説明

溶融金属容器の排出口構造と溶融金属容器排出口のスリーブ交換装置

【課題】溶融金属の排出口となるスリーブ状耐火物を装着した溶融金属容器において、スリーブ状耐火物をより簡単に交換でき、しかも耐熱性に優れたコンパクトな排出口構造を提供すること。
【解決手段】溶融金属容器1の排出口を形成するスリーブ状耐火物を上部スリーブ2と下部スリーブ3とに分割し、上部スリーブ2を溶融金属容器1の内張り耐火物に装着し、下部スリーブ3を上部スリーブ2の先端部に着脱可能に設けた溶融金属容器の排出口構造において、下部スリーブ3は、下部スリーブ3を上部スリーブ2に圧着するための弾性体5に係合されるとともに、この弾性体5と一体のユニットとなした金属筐体4に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉等の溶融金属容器から溶融金属を排出するための排出口構造、とくに、交換可能なスリーブ状耐火物からなる排出口構造と、そのスリーブ状耐火物の交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼をはじめとする溶融金属の精錬に際しては、高温の溶融状態の金属を取鍋のような移送容器で転炉のような精錬炉まで運搬し、その溶融金属を移送容器から移し変えて精錬を行い、精錬が終了した溶融金属は再び移送容器へ排出され次の工程に搬送される。
【0003】
このように精錬炉の処理サイクルは、基本的には、溶融金属の受入、精錬、排出の三工程からなる。
【0004】
この精錬炉の処理サイクルの時間は、代表的な例として製鋼用転炉の場合、溶銑の受入(受鋼)に約5分、精錬(吹錬)に約30分、排出(出鋼)に約7.5分かかり、全処理サイクルに約42.5分を要する。
【0005】
このように、この製鋼用転炉の全処理サイクル中、受鋼時間が占める割合は約12%であり、出鋼時間は約18%を占めている。この受鋼と出鋼、すなわち、受入と排出は溶融金属を運搬するだけの工程であって、この溶融金属の運搬に要する時間は、転炉の基本的な機能とは直接の関係のない俗に言う無駄時間である。
【0006】
したがって、精錬工程において、この溶融金属の運搬に要する時間を短縮することは、転炉の操業能率を向上することになり、転炉1基当りの年間精錬処理量を増やすことができ、生産性向上、ひいてはコストダウンにつながる。
【0007】
ところが、この精錬工程において、受入と排出に要する時間を短縮するためには、受入れと排出の時間を短縮するだけではなく、それぞれに別個に留意しなければならない事項がある。
【0008】
まず、移送容器から転炉へ溶融金属を移す受入工程では、移送容器を傾けて溶融金属を転炉に注入するものであるが、転炉内張り耐火物を傷めることがないように流量制御のような細かな管理を必要とする。
【0009】
また、溶融金属を転炉から移送容器に移す排出工程では、精錬工程で発生した大量のスラグが移送容器へ流出しないようにする必要がある。また、それと同時に、流出時に溶融金属の噴出流に乱れを生じて外気中に含まれる酸素を巻き込み、溶融金属が酸化されて品質を著しく低下させることがないように排出する必要がある。
【0010】
このように、精錬用金属の受入と排出に際しての、それぞれ異なる管理条件に対応し易くするために、溶融金属の受入部と排出口を別個に設けた転炉がある。
【0011】
そして、このような転炉では、排出口によるスラグの流出を少なくし、かつ排出流ができるだけ層流となるように排出口の内径または開口面積は限定された構造となっている。
【0012】
転炉の場合、排出口である出鋼口は、高温の溶鋼の激しい流れによって、化学的、機械的に著しく損耗し、出鋼口の口径は徐々に拡大する。この出鋼口の開口面積が徐々に拡大すると、排出流量が増大することによって排出時間は短縮されて行く。
【0013】
しかし、出鋼口の開口面積が所定の面積まで拡大すると、激しい流れによって出鋼口の回りに渦が発生し、溶鋼の表面のスラグを巻き込み、大量のスラグが移送容器へ排出されてしまう。このスラグは金属の品質に悪影響を及ぼすため、スラグの巻き込みと溶鋼を一時的に大量に排出することは避けなければならない。
【0014】
つまり、出鋼口の耐火物が出鋼毎に溶損して開口面積が拡大するに際して、開口面積の許容上限を設け、開口面積が許容上限に達したとき、あるいは、出鋼時間が開口面積の増大に伴って短縮するが、開口面積の許容上限と出鋼時間との関係から、出鋼時間の許容下限を規定しておき、出鋼時間がこの許容下限に達したときに、出鋼口を新品と交換し、出鋼口の内径、すなわち開口面積を当初の条件に戻す必要がある。
【0015】
また、出鋼に際してのスラグの流出の防止のためには、溶鋼やスラグ流を堰き止めるバルブ等は設けられていないのが一般的であり、転炉自体の傾動、あるいは回転のタイミングを調整することによって行われている。このように、実際の出鋼に際してのスラグの流出の防止は、溶鋼流にスラグが巻き込まれるのを検知してから、転炉自体を傾動、あるいは回転させるものであるため、一定量のスラグが溶鋼の移送容器に排出されるのは避けられない。
【0016】
そして、この移送容器へ排出されるスラグの量は、出鋼口の開口面積にほぼ比例し、転炉の傾動、あるいは回転速度の能力によっても左右される。したがって、移送容器へ排出されるスラグの量を一定量以下にするためには、転炉の設備能力を考慮して出鋼口の開口面積の上限値を設定する必要がある。また、このスラグの量を一定量以下にするための出鋼口の開口面積の許容上限値は転炉の設備能力によっても変動する。
【0017】
さらに、出鋼口の溶損によって開口面積が許容上限に達した際の出鋼口の交換には長時間を必要とし、この間、転炉は操業停止を余儀なくされ、その分、精錬量(生産量)は低下する。
【0018】
そこで、従来から、出鋼口を交換する時間の短縮のための対策が種々講じられている。例えば、特許文献1には、出鋼口を交換可能なスリーブ状耐火物から形成する構造が開示されており、このスリーブ状耐火物を交換することで出鋼口の交換時間の短縮を図っている。さらに、このスリーブ状耐火物の交換頻度が少なくて済むように、金属の流出に対して損耗の少ない長寿命の材質が選定されることが開示されている。
【0019】
また、このようなスリーブの交換を迅速化するために、例えば、特許文献2または特許文献3に開示されているタンディッシュにおけるノズルの交換に際して、古いノズルを新しいノズルによって押し出す方式の採用も検討された。
【特許文献1】特開平5−195038号公報
【特許文献2】特開2001−150108号公報
【特許文献3】特開平10−286658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記スリーブ状耐火物を交換する方式において、スリーブ状耐火物そのものの一層の長寿命化を計るために、新品の出鋼口径は、許容できる最長の流出時間に相当する小さな直径を有し、肉厚を厚く設計されている。通常、転炉では、新品の出鋼口の面積が流出面積上限の約半分になるように、または、新品の流出時間が流出時間下限の約2倍になるように、出鋼口径(内径)を設計している
このため、例えば、200ヒート使用するためのスリーブ状耐火物は、最初の出鋼時間は10分と長いが、使用末期には5分程度まで出鋼時間が短くなり、つまり出鋼時間の総和/スリーブ状耐火物の使用回数で表される平均出鋼時間は、7.5分となっている。
【0021】
この場合、転炉におけるスラグの混入のない最短出鋼時間を5分とすると、2.5分/ヒートの出鋼時間の無駄が生じていることになる。
【0022】
さらに、スリーブ状耐火物の交換に要する時間は、従来、通常50分〜100分が一般的で、平均75分を要する。また、スリーブ状耐火物の寿命は150〜250ヒートで、平均200ヒートが限度である。通常の製鉄所では一般的に容量300トンの転炉1基で、出鋼間隔(tap-to-tap)は、平均40分で年間約12,000ヒートの鋼を精錬している。スリーブ状耐火物の寿命が平均200ヒートとすると、交換回数は60回/年となり、交換に要する時間が平均75分/回のとき、交換に費やす年間の操業停止時間は、約4,500分、75時間にも達する。
【0023】
もし、このスリーブ状耐火物の交換に要する時間を半分の平均37.5分に短縮できれば、交換に費やす年間の操業停止時間は、半分の約2,250分、37.5時間となり、その分だけ転炉の稼動を増やすことができ、生産量も増加する。また、スリーフ状耐火物の寿命を2倍の平均400ヒートに伸ばせれば、交換回数は半分の30回/年となり、交換に要する時間が平均75分/回のとき、交換に費やす年間の操業停止時間は、同じように半分の約2,250分、37.5時間となり、その分だけ転炉の稼動を増やすことができ、生産量も増加する。
【0024】
しかしながら、このスリーブ状耐火物はモルタルなどの不定形耐火物を使って強固に転炉内張り耐火物に焼結され、かつ、高温下で交換作業を行うことを余儀なくされるため、これ以上交換時間を短縮することはきわめて困難であるという問題がある。
【0025】
そこで、上記特許文献2と3に記載のノズル交換装置を転炉の出鋼口のスリーブの交換に適用することも考えられたが、転炉の場合にはタンディッシュの場合と異なり、溶鋼の温度がおよそ50〜100℃も高く、しかも連続して操業しているため、装置の耐熱性が問題になる。とくに、タンディッシュノズルを圧接するためのばねやダンディシュノズルを水平方向へ摺動するためのオイルシリンダー等が熱を受けて劣化する。また、冷却装置を付けることも考えられるが、転炉は回動するため冷却装置が複雑かつ大型になる問題もある。
【0026】
そこで、本発明が解決しようとする課題の第一は、溶融金属の排出口となるスリーブ状耐火物を装着した溶融金属容器において、スリーブ状耐火物をより簡単に交換でき、しかも耐熱性に優れたコンパクトな排出口構造を提供することにある。
【0027】
他の課題は、上記排出口構造において、スリーブ状耐火物を簡単に交換できるスリーブ交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、従来の溶融金属容器の排出口のスリーブ状耐火物において、最初からある程度、開口面積が大きい状態での使用を開始することで平均排出時間を短くし、最初から内孔断面積が大きなスリーブを使うことによって寿命は短くなるため交換頻度が高くなる問題を、排出口のスリーブ状耐火物を上下に2分割し、下方スリーブのみを頻繁に交換することで交換のための時間を短縮し、これによってトータル的に転炉操業の効率を上げ、さらに、耐熱性に問題のある下方スリーブ圧着用の弾性体は、下部スリーブと一体化することで下部スリーブ交換毎に交換可能として耐熱性を向上させるという考えの下で完成した。
【0029】
すなわち、本発明の溶融金属容器の排出口構造は、溶融金属容器の排出口を形成するスリーブ状耐火物を上部スリーブと下部スリーブとに分割し、上部スリーブを溶融金属容器の内張り耐火物に装着し、下部スリーブを上部スリーブの先端部に着脱可能に設けた溶融金属容器の排出口構造において、下部スリーブは、下部スリーブを上部スリーブに圧着するための弾性体に係合されるとともに、この弾性体と一体のユニットとなした金属筐体に保持されていることを特徴とする。
【0030】
金属筐体には、弾性体に外気を導入するための外気導入口を設けることができる。
【0031】
また、下部スリーブは、金属筐体を溶融金属容器に固定した保持部のレールで支持して弾性体を圧縮させたときの反力によって上部スリーブに圧着するようにし、レールの長手方向に沿って移動させることによって上部スリーブに着脱可能とすることができる。
【0032】
さらに、レールには、その長手方向の先端と後端に、弾性体の圧縮を緩和させる傾斜面を設けることができる。
【0033】
そして、本発明の溶融金属容器排出口のスリーブ交換装置は、新しい下部スリーブを保持する新スリーブ保持部と、前記レールに支持されて上部スリーブに圧着されている下部スリーブを収容する現スリーブ収容部と、交換後の古い下部スリーブを保持する旧スリーブ保持部とを一列に備えるとともに、新スリーブ保持部に保持された新しい下部スリーブを現スリーブ収容部に向けて押し出すアクチュエータを備え、前記アクチュエータが、新しい下部スリーブを現スリーブ収容部に押し出すことによって、新しい下部スリーブが前記レールに支持されて上部スリーブに圧着し、上部スリーブに圧着されていた古い下部スリーブが旧スリーブ保持部に押し出されて保持されるようにしたものである。
【0034】
このスリーブ交換装置は、マニプレータに保持されて移動可能とし、さらに、溶融金属容器側に設けられたガイドホーンに装入可能なガイドロッドを備え、下部スリーブの交換時に、マニプレータの操作によりガイドロッドをガイドホーンに装入して位置決めするようにすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明では、溶融金属容器の排出口を形成するスリーブ状耐火物を上下に2分割したことにより、下部スリーブを小さく構成できてハンドリングも容易となり、この下部スリーブのみを交換することで交換時間を短くできる。また、上部スリーブについては、下部スリーブとは別個に形成することができるので、逆に寿命を長くすることができ、上部スリーブの交換頻度を少なくすることができる。
【0036】
さらに本発明では、耐熱性に問題のある下方スリーブ圧着用の弾性体を、下部スリーブと一体化したことにより、弾性体を下部スリーブ交換毎に交換することができ、排出口全体としての耐熱性が向上する。
【0037】
そして、本発明のスリーブ交換装置によれば、下部スリーブを迅速に交換することができる。
【0038】
以上、本発明によれば、下部スリーブのみの迅速な交換によって、溶融金属容器の操業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を製鋼用転炉の出鋼口に適用した添付各図に示す実施例に基づいて説明する。
【0040】
図1は、本発明の排出口構造とスリーブ交換装置の一実施例を示す分解斜視図、図2は、図1の排出口構造の上部側を示す斜視図である。
【0041】
図1、2に示すように、本発明の排出口構造は、転炉1側の内張り耐火物に装着された上部スリーブ2と、上部スリーブ2の先端部に着脱可能に装着される下部スリーブ3とを有する。尚、図1及び図2で図示している転炉は転炉の出鋼口付近であり、転炉の一部である。
【0042】
図3は下部スリーブ3を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。同図に示すように、下部スリーブ3は、外金枠4aと内金枠4bとからなる金属筐体4に一体的に取り付けられている。また、図3(c)に示すように、外金枠4aと内金枠4bとの間には、コイルスプリングからなる弾性体5が装着されており、外金枠4aは、弾性体5を介して内金枠4bを上下方向に移動可能に収納している。具体的には、弾性体5は、内金枠4bの下部に突出して設けたガイド突起6に装着されて横方向にずれないように保持されており、内金枠4bの上下方向の移動は、図3(b)に示すガイドピン7によってガイドされるようになっている。ガイド突起6は、弾性体5が撓みの範囲で収縮しても外金枠4aに当たらないような長さに設定されている。弾性体は同心円状に合計10個設けている。また、外金枠4aには、弾性体5部分に外気を導入して冷却するための外気導入口として冷却ホーン8を設けている。
【0043】
内金枠4bは、その側部に設けたスリーブ固定部9によって下部スリーブ3を保持している。スリーブ固定部9は、先端にスリーブ押さえ金物9aを有するネジ機構からなり、ネジ機構によりスリーブ押さえ金物9aを前進させて下部スリーブ3の側面に押し付けて下部スリーブ3を内金枠4bに固定している。
【0044】
下部スリーブ3は耐火物製で、上面には上部スリーブ2との接合面3aが形成されている。接合面3aは、ほぼ円形をなし、側面に平行な2つの平行面3bを有する。この平行面3bは、後述する下部スリーブ交換時の移動方向と直交する方向に形成されており、平行面3bの長さは、接合面3aの中心に設けたノズル孔3cの直径よりも大きくしている。平行面3bの長さをノズル孔3cの直径よりも大きくすることで、交換時の押し付け力によって下部スリーブ3が破損することを抑制している。接合面3aに平行面3bを設けずに接合面3aを完全円形とした場合は、接合面3aは、内金枠4bと交換時の移動方向において点接触となるので、応力が集中して破損しやすくなる。また、平行面3bの長さはノズル孔3cの直径より短いと、この平行面3bを起点とした亀裂が発生した場合にノズル孔3cに通じやすくなる。
【0045】
なお、本実施例では、下部スリーブ3は一体物としているが、例えば接合面3aを含む上面部と下部の円筒部を異材質等で別々に製造後、接合したものも使用可能である。また、外面をメタルケースで覆うと、破損抑制効果も得られる。
【0046】
図4は上部スリーブ2を示す要部の断面図である。同図に示すように、上部スリーブ2は、外金枠10aと内金枠10bとからなる金属筐体10に一体的に取り付けられている。外金枠10aは、転炉1側に固定されたベース板11に固定されており、内金枠10bはピン12によって外金枠10aに対し、上下方向に少し移動可能に取り付けられている。また、内金枠10bは、その側部に設けたスリーブ固定部13によって上部スリーブ2を保持している。スリーブ固定部13は、先に説明した下部スリーブ2固定用のスリーブ固定部9と同一の構成を有するので、説明を省略する。
【0047】
上部スリーブ2は、下部スリーブ3と同様に耐火物製で、下面には下部スリーブ3との接合面2aが形成されている。接合面2aは、図2に示すように、ほぼ円形をなし、側面に平行な2つの平行面2bを有する。この平行面2bは、後述する下部スリーブ交換時の移動方向と直交する方向に形成されており、平行面2bの長さは、接合面2aの中心に設けたノズル孔2cの直径よりも大きくしている。
【0048】
なお、上部スリーブ2は、転炉1の内張り耐火物との間に不定形耐火物を充填することで保持される。
【0049】
図5は、下部スリーブ3を上部スリーブ2の下面に圧着した状態を示す要部の断面図である。下部スリーブ3は、ベース11に固定された一対の保持部14のレール14aに保持される。この状態では、下部スリーブ3を保持する金属筐体4の外金枠4aが上方に押し上げられて弾性体5を圧縮する。そして、弾性体5の反力によって内金枠4bが下部スリーブ3とともに押し上げられて、下部スリーブ3の接合面3aが上部スリーブ2の接合面2aに確実に圧着される。
【0050】
また、下部スリーブ3を保持する金属筐体4は、レール14aの長手方向に沿ってスライド可能であり、金属筐体4(下部スリーブ3)をレール14aの長手方向に沿ってスライドさせて移動させることによって、下部スリーブ3の交換ができるようになっている。なお、実施例では、金属筐体4の外金枠4a下面とレール14a表面にそれぞれライナー26を設けて、スライド移動を容易とするとともに耐摩耗性を向上させている。
【0051】
さらに、レール14aは、図2に示すように、長手方向の両端部に傾斜面14bを有する。この傾斜面14bは下方に向けて傾斜しているため、金属筐体4(下部スリーブ3)をレール14aの長手方向に沿ってスライド移動させる際に、両端の傾斜面14b部分では、金属筐体4の外金枠4aの押し上げ量が小さくなるので、弾性体5の圧縮が緩和され、下部スリーブ3の上部スリーブ2への圧着力が小さくなる。これによって、下部スリーブ3の交換をスムーズに行うことができる。
【0052】
次に、本発明のスリーブ交換装置について説明する。
【0053】
図1に示すように、スリーブ交換装置15は、スリーブ交換時に新しい下部スリーブを保持する新スリーブ保持部16と、上部スリーブに圧着されている下部スリーブ3を収容する現スリーブ収容部17と、交換後の古い下部スリーブを保持する旧スリーブ保持部18とを基板19上に一列に備えている。新スリーブ保持部16と旧スリーブ保持部18は、それぞれ新しい下部スリーブと古い下部スリーブの金属筐体をスライド可能に支持するガイドレール16a、18aを有する。また、新スリーブ保持部16側には、オイルシリンダーからなるアクチュエータ20が設けられている。
【0054】
ここで、転炉1側のベース板には、図1、図2に示すように、ノズル孔2cの中心を対角線の中心とするように一対の位置決め用のガイドホーン21が設けられており、スリーブ交換装置15の基板19には、ガイドホーン21と対応する位置に一対のガイドロッド22が設けられている。
【0055】
以下、スリーブ交換装置15による下部スリーブの交換作業について説明する。
【0056】
図6は、スリーブ交換装置15による下部スリーブの交換作業要領を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。また、図7は、下部スリーブ交換時の要部の断面図である。
【0057】
下部スリーブの交換に当たっては、予め、スリーブ交換装置15の新スリーブ保持部16に新しい下部スリーブ3’をガイドレール16aに滑り込ませることで保持しておく(図7参照)。次に、図6に示すように、スリーブ交換装置15を移動台車23上のマニプレータ24で保持し、移動台車23を軌道レール25に沿って前進させることでスリーブ交換装置15を転炉1に接近させる。そして、マニプレータ24を操作して、スリーブ交換装置15の上下左右方向の位置調整を行いながら、スリーブ交換装置15のガイドロッド22を転炉1側に設けたガイドホーン21に装入し、スリーブ交換装置15の位置決めを行う。
【0058】
その後の手順については図7を参照して説明すると、スリーブ交換装置15のアクチュエータ20を前進(伸張)させることにより、新スリーブ保持部16に保持された新しい下部スリーブ3’を現スリーブ収容部17に向けて押し出す。この操作によって、新しい下部スリーブ3’が、図5に示すようにレール14aに乗り上げて上部スリーブ2に圧着し、上部スリーブに圧着されていた古い下部スリーブ3’’(図7参照)は、旧スリーブ保持部18に押し出され、ガイドレール18a上に滑り込んで保持される。以上で、下部スリーブの交換が完了する。
【0059】
実際の転炉に、本実施例の排出口構造を適用し、スリーブ交換装置にて交換作業を実施したところ、5分以内で交換作業を終了することができた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、製鋼用転炉だけでなく、各種の溶融金属容器の排出口に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の排出口構造とスリーブ交換装置の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1の排出口構造の上部側を示す斜視図である。
【図3】下部スリーブを示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図4】上部スリーブを示す要部の断面図である。
【図5】下部スリーブを上部スリーブに圧着した状態を示す要部の断面図である。
【図6】スリーブ交換装置による下部スリーブの交換作業要領を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】下部スリーブ交換時の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 転炉
2 上部スリーブ
2a 接合面
2b 平行面
2c ノズル孔
3 下部スリーブ
3’ 新しい下部スリーブ
3’’ 古い下部スリーブ
3a 接合面
3b 平行面
3c ノズル孔
4 金属筐体
4a 外金枠
4b 内金枠
5 弾性体
6 ガイド突起
7 ガイドピン
8 冷却ホーン(外気導入口)
9 スリーブ固定部
9a スリーブ押さえ金物
10 金属筐体
10a 外金枠
10b 内金枠
11 ベース板
12 ピン
13 スリーブ固定部
14 保持部
14a レール
14b 傾斜面
15 スリーブ交換装置
16 新スリーブ保持部
16a ガイドレール
17 現スリーブ収容部
18 旧スリーブ保持部
18a ガイドレール
19 基板
20 アクチュエータ
21 ガイドホーン
22 ガイドロッド
23 移動台車
24 マニプレータ
25 軌道レール
26 ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器の排出口を形成するスリーブ状耐火物を上部スリーブと下部スリーブとに分割し、上部スリーブを溶融金属容器の内張り耐火物に装着し、下部スリーブを上部スリーブの先端部に着脱可能に設けた溶融金属容器の排出口構造において、
下部スリーブは、下部スリーブを上部スリーブに圧着するための弾性体に係合されるとともに、この弾性体と一体のユニットとなした金属筐体に保持されていることを特徴とする溶融金属容器の排出口構造。
【請求項2】
金属筐体が、弾性体に外気を導入するための外気導入口を有する請求項1に記載の溶融金属容器の排出口構造。
【請求項3】
下部スリーブは、金属筐体を溶融金属容器に固定した保持部のレールで支持して弾性体を圧縮させたときの反力によって上部スリーブに圧着されており、前記レールの長手方向に沿って移動させることによって上部スリーブに着脱可能となっている請求項1又は2に記載の溶融金属容器の排出口構造。
【請求項4】
前記レールが、その長手方向の先端と後端に、弾性体の圧縮を緩和させる傾斜面を有する請求項3に記載の溶融金属容器の排出口構造。
【請求項5】
上部スリーブと下部スリーブの接合面はほぼ円の形状をなし、上部スリーブと下部スリーブのノズル孔は接合面の中心に設けられており、接合面の外形が、下部スリーブの着脱時の移動方向と直交する方向において前記ノズル孔より長い平行面を有する請求項3又は4に記載の融金属容器の排出口構造。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかに記載の溶融金属容器の排出口構造における下部スリーブを交換するための溶融金属容器排出口のスリーブ交換装置であって、
新しい下部スリーブを保持する新スリーブ保持部と、前記レールに支持されて上部スリーブに圧着されている下部スリーブを収容する現スリーブ収容部と、交換後の古い下部スリーブを保持する旧スリーブ保持部とを一列に備えるとともに、新スリーブ保持部に保持された新しい下部スリーブを現スリーブ収容部に向けて押し出すアクチュエータを備え、
前記アクチュエータが、新しい下部スリーブを現スリーブ収容部に押し出すことによって、新しい下部スリーブが前記レールに支持されて上部スリーブに圧着し、上部スリーブに圧着されていた古い下部スリーブが旧スリーブ保持部に押し出されて保持される溶融金属容器排出口のスリーブ交換装置。
【請求項7】
マニプレータに保持されて移動可能であり、溶融金属容器側に設けられたガイドホーンに装入可能なガイドロッドを備え、下部スリーブの交換時に、マニプレータの操作によりガイドロッドをガイドホーンに装入して位置決めする請求項6に記載の溶融金属容器排出口のスリーブ交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−37202(P2006−37202A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222394(P2004−222394)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】