説明

測光装置および撮像装置

【課題】蓄積型の測光センサを用いて適切に情報を得る測光装置を提供する。
【解決手段】測光装置は、蓄積型の測光センサ19と、測光センサ19で得られる出力の最大値に基づいて測光センサ19を蓄積制御する第1制御、および測光センサ19による平均的な出力値に基づいて測光センサ19を蓄積制御する第2制御を行う蓄積制御手段23、24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置およびこの測光装置を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄積型の測光素子を用い、素子の受光面を複数の領域に分割して測光する際に、測光素子の出力の最大値が飽和せずに、かつ飽和レベルに近い値をとるように測光素子を蓄積制御するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3601146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同じ蓄積型の測光素子を用い、色フィルタを介した光束を受光して得られる出力に基づいて測光する対象の色情報を得ようとした時、出力の最大値を基準に蓄積制御すると、不用意に出力が低下する部分が生じ、適切な色情報が得られなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明による測光装置は、蓄積型の測光センサと、測光センサで得られる出力の最大値に基づいて測光センサを蓄積制御する第1制御、および測光センサによる平均的な出力値に基づいて測光センサを蓄積制御する第2制御を行う蓄積制御手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項1に記載の測光装置において、蓄積制御手段は、第1制御および第2制御を択一的に切替えることが好ましい。
(3)請求項2に記載の測光装置において、蓄積制御手段は、第2制御の前に第1制御を行うことが好ましい。
(4)請求項1〜3のいずれか一項に記載の測光装置において、蓄積制御手段は、第1制御時は、出力の最大値が測光センサの飽和出力レベルを超えないように測光センサの蓄積時間およびゲインを決定し、第2制御時は、第1制御時の蓄積時間およびゲインに基づいて測光センサの平均的な出力値が所定範囲の値になるように測光センサの蓄積時間およびゲインを決定することが好ましい。
(5)請求項4に記載の測光装置において、蓄積制御手段は、第1制御時の測光センサの蓄積時間が所定時間より長い場合に、第2制御を行わないことが好ましい。
(6)請求項4に記載の測光装置において、測光センサは、光束の受光面を複数の領域に分割して該領域ごとに出力を得るように構成されるとよい。この場合の蓄積制御手段は、第1制御時、複数の領域における出力どうしの差が所定値以下の場合に、第2制御を行わないことが好ましい。
(7)請求項6に記載の測光装置はさらに、色フィルタを備えてもよい。この場合の測光センサの領域間の出力の差は、測光センサが色フィルタを通して受光した光束の輝度値または所定色の出力値から得ることが好ましい。
(8)本発明による撮像装置は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測光装置と、色フィルタと、第1制御で得られる測光センサの出力に基づく輝度情報を用いて露出制御を行い、色フィルタを介した光束に対して第2制御で得られる測光センサの出力に基づく輝度情報または色情報を用いて焦点検出制御を行う撮影制御手段とを備えることを特徴とする。
(9)本発明による撮像装置は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測光装置と、撮影手段と、色フィルタと、色フィルタを介した光束に対して第2制御で得られる測光センサの出力に基づく色情報および輝度情報を用いて撮影手段が撮影するシーンを解析する解析手段とを備えることを特徴とする。
(10)本発明による撮像装置は、請求項5または6に記載の測光装置と、撮影手段と、色フィルタと、色フィルタを介した光束に対して第1制御で得られる測光センサの出力に基づく色情報および輝度情報を用いて撮影手段が撮影するシーンを解析する解析手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蓄積型の測光センサを用いて適切に情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した電子カメラの要部構成を説明する図である。図1において、カメラ本体10に対して着脱可能に構成される撮影レンズ50が装着されている。
【0008】
被写体からの光は、撮影レンズ50のレンズ光学系51および絞り52を介してカメラ本体10へ入射される。カメラ本体10に入射した被写体光は、レリーズ前は破線で示すように位置するクイックリターンミラー(以下メインミラーと呼ぶ)11で上方のファインダ部へ導かれて拡散スクリーン14に結像する。また、カメラ本体10に入射した被写体光の一部はサブミラー21で下方へ反射され、測距素子22にも入射する。測距素子22は、撮影レンズ50による焦点調節状態を検出する焦点検出(AF処理)時に用いられる公知の瞳分割方式のものである。
【0009】
拡散スクリーン14に結像した被写体光はさらに、コンデンサレンズ20を介してペンタプリズム15へ入射する。ペンタプリズム15は、入射された被写体光を接眼レンズ16へ導く一方、その一部を測光用光学系17へも導く。測光用光学系17へ入射された光は、測光レンズ18を介して測光センサ19上に被写体像を結像する。測光センサ19は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCCDイメージセンサなどによって構成される。測光センサ19は、被写体像の明るさに応じた測光処理用の光電変換信号を出力する。
【0010】
レリーズ後はメインミラー11が実線で示される位置へ回動し、被写体光はシャッタ12を介して撮像素子13へ導かれて撮像面上に被写体像を結像する。撮像素子13は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCCDイメージセンサなどによって構成される。撮像素子13は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像の明るさに応じた撮影用の光電変換信号を出力する。
【0011】
電子カメラは、撮影制御回路25によって撮影動作が制御される。測光センサ19は、後述する測光処理時に撮影制御回路25からの指示を受けた測光回路24および蓄積制御回路23によって制御される。なお、蓄積制御回路23、測光回路24および撮影制御回路25は、実際にはカメラ本体10の内部に配設されている。
【0012】
図2は、上述した撮影制御回路25が行う撮影処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS11において、撮影制御回路25は、不図示のレリーズボタンが半押し操作されたか否かを判定する。撮影制御回路25は、半押し操作された場合にはステップS11を肯定判定してステップS12へ進み、半押し操作されない場合にはステップS11を否定判定してステップS21へ進む。
【0013】
ステップS12において、撮影制御回路25は後述するセンサ制御マイコンへ指示を送り、測光処理を行わせてステップS13へ進む。測光処理の詳細については後述する。ステップS13において、撮影制御回路25は、測距素子22による検出信号を用いてAF処理を行い、ステップS14へ進む。ステップS14において、撮影制御回路25は、レリーズボタン(不図示)が全押し操作されたか否かを判定する。撮影制御回路25は、全押し操作された場合にはステップS14を肯定判定してステップS15へ進み、全押し操作されない場合にはステップS14を否定判定してステップS11へ戻る。
【0014】
ステップS15において、撮影制御回路25は不図示のシーケンス制御装置へ指示を送り、メインミラー11のアップ駆動を開始させてステップS16へ進む。ステップS16において、撮影制御回路25は、撮像素子13の初期化を行ってステップS17へ進む。ステップS17において、撮影制御回路25は撮像素子13に撮影用の電荷蓄積を所定時間行わせる。なお、測光処理結果を用いた露出演算で算出された制御露出とするように、絞り52の駆動およびシャッタ12の走行幕駆動がシーケンス制御装置(不図示)によって行われる。撮影制御回路25は、撮像素子13に蓄積された電荷の掃き出しを指示してステップS18へ進む。
【0015】
ステップS18において、撮影制御回路25はシーケンス制御装置(不図示)へ指示を送り、メインミラー11のダウン駆動を開始させてステップS19へ進む。ステップS19において、撮影制御回路25は、画像を構成する電荷信号(光電変換信号)に対して所定の画像処理を行ってステップS20へ進む。ステップS20において、撮影制御回路25は、画像処理後のデータを記録媒体(不図示)に記録して図2による撮影処理を終了する。
【0016】
ステップS11を否定判定して進むステップS21において、撮影制御回路25はタイムアップか否かを判定する。撮影制御回路25は、無操作状態で所定時間が経過するとステップS21を肯定判定し、図2による処理を終了する。一方、撮影制御回路25は、所定時間が経過していない場合にはステップS21を否定判定し、ステップS11へ戻る。
【0017】
以下、測光処理についてさらに詳細に説明する。
<測光センサの構成>
図3は、測光センサ19を説明する図である。測光センサ19はオプティカルブラック部19bと有効画素部19aとを有する。オプティカルブラック部19bに含まれる画素は遮光されており、センサ出力の基準となる信号を出力する。有効画素部19aに含まれる画素は、カラーフィルタ19c(図1)を介して受光した光電変換信号を出力する。本例では、R,G,Bのカラーフィルタ19cをもつ画素を1画素として構成する。
【0018】
測光センサ19には、図1の蓄積制御回路23および測光回路24に対応するセンサ制御マイコンから駆動用クロック信号、電荷蓄積時間を制御する信号、および増幅利得を制御するゲイン制御信号がそれぞれ入力される。測光センサ19は、蓄積した電荷信号(測光信号Vout)をA/Dタイミング信号に同期させて、A/Dタイミング信号ともにセンサ制御マイコンへ出力する。測光回路24は、測光信号VoutをA/D変換(アナログ信号→ディジタル信号へ変換)することにより、画素ごとの信号値を得る。
【0019】
<領域分割>
図4は、測光センサ19の領域分割を説明する図である。本実施形態では有効画素部19aを15の領域に分割する例を説明する。測光回路24は、分割した領域内の測光信号Voutから得られる輝度、または当該領域に含まれるG画素の信号値の平均値を算出する。一般に、逆光下の撮影や高輝度の被写体が含まれる撮影の場合、上記輝度平均値(またはG画素信号の平均値)は、分割領域間で大きく異なる。したがって、各領域ごとに算出した輝度またはG信号の平均値を分割領域間で比較した場合に所定値以上の差があれば、逆光下の撮影あるいは高輝度の被写体を含む撮影と判定することができる。
【0020】
<測光センサのダイナミックレンジ>
図5(a)は、測光装置の測光範囲を説明する図である。本実施形態の電子カメラは、EV0〜EV20の範囲を測光範囲とする。図5(b)は、測光センサ19のダイナミックレンジを説明する図である。CCDセンサのような蓄積型の測光センサを用いる場合、そのダイナミックレンジはA/D変換の精度(すなわちビット長)に依存する。たとえば10ビット長でA/D変換する場合のダイナミックレンジは、図5(b)のようにEV値で7段程度である。この場合、EV1〜EV20の範囲の全域について適切に輝度情報を得ることは困難であるため、測光センサ19から取得しようとする情報に応じて測光レンジの切替えを行う。測光レンジの切替は、上述した電荷蓄積時間および増幅利得の少なくとも一方を変化させることによって切替る。
【0021】
図6は(a)〜図6(d)は、高輝度の被写体を含む撮影シーンにおいて測光センサ19から得られる情報を説明する図である。図6(a)は、測光信号Voutの最大値に基づいて測光レンジを決定するように「測光用センサ制御」された測光センサ19から得られる画像(輝度情報)を例示する図である。人物の背後に位置する太陽に対応する画素信号値を最大輝度目標レベルに近づける(最大輝度目標レベルは飽和レベルより低い)ように測光レンジを決めるため、太陽領域の画素信号は飽和しないものの、人物を含む他の領域の画素信号は平均輝度レベルより小さくなる(暗すぎる)。
【0022】
図6(b)は、測光信号Voutの平均値に基づいて測光レンジを決定するように「シーン解析用センサ制御」された測光センサ19から得られる画像(輝度情報)を例示する図である。画面内の平均的な画素信号値を平均輝度目標レベルに近づけるように測光レンジを決めるため、太陽領域の画素信号は飽和するものの、人物を含む他の領域の画素信号は平均輝度レベルに近づく。
【0023】
図6(c)は、上記「測光用センサ制御」した測光センサ19から得られる画像(色情報)を例示する図である。太陽領域に色情報を有するものの、人物を含む他の領域は色情報が不足してモノクロのようになる(暗すぎる)。図6(d)は、上記「シーン解析用センサ制御」した測光センサ19から得られる画像(色情報)を例示する図である。太陽領域は白飛びするものの、人物を含む他の領域からは色情報が得られる。
【0024】
このように、測光センサ19から輝度情報(輝度またはG信号値)を得る場合は「測光用センサ制御」が適し、測光センサ19から色情報を得る場合は「シーン解析用制御」が適している。
【0025】
(測光処理)
センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19の測光レンジの切替えを行うことにより、輝度情報および色情報の取得を適切に行う。図7は、センサ制御マイコン23、24が行う測光処理の流れを説明するフローチャートである。図7による測光処理は、図2のステップS12に対応する。図7のステップS1において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19に「測光用センサ制御」による電荷蓄積を行わせてステップS2へ進む。
【0026】
ステップS2において、センサ制御マイコン23、24は、A/D変換後の信号値を用いた測光演算を行って輝度値を算出し、ステップS3へ進む。測光演算結果は、撮影制御回路25による露出演算に使用される。ステップS3において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19に「シーン解析用センサ制御」による電荷蓄積を行わせてステップS4へ進む。ただし、後述する判定処理によってシーン解析用センサ制御を行わない判定がされた場合にはステップS3をスキップする。ステップS4において、センサ制御マイコン23、24は、シーン解析演算を行って図4による処理を終了する。
【0027】
シーン解析演算は、測光センサ19から得た色情報を用いて、たとえば青色部分を背景と判定したり、肌色部分を主要被写体と判定したりすることにより、上記領域分割した複数の領域の中で主要被写体が存在する領域を判定するものである。このように判定した主要被写体領域は、AF処理において焦点調節情報を検出するための領域を決定する際に使用される。
【0028】
(測光センサ制御処理)
図8は、センサ制御マイコン23、24が行う測光センサ制御処理の流れを説明するフローチャートである。このフローチャートは、上記ステップS1およびステップS3を詳細に説明するものである。図8のステップS101において、センサ制御マイコン23、24は、電源投入時か否かを判定する。センサ制御マイコン23、24は、電源投入後1回目の処理である場合にステップS101を肯定判定してステップS102へ進み、電源投入後1回目の処理でない場合にはステップS101を否定判定してステップS103へ進む。
【0029】
ステップS102において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19の初期化を行ってステップS103へ進む。ステップS103において、センサ制御マイコン23、24は実行フラグオンか否かを判定する。センサ制御マイコン23、24は、実行フラグがオンの場合にステップS103を肯定判定してステップS113へ進み、実行フラグがオフの場合にはステップS103を否定判定してステップS104へ進む。実行フラグは、後述する「シーン解析用制御実行判定」処理においてセットされる。
【0030】
ステップS104において、センサ制御マイコン23、24はカウント値を+1してステップS105へ進む。このカウンタは、「測光用センサ制御」による測光センサ19の蓄積回数をカウントするものである。ステップS105において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19を「測光用センサ制御」によって電荷蓄積させてステップS106へ進む。なお、1回目の電荷蓄積時間および増幅利得は、それぞれあらかじめ定められている標準時間および標準利得を用いる。これらの値は、センサ制御マイコン23、24内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。ステップS106において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19から測光信号Voutを読み出してステップS107へ進む。
【0031】
ステップS107において、センサ制御マイコン23、24は、A/D変換後の信号値についてのデータ有効性を判定してステップS108へ進む。センサ制御マイコン23、24は、(1)データが測光センサ19の異常による出力飽和を示す場合、(2)データが許容最大輝度を超える場合、(3)データが許容最小輝度(ノイズの影響を容認できない低輝度状態)に満たない場合のいずれかに該当する場合に「データ有効性なし」を判定する。一方センサ制御マイコン23、24は、上記(1)〜(3)のいずれにも該当しなければ「データ有効性あり」を判定する。
【0032】
ステップS108において、センサ制御マイコン23、24は、次回の電荷蓄積時間および次回の増幅利得を算出し、ステップS109へ進む。センサ制御マイコン23、24は、図6(a)に例示したように、ステップS106で読み出したデータの最大値を最大輝度目標レベルに近づける(最大輝度目標レベルは飽和レベルより低い)ように蓄積時間および増幅利得を決定する。
【0033】
ステップS109において、センサ制御マイコン23、24は、やり直し判定を行ってステップS110へ進む。センサ制御マイコン23、24は、「データ有効性なし」が判定されている、またはカウント値が所定値未満の場合に「やり直し」を判定する。一方センサ制御マイコン23、24は、「データ有効性あり」が判定されている、またはカウント値が所定値を超えている場合に「やり直し」を判定しない。
【0034】
ステップS110において、センサ制御マイコン23、24は、やり直しを判定している場合にステップS110を肯定判定してステップS104へ戻る。この場合、「測光用センサ制御」による電荷蓄積を繰り返す。センサ制御マイコン23、24は、やり直しを判定していない場合にはテップS110を否定判定してステップS111へ進む。ステップS111へ進む場合は、蓄積回数をカウントするための上記カウンタをリセットする。
【0035】
ステップS111において、センサ制御マイコン23、24は、測光演算に必要な補正係数を算出してステップS112へ進む。ステップS112において、センサ制御マイコン23、24は、「シーン解析用制御実行判定」を行ってステップS103へ戻る。シーン解析用制御実行判定の詳細については後述する。
【0036】
ステップS103を肯定判定して進むステップS113において、センサ制御マイコン23、24はシーン解析用制御する場合の電荷蓄積時間および増幅利得を算出し、ステップS114へ進む。センサ制御マイコン23、24は、図6(b)に例示したように、ステップS106で読み出したデータの平均的な値を平均輝度目標レベルに近づけるように蓄積時間および増幅利得を決定する。なお、「データの平均的な値」は、後述する「シーン解析用制御実行判定」処理において算出した値を用いる。
【0037】
ステップS114において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19を「シーン解析用制御」によって電荷蓄積させてステップS115へ進む。ステップS115において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19から測光信号Voutを読み出してステップS116へ進む。
【0038】
ステップS116において、センサ制御マイコン23、24は、A/D変換後の信号値についてのデータ有効性を判定してステップS117へ進む。センサ制御マイコン23、24は、データが測光センサ19の異常による出力飽和を示す場合に「データ有効性なし」を判定する。一方センサ制御マイコン23、24は、上記出力飽和に該当しなければ「データ有効性あり」を判定する。
【0039】
ステップS117において、センサ制御マイコン23、24は実行フラグをオフにしてステップS103へ戻る。
【0040】
(シーン解析用制御実行判定処理)
図9は、センサ制御マイコン23、24が行うシーン解析用制御実行判定処理の流れを説明するフローチャートである。図9による処理は、図8のステップS112に対応する。図9のステップS201において、センサ制御マイコン23、24は、測光センサ19の領域分割された領域ごとに輝度平均値を算出してステップS202へ進む。分割領域ごとに算出する理由は、画素単位で輝度差を算出する場合と比べて、分割領域間で輝度差を算出する方が信号に含まれているノイズの影響や画素欠陥が生じている場合の異常値の影響を受けにくくなるからである。なお、分割領域ごとの輝度平均値を算出する代わりにG色信号の平均値を算出してもよい。
【0041】
ステップS202において、センサ制御マイコン23、24は、各分割領域における最大輝度および最小輝度を算出してステップS203へ進む。ステップS203において、センサ制御マイコン23、24は、次式(1)を用いて分割領域間の対数化した輝度差dBvを算出する。
dBv=Log2(BvMax/BvMin) (1)
ただし、dBvは分割領域間の輝度差であり、BvMaxは分割領域の最大輝度であり、BvMinは分割領域の最小輝度である。
【0042】
ステップS204において、センサ制御マイコン23、24は、分割領域間の輝度差>所定の閾値が成立するか否かを判定する。センサ制御マイコン23、24は、輝度差>所定閾値が成立する場合にステップS204を肯定判定してステップS205へ進み、輝度差>所定閾値が成立しなければステップS204を否定判定してステップS207へ進む。ステップS204へ進む場合は、上述した逆光下の撮影あるいは高輝度の被写体を含む撮影の可能性がある。ステップS207へ進む場合は、高輝度の被写体が含まれていないことから、「測光用センサ制御」による測光センサ19の信号値から色情報も得られる。なお、所定の判定閾値は、センサ制御マイコン23、24内の不揮発性メモリ(不図示)にあらかじめ格納されている。
【0043】
ステップS205において、センサ制御マイコン23、24は、測光用センサ制御時の電荷蓄積時間<所定時間が成立するか否かを判定する。センサ制御マイコン23、24は、電荷蓄積時間<所定時間が成立する場合にステップS205を肯定判定してステップS206へ進み、電荷蓄積時間<所定時間が成立しなければステップS205を否定判定してステップS207へ進む。ステップS206へ進む場合は、シーン解析用センサ制御による電荷蓄積に必要な時間が確保されている場合である。ステップS207へ進む場合は、測光用センサ制御による電荷蓄積に時間がかかり、シーン解析用センサ制御による電荷蓄積に必要な時間が不足する場合である。なお、所定時間は、センサ制御マイコン23、24内の不揮発性メモリ(不図示)にあらかじめ格納されている。
【0044】
ステップS206において、センサ制御マイコン23、24は、実行フラグをオンにして図9による処理を終了する。この実行フラグがオンの場合、測光センサ制御処理(図8)において、測光用センサ制御による電荷蓄積に続いてシーン解析用制御による電荷蓄積を行う。ステップS207において、センサ制御マイコン23、24は、実行フラグをオフにして図9による処理を終了する。この実行フラグがオフの場合、測光センサ制御処理(図8)において、測光用センサ制御による電荷蓄積を行うのみでシーン解析用制御による電荷蓄積は行わない。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)蓄積型の測光センサ19に対し、測光信号Voutの最大値に基づくAGC(Auto Gain Control)で測光レンジを決定する「測光用センサ制御」と、測光信号Voutの平均値に基づくAGCで測光レンジを決定する「シーン解析用センサ制御」とを行うようにしたので、最大輝度に関する情報が欲しい場合、および平均輝度に関する情報が欲しい場合の双方で適切に情報を得ることができる。
【0046】
(2)「測光用センサ制御」および「シーン解析用センサ制御」を択一的に切替えたので、測光センサ19を複数備えることなしに上記適切な情報を得ることができる。
【0047】
(3)「測光用センサ制御」を「シーン解析用センサ制御」より前に行うようにしたので、「測光用センサ制御」で得た情報を「シーン解析用センサ制御」するか否かの判定材料として用いることができる。
【0048】
(4)「測光用センサ制御」における電荷蓄積時間が長い(ステップS205を否定判定)場合に「シーン解析用センサ制御」を省略すれば、両方のセンサ制御を行う場合に比べて測光処理に要する時間を短縮することができる。
【0049】
(5)「測光用センサ制御」における分割領域間の出力差が小さい(ステップS204を否定判定)場合に「シーン解析用センサ制御」を省略すれば、両方のセンサ制御を行う場合に比べて測光処理に要する時間を短縮することができる。
【0050】
(6)上記(5)の出力差はカラーフィルタ19cを介して得た輝度またはG信号の平均値の平均値から求めたので、逆光下の撮影あるいは高輝度の被写体を含む撮影の判定に好適である。逆光下あるいは高輝度の被写体を含む撮影と判定した場合は、平均輝度に関する情報を得るために「シーン解析用センサ制御」を行う。「シーン解析用センサ制御」によってカラーフィルタ19cを介して得られる情報からは、高輝度でない領域についての色情報を白飛びなどすることなく得ることができる。
【0051】
(7)「測光用センサ制御」した測光センサ19の出力値(最大輝度に関する情報)を用いて露出演算を行い、「シーン解析用センサ制御」した測光センサ19の出力値(平均輝度に関する情報)を用いて主要被写体が存在する領域を判定し、該領域を対象にAF処理時の焦点調節情報を取得するようにした。これにより、全ての領域を対象にAF処理時の焦点調節情報を取得する場合に比べて、処理の負担や時間を軽減できる。
【0052】
(8)「シーン解析用センサ制御」を省略した場合は「測光用センサ制御」した測光センサ19の出力値(最大輝度に関する情報)を用いて主要被写体が存在する領域を判定し、該領域を対象にAF処理時の焦点調節情報を取得するようにした。これにより、「シーン解析用センサ制御」を省略した場合にも、全ての領域を対象にAF処理時の焦点調節情報を取得しなくてすむ。
【0053】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。たとえば、上述した測光装置を備えるカメラであれば電子カメラでもフィルムカメラでもよく、一眼レフタイプと異なるカメラに適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した電子カメラの要部構成を説明する図である。
【図2】撮影制御回路が行う撮影処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】測光センサを説明する図である。
【図4】測光センサの領域分割を説明する図である。
【図5】(a)は測光装置の測光範囲を説明する図、(b)は測光センサのダイナミックレンジを説明する図である。
【図6】(a)は「測光用センサ制御」で得られる画像(輝度情報)を例示する図、(b)は「シーン解析用センサ制御」で得られる画像(輝度情報)を例示する図、(c)は「測光用センサ制御」で得られる画像(色情報)を例示する図、(d)は「シーン解析用センサ制御」で得られる画像(色情報)を例示する図である。
【図7】センサ制御マイコンが行う測光処理の流れを説明するフローチャートである。
【図8】センサ制御マイコンが行う測光センサ制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【図9】センサ制御マイコンが行うシーン解析用制御実行判定処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10…カメラ本体
12…シャッタ
13…撮像素子
19…測光用センサ
19c…カラーフィルタ
23、24…センサ制御マイコン
25…撮影制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積型の測光センサと、
前記測光センサで得られる出力の最大値に基づいて前記測光センサを蓄積制御する第1制御、および前記測光センサによる平均的な出力値に基づいて前記測光センサを蓄積制御する第2制御を行う蓄積制御手段とを備えることを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1制御および前記第2制御を択一的に切替えることを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第2制御の前に前記第1制御を行うことを特徴とする測光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1制御時は、前記出力の最大値が前記測光センサの飽和出力レベルを超えないように前記測光センサの蓄積時間およびゲインを決定し、前記第2制御時は、前記第1制御時の前記蓄積時間およびゲインに基づいて前記測光センサの平均的な出力値が所定範囲の値になるように前記測光センサの蓄積時間およびゲインを決定することを特徴とする測光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1制御時の前記測光センサの蓄積時間が所定時間より長い場合に、前記第2制御を行わないことを特徴とする測光装置。
【請求項6】
請求項4に記載の測光装置において、
前記測光センサは、光束の受光面を複数の領域に分割して該領域ごとに前記出力を得るように構成され、
前記蓄積制御手段は、前記第1制御時、前記複数の領域における前記出力どうしの差が所定値以下の場合に、前記第2制御を行わないことを特徴とする測光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測光装置において、
色フィルタをさらに備え、
前記測光センサの領域間の出力の差は、前記測光センサが前記色フィルタを通して受光した光束の輝度値または所定色の出力値から得ることを特徴とする測光装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の測光装置と、
色フィルタと、
前記第1制御で得られる前記測光センサの出力に基づく輝度情報を用いて露出制御を行い、前記色フィルタを介した光束に対して前記第2制御で得られる前記測光センサの出力に基づく輝度情報または色情報を用いて焦点検出制御を行う撮影制御手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の測光装置と、
撮影手段と、
色フィルタと、
前記色フィルタを介した光束に対して前記第2制御で得られる前記測光センサの出力に基づく色情報および輝度情報を用いて前記撮影手段が撮影するシーンを解析する解析手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項5または6に記載の測光装置と、
撮影手段と、
色フィルタと、
前記色フィルタを介した光束に対して前記第1制御で得られる前記測光センサの出力に基づく色情報および輝度情報を用いて前記撮影手段が撮影するシーンを解析する解析手段とを備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−185821(P2008−185821A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19783(P2007−19783)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】