説明

無機物層の形成方法、樹脂組成物、フィルム状エレメント、積層体、プラズマディスプレイパネル用前面基板及びプラズマディスプレイパネル

【課題】 1回の焼成であっても、所定の凹凸パターンを有する無機物層を十分に高い精度で形成することができる無機物層の形成方法を提供すること。
【解決手段】 基板40上に、反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有する第1の樹脂組成物からなる第1層21を形成する第1層形成工程と、第1層21の基板40と反対側の面上に、無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる第2層61を形成する第2層形成工程と、第2層61を所定のパターンで露光する露光工程と、露光工程の後に第2層61を現像して、上記パターンを有するレジスト層62を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層62を第1層21とともに焼成して無機物層70を形成する焼成工程と、を備えることを特徴とする無機物層の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物層の形成方法並びにこれに用いるための樹脂組成物及びフィルム状エレメント、さらには無機物層を備える積層体、プラズマディスプレイパネル用前面基板及びプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板ディスプレイの1つとして、プラズマ放電により発光する蛍光体を複数種設けて多色表示を可能にしたプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;以下、「PDP」と略記する。)が知られている。PDPは、ガラス基板からなる前面板と背面板とが互いに平行にかつ対向して配設され、両者がその間に設けられたバリアリブにより一定の間隔に保持された構造を有しており、前面板、背面板及びバリアリブに囲まれた放電空間には、表示のための電極、誘電体層及び蛍光体等が付設されるとともに、放電のための放電ガスが封入されている。そして、PDPは、プラズマ放電によって放電ガスから発生した紫外線を吸収した蛍光体が発光することにより、多色表示する。このような構造を有するPDPは、例えば、ガラス基板上に電極及び誘電体層が設けられた前面基板と、ガラス基板上に電極及びバリアリブが設けられた背面基板とを、誘電体層及びバリアリブが互いに対向するように貼り合わせて得られる。この場合、背面基板において、バリアリブで形成された溝の底面及びバリアリブの壁面に蛍光体層が形成される。
【0003】
ところで、近年、蛍光体の塗布面積を大きくすることができる、セル型構造の放電空間を有するPDPが種々開発されている。このようないわゆるセル型のPDPの場合、放電ガスの導入路を確保するために、誘電体層に所定の凹凸パターンを形成させて、背面基板上のバリアリブとの間に隙間を形成する必要がある。
【0004】
このような凹凸パターンを有する誘電体層を形成する方法として、これまでに、2回の焼成を経る方法(以下、「2回焼成法」という場合もある。)が知られている。この2回焼成法では、まず、ガラス基板上に、誘電体材料としてガラスフリット等の無機物粒子を含有する樹脂組成物の層を形成した後、焼成により樹脂成分を除去して、平坦な表面を有する第1の無機物層部分を形成する。その後、第1の無機物層部分上にガラスフリット等の無機物粒子を含有する感光性樹脂組成物層を形成し、フォトリソグラフィー法により感光性樹脂組成物層の一部を除去して所定のパターンを有するレジスト層を形成した後、焼成によりレジスト層から樹脂成分を除去して、パターン化された第2の無機物層部分を形成する。そして、これら第1及び第2の無機物層部分で構成された無機物層を、誘電体層として用いる。このとき、誘電体層の表面には、第1の無機物層部分の平坦な表面を底面とし、パターン化された第2の無機物層部分の側面を壁面とする複数の溝が形成され、この複数の溝によって誘電体層に所定の凹凸パターンが形成される。
【0005】
しかし、上記2回焼成法の場合、所定の凹凸パターンを有する誘電体層を形成するまでに、500℃以上の温度を要する焼成工程を少なくとも2回経ることが必要であるため、設備の追加やエネルギー消費による製造コストの増加が問題となっていた。そこで、下地となる第1の無機物層部分とパターン化された第2の無機物層部分とを、1回の焼成で同時に形成する方法(以下、「1回焼成法」という場合もある。)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−197112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来の1回焼成法により所定の凹凸パターンを有する無機物層を誘電体層として形成する方法では、無機物層に形成される凹凸パターンに蛇行が発生するなど、凹凸パターンの精度が不十分であるために、結果として歩留まりが低下していた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、1回の焼成であっても、所定の凹凸パターンを有する無機物層を十分に高い精度で形成することができる無機物層の形成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる方法に用いるための樹脂組成物及びフィルム状エレメントを提供することを目的とする。さらに、本発明は、かかる方法により形成された無機物層を備えた積層体、プラズマディスプレイパネル用前面基板及びプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、無機物粒子を含有する樹脂組成物の層を焼成して無機物層を形成する場合、形成された無機物層のパターンは樹脂組成物の状態におけるパターンよりも収縮する。これは、焼成の際に、樹脂組成物中の樹脂成分が熱分解によって除去されるためである。本発明者らは、上記の特許文献1に記載の方法をはじめとする1回焼成法について詳細に検討した結果、従来の1回焼成法の場合、2回焼成法の場合と比較して、上記のような焼成時のパターン収縮の程度がより大きいことが、凹凸パターンの精度を低下させる主要因となっていることを見出した。2回焼成法の場合、第2の無機物層部分を形成する前に第1の無機物層部分が既に形成されており、この第1の無機物層部分がある程度の剛性を有していることによって、第2の無機物層部分が形成される際のパターンの収縮が抑制されるのに対して、1回焼成法の場合、パターン化された層と下地となる層の熱分解が同時に進行するため、パターンの収縮が大きくなって、形成される凹凸パターンの精度の低下を招くと考えられる。
【0010】
さらに、感光性の樹脂組成物の層から所定のパターンを有するレジスト層を形成する際に、パターン化されたレジスト層と下地の層との界面で剥離を生じやすかった。このような剥離があると、焼成時にパターン化された層が下地の層から遊離する。このことも、形成される無機物層の凹凸パターンの精度を低下させると考えられる。
【0011】
本発明者らは、上記の知見に基づいてさらに検討を行った結果、下地となる無機物層に着目し、この無機物層の前駆体としての樹脂組成物の層を、特定の成分を含む組成とすることにより、1回の焼成で下地となる無機物層とパターン化された無機物層とを同時に形成する場合であっても、収縮によるパターンの変形を十分に抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明の無機物層の形成方法は、基板上に、反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有する第1の樹脂組成物からなる第1層を形成する第1層形成工程と、第1層の基板と反対側の面上に、無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる第2層を形成する第2層形成工程と、第2層を所定のパターンで露光する露光工程と、露光工程の後に第2層を現像して、上記パターンを有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層を第1層とともに焼成して無機物層を形成する焼成工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記本発明の無機物層の形成方法によれば、1回の焼成であっても、所定の凹凸パターンを有する無機物層を十分に高い精度で形成することができる。これにより、焼成にかかる設備及びエネルギーコストを十分に低減できる。このような凹凸パターンの精度向上の効果は、主として以下のような作用によって得られると考えられる。
【0014】
すなわち、第1層が反応性二重結合を有するポリマーを含有しているために、上記露光工程において、第2層が所定のパターンで光硬化するとともに、第1層においても第2層と同様のパターンで光硬化がある程度進行して、第2層の下地となる部分の第1層が適度な剛性を有するものになると推測される。更に、焼成工程の際には、焼成時の熱によって第1層に含まれる熱硬化剤が反応性二重結合を有するポリマーを硬化させることにより、第1層全体の剛性が更に高水準まで高められると考えられる。そして、このように、焼成時に発生する樹脂パターンの収縮応力に対抗できる性質、すなわち剛性を、適切な時期に適切な場所で2回付与できることにより、焼成工程の際の第2層のパターン収縮が十分抑制されて、凹凸パターンの精度が飛躍的に向上したものと考えられる。
【0015】
なお、本発明によれば、凹凸パターンの周辺部に発生する凹部(深さ5μm以上)の度合いまでも十分低減できる水準で、凹凸パターンの精度の向上が実現可能となる。
【0016】
上記第1層形成工程においては、支持フィルム上に第1の樹脂組成物からなる層が設けられてなるフィルム状エレメントを、第1の樹脂組成物からなる層と基板とが隣接するように基板上に積層して第1層を形成することが好ましい。このようなフィルム状エレメントを用いると、第1の樹脂組成物を含有する塗工液を塗布及び乾燥する方法等に比べて、より短時間かつ簡便に第1層を形成することができる。
【0017】
また、上記基板の少なくとも一方面上に電極が設けられており、第1層形成工程において、基板の電極が設けられた側の面上に第1層を形成することが好ましい。これにより、本発明の無機物層の形成方法は、基板上に電極と所定の凹凸パターンが形成された無機物層とが設けられた積層体をより低コストで製造できる方法として利用することができる。得られる積層体は、PDPの前面基板の他、FED(電界放出型ディスプレイ)、無機EL等の薄型表示装置等において好適に用いることができる。
【0018】
第1の樹脂組成物が含有する上記ポリマーは、分子量10000当り平均で3〜10個の反応性二重結合を有していることが好ましい。ポリマーに含まれる反応性二重結合の数が分子量10000当り平均で3個未満であると、露光工程における光硬化の進行の程度が小さくなって、形成される無機物層表面の凹凸パターンの精度が低下する傾向にあり、10個を超えると、このようなポリマーを合成することが困難となる傾向にある。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有し、上記本発明の無機物層の形成方法において、上記第1の樹脂組成物として用いるための樹脂組成物である。この樹脂組成物における上記ポリマーは、分子量10000当り平均で3〜10個の反応性二重結合を有することが好ましい。
【0020】
本発明のフィルム状エレメントは、支持フィルム上に上記本発明の樹脂組成物からなる層が設けられてなるフィルム状エレメントであり、上述の本発明の無機物層の形成方法において、第1層の形成のために好適に用いることができる。
【0021】
また、本発明の無機物層の形成方法、本発明の樹脂組成物、及び、本発明のフィルム状エレメントにおいて、上記熱硬化剤は、100〜300℃程度で高い活性を示すことが好ましく、100〜200℃で高い活性を示すことがより好ましい。ここで、高い活性を示すとは、上記所定の温度領域における半減期が10時間以内であることをいう。100℃よりも低い温度で高い活性を示す熱硬化剤を用いると、上記第1の樹脂組成物又は第1の樹脂組成物からなる層の保存安定性が低下する傾向にあり、また、フィルム状エレメントを作製する際の乾燥工程において反応性二重結合を有するポリマーの重合が促されてしまう可能性がある。一方、300℃を超える温度で高い活性を示す熱硬化剤は、焼成の際に第1の樹脂組成物層に対して十分な剛性を与える前に、第2の樹脂組成物からなる樹脂パターンから収縮応力が発生し、その結果、焼成後のパターン精度が低下する傾向にある。
【0022】
本発明の積層体は、基板上に、上述の本発明の無機物層の形成方法で形成することができる無機物層が設けられた積層体である。この積層体は、所定の凹凸パターンが高い精度で形成されている無機物層を備えており、特に、プラズマディスプレイパネル用前面基板に好適に利用することができる。なお、上述の本発明の無機物層の形成方法において用いた基板を、そのままこの積層体の基板として用いることができる。
【0023】
本発明のプラズマディスプレイパネル用前面基板は、上記本発明の積層体を備えるものであり、本発明のプラズマディスプレイパネルは、この本発明のプラズマディスプレイパネル用前面基板を具備するものである。
【0024】
上記プラズマディスプレイパネル用前面基板及び上記プラズマディスプレイパネルは、上述の本発明の無機物層の形成方法によって形成された無機物層を備えていることによって、高い輝度を有しながら、従来よりも低コストでの製造が可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、1回の焼成であっても、所定の凹凸パターンを有する無機物層を十分に高い精度で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、実際の寸法比率と必ずしも一致するものではない。
【0027】
図1は、本発明によるフィルム状エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示されるフィルム状エレメント1は、支持フィルム10と、支持フィルム10上に設けられ第1の樹脂組成物からなる樹脂組成物層20と、樹脂組成物層20上に積層されたカバーフィルム30とから構成されている。樹脂組成物層20を構成する第1の樹脂組成物は、反応性二重結合を有するポリマーと、熱硬化剤と、無機物粒子とを含有する。このフィルム状エレメント1は、後述する本発明の無機物層の形成方法において好適に用いることが出来るものである。すなわち、無機物層の形成方法において、第1の樹脂組成物からなる樹指組成物層20を、第1層として基板上に積層することで、第1層を形成することができる。
【0028】
反応性二重結合を有するポリマーとしては、ラジカル反応等による付加反応を受け得る反応性二重結合(エチレン性不飽和二重結合等)を有するポリマーであれば特に限定されないが、樹脂組成物中の他の成分との相溶性に優れ、フィルム状エレメント1の保存条件下で安定であるものが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂などのポリマーをベースポリマーとし、このベースポリマーに反応性二重結合を導入したものを、反応性二重結合を有するポリマーとして好適に用いることができる。ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル又はアクリルのことを意味し、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、メタクリル基又はアクリル基を有するモノマー由来のモノマー単位で主として構成される重合体のことを意味する。
【0029】
上記ベースポリマーとして用いる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸(2−エチル)ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを重合したものが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて重合させてもよい。
【0030】
また、上記ベースポリマーとしては、上記のメタアクリル酸エステルのようなモノマーの他、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等のポリマー鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基を有するマクロモノマー類、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基含有モノマー類等のモノマーを、単独又は複数種で重合させて得られるポリマーが挙げられる。
【0031】
ベースポリマーに反応性二重結合を導入する方法としては、例えば、ベースポリマーがアルコール性水酸基を有するものである場合、これに反応二重結合を有するイソシアネート類を反応させる方法が挙げられる。この方法では、ベースポリマーが有するアルコール性水酸基と、反応性二重結合を有するイソシアネート類のイソシアネート基との反応によりウレタン結合が生成して、ベースポリマーに反応性二重結合が導入される。
【0032】
上記の方法においては、アルコール性水酸基を有するベースポリマーとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等の、アルコール性水酸基含有モノマーを共重合成分とする重合体を用いることが好ましい。この場合、ベースポリマーにおけるアルコール性水酸基含有モノマーの占める割合を調整することによって、反応性二重結合を有するポリマーにおける反応性二重結合の含有割合を制御することができる。ベースポリマーにおけるアルコール性水酸基含有モノマーの割合は、共重合される全モノマー100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。アルコール性水酸基含有モノマーの割合が1質量部未満であると、露光工程における反応性二重結合を含有するポリマーの光硬化の進行の程度が低下して、形成される無機物層の凹凸パターンの精度が低下する傾向にあり、20質量部を越えると、ベースポリマーを合成する工程において、生成するベースポリマーの溶解度が著しく低下するため、その合成が困難となる傾向にある。特に、ベースポリマーが(メタ)アクリル系樹脂である場合、ベースポリマーの合成が著しく困難となる傾向にある。
【0033】
上記の反応性二重結合を有するイソシアネート類としては、2−イソシアナトエチルメタクリレート等の、反応性二重結合を有するアルキルイソシアネート類が好ましい。2−イソシアナトエチルメタクリレートは、例えば、「カレンズMOI」(昭和電工(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0034】
反応性二重結合を有するポリマーを得る方法は、上記のようなイソシアネート類を用いた方法に限定されるものではなく、例えば、反応性二重結合を保護したモノマーを他のモノマーとともに共重合してポリマーを合成した後、保護基を脱離させる方法で、反応性二重結合を含有するポリマーを得てもよい。
【0035】
反応性二重結合を含有するポリマーに含まれる反応性二重結合は、分子量10000当り平均で3〜10個であることが好ましく、6〜9個であることがより好ましい。反応性二重結合の含有割合が、分子量10000当り平均で3個未満であると、反応性二重結合を含有するポリマーの光硬化の進行の程度が低下して、形成される無機物層の凹凸パターンの精度が低下する傾向にあり、10個を越えると、上述のようにベースポリマーを合成することが困難となる傾向にある。
【0036】
反応性二重結合を有するポリマーの分子量は、GPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量(Mw)」という場合もある。)が、5000〜1000000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましく、30000〜150000であることがさらに好ましい。反応性二重結合を含有するポリマーの重量平均分子量(Mw)が5000未満であると、反応性二重結合を含有するポリマー及び無機物粒子を含有する樹脂組成物を精度よく層状に形成することが困難となる傾向にあり、1000000を越えるとその取り扱いが困難となる傾向にある。
【0037】
第1の樹脂組成物に含有される熱硬化剤としては、焼成時に加えられる熱により上記反応性二重結合を有するポリマーを十分硬化させ得る硬化促進作用を示し、かつ、その分解生成物が無機物層の焼成結果に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限なく使用できる。このような特性を示す熱硬化剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。
【0038】
より具体的には、例えば、過酸化メチルエチルケトン、過酸化シクロヘキサノン、過酸化メチルシクロヘキサノン、過酸化メチルアセトアセテート、過酸化アセチルアセトン等のケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)吉草酸n−ブチル、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;p−メンタン−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、等のハイドロパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド;イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルパーオキシヘキサノイル、オクタノイルパーオキサイド、ドデシロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;α,α’−ビス(ネオドデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、パーオキシクミルネオドデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオドデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、過安息香酸t−ヘキシル、過安息香酸t−ブチル等のパーオキシエステル;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジーカーボネート等のパーオキシジカーボネート、等が挙げられる。
【0039】
上記の有機過酸化物の中でも、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアセテート及び過安息香酸t−ブチル等のパーオキシエステル、並びに、4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)吉草酸n−ブチル及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタールが、本実施形態の第1の樹脂組成物からなる樹脂組成物層(第1層)を焼成して樹脂成分を分解除去する温度よりも低い温度で十分高い活性を示すことから、好適に用いることができる。
【0040】
また、上記熱硬化剤は、100〜300℃程度で高い活性を示すことが好ましく、100〜200℃で高い活性を示すことがより好ましい。ここで、高い活性を示すとは、上記所定の温度領域における半減期が10時間以内であることをいう。100℃よりも低い温度で高い活性を示す熱硬化剤を用いると、上記樹脂組成物層20の保存安定性が低下する傾向にあり、また、フィルム状エレメント1を作製する際の乾燥工程において反応性二重結合を有するポリマーの重合が促されてしまう可能性がある。一方、300℃を超える温度で高い活性を示す熱硬化剤は、焼成の際に第1の樹脂組成物層に対して十分な剛性を与える前に、第2の樹脂組成物からなる樹脂パターンから収縮応力が発生し、その結果、焼成後のパターン精度が低下する傾向にある。
【0041】
本実施形態のフィルム状エレメント1において、樹脂組成物層20中の上記熱硬化剤の含有量は、反応性二重結合を有するポリマー100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、2〜6質量部が特に好ましい。
【0042】
また、本実施形態のフィルム状エレメント1においては、上記の熱硬化剤と、促進剤(還元剤)とを併用することも可能である。かかる促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、五酸化バナジウム、ジメチルアニリン、4級アンモニウム塩等が挙げられる。このような促進剤を熱硬化剤と適宜併用することでより効率良く熱硬化を進行させることができる。なお、焼成工程を経て得られる無機物層中に促進剤由来の分解生成物又は未分解の促進剤が残留すると、焼成によって得られる無機物層の電気的特性、光学的特性等に悪影響を及ぼす恐れがあることから、かかる問題を十分防止できる範囲で上記促進剤を併用することが好ましい。促進剤の残留による問題を解消する観点からは、促進剤を用いることなく有機化酸化物などの熱硬化剤のみにより上記ポリマーの熱硬化を行うことが好ましい。
【0043】
第1の樹脂組成物が含有する無機物粒子としては、ガラスフリット等のガラス粒子、金属酸化物粒子及び金属粒子等が挙げられる。例えば、形成される無機物層をPDPの誘電体層として適用する場合には、無機物粒子としてガラスフリットを用いることが好ましい。
【0044】
無機物粒子の軟化点は、400〜600℃の範囲内にあることが好ましい。無機物粒子の軟化点が400℃未満であると、樹脂組成物層(第1層)を焼成する際に、樹脂成分が完全に分解除去されない段階で無機物粒子が溶融して、形成される無機物層中に樹脂成分の一部が残留し、その結果、無機物層が着色してその光透過率が低下する傾向にある。一方、無機物粒子の軟化点が600℃を超えると、600℃より高温で焼成する必要があるために、基板に歪みなどが発生しやすくなる傾向にある。特に、PDPへの適用を考慮すると、軟化点が上記の範囲にある低融点ガラスフリットを無機物粒子として用いることが好ましい。
【0045】
低融点ガラスフリットとしては、具体的には、酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系(PbO−B−SiO系)、酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系(PbO−B−SiO−Al系)、酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系(ZnO−B−SiO系)、酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系(ZnO−B−SiO−Al系)、酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系(PbO−ZnO−B−SiO系)、酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系(PbO−ZnO−B−SiO−Al系)、酸化ビスマス−酸化ホウ素−酸化ケイ素系(Bi−B−SiO系)、酸化ビスマス−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系(Bi−B−SiO−Al系)、酸化ビスマス−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系(Bi−ZnO−B−SiO系)、酸化ビスマス−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系(Bi−ZnO−B−SiO−Al系)等が挙げられる。
【0046】
無機物粒子の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。この平均粒径が0.1μm未満であると、無機物層を誘電体層として用いたときにその誘電体層としての効果が低下する傾向にあり、10μmを越えると、分散性が低下する傾向にある。
【0047】
無機物粒子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、異なる組成、異なる軟化点、異なる形状、異なる平均粒径を有する無機物粒子を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
第1の樹脂組成物における無機物粒子の含有割合は、その体積が、反応性二重結合を有するポリマーの乾燥時の体積に対して同等又は同等以下となるような割合であることが好ましい。無機物粒子の体積が反応性二重結合を含有するポリマーの乾燥時の体積を上回ると、樹脂組成物層20の基板への密着性が低下して、フィルム状エレメント1を用いて基板上に第1層を形成することが困難となる傾向にある。無機物粒子の含有割合を上記のような体積比とするためには、反応性二重結合を有するポリマー及び無機物粒子それぞれの比重から、所望の体積比となるように算出した質量比でそれぞれの成分を混合すればよい。反応性二重結合を有するポリマーの乾燥時の比重は概ね0.5〜1.5程度であり、例えば、(メタ)アクリル系樹脂では、通常、1.0程度である。一方、無機物粒子の1種である低融点ガラスフリットの場合、その比重は概ね2.5〜5.5程度であり、例えば、酸化鉛含有低誘電ガラスフリットの比重は4.5〜5.0程度である。
【0049】
あるいは、上記のような体積比に代えて、質量比に基づいて含有割合を決定してもよい。この場合、無機物粒子の含有割合は、反応性二重結合を有するポリマーの乾燥重量100質量部に対して、100〜600質量部であることが好ましく、200〜500質量部であることがより好ましく、300〜450質量部であることがさらに好ましい。無機粒子の含有割合が100質量部未満であると、焼成により無機物層を形成する際に樹脂成分の分解による空隙が大きくなるため、無機物層の均一性が低下する傾向にあり、600質量部を越えると、樹脂組成物層20の基板への密着性が低下する傾向にある。
【0050】
ここで、第1の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有しなくてもよい。第1の樹脂組成物が光重合開始剤を含有しない場合、光重合開始剤を含有する場合と比較して、製造時に紫外線等の遮光について特段の考慮をする必要が無く、製造工程の設備及び管理にかかる費用が抑制される点や、製造された第1の樹脂組成物の保管及び輸送等に関しても同様に、遮光について特段の考慮が必要ない点で有利である。
【0051】
第1の樹脂組成物が光重合開始剤を含有する場合には、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等の光重合開始剤を用いることができる。さらに、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせたものでもよい。上記の光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
第1の樹脂組成物には、以上のような成分に加えて、染料、発色剤、可塑剤、顔料、重合禁止剤、表面改質剤、安定剤、密着性付与剤、熱硬化剤等を必要に応じて添加することができる。
【0053】
フィルム状エレメント1の支持フィルム10としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。また、支持フィルム10はその表面が離型処理されていることが好ましい。
【0054】
フィルム状エレメント1のカバーフィルム30としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。また、カバーフィルム30は素の表面が離型処理されていることが好ましい。
【0055】
フィルム状エレメント1は、例えば、支持フィルム10上に、第1の樹脂組成物を塗布等して樹脂組成物層20を形成し、樹脂組成物層20上にカバーフィルム30を積層して製造することができる。樹脂組成物層20は、第1の樹脂組成物を溶剤中に溶解又は分散した塗工液を調製し、これを支持フィルム10上に塗布後、塗膜から溶剤を除去する方法で形成することが好ましい。この塗工液に用いる溶剤は、反応性二重結合を有するポリマーを合成する際に用いた溶媒であってもよいし、この溶媒とは別に添加してもよい。具体的には、溶剤としては、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラメチルスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられる。これらは一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記の塗工液を支持フィルム10上に塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等の公知の方法が挙げられる。
【0057】
塗膜からの溶剤の除去は、例えば、熱風対流式乾燥機、ホットプレート乾燥機、遠赤外線乾燥機等で加熱して行うことができる。溶剤を除去するための加熱温度は、上記熱硬化剤の活性温度よりも低く設定することが好ましい。また、本実施形態においては、例えば60〜130℃とすることが好ましい。また、加熱時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。
【0058】
樹脂組成物層20の厚さは、最終的に形成される無機物層が所望の厚さになるように適宜設定すればよいが、10〜200μmとすることが好ましく、30〜150μmとすることがより好ましく、50〜100μmとすることが特に好ましい。このような厚さのフィルム状エレメント1はロール状に巻いて保管することができる。
【0059】
次に、本発明の無機物層の形成方法について図面を用いて説明する。
【0060】
図2は、本発明による無機物層の形成方法の一実施形態における、基板上に反応性二重結合を有するポリマー及び無機物粒子を含有する第1の樹脂組成物からなる第1層を形成する第1層形成工程と、第1層の基板と反対側の面上に、無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる第2層を形成する第2層形成工程とを説明するための模式断面図である。また、図3は、本発明の無機物層の形成方法の一実施形態における、第2層を所定のパターンで露光する露光工程と、露光工程の後に第2層を現像して、上記パターンを有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層を第1層とともに焼成して、凹凸パターンが形成された無機物層を形成する焼成工程とを説明するための模式断面図である。
【0061】
図2の(a)は、フィルム状エレメント1を用いて、透明電極44及び電極線(バス電極45が設けられた基板40上に第1層を形成する工程を示している。この工程では、フィルム状エレメント1のカバーフィルム30を剥離しながら、ラミネータの積層ロール50により樹脂組成物層20を基板40上に圧着して積層することにより、基板40の透明電極44及び電極線45が設けられた側の面上に第1層21が形成される。
【0062】
第1層形成工程における積層ロール50の圧着圧力は、線圧で50N/m〜1×10N/mとすることが好ましく、2.5×10〜5×10N/mとすることがより好ましく、5×10〜4×10N/mとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、樹脂組成物層20と基板40とが十分に密着できない傾向にあり、1×10N/mを超えると、フィルム状エレメントがエッジフュージョンを起こしやすくなる傾向にある。
【0063】
第1層形成工程における積層ロール50の温度は、樹脂組成物層20に含まれる熱硬化剤の活性温度よりも低く設定することが好ましい。また、本実施形態においては、例えば80〜130℃とすることが好ましい。この温度が80℃未満であると、樹脂組成物層20の基板への密着性が低下する傾向にあり、130℃を超えると、樹脂組成物層20の流動性が過剰となり、ラミネート時にエッジフュージョンを起こしやすくなる傾向にある。また、積層ロール50の移動速度は、0.3〜3m/分が好ましい。この速度が、0.3m/分未満であると、樹脂組成物層20に対する加熱と加圧の時間が長いことからエッジフュージョンを起こしやすくなる傾向にあり、3m/分を超えると、樹脂組成物層20の基板への密着性の確保が困難となる傾向にある。
【0064】
基板40の種類は、基板上に無機物層が形成された積層体の用途に応じて選択されるが、例えば、積層体をPDPの前面基板に適用する場合には、基板40としてはガラス基板が好ましい。
【0065】
透明電極44は、例えば、ITO(Indium−Tin Oxide)、SnO、又はその他の透明電極材料を用い、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、電着等の従来公知の適宜の手段により形成できる。また、透明電極44はその求められる性能に基づいて適切な形状に形成されるが、その手法として、例えば、基板近傍に設置したメタルマスクを介するスパッタリングにより透明電極材料を所望の位置に直接堆積する方法、及び、基板上に透明電極材料からなる層を積層した後、感光性レジストを透明電極材料層上に積層し、適切なパターンを形成した後エッチングにより不要部分を除去して所望の形状の透明電極を得るフォトリソ法等が挙げられる。
【0066】
電極線45は、透明電極44が形成された基板上に金属膜を形成した後、感光性レジストを金属膜上に積層し、適切なパターンを形成した後エッチングにより不要部分を除去して所望の形状の電極を得るフォトリソ法、透明電極44が形成された基板上に感光性レジストを積層し、適切なパターンを形成した後透明電極44の露出した部分に金属膜を形成することにより所望の形状の電極を得るアディティブ法、銀粉末を含む樹脂組成物パターンを透明電極44上に形成し、焼成することで所望の電極を得る方法等の公知の方法により形成することができる。
【0067】
図2の(b)は、第1層21上に、フィルム状感光性エレメント2を用いて、無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる第2層61を形成する第2層形成工程を示している。フィルム状感光性エレメント2は、支持フィルム10と、支持フィルム10上に設けられ無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層60と、感光性樹脂組成物層60上に積層されたカバーフィルム30とで構成される。なお、第2層形成工程の前に、第1層21上の支持フィルム10は除去される。
【0068】
図2の(b)に示す第2層形成工程では、フィルム状感光性エレメント2のカバーフィルム30を剥離しながら、ラミネータの積層ロール50により感光性樹脂組成物層60を第1層21上に圧着して積層することにより、第1層21上に第2層61が形成される。
【0069】
第2層形成工程における積層ロール50の圧着圧力は、第1層形成工程について先に説明したのと同様とすることが好ましい。
【0070】
第2層形成工程における積層ロール50の温度は、第1層21に含まれる熱硬化剤の活性温度よりも低く設定することが好ましい。また、本実施形態においては、例えば20〜130℃とすることが好ましい。この温度が、20℃未満であると、感光性樹脂組成物層60の第1層21への密着性が低下する傾向にあり、130℃を超えると、感光性樹脂組成物層60及び第1層21の流動性が過剰となり、ラミネート時にエッジフュージョンを起こしやすくなる傾向にある。また、積層ロール50の移動速度は、0.3〜3m/分が好ましい。この速度が、0.3m/分未満であると、感光性樹脂組成物層60に対する加熱と加圧の時間が長いことからエッジフュージョンを起こしやすくなる傾向にあり、3m/分を超えると、感光性樹脂組成物層60の第1層21への密着性の確保が困難となる傾向にある。
【0071】
感光性樹脂組成物層60を形成する第2の樹脂組成物は、無機物粒子を含有する感光性の樹脂組成物であり、例えば、無機物粒子の他に、エチレン性不飽和化合物等の感光性モノマーと、光重合開始剤と、フィルム形成性付与ポリマーとを含有している。
【0072】
第2の樹脂組成物が含有する無機物粒子としては、第1の樹脂組成物が含有する無機物粒子と同様のものを好適に用いることができる。
【0073】
第2の樹脂組成物が含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ブチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス[(4−メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレート、並びにこれらに対応するメタクリレートが挙げられ、これらを単独で又は複数種組み合わせて用いることができる。
【0074】
第2の樹脂組成物が含有するフィルム形成性付与ポリマーは、第2の樹脂組成物の粘度を、第2の樹脂組成物が安定して第2層を形成可能な程度に高めることができるポリマーであれば特に制限はないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、メタクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等のビニル単量体とこれらのビニル単量体と共重合可能な単量体とを共重合してなるビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド酸等が挙げられる。環境性に優れたアルカリ現像液で現像可能となる点から、フィルム形成性付与ポリマーはカルボキシル基を有するポリマー等のアルカリ可溶性ポリマーであることが好ましい。
【0075】
第2の樹脂組成物が含有する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4、4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−エチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0076】
第2の樹脂組成物は、上記のような成分の他に、マラカイトグリーン、フタロシアニングリーン等の染料又は顔料や、その他添加物として、例えば、ジエチレングリコール等の可塑剤、ベンゾトリアゾール、テトラゾール等の密着性向上剤、レベリング効果や消泡効果のあるシリコン系界面活性剤、ロイコクリスタルバイオレット、トリブロモメチルフェニルスルフォン等の発色剤などを更に含有していてもよい。
【0077】
ここで、第2の樹脂組成物における感光性モノマーの含有割合は、フィルム形成性、低エッジフュージョン性、光感度等の点から、感光性モノマー及びフィルム形成性付与ポリマーの合計量100質量部に対して20〜80質量部とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有割合は、光感度等の点から、感光性モノマー及びフィルム形成性付与ポリマーの合計量100質量部に対して1〜10質量部とすることが好ましい。また、染料又は含量の含有割合は、作業性等の点から、感光性モノマー及びフィルム形成性付与ポリマーの合計量100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましい。また、その他添加物の含有割合は、その効果を充分発揮する点から、感光性モノマー及びフィルム形成性付与ポリマーの合計量100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましい。
【0078】
フィルム状感光性エレメント2は、例えば、フィルム状エレメント1の製造方法についての上述の説明において、第1の樹脂組成物に代えて第2の樹脂組成物とする他は、フィルム状エレメント1と同様にして製造することができる。
【0079】
なお、第1層形成工程及び第2層形成工程においては、上記のようにフィルム状エレメント又はフィルム状感光性エレメントを用いて形成するのに代えて、例えば、樹脂組成物溶剤に溶解又は分散した塗工液を基板上に塗布し、これを乾燥する方法で第1層又は第2層を形成してもよい。
【0080】
図3の(a)は、第2層を所定のパターンで露光する露光工程を示している。
【0081】
露光工程では、第2層61に対して、所定のパターンを有する露光用マスク35を介して活性光線Lを照射する。支持フィルム10は、活性光線Lを照射する前に除去してもよいが、感度上昇の観点から、露光の後に除去することが好ましい。
【0082】
活性光線Lとしては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等が挙げられ、可視光線、紫外線、遠紫外線が好ましく、紫外線がより好ましい。これらの活性光線を照射する装置としては、例えば、フォトリソグラフィー法で使用されている紫外線照射装置、半導体及び液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置を用いることができる。
【0083】
露光用マスク35は、目的とする無機物層のパターンに応じて、活性光線Lに対して所定のパターンの透明部分を有するものを用いればよい。例えば、基板40上に無機物層が形成された積層体をPDPの前面板として用いる場合には、10〜500μm幅のストライプ形状のマスクパターンを有する露光用マスク35が用いられる。
【0084】
露光工程の後、レジスト層形成工程において、支持フィルム10を除去し、さらに、第2層61の未露光部分を現像により除去して、露光用マスク35のパターンを反映したパターンを有するレジスト層62を形成する(図3の(b))。
【0085】
現像で使用される現像液としては、例えば、第2層61がアルカリ可溶性樹脂を含む場合には、アルカリ現像液が挙げられる。これにより、バインダーとしてのアルカリ可溶性樹脂が溶解して除去されるとともに、未露光部分の無機物粒子も同時に除去される。
【0086】
アルカリ現像液の有効成分としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、及びアンモニア等の無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、及びエタノールアミン等の有機アルカリ性化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
アルカリ現像液における上記アルカリ性化合物の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。また、アルカリ現像液は、ノニオン系界面活性剤や有機溶剤などの添加剤をさらに含有していてもよい。
【0088】
その他、現像時間、現像温度、現像方法(例えば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法など)、現像装置等の現像の条件は、第2層を構成する第2の樹脂組成物の種類等に応じて適宜決定すればよい。また、アルカリ現像液による現像の後、水洗処理等により洗浄することが好ましい。レジスト層形成工程は、さらに、現像の後に、光硬化部62の側面及び基板上に残存する不要部分を擦り取る工程を含んでいてもよい。
【0089】
レジスト層形成工程の後、焼成工程において、第1層21及びレジスト層62を加熱により焼成して樹脂成分を除去し、第1層及び第2層が含有していた無機物粒子に由来し、所定の凹凸パターンが形成された無機物層を形成する。図3の(c)は、焼成工程を経た後に得られる積層体3を示しており、積層体3においては、基板40上に、透明電極44及び電極線45と、焼成により形成された無機物層70とが設けられている。無機物層70は、焼成により光硬化部62から誘導されパターン化された第2の無機物層部分64と、焼成により第1層21から誘導された下地層としての第1の無機物層部分24とからなる。第1の無機物層部分24の平坦な表面を底面とし、第2の無機物層部分64に形成されたパターンの側面を壁面とする複数の溝によって、無機物層70には所定の凹凸パターンが形成されている。
【0090】
焼成は、例えば、電気炉中で積層体全体を加熱して行うことができる。焼成の際の加熱温度は、最高温度を400〜700℃とすることが好ましく、450〜600℃とすることがより好ましい。また、焼成時間は、5分〜6時間程度が好ましい。また、焼成は大気中で行ってもよい。
【0091】
また、本実施形態の無機物層の形成方法においては、熱硬化剤による硬化反応をより有効に促進させて第2層の収縮応力が生じる前に第1層の剛性を十分確保する観点から、焼成の際の昇温速度を室温から上記最高温度までの平均で、1〜30℃/分とすることが好ましく、5〜15℃/分とすることがより好ましい。さらに、焼成の際の昇温時に、約150〜180℃で10〜30分程度保持することが好ましく、これにより、第2層の収縮応力が生じる前に第1層の剛性をより確実に確保することができる。
【0092】
以上のような本発明の無機物層の形成方法によれば、十分に高い精度で凹凸パターンが形成された無機物層が形成されるばかりでなく、基板が受ける加熱及び冷却のサイクルの数が少なくなるために、基板の歪みに起因する不良率も低減することができる。さらには、露光工程において第1層もある程度光硬化することにより、パターン化されたレジスト層と、その下地部分の第1層との密着性が向上し、パターン化されたレジスト層の第1層からの剥離が抑制される。
【0093】
また、上記本実施形態の無機物層の形成方法によって形成される無機物層70の凹凸パターン精度の高さを示すものとして、凹凸パターンの周辺部に発生する凹部の度合いが挙げられる。図6は、基板40b上に凹凸パターンを有する無機物層70bが形成された積層体3bの模式断面図を示すが、従来の1回焼成法で形成された無機物層には、凹凸パターンの周辺部に深さ5μm以上の凹部7が発生することがあり、これを防止することは困難であった。この凹部が大きいと、本来発光しない電圧で発光が起こる可能性、及び、放電に暴露されることにより電極が破壊される可能性が高くなる。これに対して、本実施形態の無機物層の形成方法によれば、かかる凹部7の深さを5μm未満に低減することが可能となるので上記の問題を十分防止することができ、高水準の放電特性及び耐久性を達成することが可能となる。
【0094】
図4は、本発明による積層体の一実施形態を示す斜視図である。図4に示す積層体3は、透明電極44及び電極線45を備える基板40上に、上述のような本実施形態の無機物層の形成方法によって形成された無機物層70が設けられている。無機物層70の表面には、ストライプ状に並んだ複数の溝によって、凹凸パターンが形成されている。
【0095】
無機物層70がガラスフリット等の誘電体材料で形成されている場合、無機物層70は誘電体層として機能する。この場合、積層体3は、プラズマディスプレイパネル用前面基板(PDP用基板)として好適に用いることができる。
【0096】
本発明のプラズマディスプレイ用前面基板は、本発明の積層体を備えるものである。また、本発明のプラズマディスプレイパネルは、このプラズマディスプレイ用前面基板を具備するものである。図5は、本発明によるプラズマディスプレイパネルの一実施形態を示す部分斜視図である。図5に示すプラズマディスプレイパネル300は、プラズマディスプレイ用前面基板100と、プラズマディスプレイ用背面基板200とで主として構成される。プラズマディスプレイ用前面基板100は、積層体3と、積層体3における無機物層(誘電体層)70の凹凸パターンが形成された表面を覆うように設けられた保護層71とで構成されている。プラズマディスプレイパネル用背面基板200は、ガラス基板41と、ガラス基板41上に設けられた電極46及び保護層72と、保護層72上に設けられた格子状のバリアリブ80と、バリアリブ80の壁面及び保護層72表面を覆うように形成された蛍光体層90とで主として構成されている。そして、プラズマディスプレイ用前面基板100とプラズマディスプレイ用背面基板200とが、保護層71とバリアリブ80とが互いに密着するように貼り合わされて、蛍光体層90及び保護層71で囲まれた放電空間76が形成されている。プラズマディスプレイ用前面基板100には、無機物層70の凹凸パターンに由来するストライプ状の溝75が形成されており、この溝75を通じて放電ガスが導入される。なお、プラズマディスプレイパネル300において、保護層71及び72、バリアリブ80及び蛍光体膜90等の構成部材は、従来公知の材料及び方法で形成することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0098】
(合成例1)
<ベースポリマーの合成>
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、トルエン72質量部を仕込み、80℃に加熱した。ここへ、モノマーとしてメタクリル酸メチル30質量部、アクリル酸エチル60質量部及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部を、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を、トルエン50質量部に混合した溶液を滴下した。滴下終了後、80℃を保持したまま4時間撹拌した後、室温まで冷却し、ベースポリマーのトルエン溶液を得た(溶液100質量部当りの乾燥質量:45質量部)。
【0099】
(合成例2)
<反応性二重結合を有するポリマーの合成>
撹拌機、還流冷却機、乾燥空気導入口及び温度計を備えたフラスコに、合成例1で得られたベースポリマーのトルエン溶液600質量部(乾燥重量270質量部)を仕込み、さらにジブチルヂラウリルスズ(II)0.2質量部、及びメチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)0.6質量部を加え、60℃へ昇温した。続いて、反応溶液に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工(株)製「カレンズMOI」(商品名))32質量部を滴下した。滴下終了後、6時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応性二重結合を有するポリマーのトルエン溶液を得た(溶液100質量部当たりの乾燥重量:47.8質量部)。
【0100】
(合成例3)
<反応性二重結合を有しないポリマーの合成>
メタクリル酸メチル30質量部、メタクリル酸イソブチル30質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル35質量部及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル5質量部をモノマーとして用いた他は、合成例1と同様にして、反応性二重結合を有しないポリマーのトルエン溶液を得た(100質量部当りの乾燥重量45質量部)。
【0101】
(実施例1)
<反応性二重結合を有するポリマーを含有する第1の樹脂組成物の調製>
合成例2で得られた反応性二重結合を有するポリマー100質量部(但し乾燥重量として)、過安息香酸t−ブチル3質量部、2,4−ジエチルチオキサントン0.5質量部及びガラスフリット(酸化鉛含有低融点ガラス、比重4.7、平均粒経2.5μm)400質量部を混合した混合物を、ビーズミルを用いて10分間攪拌して、無機物粒子としてガラスフリットを含有する第1の樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
【0102】
<フィルム状エレメントの作製>
50μmの厚さの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)上に、上記で得られた第1の樹脂組成物のトルエン溶液を均一に塗布し、110℃に設定した熱風対流式乾燥機で10分間加熱して溶剤を除去して、ガラスフリットを含有し厚さ70μmの樹脂組成物層を形成した。次いで、この樹脂組成物層上に離型処理した厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをカバーフィルムとして積層して、反応性二重結合を有するポリマーを含有する第1の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を有するフィルム状エレメントを作製した。
【0103】
<感光性の第2の樹脂組成物の調製>
アルカリ可溶性樹脂(組成比率(重量比):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=20/50/30)50質量部のアセトン溶液、ペンタエリスリトールトリアクリレート50質量部、「イルガキュアIrg−651」(商品名、(株)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)2質量部、2,4−ジエチルチオキサントン2質量部及びガラスフリット(酸化鉛含有低融点ガラス、比重4.7、平均粒経2.5μm)300質量部を混合した混合物を、ビーズミルを用いて10分間攪拌して、無機物粒子としてガラスフリットを含有する感光性の第2の樹脂組成物のアセトン溶液を調製した。
【0104】
<フィルム状感光性エレメントの作製>
上記で得た第2の樹脂組成物のアセトン溶液を用いた他は、フィルム状エレメントと同様にして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ガラスフリットを含有し厚さ30μmの感光性樹脂組成物層を形成し、次いで、感光性樹脂組成物層上に厚さ23μmのポリエチレンフィルムをカバーフィルムとして積層して、フィルム状感光性エレメントを得た。
【0105】
<無機物層の形成>
ガラス基板(厚さ3mm)に、上記で得たフィルム状エレメントのカバーフィルムを剥離しながら、支持体フィルム側からラミネータにより加圧(ラミネート温度が120℃、ラミネート速度が0.5m/分、圧着圧力は線圧で9.8×10N/m)して、上記第1の樹脂組成物からなる樹脂組成物層を積層し、これを第1層として有する積層体を得た。続いて、得られた積層体からカバーフィルムを除去し、露出した第1層上に上記で得たフィルム状感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離しながら支持フィルム側からラミネータにより加圧(ラミネート温度が120℃、ラミネート速度が0.5m/分、圧着圧力は線圧で9.8×10N/m)して感光性樹脂組成物層を積層し、これを第2層とした。
【0106】
第2層上にある支持フィルム側から、幅100μmの開口部と幅100μmの遮光部が交互に並んだマスクを介して、100mJ/cmの紫外線(i線)を照射した後、支持フィルムをはく離し、1%炭酸ナトリウム水溶液で40秒間シャワー現像した。現像後の断面を観察したところ、第2層において、厚さ30μm、幅105μmのライン状のパターンを有するレジスト層が形成されていた。
【0107】
さらに、レジスト層が形成された積層体を、室温から昇温速度5℃/分で加熱し、さらに560℃で30分間加熱して焼成した。加熱後、室温まで冷却してからその断面を観察したところ、基板上に、第1層に由来する厚さ30μmの均一な第1の無機物層部分が形成され、さらに、第1の無機物層部分上には第2層に由来する厚さ14μm、幅96μmの良好なライン状の凹凸パターンが形成された第2の無機物層部分が形成されていた。また、凹凸パターンの周囲の凹部の深さは2μm以下に抑制されていた。
【0108】
(実施例2)
<反応性二重結合を有するポリマーを含有する第1の樹脂組成物の調製>
合成例2で得られた反応性二重結合を有するポリマー100質量部(但し乾燥重量として)、過安息香酸t−ブチル3質量部及びガラスフリット(酸化鉛含有低融点ガラス、比重4.7、平均粒経2.5μm)400質量部を混合した混合物を、ビーズミルを用いて10分間攪拌して、無機物粒子としてガラスフリットを含有する第1の樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
【0109】
<フィルム状エレメントの作製>
上記で得られた第1の樹脂組成物のトルエン溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状エレメントを作製した。
【0110】
<無機物層の形成>
上記で得られたフィルム状エレメントを用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性の第2の樹脂組成物の調製及びフィルム状感光性エレメントの作製を経て、無機物層を形成した。
【0111】
形成された無機物層の断面を観察したところ、基板上に、第1層に由来する厚さ30μmの均一な第1の無機物層部分が形成され、さらに、第1の無機物層部分上には第2層に由来する厚さ14μm、幅96μmの良好なライン状の凹凸パターンが形成された第2の無機物層部分が形成されていた。また、凹凸パターンの周囲の凹部の深さは2〜4μmと、5μm未満に抑制されていた。
【0112】
(比較例1)
<熱硬化剤を含まない第1の樹脂組成物の調製>
合成例2で得られた反応性二重結合を有するポリマー100質量部(但し乾燥重量として)、2,4−ジエチルチオキサントン0.5質量部及びガラスフリット(酸化鉛含有低融点ガラス、比重4.7、平均粒経2.5μm)400質量部を混合した混合物を、ビーズミルを用いて10分間攪拌して、無機物粒子としてガラスフリットを含有する第1の樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
【0113】
<フィルム状エレメントの作製>
上記で得られた熱硬化剤を含まない第1の樹脂組成物のトルエン溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状エレメントを作製した。
【0114】
<無機物層の形成>
上記で得られたフィルム状エレメントを用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性の第2の樹脂組成物の調製及びフィルム状感光性エレメントの作製を経て、無機物層を形成した。
【0115】
形成された無機物層の断面を観察したところ、基板上に、第1層に由来する厚さ30μmの均一な第1の無機物層部分が形成され、さらに、第1の無機物層部分上には第2層に由来する厚さ14μm、幅96μmの良好なライン状の凹凸パターンが形成された第2の無機物層部分が形成されていたが、凹凸パターンの周囲の凹部の深さは最大5μmとなっていた。
【0116】
(比較例2)
合成例2で得られた反応性二重結合を有するポリマーの代わりに合成例3で得た反応性二重結合を有しないポリマー100質量部(但し乾燥重量として)を用い、過安息香酸t−ブチルを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、第1の樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
【0117】
<フィルム状エレメントの作製>
上記で得られた第1の樹脂組成物のトルエン溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状エレメントを作製した。
【0118】
<無機物層の形成>
上記で得られたフィルム状エレメントを用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性の第2の樹脂組成物の調製及びフィルム状感光性エレメントの作製を経て、無機物層を形成した。
【0119】
形成された無機物層の断面を観察したところ、第1層に由来する第1の無機物層部分のうち、第2の無機物層部分と接していない部分は厚さ30μmの均一な層を成していた。しかし、第2層に由来する第2の無機物層部分においては、ライン状のパターンが収縮して蛇行した形状となっており、この第2の無機物層部分と接する部分における第1の無機物層部分は、第2の無機物層部分のパターンの収縮に応じて変形していた。

【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明によるフィルム状エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明による無機物層の形成方法の一実施形態における、第1層形成工程及び第2層形成工程を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明による無機物層の形成方法の一実施形態における、露光工程、現像工程及び焼成工程を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明による積層体の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明によるプラズマディスプレイパネルの要部を示す部分斜視図である。
【図6】従来の1回焼成法によって形成された無機物層の凹凸パターンの周辺部に発生する凹部を説明するための模式断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1…フィルム状エレメント、2…フィルム状感光性エレメント、3…積層体、10…支持フィルム、20…樹脂組成物層、21…第1層、24…第1の無機物層部分、30…カバーフィルム、35…露光用マスク、40,41…基板、44…透明電極、45…電極線、50…積層ロール、60…感光性樹脂組成物層、61…第2層、62…レジスト層、64…第2の無機物層部分、70…無機物層、71,72…保護層、75…溝、76…放電空間、80…バリアリブ、90…蛍光体層、100…プラズマディスプレイパネル用前面基板、200…プラズマディスプレイパネル用背面基板、300…プラズマディスプレイパネル、L…活性光線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有する第1の樹脂組成物層からなる第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の前記基板と反対側の面上に、無機物粒子を含有する感光性の第2の樹脂組成物からなる第2層を形成する第2層形成工程と、
前記第2層を所定のパターンで露光する露光工程と、
前記露光工程の後に前記第2層を現像して、前記パターンを有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
前記レジスト層を前記第1層とともに焼成して無機物層を形成する焼成工程と、を備える無機物層の形成方法。
【請求項2】
前記第1層形成工程において、支持フィルム上に前記第1の樹脂組成物からなる層が設けられてなるフィルム状エレメントを、前記第1の樹脂組成物からなる層と前記基板とが隣接するように前記基板上に積層して前記第1層を形成する、請求項1に記載の無機物層の形成方法。
【請求項3】
前記基板の少なくとも一方面上に電極が設けられており、
前記第1層形成工程において、前記基板の前記電極が設けられた側の面上に前記第1層を形成する請求項1又は2に記載の無機物層の形成方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、分子量10000当り平均で3〜10個の反応性二重結合を有している、請求項1〜3の何れか一項に記載の無機物層の形成方法。
【請求項5】
反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有し、
請求項1〜3の何れか一項に記載の無機物層の形成方法において、前記第1の樹脂組成物として用いるための樹脂組成物。
【請求項6】
分子量10000当り平均で3〜10個の反応性二重結合を有するポリマー、熱硬化剤及び無機物粒子を含有し、
請求項5に記載の無機物層の形成方法において、前記第1の樹脂組成物として用いるための樹脂組成物。
【請求項7】
支持フィルム上に請求項6に記載の樹脂組成物からなる層が設けられてなるフィルム状エレメント。
【請求項8】
基板上に、請求項1〜4の何れか一項に記載の無機物層の形成方法で形成することのできる無機物層が設けられた積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を備えるプラズマディスプレイパネル用前面基板。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイパネル用前面基板を具備するプラズマディスプレイパネル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−42395(P2007−42395A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224554(P2005−224554)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】