説明

炊飯器

【課題】回路素子は所定の温度特性を有しており、機体を使用する室温によって設計時の回路定数から個々の回路素子の温度特性による定数ずれなどが発生し、これに起因して、誘導加熱の電力は若干のずれを生じ、この加熱電力のバラツキが調理性能のバラツキの一因になってきているという課題があった。
【解決手段】温度検知手段20と、電流検知手段12の検知電流値の温度特性を記憶している記憶手段21と、調理開始時に温度検知手段20の検知温度により記憶手段21から所定の補正値を取り出して補正手段22が電流検知手段12の温度特性による検知電流値のずれを補正することにより、温度による加熱電力のずれを低減することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の炊飯器は、電流検知手段を設け、電流検知手段がある基準電流値になるように制御を行うことで決められた電力で加熱を行うことによって調理を行っている。
【0003】
図7は従来の炊飯器のブロック図である。図7において、外コイル1と内コイル2は内鍋3を誘導加熱する。ダイオードブリッジ4は商用電源5が供給する交流を整流して、単方向電源を供給する。ダイオードブリッジ4が供給する単方向電源をもとに平滑コンデンサ6、共振コンデンサ7、スイッチング素子8よりなるインバータ回路9が外コイル1と内コイル2によって内鍋3を誘導加熱するための高周波電力を発生させる。
【0004】
タイマ手段10は設定時間Tonの幅のパルスを出力して、スイッチング素子8を設定時間Tonの間、導通させる。図8は炊飯器における誘導加熱時のスイッチング素子8の各部波形図を示している。
【0005】
トリガ手段11はスイッチング素子8のコレクタ−エミッタ間電圧Vce(外コイル1、内コイル2の電圧)を検知し、図8のグラフに示すように、Vceがゼロになった瞬間にスイッチング素子8をオンさせ、タイマ手段10の設定時間Tonの計時をスタートさせる。
【0006】
トリガ手段11はVceがゼロになった瞬間にスイッチング素子8をオンさせることにより、スイッチング素子8のスイッチング時のロスを大きく低減させるものである。また、タイマ手段10がスイッチング素子8をオンさせるゲート電圧のパルス幅Tonを大きくしたり、小さくしたりすることによって電源電流を制御することができる。
【0007】
電流検知手段12は電源電流を検知している。電流検知手段12の電流値を制御することで内鍋3を加熱する電力を制御している。Ton設定手段13が電流検知手段12からの出力をもとに検知電流が所定の電流値より大きい場合は、Tonを小さくして電源電流を小さくし、逆に検知電流が所定の電流値より小さい場合はTonを大きくして電源電流を大きくするといったようにTonの値を決定し、その値をタイマ手段10に出力させることにより、所定の電源電流になるように制御を行っている。なお、先述した所定の電流値を電源周波数60Hzと50Hzの場合によって変更することによって電源周波数による影響に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4023438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では、機体を構成する各種回路素子は所定の温度特性を有しており、機体を使用する室温によって設計時の回路定数から個々の回路素子の温度特性による定数ずれなどが発生し、これに起因して、誘導加熱の電力は若干のずれを生じ、この加熱電力のバラツキが調理性能のバラツキの一因になってきているという課題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、温度による影響を低減できる炊飯器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明炊飯器は温度検知手段と、前記電流検知手段の検知電流値の温度特性を記憶している記憶手段と、調理開始時に前記温度検知手段の検知温度により前記記憶手段から所定の補正値を取り出して前記電流検知手段の検知電流値を補正する補正手段を設けることによって、温度による加熱電力のバラツキを補正できるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炊飯器は、温度による加熱電力のバラツキを低減でき、調理性能のバラツキの小さい炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器のブロック図
【図4】本発明の実施の形態3における炊飯器のブロック図
【図5】本発明の実施の形態4における炊飯器のブロック図
【図6】本発明の実施の形態5における炊飯器のブロック図
【図7】従来の炊飯器のブロック図
【図8】炊飯器における誘導加熱時のスイッチング素子の各部波形図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、上面が開口した本体と、本体上面を閉じる蓋部と、前記本体内に着脱自在に収納され調理物を入れて調理を行う内鍋と、前記内鍋を誘導加熱する加熱コイルと、商用電源を整流して得られる単方向電源と、スイッチング素子、共振コンデンサ、平滑回路よりなり、前記単方向電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、商用電源より供給される電流を測定する電流検知手段と、前記スイッチング素子を設定時間Tonの間導通させるタイマ手段と、コイル電圧を監視し前記設定時間Tonの計時をスタートさせるトリガ手段と、前記電流検知手段の値がある一定値になるように前記タイマ手段の出力するTonの値を決定するTon設定手段とを備え、温度検知手段と、前記電流検知手段の検知電流値の温度特性を記憶している記憶手段と、調理開始時に前記温度検知手段の検知温度により前記記憶手段から所定の補正値を取り出して前記電流検知手段の検知電流値を補正する補正手段より構成したものであり、前記電流検知手段の温度特性による検知電流値のずれを補正することによって、温度による加熱電力のずれを低減することができるものである。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明に調理中に数度、前記温度検知手段に温度を計測させ前記補正手段に補正を行わせる再補正手段を付加したものであり、調理中に複数回、前記補正手段に補正を行わせることにより、調理中の加熱による前記電流検知手段の温度上昇による検知電流値のずれの補正も可能になり、調理中の温度上昇による加熱電力のずれを低減することができるものである。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明に前記温度検知手段が検知した温度がある一定値以上になった場合は異常と判断する異常手段を付加したものであり、機体の異常な温度上昇を検知することにより異常状態での動作を制限することができ、安全性を向上することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明に入力手段と、前記入力手段により前記記憶手段の記憶する補正値を任意の値に変更できる補正変更手段を付加したものであり、機体設計の際の性能確認や所定の調理性能が出ない場合に加熱電力補正値の変更が容易にできるものである。
【0018】
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明に前記補正手段が決定した補正値を表示させる補正値表示手段を付加したものであり、機体設計の際の性能確認などに補正値が設計どおりになっているかの確認などに使用することができ、より性能確認が容易になり、製品品質が向上できるものである。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における炊飯器のブロック図である。図1において、加熱コイルである外コイル1と加熱コイルである内コイル2は内鍋3を誘導加熱する。ダイオードブリッジ4は商用電源5が供給する交流が整流して、単方向電源を供給する。ダイオードブリッジ4が供給する単方向電源をもとに平滑コンデンサ6で平滑する平滑回路と、共振コンデンサ7と、スイッチング素子8とを備えたインバータ回路9が外コイル1と内コイル2によって内鍋3を誘導加熱するための高周波電力を発生させる。タイマ手段10は設定時間Tonの幅のパルスを出力して、スイッチング素子8を設定時間Tonの間、導通させる。
【0021】
図8は炊飯器における誘導加熱時のスイッチング素子8の各部波形図を示しており、トリガ手段11はスイッチング素子8のコレクタ−エミッタ間電圧Vce(外コイル1、内コイル2の電圧)を検知し、図8のグラフに示すように、Vceがゼロになった瞬間にスイッチング素子8をオンさせ、タイマ手段10の設定時間Tonの計時をスタートさせる。トリガ手段11はVceがゼロになった瞬間にスイッチング素子8をオンさせることにより、スイッチング素子8のスイッチング時のロスを大きく低減させるものである。タイマ手段10がスイッチング素子8をオンさせるゲート電圧のパルス幅Tonを大きくしたり、小さくしたりすることによって電源電流を制御することができる。
【0022】
電流検知手段12は電源電流を検知している。電流検知手段12の電流値を制御することで内鍋3を加熱する電力を制御している。Tonを決定するTon設定手段13が電流検知手段12からの出力をもとに検知電流が所定の電流値より大きい場合は、Tonを小さくして電源電流を小さくし、逆に検知電流が所定の電流値より小さい場合はTonを大きくして電源電流を大きくするといったようにTonの値を決定し、その値をタイマ手段10に出力させることにより、所定の電源電流になるように制御を行っている。
【0023】
調理を開始すると、温度検知手段20が電流検知手段12付近の温度を測定する。記憶手段21には、温度検知手段20の検知電流値がある基準温度に対して何度ずれるとどのくらいずれるかを記憶している。例えば、基準温度が20度とすると、21度のとき検知電流値が+aずれる、22度のときは+bずれる、またそれとは逆に、19度のときは−cずれる、18度のときは−dずれる、といったように基準温度に対する温度変化による電流検知手段12のずれ、すなわち電流検知手段12の温度特性が記憶手段21に記憶されていることになる。
【0024】
補正手段22は温度検知手段20による検知温度によって基準温度20度から現在の温度が何度ずれているかを判断し、その値に基づいて記憶手段21から電流検知手段12の
温度によるずれを取り出して、電流検知手段12の検知電流Iinを補正し、その補正した結果の電流値に基づいて、Ton設定手段13に制御を行わせる。これにより、温度による電流検知手段のバラツキの影響を低減することができるものである。
【0025】
本実施の形態においては、記憶手段21には、温度によって温度検知手段20の検知電流が何度ずれるかを記憶しているが、温度検知手段20の温度特性曲線の傾きなどを記憶し、補正手段22によって補正することでも実現できることは言うまでもない。
【0026】
図2は本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図である。図2において、内鍋3は本体23内部に収納されている。前記内鍋3の底部に沿うような形で、保護枠24に外コイル1、内コイル2が設けられている。本体23の上部を閉じる形で蓋部25が設けられている。蓋部25の上面に基板26が設置されており、誘導加熱の各種制御を行っている。
【0027】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における炊飯器のブロック図である。図3においては、本発明の実施の形態1に再補正手段30を付加したものである。調理中では調理物に加熱を行うことにより機体温度は上昇するので、温度によるバラツキの影響度合いが変化してしまい、補正手段22による補正が適正な補正でなくなってしまい、加熱電力がずれてきてしまう。
【0028】
このような現象を防ぐため、再補正手段30は、調理中に数回程度、温度検知手段20で温度を再測定して補正手段22に再度、補正を行わせることにより、ずれが大きくなることを防ぐものである。
【0029】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3における炊飯器のブロック図である。図4においては、本発明の実施の形態1に異常手段40を付加したものである。温度検知手段20が検知した温度の値がある一定値以上になった場合、回路素子の故障などによる異常加熱が発生したと考えられる。そのため、異常手段40は異常と判断して加熱を停止し、異常表示を行うなど異常処理を行うものである。
【0030】
(実施の形態4)
図5は本発明の実施の形態4における炊飯器のブロック図である。図5においては、本発明の実施の形態1に入力手段50と入力手段50によって記憶手段21の記憶している電流検知手段12の温度によるずれのそれぞれを任意の値に変更できる補正変更手段51を付加したものである。このことにより機体設計の際の各温度の補正値を様々な値に変更しての性能確認や市場において所定の調理性能が出ない場合に加熱電力を変更することによって対応できるなどの対応が可能になるものである。
【0031】
(実施の形態5)
図6は本発明の実施の形態5における炊飯器のブロック図である、図6においては、本発明の実施の形態1に補正手段22が補正に使用した値を表示させる補正値表示手段60を付加したものである。
【0032】
テストモードを用いて補正値表示手段60に補正値Iinを表示させることにより、機体設計の際の性能確認などに補正値が設計どおりになっているかの確認などに使用することができ、より性能確認が容易になり製品品質が向上できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、温度による各回路素子の特性バラツキの影響で発生する加熱電力のバラツキを低減でき、調理性能のバラツキの小さい炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 外コイル
2 内コイル
3 内鍋
4 ダイオードブリッジ
5 商用電源
6 平滑コンデンサ
7 共振コンデンサ
8 スイッチング素子
9 インバータ回路
10 タイマ手段
11 トリガ手段
12 電流検知手段
13 Ton設定手段
20 温度検知手段
21 記憶手段
22 補正手段
23 本体
25 蓋部
30 再補正手段
40 異常手段
50 入力手段
51 補正変更手段
60 補正値表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、本体上面を閉じる蓋部と、前記本体内に着脱自在に収納され調理物を入れて調理を行う内鍋と、前記内鍋を誘導加熱する加熱コイルと、商用電源を整流して得られる単方向電源と、スイッチング素子、共振コンデンサ、平滑回路よりなり、前記単方向電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、商用電源より供給される電流を測定する電流検知手段と、前記スイッチング素子を設定時間Tonの間導通させるタイマ手段と、コイル電圧を監視し前記設定時間Tonの計時をスタートさせるトリガ手段と、前記電流検知手段の値がある一定値になるように前記タイマ手段の出力するTonの値を決定するTon設定手段とを備え、温度検知手段と、前記電流検知手段の検知電流値の温度特性を記憶している記憶手段と、調理開始時に前記温度検知手段の検知温度により前記記憶手段から所定の補正値を取り出して前記電流検知手段の検知電流値を補正する補正手段より構成した炊飯器。
【請求項2】
調理中に数度、前記温度検知手段に温度を計測させ前記補正手段に補正を行わせる再補正手段を付加した請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記温度検知手段が検知した温度がある一定値以上になった場合は異常と判断する異常手段を付加した請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
入力手段と、前記入力手段により前記記憶手段の記憶する補正値を任意の値に変更できる補正変更手段を付加した請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記補正手段が決定した補正値を表示させる補正値表示手段を付加した請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−245300(P2012−245300A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121357(P2011−121357)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】