説明

溶液製膜方法及び洗浄装置

【課題】生産性を落とすことなく、流延ドラムの周面を確実に洗浄する。
【解決手段】ドラム洗浄装置38を、流延ドラムの周面32aの上方であって、剥取ローラと減圧チャンバとの間に設ける。洗浄ガス76を流延ドラムの周面32aに吹き付ける。洗浄ガス76にはドライアイス粒子73が含まれる。周面32aに付着した異物は、ドライアイス粒子73との衝突により、周面32aから除去される。除去された異物は、洗浄ガス76とともにX方向またはY方向に流れる。対向風90により、X方向に流れる洗浄ガス76がチャンバ63外に漏れることを防止する。対向風91により、Y方向に流れる洗浄ガス76がチャンバ63外に漏れることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の表面上に付着した異物を除去して、支持体の洗浄を行う溶液製膜方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフイルム(以下「フイルム」という)は、優れた光透過性や柔軟性を有するとともに軽量薄膜化が可能であることから光学機能性フイルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フイルムは、強靭性を有するとともに低複屈折率であることから、写真感光用フイルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である偏光板の保護フイルムまたは光学補償フイルムなどの光学機能性フイルムに用いられている。
【0003】
フイルムの製造方法の一つとして、溶液製膜方法がある。この溶液製膜方法では、セルローストリアセテートなどのポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解したドープを調製する。このドープを流延ダイより吐出させて流延ビードを形成し、キャスティングドラムやエンドレスバンドなどの金属支持体上に流延し流延膜を形成する(以下「流延工程」という)。そして、流延膜は支持体上で乾燥又は冷却され、自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を「湿潤フイルム」という)として剥ぎ取られ、この湿潤フイルムを乾燥させたものをフイルムとして巻き取る。
【0004】
流延工程では、長時間連続運転により、流延膜から脂肪酸、脂肪酸エステルや脂肪酸金属塩などを主成分とする異物が析出し、この異物が支持体表面に付着する、いわゆるプレートアウトが発生する。プレートアウトが発生すると、支持体表面上の異物がフイルムに転写される。フイルム表面に異物が転写することで、光学特性にムラが生じるようになる。
【0005】
これまで、支持体表面の洗浄方法として、有機溶剤等を浸した不織布を用いて支持体表面を連続的に拭うウェット処理方法(特許文献1)や、フイルム表面に溶媒処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、及び火炎処理などの処理を施し、フイルム表面の異物を除去する異物除去方法(特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−1654号公報
【特許文献2】特開2001−89590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のウエット処理方法では、連続流延を中断して定期的に支持体の清掃作業を行う必要があり、生産効率が低下する。また、特許文献2の異物除去方法
では、フイルムの特性に影響を及ぼさないような条件で異物除去処理を施すことが望ましいが、そのような条件を見出すことは容易ではない。
【0007】
近年では、更なるフイルムの需要の増大に対応するために、製膜速度の高速化が強く望まれている。そのため、製膜速度を落とすことなく、支持体を確実に洗浄することが求められていた。
【0008】
本発明は、生産性を落とすことなく、支持体を確実に洗浄することができる溶液製膜方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、エンドレスに走行する支持体上に、ポリマと溶媒とを含むドープを流延して流延膜を形成し、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って乾燥することにより、フイルムを製造する溶液製膜方法において、前記流延膜が剥ぎ取られた後であって前記ドープが流延される前の前記支持体の表面に対して、昇華性粒子を含む洗浄ガスを洗浄ガス吹付部材により吹き付けて、前記支持体の表面に付着した異物を除去し、前記支持体の表面に沿って流れる前記洗浄ガスに対して対向風を対向風吹付部材により吹き付けることを特徴とする。
【0010】
前記対向風吹付部材は、前記洗浄ガス吹付部材に対して前記支持体の走行方向上流側に設けられた第1対向風吹付部材と、前記洗浄ガス吹付部材に対して前記支持体の走行方向下流側に設けられた第2対向風吹付部材とからなることが好ましい。前記洗浄ガス及び前記対向風が行われるエリアをチャンバにより覆うことが好ましい。
【0011】
前記チャンバと前記支持体との間に設けられたラビリンスシールにより、前記洗浄ガス及び前記対向風が前記チャンバ外に漏れることを防止することが好ましい。
【0012】
前記異物は吸引手段により吸引されることが好ましい。前記洗浄ガスの風速Viと前記対向風の風速Vcとの比が0.3以上5.0未満であることが好ましい。前記昇華性粒子はドライアイス粒子であることが好ましい。
【0013】
本発明は、エンドレスに走行する支持体上に、ポリマと溶媒とを含むドープを流延して流延膜を形成し、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って乾燥することにより、フイルムを製造する溶液製膜設備に用いられ、前記支持体の表面上の異物を除去して、前記支持体の表面を洗浄する洗浄装置において、前記流延膜が剥ぎ取られた後であって前記ドープが流延される前の前記支持体の表面に対して、昇華性粒子を含む洗浄ガスを吹き付ける洗浄ガス吹付部材と、前記支持体の表面に沿って流れる前記洗浄ガスに対して対向風を対向風吹付部材により吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流延膜が剥ぎ取られた後であってドープが流延される前の支持体の表面に対して、昇華性粒子を含む洗浄ガスを吹き付けて、支持体の表面上の異物を除去することで、フイルムの製造を停止させることなく、支持体の洗浄を行うことができる。また、支持体の表面にそって流れる洗浄ガスに対して対向風を吹き付けることで、異物の飛散を防止することができる。これにより、フイルムの製造に影響を与えることなく、支持体を確実に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
図1に、第1実施形態で用いる溶液製膜設備10の概略図を示す。溶液製膜設備10は、ストックタンク11、流延室12、ピンテンタ13、クリップテンタ14、乾燥室15、冷却室16、及び巻取室17を有する。
【0016】
ストックタンク11は、モータ11aで回転する攪拌翼11bとジャケット11cとを備えており、その内部にはフイルム20の原料となるドープ21が貯留されている。ストックタンク11内のドープ21は、ジャケット11cにより温度が略一定となるように調整されている。また、攪拌翼11bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、ドープ21を均一な品質に保持している。ストックタンク11の下流には、ギアポンプ25及び濾過装置26が設置されており、これらを介してドープ21が流延ダイ30に送られる。
【0017】
流延室12には、流延ダイ30、支持体としての流延ドラム32、剥取ローラ34、温調装置35,36、減圧チャンバ37、ドラム洗浄装置38が設置されている。流延ドラム32は図示を省略した駆動装置によってX方向に回転しており、この回転中の流延ドラム32の周面32aに向けて、流延ダイ30からドープ21が吐出され、周面32aに流延膜33が形成される。
【0018】
流延室12内及び流延ドラム32は、温調装置35,36によって、流延膜33が冷却固化(ゲル化)し易い温度に設定されている。そして、流延膜33は自己支持性を有するゲル強度に達した時点で、剥取ローラ34によって流延ドラム32から剥ぎ取られる。
【0019】
減圧チャンバ37は、流延ダイ30に対し、X方向方向上流側に配置されており、チャンバ37内を負圧に保っている。これにより、流延ビードの背面(後に、流延ドラム32の周面に接する面)側を所望の圧力に減圧し、流延ドラム32が高速で回転することにより発生する同伴風の影響を少なくし、安定した流延ビードを流延ダイ30と流延ドラム32との間に形成し、膜厚ムラの少ない流延膜33が形成される。
【0020】
流延ダイ30の材質は、電解質水溶液、ジクロロメタンやメタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性、及び低い熱膨張率を有する素材から形成される。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。
【0021】
流延ドラム32の周面32aは、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、温調装置36は、流延ドラム32の周面32aの温度を所望の温度に保つために、流延ドラム32内の伝熱媒体流路に伝熱媒体を循環している。伝熱媒体は所望の温度に保持されており、流延ドラム32内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム32の周面32aの温度が所望の温度に保持される。
【0022】
流延ドラム32の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。流延ドラム32の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム32の周面32aに施されるクロムメッキ処理はビッカース硬さHv700以上、膜厚2μm以上、いわゆる硬質クロムメッキであることが好ましい。
【0023】
流延室12内には、蒸発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)53と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置54とが備えられている。凝縮器53で凝縮液化した有機溶媒は、回収装置54により回収される。回収された溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0024】
図1及び図2に示すように、ドラム洗浄装置38は、流延ドラムの周面32aの上方であって、剥取ローラ34と減圧チャンバ37との間に設けられている。このドラム洗浄装置38は、流延ドラムの周面32aに付着した異物を除去し、流延ドラム32を洗浄する。異物には、流延ドラム上の流延膜から析出した脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩などが主に含まれている。
【0025】
ドラム洗浄装置38は、ドライアイス生成部60、ガス供給部61、洗浄ノズル62、チャンバ63、排気部64、対向風ノズル65,66、送風部67,68を備えている。ガス供給部61と洗浄ノズルの第1供給口62aとは、配管70により接続されている。ドライアイス生成部60と洗浄ノズルの第1供給口62bとは、配管71により接続されている。
【0026】
ドライアイス生成部60は、所定の粒径を有するドライアイス粒子73を生成する。生成されたドライアイス粒子73は、配管71を介して、洗浄ノズル62の第2供給口62bに供給される。ガス供給部61はガスタンクから構成され、所定の圧力に圧縮されたキャリアガス74が充填されている。このキャリアガス74は窒素などの不活性ガスから構成される。ガス供給部61は、所定量のキャリアガス74を、配管70を介して、洗浄ノズル62の第1供給口62aに供給する。なお、キャリアガスは、不活性ガスに限る必要はなく、例えばエアなどであってもよい。また、ドライアイス生成部でドライアイス粒子を予め生成してから、そのドライアイス粒子をノズルに送り込んだが、これに限る必要はない。例えば、液状の二酸化炭素をノズルに送り込み、そのノズル内で固体のドライアイス粒子を生成してもよい。
【0027】
洗浄ノズル62はチャンバ63のX方向中央部に取り付けられおり、この洗浄ノズル62の吹出口62cは流延ドラムの周面32aに向けられている。洗浄ノズル62には、第1供給口62aと吹出口62cとの間を連通する第1流路(図示省略)が形成され、また、第2供給口62bと第1流路とを連通する第2流路(図示省略)が形成されている。第1流路に供給されたキャリアガス74は、第2流路からのドライアイス粒子73と混合される。このドライアイス粒子が混合したガス76(以下「洗浄ガス」という)が、吹出口62cを介して、流延ドラムの周面32aに吹き付けられる。以下、この洗浄ガス76が吹き付けられるエリアを洗浄エリア78とする。
【0028】
洗浄ガス76が流延ドラムの周面32aに吹き付けられると、その洗浄ガス76に含まれるドライアイス粒子73が、周面32aに付着した異物に衝突する。この衝突により、異物は粉砕し、周面から除去される。これにより、洗浄跡を残すことなく、流延ドラムの周面上に付着した異物を除去することができる。除去された異物は、洗浄ガス76とともに、X方向またはX方向と反対のY方向に流れる。
【0029】
チャンバ63は略箱型状であり、その上面には排気口63aが形成されている。この排気口63aは、排気部64と配管80により接続している。排気部64は、チャンバ63内を排気して、所定圧にまで減圧する。また、チャンバ63の下面には吸引口63bが形成されている。この吸引口63bを介して、チャンバ63内の減圧により、洗浄エリア78付近が吸引される。この洗浄エリア78付近の吸引によって、異物が洗浄ガス76とともにチャンバ63内へと吸引される。
【0030】
チャンバ63の下面の周縁には複数のラビリンスシール83が複数取り付けられおり、チャンバ63と流延ドラムの周面32aとの間をシールしている。このラビリンスシール83により、洗浄ガス76がチャンバ63の外に漏れることが防止される。
【0031】
以上のように、洗浄ガス76とともに異物を吸引することにより、その異物がチャンバ63外に飛散することが防止される。また、仮に、洗浄ガス76とともに異物が吸引されなかったとしても、ラビリンスシール83により、異物を含んだ洗浄ガス76はチャンバ63外に流出することが防止される。このように、流延ドラムの周面32aから除去された異物がチャンバ63外に飛散することなく、また、異物除去に用いた洗浄ガス76がチャンバ63外に流出することが防止されるため、ドープ21の流延中であっても、流延膜33や流延ビードに影響を与えることなく、流延ドラム32の洗浄を行うことができる。
【0032】
また、長時間連続して洗浄ガス76及び異物の吸引を行っているうちに、その吸引によって、チャンバ63周囲の風がチャンバ63内に引き込まれるようになる。チャンバ63内に引き込まれる風の量が多くなると、ドライアイス粒子73の使用により極めて低温となったチャンバ63内で、結露が発生するようになる。この結露が流延ドラムの周面32a上に落下すると、流延膜33の面状に影響を与えることがある。この問題に対して、チャンバ63の下面の周縁部にラビリンスシール83を設けることにより、チャンバ63内に引き込まれる風の流入を阻止し、結露の発生を抑制している。
【0033】
対向風ノズル65は、チャンバ63のX方向側端部であって、洗浄ノズル62のX方向下流側に取り付けられている。この対向風ノズル65の吹出口65aは、流延ドラムの周面32aに向けられている。一方、対向風ノズル66は、チャンバ63のX方向側端部であって、洗浄ノズル62のX方向上流側に取り付けられている。この対向風ノズル66の吹出口66aは、流延ドラムの周面32aに向けられている。これら対向風ノズル65,66は、配管85,86により送風部と接続している。
【0034】
対向風ノズル65からの対向風90は、X方向に流れる洗浄ガス76に対して吹き付けられる。この対向風90の吹き付けによって、洗浄ガス76及び対向風90は、異物とともにチャンバ63内へと舞い上がって吸引される。また、対向風ノズル66からの対向風91は、Y方向に流れる洗浄ガス76に対して吹き付けられる。この対向風91の吹き付けによって、洗浄ガス76及び対向風90は、異物とともにチャンバ63内へと舞い上がって吸引される。
【0035】
上記対向風90,91の吹き付けにより、X方向またはY方向に流れる洗浄ガス76はチャンバ63外に漏れることが防止される。また、洗浄ガス76とともにX方向またはY方向に流れている異物も、チャンバ63外に飛散することが防止される。なお、対向風としてはエアや窒素ガスなどの不活性ガスが挙げられる。また、対向風には、洗浄ガスと同様に、ドライアイス粒子を含めてもよい。
【0036】
ここで、洗浄ガス76の風速Viは80m/秒以上200m/秒以下である。また、対向風90,91の風速Vcは10m/秒以上250m/秒以下である。また、洗浄ガスの風速Viと対向風Vcの風速との比率(Vi/Vc)は0.3以上4.5以下が好ましく、0.3以上3.0以下が更に好ましく、0.3以上1.5以下が最も好ましい。比率(Vi/Vc)が0.3未満であると、CO2スノーを形成する風量が低すぎて、洗浄が不能となる。一方、比率(Vi/Vc)が4.5を超えると、CO2スノーの風量が高すぎる為、チャンバーが存在しても、外部への風漏れが抑制できず、流延停止を引き起こす可能性が高い。
【0037】
また、対向風90,91の吹き付け角度βは20°以上80°以下であることが好ましい。また、洗浄ノズルの吹出口62cと対向風ノズルの吹出口65aとの距離(または洗浄ノズルの吹出口62cと対向風ノズルの吹出口66aとの距離)L1は0.02m以上
0.6m以下であることが好ましい。
【0038】
流延室12の下流には、渡り部41、ピンテンタ13、クリップテンタ14が順に設置されている。渡り部41は、搬送ローラ42によって剥ぎ取った湿潤フイルム39をピンテンタ13に導入する。ピンテンタ13は、湿潤フイルム39の両端部を貫通して保持する多数のピンプレートを有し、このピンプレートが軌道上を走行する。この走行中に湿潤フイルム39に対して乾燥風が送られ、湿潤フイルム39が走行しつつ乾燥され、フイルム20となる。
【0039】
クリップテンタ14は、フイルム20の両端部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を走行する。この走行中にフイルム20に対し乾燥風が送られ、フイルム20はフイルム幅方向に延伸されながら乾燥される。クリップテンタ14での所定条件下の延伸処理によって、クリップテンタ14を出たフイルム20には所望の光学特性が付与される。
【0040】
ピンテンタ13及びクリップテンタ14の下流にはそれぞれ耳切装置43が設けられている。耳切装置43はフイルム両端部の耳を裁断する。この裁断した耳は風送によりクラッシャ44に送られて、ここで粉砕され、ドープ等の原料として再利用される。
【0041】
乾燥室15には、多数のローラ47が設けられており、これらにフイルム20が巻き掛けられて搬送されることにより乾燥が行われる。乾燥室15には吸着回収装置48が接続されており、フイルム20から蒸発した溶媒が吸着回収される。
【0042】
乾燥室15の出口側には冷却室16が設けられており、この冷却室16でフイルム20が室温となるまで冷却される。冷却室16の下流には強制除電装置(除電バー)49が設けられており、フイルム20が除電される。さらに、強制除電装置49の下流側にはナーリング付与ローラ50が設けられており、フイルム20の両側縁部にナーリングが付与される。巻取室17には、プレスローラ52を有する巻取機51が設置されており、フイルム20が巻芯にロール状に巻き取られる。
【0043】
次に、溶液製膜設備10によりフイルムを製造する方法の一例を説明する。ストックタンク11では、ジャケット11cの内部に伝熱媒体を流すことによりドープ21の温度を25℃〜35℃に調整するとともに、攪拌翼11bの回転により常に均一化している。適宜適用のドープ21を、ギアポンプ25によりストックタンク11から濾過装置26に送り込んで過することにより、ドープ21中の不純物を取り除く。そして、このドープ21を流延ダイ30から流延ビードを形成しながら、所定の表面温度になるように冷却した流延ドラム32の周面上に流延する。流延時のドープ21の温度は、30℃〜35℃の範囲内で略一定に保持されていることが好ましい。
【0044】
流延ドラム32は、駆動装置(図示省略)によりX方向に回転している。この回転により、流延ドラムの周面32aは、一定速度(30m/分以上200m/分以下)で走行している。また、流延ドラムの周面32aの温度は−10℃以上+10℃以下の範囲内で略一定になるように調整されている。このように冷却された流延ドラム32を用いると、流延膜33をゲル化させて自己支持性を持たせることができる。なお、周面の温度の管理は温調装置36により行われ、周面の温度を所定の値に保持する。流延膜33の冷却が進行すると、結晶の基になる架橋点が形成されて流延膜33のゲル化が促進される。
【0045】
ゲル化の進行により、流延膜33が自己支持性を有するものとなった後に、剥取ローラ34により流延ドラム32から剥ぎ取って湿潤フイルム39とし、この湿潤フイルム39を搬送ローラ42によりピンテンタ13に送り込む。
【0046】
流延室12の内部温度は、温調装置35により10℃〜57℃の範囲内で略一定となるように調整される。流延室12の内部には、流延されるドープ21や流延膜33中の溶媒が揮発して浮遊している。そこで、本実施形態では、この浮遊溶媒を凝縮器53により凝縮液化した後、回収装置54に回収し、さらに再生装置により再生して、ドープ調製用溶媒として再利用する。
【0047】
図2に示すように、ドラム洗浄装置38により、流延ドラムの周面32aに洗浄ガス76を吹き付ける。この洗浄ガス76にはドライアイス粒子73を混合させて、このドライアイス粒子を周面32aに付着した異物に衝突させる。このドライアイス粒子の衝突により、異物は周面32aから除去される。除去された異物は、洗浄ガス76とともにX方向またはY方向に流れる。チャンバ63を用いて、洗浄ガスとともにX方向またはY方向に流れる異物を吸引する。また、対向風90の吹き付けにより、X方向に流れる洗浄ガス76がチャンバ63外に漏れることを防止する。同様に、対向風91の吹き付けにより、Y方向に流れる洗浄ガス76がチャンバ外に漏れることを防止する。
【0048】
ピンテンタ13では、多数のピンを湿潤フイルム39の両側端部に差し込んで固定した後、この湿潤フイルム39を搬送する間に乾燥を促進させてフイルム20とする。そして、まだ溶媒を含んでいる状態のフイルム20をクリップテンタ14に送り込む。このとき、クリップテンタ14に送られる直前でのフイルム20の残留溶媒量は、50〜150重量%であることが好ましい。
【0049】
クリップテンタ14では、チェーンの動きによりエンドレスで走行する多数のクリップによりフイルム20の両側端部を挟持した後、このフイルム20を搬送する間に、乾燥を促進させる。このとき、対面するクリップ間距離(フイルム幅)を拡げてフイルム20の幅方向に張力を付与することでフイルム20を延伸する。このように、フイルム20の幅方向への延伸処理により、フイルム20中の分子が配向し、所望のレタデーション値をフイルム20に付与することができる。
【0050】
ピンテンタ13及びクリップテンタ14を出たフイルム20は、耳切装置43によって両側端部が裁断される。両側端部が裁断されたフイルム20は、乾燥室15と冷却室16とを経由し、巻取室17の巻取機51によって巻き取られる。また、耳切装置43によって切断された両側端部はクラッシャ44により粉砕されて、ドープ調製用チップとなり再利用される。
【0051】
巻取機51で巻き取られるフイルム20は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フイルム20の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、2500mmより幅広の場合にも効果がある。さらに、厚みが20μm以上80μm以下の薄いフイルムを製造する際にも本発明は適用される。
【0052】
以下、本発明においてドープ21を調製する際に使用する原料について説明する。
【0053】
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0054】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0055】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0056】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0057】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0058】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0059】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0060】
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0061】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0062】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
【0063】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒及び可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0064】
本発明の溶液製膜方法では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフイルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フイルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
【0065】
流延ダイ、減圧室、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0066】
[第2実施形態]
図3に示すように、本発明の第2実施形態のドラム洗浄装置98は、第1実施形態と異なり、チャンバを用いずに流延ドラムの洗浄を行う。なお、ドラム洗浄装置以外については、第1実施形態と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0067】
ドラム洗浄装置98は、ドライアイス生成部100、ガス供給部101、洗浄ノズル102、対向風ノズル105,106、送風部107,108を備えている。ガス供給部101と洗浄ノズルの第1供給口102aとは、配管110により接続されている。ドライアイス生成部100と洗浄ノズルの第2供給口102bとは、配管111により接続されている。
【0068】
ドライアイス生成部100は、所定の粒径を有するドライアイス粒子113を生成する。生成されたドライアイス粒子113は、配管111を介して、洗浄ノズル102の第2供給口62bに供給される。ガス供給部101はガスタンクから構成され、所定の圧力に圧縮されたキャリアガス114が充填されている。このキャリアガス114は窒素などの不活性ガスから構成される。ガス供給部101は、所定量のキャリアガス114を、配管110を介して、洗浄ノズル102の第1供給口102aに供給する。
【0069】
洗浄ノズル102は、その吹出口102cが流延ドラムの周面32aに向くように、設置されている。洗浄ノズル102には、第1供給口102aと吹出口102cとの間を連通する第1流路(図示省略)が形成され、また、第2供給口102bと第1流路とを連通する第2流路(図示省略)が形成されている。第1流路に供給されたキャリアガス114は、第2流路からのドライアイス粒子113と混合される。このドライアイス粒子113が混合したガス116(以下「洗浄ガス」という)が、吹出口102cを介して、流延ドラムの周面32aに吹き付けられる。
【0070】
対向風ノズル105は、洗浄ノズル102のX方向下流側に取り付けられている。この対向風ノズル105の吹出口105aは、流延ドラムの周面32aに向けられている。一方、対向風ノズル106は、洗浄ノズル102のX方向上流側に取り付けられている。この対向風ノズル66の吹出口106aは、流延ドラムの周面32aに向けられている。これら対向風ノズル105,106は、配管118,119により送風部107,108と接続している。
【0071】
対向風ノズル105からの対向風120は、X方向に流れる洗浄ガス116に対して吹き付けられる。この対向風120の吹き付けによって、洗浄ガス116及び対向風120は、異物とともに周面32aの上方に舞い上がる。この舞い上がった異物、洗浄ガス116、及び対向風120を、吸引ノズルにより124により吸引する。また、対向風ノズル106からの対向風121は、Y方向に流れる洗浄ガス116に対して吹き付けられる。この対向風121の吹き付けによって、洗浄ガス116及び対向風121は、異物とともに周面32aの上方に舞い上がる。この舞い上がった異物、洗浄ガス116及び対向風121を、吸引ノズル125により吸引する。
【0072】
上記対向風120,121の吹き付けにより、X方向またはY方向に流れる洗浄ガス116は流延膜33や流延ビードまで到達することが防止される。また、対向風120,121の吹き付けにより舞い上がった異物を吸引ノズル124,125により吸引することで、異物の飛散が防止される。
【0073】
ここで、洗浄ガス116の風速Viは80m/秒以上200m/秒以下である。また、対向風120,121の風速Vcは10m/秒以上250m/秒以下である。また、洗浄ガスの風速Viと対向風Vcの風速との比率(Vi/Vc)は0.3以上3.0以下が好ましく、0.3以上2.5以下が更に好ましく、0.3以上1.5以下が最も好ましい。比率(Vi/Vc)が0.3未満であると、CO2スノーを形成する風量が低すぎて、洗浄が不能となる。一方、比率(Vi/Vc)が3.0を超えると、CO2スノーの風量が高すぎる為、製品部への風漏れの影響が発生し、該当箇所が製品とならない。
【0074】
また、対向風120,121の吹き付け角度βは20°以上80°以下であることが好ましい。また、洗浄ノズルの吹出口102cと対向風ノズルの吹出口105aとの距離(洗浄ノズルの吹出口102cと対向風ノズルの吹出口106aとの距離)L2は0.02m以上0.6m以下であることが好ましい。
【0075】
[第3実施形態]
図4に示すように、本発明の第3実施形態のドラム洗浄装置138は、第1実施形態と異なり、チャンバを用いずに流延ドラムの洗浄を行う。また、第1及び2実施形態と異なり、対向風ノズルを2つから1つに減らす。なお、ドラム洗浄装置以外については、第1実施形態と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0076】
ドラム洗浄装置138は、ドライアイス生成部140、ガス供給部141、洗浄ノズル142、対向風ノズル145、送風部147を備えている。ガス供給部141と洗浄ノズルの第1供給口142aとは、配管150により接続されている。ドライアイス生成部140と洗浄ノズルの第2供給口142bとは、配管151により接続されている。
【0077】
ドライアイス生成部140は、所定の粒径を有するドライアイス粒子153を生成する。生成されたドライアイス粒子153は、配管151を介して、洗浄ノズル142の第2供給口142bに供給される。ガス供給部141はガスタンクから構成され、所定の圧力に圧縮されたキャリアガス154が充填されている。このキャリアガス154は窒素などの不活性ガスから構成される。ガス供給部141は、所定量のキャリアガス154を、配管150を介して、洗浄ノズル142の第1供給口142aに供給する。
【0078】
洗浄ノズル142は、その吹出口142cが流延ドラムの周面32aに向くように、設置されている。洗浄ノズル142には、第1供給口142aと吹出口142cとの間を連通する第1流路(図示省略)が形成され、また、第2供給口142bと第1流路とを連通する第2流路(図示省略)が形成されている。第1流路に供給されたキャリアガス154は、第2流路からのドライアイス粒子153と混合される。このドライアイス粒子153が混合したガス156(以下「洗浄ガス」という)が、吹出口142cを介して、流延ドラムの周面32aに吹き付けられる。
【0079】
対向風ノズル145は、洗浄ノズル142のX方向下流側に取り付けられている。この対向風ノズル145の吹出口145aは、流延ドラムの周面32aに向けられている。対向風ノズル145は、配管158により送風部147と接続している。
【0080】
対向風ノズル145からの対向風160は、X方向に流れる洗浄ガス156に対して吹き付けられる。この対向風160の吹き付けによって、洗浄ガス156及び対向風160は、異物とともに周面32aの上方に舞い上がる。この舞い上がった異物、洗浄ガス156及び対向風160を吸引ノズル164により吸引する。これにより、X方向に流れる洗浄ガス156は流延膜33や流延ビードまで到達することが防止される。また、対向風160の吹き付けにより舞い上がった異物を吸引ノズル164により吸引することで、異物の飛散が防止される。
【0081】
ここで、洗浄ガス156の風速Viは80m/秒以上200m/秒以下である。また、対向風160の風速Vcは10m/秒以上250m/秒以下である。また、洗浄ガスの風速Viと対向風Vcの風速との比率(Vi/Vc)は0.3以上1.7以下が好ましく、1.0以上1.5以下がより好ましい。比率(Vi/Vc)が0.3未満であると、CO2スノーを形成する風量が低すぎて、洗浄が不能となる。一方、比率(Vi/Vc)が1.5を超えると、CO2スノーの風量が高くなり、フィルムに風ムラ等の極軽微な影響を与える。
【0082】
また、洗浄ガス156の吹き付け角度αは、70°以上110°以下であることが好ましい。また、対向風160の吹き付け角度βは、20°以上80°以下であることが好ましい。また、洗浄ノズルの吹出口142cと対向風ノズルの吹出口145aとの距離L3は0.02m以上0.6m以下であることが好ましい。
【0083】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ここで、実施例1〜実施例9及び比較例1,2は上記第1実施形態に対応し、実施例10〜17及び比較例3〜5は上記第2実施形態に対応し、実施例18〜20及び比較例6〜9は上記第3実施形態に対応している。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
図1に示すように、溶液製膜設備10で使用する流延ドラム32として、直径が1000mmの円筒状であり、周面32aにクロムメッキ及び鏡面加工処理を施したものを用いた。ドープ21を乾燥厚み80μmで流延し、流延膜33を形成した。自己支持性を有する流延膜33を、剥取ローラ34により剥ぎ取り、湿潤フイルム39を得た。ピンテンタ13及びクリップテンタ14において、湿潤フイルム39を所定の残留溶媒量まで乾燥し、フイルム20を得た。流延ドラムの周面32aに異物が付着しているか否かは、目視に加えて、ビデオカメラ等により確認した。また、異物に脂肪酸エステルが含まれているか否かを、IR(赤外分光光度計)、GCMS(ガスクロマトグラフ重量分析計)、NMR(核磁気共鳴装置)を用いて確認した。
【0085】
図1及び図2に示すように、ドラム洗浄装置38を、流延ドラムの周面32aの上方であって、剥取ローラ34と減圧チャンバ37の間に設置した。ドラム洗浄装置のチャンバ63に洗浄ノズル62を取り付け、そのチャンバ63内において、洗浄ノズル62から洗浄ガス76を流延ドラムの周面32aに吹き付けた。洗浄ガス76にはドライアイス粒子73を混合させた。この洗浄ガス76の吹付けにより、流延ドラムの周面32aに付着した異物を除去した。除去された異物をチャンバの吸引口63bから吸引した。また、チャンバ63の下面の周縁部にラビリンスシール83を設け、このラビリンスシール83により、洗浄ガス76がチャンバ63外に流出することを防止した。また、ラビリンスシール83により、チャンバ63周囲の風がチャンバ63内に流入することを阻止した。また、対向風90をX方向に流れる洗浄ガス76に対して吹き付けるとともに、対向風91をY方向に流れる洗浄ガス76に対して吹き付けた。
【0086】
また、洗浄ガスの風速Viを100m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、対向風の吹き付け角度βを45°、洗浄ノズルの吹出口62cと対向風ノズルの吹出口65aとの距離(洗浄ノズルの吹出口62cと対向風ノズルの吹出口66aとの距離)L1を0.1mとした。
【0087】
[実施例2]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを150m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0088】
[実施例3]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを30m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を0.3、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0089】
[実施例4]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0090】
[実施例5]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを20°、距離L1を0.1mとした。
【0091】
[実施例6]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを70°、距離L1を0.1mとした。
【0092】
[実施例7]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.05mとした。
【0093】
[実施例8]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを250m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を2.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0094】
[実施例9]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを50m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を3、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0095】
[比較例1]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを250m/秒、対向風の風速Vcを50m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0096】
[比較例2]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例1と同じ条件で実施した。実施例1のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを250m/秒、対向風の風速Vcを55m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を4.55、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0097】
[実施例10]
図3に示すように、ドラム洗浄装置98を、流延ドラムの周面32aの上方であって、剥取ローラ34と減圧チャンバ37の間に設置した。ドラム洗浄装置の洗浄ノズル102から、洗浄ガス116を流延ドラムの周面32aに吹き付けた。洗浄ガス116にはドライアイス粒子113を混合させた。この洗浄ガス116の吹付けにより、流延ドラムの周面32aに付着した異物を除去した。また、対向風120をX方向に流れる洗浄ガス116に対して吹き付けるとともに、対向風121をY方向に流れる洗浄ガス116に対して吹き付けた。また、対向風120,121の吹き付けにより周面32a上方に舞い上がった異物を、吸引ノズル124,125により吸引した。
【0098】
また、洗浄ガスの風速Viを100m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、対向風の吹き付け角度βを45°、洗浄ノズルの吹出口102cと対向風ノズルの吹出口105aとの距離(洗浄ノズルの吹出口102cと対向風ノズルの吹出口106aとの距離)L1を0.1mとした。
【0099】
[実施例11]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを150m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0100】
[実施例12]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0101】
[実施例13]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを20°、距離L1を0.1mとした。
【0102】
[実施例14]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを70°、距離L1を0.1mとした。
【0103】
[実施例15]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.5mとした。
【0104】
[実施例16]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを30m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を0.3、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0105】
[実施例17]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを250m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を2.5、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0106】
[比較例3]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを50m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を3、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0107】
[比較例4]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを250m/秒、対向風の風速Vcを80m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を3.125、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0108】
[比較例5]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例10と同じ条件で実施した。実施例10のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを100m/秒、対向風の風速Vcを35m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を2.86、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0109】
[実施例18]
図4に示すように、ドラム洗浄装置138を、流延ドラムの周面32aの上方であって、剥取ローラ34と減圧チャンバ37の間に設置した。ドラム洗浄装置の洗浄ノズル142から、洗浄ガス156を流延ドラムの周面32aに吹き付けた。洗浄ガス156にはドライアイス粒子153を混合させた。この洗浄ガス156の吹付けにより、流延ドラムの周面32aに付着した異物を除去した。また、対向風160をX方向に流れる洗浄ガス116に対して吹き付けた。また、対向風160の吹き付けにより周面32a上方に舞い上がった異物を、吸引ノズル164により吸引した。
【0110】
また、洗浄ガスの風速Viを100m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、洗浄ノズルの吹出口142cと対向風ノズルの吹出口145aとの距離L1を0.1mとした。
【0111】
[実施例19]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを100m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0112】
[実施例20]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.5、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0113】
[比較例6]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを30m/秒、対向風の風速Vcを100m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を0.3、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0114】
[比較例7]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを80m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.875、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0115】
[比較例8]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを150m/秒、対向風の風速Vcを85m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.76、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0116】
[比較例9]
ドラム洗浄装置に関する条件以外は、実施例18と同じ条件で実施した。実施例18のドラム洗浄装置に関する条件のうち、洗浄ガスの風速Viを200m/秒、対向風の風速Vcを115m/秒、洗浄ガスの風速Viと対向風の風速Vcの比率(Vi/Vc)を1.74、洗浄ガスの吹き付け角度αを30°、対向風の吹き付け角度βを45°、距離L1を0.1mとした。
【0117】
[実施例及び比較例の結果]
【表1】

【表2】

【表3】

表1は実施例1〜9及び比較例1〜2の結果を、表2は実施例10〜17及び比較例3〜5の結果を、表3は実施例18〜20及び比較例6〜9の結果を示す。表1〜表3の「評価」のうち「◎」は、フイルムの製造に流延ドラムの洗浄を行っても、そのフイルムの製造には影響を与えないことを示している。「○」は、フイルムの製造に流延ドラムの洗浄を行っても、そのフイルムの製造にはほとんど影響を与えないことを示している。「△」は、流延ドラムの洗浄を行ってもドープの流延を停止には至らないが、その間に製造されたフイルムは製造品にはならないことを示している。「×」は、流延ドラムの洗浄を行うと、ドープの流延の停止に至ることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】溶液製膜設備を示す概略図である。
【図2】第1実施形態のドラム洗浄装置を示す正面図である。
【図3】第2実施形態のドラム洗浄装置を示す正面図である。
【図4】第3実施形態のドラム洗浄装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0119】
10 溶液製膜設備
32 流延ドラム
32a (流延ドラムの)周面
38 ドラム洗浄装置
60,100,140 ドライアイス生成部
61,101,141 ガス供給部
62,102,142 洗浄ノズル
63 チャンバ
64 排気部
65,66,105,106,145 対向風ノズル
67,68,107,108,147 送風部
73,113,153 ドライアイス粒子
74,114,154 キャリアガス
76,116,156 洗浄ガス
83 ラビリンスシール
90,91,120,121,160 対向風
124,125,164 吸引ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスに走行する支持体上に、ポリマと溶媒とを含むドープを流延して流延膜を形成し、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って乾燥することにより、フイルムを製造する溶液製膜方法において、
前記流延膜が剥ぎ取られた後であって前記ドープが流延される前の前記支持体の表面に対して、昇華性粒子を含む洗浄ガスを洗浄ガス吹付部材により吹き付けて、前記支持体の表面に付着した異物を除去し、
前記支持体の表面に沿って流れる前記洗浄ガスに対して対向風を対向風吹付部材により吹き付けることを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項2】
前記対向風吹付部材は、前記洗浄ガス吹付部材に対して前記支持体の走行方向上流側に設けられた第1対向風吹付部材と、前記洗浄ガス吹付部材に対して前記支持体の走行方向下流側に設けられた第2対向風吹付部材とからなることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記洗浄ガス及び前記対向風の吹き付けが行われるエリアをチャンバにより覆うことを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記チャンバと前記支持体との間に設けられたラビリンスシールにより、前記洗浄ガス及び前記対向風が前記チャンバ外に漏れることを防止することを特徴とする請求項3記載の溶液製膜方法。
【請求項5】
前記異物は吸引手段により吸引されることを特徴とする請求項1ないし4記載の溶液製膜方法。
【請求項6】
前記洗浄ガスの風速Viと前記対向風の風速Vcとの比が0.3以上5.0未満であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
前記昇華性粒子はドライアイス粒子であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の溶液製膜方法。
【請求項8】
エンドレスに走行する支持体上に、ポリマと溶媒とを含むドープを流延して流延膜を形成し、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って乾燥することにより、フイルムを製造する溶液製膜設備に用いられ、前記支持体の表面上の異物を除去して、前記支持体を洗浄する洗浄装置において、
前記流延膜が剥ぎ取られた後であって前記ドープが流延される前の前記支持体の表面に対して、昇華性粒子を含む洗浄ガスを吹き付ける洗浄ガス吹付部材と、
前記支持体の表面に沿って流れる前記洗浄ガスに対して対向風を吹き付ける対向風吹付部材とを有することを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−66982(P2009−66982A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239562(P2007−239562)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】