説明

測位装置、携帯型電子機器及びプログラム

【課題】測位精度の向上を実現すること。
【解決手段】携帯型電話機1の近距離無線通信部50が、移動体である自動車2の近距離
無線通信部250との間で通信可能な状態にあることが検出されなかった場合は、携帯型
電話機1自身の移動状況の情報である端末移動状況情報及び複数のGPS信号に基づいて
現在位置の測位が行われる。一方、近距離無線通信部250との間で通信可能な状態にあ
ることが検出された場合は、自動車2の移動状況の情報である移動体移動状況情報が取得
され、移動体移動状況情報及び複数のGPS信号に基づいて現在位置の測位が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、携帯型電子機器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が
広く知られており、カーナビゲーション装置等に利用されている。しかし、GPSによる
測位では、多くの誤差要因が潜在しており、測位誤差の発生を回避することが困難である
ため、この測位誤差を補償するための様々な技術が考案されている。
【0003】
その一例として、利用者により携行される携帯型電子機器に組み込まれる測位装置であ
って、GPSによる測位(絶対測位)と、利用者の歩数及び移動方向の情報に基づく測位
(相対測位)とを併用した測位を行う測位装置が、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−177772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている測位装置は、相対測位を行うために利用者の歩数
及び移動方向の情報を必要とする。このため、これらを検出するための加速度センサや振
動センサ、地磁気センサといった各種センサを装置に内蔵する必要があり、装置の小型化
、低コスト化を図る上での大きな障壁となる。
【0005】
また、測位装置を内蔵した携帯型電子機器(例えば携帯型電話機)は、バッグや衣服の
ポケットに収納されて、利用者によって携行される。従って、携行時の携帯型電子機器の
姿勢は任意の姿勢であり、更には携行中、一定ではなく変化する場合がある。このため、
各種センサが姿勢の変化に関わる不要な成分を検出してしまい、相対測位における精度低
下の大きな要因の1つとなっている。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、測位精
度の向上を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の発明は、携帯可能な電子機器に内蔵され、複数の衛
星信号に基づいて自機の現在位置を測位する測位装置であって、外部通信手段と、乗物で
ある移動体に備えられた通信機器との間で前記外部通信手段が通信可能な状態にあること
を検出する通信可能状態検出手段と、前記通信可能状態検出手段による検出がなされなか
った場合に第1の測位処理を行い、前記通信可能状態検出手段による検出がなされた場合
に前記外部通信手段を介して前記移動体から前記移動体自身の移動状況情報を取得し、該
取得した移動状況情報及び前記複数の衛星信号に基づいて現在位置を測位する第2の測位
処理を行う測位手段と、を備えた測位装置である。
【0008】
また、第7の発明として、プロセッサ及び外部通信手段を備えた携帯可能な電子機器の
前記プロセッサに、複数の衛星信号に基づいて自機の現在位置を測位させるためのプログ
ラムであって、乗物である移動体に備えられた通信機器との間で前記外部通信手段が通信
可能な状態にあることを検出する通信可能状態検出手段、前記通信可能状態検出手段によ
る検出がなされなかった場合に第1の測位処理を行い、前記通信可能状態検出手段による
検出がなされた場合に前記外部通信手段を介して前記移動体から前記移動体自身の移動状
況情報を取得し、該取得した移動状況情報及び前記複数の衛星信号に基づいて現在位置を
測位する第2の測位処理を行う測位手段、として前記プロセッサを機能させるためのプロ
グラムを構成しても良い。
【0009】
この第1の発明等によれば、乗物である移動体に備えられた通信機器との間で外部通信
手段が通信可能な状態にあることが検出された場合、外部通信手段を介して移動体自身の
移動状況情報が取得され、当該移動状況情報及び複数の衛星信号に基づいた現在位置の測
位が行われる。
【0010】
ここで、乗物である移動体とは、例えば自動車やバス、列車といった乗物のことを意味
し、移動状況情報とは、例えば速度や移動方向といった情報のことを意味する。移動体自
身の移動状況情報を検出するセンサ類は、移動体の駆動制御等のために移動体に設置され
ているのが通常である。これらのセンサ類によって検出される移動状況情報は、測位装置
の姿勢とは無関係に、移動に関する状況値のみを含んでいる。このため、移動体から取得
した移動状況情報を用いることで、高精度の測位を実現することができる。
【0011】
また、第2の発明として、第1の発明の測位装置であって、前記複数の衛星信号及び/
又は測位結果情報に基づいて自機の移動状況を算出する自機移動状況算出手段を更に備え
、前記測位手段は、前記第1の測位処理として、前記自機移動状況算出手段により算出さ
れた自機の移動状況及び前記複数の衛星信号に基づいて現在位置の測位を行う測位装置を
構成しても良い。
【0012】
また、第8の発明として、第7の発明のプログラムであって、前記複数の衛星信号及び
/又は測位結果情報に基づいて自機の移動状況を算出する自機移動状況算出手段として前
記プロセッサを機能させるとともに、前記測位手段が、前記第1の測位処理として、前記
自機移動状況算出手段により算出された自機の移動状況及び前記複数の衛星信号に基づい
て現在位置の測位を行うように前記プロセッサを機能させるためのプログラムを構成して
も良い。
【0013】
この第2の発明等によれば、乗物である移動体に備えられた通信機器との間で外部通信
手段が通信可能な状態にない場合には、複数の衛星信号及び/又は測位結果情報に基づい
て自機の移動状況が算出され、自機の移動状況及び複数の衛星信号に基づいて現在位置が
測位される。即ち、第1の発明等と相まって、通信可能状態の検出がなされたか否かに応
じて、移動体の移動状況情報及び複数の衛星信号に基づいた測位と、自機の移動状況及び
複数の衛星信号に基づいた測位とが切り替えられることとなる。従って、移動体との通信
が不可能な状況においても、適切な測位が行われることになる。
【0014】
また、第3の発明として、第1又は第2の発明の測位装置であって、前記移動体に備え
られた通信機器は該移動体の搭乗空間の一部又は全部を通信圏とする所定の通信規格に則
った無線通信機器であり、前記外部通信手段は前記通信規格と同一の規格に則った無線通
信手段である測位装置を構成しても良い。
【0015】
この第3の発明によれば、移動体の通信機器は、移動体の搭乗空間の一部又は全部を通
信圏とする。従って、通信可能状態検出手段による検出がなされた場合は、測位装置が確
実に移動体の内部に位置しており、移動体により運ばれている状態にあるといえる。
【0016】
また、第4の発明として、第1〜第3の何れか一の発明の測位装置であって、前記測位
手段は、前記第2の測位処理として、過去の測位結果と前記移動体から取得された移動状
況情報とに基づいて現在位置を推測する推測ステップと、前記複数の衛星信号に基づいて
暫定的な現在位置を測位する暫定測位ステップと、前記暫定測位ステップにおいて測位さ
れた暫定的な現在位置を前記推測ステップにおいて推測された現在位置を基に補正するこ
とで最終的な測位結果とする現在位置を決定する最終位置決定ステップとを実行する測位
装置を構成しても良い。
【0017】
また、第9の発明として、第7又は第8の発明のプログラムであって、前記測位手段が
、前記第2の測位処理として、過去の測位結果と前記移動体から取得された移動状況情報
とに基づいて現在位置を推測する推測ステップと、前記複数の衛星信号に基づいて暫定的
な現在位置を測位する暫定測位ステップと、前記暫定測位ステップにおいて測位された暫
定的な現在位置を前記推測ステップにおいて推測された現在位置を基に補正することで最
終的な測位結果とする現在位置を決定する最終位置決定ステップとを実行するように前記
プロセッサを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0018】
この第4の発明等によれば、第2の測位処理において、過去の測位結果と移動体から取
得された移動状況情報とに基づいて現在位置が推測される。携帯可能な電子機器に内蔵さ
れる測位装置が、衛星信号に基づいて自身の移動状況を演算しようとすると、衛星信号の
受信環境の影響を受けるため、精度の良い情報が求められない場合がある。例えば、ビル
街等での測位で可視衛星が少ない場合や衛星配置に偏りがある場合等は精度の良い情報が
求められない。一方、移動体から取得される移動状況情報は、乗物である移動体自身が保
有している情報であるため、速度や移動方向といった情報は、測位計算の過程で算出され
た速度情報、方位情報に比べて遙かに精度が良い。
【0019】
従って、測位装置が過去に測位した測位位置等の測位結果と、移動体から得られる精度
の良い移動状況情報とに基づけば、いわゆる推測航法等による現在位置の推測であったと
しても、一定の精度の現在位置の推測が期待できる。そして、衛星信号に基づいて測位さ
れた暫定的な現在位置が、推測された現在位置を基に補正されるため、より高精度な測位
を実現することができるようになる。尚、この補正方法としては例えばPVフィルター法
等の公知の方法を用いてよい。
【0020】
また、第5の発明として、第4の発明の測位装置であって、前記測位手段は、前記最終
位置決定ステップにおいて、前記移動体から取得された移動状況情報に基づいて前記補正
の程度を可変して補正する測位装置を構成しても良い。
【0021】
また、第10の発明として、第9の発明のプログラムであって、前記測位手段が、前記
最終位置決定ステップにおいて、前記移動体から取得された移動状況情報に基づいて前記
補正の程度を可変して補正するように前記プロセッサを機能させるためのプログラムを構
成しても良い。
【0022】
乗物である移動体は、急発進や急制動を行うし、停止中である場合もある。移動体から
取得される移動状況情報が、例えば停止中を示す情報であるのであれば、移動体内に位置
する測位装置の位置が変化するとは考えられない。そのため、移動状況情報が停止を示す
情報であるのであれば、現在位置を、前回測位した位置と同じ位置とするように補正する

【0023】
また、第6の発明として、第1〜第5の何れか一の発明の測位装置を備えた携帯型電子
機器を構成しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、測位装置を内蔵し、ナビゲーション機能を備えた携帯型電話機
を携帯型電子機器の一実施形態として説明する。本実施形態では、利用者が携帯型電話機
1を携行し、移動体である自動車2に搭乗して移動する場合を例に挙げて説明するが、本
発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0025】
1.原理
図1(A)、図1(B)は、本実施形態における測位の原理を説明するための図である
。携帯型電話機1には、複数のGPS衛星から送信される衛星信号(以下、「GPS信号
」と称す。)の捕捉・抽出を行い、現在位置を測位するGPS受信部70が内蔵されてい
る。また、自動車2との間で近距離無線通信を行うための近距離無線通信部50が備えら
れている。携帯型電話機1は、所定の時間間隔(例えば1秒毎)で、GPS受信機1Bに
より捕捉されたGPS信号に基づく測位計算を行い、自機の現在位置を測位する処理(以
下、「GPS測位処理」と称す。)を行う。
【0026】
自動車2には、自動車2の速度を検出して制御装置210に速度パルス信号を出力する
車速センサ221と、角速度・方位を検出して制御装置210に移動方向等の信号を出力
するジャイロセンサ223とが備えられ、車速センサ221及びジャイロセンサ223を
含む各種のセンサ類220からの信号に基づいて制御装置210が駆動系を制御する。
【0027】
また、自動車2には携帯型電話機1と近距離無線通信を行うための近距離無線通信部2
50が備えられ、自動車2の速度や移動方向といった自動車2の移動の状況に関する情報
(以下、「移動体移動状況情報」と称す。)が制御装置210から近距離無線通信部25
0に出力される。尚、制御装置210を介さずに、車速センサ221やジャイロセンサ2
23の出力信号を移動体移動状況情報として直接近距離無線通信部250に出力させる構
成としてもよい。
【0028】
また、携帯型電話機1と自動車2との近距離無線通信を実現するための通信モジュール
として、本実施形態ではBluetooth(登録商標)を用いるが、他の近距離無線通信規格に
則った通信装置を利用しても良いことは勿論である。尚、Bluetoothは、いわゆる「アド
ホックネットワーク」(中継機能を有する無線端末同士の接続により構成されるネットワ
ーク)を実現するための無線通信技術の一種であり、通信可能範囲が「約10m」で、無
指向性を特徴としている。従って、自動車2の搭乗空間が通信圏となるため、利用者が自
動車2に搭乗していることを確実に検出し、搭乗中の通信を確実に行うことが可能となる

【0029】
携帯型電話機1は、自動車2に備えられた近距離無線通信部250との間での通信が不
可能な状態(利用者が自動車2に搭乗しておらず、通信圏外に位置している状態)では、
従来の測位計算を行う(図1(A))。具体的には、GPS信号に含まれる航法メッセー
ジ等の情報に基づいてGPS衛星の位置、速度、移動方向といった情報(以下、「衛星情
報」と称す。)を算出する。そして、携帯型電話機1自身の移動状況の情報(以下、「端
末移動状況情報」と称す。)及び衛星情報に基づいて、携帯型電話機1の現在位置を算出
する。
【0030】
一方、近距離無線通信部250との間での通信が可能な状態(利用者が自動車2に搭乗
し、通信圏内に位置している状態)では、携帯型電話機1は、近距離無線通信部250か
ら移動体移動状況情報を受信し、移動体移動状況情報及び衛星情報に基づいて、携帯型電
話機1の現在位置を算出する(図1(B))。言い換えると、携帯型電話機1は、自動車
2との間で通信を行うことが可能である場合は、自動車2から取得した移動体移動状況情
報を自身の端末移動状況情報に置き換えて、測位計算を行うことになる。
【0031】
尚、本実施形態の測位計算は、先ず複数のGPS信号に基づいて暫定的な現在位置を測
位する。以下、この測位位置を「暫定測位位置」と称する。また、前回の測位位置と移動
体移動状況情報とに基づき、いわゆる推測航法の演算により現在位置を推測する。以下、
この推測した現在位置を「推測位置」と称する。そして、暫定測位位置を推測位置を基に
補正することで、最終的な現在位置を決定する。以下、この最終的に決定された測位位置
を「最終測位位置」と称する。この一連の測位計算については、「3.処理の流れ」で詳
細に説明する。
【0032】
2.構成
図2は、本実施形態における携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯
型電話機1は、ホストCPU(Central Processing Unit)10と、操作部20と、表示
部30と、携帯用無線通信部40と、近距離無線通信部50と、GPSアンテナ60と、
GPS受信部70と、ROM(Read Only Memory)80と、RAM(Random Access Memo
ry)90とを備えて構成される。尚、ホストCPU10と、ROM80と、RAM90と
、近距離無線通信部50と、GPS受信部70とにより、本実施形態の特徴的構成である
測位装置100が構成される。
【0033】
ホストCPU10は、ROM80に記憶されているシステムプログラム等の各種プログ
ラムに従って、携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサであり、電話機とし
ての機能の他、測位装置100の制御部としての機能を司る。
【0034】
操作部20は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、これら
の押下信号をホストCPU10に出力する。この操作部20の操作により、通話要求や、
ナビゲーション画面の表示要求等の各種指示入力がなされる。
【0035】
表示部30は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU1
0から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部10には、
日付及び時刻の情報や、ナビゲーション画面等が表示される。
【0036】
携帯用無線通信部40は、携帯型電話機の通信サービス事業者が設置した無線基地局と
の間で無線信号の送受信をおこなうアンテナ、RF変換器等によって実現される公知の通
信回路部であり、ホストCPU10の制御に基づいて無線信号の送受信を行い、通話やメ
ールの送受信を実現する。
【0037】
近距離無線通信部50は、Bluetooth等の無線通信モジュールにより実現され、ホスト
CPU10の制御に基づいて、自動車2が備える近距離無線通信部250との間で近距離
無線通信を行う通信装置である。
【0038】
GPSアンテナ60は、GPS衛星から送信されたGPS信号を含むRF信号を受信す
るアンテナであり、受信したRF信号をGPS受信部70に出力する。
【0039】
GPS受信部70は、SAW(Surface Acoustic Wave)71と、LNA(Low Noise A
mplifier)73と、TCXO(Temperature Controlled Crystal Oscillators)75と、
RF(Radio Frequency)回路部77と、ベースバンド処理回路部79とを備えて構成さ
れ、いわゆるGPS受信機に相当する回路部である。但し、本実施形態では、測位演算等
の処理を行うためのプロセッサやメモリ類はGPS受信部70内に構成せず、携帯型電話
機1の統括的な制御を行うホストCPU10及びROM80、RAM90によって兼用的
に実現される構成としている。GPS受信部70内に構成した場合の例については、「5
.変形例」で説明する。
【0040】
また、RF回路部77とベースバンド処理回路部79とは、それぞれ別のLSI(Larg
e Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能であ
る。更に、SAW20、LNA30を含んだGPS受信部70全体を1チップ化して製造
することも可能である。
【0041】
SAW71は、GPSアンテナ60で受信されたRF信号のうち、所定の周波数帯域成
分だけを通過させる帯域通過フィルタであり、通過させた信号をLNA73に出力する。
【0042】
LNA73は、SAW71を通過した信号を増幅するローノイズアンプであり、増幅し
た信号をRF回路部77に出力する。
【0043】
TCXO75は、所定の発振周波数を有する発振信号を生成する温度補償型水晶発振器
であり、生成した発振信号をRF回路部77に出力する。
【0044】
RF回路部77は、TCXO75から入力された発振信号を分周或いは逓倍することで
、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号とLNA73で増幅
された信号とを乗算することで、GPSアンテナ60、SAW71、LNA73を通過し
たRF信号を中間周波信号(以下、「IF信号」と称す。)にダウンコンバートする。そ
して、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換してベースバンド処
理回路部79に出力する。
【0045】
ベースバンド処理回路部79は、相関検出処理等を行う回路や相関検出を行うための拡
散符号を発生させる回路、データを復号する回路等で構成され、ホストCPU10の制御
に従って、RF回路部77から出力されたIF信号に対して相関検出処理等を行ってGP
S信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻情報等を取り出す。GP
S信号は、C/Aコード(Coarse and Acquisition)と呼ばれるスペクトラム拡散変調さ
れた信号である。そして、ベースバンド処理回路部79から出力された航法メッセージや
時刻情報等に基づいてホストCPU10が測位計算を行う。
【0046】
ROM80は、読み出し専用の記憶装置であり、携帯型電話機1を統括的に制御するた
めのシステムプログラムや、通話やメールの送受信を実現するためのプログラム、ナビゲ
ーション機能を実現するためのプログラム等の各種プログラムやデータを記憶している。
ホストCPU10は、これらのプログラムやデータに従って、携帯型電話機1の各部の制
御や各種の演算処理を実行する。
【0047】
RAM90は、読み書き可能な記憶装置であり、ホストCPU10により実行されるシ
ステムプログラム、各種処理プログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時
的に記憶するワークエリアを形成している。
【0048】
図3(A)、図3(B)は、ROM80及びRAM90に格納されたデータの一例を示
す図である。ROM80には、ホストCPU10により読み出され、測位処理(図6参照
)として実行される測位処理プログラム81が記憶されている。
【0049】
測位処理とは、自機の現在位置を測位する処理であり、次のように実行される。先ず、
近距離無線通信部50は、自身の通信圏内にアドホックネットワーク接続可能な通信機を
常時探索し、通信可能な通信機を検出した場合にアドホックネットワークを形成して無線
通信を確立する。
【0050】
一方、ホストCPU10は、近距離無線通信部50による自動車2の近距離無線通信部
250との間での無線通信が確立されたか否かを監視することで、携帯型電話機1と自動
車2との間の通信確立を検出する。即ち、近距離無線通信部50及び自動車2の近距離無
線通信部250の通信圏によれば、互いの通信が確立される場合とは、車内に携帯型電話
機1が位置する場合を意味する。
【0051】
そして、通信確立を検出した場合には、ホストCPU10は、当該自動車2から移動体
移動状況情報を受信して、受信した移動体移動状況情報に基づいた測位計算を行う。一方
、検出しない場合には、移動体移動状況情報を取得できないため、移動体移動状況情報を
用いることができず、従来同様の測位計算、即ち自機内で移動状況を演算して測位計算を
行う。尚、以上の測位処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0052】
RAM90には、端末移動状況情報に関する端末移動状況データ91と、測位された現
在位置に関するトラッキングデータ93とが記憶される。
【0053】
図4は、端末移動状況データ91のデータ構成例を示す図である。端末移動状況データ
91には、速度911及び移動方向913のデータが、最新の測位結果から時系列順に例
えば5回測位分記憶され、測位がなされる毎に更新される。移動方向913は、例えば地
球基準座標系における3次元の単位ベクトルとして表される。
【0054】
この端末移動状況データ91に格納される速度911及び移動方向913は、測位処理
において、携帯型電話機1と自動車2との間の通信確立が検出されている場合には、近距
離無線通信部50を通じて受信された移動体移動状況情報のデータに従った値が格納され
、検出されていない場合には、自機内で演算された端末移動状況情報のデータに従った値
が格納される。
【0055】
トラッキングデータ93は、測位された携帯型電話機1の位置に関するデータであり、
例えば地球基準座標系における3次元の座標値が記憶される。このトラッキングデータ9
3には、測位処理において、求められた現在位置が測位される毎に時系列順に記憶されて
いく。
【0056】
図5は、自動車2の構成を示すブロック図である。自動車2は、本実施形態に関わる機
能部である制御装置210と、センサ類220と、計器類230と、近距離無線通信部2
50とを備える他、エンジンや電動機などの自動車2を駆動させる動力源となる動力系2
60と、タイヤやエンジン等で発生した動力をタイヤに伝達する伝達機構等の駆動系27
0とを備えて構成される。
【0057】
センサ類220は、自動車2の走行速度を検出し、速度パルス信号として出力する車速
センサ221や、角速度や方位を検出して自動車2の進行方向を検出するジャイロセンサ
223等を含み、自動車2の走行状況や稼働状況を検出する各種のセンサである。
【0058】
計器類230は、速度計や燃料計等を含み、自動車2の現在の走行状況等を運転手に知
らせるための各種の計器である。
【0059】
近距離無線通信部250は、Bluetoothの無線通信モジュールにより実現される。尚、
近距離無線通信部250は、携帯型電話機1の近距離無線通信部50との間で無線通信を
行うものであり、互いに同一の通信規格に則った近距離無線通信モジュールであれば、Bl
uetooth以外のモジュールであっても良いのは勿論である。
【0060】
制御装置210は、ROM211及びRAM213を備え、コンピュータ制御基板とし
て実現される回路部であり、センサ類220で検出された各種の検出信号に基づき、RO
M211に記憶されている燃料噴射制御プログラムやトランスミッション制御プログラム
等に従って自動車2の各部を統括的に制御する。
【0061】
また、センサ類220により検出された走行状況等の情報又は信号を計器類230に出
力することで、運転手に現在の自動車2の状況(走行状況を含む。)を報知する。また、
制御装置210は、近距離無線通信部250を通じて、自動車2の移動状況に関する移動
体移動状況情報を発信させる。
【0062】
3.処理の流れ
図6は、携帯型電話機1において実行される測位処理及び自動車2において実行される
処理の流れを示すフローチャートである。図6では、携帯型電話機1の処理を右側、自動
車2の処理を左側にそれぞれ示している。尚、携帯型電話機1の測位処理では、GPS受
信部70において、GPSアンテナ60によるRF信号の受信や、RF回路部77による
IF信号へのダウンコンバート等を経て、ベースバンド処理回路部79においてGPS信
号の復調・復号が随時なされる状態にあるとする。
【0063】
先ず、自動車2の近距離無線通信部250が、自身の通信圏内にアドホックネットワー
ク接続可能な携帯型電話機1を探索し(ステップA1)、通信可能な携帯型電話機1を検
出しなかった場合は(ステップA3;No)、制御装置210が、自動車2と携帯型電話
機1との間の通信確立を不検出として、ステップA15へと処理を移行する。
【0064】
一方、近距離無線通信部250が通信可能な携帯型電話機1を検出した場合は(ステッ
プA3;Yes)、制御装置210は、自動車2と携帯型電話機1との間の通信確立を検
出し、近距離無線通信部250を通じて、当該携帯型電話機1との間で無線通信を開始す
る(ステップA5)。
【0065】
同様に、携帯型電話機1の近距離無線通信部50は、自身の通信圏内にアドホックネッ
トワーク接続可能な自動車2を探索し(ステップS1)、通信可能な自動車2を検出した
場合は(ステップS3;No)、ホストCPU10は、携帯型電話機1と自動車2との間
の通信確立を検出し、近距離無線通信部50を通じて、当該自動車2との間で無線通信を
開始させる(ステップS5)。
【0066】
無線通信を開始すると、自動車2の制御装置210は、センサ類220の車速センサ2
21及びジャイロセンサ223から、自動車2の現在の速度及び移動方向を移動体移動状
況情報として取得する(ステップA7)。そして、制御装置210は、近距離無線通信部
250を通じて、取得した移動体移動状況情報を携帯型電話機1に送信する(ステップA
9)。
【0067】
携帯型電話機1のホストCPU10は、近距離無線通信部50を通じて移動体移動状況
情報を受信すると(ステップS7)、GPS測位処理を行う(ステップS9)。GPS測
位処理では、先ず、ホストCPU10は、ステップS7で受信した移動体移動状況情報を
端末移動状況情報に代入する(ステップS91)。即ち、移動体移動状況情報を端末移動
状況情報に置き換え、RAM90の端末移動状況データ91に記憶させる。
【0068】
次いで、ホストCPU10は、ベースバンド処理回路部79において復調・復号された
GPS信号と移動体移動状況情報とに基づいて、測位計算を行う(ステップS93)。こ
こで、測位計算について詳細に説明する。
【0069】
先ず、ホストCPU10は、GPS衛星の地球周回移動と携帯型電話機1の移動による
GPS衛星と携帯型電話機1との相対的な位置関係の変化によって生じる衛星信号の受信
周波数のずれ等を、ドップラー情報として求める。この際、ホストCPU10は、ステッ
プS7で自動車2から受信した移動体移動状況情報を用いて、携帯端末のドップラー情報
を算出する。尚、ドップラー情報の算出方法は従来公知であるため、説明を省略する。
【0070】
次いで、ホストCPU10は、擬似距離、エフェメリス等の衛星情報、各種誤差の補正
値に基づいて暫定測位位置を算出する。また、前回の最終測位位置と移動体移動状況情報
とに基づいて、いわゆる推測航法の演算により推測位置を算出する。そして、先に求めた
暫定測位位置を推測位置を基に補正することで、今回の最終測位位置を決定する。
【0071】
図7は、暫定測位位置の補正の原理を説明するための図である。ここで説明する補正方
法は、PVフィルター法と呼ばれるものである。PVフィルター法では、前回の測位計算
で算出された最終測位位置と、移動体移動状況情報により表される「移動ベクトル」とに
基づいて推測位置を算出する。移動ベクトルの大きさが移動速度、移動ベクトルの向きが
移動方向に対応する。
【0072】
今、「m」回目の測位における推測位置を「PE(m)」、暫定測位位置を「PG(m)
」、最終測位位置を「P(m)」、移動ベクトルを「V(m)」で表すことにする。この
とき、「m+1」回目の測位では、「m」回目の測位における最終測位位置「P(m)」
と、移動ベクトル「V(m+1)」とに基づいて、推測位置「PE(m+1)」を算出す
る。
【0073】
具体的には、測位を行う時間間隔である“1秒”を速度に乗算することで、1秒間にお
ける携帯型電話機1の移動距離を算出する。そして、前回の最終測位位置を移動方向に対
して移動距離だけシフトした位置を、今回の推測位置とする。また、ドップラー情報と衛
星情報とに基づいて暫定測位位置「PG(m+1)」を求める。
【0074】
そして、推測位置「PE(m+1)」と暫定測位位置「PG(m+1)」とを線分で結び
、当該線分を「t:1−t」に内分する位置を、今回の最終測位位置「P(m+1)」に
決定する。但し、「t」は、「位置補正パラメータ」と称する係数であり、適宜設定され
る値である。例えば、この位置補正パラメータを「0.5」とした場合は、推測位置と暫
定測位位置との中点に対応する位置が最終測位位置となる。
【0075】
GPS測位処理を終了すると、ホストCPU10は、GPS測位処理で算出した今回の
最終測位位置をRAM90のトラッキングデータ93に記憶させ(ステップS11)、表
示部30のナビゲーション画面に最終測位位置をプロットすることで、ナビゲーション画
面の表示を更新する(ステップS13)。
【0076】
次いで、ホストCPU10は、通信圏外となった、即ち、近距離無線通信部50と自動
車2の近距離無線通信部250との間の通信が不能になったか否かを判定し(ステップS
15)、通信圏内であると判定した場合は(ステップS15;No)、ステップS7に戻
る。一方、通信圏外となったと判定した場合は(ステップS15;Yes)、ホストCP
U10は、自動車2との間の無線通信を終了する(ステップS17)。
【0077】
同様に、自動車2の制御装置210は、通信圏外となった、即ち、近距離無線通信部2
50と携帯型電話機1の近距離無線通信部50との間の通信が不能になったか否かを判定
し(ステップA11)、通信圏内であると判定した場合は(ステップA11;No)、ス
テップA7に戻る。一方、通信圏外となったと判定した場合は(ステップA11;Yes
)、制御装置210は、携帯型電話機1との間の無線通信を終了する(ステップA13)

【0078】
そして、制御装置210は、処理の終了指示がなされたか否かを判定する(ステップA
15)。具体的には、例えば自動車2のエンジンを「OFF」にする操作がなされた場合
に、処理の終了が指示されたものと判定する。
【0079】
そして、まだ終了指示がなされていないと判定した場合は(ステップA15;No)、
制御装置210は、ステップA1に戻り、終了指示がなされたと判定した場合は(ステッ
プA15;Yes)、処理を終了する。
【0080】
同様に、自動車2との間の無線通信を終了すると、携帯型電話機1のホストCPU10
は、処理の終了指示がなされたか否かを判定する(ステップS19)。具体的には、操作
部20を介して、例えばナビゲーション機能を「OFF」にする操作がなされた場合や、
携帯型電話機1の電源を「OFF」にする操作がなされた場合に、処理の終了が指示され
たものと判定する。
【0081】
そして、まだ終了指示がなされていないと判定した場合は(ステップS19;No)、
ホストCPU10は、ステップS1に戻り、終了指示がなされたと判定した場合は(ステ
ップS19;Yes)、測位処理を終了する。
【0082】
一方、ステップS3において、通信可能な自動車2が存在しないと判定した場合は(ス
テップS3;No)、ホストCPU10は、通信不能時GPS測位処理を行う(ステップ
S21)。
【0083】
通信不能時GPS測位処理では、ホストCPU10は、GPS信号と端末移動状況情報
とに基づいて測位計算を行い、携帯型電話機1の最終測位位置を算出する。尚、ここでの
測位計算もPVフィルター法に基づいて行うが、この場合は、端末移動状況情報を移動ベ
クトルとして計算を行う。
【0084】
その後、ホストCPU10は、通信不能時GPS測位処理で算出した最終測位位置をR
AM90のトラッキングデータ93に記憶させ(ステップS23)、表示部30のナビゲ
ーション画面に当該最終測位位置をプロットすることで、ナビゲーション画面の表示を更
新する(ステップS25)。そして、ホストCPU10は、ステップS19へと処理を移
行する。
【0085】
4.作用効果
本実施形態によれば、携帯型電話機1の近距離無線通信部50が、移動体である自動車
2の近距離無線通信部250との間で通信可能な状態にあることが検出されなかった場合
は、携帯型電話機1自身の移動状況の情報である端末移動状況情報及び複数のGPS信号
に基づいて現在位置の測位が行われる。一方、近距離無線通信部250との間で通信可能
な状態にあることが検出された場合は、自動車2の移動状況の情報である移動体移動状況
情報が取得され、移動体移動状況情報及び複数のGPS信号に基づいて現在位置の測位が
行われる。
【0086】
自動車2自身の移動体移動状況情報を検出するセンサ類220は、自動車2の駆動源の
制御等のために自動車2に設置されているものである。これらのセンサ類220によって
検出される移動体移動状況情報は、携帯型電話機1の姿勢とは無関係に、移動に関する状
況値のみを含んでいる。このため、自動車2から取得した移動体移動状況情報を用いるこ
とで、高精度の測位を実現することができる。
【0087】
また、携帯型電話機1が、ビル街等のいわゆるアーバンキャニオン環境に位置している
場合は、天空が開けていないため、捕捉可能なGPS衛星の数が少なくなり、一般に測位
精度が低下する。しかし、本実施形態では、自動車2の移動体移動状況情報に基づいて算
出された推測位置を基に暫定測位位置を補正する構成を採っているため、アーバンキャニ
オン環境においても測位精度の向上が実現される。
【0088】
さらに、本実施形態では、端末移動状況情報を検出するためのセンサ類を携帯型電話機
1に内蔵する必要がないため、携帯型電話機1の小型化、低コスト化を図ることが可能と
なる。
【0089】
5.変形例
5−1.適用例
本発明は、携帯型電話機の他、PDA(Personal Digital Assistants)やノートパソ
コン、腕時計、携帯型のナビゲーション装置等の各種携帯型の電子機器に適用することが
可能である。
【0090】
5−2.移動体
本実施形態では、乗物である移動体として自動車2を例に挙げて説明したが、バスや列
車、船舶、飛行機等の移動体に本発明を適用することも可能である。例えば、本発明を列
車に適用する場合は、列車に近距離無線通信装置を設置しておき、利用者が携行する携帯
型電話機1と無線通信を行うことで、列車の速度及び移動方向の情報を移動体移動状況情
報として送信するようにする。
【0091】
5−3.プロセッサ
本実施形態では、携帯型電話機1を制御するプロセッサとしてCPUを例に挙げて説明
したが、他には、例えばDSP(Digital Signal Processor)であっても良い。
【0092】
5−4.通信規格
本実施形態では、携帯型電話機1と自動車2との間の近距離無線通信を実現するための
無線通信モジュールとして、Bluetoothを採用するものとして説明したが、他には、例え
ばIEEE802.11によるワイヤレスLAN(Local Area Network)を採用しても良い。
【0093】
また、IrDA(Infrared Data Association)に代表される赤外線通信を利用してデ
ータのやり取りを行うことにしても良い。IrDAは、Bluetoothに比べて通信可能範囲
が狭小であるが、近距離無線通信部250の設置位置や設置台数を工夫することにより、
自動車2の搭乗空間内で十分に通信可能である。
【0094】
また、RFID(Radio Frequency Identification)に代表される非接触型の無線通信
を採用しても良い。この場合は、利用者が、携帯型電話機1を車内の所定位置(例えば、
座席の横やドア内側のポケット)に配置することとし、当該所定位置に携帯型電話機1が
配置されていることを検知することで、移動体移動状況情報を携帯型電話機1に送信する
ようにする。
【0095】
他には、無線通信を用いるのではなく、車内LANを用いて携帯型電話機1と自動車2
との間の通信を確立することにしても良い。
【0096】
5−5.測位処理
本実施形態では、携帯型電話機1のホストCPU10が、ソフトウェア的な演算を行っ
て測位処理を実行するものとして説明したが、ベースバンド処理回路部79内にプロセッ
サを設け、ベースバンド処理回路部79が行うことにしても良い。
【0097】
図8は、この場合における携帯型電話機1の構成を示すブロック図である。ベースバン
ド処理回路部79には、CPU791と、ROM793と、RAM795とが備えられて
おり、ROM793には、測位処理を実行するための測位処理プログラムが記憶されてい
る。そして、CPU791は、ホストCPU10から自動車2の移動体移動状況情報を入
力し、当該移動体移動状況情報に基づいて測位処理を行う。
【0098】
図9は、携帯型電話機1の他の構成を示すブロック図である。この場合も、ベースバン
ド処理回路部79のCPU791が測位処理を行うことに変わりはないが、GPS受信部
70の中に、近距離無線通信部78が設けられている。従って、CPU791は、ホスト
CPU10を介さずに、近距離無線通信部78から自動車2の移動体移動状況情報を直接
取得して、測位処理を行うことができる。
【0099】
5−6.位置補正
自動車2から取得された移動体移動状況情報に基づいて、暫定測位位置の補正の程度を
可変にしても良い。具体的には、本実施形態では、測位計算において暫定測位位置の補正
に用いる位置補正パラメータ「t」は一定値であるものとして説明したが、この位置補正
パラメータ「t」を、自動車2の走行状況に応じて可変に設定する。
【0100】
例えば、自動車2が停止している場合は、自動車2内に位置する携帯型電話機1の位置
が変化するとは考えられない。そのため、自動車2から受信した移動体移動状況情報が停
止中を示す情報であるのであれば、今回の最終測位位置を、前回の最終測位位置と同じ位
置とするように補正する。具体的には、移動体移動状況情報が停止中を示す情報であれば
、推測航法で求められる今回の推測位置は、前回の最終測位位置と一致する。従って、位
置補正パラメータ「t」を小さく設定することとし、例えば「0」としても良い。
【0101】
また、自動車2が急発進や急制動したような場合には、自動車2に搭載されているセン
サ類によって検出される移動体移動状況情報の方が、端末移動状況情報よりも精度が高く
なる。従って、この場合にも、位置補正パラメータ「t」を小さく設定することで、測位
精度を向上させることができる。
【0102】
5−7.端末移動状況情報の算出
本実施形態では、自動車2との間で無線通信を行うことが不可能な状況では、衛星情報
及び過去の測位結果の情報に基づいて端末移動状況情報を算出するものとして説明したが
、何れか一方の情報に基づいて端末移動状況情報を算出することにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1(A)は通信不能時の測位の説明図。図1(B)は通信可能時の測位の説明図。
【図2】携帯型電話機の構成を示すブロック図。
【図3】図3(A)はROMの構成を示す図。図3(B)はRAMの構成を示す図。
【図4】端末移動状況データのデータ構成例を示す図。
【図5】自動車の構成を示すブロック図。
【図6】自動車及び携帯型電話機における処理の流れを示すフローチャート。
【図7】暫定測位位置の補正の原理の説明図。
【図8】変形例における携帯型電話機の構成を示すブロック図。
【図9】変形例における携帯型電話機の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0104】
1 携帯型電話機、 2 自動車、 10 ホストCPU、 20 操作部、 30 表
示部、 40 携帯用無線通信部、 50 近距離無線通信部、 60 GPSアンテナ
、 70 GPS受信部、 71 SAW、 73 LNA、 75 TCXO、 77
RF回路部、 79 ベースバンド処理回路部、 80 ROM、 90 RAM、
100 測位装置、 210 制御装置、 220 センサ類、 230 計器類、 2
50 近距離無線通信部、 260 動力系、 270 駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可能な電子機器に内蔵され、複数の衛星信号に基づいて自機の現在位置を測位する
測位装置であって、
外部通信手段と、
乗物である移動体に備えられた通信機器との間で前記外部通信手段が通信可能な状態に
あることを検出する通信可能状態検出手段と、
前記通信可能状態検出手段による検出がなされなかった場合に第1の測位処理を行い、
前記通信可能状態検出手段による検出がなされた場合に前記外部通信手段を介して前記移
動体から前記移動体自身の移動状況情報を取得し、該取得した移動状況情報及び前記複数
の衛星信号に基づいて現在位置を測位する第2の測位処理を行う測位手段と、
を備えた測位装置。
【請求項2】
前記複数の衛星信号及び/又は測位結果情報に基づいて自機の移動状況を算出する自機
移動状況算出手段を更に備え、
前記測位手段は、前記第1の測位処理として、前記自機移動状況算出手段により算出さ
れた自機の移動状況及び前記複数の衛星信号に基づいて現在位置の測位を行う、
請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記移動体に備えられた通信機器は該移動体の搭乗空間の一部又は全部を通信圏とする
所定の通信規格に則った無線通信機器であり、
前記外部通信手段は前記通信規格と同一の規格に則った無線通信手段である、
請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記測位手段は、前記第2の測位処理として、
過去の測位結果と前記移動体から取得された移動状況情報とに基づいて現在位置を推測
する推測ステップと、
前記複数の衛星信号に基づいて暫定的な現在位置を測位する暫定測位ステップと、
前記暫定測位ステップにおいて測位された暫定的な現在位置を前記推測ステップにおい
て推測された現在位置を基に補正することで最終的な測位結果とする現在位置を決定する
最終位置決定ステップと、
を実行する請求項1〜3の何れか一項に記載の測位装置。
【請求項5】
前記測位手段は、前記最終位置決定ステップにおいて、前記移動体から取得された移動
状況情報に基づいて前記補正の程度を可変して補正する請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の測位装置を備えた携帯型電子機器。
【請求項7】
プロセッサ及び外部通信手段を備えた携帯可能な電子機器の前記プロセッサに、複数の
衛星信号に基づいて自機の現在位置を測位させるためのプログラムであって、
乗物である移動体に備えられた通信機器との間で前記外部通信手段が通信可能な状態に
あることを検出する通信可能状態検出手段、
前記通信可能状態検出手段による検出がなされなかった場合に第1の測位処理を行い、
前記通信可能状態検出手段による検出がなされた場合に前記外部通信手段を介して前記移
動体から前記移動体自身の移動状況情報を取得し、該取得した移動状況情報及び前記複数
の衛星信号に基づいて現在位置を測位する第2の測位処理を行う測位手段、
として前記プロセッサを機能させるためのプログラム。
【請求項8】
前記複数の衛星信号及び/又は測位結果情報に基づいて自機の移動状況を算出する自機
移動状況算出手段として前記プロセッサを機能させるとともに、
前記測位手段が、前記第1の測位処理として、前記自機移動状況算出手段により算出さ
れた自機の移動状況及び前記複数の衛星信号に基づいて現在位置の測位を行うように前記
プロセッサを機能させるための請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記測位手段が、前記第2の測位処理として、
過去の測位結果と前記移動体から取得された移動状況情報とに基づいて現在位置を推測
する推測ステップと、
前記複数の衛星信号に基づいて暫定的な現在位置を測位する暫定測位ステップと、
前記暫定測位ステップにおいて測位された暫定的な現在位置を前記推測ステップにおい
て推測された現在位置を基に補正することで最終的な測位結果とする現在位置を決定する
最終位置決定ステップと、
を実行するように前記プロセッサを機能させるための請求項7又は8に記載のプログラ
ム。
【請求項10】
前記測位手段が、前記最終位置決定ステップにおいて、前記移動体から取得された移動
状況情報に基づいて前記補正の程度を可変して補正するように前記プロセッサを機能させ
るための請求項9に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−107218(P2008−107218A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290817(P2006−290817)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】