説明

無極性および半極性の窒化物基板の面積を増加させる方法

異なる、かつ非直角の成長方向に、膜を互いの上部に重ねて成長させることによって、複数の膜を積み重ねるステップを含む、増加した表面積を有する高品質で自立型の無極性および半極性の窒化物基板を産生するための方法である。この方法は、(a)III族窒化物を自立型(FS)III族基板の第一面の上に成長させることであって、該III族窒化物は無極性または半極性であり、該第一面は無極性または半極性の面であり、該FSIII族基板は、500ミクロンを超える厚さを有する、ことと、(b)該III族窒化物の頂面を得るために、第二面に沿って該III族窒化物をスライス、または研磨することであって、該第二面は無極性または半極性の面であり、該III族窒化物の該頂面は、該無極性または半極性のIII族窒化物基板を備える、こととを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、同時係属であって同一人に譲渡された米国仮特許出願第60/973,656号(2007年9月19日出願、名称「METHOD FOR INCREASING THE AREA OF NONPOLAR AND SEMIPOLAR NITRIDE SUBSTRATES」、発明者(Asako Hirai、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamura)、代理人整理番号30794.242−US−P1(2007−675−1))の米国特許法第119条第(e)項の優先権の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、大面積で高品質な自立型(FS)の無極性および半極性の窒化物基板を産生するための手法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の記述)
窒化ガリウム(GaN)、およびアルミニウムおよびインジウムを組み込んだその三元および四元化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)の有用性が、可視および紫外光の電子素子および高出力の電子素子の製造について実証されてきた。これらの化合物は、本明細書では、III族窒化物またはIII−窒化物、あるいは単なる窒化物と呼ばれ、または(Al、Ga、In)N、またはAl(1−x−y)InGaN、ここで、0≦x≦1および0≦y≦1によって示される。これらの素子は、一般的に、分子ビームエピタキシ(MBE)、金属有機化学蒸着(MOCVD)、および水酸化物気相エピタキシ(HVPE)を含む成長手法を使用して、エピタキシャルに成長させられる。
【0004】
GaNおよびその合金は、六方晶ウルツ鉱型結晶構造において最も安定しており、その構造は、互いに対して120度回転した2つ(または3つ)の等価な基底面軸(a軸)によって示され、その全てが固有のc軸に対して垂直である。III族および窒素原子は、結晶のc軸に沿ってc面を交互に占有する。ウルツ鉱型構造に含まれる対称要素は、III族窒化物がこのc軸に沿ってバルク自発分極を有し、また、ウルツ鉱型構造が固有の圧電分極を呈することを決定付ける。
【0005】
現在の電子および光電子素子のための窒化物技術は、極性c方向に沿って成長させる窒化物膜を利用している。しかしながら、III族窒化物に基づく光電子および電子素子における従来のc面の量子井戸構造は、強力な圧電および自発分極の存在に起因する、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)が欠点である。c方向に沿った強い内蔵電場は、電子およびホールの空間的分離を引き起こし、その結果、キャリア再結合効率の制限、振動子強度の低下、および赤方偏移放射を生じさせる。
【0006】
GaN光電子素子における自発および圧電分極効果を排除する1つの手法は、結晶の非極性面上に素子を成長させることである。そのような面は、等しい数のGaおよびN原子を含み、かつ電荷中立である。さらに、次の無極性層は、互いに等価であるので、バルク結晶が成長方向に沿って分極化されることはない。GaNにおける対象等価の無極性面の2つのそのような族は、集合的にa面として知られる{11−20}族、および集合的にm面として知られる{10−10}族である。残念なことに、窒化物業界の研究者によって進歩したにもかかわらず、高品質な無極性および半極性GaNのヘテロエピタキシャル成長、および高性能な素子の製造には課題が残っており、III族窒化物産業にはまだ広く採用されていない。他方では、高品質な無極性および半極性の自立型(FS)GaN基板上にホモエピタキシャル成長させる高性能な素子での成功にもかかわらず、基板面積が狭いために、III族窒化物産業への広い採用を難しくしている。
【0007】
他の分極の要因は、圧電分極である。これは、材料が圧縮または引張歪みを受ける時に生じるものであり、異なる組成物(したがって、異なる格子定数)の(Al、In、Ga、B)N層が窒化物へテロ構造で成長する時に生じ得る。例えば、GaNテンプレート上の薄いAlGaN層は、面内に引張歪みを有し、GaNテンプレート上の薄いInGaN層は、面内に圧縮歪みを有することになるが、どちらもGaNへの格子整合に起因するものである。したがって、GaN上のInGaN量子井戸について、圧電分極は、InGaNおよびGaNの自発分極の方向とは反対の方向を示すことになる。GaNに格子整合するAlGaN層について、圧電分極は、AlGaNおよびGaNの自発分極の方向と同じ方向を示すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
c面窒化物上で無極性または半極性の面を使用する利点は、全分極がゼロになる(無極性)か、または低減される(半極性)ことである。特定の面上、例えば半極性面上の特定の合金組成については、ゼロ分極であることもあり得る。本発明は、無極性および半極性の基板の増加した面積に対する必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の制限を克服し、かつ本明細書を読み取って理解した時に明らかとなる他の制限を克服するために、本発明は、複数のスライスおよび成長ステップを介して、大面積かつ高品質なFS無極性および半極性窒化物基板を産生するための手法を説明する。1つの新規な特徴は、薄膜の成長ステップの成長方向を変化させることによって、無極性または半極性の基板の利用可能な表面積を幾何学的に増加させるステップを含む。
【0010】
本発明は、増加した表面積を有する、無極性または半極性のIII族窒化物基板を製作するための方法であって、(a)III族窒化物をFSIII族基板の第一面の上に成長させるステップであって、III族窒化物は、無極性または半極性であり、第一面は、無極性または半極性の面であり、FSIII族基板は、500ミクロンを超える代表的な厚さを有する、ステップと、(b)第二面であるIII族窒化物の頂面を得るように、第二面に沿ってIII族窒化物をスライスまたは研磨するステップであって、III族窒化物は、頂面を有するIII族窒化物を含み、第二面は、無極性または半極性の面である、ステップとを含む方法を開示する。例えば、第一面は半極性の面であってもよく、第二面は無極性の面であってもよい。
【0011】
一実施形態では、第一面は、FSIII族窒化物基板のスライス表面であり、スライス表面は、c面に対して第一の角度にあり、かつIII族窒化物の成長方向を決定し、スライス表面の幅は、第一の角度の正弦で割った第一の基板の厚さである。例えば、FSIII族窒化物基板は、FSIII窒化物から第一の角度でスライスされ、FSIII窒化物は、c配向を有し、c面は、FSIII族窒化物の表面である。別の実施形態では、III族窒化物をスライスするか、または研磨するステップは、第一面に対して第二の角度にある。この場合、第一の角度と第二の角度との合計は、III族窒化物基板の頂面の結晶配向を決定する。例えば、合計は、m面配向を達成するように、90度であってもよい。
【0012】
さらに別の実施形態では、FSIII族窒化物基板上に積み重ねられたIII族窒化物と、III族窒化物およびFSIII族窒化物基板を含む頂面とを含む、III族窒化物基板を得るように、III族窒化物およびFSIII族窒化物を第二面に沿ってスライスする、または研磨する。
【0013】
III族窒化物の厚さは、市販のIII族窒化物基板の厚さよりも厚くなり得る。
【0014】
一般的に、第一面の表面積と比較して第二面の表面積を拡大するために、第二面は、FSIII族窒化物基板の第一面に対して実質的に非直角とすべきである。より具体的には、第二面が無極性の面となるよう選択された場合、成長方向は、c面に対して直角である無極性の面の表面積と比較して、第二面の表面積を拡大するために、c面に対して非直角とすべきである。計算は、第二面は、c面に対して直角である無極性の面の表面積よりも少なくとも2hMAX2倍だけ大きくなり得、hMAX2は、III族窒化物の厚さである。
【0015】
本発明はさらに、当該方法を使用して製造される素子を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、同じ参照符号が対応する要素を示す、複数の図面を参照する。
【図1A】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1B】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1C】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1D】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1E】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1F】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図1G】図1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、1(f)、および1(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの一実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(a)〜(c)によって示される。
【図2A】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2B】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2C】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2D】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2E】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2F】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図2G】図2(a)、2(b)、2(c)、2(d)、2(e)、2(f)、および2(g)は、c面GaN(GaN−1)から開始して、半極性GaN(GaN−2,2’)を使用し、その結果として無極性FS基板(GaN−3)が得られる、2ステップのプロセスフローの別の実施例を示す概略図であり、図中、角度θ、θを最適化するための数値計算は、図3(d)によって示される。
【図3A】図3(a)は、nの関数として、基底面に対する半極性面{10−1n}の計算角度θ(度)をプロットした図であり、図中、n=1、2、3、4、および5に対して、それぞれ、θ=61.9434度、43.1715度、32.0226度、25.1295度、および20.5686度である。
【図3B】図3(b)は、nの関数として、実施例1について、ミリメートル(mm)を単位にしてh2hおよびh2wをプロットした図である。
【図3C】図3(c)は、mmを単位にしてhをプロットした図であり、図中、nの関数として、h2H≦h2Wならばh=h2Hであり、h2H>h2Wならばh=h2Wである。
【図3D】図3(d)は、nの関数として、実施例2について、mmを単位にして試料の幅hをプロットした図であり、図中、n=1、2、3、および4に対して、それぞれ、h=7.35172mm、8.64655mm、9.2392mm、および9.52675mmである。
【図4】図4は、本発明の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の発明を実施するための最良の形態では、本発明の一部を形成し、本発明を実施することが可能な特定の実施形態を図示するために示される添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0018】
(概要)
従来、窒化物膜は、直径2インチ(約50.8mm)の基板上でc方向に成長させられる。まだGaNのバルク結晶を利用することができないので、以降の素子再成長のために、単純に結晶を切断して、任意の大きい表面を提供することは不可能である。現在、市販のFS GaN基板は、HVPEによってc方向に向かって成長させた厚膜からスライスされる断片である。c面GaN厚膜の場合、スライス角度は、任意に選択した結晶面、すなわち、水平(c面)、垂直(無極性面)、または基板表面に対する角度(半極性面)に応じて異なる。したがって、FS無極性または半極性のGaN基板の基板面積は、成長させる結晶のc方向の厚さによって制限される。
【0019】
無極性および半極性の窒化物半導体の成長、例えばGaNの{10−10}および{11−20}(それぞれ、無極性のm面およびa面)、および{10−11}{10−13}、および{11−22}(半極性)面は、ウルツ鉱型構造のIII族窒化物素子構造における分極効果を低減する手段を提供する。現在の窒化物素子は、極性[0001]c方向に成長させられるので、[0001]c方向に沿って量子井戸内に電荷分離が生じる。結果として生じる分極場は、現在の最先端の技術である光電子素子の性能に不利益である。無極性または半極性方向に沿ったこれらの素子の成長は、伝導方向に沿った内蔵電場を低減することによって、素子の性能を大幅に向上させ得る。
【0020】
これまで、素子の成長における基板としての使用に好適な無極性および半極性の窒化物の、大面積かつ高品質なFS GaN基板を作製することに対して、いかなる手段も存在しなかった。本発明の新規な特徴は、ブール(boule)からスライスされた無極性および半極性FS窒化物基板の面積を増加させる、複数の成長ステップを伴う新しい幾何学的方法である。「ブール」という用語は、本発明を使用してその面積を拡大させた、最終的な結晶面以外の結晶方向に成長したバルク結晶を指す。例えば、本発明は、GaN基板のFS{10−10}、{11−20}、{10−11}、{10−13}、および{11−22}面の拡張を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、単にこれらの実施例だけに限定されない。本発明は、全ての窒化物の無極性および半極性の面に関する。
【0021】
(技術的説明)
本発明は、FS GaN基板の表面積を幾何学的に拡大するために、厚いGaN成長の種々の成長方向(結晶面)と、その後のスライス角度とを組み合わせる。最終的な結晶面の表面積を拡大するために、事前の基板表面に対して非直角である、異なる成長方向を伴う複数の成長ステップを利用することは、半導体成長においては極めてまれである。
【0022】
本発明は、図1(a)〜(g)および図2(a)〜(g)に示される実施例について、推定される面積増大を計算する。どちらの事例も、2ステップの成長/スライスプロセスを取り扱い、異種基板102上で欠陥低減したc面GaN成長(GaN−1)100から始まり、半極性GaN成長(GaN−2、2’)106、108を経由して、FS無極性GaN(GaN−3)104の最終的な寸法を拡大する。
【0023】
図1(a)〜(g)および図2(a)〜(g)は、増加した表面積を有する、無極性または半極性のIII族窒化物基板104を製造するための方法を示しており、(a)III族窒化物108を自立型(FS)III族基板106の第一面110の上に成長させるステップであって、III族窒化物108は、無極性または半極性であり、第一面110は、無極性または半極性の面であり、FSIII族基板106は、一般的に500ミクロンを超える厚さh(しかし、他の厚さhも可能である)を有する、ステップと、(b)第二面112であるIII族窒化物108の頂面を得るために、第二面112に沿ってIII族窒化物108をスライスまたは研磨するステップであって、III族窒化物基板104は、頂面を有するIII族窒化物108を備え、第二面112は、無極性または半極性の面である、ステップとを含む。
【0024】
一実施形態では、無極性または半極性の面110は、FSIII族基板106のスライス表面114であり、スライス表面114は、1つ以上のc面116a、116bに対して第一の角度θであり、かつ無極性または半極性のIII族窒化物108の成長方向118(すなわち、例えば半極性方向、m方向、またはa方向)を決定し、スライス面114の幅hは、第一の角度θの正弦で割ったFSIII族窒化物基板106の厚さhMAX1である。FSIII族窒化物基板106は、FSIII族窒化物100から第一の角度θでスライスされる場合もあり、FSIII族窒化物100は、c配向を有し、c面116a、116bは、FSIII族窒化物100の表面120a、120bである。
【0025】
別の実施形態では、無極性または半極性のIII族窒化物108のスライスまたは研磨は、FSIII族窒化物基板106の無極性または半極性面110に対して第二の角度θである。
【0026】
さらに別の実施形態では、FSIII族窒化物基板106上に積み重ねられたIII族窒化物108と、III族窒化物108およびFSIII族窒化物基板106を含む頂面と、を含む、III族窒化物基板104を得るように、第二面112に沿ってIII族窒化物108およびFSIII族窒化物基板106をスライスする。
【0027】
一般的に、第二面112は、第一の面110の表面積と比較して、第二面112の表面積を拡大するために、FSIII族窒化物基板106の第一面110に対して実質的に非直角とすべきである。より具体的には、第二面112が無極性面となるように選択された場合、成長方向118は、c面116b、116aに対して直角である無極性面122の表面積と比較して、第二面112の表面積を拡大するために、c面116b、116aに対して実質的に非直角である。実際に、後者の場合、計算では、第二面112が、c面116a、116bに対して直角である無極性面122の表面積よりも2hMAX2倍大きい表面積を有し得ることを示している(hMAX2は、半極性III族窒化物108の厚さである)。
【0028】
(実施例1)
図1(a)〜(g)は、本発明の好適な実施形態によるプロセスステップを示している。これらのプロセスステップは、以下を含む。
【0029】
1.図1(a)に示されているように、基板102上で、c面GaN成長(GaN−1)100を、hMAX1の厚さまで厚くする。ここで、Φは、GaN−1ウエハ100の直径、2インチ(約50.8mm)である。
【0030】
2.図1(b)に示されているように、c面GaN−1 100の厚さhMAX1を残して、基板102を取り除く。
【0031】
3.図1(c)に示されているように、表面114を有するスライス半極性基板GaN−2 106を形成するように、c面GaN−1 100から、半極性面110に沿って角度θで膜124をスライスする。これは、スライス半極性基板GaN−2 106の上面図である図1(d)に示されているように、幅がh=hMAX1/sinθである半極性面110である。
【0032】
4.図1(e)に示されているように、半極性成長GaN−2’108を形成するように、GaN−2 106の表面114上に厚さhMAX2の半極性GaNを成長させる(すなわち、半極性方向118に成長させて、GaN108の頂面126aおよび底面126bを達成する。ここで、表面126a、126bは、半極性面110に平行な半極性面である)。
【0033】
5.図1(f)に示されているように、半極性面112に沿って角度θで半極性GaN成長GaN−2’108をスライスし、結果として、スライス基板GaN−3 104の上面図である図1(g)に示されているように、スライス基板GaN−3 104を得る。スライス基板GaN−3 104は、h=hMAX2/sinθの幅を有する無極性面112である、頂面128を有する。
【0034】
図1(a)〜(g)は、図1(c)に示されている半極性FS基板106の厚さhが、市販の基板の通常の範囲内で、一般的に250〜400μmである時の事例を説明している。この場合、面積拡大は、hMAX2のおよそ2倍になるものと予想される。例えば、無極性面112である表面128の面積は、無極性面122の面積よりも2MAX2倍大きいが、無極性面122は、GaN−1 100を角度θでスライスし、GaN−2 106の表面114上に成長させ、角度θでGaN−2 108をスライスすることによって作製しなかった、表面130である。
【0035】
数値計算は、hMAX1=hMAX2=5mmで、第一のスライス角度θが、<0001>c方向(すなわち、n〜2)に向かってわずかなミスカットを伴う{10−11}半極性面112として選択され、nが{10−1n}で表される半極性面のミラー定数である時に、FS無極性GaN104の最大幅hが、約8mmであることを明らかにした。
【0036】
(実施例2)
図2(a)〜(g)も同様に、本発明の好適な実施形態によるプロセスステップを示している。これらのプロセスステップは、
1.図2(a)に示されているように、基板102上で、c面GaN成長(GaN−1)100を、hMAX1の厚さまで厚くする。
【0037】
2.図2(b)に示されているように、c面GaN−1 100の厚さhMAX1を残して、基板102を取り除く。
【0038】
3.図2(c)に示されているように、表面114を有するスライス半極性基板GaN−2 106を形成するように、c面GaN−1 100から、半極性面110に沿って角度θで膜124をスライスする。これは、スライス半極性基板GaN−2 106の上面図である図2(d)に示されているように、幅がh=hMAX1/sinθである半極性面110である。スライス半極性基板GaN−2 106は、高さhを有する。
【0039】
4.図2(e)に示されているように、半極性成長GaN−2’108を形成するように、GaN−2 106の(半極性面110である)表面114上に厚さhMAX2の半極性GaNを成長させる(半極性方向118に沿って成長させて、半極性面110に対して平行な半極性面である頂面126aを達成する)。
【0040】
5.図2(f)に示されているように、半極性面112に沿って角度θで半極性GaN成長GaN−2’108およびGaN−2 106をスライスし、結果として、スライス基板GaN−3 104の上面図である図2(g)に示されているように、スライス基板GaN−3 104を得る。スライス基板GaN−3 104は、次式で表される幅を有する無極性面112である、上面128を有する。
【0041】
=(hMAX2+h)/sinθ
図2(a)〜(g)は、図2(c)に示されている半極性FS基板106の厚さhが、上記の図1(c)に示されている半極性FS基板106の厚さhよりも厚くなり、よって、図2(g)に示されている無極性GaN104最終的な寸法(すなわち、表面128の面積)が、図1(g)に示されている表面128の面積よりも大きくなる時の事例を説明している。実施例2の数値計算(下記参照)は、図2(a)〜(g)の場合のFS無極性GaN104の最大幅hが、hMAX1=hMAX2=5mmである時に、約9mmとなり、商業的な素子製造に十分な幅の広さであることを明らかにした。図2(g)には、GaN106とGaN108との間のホモエピタキシャル界面130も示されている。
【0042】
本発明に最も好都合な成長方法は、HVPEであるが、これは、mm厚に成長中の貫通転位(TD)の消滅により、成長方向がc方向に向かう時に積み重ね欠陥を生じることなく、低TD密度(〜10cm−2)で結晶を産生することが証明されている。
【0043】
本発明は、図1(a)〜(g)および図2(a)〜(g)に示されている実施例に限定されない。他の半極性面が関与する追加的な成長ステップにより、最終的な結晶面112の寸法がさらに拡大するであろう。無極性方向118に沿った成長108、106が無極性である場合、表面114、126a、126bは、無極性である。サファイア基板102は、図2(c)のスライスステップの前に取り除いてもよいが、FS−GaN基板106は、図2(f)のスライスステップの前に取り除かない。
【0044】
(θおよびθを最適化するための数値計算)
図3(a)は、nの関数として、半極性面{10−1n}の計算角度θをプロットし図であり、スライス角度θは、選択した半極性面110に対するθとなるように選択され、θは、GaN−1 100のc面116bである基底面に対する角度であり、次式で表される(基底面とは、正方晶または六方晶構造において、主軸に対して垂直な面である)。
【0045】
【数1】

図3(b)は、h2H=hMAX2/sinθまたはh2W=h/cosθ、θ=θ、h=hMAX1/sinθ、およびθ=90°−θを用いて、nの関数として、実施例1についてh2Hおよびh2Wをプロットした図である。図3(c)は、hをプロットした図であり、h2H≦h2Wならばh=h2Hであり、h2H>h2Wならばh=h2Wである。
【0046】
図3(d)は、実施例2について試料の幅hをmmでプロットした図であり、hSMAX=hMAX1cosθ−hMAX1sinθ、およびh=(hSMAX+hMAX2)/sin(90−θ)である。
【0047】
(プロセスステップ)
図4は、本発明の方法を示すフローチャートである。FS GaNの面積拡大について、ブロック132に示されているように、軸上のc面(0001)GaN100の厚膜を、基板102上に最初に成長させる。ブロック134に示されているように、軸上またはミスカットのFS半極性GaN基板106を、角度θでc−GaN厚膜100からスライスし、次いで、ブロック136に示されているように、半極性面成長のために研磨する。次に、ブロック138に示されているように、半極性GaN108の厚膜を、上述したFS半極性GaN基板106上に成長させる。ブロック140に示されているように、軸上またはミスカットのFS無極性GaN基板104を、(本ステップでm面を産生し、θ+θ=90°を満たすように)角度θで半極性GaN厚膜108(または108および106)からスライスし、次いで、ブロック142に示されているように、研磨してエピレディ表面128を生じさせる。ブロック144は、拡大した表面積128を伴う、無極性III族窒化物基板104である、本方法の結果を示す。ここではc面GaN 100を出発膜として選択したが、出発膜100については他の結晶面116aも可能である。このような事例では、成長/スライス/研磨シーケンスのプロセス繰り返し数、およびスライスステップの角度(例えば、θ、θ)を、表面128の所望の結晶配向146に応じて、適宜に変えなければならない。例えば、適宜に選択したθ、θによって、ブロック138は、無極性GaN成長に関与し得、ブロック140は、半極性基板のスライスに関与し得る。したがって、第一の角度θおよび第二の角度θの合計は、頂面128の結晶配向146を決定し得る。厚さ148を有するIII族窒化物104は、III族窒化物106、108からスライスしてFS基板とすることができる。
【0048】
(可能な修正および変更)
本発明の範囲は、上記に列記した特定の実施例だけを網羅するものではない。本発明は、全ての窒化物に関連する。例えば、本発明は、欠陥密度を低減した、AlN、InN、AlGaN、InGaN、またはAlInN FS基板の面積を拡大し得る。それでも、これらの実施例および他の可能性は、本発明の利益の全てを受ける。
【0049】
上述したプロセスステップは、単に、本発明をFS GaNの幾何学的な面積拡大に適用する1つの方法について有用となることが予想される、一連の条件を説明したに過ぎない。最終的な非c面の面積128を効果的に拡大し得る、他の可能なスライス角度が存在する。また、複数の結晶面に複数の成長ステップを用いて、最終的な結晶面128の面積拡大を達成することも可能であり、その全てが、大面積かつ欠陥を低減した無極性または半極性のFS GaN基板104を生成することになる。例えば、n型層、p型層、レーザー、発光ダイオード、またはトランジスタ活性層等の、無極性または半極性の素子層を、基板104の表面128上に成長させることができる。
【0050】
無極性または半極性III族窒化物108の厚さhMAX2は、市販のIII族窒化物基板の厚さよりも厚くすることができる。
【0051】
(結び)
本節は、本発明の好適な実施形態の説明を結ぶものである。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、図解および説明のために示したものである。本記述は、本発明を完全なものとすること、または開示された精密な形態に限定することを意図するものではない。上述の教示を考慮すれば、多数の修正および変更が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって限定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増加した表面積を有する、無極性または半極性のIII族窒化物基板を製造するための方法であって、
(a)III族窒化物を自立型(FS)III族基板の第一面の上に成長させることであって、該III族窒化物は無極性または半極性であり、該第一面は無極性または半極性の面であり、該FSIII族基板は、500ミクロンを超える厚さを有する、ことと、
(b)該III族窒化物の頂面を得るために、第二面に沿って該III族窒化物をスライスまたは研磨することであって、該第二面は無極性または半極性の面であり、該III族窒化物の該頂面は、該無極性または半極性のIII族窒化物基板を備える、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第一面は半極性の面であり、前記第二面は無極性の面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FSIII族窒化物基板上に積み重ねられた前記III族窒化物と、該III族窒化物および該FSIII族窒化物基板を含む前記頂面とを含む、前記無極性または半極性のIII族窒化物基板を得るために、該III族窒化物および該FSIII族窒化物基板をスライスまたは研磨することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記III族窒化物は、市販のIII族窒化物基板よりも厚い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)前記第一面は、前記FSIII族窒化物基板のスライス表面であり、
(2)該スライス表面は、c面に対して第一の角度にあり、かつ該III族窒化物の成長方向を決定し、
(3)該スライス表面の幅は、該第一の角度の正弦で除した前記第一の基板の厚さである
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
FSIII窒化物から前記第一の角度でスライスされた前記FSIII族窒化物をさらに備え、該FSIII族窒化物はc配向を有し、前記c面は該FSIII族窒化物の表面である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記III族窒化物を前記スライスまたは研磨することは、前記第一面に対して第二の角度における、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の角度と前記第二の角度との合計は、前記III族窒化物の前記頂面の結晶配向を決定するように選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記合計は、90度である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第二面は無極性の面であり、前記成長方向は、前記c面に対して直角である無極性の面の表面積と比較して該第二面の表面積を拡大するために、該c面に対して非直角である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記第二面は、前記c面に対して直角である前記無極性の面の前記表面積よりも2hMAX2倍大きく、hMAX2は、前記III族窒化物の厚さである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一面の表面積と比較して前記第二面の表面積を拡大するために、該第二面は、該第一面に対して非直角である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法を使用して製造される素子。
【請求項14】
増加した表面積を有する無極性および半極性の窒化物基板であって、
(a)自立型(FS)III族基板の第一面上に成長させられるIII族窒化物であって、該III族窒化物は無極性または半極性であり、該第一面は無極性または半極性の面であり、該FSIII族基板は500ミクロンを超える厚さを有する、III族窒化物を備え、
(b)該III族窒化物は、該III族窒化物の頂面を得るために、第二面に沿ってスライスまたは研磨され、該第二面は無極性または半極性の面であり、該III族窒化物の該頂面は、該無極性または半極性のIII族窒化物基板を備える、窒化物基板。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図1G】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−539732(P2010−539732A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526010(P2010−526010)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/077072
【国際公開番号】WO2009/039408
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】