説明

炎症性疾患および他の疾患の治療のためのプロドラッグとしての新規なペプチダーゼ二重阻害剤

本発明は、一般式(1)および(2)すなわちA−B−D−B’−A’(1)およびA−B−D−E(2)の化合物に関し、式中、
AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、残基(I)
[化1]


であり、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、は、好ましくはS−配置またはL−配置のキラル炭素原子を示し、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、O、NまたはS含有またはO、N、S非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、アリールアミドアルキレン残基、ヘテロアリールアミドアルキレン残基、非置換または一置換または多置換アリーレン残基またはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり、Dは、−S−S−または−Se−Se−であり、Eは官能基−CH−CH(NH)−Rまたは−CHCH(NH)−Rであり、Rは、O、NまたはS含有またはO、NまたはS非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキル残基、シクロアルキル残基、アラルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、アリールアミドアルキル残基、ヘテロアリールアミドアルキル残基、非置換または一置換または多置換アリール残基またはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり、は、好ましくはS−配置またはL−配置のキラル炭素原子を示し、あるいは、これらの、有機酸および/または無機酸との酸付加塩;ならびに一般式(1)および(2)の化合物の医薬品への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素であるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)ならびに類似の酵素作用を有するペプチダーゼと、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)ならびに類似の酵素作用を有するペプチダーゼ(「二重阻害剤」)とを、協調して阻害することができる新規な物質および化合物に関する。さらに、本発明は、DPIVとAPNとに対する新規な二重阻害剤を調製するための方法に関する。また、本発明は、医療分野で用いられる上述した新規な化合物にも関する。さらに、本発明は、上述した二重阻害剤を、過剰な免疫応答を示し、炎症の発生(inflammatory genesis)を伴う疾病である、神経疾患および脳損傷、腫瘍疾患、皮膚病、II型糖尿病およびSARSの予防および治療に使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素であるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV、CD26、EC 3.4.14.5)は、至るところに存在し、N末端から2番目のプロリンならびに、頻度は低いがアラニン、あるいは制約付きでセリン、トレオニン、バリンおよびグリシンのような別のアミノ酸での、ペプチドの加水分解を特異的に触媒するセリンプロテアーゼである。DPIVと類似の酵素作用を有する酵素の遺伝子ファミリーに属する酵素には特に、DP 8、DP 9およびFAP/セプラーゼがある[T.チェン(Chen)ら:Adv.Exp.Med.Biol.524、79、2003年]。DPIVに類似の基質特異性が、アトラクチン(マハゴニータンパク質)にも認められた[J.S.デューク−コーハン(Duke−Cohan)ら:J.Immunol.156、1714、1996年]。前記酵素は、DPIV阻害剤でも阻害される。
【0003】
アラニルアミノペプチダーゼ(同じく至るところに存在する)の群に属するものに、主にII型の膜タンパク質として見られるアミノペプチダーゼN(APN、CD13、EC 3.4.11.2)ならびに、細胞質可溶アラニルアミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.14、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ、アミノ−ペプチダーゼPS、エンセファリン分解アミノペプチダーゼ)がある。アラニルアミノペプチダーゼ(上述のアミノペプチダーゼを含む)は、たとえば亜鉛依存的のように、金属依存的に作用し、APNの場合はN末端のアラニンを優先してオリゴペプチドのN末端アミノ酸でペプチド結合の加水分解を触媒する[A.J.バレット(Barrett)ら:Handbook of Proteo−lytic Enzymes、Academic Press、1998年]。アミノペプチダーゼNの阻害剤はいずれも細胞質アラニルアミノペプチダーゼも阻害するが、細胞質アミノペプチダーゼの特異的阻害剤が存在する[M.コモド(Komodo)ら:Bioorg.and Med.Chem.9、121、2001年]。
【0004】
どちらの群の酵素についても、異なる細胞系で重要な生物学的機能が証明された。これは、特に免疫系の場合に該当する[U.レンデッケル(Lendeckel)ら:Intern.J.Mol.Med.4、17、1999年;T.カーネ(Kahne)ら:Intern.J.Mol.Med.4、3、1999年;I.ドゥ・メーステル(De Meester)ら:Advanc.Exp.Med.Biol.524、3、2002年;国際公開第01/89,569号パンフレット;国際公開第02/053,170号パンフレット;国際特許出願第PCT/EP 03/07,199号明細書];ニューロン系[国際公開第02/053,169号パンフレットおよび独国特許出願第103 37 074.9号明細書];線維芽細胞[独国特許出願第103 30 842.3号明細書];ケラチノサイト[国際公開第02/053,170号パンフレット];皮脂腺細胞/脂腺細胞[国際特許出願第PCT/EP 03/02,356号明細書];腫瘍ならびに、たとえばコロナウイルスなどのウイルス感染[D.P.コントイアニス(Kontoyiannis)ら:Lancet 361、1558、2003年]。
【0005】
内分泌ホルモンであるGIPおよびGLPを特異的に不活性化するDPIVの機能を端緒として、グルコース代謝異常を処置するための新たな治療概念が開発された[D.M.エヴァンス(Evans):Drugs 5、577、2002年]。
【0006】
どちらの群の酵素についても、周知の異なる阻害剤がある[D.M.エヴァンス(Evans):Drugs 5、577、2002年およびM.−C.フルニエ−ザルスキ(Fournie−Zaluski)およびB.P.ロケス(Roques):J.ラングナー(Langner)およびS.アンソルジ(Ansorge):エクトペプチダーゼ、クルヴェル・アカデミック(Kluwer Academic)/プレナム・パブリッシャーズ(Plenum Publishers)、第51ページ、2002年に概要が記載されている]。
【0007】
アラニルアミノペプチダーゼとジペプチジルペプチダーゼIVの単独阻害ならびに類似の基質特異性を有する酵素の阻害、特に、両方の酵素群に属する酵素の同時阻害によって、免疫細胞のDNA合成が大きく阻害されることになる。よって、細胞の繁殖が大きく阻害され、なおかつ、サイトカインの産生が変化し、特に(免疫調節作用性)TGF−β1の誘導[国際公開第01/89,569号パンフレット;国際公開第02/053,170号パンフレット]ならびに、インターロイキン−4(IL−4)などのTH1およびTH2型炎症性サイトカインの生成および放出の阻害[国際公開第02/053,170号パンフレットおよび独国特許出願第101 02 392.8号明細書]が起こる。アラニルアミノペプチダーゼの阻害剤は、調節性T細胞(Regulatory T‐Cell)にてTGF−β1を強く誘導する[国際特許出願第PCT/EP 03/07,199号明細書]。ニューロン系では、急性および慢性の脳損傷の進行の低減または遅滞が、両方の酵素系の阻害によるものであることが実証された[国際公開第02/053,169号パンフレットおよび独国特許出願第103 37 074.9号明細書]。さらに、線維芽細胞[独国特許出願第103 30 842.3号明細書]、ケラチノサイト[国際公開第02/053,170号パンフレット]および脂腺細胞[国際特許出願第PCT/EP 03/02,356号明細書]については、アラニルアミノペプチダーゼNとDPIVの同時阻害によって、これらの細胞の増殖とサイトカイン産生の変化が阻害されることも実証された。
【0008】
このことから、アラニルアミノペプチダーゼおよびジペプチジルペプチダーゼIVならびに類似の作用を有する酵素が、異なる臓器および細胞系で重要な生物学的中心機能を担っており、かつ、両方の群の酵素を同時阻害することが、多くの場合は慢性である、さまざまな疾患を処置するための新しい効果的な治療原理となるという、意外な事実が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
許容された動物モデルにおいて、本願出願人はまず、特に前記ペプチダーゼの両方の群に属する阻害剤の同時投与によって、異なる細胞系の成長が阻害され、かつ慢性炎症性過程および脳損傷の過剰な免疫応答が生体内においても抑制されることを示すことができた[国際公開第01/89,569号パンフレット]。周知の単一の阻害剤を単独投与すると、効果が落ちる。
【0010】
現時点までで報告されている結果は、主にアラニルアミノペプチダーゼNおよびジペプチジルペプチダーゼIVのみの周知の阻害剤で得られたものであって、文献にも記載されており、ある程度は商業入手可能であるが、特に両方の群に属する阻害剤の組み合わせで商業入手可能である。
【0011】
意外なことに、新規の、主に非ペプチド系の低分子量物質が見いだされたが、これはプロドラッグとして利用できるものであり、また、生理学的および病理学的条件下で、有効な薬剤または有効な薬剤の混合物と反応し、アラニルアミノペプチダーゼNおよび類似の基質特異性を有する酵素と、ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の基質特異性を有する酵素とを、二重に阻害する。−S−S−または−Se−Se−架橋の還元、好ましくは細胞チオール(−SH−基を有する化合物)によってプロドラッグの転換がなされる。
【0012】
ゆえに、本願明細書で開示するような型のプロドラッグは、好ましくは細胞および組織で作用する。さらに、前記プロドラッグを用いることで、血漿中の遊離ペプチダーゼに結合することにより、阻害剤の阻害能が発揮されないようにすることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、本発明は、Ala−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼならびにGly−Pro−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼを特異的に阻害でき、よって、両方の群に属するペプチダーゼの協調阻害能を一物質のみで兼ね備えた新規な物質に関する。
【0014】
さらに、本発明は、過剰な免疫応答を伴う疾患(自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶反応、敗血病)、動脈硬化、神経疾患、脳損傷および皮膚病(特に、ざ瘡および乾癬)を含む他の慢性炎症性疾患、腫瘍疾患および特定のウイルス感染(特に、SARS)ならびにII型糖尿病疾患の予防および治療に、そのままでも利用できるが、他の物質の開始材料としても利用できる新規な物質に関する。
【0015】
本発明は、一般式(1)および(2)、すなわち
[式1]
A−B−D−B’−A’(1)および
[式2]
A−B−D−E(2)
(式中、−AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、残基
【化1】

であり、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、はキラル炭素原子を示し、
BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、アリールアミドアルキレン残基、ヘテロアリールアミドアルキレン残基、非置換または一置換または多置換アリーレン残基またはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり、
Dは、−S−S−または−Se−Se−であり、
Eは、官能基−CHCH(NH)−Rであり、式中、Rは、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキル残基、シクロアルキル残基、アラルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、アリールアミドアルキル残基、ヘテロアリールアミドアルキル残基、非置換または一置換または多置換アリール残基またはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり、はキラル炭素原子を示す)の化合物、
または、その有機酸および/または無機酸との酸付加塩に関する。
【0016】
一般式(1)および(2)で表される化合物の好ましい実施形態は、従属請求項2〜10のものである。
【0017】
本発明はまた、A、A’、B、B’、DおよびEが先に詳細に述べた有意性を有する、下記の一般的な合成スキームに基づいて、一般式(1)および(2)の化合物を調製する方法にも関するものであり、以下の合成スキーム1では、
【化2】

一般式
【化3】

(式中、(SG)は保護基であり、

がBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化4】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、式
【化5】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化6】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換して得られる反応生成物を、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、式中、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;
一般式
【化7】

(式中、(SG)が保護基であり、

がBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化8】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られる式
【化9】

の縮合生成物を、一般式
【化10】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換し、得られる反応生成物を、一般式
[化11]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;
一般式
【化12】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素であり、Zはチオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基である)の化合物を、一般式
【化13】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、式
【化14】

の得られた縮合生成物を、一般式
[化15]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物にするか;
一般式
【化16】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化17】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られた反応生成物を、一般式
[化18]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−R
の化合物で一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;
一般式
【化19】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化20】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られた反応生成物を、保護基から切断して一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか、または一般式
【化21】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化22】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、式
【化23】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化24】

(式中、

はBの構造要素であり、Zは、チオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基であり、(SG)は保護基である)の化合物で変換し、式
【化25】

の得られた反応生成物を、一般式
[化26]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物にする。
【0018】
本発明はまた、医薬品に用いられる、上述の、かつ以下に詳細に述べる一般式(1)および(2)の化合物に関する。
【0019】
さらに、本発明は、阻害剤前駆体または阻害剤プロドラッグである、上述の、かつ以下に詳細に述べる一般式(1)および(2)の化合物に関する。
【0020】
好ましい実施形態は、従属請求項14〜16のものである。
【0021】
さらに、本発明は、上述の、かつ以下に詳細に述べる一般式(1)および(2)の少なくとも1種の化合物の、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルス疾患ならびにII型糖尿病を含む、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療への使用に関する。
【0022】
本発明は、上述の、かつ以下に詳細に述べる一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1種の、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルスによる疾患ならびにII型糖尿病をはじめとする、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療用の薬剤の調製への使用にも関する。
【0023】
このような使用の好ましい実施形態が、請求項19〜20に記載されている。
【0024】
さらに、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種の阻害剤を、一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1種から、以下の詳細な説明に従って生成する方法に関し、一般式(1)および(2)の少なくとも1種の化合物は、細胞および組織に存在するものとしてこれを還元条件に曝露した、以下の詳細な説明を許容する。
【0025】
この方法の好ましい実施形態は、請求項22のものである。
【0026】
本発明は、請求項1〜10のいずれか一項および以下の詳細な説明による、一般式(1)および(2)のうちの少なくとも1種の化合物のうちの少なくとも1種を、任意に1種以上の製薬的または化粧品的に許容可能な担体、補助化合物および/またはアジュバントと一緒に含む、医薬品または化粧用調製物にも関するものである。
【0027】
本発明によれば、この新たな化合物は、一般式(1)または(2)
[式1]
A−B−D−B’−A’(1)
[式2]
A−B−D−E(2)
のいずれかで表される。
【0028】
意外なことに、前記式の化合物自体に、後述する酵素に対する阻害作用があり、さらに、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤である化合物と限定条件下で反応することが見いだされた。
【0029】
「ジペプチジルペプチダーゼIV」(DPIV、CD26、EC 3.4.14.5)という用語を使用して、以下の説明および特許請求の範囲では、ペプチドのN末端から2番目のプロリンで、これよりは頻度は低いがアラニンで、さらには制約付きでそれぞれ、セリン、トレオニン、バリンおよびグリシンのような他のアミノ酸での、ペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するセリンプロテアーゼが認識される。
【0030】
「ジペプチジルペプチダーゼIVと類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」という表現を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、N末端から2番目のプロリンまたはアラニンでのペプチドの加水分解を特異的に触媒するペプチダーゼが認識される。ジペプチジルペプチダーゼIVと類似の酵素作用を有するペプチダーゼの例としては、本発明をこれらに限定することなく、DP 8、DP 9およびFAP/セプラーゼがあげられる[T.チェン(Chen)ら、上掲]およびアトラクチン(マハゴニータンパク質)[J.S.デューク−コーハン(Duke−Cohan)ら、上掲]。
【0031】
「アラニルアミノペプチダーゼN」(APN、CD13、EC 3.4.11.2)という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、金属(亜鉛)依存的に作用し、ペプチドのN末端アミノ酸、好ましくはN末端のアラニンでのペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するプロテアーゼが認識される。
【0032】
「アラニルアミノペプチダーゼNと類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」という表現を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、APNのように、金属依存的に作用し、ペプチドのN末端アミノ酸、好ましくはN末端のアラニンでペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するペプチダーゼが認識される。アラニルアミノペプチダーゼNと類似の酵素作用を有するペプチダーゼの一例として、本発明をこれらに限定することなく、細胞質可溶アラニルアミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.14、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼPS、エンセファリン分解アミノペプチダーゼ)[A.J.バレット(Barret)ら、上掲]があげられる。
【0033】
「阻害剤」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、天然由来、合成由来または天然由来で合成の修飾を施したこのような化合物が、酵素または酵素群への調節作用、特に阻害作用を有するものとして認識される。調節作用は、上述した広い定義の用語「阻害」を限定することなく、ほとんどの異なる作用に基づくものであり得る。本発明による好ましい阻害剤は、酵素への阻害作用を有する阻害剤であり、一層好ましくは酵素群への阻害作用を有する阻害剤であり、たとえば、先に定義したようなジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびジペプチジルペプチダーゼIVと類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、またはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)への阻害作用を有する阻害剤のそれぞれについて、およびアラニルアミノペプチダーゼNと類似の酵素作用を有するペプチダーゼへの阻害作用を有する阻害剤である。
【0034】
「前駆体」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、天然に発生するまたは合成または天然に発生するが合成的に修飾された化合物が認識され、ここから定義された条件下で他の化合物を化学的に誘導することが可能である。このように、阻害剤前駆体は、阻害剤に対して体系的に反応可能な天然または合成由来の化合物もしくは天然物であるが、合成的に修飾された化合物であるとして認識される。
【0035】
「プロドラッグ」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、天然に存在する、もしくは合成または天然に存在するが合成的に修飾された化合物が認識され、ここから、定義された条件下、好ましくは生理学的または病理学的条件下で他の化合物を化学的に誘導することが可能であり、その結果、これらの他の化合物は、開始物質とは質的および/または量的に異なる薬理学的作用を発現する。このように、阻害剤プロドラッグは、好ましくは生理学的または病理学的条件下、さらに好ましくはたとえばヒトなどの哺乳動物の生理学的または病理学的条件下で、阻害作用を有する新たな物質と体系的に反応可能な天然または合成由来の化合物、もしくは天然であるが合成的に修飾された化合物であるとして認識される。これは、プロドラッグそれ自体が、定義された薬理学的(たとえば阻害)作用を有する薬剤に変換される前に、薬理学的作用を発現する(たとえば上述の2つの酵素のうち、一方を阻害する)ことを排除するものではない。哺乳動物またはヒトそれぞれでのプロドラッグの薬剤への変換条件は、たとえばヒトなどの哺乳動物の生理学的周囲あるいは、たとえばヒトなどの哺乳動物の体に規則的に存在するような類のものであり得る。あるいは、このような生理学的条件は、たとえば疾患パターンで存在するような、たとえば定義された生理学的条件などの定義された条件でのみ、たとえばヒトなどの哺乳動物で存在し得るものであってもよく、または、たとえば(制限なく)たとえば人間の生物体などの哺乳動物の生物体への医療的な影響などの、外部の影響によって誘導または引き起こすことが可能なものであってもよい。
【0036】
同一であっても異なっていてもよい、上述の一般式(1)および(2)AおよびA’の化合物は、残基
【化27】

であり、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、はキラル炭素原子である。特に好ましいのは、本発明によれば、化合物または一般式(1)(式中、AとA’とは同一である)ならびに一般式(1)および(2)の化合物(上述したAは残基を示し、XはS、CHまたはCHCHであるおよび/またはYはHまたはCNである)である。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態では、一般式(1)および(2)のこのような化合物は、で示されるキラル炭素原子がS−配置またはL−配置のいずれかである、特に有効な阻害剤のプロドラッグである。
【0038】
上述の一般式(1)および(2)の化合物では、BおよびB’は同一または異なっていることも可能であり、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルアルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、アリールアミドアルキレン残基、ヘテロアリールアミドアルキレン残基、非置換、一置換または多置換のアリーレン残基またはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)を含む残基である。
【0039】
「アルキル残基」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、水素原子が炭素原子に結合して、単結合で互いに結合した炭素原子でできた一価の直鎖状(「非分枝」)または分枝状の残基が認識される。このように、アルキル残基は、本発明によれば、一価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)および(2)の化合物におけるアルキル残基は、1から18個の炭素原子を含み、よって、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルといった残基、さらには、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルといった残基の多数の異なる直鎖状および分枝状の異性体から選択される。特に好ましいのは、1から12個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状のアルキル残基であり、1から6個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状のアルキル残基がさらに一層好ましい。最も好ましいのは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル残基である。
【0040】
したがって、本件明細書および特許請求の範囲では、「アルケニル残基」および「アルキニル残基」という用語は、任意ではあるが分子内の定義された位置でそれぞれ単結合および少なくとも1つの二重結合または三重結合によって互いに結合した炭素原子である、一価の直鎖状(「非分枝」)または分枝状の残基(水素原子は炭素原子の残りの結合に結合)が、少なくとも2個の炭素原子であり最大18個の炭素原子を有するものとして認識される。このような残基は、たとえば、好ましくはビニル残基またはアリール残基である。しかしながら、炭素−炭素多結合含有残基は前記残基に限定されない。
【0041】
本件明細書および特許請求の範囲では、「アルキレン残基」という用語は、水素原子が炭素原子に結合した状態で単結合によって互いに結合した炭素原子である、二価の直鎖状(「非分枝」)または分枝状の残基であるとして認識される。このように、アルキレン残基は、本発明によれば、二価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)および(2)の化合物のアルキレン残基は、1から18個の炭素原子を含み、よって、メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレン残基ならびに、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレンおよびオクタデシレン残基の、多数の異なる直鎖状および分枝状の異性体から選択される。特に好ましいのは、1から12個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状のアルキレン残基であり、1から6個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状のアルキレン残基が最も好ましい。最も好ましいのは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレン残基ならびに多数の異なるブチレン異性体である。
【0042】
本発明によれば、一般式(1)および(2)の化合物の一部であり得るアルキル残基および/またはアルキレン残基において、炭素原子の鎖は、O原子、N原子またはS原子で断続されていてもよい。このように、鎖の途中に、1つ以上の−CH−基の代わりに、−O−、−NH−および−S−の1つ以上の官能基が存在することもあるが、通常は官能基−O−、−NH−および/または−S−のうちの2つが鎖中で互いに続くことはない。前記1つ以上の官能基−O−、−NH−または−S−を分子の任意の位置に挿入することが可能である。好ましくは、その種類のヘテロ基が存在する場合には、同じ種類の官能基が分子内に存在する。
【0043】
さらに別の実施形態では、一般式(1)および(2)の化合物における直鎖状ならびに分枝状のアルキル残基またはアルキレン残基を、本発明により、1つ以上の置換基、好ましくは1つの置換基で置換してもよい。置換基は、炭素原子で形成される主鎖のどこに位置していてもよく、好ましくは、本発明をこれに限定することなく、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子(塩素および臭素が特に好ましい)、1から6個のC原子を有するアルキル基(各々、1から4個のC原子を有するアルキル基が特に好ましい)、アルキル残基中に1から6個のC原子を有するアルコキシ基(1から3個のC原子を有するアルキル残基が好ましい)、非置換であるか、互いに独立した1から6個のC原子(好ましくは1から3個のC原子)を含有する1個または2個のアルキル残基を有する、置換アミノ基、カルボニル基およびカルボキシル基からなる群から選択可能である。後者はまた、アルキル残基に1から6個の炭素原子を有するアルコールとのエステルまたは塩の形でも存在し得るものであり、よって、「カルボキシル基」という用語には、一般構造−COO(M=アルカリ金属原子などの一価の金属原子あるいは、アルカリ土類金属原子のように二価の金属原子と部分的に等価な物などの多価金属原子の適切な等価物)であるか、一般構造−COOR(R=1から6個の炭素原子を有するアルキル基)である官能基を含む。置換用のアルキル基は、先に詳細に述べたアルキル基から選択され、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が特に好ましい。アルコキシ基は、炭素原子で形成される主鎖にO原子を介して結合する、上記にて定義した意味でのアルキル基である。これらは、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ残基からなる群から選択される。アミノ基は、一般構造−NRの官能基であり、式中、残基RおよびRは互いに独立であってもよく、水素または1から6個の炭素原子、特に好ましくは1から3個のC原子を有するアルキル基(上述した定義による)を示し、残基RとRとは互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基として特に好ましいこのようなアミノ基は、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(Cである。「アミノ基」という用語はまた、有機酸または無機酸(構造Rの残基(式中、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一であり、RおよびRは上記で定義した有意性を有することがあり、これらの残基のうちの少なくとも1つが有機酸または無機酸との四級化からの水素であり、Qは有機酸または無機酸の酸からの酸残基である))との塩形成による、または(これに限定することなく)アルキルハロゲン化物などの分野の当業者には周知の好適な四級化試薬との塩形成による、第四級アンモニウムイオンとして存在する、上記で定義した構造の官能基も含む。
【0044】
本件明細書および特許請求の範囲では、「シクロアルキル」という用語は、閉じた環の形で互いに結合した−CH−基の非置換または置換された一価の残基に用いられる。本発明によれば、前記環は、好ましくは環を形成する3から8個の原子を含むものであってもよく、および炭素原子を排他的に含むか、−O−、−S−および−NR−(式中、Rは水素または(先に定義したような)1から6個の炭素原子を有するアルキル残基である)から選択される1個以上のヘテロ原子を含むものであってもよい。環にヘテロ原子が挿入される場合、前記ヘテロ原子は(2個以上のヘテロ原子の場合)、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、ヘテロ原子が存在する場合、環には1個のヘテロ原子が挿入される。純粋に炭素環式の環で特に好ましいのは、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニルおよびシクロヘプタトリエニル残基である。本発明の別の実施形態ではヘテロシクロアルキル残基と呼ばれることも多いシクロアルキル残基を含むヘテロ原子の例として、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニル残基を含む。
【0045】
炭素環式または複素環式のシクロアルキル残基での考え得る置換基については、好ましくは、本発明をこれに限定することなく、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。シクロアルキル基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。
【0046】
本件明細書および特許請求の範囲では、「シクロアルキレン」という用語は、閉じた環に結合した−CH−基の非置換または置換された二価の残基に用いられる。本発明によれば、これらは好ましくは環に3から8個の原子を含むことが可能であり、排他的に炭素原子からなるものであっても、−O−、−S−および−NR−(式中、Rは水素または1から6個の炭素原子を有する(先に定義したような)アルキル残基である)から選択される1個以上のヘテロ原子を含むものであってもよい。純粋に炭素環式の環のうち特に好ましいのは、シクロペンチレン、シクロペンテニレン、シクロペンタジエニレン、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、シクロヘキサジエニレン、シクロヘプチレン、シクロヘプテニレン、シクロヘプタジエニレンおよびシクロヘプタトリエニレン残基である。また、シクロアルキル残基に関して先に定義したヘテロ環状基が、官能基「B」として二価の残基の形で一般式(1)および(2)の化合物に見られることもあり、特に好ましいのは、1つの官能基−O−または−NR−が環に挿入されたこのような環式の二価の残基である。これらの場合、どちらの原子価も環中の任意のC原子に局在する。好ましくは、1個のヘテロ原子または2個のヘテロ原子が環に挿入され、このような官能基の特に好ましい実施形態では、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンから二価の残基が誘導される。
【0047】
これらの炭素環式または複素環式シクロアルキレン残基での考え得る置換基は、好ましくは、本発明をこれに限定することなく、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。シクロアルキレン基での特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。
【0048】
「アリール残基」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、非置換であっても置換されていてもよい、芳香族の特徴(環軌道のπ電子系が4n+2個)を有する環状分子から誘導される一価の炭化水素残基が認識される。このようなアリール残基の環構造は、環が1つの5員環、6員環または7員環構造であってもよく、互いに結合した2つ以上の(「環化した」)環で形成される構造であってもよく、環化した環の環員、特にC原子は同一数であっても異なる数であってもよい。2つ以上の環が互いに縮合してなる系の場合、ベンゾ縮合環すなわち、環のうちの少なくとも1つが芳香族で排他的にC原子を含有する6員環(フェニル環)である環系が特に好ましい。アリール環の典型的ではあるが限定するものではない例として、シクロペンタジエニル残基(C)(5員環)、フェニル残基(6員環)、シクロヘプタトリエニル残基(C)(7員環)ナフチル残基(2つの環化6員環を含む環系)ならびにアントラセンおよびフェナントレンから誘導される一価の残基(3つの環化6員環)である。本発明によれば、最も好ましいアリール残基はフェニル残基およびナフチル残基である。
【0049】
炭素環式アリール残基の考え得る置換基については、好ましくは、本発明をこれらの置換基に限定することなく、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。アリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。互いに同一であっても異なっていてもよい、同じ種類の1つ以上の置換基は、本発明によれば、1個のアリール残基に結合可能である。アリール環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0050】
アリール残基の場合と同様の定義が、「アリーレン残基」という用語の定義に関して本件明細書および特許請求の範囲に適用される。この点について、任意の2つの炭素原子に挿入することが可能である二価の残基である点を除いて、元素組成、その選択肢およびその置換基がアリール残基について上述の定義と同様の、二価の残基が認識される。
【0051】
本件明細書および特許請求の範囲では、「ヘテロアリール残基」という用語、環構造が分子の芳香族の特徴を失わずに、好ましくはO、NまたはSといった官能基から1個以上のヘテロ原子を含む、(上述した定義による)アリール残基が認識される。本発明によれば、ヘテロアリール残基は、非置換であっても置換されていてもよい。このようなヘテロアリール残基の環構造は、環が1つである5員環、6員環または7員環構造であってもよく、あるいは、互いに結合した2つ以上の(「環化」)環で形成される構造であってもよく、環化した環は、環員数が同一であっても異なっていてもよい。ヘテロ原子は、1つの環のみにあってもよく、環系の2つ以上の環にあってもよい。ヘテロアリール残基は、好ましくは1つまたは2つの環からなる。2つ以上の環が互いに縮合してなる系の場合、ベンゾ縮合環すなわち、環のうちの少なくとも1つが芳香族炭素環式(すなわちC原子のみを含む)の6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアリール残基は、フラニル、チオフェニル、ピリジル、インドリル、クマロニル、チオナフテニル、チノリニル(ベンゾピリジル)、チナゾリニル(ベンゾピリミジニル)およびチノキシリニル(ベンゾピラジニル)から選択される。
【0052】
これらのヘテロアリール残基での考え得る置換基については、本発明をこれらの置換基に限定することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。互いに同一であっても異なっていてもよい、同じ種類の1つ以上の置換基は、本発明によれば、1個のヘテロアリール残基に結合していてもよい。ヘテロアリール環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0053】
ヘテロアリール残基の場合と同様の定義が、「ヘテロアリーレン残基」という用語の定義に関して本件明細書および特許請求の範囲に適用される。この点について、環もしくは環系それぞれの任意の2個の炭素原子または窒素原子でも挿入を行うことが可能な二価の残基である点を除いて、一般組成物および選択肢および置換基が「ヘテロアリール残基」について上述した定義と同様の、二価の残基が認識される。
【0054】
本件明細書の文脈および特許請求の範囲では、「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」およびヘテロアリールアミドアルキル残基」という用語は、その結合のうちの1つで、アリール残基(上述の一般的かつ具体的な定義による)、ヘテロアリール残基(上述の一般的かつ具体的な定義による)、ヘテロシクリル残基(ヘテロ原子で置換されたシクロアルキル残基の上述の一般的かつ具体的な定義による)アリールアミド残基(以下の一般的かつ具体的な定義による)またはヘテロアリールアミド残基(以下の一般的かつ具体的な定義による)で置換される、上述の一般的かつ具体的な定義によるアルキル残基(または、特にアルキレン残基)を意味する。これらの残基は、非置換または置換されたものであってもよい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、アラルキル残基は、アリール残基がフェニル残基、置換フェニル残基、ナフチル残基または置換ナフチル残基であり、アルキル(アルキレン)基が1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状である、同じ種類の残基である。極めて特徴的かつ都合のよい方法で、残基であるベンジル、フェネチル、ナフチルメチルおよびナフチルエチルをアラルキル残基として利用することが可能であり、このうちベンジル残基が特に好ましい。
【0056】
アラルキル残基のアリール基での考え得る置換基については、本発明をこれらの置換基に限定することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。アラルキル残基のアリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。本発明によれば、互いに同一であっても異なっていてもよい同じ種類の1つ以上の置換基を、アラルキル残基の1つのアリール基に結合させることが可能である。アリール環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、ヘテロアルキル残基とは、本発明によるヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基が置換され、アルキレン基が1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状である残基である。このようなヘテロアリール残基の環構造は、2つまたは3つ以上の(「環化」)環が互いに結合した1つの環または構造のある環構造であり得るが、ここで、環化した環の環員は同一数であっても異なる数であってもよい。ヘテロ原子は環系の1つ以上の環に起こり得る。ヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基は、好ましくは1つまたは2つの環からなる。互いに縮合された2つ以上の環を含むヘテロアリールアルキル系の場合、ベンゾ縮合環すなわち、環のうちの少なくとも1つが芳香族炭素環式6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアラルアルキル残基は、フラニルメチルおよびフラニルエチル、チオフェニルメチルおよびチオフェニルエチル、ピリジルメチルおよびピリジルエチル、インドリルメチルおよびインドリルエチル、クマロニルメチルおよびクマロニルエチル、チオナフテニルメチルおよびチオナフテニルエチル、チノリニル−(ベゾピリジル−)メチルおよびチノリニル−(ベゾピリジル−)エチル、チナゾリニル−(ベンゾピリミジニル)およびチノキシリニル−(ベンゾピラジニル−)メチルおよび−エチルから選択される。
【0058】
ヘテロアリールアルキル残基のこれらのヘテロアリール基での考え得る置換基については、本発明をこれに限定することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH2、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。本発明によれば、互いに同一であるかまたは異なっていることも可能である、同じ種類の1つ以上の置換基を、ヘテロアリールアルキル残基に結合させることが可能である。ヘテロアリール環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、ヘテロシクロアルキル残基は、−O−、−S−および−NR−(式中、Rは水素または(先に定義したような)1から6個の炭素原子を有するアルキル残基であり、ヘテロシクロアルキル残基のアルキル(アルキレン)基は1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状である)から選択される1個以上のヘテロ原子を含む、上述の一般的かつ具体的な定義によるシクロアルキル残基である。2個以上のヘテロ原子が環に挿入される場合、これらは同一であるかまたは異なっていることも可能である。好ましくは、1個のヘテロ原子が環に取り込まれる。ヘテロシクロアルキル残基とも呼ばれる、ヘテロ原子を含むシクロアルキル残基の好ましい例は、本発明のさらに他の実施形態では、テトラヒドロフラニル、ピロリニジル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニル基である。
【0060】
これらのヘテロシクロアルキル残基での考え得る置換基については、好ましくは、本発明をこれらの置換基に限定することなく、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。本発明によれば、互いに同一であっても異なっていてもよい、同じ種類の1つ以上の置換基を、1個のヘテロシクロアルキル残基に結合させることが可能である。ヘテロシクロアルキル環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0061】
「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」という用語を使用して、本件明細書および特許請求の範囲では、一般式Ar−NR−C(=O)−または一般式Ar−C(=O)−NR−(式中、Rは水素または1から6個の炭素原子を有するアルキルであり、Arは、上述の一般的または具体的な定義による任意のアリール残基またはヘテロアリール残基である)のアリールアミド残基またはヘテロアリールアミド残基によって、その結合のうちの1つで置換される、上述の一般的かつ具体的な定義によるアルキル残基(より厳密には、アルキレン残基)が認識される。これらのアリール残基またはヘテロアリール残基は、非置換であってもよく、置換されたものであってもよい。アリールアミドアルキル残基の好ましい例としては、本発明を限定することなく、2−、3−または4−安息香酸−アミノ−n−ブチル残基、もしくは2−ニトロ−3−、−4−、−5−または−6−安息香酸−アミド−n−ブチル残基である。ヘテロアリールアミドアルキル残基の好ましいが限定的ではない例としては、2−、4−、5−または6−ピリジン−3−炭素酸−アミド−n−ブチル残基である。
【0062】
これらのアリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基での考え得る置換基については、好ましくは、本発明をこれらの置換基に限定することなく、直鎖アルキル基について上述した群の置換基から選択可能である。アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基のアリール基またはヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ;n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、カルボニルおよびカルボキシル基である。本発明によれば、互いに同一であるかまたは異なっていることも可能である、同じ種類の1つ以上の置換基を、アリールアミドアルキル残基またはヘテロアリールアミドアルキル残基のアリール基またはヘテロアリール基に結合させることが可能である。芳香族環(系)での置換位置については、任意に選択可能である。
【0063】
アラルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基の場合と同様の定義が、「アラルキレン残基」、「ヘテロアリールアルキレン残基」、「ヘテロシクロアルキレン残基」、「アリールアミドアルキレン残基」および「ヘテロアリールアミドアルキレン残基」という用語の定義に関して本件明細書および特許請求の範囲の文脈に適用される。これらは、それぞれのアルキレン基の環または環系の任意の2個の炭素原子、もしくはヘテロアリールまたはヘテロシクリル環系の窒素原子で挿入を行い得る二価の残基である、いずれの場合も除いて、その一般組成および選択肢ならびにその置換基が、上述した定義の「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキ残基」と同様の、二価の残基であると考えられる。
【0064】
一般式(1)および(2)において、残基Dは、−S−S−または−Se−Se−である。これらの2つのS原子またはSe原子はそれぞれ、自然条件下、特に還元条件下で切断可能な一般式(1)および(2)の化合物の分子の2つの部分間の架橋を形成する。これによって、分子の2つの部分が放出され、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼに対する阻害作用が発現する。
【0065】
上述した一般式(2)において、Eは官能基−CH−CH(NH)−R(式中、Rは、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキル残基、シクロアルキル残基、アラルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、アリールアミドアルキル残基、ヘテロアリールアミドアルキル残基、非置換、一置換または多置換のアリール残基もしくはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する))である。アルキル残基、シクロアルキル残基、アリールアルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、アリールアミドアルキル残基、ヘテロアリールアミドアルキル残基、非置換、一置換または多置換のアリール残基もしくはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)の有用な例または好ましい例ならびに、これらの残基に対する想定可能で好ましい置換基に関して、適切な残基およびその好ましい実施形態についての上述した定義を照会することができる。これらの定義は、Eで示される一般式(2)の残基にも同様に適用可能である。
【0066】
Eについての前記式では、アミノ基で置換される炭素原子が、で示すキラル炭素原子である。本発明のさらに好ましい実施形態では、このような一般式(2)の化合物が、特に効果的な阻害剤のプロドラッグであり、この場合、で示されるキラル炭素原子はS−配置またはL−配置を有する。
【0067】
本発明によれば、Eは、好ましくは、2−アミノアルキレン残基(たとえば2−アミノ−3−フェニルプロピル残基など)あるいは、非置換であるか、−S−、−S(=O)−、−N−または−O−などのヘテロ原子で置換された2−アミノアルキレン残基(たとえば2−アミノ−4−メチルペンチル残基、2−アミノ−4−メチルチオブチル残基または2−アミノ−4−メチル−スルホキシブチル残基など)を示す。
【0068】
本発明のさらに好ましい実施形態では、残基Bおよび/またはB’は、一般式(1)および(2)において、1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキレン残基である残基Rである。一般式(1)および(2)の特に好ましい化合物は、残基Bおよび/またはB’を、−CH−(メチレン)、−CH−CH(エチレン)または(HC)−C<(2,2−プロピレン)から選択される1つ以上の型の官能基を含む。
【0069】
別のさらに好ましい実施形態では、Bおよび/またはB’は、残基−(CH−R−R−R−(式中、nは1から5の整数であり、RがO=C<または−SO−の場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−の場合はRはO=C<であり、Rは、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アリールアルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、非置換、一置換または多置換アリーレン残基もしくはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する))である。さらに好ましくは、nは1から5の整数であるため、上述の残基の好ましい例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびペンチレン基を含む。RとRは組み合わせで、好ましくは、アミド基−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−を形成する。さらに好ましいのは、残基Bおよび/またはB’(式中、Bは上述の式であり、Rはアミノ置換アルキレン残基、たとえばアミノエチレン残基、もしくは非置換または(たとえばニトロ基によって)置換されたフェニレン残基、もしくは非置換または置換されたピリジル−2,5−エン残基である)を有する一般式(1)および(2)のような化合物である。
【0070】
別のさらに好ましい実施形態では、Bおよび/またはB’は、式−R−R−(式中、Rは、一置換または多置換されたベンジレン残基であり、Rは、官能基として、好ましくは1つ以上のアミノ基、カルボニル基またはカルボキシル基または非置換、一置換または多置換アリーレン残基またはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)を含み得る、単結合、もしくはO、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状の、アルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルアルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基またはヘテロアリールアルキレン残基である)の残基である。本発明による上述の残基およびその想定可能な置換基に関する定義に関しては、特定の残基または置換基についての上述の一般的または具体的な定義を照会することが可能である。
【0071】
さらに好ましいのは、本発明によれば、一般式(1)または(2)の化合物であり、式中、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、残基−(CH−R−R−Rを示し、式中、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、あるいは、Rが−NH−であればRはO=C<であり、Rは、
CH(COOH)−R−(式中、RがO=C<およびRが−NH−であればRは上述の有意性を有する)か;または、
【化28】

(式中、RがO=C<およびRが−NH−であればRは上述の有意性を有する)であり;または、
が−NH−または−NH−C(=NH)−NH−でありRがO=C<であれば−CH(NHR)−R−であり、式中、RはHまたはアシル残基であり、好ましくはベンジルオキシカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル残基、tert−ブチルオキシカルボニル残基またはベンゾイル残基であり;または、
【化29】

(式中、Rはフェニレンであり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化30】

(式中、RはHまたはアシル残基であり、好ましくはベンジルオキシカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル残基またはベンゾイル残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化31】

(式中、アルキレンは、非分枝または分枝状の、1から6個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化32】

(式中、アルキレンは非分枝または分枝状の、1から6個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化33】

(式中およびRがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化34】

(式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化35】

(式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<である);または、
【化36】

(式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NHであればRはO=C<である);または、
【化37】

(式中、およびRがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<)
である。
【0072】
あるいは、本発明によれば、一般式(1)および(2)の化合物がさらに好ましく、式中、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、残基−R−R−を示し、式中、RおよびRは組み合わせで残基
【化38】

であり、(式中、RはRのない上記の残基であり、Rの位置はRの位置に左右される)式中、RおよびRは上述の有意性を有し、すなわち、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、Rは、好ましくは1つ以上のアミノ基、カルボニル基またはカルボキシル基を官能基として含有するか、非置換、一置換または多置換のアリーレン残基もしくはヘテロアリーレン残基(1種以上の5員環、6員環または7員環を有する)である、単結合、もしくはO、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基またはヘテロアリールアルキレン残基である。
【0073】
さらに好ましい一般式(1)および(2)の化合物は、BおよびB’が同一または異なっており、互いに独立に残基−R−R−を示すようなものであり、式中、Rは、上述した式(Rなし)の、一置換または多置換されたベンジレン残基であり、Rは、
NH−または−C〜C−アルキレン−NH−と、
−C(=O)−C〜C−アルキレン−、
−C(=O)−アリーレン−、
−SO−C〜C−アルキレン−、
−SO−アリーレン−、
【化39】

または、
−C(=O)−CH(NHR)−R
との組み合わせであり、式中、RおよびRは上述の有意性を有し;または、
O=C<と、
−NH−C〜C−アルキレン−、
−NH−アリーレン−または
−NH−CH(COOH)−R
との組み合わせであり、式中、Rは上述の有意性を有し;または、
−O−C〜C−アルキレン−、
−O−アリーレン−または
−O−C〜C−アルキレン−NH−C(=O)−CH(NH)−R
であり、式中、Rは上述の有意性を有し、または
−O−C〜C−アルキレン−C(=O)−NH−CH(COOH)−R−であり、式中、Rは上述の有意性を有する。
【0074】
本発明によれば、一般式(1)および/または(2)の化合物は、中性の分子の形で存在し、本発明によれば、中性の分子として用いられる。あるいは、これに対して、無機酸および/または有機酸との酸付加塩の形で一般式(1)および/または(2)の化合物が存在していてもよい。分子にアルカリ中心(ほとんどはアルカリ窒素原子)が存在するため、このような酸付加塩は、H酸化合物(ブレンステッド酸)の1つ以上の分子、好ましくはH酸化合物の1つの分子を加えることで形成され、たとえば水中のような極性媒質での分子の溶解性を改善する。後者の特長は、薬理学的作用を発揮するこのような化合物にとって、特に影響のあるものである。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、酸付加塩は、薬学的に許容される酸の塩であり、一般式(1)または(2)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩からなる群から適宜選択される(ただし、本発明を限定することはない)。
【0076】
一般式(1)の特に好ましく、有利に利用可能な化合物は、以下の一般式(1a)を特徴とする。
【化40】

(式中、X、YおよびBは上述の有意性を有する)特に有利に利用可能で、よって本発明の主題でもあるのは、一般式(1a)の化合物の酸付加塩であり、好ましくは、上述した群の酸との薬学的に許容可能な無機酸および/または有機酸の酸付加塩である。
【0077】
一般式(1a)の例外的に好都合な化合物は、これらの化合物に本発明を限定することなく以下の表1およびこれらの酸付加塩、好ましくは薬理学的に許容される酸の上述した群からの、好ましくは薬理学的に許容される無機酸および/または有機酸を有する、これらの酸付加塩から得られる。
【0078】
【表1】

【0079】
一般式(2)の特に好ましく、有利に利用可能な化合物は、一般式(2a)を特徴とする。
【化41】

(式中、X、Y、RおよびBは上述の有意性を有し、これらの酸付加塩は、好ましくは薬学的に許容される酸の上述した群からの、好ましくは薬学的に許容される無機酸および/または有機酸を有する酸付加塩である。)
【0080】
一般式(2a)の例外的に好ましい化合物は、これらの化合物に本発明を限定することなく以下の表2およびこれらの酸付加塩、好ましくは薬学的に許容される無機酸および/または有機酸を有する、これらの酸付加塩から得られる。
【0081】
【表2】

【0082】
本発明は、一般式
[式1]
A−B−D−B’−A’(1)および
[式2]
A−B−D−E(2)
の化合物を調製する方法にも関する。
【0083】
前記式(1)および(2)において、A、A’、B、B’、DおよびEは、先に詳細に述べた有意性を有する。上述した合成スキーム1による新たな化合物(1)および/または(2)の調製方法に関して、一般式
【化42】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化43】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、式
【化44】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化45】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換し、このようにして得られる反応生成物、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;または、
一般式
【化46】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化47】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、このようにして得られる式
【化48】

の縮合生成物を、一般式
【化49】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換し、このようにして得られる反応生成物を、一般式
[化50]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、および保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;または、
一般式
【化51】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素であり、Zはチオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基である)の化合物を一般式
【化52】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られた式
【化53】

の縮合生成物を、一般式
[化54]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、および保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは、上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;または、
一般式
【化55】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化56】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られた反応生成物を一般式
[化57]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−R
の化合物で一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;または、
一般式
【化58】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化59】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、得られた反応生成物を保護基から切断して一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物にするか;または、
一般式
【化60】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化61】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、式
【化62】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化63】

(式中、

はBの構造要素であり、Zは、チオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基であり、(SG)は保護基である)の化合物で変換し、式
【化64】

の得られた反応生成物を、一般式
[化65]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換する。
【0084】
上述した工程段階の文脈で、一般式(1)および(2)の化合物(「SG」)の合成中間体に挿入された保護基は、有機合成分野の当業者らが自らの実際的経験から判断できる任意の保護基であればよく、本発明によれば、限定的なものではない。好ましい保護基は、たとえば、ベンジルオキシカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル残基、tert−ブチルオキシカルボニル残基といった、ウレタン保護基などのアミノ酸側鎖を保護する保護基である。
【0085】
上述した工程段階の文脈で、一般式(1)および(2)の化合物の合成中間体に挿入された官能基Zは、チオール交換すなわちS原子に結合した官能基と他の分子のS原子(任意に置換基に結合)との交換のためのS−S−基を含有する分子を活性化させる残基である。このような官能基は、有機合成分野の当業者間で十分に周知であり、本発明はチオール交換を活性化させる特定の官能基に限定されるものではない。好ましいが限定的ではない例として、3−ニトロ−2−ピリジル、5−ニトロ−2−ピリジル、2−ピリジル、3−ピリジルまたは4−ピリジル、2−ニトロフェニル、メトキシカルボニルまたはN−メチル−N−フェニルカルバモイル基である。
【0086】
一般式(1)および(2)の化合物が得られる一般的な合成反応スキームで用いられ、かつ、方法ステップについての上述した説明ならびに以下の説明で用いられる記号1、2および3は、それぞれ一般式(1)および(2)の化合物の残基BまたはB’の構造要素を意味する。



「構造要素」という用語を使用して、この文脈では、残基BまたはB’がそれぞれ、新たに形成される分子で隣接した結合パートナーとなる2つの反応性基の間に共有結合を形成している有機合成の文脈では各々が付加される反応性基を有する分子の一部からなることを示すものとする。このような構造要素に対する特定の限定的ではない例として、互いに付加されてエステル基を形成して水を放出する一分子のカルボキシル基、および別の分子のヒドロキシ基あるいは、互いに付加されてアミド基を形成して水を放出する一分子のカルボキシル基および別の分子のアミノ基がある。これについては、上記にて左側に示した2つの記号の組み合わせで、上記にて右側に示したシンボルが得られる形でシンボル化してある。
【0087】
特に有利なことに、化合物(1)および/または(2)は、以下の合成スキーム2から17にて提示される方法で調製可能なものである。
【0088】
一般式
[化66]
HO−C(=O)−CH[−NH(SG)]−(CH−R−(SG)
(式中、(SG)はアミノ基に対する保護基であり、(SG)は置換基Rでの保護基であり、Rおよびnは上述した一般的または具体的な有意性を有する)の化合物を、一般式
【化67】

(式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNである)の複素環化合物で変換し、このようにして得られる式
【化68】

の縮合生成物を、保護基(SG)の開裂後に、一般式
[化69]
[F−R−R−S−]
の化合物(式中、RおよびRは上述した一般的および具体的な有意性を持てばよく、Fは他の官能基の一部と反応可能な官能基の一部である)で変換し、このようにして得られる反応生成物を、保護基(SG)を放出しながら、一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、かつ、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を持てばよく、以下の反応スキーム2の場合、AおよびA’は同一であって、カルボニルアミノ基が窒素原子に結合した複素環化合物を含有する前記XおよびYであり、BおよびB’も同一であって、n、R−RおよびRについて上述した一般的または具体的な有意性を有する式−(CH−R−R−R−の官能基であり、Dは−S−S−である)の化合物に変換する。
【0089】
【化70】

【0090】
保護基(SG)および(SG)は一般に、有機分子における特定の官能基の中間保護用として有機化学分野の当業者が周知であるような保護基であり、好ましくは、たとえばアミノ酸保護基としてのウレタン保護基である。非限定的な例として、ベンジルオキシルカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシルカルボニル残基またはtert−ブチルオキシカルボニル残基があげられる。
【0091】
先行する反応スキーム2(式([F−R−R−S−])の化合物での変換によって得られる二量体から開始)の第1の反応段階を利用して、保護基(SG)を放出する一方で、一般式HS−CH−CH(R)−NH(SG)(式中、Rは上述した一般的および具体的な有意性を有し、(SG)はアミノ基に対する保護基である)の化合物で変換し、式A−B−D−E(2)の非対称化合物を得ることが可能である。これを以下の反応スキーム3に示す。
【0092】
【化71】

【0093】
一般式A−B−D−E(2)を有する、得られた非対称化合物において、Aは、α−アミノカルボニル残基が窒素に結合した複素環化合物を含む上述のXおよびYであり、Bは、n、R、RおよびRが上述の一般的または具体的な有意性である式−(CH−R−R−R−の官能基であり、Dは−S−S−であり、Eは官能基−CH−CH(NH)−R(式中、Rは上述した一般的および具体的な有意性を有する)である。
【0094】
非対称化合物が得られる第2の合成経路において、残基B(上に示す反応スキーム2の第1の中間体から開始)は、以下の反応スキーム4で示されるように、最終的に反応スキーム3の反応での場合と同じ生成物を得る、以後の反応段階で構成される。
【0095】
上述した第1の中間体(反応スキーム2参照)を、保護基(SG)から切断して、一般式F−R−R4a−(SG)の化合物との以後の反応に好適な脱離基F(式中、FおよびFは官能(脱離)基の一部を意味する)を有する化合物に変換する。Rが上述した一般的および具体的な有意性を有する場合、R4aは官能基Rの一部であり、(SG)は保護基である。後者は変換され、切断されて好適な脱離基Fになる。一般式F−R4b−S−S−Z(式中、Fは好適な機能的脱離基であり、R4bはRの第2の部分であり、Zはチオール交換のために分子を活性化させる残基である)の化合物での変換ならびに、2つの保護基(SG)および(SG)の切断後の一般式HS−CH−CH(R)−NH(SG)のチオールでの後の変換によって、一般式A−B−D−E(2)(式中、Aはα−アミノカルボニル残基が窒素に結合した複素環化合物を含む上述したXおよびYであり、Bは、n、R、RおよびRが上述した一般的または具体的な有意性がある式−(CH−R−R−R−の官能基であり、Dは−S−S−であり、Eは官能基−CH−CH(NH)−R(式中、Rは、上述した一般的および具体的な有意性を有する)である)の非対称化合物が得られる。
【0096】
【化72】

【0097】
先行する反応スキーム4では、(SG)、(SG)、(SG)および(SG)は一般に、有機分子における特定の官能基の中間保護用として有機化学分野の当業者が周知であるような保護基であり、好ましくは、たとえばアミノ酸保護基など、通常用いられるウレタン保護基である。非限定的な例としては、ベンジルオキシルカルボニル残基、フルオレン−9−イルメチルオキシカルボビル残基またはtert−ブチルオキシカルボニル残基である。
【0098】
残基F、F、FおよびFは、官能基の一部であり、分子から切断されるのに特に適している、たとえば−H、−OH、−Clなどの脱離基を示す。Zは、チオール交換すなわち、官能基と他の分子のS原子(任意に置換基に結合)との交換のための−S−S−基を含む分子を活性化させる残基である。このような官能基は、有機合成分野の当業者間で十分に周知であり、本発明はチオール交換を活性化させる特定の官能基に限定されるものではない。好ましいが非限定的な例としては、3−ニトロ−2−ピリジル、5−ニトロ−2−ピリジル、2−ピリジル、3−ピリジルまたは4−ピリジル、2−ニトロフェニル、メトキシカルボニルまたはN−メチル−N−フェニルカルバモイル基である。先行するスキームでは、残基R4aおよびR4bは、組み合わせで、上述した一般的および具体的な有意性を有する残基Rを意味する。
【0099】
が概要ならびに詳細について上述した有意性を有する、以下の反応スキーム5の開始化合物を、一般式
【化73】

の上述した複素環化合物で、
保護基(SG)を放出し、B=R(式中、X、Yおよび(SG)は上述した一般的および具体的な有意性を有する)で、一般式A−B−D−B’−A’(1)の対称化合物に直接変換することが可能である。
【0100】
【化74】

【0101】
たとえば先行する反応経路を用いて最終生成物を得ることができるが、ここで、複素環化合物
【化75】

(式中、Yは、−C(=O)−NHであり、Yが依然として−C(=O)−NHである対称反応生成物が、カルボニルアミノ基が水を放出してシアノ残基に変換される条件に曝露される)との上述した反応を実施することによって、YはCNである。この反応は、以下の反応スキーム5aから得られるものである。
【0102】
【化76】

【0103】
一般式A−B−D−E(式中、BはRであり、Rは上述した一般的および具体的な有意性を有する)の非対称化合物は、一般式HS−CH−CH [−NH(SG)]−Rのチオール化合物での変換および保護基の開裂によって反応スキーム5(上記参照)のN−保護反応生成物から得られる。これを反応スキーム6に示す。
【0104】
【化77】

【0105】
開始化合物を最初に複素環化合物
【化78】

で変換する反応スキーム7に示すような合成経路でB=Rで反応スキーム6と同じ非対称化合物A−B−D−E(2)が得られる。
【0106】
一般式HS−CH−CH[−NH(SG)]−Rのチオール化合物での後の変換および保護基(SG)および(SG)の開裂による方法でも、B=R(式中、Rは上述の一般的および具体的な有意性を有するものであってもよい)の非対称化合物A−B−D−E(2)が得られる。
【0107】
【化79】

【0108】
以下の合成スキーム8および9は、上述したものと類似の合成経路を用いて、B=R−R−(スキーム8)での対称化合物A−B−D−B−A(1)の合成につながり、−スキーム8の反応のN−保護生成物から開始して−非対称化合物A−B−D−E−(2)の合成につながる経路を示すものである。
【0109】
【化80】

【0110】
【化81】

【0111】
反応スキーム8および9では、残基R8aおよびR8bは、前記経路に沿った合成の2段階以内のRで構成される、これらの残基である。
【0112】
反応スキーム9に示す合成経路同様にB=−R−Rで非対称化合物A−B−D−E(2)が得られ、なおかつすでに上述の合成反応と同様の、さらに別の2つの合成部分を以下の合成スキーム10および11に示す。
【0113】
【化82】

【0114】
上述したすべての反応スキームで、残基F、F、F、FおよびFは、官能基の一部であり、分子から切断されるのに特に適している、たとえば−H、−OH、−Clなどの脱離基を示す。Zは、チオール交換すなわち、S原子に結合された官能基と他の分子のS原子(任意に置換基に結合)との交換のための−S−S−基を含む分子を活性化させる残基である。このような官能基は、有機合成分野の当業者間で十分に周知であり、本発明はチオール交換を活性化させる特定の官能基に限定されるものではない。好ましいが非限定的な例としては、3−ニトロ−2−ピリジル、5−ニトロ−2−ピリジル、2−ピリジル、3−ピリジルまたは4−ピリジル、2−ニトロフェニル、メトキシカルボニルまたはN−メチル−N−フェニルカルバモイル基である。先行するスキームでは、残基R4aおよびR4bは、組み合わせで残基Rを意味し、残基R8aおよびR8bは、組み合わせで、残基Rを意味する(いずれも上述した一般的および具体的な有意性を有する)。
【0115】
【化83】

【0116】
上述し、かつ図示の反応スキームにおいて、本発明によれば一般式(1)および(2)の化合物が得られる反応を、有機合成分野の当業者であれば十分に周知であり、この点に関してさらに何ら精緻化を必要としない条件下で実施する。使用する代表的な溶媒は極性有機溶媒または溶媒混合物である。特に、本発明をこれに限定することなく、THFなどのエーテル、酢酸エチルエステルなどのエステルまたはDMFが想定可能である。反応温度については実施対象となる変換ならびに使用する溶媒に合わせるが、通常は−20℃から+50℃の範囲、好ましくは10℃から40℃の範囲である。
【0117】
本発明によれば、一般式(1)および(2)の化合物は、特にその厳密な特徴付けと後における水性環境での使用が実施される場合に、上述した方法のうちの1つにより、その合成時に酸付加塩の形で生成される。好ましくは、一般式(1)および(2)の化合物の特徴付けおよび以後の使用のための特定の生理学的に(すなわち薬理学的および/または化粧的に)許容される無機または有機酸との酸付加塩を調製する。本発明の好ましい実施形態では、一般式(1)または(2)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩からなる群からの、薬学的に許容される酸の塩を酸付加塩として調製する。
【0118】
化合物の調製を前記方法のうちの1つに限定することなく、たとえば上述した方法のうちの1つを用いて調製可能な、概要ならびに詳細について上述した化合物(式(1)および(2)参照)を、多数の目的に利用することが可能である。意外なことに、本発明によって、この化合物を医薬品分野に利用できることが見いだされた。特に、本発明によれる新たな化合物それ自体が、ジペプチジルペプチダーゼIVまたは類似の酵素作用を有する酵素、およびアラニルアミノペプチダーゼNまたは類似の酵素作用を有する酵素の阻害剤であることが見いだされた。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、この化合物を、阻害剤前駆体または阻害剤プロドラッグとしてうまく利用することが可能である。定義に関して、「阻害剤」、「前駆体」および「プロドラッグ」という用語は、上述の定義を参照することが可能である。
【0120】
本発明によるさらに好ましい化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤のプロドラッグとしての役割を果たす。さらに好ましいのが、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびアラニルアミノペプチダーゼN(APN)の阻害剤のプロドラッグとしての役割を果たす前記化合物に属する化合物である。すなわち、意外なことに、本発明による化合物は、生理学的条件または病理学的条件下、特に還元条件下で(というのは、これらの化合物は細胞および組織に存在するためである)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの極めて効果的な阻害剤である、このような化合物と反応できることが見いだされた。本発明によれば、上述の式(1)または(2)で示される新たな化合物のうちの1種を一般的な説明または特別な説明に従って利用することが可能であり、あるいは、上述の化合物のうちの2種以上を併用することも可能である。2種以上の化合物の前記組み合わせは、一般式(1)の2種以上の化合物、一般式(2)の2種以上の化合物、または一般式(1)および(2)の化合物の群から任意に選択される2種以上の化合物の組み合わせを含み得る。一般式(1)または(2)の1種の化合物を排他的に適用するのが好ましい。
【0121】
また、本発明は、1種以上の化合物、特に好ましい少なくとも1種の化合物、上述した概説および詳細な説明による一般式(1)および/または(2)の厳密に1種の化合物の、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルス疾患ならびにII型糖尿病を含む、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療への使用にも関する。
【0122】
さらに、本発明は、1種以上の化合物、少なくとも1種の化合物、特に好ましくは上述した概説および詳細な説明による一般式(1)および/または(2)の厳密に1種の化合物の、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルス疾患ならびにII型糖尿病を含む、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療用の薬剤または化粧用調製物の調製への使用に関する。
【0123】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(1)および/または(2)の化合物を、好ましくは上述した2つの表による化合物を単独または併用で、あるいは、前記化合物1種以上を含む製薬または化粧用調製物の形で、たとえば多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎および他の自己免疫疾患などの疾患ならびに炎症性疾患、気管支喘息および他のアレルギー性疾患、皮膚および粘膜の疾患、たとえば乾癬、ざ瘡ならびに、線維芽細胞の過剰増殖および分化が変性された症状を伴う皮膚科学的な疾患、良性の線維化および硬化性皮膚病および悪性の線維芽細胞過剰増殖症、たとえば虚血(虚血後に生じる脳損傷)または出血性卒中などの急性神経疾患、頭蓋内膿瘍、心不全、心臓麻痺、あるいは、心臓手術介入の結果として、たとえばアルツハイマー病などの慢性神経疾患、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、パーキンソン病、特に第17番染色体に結び付いたパーキンソニズム、ハンチントン病、疾患のプリオンによる症状および筋萎縮性側索硬化症、動脈硬化、動脈炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のステント再狭窄、腫瘍、転移、前立腺癌、重症急性呼吸器症候群(SARS)および敗血病および敗血病様の症状ならびにII型糖尿病の予防および治療に広く利用する。
【0124】
本発明のさらに好ましい実施形態では、広義には一般式(1)および/または(2)の化合物、好ましくは上述した2つの表による化合物を、単独で使用するか、前記化合物を1種以上含む製薬または化粧用調製物の形で併用して、移植組織および細胞の拒絶の予防および治療に利用する。このような使用の一例として、上述した化合物1種以上を含有する上述した化合物または医薬品の1種以上について、腎臓移植、心臓移植、肝臓移植、膵臓移植、皮膚移植または幹細胞移植などの同種移植または異種移植した臓器、組織および細胞ならびに移植片対宿主疾患に鑑みて言及することが可能である。
【0125】
本発明のさらに好ましい実施形態では、一般には一般式(1)および/または(2)の化合物、好ましくは上述した表による化合物を単独で使用するか併用して、あるいは、前記化合物のうちの1種以上を含む製薬または化粧用調製物を、生物体に移植した医療器具での、またはこれによって引き起こされる、拒絶または炎症に関する反応の予防および治療に利用する。これらには、たとえば、ステント、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、心臓ペースメーカーまたは他のインプラントが可能である。本発明のさらに好ましい実施形態では、化合物または調製物が、コーティングまたは湿潤の形で物品に適用されるような要領で、一般式(1)および/または(2)の化合物を一般に利用し、好ましくは、上述した表による化合物を単独で使用するか併用し、あるいは、前記化合物のうちの1種以上を含む製薬または化粧用調製物を用いるか、化合物または調製物のうちの少なくとも1種を物品と物質的に混合する。また、この場合は、化合物または調製物のうちの1種を(適用可能な場合、続いてまたは同時に)、局所的または全身に適用することが確実に可能である。
【0126】
上述したものと同じ要領で、および同様の目的または上記にて例示したが完全には説明していない疾患および症状の予防および治療の目的で、好ましい実施形態ならびに前記化合物を含有する以下の製薬および化粧用調製物における一般式(1)および(2)の化合物一般、および上述した2つの表による化合物については、単独で使用してもよく、2種以上を併用して上述した疾患および症状の処置用の薬剤を調製することが可能である。これらは、上述した化合物を、任意にそれ自体が周知の担体物質、補助物質および/または添加剤と組み合わせて、以下に示す量で含み得る。
【0127】
好ましい実施形態では、上述した一般式(1)および/または(2)の化合物の使用は、使用される化合物が、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種の阻害剤を生成する場合を含む。化合物からこのような阻害剤のうちの少なくとも1種、好ましくはこのような阻害剤のうちの2種または3種以上、特に好ましい1種または2種の阻害剤の生成は、特に上述した群の1種以上の酵素の阻害剤として、医療分野での本発明による使用の、意外な特異性をもたらす。
【0128】
さらに好ましい実施形態では、上述した式(1)および/または(2)の1種以上の化合物または一般式(1)および/または(2)の化合物のうちの少なくとも1種を含む化粧品または医薬品を使用することで、還元条件が存在する場合、特にこのようにして得られる化合物の位置に還元条件が存在する場合に薬理学的作用を生むよう形成される、上述した群の酵素に対する、少なくとも1種の阻害剤、好ましくは1種の阻害剤または2種の阻害剤をもたらす。
【0129】
「還元条件」という用語を使用して、この文脈では、一般式(1)の化合物または一般式(2)の化合物または一般式(1)および(2)の1種以上の化合物の組み合わせを、作用部位で反応条件に曝露し、電子受容体が、一般式(1)および/または(2)の化合物によって受け入れられる電子を供給する化学反応の条件が認識される。本発明によって見いだされたように、一般式(1)および/または(2)の化合物は、還元条件下で、一般式(1)および(2)においてDで示す−S−S−または−Se−Se−架橋を切断して、それぞれ−SH−末端基または−SeH−末端基を有する2つの化合物に変換される。
【0130】
何ら決定的な重要性なく、本発明のためであり、この手段によって−SH−または−Se−終端基のある適切な分子の信頼できる生成を達成する限りにおいて、還元生理学的反応条件が達成される。本発明による化合物は、普通は上述した酵素の阻害剤である好適な化合物の生体内での生成につながる条件を満たす。
【0131】
2つの先行する表に一致する一般式(1)および/または(2)の化合物一般または上述した化合物のうちの少なくとも1種の量は、本発明の使用の範囲で、一般式(1)および/または(2)の化合物のうちの少なくとも1種に関して適用単位(application unit)あたり0.01から1000mgの範囲であり、好ましくは適用単位あたり0.1から100mgの範囲である。
【0132】
本発明の使用の文脈では、一般式(1)および/または(2)の前記化合物のうちの少なくとも1種の適用を、この技術分野における当業者が知っている、それ自体が周知のどのような経路でも達成可能である。一般式(1)および/または(2)一般の化合物、さらに好ましくは上述した化合物のうちの1種以上を、それ自体が周知の通常の担体物質、補助物質および/または添加剤との組み合わせで含む、上述した表による化合物または製薬または化粧用調製物の適用を、たとえばクリーム、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、スプレー、リポソームおよびナノサム(nanosome)振盪混合物、「ペグ」剤形分解可能(生理学的条件下で分解可能など)デポマトリクス(depot−matrices)、親水コロイド包帯、石膏、マイクロスポンジ、プレポリマーおよび同様の新たな担体基質、ジェット注射などの局所塗布で行うか、または点滴適用を含む他の皮膚科学的な原理/賦形剤で、および一方では、適当な剤形または本草薬によって、錠剤、糖衣錠、トローチ、カプセル、エアロゾル、スプレー、溶液、エマルジョンおよび懸濁液の形で、経口、経皮、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、髄腔内への全身適用として行う。
【0133】
また、本発明は、一般式(1)および/または(2)の化合物のうちの少なくとも1種または上述した詳細な説明による一般式(1)および/または(2)の化合物のうちの少なくとも1種を含む製薬または化粧用調製物を、酵素活性の阻害に必要な量で適用することで、単独で、またはアラニルアミノペプチダーゼNの他の阻害剤または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤、および/またはDPIVの他の阻害剤または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤との組み合わせで、アラニルアミノペプチダーゼN活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性ならびにジペプチジルペプチダーゼIV活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性を阻害するための方法に関する。一般式(1)および/または(2)の化合物一般または2つの上述した表による化合物の量はそれぞれ、上述したように、適用単位あたり少なくとも1種の化合物が0.01から1000mgの範囲であり、好ましくは適用単位あたり0.1から100mgの範囲である。
【0134】
さらに、本発明は、以下の詳細な説明による一般式(1)および/または(2)または製薬または化粧用調製物の少なくとも1種の化合物を、酵素活性の操作に必要な量で適用することによって、単独で、または他のアラニルアミノペプチダーゼN阻害剤または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤、ならびに他のDPIV阻害剤または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤との組み合わせで、アラニルアミノペプチダーゼN活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性、ならびに活性ジペプチジルペプチダーゼIVまたは類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性に原理的に影響させるための方法に関する。また、これらの場合にも、一般式(1)および/または(2)の化合物の量は上述した範囲内である。
【0135】
さらに本発明は、一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1種から、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種の阻害剤を生成するための方法に関する。本発明による方法は、一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1種が上述した説明により還元条件に曝露される工程を含む。上述したように、当業者であれば、本発明によるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)阻害剤および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)阻害剤および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤の合成の中間体としてもみなすことが可能な、一般式(1)および/または(2)の少なくとも1種の化合物を、実際のジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)阻害剤および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)阻害剤および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤に変換するための還元条件に関して制約されない。
【0136】
さらに本発明は、たとえば他の慢性炎症性疾患で過度の免疫応答(自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶反応)を伴う疾患、神経疾患および脳損傷、皮膚病(特にざ瘡および乾癬)、腫瘍疾患および特定のウイルス感染(特にSARS)ならびにII型糖尿病および特に先に詳細に述べた疾患などの多数の疾患の予防および治療のための方法に関する。これには、たとえば、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎および他の自己免疫疾患ならびに炎症性疾患、気管支喘息および他のアレルギー性疾患、たとえば乾癬、ざ瘡などの皮膚および粘膜の疾患、ならびに線維芽細胞の過剰増殖および修正された症状を伴う皮膚科学的な疾患、良性の線維化、硬化性皮膚病および悪性の線維芽細胞過剰増殖症、たとえば虚血(虚血後に生じる脳損傷)または出血性卒中などの急性神経疾患、頭蓋内膿瘍、心不全、心臓麻痺、あるいは心臓手術介入の結果として、たとえばアルツハイマー病などの慢性神経疾患、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、特に第17番染色体に結び付いたパーキンソニズムであるパーキンソン病、ハンチントン病またはプリオンによる疾患症状、および筋萎縮性側索硬化症、動脈硬化、動脈炎、ステント再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍、転移、前立腺癌、重症急性呼吸器症候群(SARS)および敗血病および敗血病様の症状などの疾患の予防および治療のための方法を含む。この方法は、適切な疾患の予防または治療に必要な量で、以下の詳細な説明により少なくとも1種の化合物または医薬品を適用することを含む。また、これらの場合には、化合物の量は適用単位あたり化合物0.01から1000mgの上述した範囲内であり、好ましくは適用単位あたり0.1から100mgの範囲である。
【0137】
また、本発明は、上述した概要および詳細な説明のうちの少なくとも1種の一般式(1)および(2)の少なくとも1種の化合物を、任意に1種以上の薬学的に許容される担体物質、補助物質および/またはアジュバントとの組み合わせで含む医薬品にも関する。
【0138】
さらに本発明は、上述した概要および詳細な説明のうちの少なくとも1種の一般式(1)および(2)の少なくとも1種の化合物を、適用可能な場合は、1種以上の化粧的に許容される担体物質、補助物質および/またはアジュバントとの組み合わせで含む化粧用調製物に関する。
【0139】
これらの調製に関して、薬学的または化粧的に許容される担体物質、補助物質および/またはアジュバントは、製薬または化粧品分野の当業者らに十分に知られており、さらに詳細に説明をする必要はない。
【0140】
上述した製薬または化粧用調製物は、一般式(1)または(2)の少なくとも1種の化合物、好ましくは一般式(1)および/または(2)の1種または2種の化合物を、製薬または化粧品分野での所望の作用に必要な量で含み得る。この量には特に制限はなく、たとえば、適用経路、具体的な疾患パターンまたは化粧状態、たとえばヒトなどの哺乳動物であり得る被験体の構成、使用する化合物の生物学的な効能(Bio‐availability)などの多数のパラメータに左右される。特に好ましい実施形態では、製薬適用単位または化粧品適用単位はそれぞれ、適用単位あたり化合物0.01から1000mgの範囲、好ましくは適用単位あたり0.1から100mgの範囲にある量の一般式(1)および/または(2)の少なくとも1種の化合物を含む。通常、適用単位は、1日あたり1以下、さらに好ましくは2または3適用単位の適用が、化合物(1)および/または(2)のうちの少なくとも1種に関して全身製薬または美容処置に必要な量を、たとえば哺乳動物、特にヒトの患者に適用するのに十分である種類(および一般式(1)および/または(2)の少なくとも1種の化合物をこのような濃度で含有)のものとすることが可能である。
【0141】
以下、特に好ましい実施形態の実施例を参照して本発明について説明する。以下の実施形態の実施例は本発明を限定するものではなく、単なる例示目的のものである。
【実施例】
【0142】
実施例1
一般式(1)の化合物の調製
一般式(1)の化合物を以下の方法で調製した。
(a)化合物II(スキーム12)
440mg(1mmol)(Boc−Cys−OH) 1を5mlの乾燥THFに溶解させた。アルゴン下にて、158μl(2mmol)のチアゾリジンを溶液に加え、0℃で25分後、徐々に460mg(2.4mmol)のN’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド(EDC)を加えた。薄層クロマトグラフィ(TLC)によって室温で変換を制御した。6時間後、460mg(2.4mmol)のEDCと79μl(1mmol)のチアゾリジンとを用いて0℃でさらに活性化を行った。20時間後、THFを蒸留により除去し、固体残渣を酢酸エチルに溶解させた。酢酸エチル相を5%硫酸水素カリウム(KHSO)溶液で3回すすぎ、塩化ナトリウム(NaCl)溶液で1回、飽和炭酸水素カリウム(NaHCO)溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で3回すすいだ。これを硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥させ、濾過し、濃縮した。
【0143】
得られた生の生成物を、酢酸エチル/石油エーテル混合物からの結晶化により精製した。
【0144】
適切なBoc保護化合物468mg(80%)が得られた。保護基を切断するために、この化合物468mg(0.8mmol)を1.2ml(16mmol)のトリフルオロ酢酸および12mlの塩化メチレンに溶解させた。TLCによって反応を制御し、変換終了後に反応バッチに乾燥エーテルを加えた。沈殿している固体を濾過し、エーテルで数回すすいだ。
収率:446mg(91%)II。
【0145】
【化84】

【0146】
(b)化合物VI(スキーム13)
(i)Boc−Lys−チアゾリジド3
1.4g(3mmol)のBoc−Lys(Fmoc)−OH 2および382μl(3mmol)の4−エチルモルホリンを7mlの乾燥THFに溶解させた。反応バッチ−15℃までを冷却し、この温度で390μl(3mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルを加えた。−15℃で15分の反応時間経過後、284μl(3.6mmol)のチアゾリジンを加え、−15℃でさらに1時間の後、室温にて一晩バッチを攪拌した。
【0147】
変換を終えるために、4−エチルモルホリンの添加後にバッチを−15℃まで冷却しながら上述した量の半分を再度活性化させ、上述の通りにクロロギ酸イソブチルエステルおよびチアゾリジンを加えた。室温でさらに4時間の反応時間経過後、これを完全に乾燥するまで濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させた。
【0148】
酢酸エチル相を5%硫酸水素カリウム溶液で3回すすぎ、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回に続いて、塩化ナトリウム溶液で中和するまですすいだ。
【0149】
硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、酢酸エチル相を濃縮し、残渣を30mlのモルホリンに溶解させて、Fmoc保護基を切断した。
【0150】
室温にて1.5時間の反応時間経過後、モルホリンを蒸留により除去した。6mlの氷冷メタノールを残渣に加えた。この溶液を難溶性の4−フルオロエン−9−イルメチルモルホリンから濾過し、溶液を濃縮した。
収率:875mg(92%)3
【0151】
(ii)VIの合成
DMFを3ml中、181mg(0.5mmol)の溶液4に、240mg(1.25mmol)のEDCを0℃で徐々に加えた後、317mg(1mmol)の3を加えた。
【0152】
反応バッチを0℃で1時間攪拌した後、室温にて6時間攪拌した。さらに120mg(0.63mmol)のEDCを添加し、6時間のインキュベーション時間経過後、DMFを蒸留により除去し、残渣を酢酸エチルに溶解させた。酢酸エチル相を5%硫酸水素カリウム溶液で3回洗浄し、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回洗浄した後、塩化ナトリウム溶液で中和するまで洗浄した。
【0153】
硫酸ナトリウム上での乾燥および酢酸エチルの蒸留除去後、粗生成物440mgが残った。
【0154】
クロロホルム/メタノール92/8を溶離液とするシリカゲルでのクロマトグラフィーによる精製を用いて、得られた収率は250mg(55%)8であった。
【0155】
保護基20mg(0.022mmol)8を純酢酸中1Mの塩酸(HCl)220μlに溶解させた。室温で6時間開始した後、反応バッチに乾燥エーテルを加え、沈殿した生成物を濾過し、エーテルですすいだ。
収率:15mg(88%)VI
【0156】
【化85】

【0157】
得られた化合物をESI−MSでキャラクタライズした。以下の表3に、本発明による一般式(1)の化合物の6つの例を示す。
【化86】

【0158】
【表3】

【0159】
実施例2
一般式(2)の化合物の調製
一般式(2)の化合物を以下の方法で調製した。
(a)化合物VII(スキーム14)
(i)6の合成
188mg(0.5mmol)Boc−Cys(Npys)−OH5を2.5mlの乾燥THFに溶解させた。アルゴン下にて、0℃で40μl(0.5mmol)のチアゾリジンを加え、徐々に115mg(0.6mmol)のEDCを加えた。TLCによって室温で反応を追跡し、4時間後に終えた。この目的のために、反応バッチを濃縮し、固体残渣を酢酸エチルに溶解させ、有機相を5%硫酸水素カリウム溶液で続いて3回すすぎ、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で3回すすいだ。硫酸ナトリウム上での乾燥後、これを濾液して酢酸エチル相を濃縮した。
収率:191mg(86%)6
【0160】
(ii)VIIの合成
29mg(0.065mmol)の6をpH8.0のACN/リン酸緩衝液(1:1)5mlに溶解させた。この溶液に、アルゴン下、室温にて、18mg(0.065mmol)のβ−アミノチオール 7(「フルニエ−ザルスキ(Fournier−Zaluski),M.C.;コリック(Coric),P.;テュルコー(Turcaud),S.;ブルエツチー(Bruetschy),L.;ルーカス(Lucas),E.;ノーブル(Noble),F.;ロケス(Roques),B.P.ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)1992、35、1259〜1266」;「フルニエ−ザルスキ(Fournier−Zaluski),M.C.;コリック(Coric),P.;テュルコー(Turcaud),S.;ルーカス(Lucas),E.;ノーブル(Noble),F.;マルドナド(Maldonado) R.;ロケス(Roques),B.P.ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)1992、35、2473〜2481」により(S)−フェニルアラニノールから開始して3ステップで合成)を5mlのACN/リン酸緩衝液に入れた溶液を加えた。3時間(HPLC制御)の反応時間経過後、反応バッチを濃縮し、固体残渣を酢酸エチルに溶解させ、この相を塩化ナトリウム溶液で3回すすいで反応を終了させた。これを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた粗生成物を、酢酸エチル/石油エーテルを用いてシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製した。適切なBoc保護化合物の収率は20mg(55%)であった。保護基を切断するために、この化合物10mg(0.018mmol)を28μl(0.36mmol)のトリフルオロ酢酸および280μlの塩化メチレンに溶解させた。TLCによって反応を追跡し、反応バッチに乾燥エーテルを加えて終了させた。沈殿している生成物をエーテルで数回すすいだ。
収率:8mg(76%)のVII。
【0161】
【化87】

【0162】
(b)化合物X(スキーム15)
73mg(0.08mmol)の8と20mg(0.075mmol)のβ−アミノチオール7とを3mlのメタノール中にて室温で24時間攪拌した。メタノールを蒸留により除去した後、溶離液に95/5の酢酸エチル(ehylacetate)/石油エーテルを用いてシリカゲルで粗生成物を精製した。収率はBoc保護ジスルフィド34mg(63%)であり、保護基を切断するために、これを750μlの塩化メチレンに溶解させ、75μlのトリフルオロ酢酸を加えた。室温で6時間開始した後、乾燥エーテルを加え、沈殿している生成物を濾過し、エーテルですすいだ。収率:29mg(83%)X。
【0163】
【化88】

【0164】
(c)化合物XI(スキーム16)
(i)10の合成
190mg(0.5mmol)の3−(Fmoc−アミノメチル)−安息香酸9と64μl(0.05mmol)の4−エチルモルホリンとを1mlのDMFに溶解させ、アルゴン下にて−15℃まで冷却した。この溶液に、65μl(0.5mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルを加え、溶液を−15℃で20分間攪拌した後、159mg(0.5mmol)のBoc−Lys−チアゾリジド3を1.25mlのDMFに入れた溶液を加え、この溶液を−15℃で1時間攪拌した。
【0165】
20時間後、他の活性化のために、室温にて32μl(0.25mmol)の4−エチル−モルホリンと33μl(0.25mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルとを再度−15℃で加えた。
【0166】
40時間(TLC制御)後にDMFを蒸留し、酢酸エチルに溶解させた。酢酸エチル相を5%硫酸水素カリウム溶液で3回すすぎ、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で3回すすいだ。これを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過した後、濃縮した。得られた生の生成物を、酢酸エチルを用いてシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製した。
【0167】
適切なFmoc保護化合物の収率は174mg(52%)であった。保護基を切断するために、この化合物150mg(0.22mmol)を2.2mlのモルホリンに溶解させ、2時間後、余分なモルホリンを蒸留により除去した。残渣を1mlの氷冷メタノールに溶解させ、不溶性4−フルオレン−9−イルメチルモルホリンから濾過して濃縮した。
収率:92mg(93%)10
【0168】
(ii)11の合成
78mg(0.21mmol)のBoc−Cys(Npys)−OH 5および27μl(0.21mmol)の4−エチル−モルホリンを0.4mlのTHFに溶解させ、アルゴン下にて−15℃まで冷却した。この溶液に、28μl(0.21mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルを加え、これを20分間−15℃で攪拌した後、95mg(0.21mmol)の10を0.75mlのTHFに入れた溶液を加えた。−15℃で1時間および室温で20時間後、他の活性化ステップのために−15℃で13μlの4−エチルモルホリン(0.10mmol)と13μl(0.10mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルとを加えた。
【0169】
24時間(TLC制御)後にTHFを蒸留により除去し、反応バッチを化合物10の場合と同様にして処理した。
【0170】
続いて、得られた生の生成物を、メタノール/クロロホルムを用いてシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製した。収率:100mg(60%)11。
【0171】
(iii)XIの合成
67mg(0.08mmol)の11をpH8.0のアセトニトリル/リン酸緩衝液(1:1)8mgに溶解させた。21mg(0.08mmol)の7を8mlのアセトニトリル/リン酸緩衝液に入れた溶液をアルゴン下にて室温で加えた。HPLCによって反応を追跡し、反応終了後に反応バッチを濃縮した。固体残渣を酢酸エチルに溶解させ、塩化ナトリウム溶液で3回すすぎ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。続いて、生の生成物を、酢酸エチル/石油エーテルを用いてシリカゲルでのクロマトグラフィにより精製した。適切なBoc保護化合物の収率は29mg(40%)であった。保護基を切断するために、この化合物22mg(0.024mmol)を55μlのトリフルオロ酢酸および550μlの塩化メチレンに溶解させた。反応をTLCによって確認し、開裂終了後に反応バッチにエーテルを加えた。沈殿した生成物を濾過し、エーテルで数回すすいだ。収率:16mg(70%)XI
【0172】
【化89】

【0173】
(d)化合物XIII(スキーム17)
(i)13の合成
2.5g(5mmol)のBoc−p−アミノ−Phe(Fmoc)−OH 12を25mlの乾燥THFに溶解させた。アルゴン下にて、0℃で394μl(5mmol)のチアゾリジンを加え、徐々に1.15g(6mmol)のEDCを加えた。反応をTLCによって室温にて確認した。6時間後、他の活性化ステップのために、0℃にて197μl(2.5mmol)のチアゾリジンと954mg(5mmol)のEDCとを加えた。室温にてさらに2時間後に、反応バッチを濃縮し、固体残渣を酢酸エチルに溶解させ、有機相を5%硫酸水素カリウム溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回、塩化ナトリウム溶液で3回すすいで反応を終了させた。続いて、これを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。
【0174】
対応するFmoc保護化合物の収率は2.58g(90%)であった。保護基を切断するために、これを45mlのモルホリンに溶解させた。2時間後、室温にて余分なモルホリンを蒸留により除去し、残渣を6mlの氷冷メタノールに溶解させた。不溶性4−フルオレン−9−イルメチル−モルホリンを濾別し、溶液を濃縮した。
収率:1.23g(78%)13
【0175】
(ii)14の合成
375mg(1mmol)の5と127μl(1mmol)の4−エチルモルホリンとを3mlの乾燥THFに溶解させ、アルゴン下にて−15℃まで冷却した。この溶液に、131μl(1mmol)のクロロギ酸ジソブチルエステルを加え、−15℃で20分後、351mg(1mmol)の13を0.5mlのTHFに入れた溶液を加えた。−15℃で1時間および室温(TLC制御)で20時間後、他の活性化ステップのために−15℃で64μl(0.5mmol)の4−エチルモルホリンおよび66μl(0.5mmol)のクロロギ酸イソブチルエステルを加えた。さらに2時間後、化合物13の文脈で説明したようにして反応バッチを濃縮し、固体残渣を酢酸エチルに溶解させ、酢酸エチル相を処理して反応を終了させた。
【0176】
得られた生の生成物を、酢酸エチルを用いてシリカゲルでのクロマトグラフィにより精製した。収率:350mg(50%)の14。
【0177】
(iii)XIIIの合成
65mg(0.09mmol)の14をpH8.0のアセトニトリル/リン酸緩衝液(1:1)9mlに溶解させた。アルゴン下にて、25mg(0.09mmol)の7を9mlのアセトニトリル/リン酸緩衝液に入れた溶液を室温で加えた。反応をHPLCによって追跡し、約3時間後に反応バッチを処理し、濃縮後、固体残渣をエチルエステルに溶解させ、続いて有機相を塩化ナトリウム溶液で3回すすいだ。これを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。生の生成物を、酢酸エチル/石油エーテル(60:40)を用いてシリカゲルでのクロマトグラフィにより精製した。収率は対応するBoc保護化合物35mg(47%)であった。保護基を切断するために、この化合物30mgを84μl(1.1mmol)のトリフルオロ酢酸および840μlの塩化メチレンに溶解させた。反応をTLCによって制御した。終了後、生成物に乾燥エーテルを加え、沈殿している固体をエーテルで数回すすいだ。収率:22.5mg(70%)のXIII。
【0178】
以下の表4に、本発明による一般式(2)の化合物の7つの例を示す。
【化90】

【0179】
【化91】

【0180】
【表4】

【0181】
一般式(1)および(2)のプロドラッグの阻害剤放出後のAPNおよびDPIVの二重阻害
上述した例1および2で調製した化合物(一般式(1)および(2)の化合物IおよびIIならびに一般式(1)および(2)の化合物VII、VIII、X、XI、XIIおよびXIIIから8つの化合物を選択した。以下の方法を用いて上述した化合物をジチオスレイトール(DTT)で還元的に処理し、プロドラッグから阻害剤を放出させた。
【0182】
DTTでの還元方法
阻害剤を水またはDMFに入れた同一容量の7×10−2M溶液と0.35MのDTT水溶液(5当量)とを室温で4時間攪拌した。
【0183】
続いて、プロドラッグの還元処理のために、以下の方法でIC50値を推測した。
【0184】
還元後のIC50値の判定
ブタ腎臓由来のジペプチジルペプチダーゼIV(EC 3.4.14.5.)、凍結乾燥粉末(シグマ(Sigma))。
基質:反応バッチ中、Ala−Pro−AMC、[S]=3×10−5M(2K)。
緩衝液:反応バッチ中、40mMトリス/塩酸緩衝液、pH7.6、I=0.125。
【0185】
ブタ腎臓由来のロイシンアミノペプチダーゼ、ミクロソーム(EC 3.4.11.2)。
3.5M硫酸アンモニウム((NHSO)溶液(シグマ)中の懸濁液。
基質:反応バッチ中、Leu−AMC、[S]=1.5×10−4M(2K)。
緩衝液:反応バッチ中、40mMトリス/塩酸緩衝液、pH7.2。
【0186】
手法:
水での希釈によって、還元バッチから、定義された阻害剤濃度の10から12の溶液を調製した。これらについては、関連の濃度範囲すなわち、完全な阻害と影響のない酵素活性との間から選択した。
【0187】
これらの阻害剤溶液各々60μlまたは水(標準)を、適切な緩衝液に入れた希釈酵素80μlと一緒に30℃で15分間インキュベートした後、適切なAMC基質を水に加えたもの(総容量200μl)60μlを加えた。fluorence−pladt−reader NOVOstar(BMG ラブテクノロジーズ(Labtechnologies))を用いて、7−アミノ−4−メチル−クマリンの放出を20分の時間をかけて30℃で連続的に追跡した。酵素濃度については、測定時間のあいだ蛍光が線形に増加するように選択した。
【0188】
励起波長と放出波長はそれぞれ、390nmおよび460nmであった。測定を2組にして実施した。ターンオーバー速度(蛍光/分の増加)を阻害剤濃度の関数としてプロットし、コンピュータプログラムGraFitを用いてIC50値を計算した。
【0189】
比較の目的で、DPIV(H−Lys[Z(NO)]−チアゾリジド)および APN(アクチノニン)に対して構築された阻害剤のIC50値を推定した。
【0190】
これらの結果を表5から導くことができる。
【0191】
【表5】

【0192】
実施例3
化合物V〜XIII(表3および4)による、健常なドナーの単核細胞(MNZ)のフィトヘムアグルチニン誘導増殖の阻害
密度勾配遠心分離によって健常なドナーの末梢血からMNZを単離し、1μg/mlのフィトヘムアグルチニン(PHA)を入れた無血清培地(AIMV)にて刺激した。各々5×10 MNZを、ミクロ試験プレートで48時間、37℃および5%COにて異なる阻害剤濃度の存在下でインキュベート(3重測定)した。対照として、未刺激の細胞ならびにPHA刺激MNZ(阻害剤なし)を同一条件下で培養した。ブロモデスオキシウリジンを新たに合成したDNA(バイオトラック−アッセイ(Biotrak−Assay、GE ヘルスケア(Healthcare))に取り込むことで、細胞の増殖率を求めた。
【0193】
図1に示す曲線は各々、少なくとも3種類の異なるドナーの累積データ(阻害剤の非存在下でのPHA刺激細胞に対する相対値)を示す。
【0194】
実施例4
硫酸デキストラン誘導結腸炎のマウスモデルにおける化合物VII(表4)の治療作用
確立された結腸炎の化学的誘導モデルで、この物質の治療可能性を試験した。このモデルでは、硫酸デキストランナトリウム(DSS)によって動物の結腸に炎症反応が誘導されるが、その組織学的パターンは、潰瘍性大腸炎と呼ばれる慢性炎症性結腸疾患(急性の発症(push))のあるヒトでの形に類似している。炎症反応の程度はDSS濃度に左右される。便の硬さ(consistence)の変化、糞便中の血液の検出ならびに体重減量の度合いが考慮され、スコアで数値化される、確立されたスコアリング系を用いて病気の重症度を測定する。
【0195】
実験終了の際に炎症性DSSを適用することで、この病気は永久的に進行した。スコア10から、潜在的に致命的な病状を仮定する必要があった。達成可能な最大限の治療の成功は、炎症反応進行の停止であった。
【0196】
実験終了の際に、平均体重20gのメスのBalb/c−マウス(8週齢)に飲料水(不断)と一緒に3%(w/v)硫酸デキストランナトリウムを与えた。2〜3日後、すべての動物で結腸炎様の症状(出血性下痢および体重減少)が検出可能であった。実験3日目から12匹の動物に各々、生理食塩水溶液(PBS)に溶解させた物質VIIまたは適量の溶媒(PBS)=プラシーボ対照)を毎日100μgずつ腹腔内注射した。
【0197】
図2のグラフでは、物質VIIで処置したマウスの平均重症度(スコア)をプラシーボで処置した動物との対比で示してある。物質VIIで処置したマウスの平均スコアが、実験の5日目から7日目にプラシーボで処置した動物の場合よりもかなり低くなった。実験の終わりには、物質VIIで処置した動物が平均して対照動物のスコアの約半分に達した。
【0198】
実施例5
DSS誘導結腸炎のマウスモデルにおける、表3および4に示すいくつかの一般式(1)および(2)の化合物の治療の成功
図3には、DSS誘導結腸炎のマウスモデルの場合について、実験7日目(実験の終わり)でのさまざまな例示的な物質の治療可能性を示してある。実施例4で説明した方法で結腸炎の活動指数を求めた。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】
【図2】
【図3】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)および(2)すなわち、
[式1]
A−B−D−B’−A’(1)および
[式2]
A−B−D−E(2)
(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、残基
【化1】

であり、
式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、は好ましくはS−配置またはL−配置のキラル炭素原子を示し;
BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、アリールアミドアルキレン残基、ヘテロアリールアミドアルキレン残基、非置換または一置換または多置換アリーレン残基またはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり;
Dは、−S−S−または−Se−Se−であり;および
Eは、官能基−CH−CH(NH)−Rまたは−CHCH(NH)−Rであり、式中、Rは、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキル残基、シクロアルキル残基、アラルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、アリールアミドアルキル残基、ヘテロアリールアミドアルキル残基、非置換または一置換またはポリ置換アリール残基またはヘテロアリール残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)であり、はキラル炭素原子を示し、好ましくはS−配置またはL−配置である)の化合物;
または、有機酸および/または無機酸との酸付加塩。
【請求項2】
Bおよび/またはB’が、
(a)1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキレン残基であって、好ましくは−CH−、−CH−CH−または(HC)−C<である、残基R
(b)式中、nは1から5の整数であって;Rは、RがO=C<または−SO−であれば、−NH−または−(NH)−C(=NH)−NH−、Rが−NH−であれば、RはO=C<であり;Rは、O、NまたはS含有もしくは非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラルキレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基、ヘテロアリールアルキレン残基、非置換、一置換または多置換のアリーレン残基もしくはヘテロアリーレン残基(1つ以上の5員環、6員環または7員環を有する)である、残基−(CH−R−R−R−;または、
(c)式中、Rは一置換または多置換ベンジレン残基であって、Rは単結合もしくは官能基として好ましくは1種以上のアミノ基、カルボニル基、カルボキシル基もしくは非置換、一置換または多置換のアリーレン残基またはヘテロアリーレン残基(1種または2種以上の5員環、6員環または7員環を有する)を含む、O、NまたはS含有または非含有の、非置換または置換された、非分枝または分枝状のアルキレン残基、シクロアルキレン残基、アラリレン残基、ヘテロシクロアルキレン残基またはヘテロアリールアルキレン残基である、残基−R−R−;
である、請求項1に記載の一般式(1)および(2)の化合物。
【請求項3】
Bは残基−(CH−R−R−Rであり、式中、Rは−CH(COOH)−R−であり、式中、Rは、RがO=C<およびRが−NH−であれば上述の有意性を有し、または、
【化2】

式中、RがO=C<およびRが−NH−であればRは上述の有意性を有し;
が−NH−または−NH−C−(=NH)−NH−でRがO=C<であれば−CH(NHR)−R−であり、式中、RはHまたはアシル残基、好ましくはベンジルオキシカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル残基、tert−ブチルオキシカルボニル残基またはベンゾイル残基であり;
【化3】

式中、Rはフェニレンであり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<であり;
【化4】

式中、RはHまたはアシル残基であり、好ましくはベンジルオキシカルボニル残基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル残基またはベンゾイル残基であり、RがO=C<または−SO−であれば、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<であり、または
【化5】

式中、アルキレンは、非分枝または分枝状の、1から6個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、RがO=C<または−SO−であれば、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NH−であればRはO=C<であり;
【化6】

式中、アルキレンは、非分枝または分枝状の、1から6個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、Rが−NH−であればRはO=C<であり、または
【化7】

式中、およびRがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NH−であればRはO=C<であり;
【化8】

式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基かつRがO=C<または−SO−であれば、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NH−であればRはO=C<であり;
【化9】

式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、RがO=C<または−SO−であればRは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NH−であればRはO=C<であり;
【化10】

式中、Rは、H、NO、CN、ハロゲンまたはアシル残基であり、RがO=C<または−SO−であれば、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NHであればRはO=C<であり;または、
【化11】

式中、RがO=C<または−SO−であれば、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−であり、もしくはRが−NH−であればRはO=C<である、
請求項1または2に記載の一般式(1)および(2)の化合物。
【請求項4】
Bが、残基−R−R−であり、式中、RおよびRは組み合わせで残基
【化12】

(Rの位置はRの位置に左右される)であり、RおよびRは上述の有意性を有する、請求項1または2に記載の一般式(1)および(2)の化合物。
【請求項5】
Bは、残基−R−R−であり、Rは一置換または多置換されたベンジレン残基であり、Rは、
NH−または−C〜C−アルキレン−NH−、
−C(=O)−C〜C−アルキレン−、
−C(=O)−アリーレン−、
−SO−C〜C−アルキレン−、
−SO−アリーレン−、
【化13】

または
−C(=O)−CH(NHR)−R
との組み合わせであり、式中、RおよびRは上述の有意性を有し;
O=C<と、
−NH−C〜C−アルキレン−、
−NH−アリーレン−または
−NH−CH(COOH)−R
との組み合わせであり、式中、Rは上述の有意性を有し、または
−O−C〜C−アルキレン−、
−O−アリーレン−または、
−O−アルキレン−NH−C(=O)−CH(NH)−R−であり、式中、Rは上述の有意性を有し;または
−O−C〜C−アルキレン−C(=O)−NH−CH(COOH)−R−であり、式中、Rは上述の有意性を有する、
請求項1または2に記載の式(1)および(2)の化合物。
【請求項6】
前記酸付加塩が薬学的に許容される酸の塩であり、好ましくは、前記酸付加塩は、塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の一般式(1)または(2)の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(1)の化合物、すなわち一般式(1a)
【化14】

(式中、X、YおよびBは上述の有意性を有する)の化合物、および前記酸付加塩、好ましくは、薬学的に許容される無機酸および/または有機酸との、前記酸付加塩。
【請求項8】
X、YおよびBは、以下の有意性
【表1】

を有する、請求項7に記載の一般式(1a)の化合物、およびこれらの前記酸付加塩、好ましくは薬学的に許容される無機酸および/または有機酸との、これらの前記酸付加塩。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(2)の化合物、すなわち一般式(2a)
【化15】

(式中、X、Y、RおよびBは上述の有意性を有する)の化合物、およびこれらの前記酸付加塩、好ましくは、上述した群中の薬学的に許容される酸である、薬学的に好ましく許容される無機酸および/または有機酸と、これらの前記酸付加塩。
【請求項10】
X、Y、RおよびBが以下の有意性
【表2】

を有する、請求項9に記載の一般式(2a)の化合物、およびこれらの前記酸付加塩、好ましくは、薬学的に許容される無機酸および/または有機酸との、これらの前記酸付加塩。
【請求項11】
一般式(1)および(2)の化合物を調製する方法であって、
[式1]
A−B−D−B’−A’(1)および
[式2]
A−B−D−E(2)、
式中、
A、B、DおよびEは請求項1〜10のいずれか一項に記載の前記有意性を有し、合成スキーム1中で、
一般式
【化16】

(式中、(SG)は保護基であり、

は、Bの構造要素である)の化合物を、一般式
【化17】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、式
【化18】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化19】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換し、得られる前記反応生成物を、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、式中、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;もしくは
一般式
【化20】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化21】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり;得られた式
【化22】

の縮合生成物を、一般式
【化23】

(式中、

はBの構造要素である)の化合物で変換し、このようにして得られる反応生成物を、一般式
[化24]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、
前記保護基(SG)から切断して前記一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか、または一般式
【化25】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素であり、Zは、チオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基である)の化合物を、一般式
【化26】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、式
【化27】

の得られた縮合生成物を、一般式
[化28]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、
前記保護基(SG)から切断して前記一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか;もしくは
一般式
【化29】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化30】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、得られた反応生成物を、一般式
[化31]
HS−CH−CH [−NH−(SG)]−R
の化合物で、前記一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか、または一般式
【化32】

(式中、SGは保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化33】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、得られた反応生成物を、前記保護基SGから切断して前記一般式A−B−D−B’−A’(1)(式中、AおよびA’は同一であっても異なっていてもよく、BおよびB’は同一であっても異なっていてもよく、A、A’、B、B’およびDは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換するか、または
一般式
【化34】

(式中、(SG)は保護基であり、

はBの構造要素である)の化合物を、一般式
【化35】

の複素環化合物で変換し、式中、Xは、S、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHであり、YはHまたはCNであり、式
【化36】

の得られた縮合生成物を、一般式
【化37】

(式中、

はBの構造要素であり、Zは、チオール交換のための−S−S−基を活性化させる残基であり、(SG)は保護基である)の化合物で変換し、式
【化38】

の得られた反応生成物を、一般式
[化39]
HS−CH−CH[−NH−(SG)]−(R
の化合物で変換し、保護基(SG)から切断して一般式A−B−D−E(2)(式中、A、B、DおよびEは上述の有意性を有していてもよい)の化合物に変換する方法。
【化40】

【請求項12】
医薬品に用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
阻害剤前駆体または阻害剤プロドラッグとしての、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤、ならびに、ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤前駆体および/またはプロドラッグとしての、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項15】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの阻害剤前駆体またはプロドラッグとして用いられる、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項16】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびアラニルアミノペプチダーゼN(APN)の阻害剤プロドラッグとして用いられる、請求項12〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つの、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルス性疾患ならびにII型糖尿病を含む、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療への使用。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つの、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患およびウイルス性疾患ならびにII型糖尿病を含む、過度の免疫応答および炎症的な発症を伴う疾患の予防および治療用の薬剤または化粧用調製物の調製への使用。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つが、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および/または類似の酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および/または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種の阻害剤を生成する、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
還元生理学的または病態生理学的条件下で、好ましくは、−S−S−結合または−Se−Se−結合が、−SH−基またはSeH−基に変換される条件下での、請求項17〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つから、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種の阻害剤を生成する方法であって、前記一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つを還元条件に曝露する、工程。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つを、生体内で還元生理学的条件に曝露する、請求項21に記載の工程。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)および(2)の化合物のうちの少なくとも1つを、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、補助物質および/またはアジュバントとの組み合わせで含む、医薬品。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の一般式(1)または(2)の少なくとも1種の化合物のうちの少なくとも1つを、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、補助物質および/またはアジュバントとの組み合わせで含む、化粧用調製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−515915(P2009−515915A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540493(P2008−540493)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010818
【国際公開番号】WO2007/057128
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505008187)イーエムテーエム ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】