説明

測位装置及び初期化方法

【課題】移動局の動きによらず、慣性航法機器の初期化を可能にする。
【解決手段】回転レバー,移動レバーの状態により、初期化方法を選択する測位装置として、直行する3軸の角速度と加速度を出力する慣性センサ手段と、測位情報の信号により位置及び速度を出力する受信手段と、クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、受信手段からの出力位置をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、移動レバーがオンである場合、受信手段の出力位置及び速度,慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、ドリフト量及び誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算する演算手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星から送られてくる信号,角速度及び加速度をもとに位置を測定する測位装置及びその初期化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開平8−21740号公報に記載の技術では、慣性航法機器の角速度と加速度のデータ,GPS受信機の位置と速度のデータをもとに、慣性航法機器の角速度と加速度のバイアスの推定量を算出し、補正を行い、位置,方位及び姿勢を算出、即ち、初期化する処理を行う。
【0003】
また特開2001−264105号公報に記載の技術では、慣性航法機器の角速度と加速度のデータをもとに、レベリング,コースアライメント及びファインアライメントを実施し、方位及び姿勢を算出、即ち、初期化する。
【0004】
特表平9−500700号公報に記載の技術では、ショベルにおいて静止状態から筐体を回転させ、筐体上の位置出力手段が出力する位置をもとに回転中心の位置,方位及び姿勢を算出する。
【0005】
【特許文献1】特開平8−21740号公報
【特許文献2】特開2001−264105号公報
【特許文献3】特表平9−500700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、方位及び姿勢の初期値が実際と大きく異なると、位置,方位及び姿勢を算出するの(初期化)に長い時間を要する。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、静止している場合に位置,方位及び姿勢を算出することができるが、移動や回転している場合、位置,方位及び姿勢を算出することができない。
【0008】
特許文献3に記載の技術は、クローラ上の筐体が回転している場合にのみ位置,方位及び姿勢を算出することができるが、クローラが動作し、移動している場合には位置,方位及び姿勢を算出することができない。
【0009】
本発明の第一の目的は、初期化時間を短縮することである。
【0010】
本発明の第二の目的は、慣性航法機器の初期化において、作業に取り掛かる前の車両動作にかかわらず、慣性航法機器の初期化を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の第一の目的は、互いに直行する3軸の角速度と、互いに直行する3軸の加速度を出力する慣性センサ手段と、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段と、クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、前記受信手段からの出力位置をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、前記移動レバーがオンである場合、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算する演算手段を備えたことを特徴とする測位装置により達成される。
【0012】
上記の第一の目的は、前記移動レバー及び前記回転レバーがオフである場合、慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算する前記演算手段を備えたことを特徴とする上記の測位装置により達成される。
【0013】
上記の第一の目的は、クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信する受信手段の出力位置及び速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、前記移動レバーがオンである場合、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする測位装置の初期化方法により達成される。
【0014】
上記の第一の目的は、前記移動レバー及び前記回転レバーがオフである場合、慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする請求項3の測位装置の初期化方法により達成される。
【0015】
上記の第二の目的は、互いに直行する3軸の角速度と、互いに直行する3軸の加速度を出力する慣性センサ手段と、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段と、クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、前記受信手段からの出力位置をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、筐体が所定の角度回転した後、前記筐体の位置,方位及び姿勢を初期値として、所定の時間、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算する演算手段を備えたことを特徴とする測位装置により達成される。
【0016】
上記の第二の目的は、クローラを移動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、筐体が所定の角度回転した後、前記筐体の位置,方位及び姿勢を初期値として、前記移動レバーがオンである場合、所定の時間、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする測位装置の初期化方法により達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の測位装置及びその初期化方法によれば、回転レバーや移動レバーの状態によって初期化方法を自動的に選択するため、操縦者が初期化方法を選択する操作が不要であり、初期化方法の選択ミスを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の測位装置及びその初期化方法によれば、回転レバー及び移動レバーの状態をもとに方位及び姿勢の初期値の算出の開始及び移動アライメントの開始を判断するため、誤った動作でアライメントを行ってしまい、誤った方位及び姿勢を算出するミスを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
初期化時間を短縮する第一の目的は、移動レバー及び回転レバーの状態を監視し、移動アライメントの前に方位及び姿勢の初期値を算出することにより実現される。
【0020】
作業に取り掛かる前の車両動作に捕われず、慣性航法機器の初期化するという第二の目的は、移動レバー及び回転レバーの状態によって初期化方法を選択することにより実現される。
【実施例1】
【0021】
図1に本発明の測位装置の一実施例の構成を示す。本発明の一実施例は、移動局測位装置100と、操作駆動装置110と、通信回線120と、基準局測位装置130とを備えている。移動局測位装置100は、通信手段102,受信手段101,慣性センサ手段
103,演算手段104,記憶手段105,表示手段106とを備えている。
【0022】
受信手段101は、アンテナ203を含んでおり、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/A(Coarse/Acquisition) コード生成,相関検出,復号,遅延ロックループ,位相ロックループの処理機能を備えている。測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をアンテナ203で受信し、軌道情報や測位衛星状態の情報などを含む航法メッセージを検出し、擬似距離(衛星からの距離),搬送波位相積算値及びドップラ周波数などの観測データを測定し、この観測データをもとにアンテナ203の位置及び速度を算出する。GPS衛星や擬似衛星などの測位衛星は宇宙あるいは地上から測位のための信号を発信する装置である。アンテナ203は、図2に示すように車両の筐体
202に取り付けられている。取り付け位置は操縦席上でも構わない。
【0023】
電話機,衛星通信機,無線機などの通信手段102は、通信回線120を経由して、基準局測位装置130からの観測データを受信手段101に送信する。ジャイロや加速度などの慣性センサ手段103は、三次元の角速度と三次元の加速度を出力する。
【0024】
CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)などの演算手段104は、受信手段101からの位置及び速度,慣性センサ手段103の角速度及び加速度,回転レバー111及び移動レバー114の状態をもとに、慣性センサ装置の初期化を行う。また、筐体202の位置,姿勢及び方位を算出する。メモリやハードディスクなどの記憶手段
105は、受信機の出力位置などを記憶している。ディスプレイなどの表示手段106は、回転レバー111及び移動レバー114の操作指示を表示する。
【0025】
操作駆動装置110は、回転レバー111,制御手段112,駆動手段113,移動レバー114,制御手段115,駆動手段116とを備えている。回転レバー111は、図2に示す操縦席,アーム,ショベルなどからなる筐体202を回転させる操作を行うスイッチである。回転レバー111がオンになると演算手段104と制御手段112にオンである信号(オン信号)が送られる。
【0026】
CPUなどの制御手段112は、回転レバー111のオン信号を受け取ると、駆動手段113に稼動信号を送る。エンジン,モータや油圧機器などの駆動手段113は、制御手段112の稼動信号を受け取ると、筐体202を回転させる。移動レバー114は、図2に示すクローラ201を稼動させる操作を行うスイッチである。移動レバー114がオンになると演算手段104と制御手段115にオンである信号(オン信号)が送られる。制御手段115は、移動レバー114のオン信号を受け取ると、駆動手段116に稼動信号を送る。油圧バルブやモータなどの駆動手段116は、制御手段115の稼動信号を受け取ると、クローラ201を回転させる。
【0027】
電話回線,衛星通信回線,無線などの通信回線120は、基準局測位装置130の観測データを移動局測位装置100に送る。基準局測位装置130は、受信手段131,通信手段132とを備えている。受信手段131は、アンテナ203を含んでおり、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号,遅延ロックループ,位相ロックループの処理機能を備えている。測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をアンテナ203で受信し、軌道情報や測位衛星状態の情報などを含む航法メッセージを検出し、擬似距離(衛星からの距離),搬送波位相積算値及びドップラ周波数などの観測データを測定する。電話機,衛星通信機,無線機などの通信手段132は、通信回線120を経由して、受信手段131からの観測データを移動局測位装置100に送信する。
【0028】
図1に示す本発明の測位装置の基準局測位装置130の動作手順を、図3を用いて説明する。
ステップ301:受信手段131は、測位衛星からの信号をアンテナ203で受信し、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号の処理を行うことにより軌道情報などの航法メッセージ,受信時刻,擬似距離及びドップラ周波数を検出する。相関検出の信号をもとに遅延ロックループ,位相ロックループの処理を行うことにより、搬送波位相積算値を検出する。これらの観測データを通信手段132に送る。
ステップ302:受信手段131は、航法メッセージ,受信時刻,擬似距離,ドップラ周波数及び搬送波位相積算値などの観測データを通信手段132に送り、通信手段132は観測データを通信回線120を通して、移動局測位装置100に送信する。
【0029】
図1に示す本発明の測位装置の移動局測位装置100の動作手順を、図4を用いて説明する。
ステップ401:回転レバー111及び移動レバー114はオンかオフかの状態の信号を演算手段104に送る。回転レバー111がオンで、移動レバー114がオフである場合、ステップ402に進み、移動レバー114がオンである場合、ステップ407に進む。
ステップ402:通信手段102は、通信回線120を経由して送られてきた基準局測位装置130の観測データを受信し、受信手段101に送る。受信手段101は、測位衛星からの信号をアンテナ203で受信し、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号の処理を行うことにより軌道情報などの航法メッセージ,受信時刻,擬似距離及びドップラ周波数を検出する。相関検出の信号をもとに遅延ロックループ,位相ロックループの処理を行うことにより、搬送波位相積算値を検出する。これらの移動局測位装置100の観測データと基準局測位装置130の観測データをもとに、リアルタイム・キネマティック測位を行い、受信手段101のアンテナ位置501を算出する。受信手段101は、アンテナ位置501を演算手段104に送る。
ステップ403:演算手段104は、受信手段101からのアンテナ位置501を受け取り、記憶手段105に送る。記憶手段105は、アンテナ位置501を記憶する。
ステップ404:アンテナ位置501が3つ以上ある場合、ステップ405に進み、ない場合、ステップ401に進む。
ステップ405:演算手段104は、図5に示すアンテナ位置501をもとに回転中心
502の位置,筐体202の方位及び姿勢を算出する。
ステップ406:筐体202の回転角度503が所定の角度以上である場合、ステップ
413に進み、所定の角度未満である場合、ステップ401に進む。
ステップ407:慣性センサ手段103は、三次元の角速度及び加速度を出力し、演算手段104に送る。
ステップ408:演算手段104は、三次元の角速度及び加速度を受け取る。角速度及び加速度のドリフト量を引いた三次元の角速度及び加速度と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量をもとにストラップダウン演算を行い、位置,速度,方位及び姿勢を算出する。算出後、角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量をゼロとする。ここで、角速度及び加速度のドリフト量,位置,速度,方位及び姿勢の誤差量の初期値はゼロである。
ステップ409:受信手段101の出力周期は慣性センサ手段103の出力周期よりも長いため、慣性センサ手段103の出力があっても受信手段101の出力がない場合がある。このため、受信手段101の出力タイミングである場合、ステップ410へ進み、出力タイミングでない場合、ステップ401に進む。
ステップ410:通信手段102は、通信回線120を経由して送られてきた基準局測位装置130の観測データを受信し、受信手段101に送る。受信手段101は、測位衛星からの信号をアンテナ203で受信し、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号の処理を行うことにより軌道情報などの航法メッセージ,受信時刻,擬似距離及びドップラ周波数を検出する。相関検出の信号をもとに遅延ロックループ,位相ロックループの処理を行うことにより、搬送波位相積算値を検出する。これらの移動局測位装置100の観測データと基準局測位装置130の観測データをもとに、リアルタイム・キネマティック測位を行い、位置を算出する。また、ドップラ周波数をもとに速度を算出する。受信手段101は、位置及び速度を演算手段104に送る。
ステップ411:演算手段104は、受信手段101から位置及び速度を受け取り、ステップ408で算出した位置,速度,方位及び姿勢をもとに、カルマンフィルタを用いて、角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を算出する。
ステップ412:移動時間が所定の時間よりも大きい場合、ステップ413へ進み、所定の時間以下である場合、ステップ401に進む。
ステップ413:慣性センサ手段103の初期化処理を終了する。
【0030】
図4に示す本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置100の動作手順のステップ412において、カルマンフィルタの推定誤差共分散が所定の値よりも小さくなったときに初期化を終了しても構わない。
【0031】
図4に示す本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置100の動作手順において、慣性センサ手段103の角速度のドリフト量の性能が5°/時間以下である場合、図6に示す静止アライメントの動作手順のステップ601〜ステップ606を追加すると、静止した状態でも慣性センサ手段103の初期化が可能となる。
【0032】
図1に示す本発明の測位装置の一実施例の動作手順を、図6を用いて説明する。
ステップ401:回転レバー111及び移動レバー114はオンかオフかの状態を演算手段104に送る。回転レバー111がオンで、移動レバー114がオフである場合、ステップ402に進み、移動レバー114がオンである場合、ステップ408に進み、回転レバー111がオフで、移動レバー114がオフである場合、ステップ601に進む。
ステップ601:慣性センサ手段103は、三次元の角速度及び加速度を出力し、演算手段104に送る。
ステップ602:レベリング及びコースアライメントが終了した場合、ステップ605に進み、終了していない場合、ステップ603に進む。
ステップ603:演算手段104は、三次元の加速度をもとに重力方向を検出し、水平面を算出し、レベリング処理を実施する。
ステップ604:演算手段104は、三次元の角速度をもとに自転による角速度を測定し、自転による角速度をもとに自転方向を検出し、真北方向を算出し、コースアライメントを実施する。
ステップ605:演算手段104は、三次元の角速度及び加速度を観測量,方位及び姿勢を状態量として、カルマンフィルタを用いて、方位及び姿勢を算出する。この処理はファインアライメントである。
ステップ606:カルマンフィルタの推定誤差共分散が所定の値よりも小さい場合、ステップ413に進み、所定の値以上である場合、ステップ401に進む。
【0033】
図1に示す本発明の測位装置の一実施例において、基準局測位装置130,通信回線
120,通信手段102を削除し、受信手段101が単独測位で位置及び速度を算出しても、慣性センサ手段103の初期化を行うことができる。
【0034】
ショベルなどの車両の作業前の動作として、作業場所までの移動やその場での旋回などがある。図4に示す本発明の測位装置の一実施例の動作手順によれば、回転レバー111や移動レバー114の状態によって初期化方法を自動的に選択するため、ショベルなどの車両の作業前の動作がどのようなものでも慣性センサ手段103の初期化が可能である。また、操縦者が初期化方法を選択する操作が不要であり、選択ミスを防ぐことができる。
【0035】
図1に示す本発明の測位装置の移動局測位装置100の動作手順を、図7及び図8を用いて説明する。
ステップ701:回転レバー111及び移動レバー114はオンかオフかの状態の信号を演算手段104に送る。回転レバー111がオンで、移動レバー114がオフである場合、ステップ703に進み、それ以外の場合、ステップ702に進む。
ステップ702:演算手段104は、表示情報(操作指示)「回転レバー111をオンにし、移動レバー114をオフにしてください。」を表示手段106に送る。表示手段106は表示情報(操作指示)「回転レバー111をオンにし、移動レバー114をオフにしてください。」を出力する。
ステップ703:通信手段102は、通信回線120を経由して送られてきた基準局測位装置130の観測データを受信し、受信手段101に送る。受信手段101は、測位衛星からの信号をアンテナ203で受信し、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号の処理を行うことにより軌道情報などの航法メッセージ,受信時刻,擬似距離及びドップラ周波数を検出する。相関検出の信号をもとに遅延ロックループ,位相ロックループの処理を行うことにより、搬送波位相積算値を検出する。これらの移動局測位装置100の観測データと基準局測位装置130の観測データをもとに、リアルタイム・キネマティック測位を行い、受信手段101のアンテナ位置501を算出する。受信手段101は、アンテナ位置501を演算手段104に送る。
ステップ704:演算手段104は、受信手段101からのアンテナ位置501を受け取り、記憶手段105に送る。記憶手段105は、アンテナ位置501を記憶する。
ステップ705:アンテナ位置501が3つ以上ある場合、ステップ706に進み、ない場合、ステップ701に進む。
ステップ706:演算手段104は、図5に示すアンテナ位置501をもとに回転中心
502の位置,筐体202の方位及び姿勢を算出する。
ステップ707:筐体202の回転角度503が所定の角度以上である場合、ステップ
708に進み、所定の角度未満である場合、ステップ701に進む。
ステップ708:回転レバー111及び移動レバー114はオンかオフかの状態の信号を演算手段104に送る。回転レバー111あるいは移動レバー114がオンである場合、ステップ710に進み、それ以外の場合、ステップ709に進む。
ステップ709:演算手段104は、表示情報(操作指示)「回転レバー111あるいは移動レバー114をオンにしてください。」を表示手段106に送る。表示手段106は表示情報(操作指示)「回転レバー111あるいは移動レバー114をオンにしてください。」を出力する。
ステップ710:慣性センサ手段103は、三次元の角速度及び加速度を出力し、演算手段104に送る。
ステップ711:演算手段104は、三次元の角速度及び加速度を受け取る。角速度及び加速度のドリフト量を引いた三次元の角速度及び加速度と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量をもとにストラップダウン演算を行い、位置,速度,方位及び姿勢を算出する。算出後、角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量をゼロとする。ここで、角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量の初期値はゼロである。
ステップ712:受信手段101の出力周期は慣性センサ手段103の出力周期よりも長いため、慣性センサ手段103の出力があっても受信手段101の出力がない場合がある。このため、受信手段101の出力タイミングである場合、ステップ713へ進み、出力タイミングでない場合、ステップ708に進む。
ステップ713:通信手段102は、通信回線120を経由して送られてきた基準局測位装置130の観測データを受信し、受信手段101に送る。受信手段101は、測位衛星からの信号をアンテナ203で受信し、ダウンコンバート,アナログ・デジタル・コンバート,直交検波,C/Aコード生成,相関検出,復号の処理を行うことにより軌道情報などの航法メッセージ,受信時刻,擬似距離及びドップラ周波数を検出する。相関検出の信号をもとに遅延ロックループ,位相ロックループの処理を行うことにより、搬送波位相積算値を検出する。これらの移動局測位装置100の観測データと基準局測位装置130の観測データをもとに、リアルタイム・キネマティック測位を行い、位置を算出する。また、ドップラ周波数をもとに速度を算出する。受信手段101は、位置及び速度を演算手段104に送る。
ステップ714:演算手段104は、受信手段101から位置及び速度を受け取り、ステップ711で算出した位置,速度,方位及び姿勢をもとに、カルマンフィルタを用いて、角速度及び加速度のドリフト量を算出する。
ステップ715:移動時間が所定の時間よりも大きい場合、ステップ716へ進み、所定の時間以下である場合、ステップ708に進む。
ステップ716:慣性センサ手段103の初期化処理を終了する。
【0036】
図8に示す本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置100の動作手順のステップ715において、カルマンフィルタの推定誤差共分散が所定の値よりも小さくなったときに初期化を終了しても構わない。
【0037】
図1に示す本発明の測位装置の一実施例において、基準局測位装置130,通信回線
120,通信手段102を削除し、受信手段101が単独測位で位置及び速度を算出しても、慣性センサ手段103の初期化を行うことができる。
【0038】
移動アライメントにおいて、方位及び姿勢の初期値が実際と大きく異なると、初期化するのに長い時間を要してしまう。図7及び図8に示す本発明の測位装置の一実施例の動作手順によれば、移動アライメントの前にクローラ201上の筐体202を回転させて、受信手段101の位置をもとに方位及び姿勢の初期値を算出し、移動アライメントの初期値とするため、カルマンフィルタの収束が短くなり、慣性センサ手段103の初期化に要する時間を短縮することができる。
【0039】
筐体202の回転により方位及び姿勢を求める方法や静止アライメントの後、受信手段101と慣性センサ手段103の複合航法を行うと、航法モード直後ではカルマンフィルタの推定誤差共分散が大きく出力位置,方位及び姿勢の精度が悪くなる。図7及び図8に示す本発明の測位装置の一実施例の動作手順によれば、移動アライメントにより、推定誤差共分散を小さくできるため、航法モードを始めたときに出力位置,方位及び姿勢の精度が良くなる。
【0040】
図7及び図8に示す本発明の測位装置の一実施例の動作手順によれば、回転レバー111及び移動レバー114の状態をもとに方位及び姿勢の初期値の算出の開始及び移動アライメントの開始を判断するため、誤った動作でアライメントを行ってしまい、誤った方位及び姿勢を算出するミスを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
測位装置をショベルに適用することにより、慣性航法機器の初期化時間を短縮することができる。また、作業前の動作に捕らわれず、初期化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の測位装置の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の測位装置の一実施例を搭載した車両を示す図である。
【図3】本発明の測位装置の一実施例の基準局測位装置の動作を示す図である。
【図4】本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置の動作を示す図である。
【図5】本発明の測位装置の一実施例を搭載した車両を示す図である。
【図6】本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置の動作を示す図である。
【図7】本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置の動作を示す図である。
【図8】本発明の測位装置の一実施例の移動局測位装置の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
100…移動局測位装置、101,131…受信手段、102,132…通信手段、
103…慣性センサ手段、104…演算手段、105…記憶手段、106…表示手段、
110…操作駆動装置、111…回転レバー、112,115…制御手段、113,116…駆動手段、114…移動レバー、120…通信回線、130…基準局測位装置、201…クローラ、202…筐体、203…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直行する3軸の角速度と、互いに直行する3軸の加速度を出力する慣性センサ手段と、
宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段と、
クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、前記受信手段からの出力位置をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、前記移動レバーがオンである場合、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算する演算手段を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記移動レバー及び前記回転レバーがオフである場合、慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算する前記演算手段を備えたことを特徴とする請求項1の測位装置。
【請求項3】
クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信する受信手段の出力位置及び速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、
前記移動レバーがオンである場合、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする測位装置の初期化方法。
【請求項4】
前記移動レバー及び前記回転レバーがオフである場合、慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする請求項3の測位装置の初期化方法。
【請求項5】
互いに直行する3軸の角速度と、互いに直行する3軸の加速度を出力する慣性センサ手段と、
宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段と、
クローラを稼動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、前記受信手段からの出力位置をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、筐体が所定の角度回転した後、前記筐体の位置,方位及び姿勢を初期値として、所定の時間、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算する演算手段を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項6】
クローラを移動させる移動レバーがオフで、クローラの上にある筐体を回転させる回転レバーがオンである場合、宇宙あるいは地上から測位情報を発信する衛星の信号を受信し、位置及び速度を出力する受信手段をもとに筐体の位置,方位及び姿勢を計算し、
筐体が所定の角度回転した後、前記筐体の位置,方位及び姿勢を初期値として、前記移動レバーがオンである場合、所定の時間、前記受信手段の出力位置及び速度、前記慣性センサ手段の出力角速度及び加速度をもとに前記出力角速度及び加速度のドリフト量と、位置,速度,方位及び姿勢の誤差量を計算し、前記ドリフト量及び前記誤差量だけ補正して、筐体の位置,方位及び姿勢を計算することを特徴とする測位装置の初期化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−38418(P2008−38418A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212734(P2006−212734)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】