説明

点灯装置及び照明器具

【課題】 バラストチョークの温度上昇を抑制することができる点灯装置及び照明器具を提供する。
【解決手段】 調光比が高い領域では、バラストチョーク(共振用インダクタ162)の許容温度を超えない範囲でチョッパ回路13の出力電圧を切換えてバラストチョークの発熱温度を設定し、調光比が40%以下になったとき最下限の出力電圧を設定して、調光比を低くしてもバラストチョークの発熱温度を許容温度以下に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯などの光源を点灯する点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯などの光源を点灯する点灯装置には、インバータ回路を用いたインバータ式のものが知られている。かかる点灯装置は、インバータ回路を構成するスイッチング手段のスイッチング周期(動作周波数)やスイッチングのデューティ比を放電灯の点灯状態や電源電圧に応じて制御することにより放電灯を一定の明るさで点灯できるようにしている。
【0003】
ところで、点灯装置には、特許文献1に開示されるようにインバータ回路に入力される直流電源の出力電圧を可変することにより放電灯の調光を可能にした調光制御機能を有するものがある。このような調光制御機能を有する点灯装置は、インバータ回路の出力側に共振回路を構成するインダクタとコンデンサが接続され、このうちのインダクタがバラストチョーク(BC)として放電灯に直列に接続されている。
【特許文献1】特開2002−043085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このように構成されたものは、調光制御時に放電灯に流れる無効電流が増大するため、バラストチョークでの発熱が問題になる。このため、このときの温度上昇を考慮して耐熱構造を有する高価なバラストチョークが用いられ、また、バラストチョークの温度上昇が周囲に配置されるコンデンサなどの電子部品に影響し、これら電子部品の特性を劣化させるという問題もあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、バラストチョークの温度上昇を抑制することができる点灯装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、可変可能な出力電圧を発生する電源手段と;前記電源手段の出力電圧が入力されるとともに、動作周波数に基づいて交流出力を生成する交流出力手段と;前記交流出力手段より生成される交流出力がバラストチョークを介して供給される光源と;外部からの調光信号に基づいて前記電源手段の出力電圧を可変するとともに、前記出力電圧は、調光可能な範囲において前記バラストチョークの発熱温度のピーク値が該バラストチョークの許容温度以下となるように出力が制御される前記発熱温度のピーク値に対する調光比より高い調光比以下で設定する制御手段と;を具備したことを特徴としている。
【0007】
ここで、許容温度とは、発熱によりバラストチョークの巻線が早期に寿命に至ってしまわないように設定された温度である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記出力電圧の変化は、調光比の比較的高い領域では調光比に応じて変化し、所定の調光比以下となると、その出力が最小出力値で一定になるものであって、この最小出力値になる調光比は、最小出力値において調光比に応じて変化するバラストチョークの発熱温度に対し、この発熱温度のピーク値に至るよりも高い調光比となるように設定されることを特徴としている。
【0009】
ここでのバラストチョークの発熱温度のピーク値は、請求項1記載の許容温度以下となるような関係にある。つまり、このような温度関係とすることで、出力電圧一定の領域では、常に許容温度以下となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の点灯装置と;前記点灯装置を有する器具本体と:を具備したことを特徴とする照明器具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調光比に基づいた電源手段の出力電圧により光源を安定して点灯動作させながら調光制御することができるとともに、調光比の低い領域での最適な出力電圧の設定によりバラストチョークの温度上昇を抑制でき、常にバラストチョークの温度を許容温度以下に制御できる。
【0012】
また、本発明によれば、出力電圧を一定にする領域においてバラストチョークの温度上昇を極力抑えることができるため、出力電圧一定領域においても不具合を生じ難い。 さらに、本発明によれば、バラストチョークの温度上昇を抑制することができる照明器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0014】
まず、本発明の点灯装置が適用される照明器具について簡単に説明する。図1において、1は器具本体で、この器具本体1は、円板状をした基台1aを有し、この基台1a上に直径の異なるリング状の放電灯2,3が同心状に配置され、これら放電灯2,3を覆うように乳白色のセード4が装着されている。また、器具本体1内部には、本発明の点灯装置100が配置されている。なお、図示しないが、さらに反射板、端子および配線なども設けられることは勿論である。
【0015】
図2は、このように構成された照明器具の器具本体1内部に組み込まれる本発明の点灯
装置100の概略構成を示している。
【0016】
図2において、11は交流電源で、この交流電源11は、不図示の商用電源からなっている。この交流電源11には、全波整流回路12の入力端子が接続されている。全波整流回路12は、交流電源11からの交流電力を全波整流した出力を発生する。
【0017】
全波整流回路12には、電源手段としてチョッパ回路13が接続されている。このチョッパ回路13は、入力電流と入力電圧との位相を一致させる、所謂、臨界モード(不連続モード)の力率改善(PFC)機能を備えた昇圧チョッパ電源が用いられる。また、チョッパ回路13は、全波整流回路12の正負極の出力端子間に昇圧用トランスを構成するチョッパチョーク131の一次巻線131a、スイッチング素子としての電界効果トランジスタ132、抵抗133の直列回路が接続され、電界効果トランジスタ132、及び抵抗133の直列回路に、図示極性のダイオード134を介して平滑用コンデンサである電解コンデンサ135が接続されている。チョッパチョーク131は、一次巻線131aと磁気的結合された二次巻線131bを有し、この二次巻線131bは、一端が全波整流回路12の負極側出力端子に接続され、他端が抵抗136を介してチョッパ制御部21を構成するフリップフロップ214のセット(S)端子に接続されている。このチョッパ制御部21については後述する。
【0018】
チョッパ回路13には、交流出力手段としてインバータ回路14が接続されている。このインバータ回路14は、電解コンデンサ135に並列に、スイッチング素子としての電界効果トランジスタ141、142の直列回路が接続され、所謂、ハーフブリッジ型のインバータ回路として構成されている。電界効果トランジスタ141、142は、それぞれのゲートがインバータ制御部を22を構成するハイサイドドライバ221に接続され、このハイサイドドライバ221より供給される制御信号によりオンオフが制御される。インバータ制御部22については後述する。
【0019】
インバータ回路14には、予熱回路15が接続されている。この予熱回路15は、インバータ回路14の電界効果トランジスタ142と並列に、予熱用トランス151の一次巻線151a、コンデンサ152、スイッチング素子としての電界効果トランジスタ153及び電流検出用の抵抗154の直列回路が接続されている。また、コンデンサ152と電界効果トランジスタ153の接続点が図示極性のダイオード155を介してチョッパ回路13のダイオード134のカソードに接続されている。予熱用トランス151は、一次巻線151aと磁気的結合された第1の二次巻線151b、第2の二次巻線151c及び第3の二次巻線151dを有している。これら第1の二次巻線151b、第2の二次巻線151c及び第3の二次巻線151dについては後述する。電界効果トランジスタ153のゲートには、予熱回路制御部204が接続されている。この予熱回路制御部204についても後述する。
【0020】
予熱回路15には、共振回路16が接続されている。この共振回路16は、電界効果トランジスタ153に並列に、直流カット用のコンデンサ161を介してバラストチョーク(BC)としての共振用インダクタ162と共振用コンデンサ163の直列回路が接続されている。
【0021】
共振回路16には、光源として上述の図1に示した放電灯2,3が接続されている。この場合、共振回路16の共振用インダクタ162と共振用コンデンサ163の接続点は、放電灯2の一方のフィラメント2aに接続され、また、共振用コンデンサ163の前記全波整流回路12の負極側出力端子との接続点は、放電灯3の一方のフィラメント3aに接続されている。そして、放電灯2のフィラメント2aには、予熱用トランス151の第1の二次巻線151bとコンデンサ171の直列回路が並列に接続され、放電灯3のフィラメント3aには、予熱用トランス151の第2の二次巻線151cとコンデンサ172の直列回路が並列に接続されている。また、放電灯2、3のそれぞれの他方のフィラメント2bと3bは、予熱用トランス151の第3の二次巻線151dとコンデンサ173の直列回路を介して接続されている。
【0022】
一方、20は主制御手段としてのDSPで、このDSP20は、ディジタル演算処理機能を有する、いわゆるマイコンなどのMPU(演算素子)から構成されている。このDSP20は、電圧設定部201、状態検出部202、インバータ回路制御部203、予熱回路制御部204を有するとともに、図示しないが記憶手段としてのROM、RAM、インターフェースであるI/Oポートなどを有している。この場合、これら電圧設定部201、状態検出部202、インバータ回路制御部203、予熱回路制御部204は、例えばソフトウェアから構成されている。勿論、これらはハードウェアにより構成することもできる。
【0023】
電圧設定部201は、チョッパ回路13の出力電圧VDCを設定するため基準信号である参照電圧VTHを出力する。また、電圧設定部201は、放電灯2,3の調光制御時の調光比WL(100〜0%)(または調光レベル)に応じてチョッパ回路13の出力電圧VDCをVDCa、VDCb、VDCc、…VDCnの範囲で可変するようにしている。図4は、調光比WLと出力電圧VDCの関係を示すもので、調光比100%では、上限の出力電圧VDCaを設定し、調光比が下がるにしたがいVDCb、VDCc、…を順に設定し、調光比が例えば40%以下で、最下限の出力電圧VDCnを設定する。ここで、調光比100%で設定される上限の出力電圧VDCaは400V、調光比40%以下で設定される最下限の出力電圧VDCnは、放電灯2,3を点灯するのに最低必要な例えば200Vである。
【0024】
図5は、出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…VDCnをそれぞれ固定し、インバータ回路14の動作周波数のみで調光した場合における調光比WL(100〜0%)とバラストチョーク(共振用インダクタ162)での発熱温度Tの関係を示すものである。この図からも明らかなように、調光比40%以下で最下限の出力電圧VDCnに設定するのは、他の出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…については、調光比が比較的高い時点でバラストチョーク(共振用インダクタ162)の許容温度TL(発熱によりバラストチョークの巻線が早期に寿命に至ってしまわないように設定された温度)を超えてしまうのに対し、最下限の出力電圧VDCn(200V)では、調光比40%以下で発熱温度Tのピーク値TPに達するものの常に許容温度TL以下に抑制できるためである。つまり、調光比WL(100〜0%)に応じて出力電圧VDCをVDCa、VDCb、VDCc、…VDCnの範囲で可変する場合、発熱温度Tのピーク値TPが常にバラストチョーク(共振用インダクタ162)の許容温度TL以下となるような最下限の出力電圧VDCnを、該出力電圧VDCnによる発熱温度Tのピーク値TPに対する調光比より高い調光比以下(ここでは40%以下)で設定することにより、調光比の低い領域で調光制御が行われても、常にバラストチョーク(共振用インダクタ162)の発熱温度Tを許容温度TL以下に抑制することができる。
【0025】
DSP20の不図示のROMには、出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…VDCnにかかるデータが記憶されている。具体的には、各出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…VDCnについて、それぞれ図3に示すように出力電圧波形A上の所定時間ごとの電圧値Va、Vb、Vc、…Vnに対応するデータが記憶されている。そして、電圧設定部201は、後述する調光制御部31より入力される調光信号DIMによる調光比に基づいて対応する出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…VDCnを設定するとともに、これら設定された出力電圧VDCa、VDCb、VDCc、…VDCnに対応する電圧値Va〜VnのデータをROMより読み出し、参照電圧VTHとして出力する。
【0026】
このような電圧設定部201には、上述したチョッパ制御部21が接続されている。このチョッパ制御部21は、電圧設定部201の参照電圧VTHが出力される出力端子を抵抗211とコンデンサ212の直列回路を介して接地し、これら抵抗211とコンデンサ212の接続点にコンパレータ213の一方の入力端子が接続されている。このコンパレータ213は、他方の入力端子に前記チョッパ回路13の電界効果トランジスタ132と抵抗133の接続点が接続され、電界効果トランジスタ132のスイッチングにより抵抗133に生じる電圧Vqと上述の参照電圧VTHとの比較結果を出力する。コンパレータ213の出力端子には、フリップフロップ214のリセット(R)端子が接続されている。このフリップフロップ214は、RS型を構成するもので、セット(S)端子が抵抗136を介してチョッパチョーク131の二次巻線131bに接続され、出力(Q)端子が電界効果トランジスタ132のゲートに接続されている。
【0027】
状態検出部202は、放電灯2、3に供給される高周波交流出力の電圧Vlと電流Ilを検出し、放電灯2、3の点灯状態を検出するもので、ここでは、これら電圧Vl及び電流Ilに対応したディジタルの周波数データを状態検出信号として出力する。
【0028】
インバータ回路制御部203は、状態検出部202より検出した放電灯2、3の点灯状態を表す状態検出信号及び後述する調光信号出力部312から出力される調光信号DIMに基づいて所定の周波数を有する調光用のPWM信号を生成する。このインバータ回路制御部203には、上述したインバータ制御部22を構成するハイサイドドライバ221が続されている。このハイサイドドライバ221は、インバータ回路制御部203から供給される調光用のPWM信号に応じて、数十kHz〜200kHz程度の動作周波数の制御信号、具体例としては、例えば50kHz以上の制御信号を発生して電界効果トランジスタ141,142を交互にオンオフさせ、電界効果トランジスタ142のドレインーソース間に高周波交流出力を発生させる。
【0029】
予熱回路制御部204は、予熱回路15の抵抗154に流れる電流を予熱電流IPとして検出し、この予熱電流IPを監視するとともに、状態検出部202で検出される放電灯2,3に対する電圧Vl及び電流Ilに基づいて最適予熱条件の目標値を設定し、この目標値に予熱電流IPが近付くように予熱回路15の電界効果トランジスタ153のゲート端子に供給する予熱用PWM信号を生成する。
【0030】
一方、31は調光制御手段としての調光制御部で、この調光制御部31は、調光操作部311及び調光信号出力部312を有している。調光操作部311は、ユーザ操作により放電灯2、3を0〜100%(全光点灯時を100%)の範囲で調光制御するための制御信号を出力する。調光信号出力部312は、調光操作部311の調光制御用の制御信号より0〜100%の調光信号DIMを生成し、DSP20の電圧設定部201及びインバータ回路制御部203に出力する。
【0031】
次に、このように構成した実施の形態の作用を説明する。
【0032】
いま、ユーザ操作により調光操作部311が全光点灯(100%)に設定されると、調光信号出力部312に全光点灯(100%)に相当する制御信号が入力される。調光信号出力部312は、調光操作部311の制御信号より調光比100%の調光信号DIMを生成し、DSP20の電圧設定部201及びインバータ回路制御部203に出力する。
【0033】
電圧設定部201は、調光操作部311からの調光比100%の調光信号DIMにより、例えば図4に示す出力電圧VDCaを設定するとともに、この出力電圧VDCaに対応する電圧値Va〜Vnのデータのうち、まず、図3に示す電圧値Vaに対応するデータを参照電圧VTHとして出力する。この状態で、チョッパチョーク131の二次巻線131bの出力がフリップフロップ214のセット(S)端子に与えられ、出力(Q)端子より図3(b)に示すスイッチングパルスSPが出力されて電界効果トランジスタ132がオンされる。すると、チョッパチョーク131の一次巻線131aに直線的に増加する電流が流れる(図3のB11参照)。この状態で、チョッパチョーク131に電磁的エネルギーが蓄積される。同時に、電界効果トランジスタ132のオンによるスイッチング電流によって抵抗133により生じる電圧Vqがコンパレータ213に入力される。そして、このときの電圧設定部201の参照電圧VTH(Va)と比較され、電圧Vqが参照電圧VTH(Va)に達すると、コンパレータ213の出力によりフリップフロップ214のリセット(R)端子に図3(c)に示すようなリセット信号RSが入力され、出力(Q)端子から出力されていたスイッチングパルスSPが停止して電界効果トランジスタ132がオフされる。これにより、チョッパチョーク131に蓄積された電磁的エネルギーが放出され、チョッパチョーク131に直線的に減少する電流が流れる(図3のB12参照)。その後、電圧設定部201は、図3に示す電圧値Vbを参照電圧VTHとして出力し、この状態で、チョッパチョーク131の二次巻線131bの出力がフリップフロップ214のセット(S)端子に与えられ、出力(Q)端子からのスイッチングパルスSPにより電界効果トランジスタ132がオンされ、上述したと同様な動作が実行される。以下同様にして電圧設定部201の参照電圧VTHを図3に示す電圧値Vc〜Vnに変更しながら同様な動作を繰り返すことにより、図3(a)に示すように出力電圧VDCaに対応する出力電流IDCが生成され、この出力電流IDCによりダイオード134を介して電解コンデンサ135両端に調光比100%の出力電圧VDCaが発生する。
【0034】
チョッパ回路13の出力電圧VDCaは、インバータ回路14に入力される。インバータ回路14は、電界効果トランジスタ141,142をハイサイドドライバ221より入力される制御信号によりオンオフされ、電界効果トランジスタ142のドレインーソース間に高周波交流を発生する。この場合、ハイサイドドライバ221には、インバータ回路制御部203より100%の調光信号DIMに対応する調光用のPWM信号が与えられ、このPWM信号に相当する制御信号が出力される。これによりインバータ回路14は、このときのハイサイドドライバ221の制御信号に応じた動作周波数により電界効果トランジスタ141,142がオンオフされ、高周波交流を発生する。
【0035】
インバータ回路14より出力される高周波交流出力は、共振回路16に与えられ、共振用インダクタ162及び共振用コンデンサ163が共振動作される。また、DSP20の予熱回路制御部204は、予熱回路15の抵抗154に流れる予熱電流IPを検出し、この予熱電流IPが最適予熱条件の目標値に近付くように電界効果トランジスタ153のゲート端子に予熱用PWM信号を出力することで、電界効果トランジスタ153がスイッチング動作され、予熱用トランス151の第1〜3の二次巻線151b、151c、151dにそれぞれ予熱電流が流れて放電灯2,3のフィラメント2a,2b、3a、3bが予熱される。これにより、放電灯2のフィラメント2aと2bの間、放電灯3のフィラメント3aと3bに所定の始動電圧が印加され、放電灯2,3は全光点灯(100%)状態で点灯される。
【0036】
次に、調光操作部311により、例えば、調光比80%の点灯状態が設定されると、調光信号出力部312に調光比80%に相当する制御信号が入力される。調光信号出力部312は、調光操作部311の制御信号より調光比80%の調光信号DIMを生成し、DSP20の電圧設定部201及びインバータ回路制御部203に出力する。
【0037】
電圧設定部201では、調光操作部311からの調光比80%の調光信号DIMにより、例えば図4に示す出力電圧VDCbを設定するとともに、出力電圧VDCbに対応する電圧値Va〜Vnのデータを順に参照電圧VTHとして出力する。これにより、上述したと同様の動作が実行され、図3(a)に示すように出力電圧VDCbに対応する出力電流IDCが生成され、この出力電流IDCによりダイオード134を介して電解コンデンサ135両端に調光比80%の出力電圧VDCbが発生する。この場合も、インバータ回路14は、ハイサイドドライバ221より供給される80%の調光に対応するPWM信号に基づいた動作周波数により電界効果トランジスタ141,142がオンオフされて高周波交流を発生し、放電灯2,3は調光比80%の状態で点灯される。
【0038】
調光操作部311により、さらに異なる調光(調光比40%以上)が設定される場合も同様で、電圧設定部201は、これらの調光比に対応する出力電圧VDCc、…を指定するとともに、各出力電圧VDCc、…に対応する電圧値Va〜Vnのデータを参照電圧VTHとして出力する。これにより、上述したと同様の動作が実行され、電解コンデンサ135両端に調光比に対応した出力電圧VDCc、…が発生し、インバータ回路14より高周波交流が発生し、放電灯2,3は、設定された調光比で点灯される。
【0039】
次に、調光操作部311により、調光比が40%以下に設定された場合、調光信号出力部312に調光比40%以下に相当する制御信号が入力される。調光信号出力部312は、調光操作部311の制御信号より調光比40%の調光信号DIMを生成し、DSP20の電圧設定部201及びインバータ回路制御部203に出力する。
【0040】
電圧設定部201では、調光操作部311からの調光比40%以下の調光信号DIMにより、図4に示す最下限の出力電圧VDCnを設定するとともに、出力電圧VDCnに対応する電圧値Va〜Vnのデータを参照電圧VTHとして出力する。これにより、上述したと同様の動作が実行され、図3(a)に示すように出力電圧VDCnに対応する出力電流IDCが形成され、この出力電流IDCによりダイオード134を介して電解コンデンサ135両端に調光比40%以下の出力電圧VDCnが発生する。この場合も、インバータ回路14は、ハイサイドドライバ221より供給される40%以下の調光に対応するPWM信号に基づいた動作周波数により電界効果トランジスタ141,142がオンオフされて高周波交流を発生し、放電灯2,3は調光比40%以下で点灯される。 この場合、図5に示すように調光比WL(100〜0%)に対して設定される出力電圧VDCa、VDCb、…VDCnは、このうちの出力電圧VDCa、VDCb、VDCcなどの比較的高い出力電圧では、調光比WLが高い領域でもバラストチョーク(共振用インダクタ162)での発熱温度Tが高くなり、調光比WLを低くすると許容温度TLを超えてしまうおそれがあるが、最下限の出力電圧VDCnでは、調光比WLを低くしても発熱温度Tのピーク値TPが許容温度TLを超えることがなく、常に許容温度TL以下に抑制することができる。このことから調光比WLが高い領域では、バラストチョーク(共振用インダクタ162)の許容温度TLを超えない範囲で出力電圧VDCa、VDCb、VDCcを切換えてバラストチョーク(共振用インダクタ162)の発熱温度Tを温度曲線C上の点a、b、c、dに変化させ、調光比WLが40%以下になったとき最下限の出力電圧VDCnを設定することで、バラストチョーク(共振用インダクタ162)の発熱温度Tを許容温度TL以下に抑制することにより、常に、安全な温度範囲でバラストチョーク(共振用インダクタ162)を使用することができる。
【0041】
したがって、このようにすれば、調光比WLが高い領域では、バラストチョーク(共振用インダクタ162)の許容温度TLを超えない範囲でチョッパ回路13の出力電圧VDCa、VDCb、VDCcを切換えてバラストチョーク(共振用インダクタ162)の発熱温度Tを温度変化曲線C上に沿って設定し、調光比WLが40%以下になったとき最下限の出力電圧VDCnを設定して、調光比WLを低くしても発熱温度Tを許容温度TL以下に抑制できるようにした。これにより、調光比WLが高い領域では、チョッパ回路13に対して放電灯2,3の点灯動作に最適な出力電圧VDCa、VDCb、VDCcを設定することができるので、放電灯2,3を安定して点灯動作させながら調光制御することができる。また、調光比WLが40%以下になったとき最下限の出力電圧VDCnを設定することで、バラストチョーク(共振用インダクタ162)の発熱温度Tを許容温度TL以下に抑制できるので、従来のバラストチョーク(共振用インダクタ162)に耐熱構造を有する高価なものを用意することがなくなり、また、バラストチョーク(共振用インダクタ162)での温度上昇が周囲に配置されるコンデンサなどの電子部品に影響し、これら電子部品の特性を劣化させるという問題も回避できる。
【0042】
また、このような一連の制御を行う場合、アナログ回路では、回路規模が増大し、複雑になって実現困難になることがあるが、ディジタルデバイスのDSP20を適用してチョッパ回路13の出力電圧VDC及びインバータ回路14の動作周波数のディジタル制御を行うようにしたので、簡単な回路構成により確実で安定した動作を実現することもできる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、最下限の出力電圧VDCnを40%以下で設定するようにしたが、これは、一例であり、バラストチョークの特性や回路条件によって最適な調光比が設定される。また、例えば、光源の放電灯は、蛍光ランプなどを含み、さらに光源としてはLEDなどを適用することもできる。
【0044】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる点灯装置が適用される照明器具を示す斜視図。
【図2】第1の実施の形態にかかる点検装置の概略構成を示す図。
【図3】第1の実施の形態のチョッパ回路での動作を説明するための図。
【図4】第1の実施の形態のチョッパ回路の出力電圧と調光比の関係を説明するための図。
【図5】第1の実施の形態のバラストチョークの発熱温度と調光比の関係を説明するための図。
【符号の説明】
【0046】
1…器具本体、2.3…放電灯、4…セード
100…点灯装置、11…交流電源
13…チョッパ回路、14…インバータ回路
141.142…電界効果トランジスタ
15…予熱回路、16…共振回路
20…DSP、201…電圧設定部
202…状態検出部、203…インバータ回路制御部
204…予熱回路制御部、21…チョッパ制御部
22…インバータ制御部、221…ハイサイドドライバ
31…調光制御部、311…調光操作部
312…調光信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変可能な出力電圧を発生する電源手段と;
前記電源手段の出力電圧が入力されるとともに、動作周波数に基づいて交流出力を生成する交流出力手段と;
前記交流出力手段より生成される交流出力がバラストチョークを介して供給される光源と;
外部からの調光信号に基づいて前記電源手段の出力電圧を可変するとともに、前記出力電圧は、調光可能な範囲において前記バラストチョークの発熱温度のピーク値が該バラストチョークの許容温度以下となるように出力が制御される前記発熱温度のピーク値に対する調光比より高い調光比以下で設定する制御手段と;
を具備したことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記出力電圧の変化は、調光比の比較的高い領域では調光比に応じて変化し、所定の調光比以下となると、その出力が最小出力値で一定になるものであって、この最小出力値になる調光比は、最小出力値において調光比に応じて変化するバラストチョークの発熱温度に対し、この発熱温度のピーク値に至るよりも高い調光比となるように設定されることを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の点灯装置と;前記点灯装置を有する器具本体と:を具備したことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−40193(P2010−40193A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198276(P2008−198276)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】