説明

無停電電源装置

【課題】 パソコンなどの電源に供するのに好適な単相出力の無停電電源装置を提供する。
【解決手段】 交流電源1の電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータ12、コンバータ12の出力電圧を平滑するコンデンサ13、コンデンサ13の両端電圧を所望の周波数・振幅の単相交流電圧に変換して出力するインバータ14、交流電源1が喪失したときに蓄電池設備2の端子電圧を昇圧しつつ、コンデンサ13およびコンバータ14に供給する昇圧チョッパ18などから形成される無停電電源装置10において、昇圧チョッパ18の電圧制御回路40に、第1LPF46、第2LPF47、加算演算器48、設定器49、乗算演算器50からなる蓄電池設備2から流れるインバータ14が出力する単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流を抑制する電流抑制制御手段を設けることにより、コンデンサ13の容量を少なくできるとともに、蓄電池設備2の長寿命化が計れ、特に、この無停電電源装置10と蓄電池設備2とを一体化した構造での小型化が計れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パソコンなどの電源に供される単相出力の無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、この種の無停電電源装置のブロック構成図を示し、この図において、1は商用電源などの交流電源、2は単位電池を複数個直列接続してなる蓄電池設備、3は単相負荷を示し、この単相負荷3は無停電電源装置10から給電される。
【0003】
この無停電電源装置10にはコンタクタ11と、交流電源1の電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータ12と、コンバータ12の出力電圧を平滑するコンデンサ13と、コンデンサ13の両端電圧を所望の周波数・振幅の単相交流電圧に変換して出力するインバータ14と、コンタクタ15,16と、交流電源1が喪失したときに蓄電池設備2の端子電圧を昇圧しつつ、コンデンサ13およびインバータ14に供給する昇圧チョッパ17または昇圧チョッパ18とを備えている。
【0004】
図3に示した無停電電源装置10では、交流電源1が健全なときにはコンタクタ11,15が閉路状態、コンタクタ16が開路状態にあり、交流電源1→コンバータ12→コンデンサ13,インバータ14→単相負荷3の経路により単相負荷3に給電している。
【0005】
また、交流電源1に停電など不具合が発生し、交流電源1が喪失したときにはこれを検知して、コンタクタ15,16が閉路状態、コンタクタ11が開路状態となり、蓄電池設備2→昇圧チョッパ17または昇圧チョッパ18→コンデンサ13,インバータ14→単相負荷3の経路で単相負荷3への給電を継続する。
【0006】
図4は、この発明の従来例としての昇圧チョッパ17の詳細回路構成図である。
【0007】
この昇圧チョッパ17はコンデンサ21、電流検出器22、リアクトル23、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)24、ダイオード25,26、電圧検出器27、電圧制御回路30、ゲート駆動回路31、過電流保護回路32から形成されている。
【0008】
図4に示した昇圧チョッパ17では、ゲート駆動回路31からの駆動信号によりIGBT24がオンしているときに、蓄電池設備2のプラス端子→リアクトル23→IGBT24→蓄電池設備2のマイナス端子の経路の電流により、リアクトル23にエネルギーが蓄えられ、その後、ゲート駆動回路31からの駆動信号によりIGBT24がオンからオフに変化すると、蓄電池設備2の端子電圧にリアクトル23が蓄えた前記エネルギーに基づく電圧を重畳しつつ、ダイオード26を介してコンデンサ13およびインバータ14に供給するように動作する。
【0009】
従って、交流電源1が喪失したときにはこれを検知し、電圧制御回路30では、交流電源1が健全なときのコンバータ12の出力電圧に基づくコンデンサ13の両端電圧に対応する電圧設定値と、電圧検出器27を介して得られたコンデンサ13の両端電圧の検出値との偏差を零にする調節演算を行い、この演算結果に基づくPWM(パルス幅変調)演算を行っている。このPWM演算結果としてのIGBT24へのオン・オフ信号はゲート駆動回路31に伝達される。
【0010】
すなわち、電圧制御回路30ではコンデンサ13の両端電圧をより高くするときには、前記PWM演算の1周期中のIGBT24へのオン信号の発生区間を増大させ、一方、コンデンサ13の両端電圧をより低くするときには、前記PWM演算の1周期中のIGBT24へのオン信号の発生区間を減少させる制御動作を行っている。
【0011】
なお、過電流保護回路32は、この昇圧チョッパ17が動作中の蓄電池設備2からの電流を電流検出器22により監視し、インバータ14の不具合や単相負荷3の短絡事故などに起因して、この監視した電流が過大になると、蓄電池設備2や昇圧チョッパ17自身の損傷などを回避するために、ゲート駆動回路31に停止信号を伝達し、IGBT24をオフ状態にするために設けられている。
【特許文献1】特開平7−87686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図3に示した無停電電源装置10は、パソコンなどの電源に供するために、小型化が要請されている。そのため、蓄電池設備2と一体化した構造で商品化されている例もある。
【0013】
図3に示した無停電電源装置10における昇圧チョッパ17又は昇圧チョッパ18も、上述の要請に答え、特に、単位電池の直列接続個数を少なくできることから、蓄電池設備2の小型化に対処するものである。
【0014】
図4に示す昇圧チョッパ17において、電流検出器22を介して得られる電流検出値には直流成分と、インバータ14から単相負荷3に供給される単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流と、IGBT24のスイッチングリプル電流とが含まれている。
【0015】
なお、コンデンサ21は、主として、前記IGBT24のスイッチングリプル電流が蓄電池設備2から流れるのを抑制するために設置されている。
【0016】
また、インバータ14の出力である単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流は、交流電源1が健全なときのコンバータ12から流れる電流でもあることから、この2倍周波数成分電流を抑制しつつ、単相負荷3が急変したときにも安定した単相交流電圧をインバータ14から出力するためには、コンデンサ13の容量を増大させることが効果的である。
【0017】
しかしながら、コンデンサ13の容量の増大は、この無停電電源装置10の小型化を阻害するものであり、従って、従来はコンデンサ13の容量の増大を極力抑えつつ、この対応策に伴うコンデンサ13の両端電圧の変動の増大分は、インバータ14の出力電圧調節手段で吸収することが行われていた。
【0018】
一方、交流電源1が喪失したときに供される蓄電池設備2において、このときの蓄電池設備2から流れるリプル電流としての前記2倍周波数成分電流に起因した自己発熱は、蓄電池設備2の寿命に影響を与えることが知られている。すなわち、コンデンサ13の容量と蓄電池設備2の寿命とはトレードオフの関係にある。
【0019】
この発明の目的は、上記問題点を解消する無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この第1の発明は外部の交流電源の電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、該コンバータの出力電圧を平滑するコンデンサと、該コンデンサの両端電圧を所望の周波数・振幅の単相交流電圧に変換して出力するインバータと、前記交流電源が喪失したときに外部に備える蓄電池設備の端子電圧を昇圧しつつ、前記コンデンサおよびインバータに供給する昇圧チョッパとを備えた無停電電源装置において、
前記動作中の昇圧チョッパに、前記蓄電池設備から流れる前記インバータが出力する単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流を抑制する電流抑制制御手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、第2の発明は前記第1の発明の無停電電源装置において、
前記電流抑制制御手段は、前記蓄電池設備から流れる電流の検出値から前記2倍周波数成分電流を抽出し、この抽出した値に予め設定したゲイン(K)を乗算演算した値を抑制指令値とし、該抑制指令値を前記昇圧チョッパの昇圧動作のための電圧調節演算値に加算するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、前記昇圧チョッパに蓄電池設備から流れる前記インバータが出力する単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流を蓄電池設備の許容値以内に抑制することができ、その結果、前記コンデンサの容量を少なくできるとともに、前記蓄電池設備の長寿命化が計れ、特に、前記無停電電源装置と蓄電池設備とを一体化した構造での小型化が計れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、この発明の実施例としての昇圧チョッパ18の詳細回路構成図である。この図において、図4に示した従来の昇圧チョッパ17の構成要素と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0024】
すなわち、この昇圧チョッパ18には、電圧制御回路30に代えて、図2に示す回路構成の電圧制御回路40が備えられている。
【0025】
この電圧制御回路40の動作を、以下に説明する。
【0026】
先ず、交流電源1が健全なときのコンバータ12の出力電圧に基づくコンデンサ13の両端電圧に対応する電圧設定値は設定器41により設定され、この電圧設定値と電圧検出器27を介して得られたコンデンサ13の両端電圧の検出値との偏差を加算演算器42で求め、求めた偏差を零にする調節演算を、例えば、PI(比例―積分)回路からなる電圧調節器43で行い、この演算結果は加算演算器44を介してPWM演算器45に入力される。このPWM演算器45では入力された電圧値に基づくPWM(パルス幅変調)演算を行っている。このPWM演算結果としてのIGBT24へのオン・オフ信号はゲート駆動回路31に伝達される。
【0027】
すなわち、従来の電圧制御回路30と同様に、この電圧制御回路40では上述の構成要素により、コンデンサ13の両端電圧をより高くするときには、前記PWM演算の1周期中のIGBT24へのオン信号の発生区間を増大させ、一方、コンデンサ13の両端電圧をより低くするときには、前記PWM演算の1周期中のIGBT24へのオン信号の発生区間を減少させる制御動作を行っている。
【0028】
また、電圧制御回路40には、この発明の電流抑制制御手段としての第1LPF(ローパスフィルタ)46,第2LPF(ローパスフィルタ)47,加算演算器48,設定器49,乗算演算器50および加算演算器44を備えている。
【0029】
すなわち、上述の動作中の昇圧チョッパ18において、電流検出値22の検出値に含まれる直流成分,前記2倍周波数成分電流,IGBT24のスイッチングリプル電流のうち、第1LPF46では前記スイッチングリプル電流の周波数以上の周波数成分電流を除去する特性を持たせている。また、第2LPF47では前記2倍周波数以上の周波数成分電流を除去する特性、すなわち、前記2倍周波数成分電流とスイッチングリプル電流とを除去する特性を持たせている。
【0030】
従って、加算演算器48の演算出力値には前記直流成分も除去され、インバータ14から単相負荷3に供給される単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流のみとなっている。さらに、乗算演算器50では設定器49で設定されたゲイン(K)と、加算演算器48から出力された前記2倍周波数成分電流との乗算演算を行い、この乗算演算値は加算演算器44により、先述の電圧調節器43で得られた調節演算値に加算されてPWM演算器45に入力される。
【0031】
すなわち、前記ゲイン(K)の極性は前記調節演算値に対してフィードフォワード特性を有するように設定すればよく、また、該ゲイン(K)の値は蓄電池設備2から流れる前記2倍周波数成分電流を蓄電池設備2の許容値以内に抑制するように設定すればよい。
【0032】
その結果、昇圧チョッパ18を用いたこの発明の無停電電源装置10では、コンデンサ13の容量を低減でき、また、蓄電池設備2の長寿命化も計れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施例を示す無停電電源装置の部分詳細回路構成図
【図2】図1の部分詳細回路構成図
【図3】無停電電源装置のブロック構成図
【図4】従来例を示す無停電電源装置の部分詳細回路構成図
【符号の説明】
【0034】
1…交流電源、2…蓄電池設備、3…単相負荷、10…無停電電源装置、11…コンタクタ、12…コンバータ、13…コンデンサ、14…インバータ、15,16…コンタクタ、18,19…昇圧チョッパ、21…コンデンサ、22…電流検出器、23…リアクトル、24…IGBT、25,26…ダイオード、27…電圧検出器、30…電圧制御回路、31…ゲート駆動回路、32…過電流保護回路、40…電圧制御回路、41…設定器、42…加算演算器、43…電圧調節器、44…加算演算器、45…PWM演算器、46…第1LPF,47…第2LPF、48…加算演算器、49…設定器、50…乗算演算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の交流電源の電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、該コンバータの出力電圧を平滑するコンデンサと、該コンデンサの両端電圧を所望の周波数・振幅の単相交流電圧に変換して出力するインバータと、前記交流電源が喪失したときに外部に備える蓄電池設備の端子電圧を昇圧しつつ、前記コンデンサおよびインバータに供給する昇圧チョッパとを備えた無停電電源装置において、
前記動作中の昇圧チョッパに、前記蓄電池設備から流れる前記インバータが出力する単相交流電圧の基本波周波数の2倍周波数成分電流を抑制する電流抑制制御手段を備えたことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無停電電源装置において、
前記電流抑制制御手段は、
前記蓄電池設備から流れる電流の検出値から前記2倍周波数成分電流を抽出し、
この抽出した値に予め設定したゲイン(K)を乗算演算した値を抑制指令値とし、
該抑制指令値を前記昇圧チョッパの昇圧動作のための電圧調節演算値に加算するように構成したことを特徴とする無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161844(P2010−161844A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1256(P2009−1256)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】