(20)の位置の特定に利用する。
複数の所定移動体、例えば認証者11、12(10)に対して非固定アクティブタグ91、92(90)を対応付けている。また、データ処理機70に設けられている対応データ記憶部72(図4参照)において、この認証者10と非固定アクティブタグ90との対応データを格納させている。ここで、データ処理機70は、タグリーダー40が受信する非固定アクティブタグ91、92(90)からの電磁波によって各非固定アクティブタグ91、92(90)の位置を測位する。また、データ処理機70は、認証者11、12が動くことおよび認証者11、12以外の不審者23が動くことで生ずる複数の固定アクティブタグ30からの電磁波のゆらぎに基づいて、認証者11、12の位置および不審者23の位置を測位する。
【0045】
これにより、各非固定アクティブタグ91、92の位置と、認証者11、12および不審者23の位置との両位置を重ね合わせる解析処理を行うことができ、非固定アクティブタグ91、92が対応付けられていない人間である不審者23の位置を把握することが可能になる。
また、上述した非固定アクティブタグ90が対応付けられる所定移動体は、人間に限られず、例えば、正規なルートによって取り扱われたモノ(正規品)であってもよい。これにより、正規品とそうでないモノとを区別して、正規品でないモノの位置を特定することができるようになる。また、ここでのモノの例としては、貴重品、車等が考えられる。さらには、修理品に対して非固定アクティブタグ90を対応付けて未修理品と区別するようにしてもよい。
【0046】
また、図5に示すように、非固定アクティブタグ90は認証者10に対応付けられるため、認証者10の数と非固定アクティブタグ90の数とが一致している場合には、原則として、認証者10の位置と非固定アクティブタグ90の位置とは一致する。しかし、非固定アクティブタグ94を置き去りにして認証者であった者(内部犯行者24)が活動している場合には、両位置が一致しない例外的な事態が生じうる。
【0047】
これに対して、ここでの測位システム200では、図5に示すように、認証者11、12および認証者であった者(内部犯行者24)の数および位置が測定され、非固定アクティブタグ91、92、94の数および位置が測定される。そして、データ処理機70が、認証者11、12および認証者であった者(内部犯行者24)の数(3人)と非固定アクティブタグ91、92、94の数(3個)とが一致していると判断した場合に、認証者11、12および認証者であった者(内部犯行者24)の位置と、複数の非固定アクティブタグ91、92、94の位置とを比較することにより、非固定アクティブタグ94(90)の位置と重複しない場所に位置している内部犯行者24(認証者であった者)の位置を特定する。
【0048】
これにより、認証者11、12および内部犯行者24(対象エリア5内の全員)の位置と非固定アクティブタグ91、92、94の位置との差分によって、非固定アクティブタグ94を置き去りにして活動している内部犯行者24の位置を特定することができる。
また、内部犯行者の特定を、複数の固定アクティブタグ30と、非固定アクティブタグ90と、タグリーダー40と、からなる1つの測位システムによって実行することができる。
【0049】
(B)
上記実施形態の測位システム100では、タグリーダー40の位置を所定の位置に固定して測位する場合を例に挙げて説明を行った。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、タグリーダー40の配置場所としては、例えば、交信される電磁波への妨害が比較的少ない天井近傍にしてもよい。また、図6に示すように、タグリーダー40を収納するためのタグリーダー収納部81を有している空調室内機80が天井に略均等に埋め込まれている場合に、タグリーダー40をこのタグリーダー収納部に収納するようにしてもよい。なお、ここでのタグリーダー収納部81は、固定アクティブタグ30が配置されている面が電磁波を阻害しないように形成されていることが好ましい。
【0050】
そして、各空調室内機80のタグリーダー収納部81に複数のタグリーダー40を収納することで、タグリーダー40をエリア毎に略均等に配置することが可能になる。このため、測位ムラを低減させて、効果的な測位を行うことが可能になる。
なお、空調室内機80はそもそも空調効率の観点から天井に均等に配置されることが多い。この場合には特に、天井に均等に配置されている空調室内機80の位置を有効に利用することができる。また、タグリーダー40が天井近傍に配置されることで、固定アクティブタグ30との間の電磁波の阻害程度を抑えることができる場合があり、この場合には、測位の信頼性を向上させることができる。
【0051】
(C)
上記実施形態の測位システム100では、所定の位置に設置されているRFIDタグの位置データを予め格納した固定位置データ記憶部55を有する測位システム100を例に挙げて説明を行った。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図7に示すように、所定RFIDタグが設置された後に、各所定RFIDタグの位置をそれぞれから得られる電磁波によって読み取って基準位置データD2を認定し、基準位置データ記憶部56に記憶する測位システム300であってもよい。また、この場合、例えば、所定RFIDタグからの電磁波が所定時間以上の間変動しない場合に、RFIDタグの位置が変化していないと判断して、その位置が変化していないRFIDタグを所定RFIDと認定するようにしてもよい。この場合には、上述した固定位置データD3に代わって、上述のようにして認定されたデータを基準位置データD2として基準位置データ記憶部56に記憶する。これにより、上記実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0052】
(D)
上記実施形態では、RFIDタグのうちアクティブタグ(固定アクティブタグ30)とそのタグリーダー40とを用いた測位システム100について例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、無線LANを利用したタグと無線LANのアクセスポイントとを用いた測位システムであっても同様に、受信波のゆらぎを利用することで上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、微弱無線の発信機と微弱無線の受信機とを用いた測位システムであっても同様に、受信波のゆらぎを利用することで上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
(E)
上記実施形態の測位システム100では、固定アクティブタグ30とタグリーダー40との間に人間10が入り込むことによる電磁波のゆらぎを測定することで測位する場合を例に挙げて説明を行った。
【0054】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、固定アクティブタグ30とタグリーダー40との間にモノが入り込むことによる電磁波のゆらぎを検出してモノの測位、盗難防止が可能になる。
また、上述した変形例(A)に示されているように、不審者21、内部犯行者24についてのデータ処理の考え方を、モノに対して適用するようにしてもよい。例えば、貴重品に対して予め非固定アクティブタグ90を付しておくことができる。この場合、モノに付された非固定アクティブタグ90と共に移動している不審者21を犯人と推定することが可能になる。
【0055】
また、自らに付された非固定アクティブタグ90を置き去りにした内部犯行者24(認証者であった者)がモノを盗もうとした場合には、自発的に移動するはずのないモノの移動を検出することにより、まずモノが盗まれていることを把握することができる。そして、上記と同様にして内部犯行者24を特定することで、誰が何を盗もうとしたのかを把握することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、タグリーダー等の読み取り装置の数を増加させることなく移動体の測位精度を向上させることが可能になるため、移動体の位置をより正確に把握するための測位システムおよび測位方法等への適用が特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る測位システムの概略イメージ図。
【図2】本発明の一実施形態に係る測位システムの外観構成図。
【図3】本発明の一実施形態に係る測位システムのブロック構成図。
【図4】本発明の他の実施形態(A)に係る不審者の測位システムの外観構成図。
【図5】本発明の他の実施形態(A)に係る内部犯行者の測位システムの外観構成図。
【図6】本発明の他の実施形態(B)に係る空調室内機の外観構成図。
【図7】本発明の他の実施形態(C)に係る測位システムの外観構成図。
【符号の説明】
【0058】
30 アクティブタグ(発信機)
40 タグリーダー(受信機)
55 固定位置データ記憶部
70 データ処理機
71 履歴データ記憶部(履歴記憶部)
72 対応データ記憶部
75 制御部(データ処理機)
80 空調室内機
81 タグリーダー収納部(収納部)
90 非固定アクティブタグ(所定発信機)
100 測位システム
200 測位システム
D1 変動データ
D2 基準位置データ
D3 固定位置データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発信する複数の発信機(30)と、
前記複数の発信機(30)が発信する電磁波を受信する受信機(40)と、
前記複数の発信機(30)から前記受信機(40)が受信するそれぞれの電磁波の変動を測定することで得られる前記発信機(30)毎の変動データ(D1)と、前記複数の発信機(30)の前記受信機(40)に対するそれぞれの基準位置データ(D2)とを、前記発信機(30)毎に対応させて処理を行うことで、前記複数の発信機(30)それぞれと前記受信機(40)との間の各領域を対象とした測位を行うデータ処理機(70)と、
を備えた測位システム(100)。
【請求項2】
前記複数の発信機(30)は、それぞれ前記受信機(40)に対する相対的な位置が固定されるように配置されており、
前記データ処理機(70)は、前記固定されている複数の発信機(30)の前記受信機(40)に対するそれぞれの固定位置データ(D3)を格納している固定位置データ記憶部(55)を有しており、前記固定位置データ(D3)と前記固定されている発信機(30)からの電磁波とを前記発信機(30)毎に対応させて処理を行うことで測位する、
請求項1に記載の測位システム(100)。
【請求項3】
前記受信機(40)は、前記複数の発信機(30)に対して非接触に所定の信号を送信し、
前記発信機(30)は、前記受信機(40)からの所定の信号を受信することにより、電磁波を発生して前記受信機(40)に対して非接触に応答し、
前記変動データ(D1)は、前記発信機(30)が前記受信機(40)に対して応答する電磁波の時間的変動および/または電磁波の強度変動に関するデータである、
請求項1または2に記載の測位システム(100)。
【請求項4】
前記データ処理機(70)は、前記測位を行うことで得られたデータの履歴を格納する履歴記憶部(71)を有している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測位システム(100)。
【請求項5】
前記対象エリアの天井近傍に互いに略均等な距離を保って配置され、前記受信機(40)を収納するための収納部(81)を有する空調室内機(80)をさらに備えた、
請求項1から4のいずれか1項に記載の測位システム(100)。
【請求項6】
複数の所定移動体の移動に伴って移動するように前記複数の所定移動体に対して任意に対応付けられた複数の所定発信機(90)をさらに備え、
前記データ処理機(70)は、前記複数の所定移動体と前記複数の所定発信機(90)との対応データを格納する対応データ記憶部(72)を有し、前記基準位置データ(D2)と前記変動データ(D1)とに基づいて得られる移動体の位置に関する測位データと、前記受信機(40)による電磁波の受信により得られる前記複数の所定発信機(90)の基準位置データ(D2)とを比較することで前記所定移動体以外の移動体の位置を測位する、
請求項1に記載の測位システム(200)。
【請求項7】
前記データ処理機(70)は、前記基準位置データ(D2)と前記変動データ(D1)とに基づいて得られる移動体の数および位置を測定し、前記受信機(40)による電磁波の受信により前記所定発信機(90)の数および位置を測定し、前記移動体の数と前記所定発信機(90)の数とが一致しているか否かを判断し、
数が一致していると判断した場合に、前記複数の所定発信機(90)の位置と、前記移動体の位置とを比較することにより、前記所定発信機(90)の位置と重複しない場所に位置している前記移動体の位置を特定する、
請求項6に記載の測位システム(200)。
【請求項8】
受信機(40)が、複数の発信機(30)からの電磁波を受信する第1のステップと、
データ処理機(70)が、前記複数の発信機(30)から前記受信機(40)が受信するそれぞれの電磁波の変動を測定することで変動データ(D1)を取得する第2のステップと、
データ処理機(70)が、前記発信機(30)毎の変動データ(D1)と、前記複数の発信機(30)の前記受信機(40)に対するそれぞれの基準位置データ(D2)とを、前記発信機(30)毎に対応させて処理を行うことで、前記複数の発信機(30)それぞれと前記受信機(40)との間の各領域を対象とした測位を行う第3のステップと、
を備えた測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266966(P2006−266966A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87579(P2005−87579)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】