無線タグ及び無線タグシステム
【課題】UWB技術を用いた通信方式を採用する無線タグ及び無線システムにおいて、コストの低減および消費電力の低減を図ることのできる無線タグ及び無線タグシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】無線タグ2のタグ信号生成部23は、無線タグリーダ1から受信した変調ビーコン信号を、タグIDを用いて変調することにより、タグID変調信号を生成し、出力する。このタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を経由して、無線タグリーダ1へ送信される。このように、無線タグリーダ1から受信した復調ビーコン信号自体を、タグIDを用いて変調するので、復調器やパルス信号発生器等を無線タグ2に設ける必要がなくなり、コストの低減及び消費電力の低減を図ることができる。
【解決手段】無線タグ2のタグ信号生成部23は、無線タグリーダ1から受信した変調ビーコン信号を、タグIDを用いて変調することにより、タグID変調信号を生成し、出力する。このタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を経由して、無線タグリーダ1へ送信される。このように、無線タグリーダ1から受信した復調ビーコン信号自体を、タグIDを用いて変調するので、復調器やパルス信号発生器等を無線タグ2に設ける必要がなくなり、コストの低減及び消費電力の低減を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UWB(Ultra
Wide Band:超広帯域)技術を用いた通信方式によりデータ送受を可能とする無線タグ及び無線タグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫で行われる物品等の保管・輸送管理等に、無線タグ(RF−ID(Radio Frequency Identification)を用いる手法が提案されている。無線タグとは、IDを記憶した小型の発信器(タグ)の動きを受信器(無線タグリーダ)で検知するものであり、タグ寸法が微小であり安価なことからその普及が見込まれている。例えば、特開2004−099276号公報(特許文献1)には、コンテナ等の容器単位で無線タグを実装し、この無線タグからの情報を無線タグリーダにて受け取ることにより、必要な物品の所在位置を特定し、大量の物量の管理を容易化する技術が開示されている。
【0003】
一方、近年、次世代無線通信技術として、UWB技術を用いた通信方式が開発されている。この通信方式は、データを1GHz程度の極めて広い周波数帯に拡散して、搬送波を使わずにパルスにデータを重畳させて送受信を行なうものである。それぞれの周波数帯に送信されるデータはノイズ程度の強さしかないため、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがなく、消費電力も少ないという利点を有している。また、このUWBは、位置測定、レーダ等にも応用が利き、非常に幅広い分野での活用が期待されている。
例えば、特開2004−336764号公報(特許文献2)には、UWB技術を用いた通信装置として以下のような構成が開示されている。
【0004】
図12に、上記特許文献2に開示されている超広帯域無線通信装置の一構成例を示す。この図に示されるように、超広帯域無線通信装置は、送信モジュールと受信モジュールとを備えて構成されている。送信モジュールは、データをチャンネルコーディングしてビットストリームを生成するチャンネルエンコーダ210と、チャンネルエンコーダ210で生成されたビットストリームをUWB信号に変調する変調部220と、変調されたUWB信号を無線で送信するためのRFモジュール400を備えている。また、受信モジュールは、無線で転送されるUWB信号を受信するためのRFモジュール400と、RFモジュール400で受信したUWB信号を復調してビットストリームを生成する復調部320と、ビットストリームでデータを復元するチャンネルデコーダ310とを備えて構成されている。そして、これらの各部が所定の動作を行うことにより、データの送受信を可能にしている。
【特許文献1】特開2004−099276号公報
【特許文献2】特開2004−336764号公報(第5−6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、UBW技術は、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがないという利点を有しているため、上記特許文献1等に開示されるような物品管理等に利用される無線タグ等に応用することが期待できる。また、無線タグにUWB技術を適用することにより、無線タグが定常的に発している電波をタグリーダが受信することにより情報を取得していた従来の通信形態から、タグリーダからの信号を受けて無線タグが返答を行うというアクティブ形態の通信が可能となるというメリットがある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されているような従来の超広帯域無線通信装置は、図12からもわかるように、部品点数が多く、構成が複雑であるため、これをそのまま無線タグに適用すると、コストの増大を招くという問題があった。更に、従来の無線タグに比べて消費電力が増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、UWB技術を用いた通信方式を採用する無線タグ及び無線システムにおいて、コストの低減および消費電力の低減を図ることのできる無線タグ及び無線タグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調することにより、タグ信号を生成するタグ信号生成手段と、前記タグ信号を送信する送信手段とを具備する無線タグを提供する。
【0009】
上記構成によれば、無線タグリーダから受信した信号自体を提供情報により変調し、送信するので、復調手段やパルス発生手段等が不要となる。このように、構成を簡素化することが可能となるので、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。具体的には、消費電力を200mW以下に抑えることができる。
上記提供情報は、例えば、無線タグに個別に割り当てられているタグIDである。
上記変調方式としては、例えば、2相位相変調方式(BPSK:Binary
Phase Shift Keying)、パルス波形変調方式(PSN:Pulse
Shape Modulation)等を採用することが可能である。
また、上記送信手段は、情報を送信するために必要となる最低限の構成をいい、例えば、アンテナ、フィルタ等が挙げられる。
【0010】
上記無線タグは、前記無線タグリーダが信号を送信する信号送信周期に応じて、電源をオンオフする電源制御手段を備えるようにしても良い。
【0011】
上記構成によれば、電源制御手段により、無線タグリーダの信号送信周期に応じて電源がオンオフされるので、消費電力を更に低減させることが可能となる。
【0012】
上記無線タグは、前記信号送信周期に、前記信号を送信する信号送信時間を加算した第1の期間と、前記信号送信周期から前記信号送信時間を減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時する計時手段を更に備え、前記電源制御手段は、前記第1の期間において前記電源をオンし、前記第2の期間において前記電源をオフするようにしても良い。
【0013】
上記構成によれば、信号送信周期に信号送信時間を加算した第1の期間において電源がオン状態とされた後、信号送信周期から信号送信時間を減算した第2の期間において電源がオフ状態とされるという電源のオンオフ動作が繰り返し行われるので、オン期間のうち、2回に1度は無線タグリーダからの信号を受信することが可能となる。これにより、定期的にデータ送受信を行いながらも、電力消費を約半分に減らすことができる。
【0014】
本発明は、無線タグリーダと、前記無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、該タグ信号を送信する無線タグとを具備する無線タグシステムを提供する。
【0015】
本発明は、3つの無線タグリーダと、3つの前記無線タグリーダから受信した信号を、各前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、生成した前記タグ信号を前記信号の送信元である前記無線タグリーダへそれぞれ送信する無線タグと、3つの前記無線タグリーダが前記無線タグに対して前記信号を送信したタイミングと前記無線タグから前記信号に対応する前記タグ信号を受信したタイミングとに基づいて、各前記無線タグリーダと前記無線タグとの間の距離を測定し、測定した前記距離を用いて前記無線タグの位置を特定する位置特定手段とを具備する無線タグシステムを提供する。
【0016】
上記構成によれば、3つの無線タグリーダから信号が無線タグに送られる。無線タグは、受信した信号を各無線タグリーダへ提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、このタグ信号を前記信号の送り元である無線タグリーダに対して送信する。これにより、3つの無線タグリーダに対してタグ信号が送信されることとなる。そして、位置特定手段は、各無線タグリーダが無線タグに対して信号を送信したタイミングと、その信号に対応するタグ信号を無線タグから受信したタイミングとの時間のずれ及び無線タグにおける処理時間(の統計値)から各無線タグリーダと無線タグとの間の距離を測定する。これにより、各無線タグリーダと無線タグとの間の距離をそれぞれ得ることができる。そして、この3つの距離に基づいて、無線タグの位置を特定する。
【0017】
ここで、無線タグは、無線タグリーダから受信した信号自体を提供情報により変調し、送信するので、復調手段やパルス発生手段等が不要となる。このように、構成を簡素化することが可能となるので、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。具体的には、消費電力を200mW以下に抑えることができる。上記提供情報は、例えば、無線タグに個別に割り当てられているタグIDである。上記変調方式としては、例えば、2相位相変調方式(BPSK:Binary
Phase Shift Keying)、パルス波形変調方式(PSN:Pulse
Shape Modulation)等を採用することが可能である。
上記位置特定手段は、上記3つの無線タグリーダのうちのいずれか一つが備えていても良いし、3つの無線タグリーダとは別個の装置として、独立して設けられていても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の無線タグおよび無線タグシステムによれば、コストの低減および消費電力の低減を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の無線タグシステムの実施形態について、第1の実施形態から第6の実施形態について、順に図面を参照して説明する。
【0020】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムについて説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、2相位相変調(BPSK:Binary Phase Shift
Keying)方式を用いてデータを変調する変調器を備えた無線タグを適用している。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示したブロック図である。
図1に示すように、無線タグシステムは、無線タグリーダ1及び無線タグ2を備えて構成されている。
無線タグリーダ1は、アンテナ11、アンテナ11を介して送受信される信号のうち、所定の周波数範囲の周波数の信号だけを通過させ、それ以外の周波数の信号を減衰させるバンドパスフィルタ(BPF:Band−Pass
Filter)12、送信モジュール13、及び受信モジュール14を備えている。
【0021】
送信モジュール13は、例えば、コード拡散器131、パルス発生器132、及びBPM(Bi Phase Modulation)変調器133を備えて構成されている。また、受信モジュール14は、例えば、パルス発生器141、乗算器142、相関器143、テンプレートコード144を備えて構成されている。
【0022】
一方、無線タグ2は、アンテナ21、アンテナ21を介して送受信される信号のうち、所定の周波数範囲の周波数の信号だけを通過させ、それ以外の周波数の信号を減衰させるバンドパスフィルタ(BPF:Band−Pass
Filter)22、無線タグリーダ1から受信した信号を、無線タグリーダ1に提供する提供情報(例えば、タグID)を用いて変調することにより、タグID変調信号(タグ信号)を生成するタグ信号生成部(タグ信号生成手段)23を備えている。
【0023】
次に、上記構成を備える無線タグシステムにおける作用について図2を参照して説明する。
図2は、上記各部により生成される信号のタイミングチャートを示した図である。
まず、無線タグリーダ1内の送信モジュール13により、無線タグ2へ送信する信号が生成される。具体的には、まず、コード拡散器131は、図示しない制御部により生成されたデータレート1Mbpsのビーコン信号(図2(a)参照)と、例えば、1Gbps、コード周期1MHzの拡散コード(図2(b)参照)とを積算することにより、帯域幅1GHzの拡散ビーコン信号を生成する。例えば、ビーコン信号が「0」の場合には、拡散コードをそのまま拡散ビーコン信号として出力し、ビーコン信号が「1」の場合には、拡散コードを反転させた信号を拡散ビーコン信号として出力する(図2(c)参照)。
【0024】
この拡散ビーコン信号は、BPM変調器133に供給される。BPM変調器133は、この拡散ビーコン信号と、パルス発生器132から供給される1GHzのパルス信号(図2(d)参照)とを積算することにより、バイフェーズ(Bi−Phase)変調ビーコン信号(以下「変調ビーコン信号」という。)を生成する(図2(e)参照)。そして、BPM変調器133により生成された変調ビーコン信号は、バンドパスフィルタ12を経由することにより所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、アンテナ11を介して無線タグ2へ送信される。
【0025】
無線タグ2のアンテナ21を介して受信された上記変調ビーコン信号は、無線タグ2が備えるバンドパスフィルタ22を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、タグ信号生成部23に供給される。ここで、タグ信号生成部23に供給される信号を「受信変調ビーコン信号」という(図2(f)参照)。なお、無線タグリーダ1から変調ビーコン信号が送信されてから無線タグ2が受信するまでに時間遅延T1が生じている。タグ信号生成部23は、BPSK方式を採用した変調器を備えており、受信変調ビーコン信号を無線タグリーダ1に対して提供する情報、例えば、自己に割り当てられているタグIDデータ(図2(g)参照)を用いて変調する。具体的には、タグ信号生成部23は、無線タグ2に内蔵されているメモリ(図示略)からタグIDを読み出し、このタグIDに基づいて受信変調ビーコン信号の極性反転を行うことにより、ID変調信号(タグ信号)を生成する(図2(h)参照)。タグ信号生成部23により生成されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、アンテナ21を介して無線タグリーダ1へ送信される。このようにして、無線タグリーダ1から受信した信号である受信変調ビーコン信号に、アナログ的にタグIDが重畳された信号が無線タグリーダ1へ返信されることとなる。
【0026】
無線タグリーダ2のアンテナ11を介して受信された上記タグID変調信号は、バンドパスフィルタ12を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、受信モジュール14内の乗算器142に供給される。ここで、乗算器142に供給される信号を「受信タグID変調信号」という(図2(i)参照)。なお、無線タグ2からタグID変調信号が送信されてから無線タグリーダ1の乗算器142が受信するまでに時間遅延T2が生じている。
【0027】
乗算器142は、この受信タグID変調信号と、パルス発生器141から供給される1GHzのパルス信号(図2(j)参照)とを積算することにより復調を行い、復調拡散タグIDデータ(図2(k)参照)を生成する。乗算器141にて生成された復調拡散タグIDデータは、相関器143に供給される。相関器143は、この復調拡散タグIDデータとテンプレートコード(図2(l)参照)144との相関値計算を行うことにより、タグIDを復元する。ここで、復元されたタグIDを復調タグIDデータという(図2(m)参照)。
【0028】
また、相関器143では、無線タグリーダ1が変調ビーコン信号(図2(e)参照)を送信してから、この変調ビーコン信号に対応するタグID変調信号(図2(h)参照)が無線タグリーダ1に受信されるまでの時間遅延から無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出する。具体的には、拡散コード(図2(b)参照)に対するテンプレートコード(図2(l)参照)の時間遅延Tg及び無線タグにおける処理時間(の統計値)から無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出する。そして、相関器143により復元された復元タグIDデータ及び距離Dは、図示しない制御部へ供給されることにより、所定の後続処理が行われる。
【0029】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムに適用される無線タグ2は、無線タグリーダ1から受信した信号自体をタグIDを用いて変調したタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を無線タグリーダ1に対して送信する。これにより、復調器やパルス発生器等を備える必要がなくなるため、構成を簡素化することが可能となり、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る無線タグシステムについて、図3を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、パルス波形変調方式(PSN:Pulse Shape Modulation)方式を用いてデータを変調する無線タグを適用したものである。また、上述した無線タグリーダ1においては、UWBインパルス信号として、1GHzのパルス信号を利用していたが、本実施形態においては、この1GHzのパルス信号に代わって、修正エルミートパルス(MHP:Modified Hermite Pluse)を使用する。このMHPは、異なる次数の波形が互いに直交するUWBインパルス信号である。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0031】
図3において、コード拡散器131により生成された拡散ビーコン信号は、BPM変調器151に供給される。BPM変調器151は、次数nの修正エルミートパルス(MHP)信号と拡散ビーコン信号とを積算することにより、バイフェーズ変調されたMHPビーコン信号を生成する。生成されたMHPビーコン信号は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して無線タグ1へ送信される。無線タグ2のアンテナ21、バンドパスフィルタ22を介して受信されたMHPビーコン信号(以下、受信されたMHPビーコン信号を「受信MHPビーコン信号」という。)は、本実施形態に係るタグ信号生成部24へ供給される。タグ信号生成部24は、図示しないメモリに格納されているタグIDに応じて受信MHPビーコン信号の次数を変えることにより、タグID変調信号(タグ信号)を生成する。
【0032】
具体的には、本実施形態に係るタグ信号生成部24は、増幅器241、切替器242、微分回路243、及びバイパス経路Pを備えて構成されている。
このようなタグ信号生成部24において、受信MHPビーコン信号は、まず増幅器241により増幅された後、切替器242へ供給される。切替器242は、図示しないメモリに格納されているタグIDに応じて、接続先を切り替える。例えば、切替器242は、タグIDが「1」のときは、微分回路243に接続し、タグIDが「0」のときは、微分回路をバイパスする経路Pに接続する。
【0033】
これにより、タグIDが「1」のときには、増幅器241から出力された受信MHPビーコン信号が、微分回路243を経由することによりその次数が1大きい信号波形へと変形され、一方、タグIDが「0」のときには、微分回路243をバイパスする経路Pを経由することにより、その次数が変化しない信号とされ、n次又はn+1次の波形からなるタグID変調信号(タグ信号)が生成される。
このようにして生成されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を介して送信される。
【0034】
このタグID変調信号は、無線タグリーダ2のアンテナ11、バンドパスフィルタ12を介して、受信モジュール16内の乗算器161及び162に供給される(以下、ここで供給される信号を「受信タグID変調信号」という。)。乗算器161は、MHP発生器163から供給されるn次のMHP信号と受信タグID変調信号とを積算して出力する。一方、乗算器162は、MHP発生器164から供給されるn+1次のMHP信号と受信タグID変調信号とを積算して出力する。乗算器161及び162からの積算出力は、比較器165に供給され、積算出力の大きい信号が選択されて、復調拡散タグIDデータとして相関器143へ供給される。相関器143は、テンプレートコード144と復調拡散タグIDデータとの相関値計算を行うことにより、タグIDデータを復元する。そして、復元したタグIDデータを復調タグIDデータとして、図示しない制御部へ供給する。また、相関器143は、上述の第1の実施形態と同様の手法により、無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出し、この距離Dを図示しない制御部へ供給する。
【0035】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグ2によれば、無線タグリーダ1から受信した信号自体をタグIDを用いて変調したタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を無線タグリーダ1に対して送信する。これにより、復調器やパルス発生器等を備える必要がなくなるため、構成を簡素化することが可能となり、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。
【0036】
なお、上述した実施形態においては、無線タグ2のタグ信号生成部24が、1つの微分回路243を備える場合について説明したが、微分回路243の個数を増やすことによりさまざまな次数のタグID変調信号を生成することが可能となる。
また、上述した実施形態においては、無線タグリーダ1と、1つの無線タグ2とからなる無線タグシステムについて説明してしたが、無線タグ2の数については限定されない。例えば、無線タグリーダ1が複数の無線タグ2とデータの送受信を行う場合には、各無線タグが備える微分回路243の数をユニークに変えることにより、各無線タグから返信されるタグID変調信号の次数を異ならせることが可能となる。このように、異なる次数のMHPを返信させることにより、複数タグの混在環境下における他局間干渉を軽減させることができる。
【0037】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムについて、図4を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、上記第1の実施形態に係る無線タグ2に、タイマ(計時手段)及び電源制御部(電源制御手段)を更に備えた構成をとる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0038】
図4に示すように、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、信号送信周期Tframeを計時するタイマ134と、タイマ134による計時に基づいて、図示しない制御部から供給されるビーコン信号をコード拡散器131へ供給するスイッチ135を更に備えている。これにより、ビーコン信号は、信号送信周期Tframeでコード拡散器131に供給されることとなるので、図5(a)に示すように、信号送信周期Tframeで、無線タグ1に対して変調ビーコン信号(図2(e)参照)が送信されることとなる。なお、図5(a)において、変調ビーコン信号が送信されている期間は、信号送信時間Tbeaconとして示し、それ以外の期間は、受信モードとして表している。
【0039】
一方、無線タグ2は、無線タグリーダ1が変調ビーコン信号を送信する信号送信周期Tframeに応じて、電源をオンオフする電源制御部(電源制御手段)26を備えている。具体的には、無線タグ2は、信号送信周期Tframeに、変調ビーコン信号が送信される信号送信時間Tbeaconを加算した第1の期間と、信号送信周期Tframeから信号送信時間Tbeaconを減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時するタイマ(計時手段)25を備えており、電源制御部26はタイマ25により計時された第1の期間において電源をオンにし、第2の期間において電源をオフにする。これにより、図5(b)に示すように、電源オンの期間と、電源オフの期間とが繰り返されることとなる。そして、図5(c)に示すように、電源オンの期間に、無線タグ2において変調ビーコン信号が受信されると、タグ信号生成部23により、変調ビーコン信号がタグIDに基づいて変調されてタグID変調信号が生成され、このタグID変調信号が無線タグリーダ2へ送信されることとなる。これにより、図5(d)に示すように、無線タグリーダ2の受信モードにおいて、タグID変調信号が受信されることとなる。
【0040】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグによれば、信号送信周期Tframeに信号送信時間Tbeaconを加算した第1の期間において電源がオン状態とされた後、信号送信周期Tframeから信号送信時間Tbeaconを減算した第2の期間において電源がオフ状態とされるという電源のオンオフ動作が繰り返し行われるので、オン期間のうち、2回に1度は無線タグリーダからの信号を受信することが可能となる。これにより、定期的にデータ送受信を行いながらも、電力消費を約半分に減らすことができるという効果を奏する。なお、本実施形態に係る電源オンオフの機能については、図3に示した第2の実施形態に係る無線タグシステムにも適用可能である。
【0041】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムについて、図を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、無線タグリーダ又は無線タグの周辺に複数の通信機器が存在する場合であっても特定の無線タグリーダと無線タグとの間の通信を安定して行うための機能を図1に示した無線タグシステムに更に付加した構成をとる。
【0042】
具体的には、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、図1に示した無線タグリーダ1と構成を略同じくするが、図6に示すように、受信モジュール14とバンドパスフィルタ12とをつなぐ受信経路に、復調器群50及び比較器51をこの順で、更に備える点で異なる。また、本実施形態に係る無線タグ2についても、図1に示した無線タグ2と構成を略同じくするが、バンドパスフィルタ22とタグ信号生成部23とをつなぐ受信経路の間に、直交マッチドフィルタ群27を備え、また、タグ信号生成部23とバンドパスフィルタ22とをつなぐ送信経路の間にコード拡散器28を備える点で異なる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0043】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
まず、無線タグリーダ1の送信モジュール13により生成された変調ビーコン信号(図2(e))は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して送信される。この変調ビーコン信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグ2のアンテナ21により受信され、バンドパスフィルタ22を経由し、更に、図示しない所定の通信回路により受信ベースバンド信号に変換された後、直交マッチドフィルタ群27に供給される。
【0044】
ここで、直交マッチドフィルタ群27は、図7に示すように、複数のマッチドフィルタMF1からMFNと、LC(Linear Combiner)重み制御部272、減算器273、及びビーコン信号抽出部274を備えている。
直交マッチドフィルタ群27において、受信ベースバンド信号は、図7に示すマッチドフィルタMF1乃至MFNに供給される。各マッチドフィルタMF1乃至MFNにおいて、受信ベースバンド信号と各拡散コードPN1乃至PNNとの相関が取られる。ここで、マッチドフィルタMF1は、取得したい希望信号の拡散コードPN1に対応する拡散コードC1を保有するものであり、それ以外のマッチドフィルタMF2乃至MFNは、希望信号の拡散コードPN1と完全に直交する拡散コードCi(i=2〜N)を保有している。なお、この拡散コードCi(i=2〜N)は、希望信号の拡散コードPN1から作成することができ、例えば、Gram−Schmidtの直交化法を用いて作成することが可能である。
【0045】
この結果、マッチドフィルタMF1の出力には希望信号の成分及び他のタグリーダ−タグ間通信からの干渉成分及び雑音成分が含まれる。一方、他のマッチドフィルタMF2乃至MFNにおいて、受信ベースバンド信号は、個々のコードCi(i=2〜N)との相関がとられ、その出力がLC重み制御部272に出力される。ここで、マッチドフィルタMF2からMFNにおいて用いられる各拡散コードCi(i=2〜N)は、希望信号の拡散コードPN1と完全に直交しているため、マッチドフィルタMF2乃至MFNの出力には、希望信号の成分は現れないこととなる。
【0046】
LC重み制御部272では、マッチドフィルタMF2乃至MFNの出力β2乃至βNに、対応する重みW2乃至WNをそれぞれ乗算し、更に、その結果を足し合わせることにより、他局間干渉成分を算出し、この他局間干渉成分を減算器273に出力する。ここでLC重み制御部272は、LC重み制御部272の出力が、MF1の出力における他局間干渉成分の大きさと等しくなるように重みを制御する。この制御アルゴリズムは、データ判定の平均自乗誤差が最小になるようにLMS等の適応アルゴリズムを用いることが可能である。
【0047】
減算器273は、マッチドフィルタMF1の出力β1から、重み制御部272から供給された他局間干渉成分を差し引くことにより、希望信号の成分のみを抽出し、出力する。希望信号の成分は硬判定部274を経由して、後段に設けられているタグ信号生成部23(図6参照)へ供給される。
図6において、タグ信号生成部23は、直交マッチドフィルタ群27から供給された希望信号(つまり、無線タグリーダ1から送信された変調ビーコン信号)を自己が保有するタグIDにより変調し、このタグID変調信号を出力する。タグID変調信号は、コード拡散器28に供給され、ここで、各拡散コードPNn(n=2〜N)で拡散された後、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を経由して送信される。
このように、本実施形態では、無線タグリーダ1において拡散コードPN1を用いたコード化が行われることにより変調ビーコン信号が生成され、更に、無線タグ2においてビーコン信号が復調された後、再び拡散コードPNi(i=2乃至N)を用いたコード化が行われることによりタグID変調信号が生成されることとなる。
【0048】
無線タグ2から送信された拡散後のタグID変調信号は、他のタグが発する信号に干渉されて無線タグリーダ1のアンテナ11により受信され、バンドパスフィルタ12を経由して、復調器群50に供給される。具体的には、復調器群50を構成する各復調器DEM2乃至DEMN(図8参照)に供給される。各復調器DEMi(i=2〜N)は、図8に示すように、同期回路501、相関器502、各復調器に対応するテンプレートコード503、ローパスフィルタ504、及び硬判定部505を備えて構成されている。
【0049】
このような構成からなる復調器群50において、受信信号は、各復調器DEM2乃至DEMNに供給されることにより、各拡散ビーコン信号PNn(n=2〜N)との逆拡散が施された後、ローパスフィルタ504、硬判定部505を経て、出力される。このようにして、各復調器DEM2乃至DEMNから出力された信号は、後段に設けられている比較器51にそれぞれ供給される。比較器51は、供給された各信号の中から最大の出力を選択し、選択した信号を後段に設けられている受信モジュール14(図1参照)に出力する。これにより、上述した第1の実施形態と同様の手法により、タグID並びに距離Dが算出され、この結果が図示しない制御部へ供給される。
【0050】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグ2が直交マッチドフィルタ群27等を備えるので、他局間干渉を軽減することが可能となる。これにより、複数のタグリーダ及びタグが存在し、通信リンクが混在する環境においても確実に所望の信号のみを抽出することが可能となるので、特定の無線タグリーダとの安定した通信を実現させることができる。
【0051】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムについて、図を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、上述した第4の実施形態に係る無線タグシステムの他の実施例であり、周辺に複数の通信機器が存在する場合であっても特定の無線タグリーダと無線タグとの間の通信を安定して行うための機能を図1に示した無線タグシステムに更に付加した構成をとる。
【0052】
具体的には、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、図1に示した無線タグリーダ1と構成を略同じくするが、図9に示すように、受信モジュール14とバンドパスフィルタ12とをつなぐ受信経路に干渉キャンセラ60を更に備える点で異なる。また、本実施形態に係る無線タグ2についても、図1に示した無線タグ2と構成を略同じくするが、タグIDを各拡散コードCi(i=1〜N)でコード化した信号をタグ信号生成部23に対して供給するコード拡散器70を更に備える点で異なる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0053】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
まず、無線タグリーダ1の送信モジュール13により生成された変調ビーコン信号(図2(e)参照)は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して送信される。この変調ビーコン信号は、無線タグリーダ固有の拡散コードPNによってコード化されている。この変調ビーコン信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグ2のアンテナ21により受信され、バンドパスフィルタ22、増幅器を経由して、タグ信号生成部23に供給される(以下、このようにしてタグ信号生成部23に供給された信号を「受信変調ビーコン信号」という。)。
【0054】
一方、コード拡散器70は、タグID及び送信時刻データを低速な拡散コードCi(i=1〜N)により拡散変調し、この拡散変調したタグID及び送信時刻データをタグ信号生成部23へ供給する。
タグ信号生成部23は、上記受信変調ビーコン信号とコード拡散器70から供給されるタグID及び送信時刻データとを積算することによって、具体的には、極性反転させることによりタグID変調信号を生成し、出力する。タグ信号生成部23から出力されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を介して送信される。
このように、本実施形態では、無線タグリーダ1において拡散コードPN1を用いたコード化が行われることにより変調ビーコン信号が生成され、更に、無線タグ2において低速なコードCi(i=1乃至N)を用いたタグID及び送信時刻データの拡散変調が行われることによりタグID変調信号が生成されることとなる。
【0055】
無線タグ2から送信されたタグID変調信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグリーダ1のアンテナ11により受信され、バンドパスフィルタ12を経由して、干渉キャンセラ60に供給される。
干渉キャンセラ60は、図10に示すように、複数のフィルタバンクFB1乃至FBNを備えている。ここで、N−1個のフィルタバンクFB2乃至FBNは、最大の残留他局間干渉が大きい順に、シリアルに接続されている。各フィルタバンクFBi(i=1〜N)は、それぞれ復調器DEMi(i=1〜N)、変調器MODi(i=1〜N)、適応ディジタルフィルタADFi(Adaptive Digital Filter)(i=1〜N)を備えて構成されている。
【0056】
上記復調器DEMi(i=1〜N)は、例えば、図8に示した復調器と略同様の構成を有するが、本実施形態においては、拡散コードとしてPN×Ciを用いる。また、図示していないが、変調器MODi(i=1〜N)は、対応する復調器DEMi(i=1〜N)が備えるテンプレートコードで用いた拡散コードPN×Ciを利用して変調を行うコード拡散器を備えている。
【0057】
このような構成を備える干渉キャンセラ60では、まず、受信信号は、フィルタバンクFB2の復調器DEM2に供給され、ここで拡散ビーコン信号PN及び拡散コードC2との相関をとることで復調が行われる。このとき、相関結果をフィードバックさせることにより、同期を正確にとることができる。また、相関結果によりデータ判定を行い、判定したデータシンボルを後段に設けられている変調器MOD2に供給する。変調器MOD2は、供給されたデータシンボルに対して、再度拡散ビーコン信号PN及び拡散コードC2を用いて拡散変調をかけ、干渉するタグからの送信信号を再現する。この送信信号は、適応ディジタルフィルタADF2に供給され、ここで通信路特性が付加される。これにより、受信信号に含まれる干渉信号成分が再現されることとなる。
【0058】
再現された干渉信号成分は、減算器に供給される。減算器は、受信信号からフィルタバンクFB2により再現された干渉信号成分を差し引くことにより、干渉除去を行い、除去後の受信信号を次段のフィルタバンクFB3に出力する。そして、同様の動作が個々のフィルタバンクFB3乃至FBNにおいて順次行われることにより、受信信号から干渉信号成分が除々に除去され、最終的に、フィルタバンクFB1に供給されることにより、受信信号に含まれていた最小の残留他局間干渉が除去される。これにより、受信信号から全ての干渉信号成分が除去されることとなる。
また、各フィルタバンクFB1乃至FBNと並列に遅延回路61が設けられており、この遅延回路61により時間遅延が求められる。
【0059】
このようにして求められた干渉信号成分が除去された受信信号及び時間遅延は、後段に設けられる受信モジュール14(図9参照)に供給され、ここで、無線タグ2のタグID及び無線タグ2と無線タグリーダ1との間の距離Dが求められることとなる。
【0060】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグリーダ1側に干渉キャンセラ60を備えるので、複数タグが存在する場合でも、特定のタグIDを持つ無線タグとのみ通信を行うことが可能となる。また、これにより、無線タグまでの距離を測ることが可能となる。
更に、干渉キャンセラ60において、複数のフィルタバンクをシリアルに接続することにより、電力の大きな干渉成分から順に除去することが可能となる。これにより、タグ間の電力制御が不可能な環境化での遠近問題に対処することができる。
【0061】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態に係る無線タグシステムについて、図11を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cと、無線タグ2と、位置特定装置100とを備えて構成されている。ここで、無線タグリーダ1a、1b、1cは、それぞれ、上述した第1の実施形態に係る無線タグリーダ1と同一の構成からなる。
【0062】
このような構成を備える無線タグシステムにおいて、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cから変調ビーコン信号が無線タグ2に送られると、無線タグ2は、受信した変調ビーコン信号を各無線タグリーダ1a、1b、1cへ提供する提供情報、つまり自己のタグIDを用いて変調してタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を各変調ビーコン信号の送り元である無線タグリーダ1a、1b、1cに対してそれぞれ送信する。なお、この送受信の過程については、上述した第1の実施形態と同様である。
【0063】
これにより、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cに対してタグID変調信号が送信されることとなる。各無線タグリーダ1a、1b、1cは、受信したタグID変調信号を用いてタグIDを復調するとともに、無線タグ2までの距離D1、D2、D3をそれぞれ算出し、算出した距離D1、D2、D3を位置特定装置100に対して情報伝達媒体を介して送信する。なお、このときの送信手法については、無線、有線を問わない。
【0064】
位置特定装置100は、無線タグリーダ1aの位置情報(x1,y1,z1)、無線タグリーダ1bの位置情報(x2,y2,z2)、無線タグリーダ1cの位置情報(x3,y3,z3)を予め保有しており、これら位置情報と、各無線タグリーダ1a、1b、1cから送信されてきた上記距離D1、D2、D3とを用いて、無線タグ2の3次元位置座標(x,y,z)を特定する。
具体的には、以下の3つの連立方程式(式(1)〜式(3))を解くことにより、無線タグ2の3次元座標(x,y,z)を求める。
【0065】
(x−x1)2+(y−y1)2+(z−z1)2=D12 (1)
(x−x2)2+(y−y2)2+(z−z2)2=D22 (2)
(x−x3)2+(y−y3)2+(z−z3)2=D32 (3)
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグリーダ1a、1b、1cにより求められた距離D1、D2、D3を有効に利用して無線タグ2の3次元座標を特定することが可能となる。
なお、上記実施形態において、距離D1、D2、D3は、各無線タグリーダ1a、1b、1cによりそれぞれ求められていたが、これに代わって、位置特定装置100が一元的に求めるようにしても良い。
また、上記実施形態においては、位置特定装置100を独立した装置として設けた例について説明したが、位置特定装置100は、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cのいずれかが備えるようにしても良い。
また、上述した実施形態では、第1の実施形態に係る無線タグリーダ1と無線タグとを適用した場合について説明したが、これらの例に限られず、第2乃至第5の実施形態に係る無線タグリーダ、無線タグを適用しても良い。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、無線タグリーダ1又は無線タグ2の周辺に存在する通信装置による干渉を除去するための機能は、上述した第4又は第5の実施形態において説明した手法に限られることなく、公知のノイズ除去手法を適用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムにおいて生成される各種信号を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムにおける無線タグリーダ及び無線タグの電源オンオフのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示した直交マッチドフィルタ群の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図6に示した復調器群を構成する各復調器の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した干渉キャンセラの概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図12】従来の超広帯域無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
1、1a、1b、1c 無線タグリーダ
2 無線タグ
13 送信モジュール
14 受信モジュール
23、24 タグ信号生成部
27 直交マッチドフィルタ群
60 干渉キャンセラ
100 位置特定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、UWB(Ultra
Wide Band:超広帯域)技術を用いた通信方式によりデータ送受を可能とする無線タグ及び無線タグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫で行われる物品等の保管・輸送管理等に、無線タグ(RF−ID(Radio Frequency Identification)を用いる手法が提案されている。無線タグとは、IDを記憶した小型の発信器(タグ)の動きを受信器(無線タグリーダ)で検知するものであり、タグ寸法が微小であり安価なことからその普及が見込まれている。例えば、特開2004−099276号公報(特許文献1)には、コンテナ等の容器単位で無線タグを実装し、この無線タグからの情報を無線タグリーダにて受け取ることにより、必要な物品の所在位置を特定し、大量の物量の管理を容易化する技術が開示されている。
【0003】
一方、近年、次世代無線通信技術として、UWB技術を用いた通信方式が開発されている。この通信方式は、データを1GHz程度の極めて広い周波数帯に拡散して、搬送波を使わずにパルスにデータを重畳させて送受信を行なうものである。それぞれの周波数帯に送信されるデータはノイズ程度の強さしかないため、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがなく、消費電力も少ないという利点を有している。また、このUWBは、位置測定、レーダ等にも応用が利き、非常に幅広い分野での活用が期待されている。
例えば、特開2004−336764号公報(特許文献2)には、UWB技術を用いた通信装置として以下のような構成が開示されている。
【0004】
図12に、上記特許文献2に開示されている超広帯域無線通信装置の一構成例を示す。この図に示されるように、超広帯域無線通信装置は、送信モジュールと受信モジュールとを備えて構成されている。送信モジュールは、データをチャンネルコーディングしてビットストリームを生成するチャンネルエンコーダ210と、チャンネルエンコーダ210で生成されたビットストリームをUWB信号に変調する変調部220と、変調されたUWB信号を無線で送信するためのRFモジュール400を備えている。また、受信モジュールは、無線で転送されるUWB信号を受信するためのRFモジュール400と、RFモジュール400で受信したUWB信号を復調してビットストリームを生成する復調部320と、ビットストリームでデータを復元するチャンネルデコーダ310とを備えて構成されている。そして、これらの各部が所定の動作を行うことにより、データの送受信を可能にしている。
【特許文献1】特開2004−099276号公報
【特許文献2】特開2004−336764号公報(第5−6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、UBW技術は、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがないという利点を有しているため、上記特許文献1等に開示されるような物品管理等に利用される無線タグ等に応用することが期待できる。また、無線タグにUWB技術を適用することにより、無線タグが定常的に発している電波をタグリーダが受信することにより情報を取得していた従来の通信形態から、タグリーダからの信号を受けて無線タグが返答を行うというアクティブ形態の通信が可能となるというメリットがある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されているような従来の超広帯域無線通信装置は、図12からもわかるように、部品点数が多く、構成が複雑であるため、これをそのまま無線タグに適用すると、コストの増大を招くという問題があった。更に、従来の無線タグに比べて消費電力が増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、UWB技術を用いた通信方式を採用する無線タグ及び無線システムにおいて、コストの低減および消費電力の低減を図ることのできる無線タグ及び無線タグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調することにより、タグ信号を生成するタグ信号生成手段と、前記タグ信号を送信する送信手段とを具備する無線タグを提供する。
【0009】
上記構成によれば、無線タグリーダから受信した信号自体を提供情報により変調し、送信するので、復調手段やパルス発生手段等が不要となる。このように、構成を簡素化することが可能となるので、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。具体的には、消費電力を200mW以下に抑えることができる。
上記提供情報は、例えば、無線タグに個別に割り当てられているタグIDである。
上記変調方式としては、例えば、2相位相変調方式(BPSK:Binary
Phase Shift Keying)、パルス波形変調方式(PSN:Pulse
Shape Modulation)等を採用することが可能である。
また、上記送信手段は、情報を送信するために必要となる最低限の構成をいい、例えば、アンテナ、フィルタ等が挙げられる。
【0010】
上記無線タグは、前記無線タグリーダが信号を送信する信号送信周期に応じて、電源をオンオフする電源制御手段を備えるようにしても良い。
【0011】
上記構成によれば、電源制御手段により、無線タグリーダの信号送信周期に応じて電源がオンオフされるので、消費電力を更に低減させることが可能となる。
【0012】
上記無線タグは、前記信号送信周期に、前記信号を送信する信号送信時間を加算した第1の期間と、前記信号送信周期から前記信号送信時間を減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時する計時手段を更に備え、前記電源制御手段は、前記第1の期間において前記電源をオンし、前記第2の期間において前記電源をオフするようにしても良い。
【0013】
上記構成によれば、信号送信周期に信号送信時間を加算した第1の期間において電源がオン状態とされた後、信号送信周期から信号送信時間を減算した第2の期間において電源がオフ状態とされるという電源のオンオフ動作が繰り返し行われるので、オン期間のうち、2回に1度は無線タグリーダからの信号を受信することが可能となる。これにより、定期的にデータ送受信を行いながらも、電力消費を約半分に減らすことができる。
【0014】
本発明は、無線タグリーダと、前記無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、該タグ信号を送信する無線タグとを具備する無線タグシステムを提供する。
【0015】
本発明は、3つの無線タグリーダと、3つの前記無線タグリーダから受信した信号を、各前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、生成した前記タグ信号を前記信号の送信元である前記無線タグリーダへそれぞれ送信する無線タグと、3つの前記無線タグリーダが前記無線タグに対して前記信号を送信したタイミングと前記無線タグから前記信号に対応する前記タグ信号を受信したタイミングとに基づいて、各前記無線タグリーダと前記無線タグとの間の距離を測定し、測定した前記距離を用いて前記無線タグの位置を特定する位置特定手段とを具備する無線タグシステムを提供する。
【0016】
上記構成によれば、3つの無線タグリーダから信号が無線タグに送られる。無線タグは、受信した信号を各無線タグリーダへ提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、このタグ信号を前記信号の送り元である無線タグリーダに対して送信する。これにより、3つの無線タグリーダに対してタグ信号が送信されることとなる。そして、位置特定手段は、各無線タグリーダが無線タグに対して信号を送信したタイミングと、その信号に対応するタグ信号を無線タグから受信したタイミングとの時間のずれ及び無線タグにおける処理時間(の統計値)から各無線タグリーダと無線タグとの間の距離を測定する。これにより、各無線タグリーダと無線タグとの間の距離をそれぞれ得ることができる。そして、この3つの距離に基づいて、無線タグの位置を特定する。
【0017】
ここで、無線タグは、無線タグリーダから受信した信号自体を提供情報により変調し、送信するので、復調手段やパルス発生手段等が不要となる。このように、構成を簡素化することが可能となるので、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。具体的には、消費電力を200mW以下に抑えることができる。上記提供情報は、例えば、無線タグに個別に割り当てられているタグIDである。上記変調方式としては、例えば、2相位相変調方式(BPSK:Binary
Phase Shift Keying)、パルス波形変調方式(PSN:Pulse
Shape Modulation)等を採用することが可能である。
上記位置特定手段は、上記3つの無線タグリーダのうちのいずれか一つが備えていても良いし、3つの無線タグリーダとは別個の装置として、独立して設けられていても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の無線タグおよび無線タグシステムによれば、コストの低減および消費電力の低減を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の無線タグシステムの実施形態について、第1の実施形態から第6の実施形態について、順に図面を参照して説明する。
【0020】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムについて説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、2相位相変調(BPSK:Binary Phase Shift
Keying)方式を用いてデータを変調する変調器を備えた無線タグを適用している。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示したブロック図である。
図1に示すように、無線タグシステムは、無線タグリーダ1及び無線タグ2を備えて構成されている。
無線タグリーダ1は、アンテナ11、アンテナ11を介して送受信される信号のうち、所定の周波数範囲の周波数の信号だけを通過させ、それ以外の周波数の信号を減衰させるバンドパスフィルタ(BPF:Band−Pass
Filter)12、送信モジュール13、及び受信モジュール14を備えている。
【0021】
送信モジュール13は、例えば、コード拡散器131、パルス発生器132、及びBPM(Bi Phase Modulation)変調器133を備えて構成されている。また、受信モジュール14は、例えば、パルス発生器141、乗算器142、相関器143、テンプレートコード144を備えて構成されている。
【0022】
一方、無線タグ2は、アンテナ21、アンテナ21を介して送受信される信号のうち、所定の周波数範囲の周波数の信号だけを通過させ、それ以外の周波数の信号を減衰させるバンドパスフィルタ(BPF:Band−Pass
Filter)22、無線タグリーダ1から受信した信号を、無線タグリーダ1に提供する提供情報(例えば、タグID)を用いて変調することにより、タグID変調信号(タグ信号)を生成するタグ信号生成部(タグ信号生成手段)23を備えている。
【0023】
次に、上記構成を備える無線タグシステムにおける作用について図2を参照して説明する。
図2は、上記各部により生成される信号のタイミングチャートを示した図である。
まず、無線タグリーダ1内の送信モジュール13により、無線タグ2へ送信する信号が生成される。具体的には、まず、コード拡散器131は、図示しない制御部により生成されたデータレート1Mbpsのビーコン信号(図2(a)参照)と、例えば、1Gbps、コード周期1MHzの拡散コード(図2(b)参照)とを積算することにより、帯域幅1GHzの拡散ビーコン信号を生成する。例えば、ビーコン信号が「0」の場合には、拡散コードをそのまま拡散ビーコン信号として出力し、ビーコン信号が「1」の場合には、拡散コードを反転させた信号を拡散ビーコン信号として出力する(図2(c)参照)。
【0024】
この拡散ビーコン信号は、BPM変調器133に供給される。BPM変調器133は、この拡散ビーコン信号と、パルス発生器132から供給される1GHzのパルス信号(図2(d)参照)とを積算することにより、バイフェーズ(Bi−Phase)変調ビーコン信号(以下「変調ビーコン信号」という。)を生成する(図2(e)参照)。そして、BPM変調器133により生成された変調ビーコン信号は、バンドパスフィルタ12を経由することにより所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、アンテナ11を介して無線タグ2へ送信される。
【0025】
無線タグ2のアンテナ21を介して受信された上記変調ビーコン信号は、無線タグ2が備えるバンドパスフィルタ22を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、タグ信号生成部23に供給される。ここで、タグ信号生成部23に供給される信号を「受信変調ビーコン信号」という(図2(f)参照)。なお、無線タグリーダ1から変調ビーコン信号が送信されてから無線タグ2が受信するまでに時間遅延T1が生じている。タグ信号生成部23は、BPSK方式を採用した変調器を備えており、受信変調ビーコン信号を無線タグリーダ1に対して提供する情報、例えば、自己に割り当てられているタグIDデータ(図2(g)参照)を用いて変調する。具体的には、タグ信号生成部23は、無線タグ2に内蔵されているメモリ(図示略)からタグIDを読み出し、このタグIDに基づいて受信変調ビーコン信号の極性反転を行うことにより、ID変調信号(タグ信号)を生成する(図2(h)参照)。タグ信号生成部23により生成されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、アンテナ21を介して無線タグリーダ1へ送信される。このようにして、無線タグリーダ1から受信した信号である受信変調ビーコン信号に、アナログ的にタグIDが重畳された信号が無線タグリーダ1へ返信されることとなる。
【0026】
無線タグリーダ2のアンテナ11を介して受信された上記タグID変調信号は、バンドパスフィルタ12を経由することにより、所定の周波数範囲以外の周波数の信号が減衰され、受信モジュール14内の乗算器142に供給される。ここで、乗算器142に供給される信号を「受信タグID変調信号」という(図2(i)参照)。なお、無線タグ2からタグID変調信号が送信されてから無線タグリーダ1の乗算器142が受信するまでに時間遅延T2が生じている。
【0027】
乗算器142は、この受信タグID変調信号と、パルス発生器141から供給される1GHzのパルス信号(図2(j)参照)とを積算することにより復調を行い、復調拡散タグIDデータ(図2(k)参照)を生成する。乗算器141にて生成された復調拡散タグIDデータは、相関器143に供給される。相関器143は、この復調拡散タグIDデータとテンプレートコード(図2(l)参照)144との相関値計算を行うことにより、タグIDを復元する。ここで、復元されたタグIDを復調タグIDデータという(図2(m)参照)。
【0028】
また、相関器143では、無線タグリーダ1が変調ビーコン信号(図2(e)参照)を送信してから、この変調ビーコン信号に対応するタグID変調信号(図2(h)参照)が無線タグリーダ1に受信されるまでの時間遅延から無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出する。具体的には、拡散コード(図2(b)参照)に対するテンプレートコード(図2(l)参照)の時間遅延Tg及び無線タグにおける処理時間(の統計値)から無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出する。そして、相関器143により復元された復元タグIDデータ及び距離Dは、図示しない制御部へ供給されることにより、所定の後続処理が行われる。
【0029】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムに適用される無線タグ2は、無線タグリーダ1から受信した信号自体をタグIDを用いて変調したタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を無線タグリーダ1に対して送信する。これにより、復調器やパルス発生器等を備える必要がなくなるため、構成を簡素化することが可能となり、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る無線タグシステムについて、図3を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、パルス波形変調方式(PSN:Pulse Shape Modulation)方式を用いてデータを変調する無線タグを適用したものである。また、上述した無線タグリーダ1においては、UWBインパルス信号として、1GHzのパルス信号を利用していたが、本実施形態においては、この1GHzのパルス信号に代わって、修正エルミートパルス(MHP:Modified Hermite Pluse)を使用する。このMHPは、異なる次数の波形が互いに直交するUWBインパルス信号である。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0031】
図3において、コード拡散器131により生成された拡散ビーコン信号は、BPM変調器151に供給される。BPM変調器151は、次数nの修正エルミートパルス(MHP)信号と拡散ビーコン信号とを積算することにより、バイフェーズ変調されたMHPビーコン信号を生成する。生成されたMHPビーコン信号は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して無線タグ1へ送信される。無線タグ2のアンテナ21、バンドパスフィルタ22を介して受信されたMHPビーコン信号(以下、受信されたMHPビーコン信号を「受信MHPビーコン信号」という。)は、本実施形態に係るタグ信号生成部24へ供給される。タグ信号生成部24は、図示しないメモリに格納されているタグIDに応じて受信MHPビーコン信号の次数を変えることにより、タグID変調信号(タグ信号)を生成する。
【0032】
具体的には、本実施形態に係るタグ信号生成部24は、増幅器241、切替器242、微分回路243、及びバイパス経路Pを備えて構成されている。
このようなタグ信号生成部24において、受信MHPビーコン信号は、まず増幅器241により増幅された後、切替器242へ供給される。切替器242は、図示しないメモリに格納されているタグIDに応じて、接続先を切り替える。例えば、切替器242は、タグIDが「1」のときは、微分回路243に接続し、タグIDが「0」のときは、微分回路をバイパスする経路Pに接続する。
【0033】
これにより、タグIDが「1」のときには、増幅器241から出力された受信MHPビーコン信号が、微分回路243を経由することによりその次数が1大きい信号波形へと変形され、一方、タグIDが「0」のときには、微分回路243をバイパスする経路Pを経由することにより、その次数が変化しない信号とされ、n次又はn+1次の波形からなるタグID変調信号(タグ信号)が生成される。
このようにして生成されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を介して送信される。
【0034】
このタグID変調信号は、無線タグリーダ2のアンテナ11、バンドパスフィルタ12を介して、受信モジュール16内の乗算器161及び162に供給される(以下、ここで供給される信号を「受信タグID変調信号」という。)。乗算器161は、MHP発生器163から供給されるn次のMHP信号と受信タグID変調信号とを積算して出力する。一方、乗算器162は、MHP発生器164から供給されるn+1次のMHP信号と受信タグID変調信号とを積算して出力する。乗算器161及び162からの積算出力は、比較器165に供給され、積算出力の大きい信号が選択されて、復調拡散タグIDデータとして相関器143へ供給される。相関器143は、テンプレートコード144と復調拡散タグIDデータとの相関値計算を行うことにより、タグIDデータを復元する。そして、復元したタグIDデータを復調タグIDデータとして、図示しない制御部へ供給する。また、相関器143は、上述の第1の実施形態と同様の手法により、無線タグリーダ1と無線タグ2との間の距離Dを算出し、この距離Dを図示しない制御部へ供給する。
【0035】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグ2によれば、無線タグリーダ1から受信した信号自体をタグIDを用いて変調したタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を無線タグリーダ1に対して送信する。これにより、復調器やパルス発生器等を備える必要がなくなるため、構成を簡素化することが可能となり、消費電力の低減、並びに装置の小型化を図ることができる。
【0036】
なお、上述した実施形態においては、無線タグ2のタグ信号生成部24が、1つの微分回路243を備える場合について説明したが、微分回路243の個数を増やすことによりさまざまな次数のタグID変調信号を生成することが可能となる。
また、上述した実施形態においては、無線タグリーダ1と、1つの無線タグ2とからなる無線タグシステムについて説明してしたが、無線タグ2の数については限定されない。例えば、無線タグリーダ1が複数の無線タグ2とデータの送受信を行う場合には、各無線タグが備える微分回路243の数をユニークに変えることにより、各無線タグから返信されるタグID変調信号の次数を異ならせることが可能となる。このように、異なる次数のMHPを返信させることにより、複数タグの混在環境下における他局間干渉を軽減させることができる。
【0037】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムについて、図4を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、上記第1の実施形態に係る無線タグ2に、タイマ(計時手段)及び電源制御部(電源制御手段)を更に備えた構成をとる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0038】
図4に示すように、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、信号送信周期Tframeを計時するタイマ134と、タイマ134による計時に基づいて、図示しない制御部から供給されるビーコン信号をコード拡散器131へ供給するスイッチ135を更に備えている。これにより、ビーコン信号は、信号送信周期Tframeでコード拡散器131に供給されることとなるので、図5(a)に示すように、信号送信周期Tframeで、無線タグ1に対して変調ビーコン信号(図2(e)参照)が送信されることとなる。なお、図5(a)において、変調ビーコン信号が送信されている期間は、信号送信時間Tbeaconとして示し、それ以外の期間は、受信モードとして表している。
【0039】
一方、無線タグ2は、無線タグリーダ1が変調ビーコン信号を送信する信号送信周期Tframeに応じて、電源をオンオフする電源制御部(電源制御手段)26を備えている。具体的には、無線タグ2は、信号送信周期Tframeに、変調ビーコン信号が送信される信号送信時間Tbeaconを加算した第1の期間と、信号送信周期Tframeから信号送信時間Tbeaconを減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時するタイマ(計時手段)25を備えており、電源制御部26はタイマ25により計時された第1の期間において電源をオンにし、第2の期間において電源をオフにする。これにより、図5(b)に示すように、電源オンの期間と、電源オフの期間とが繰り返されることとなる。そして、図5(c)に示すように、電源オンの期間に、無線タグ2において変調ビーコン信号が受信されると、タグ信号生成部23により、変調ビーコン信号がタグIDに基づいて変調されてタグID変調信号が生成され、このタグID変調信号が無線タグリーダ2へ送信されることとなる。これにより、図5(d)に示すように、無線タグリーダ2の受信モードにおいて、タグID変調信号が受信されることとなる。
【0040】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグによれば、信号送信周期Tframeに信号送信時間Tbeaconを加算した第1の期間において電源がオン状態とされた後、信号送信周期Tframeから信号送信時間Tbeaconを減算した第2の期間において電源がオフ状態とされるという電源のオンオフ動作が繰り返し行われるので、オン期間のうち、2回に1度は無線タグリーダからの信号を受信することが可能となる。これにより、定期的にデータ送受信を行いながらも、電力消費を約半分に減らすことができるという効果を奏する。なお、本実施形態に係る電源オンオフの機能については、図3に示した第2の実施形態に係る無線タグシステムにも適用可能である。
【0041】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムについて、図を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、無線タグリーダ又は無線タグの周辺に複数の通信機器が存在する場合であっても特定の無線タグリーダと無線タグとの間の通信を安定して行うための機能を図1に示した無線タグシステムに更に付加した構成をとる。
【0042】
具体的には、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、図1に示した無線タグリーダ1と構成を略同じくするが、図6に示すように、受信モジュール14とバンドパスフィルタ12とをつなぐ受信経路に、復調器群50及び比較器51をこの順で、更に備える点で異なる。また、本実施形態に係る無線タグ2についても、図1に示した無線タグ2と構成を略同じくするが、バンドパスフィルタ22とタグ信号生成部23とをつなぐ受信経路の間に、直交マッチドフィルタ群27を備え、また、タグ信号生成部23とバンドパスフィルタ22とをつなぐ送信経路の間にコード拡散器28を備える点で異なる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0043】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
まず、無線タグリーダ1の送信モジュール13により生成された変調ビーコン信号(図2(e))は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して送信される。この変調ビーコン信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグ2のアンテナ21により受信され、バンドパスフィルタ22を経由し、更に、図示しない所定の通信回路により受信ベースバンド信号に変換された後、直交マッチドフィルタ群27に供給される。
【0044】
ここで、直交マッチドフィルタ群27は、図7に示すように、複数のマッチドフィルタMF1からMFNと、LC(Linear Combiner)重み制御部272、減算器273、及びビーコン信号抽出部274を備えている。
直交マッチドフィルタ群27において、受信ベースバンド信号は、図7に示すマッチドフィルタMF1乃至MFNに供給される。各マッチドフィルタMF1乃至MFNにおいて、受信ベースバンド信号と各拡散コードPN1乃至PNNとの相関が取られる。ここで、マッチドフィルタMF1は、取得したい希望信号の拡散コードPN1に対応する拡散コードC1を保有するものであり、それ以外のマッチドフィルタMF2乃至MFNは、希望信号の拡散コードPN1と完全に直交する拡散コードCi(i=2〜N)を保有している。なお、この拡散コードCi(i=2〜N)は、希望信号の拡散コードPN1から作成することができ、例えば、Gram−Schmidtの直交化法を用いて作成することが可能である。
【0045】
この結果、マッチドフィルタMF1の出力には希望信号の成分及び他のタグリーダ−タグ間通信からの干渉成分及び雑音成分が含まれる。一方、他のマッチドフィルタMF2乃至MFNにおいて、受信ベースバンド信号は、個々のコードCi(i=2〜N)との相関がとられ、その出力がLC重み制御部272に出力される。ここで、マッチドフィルタMF2からMFNにおいて用いられる各拡散コードCi(i=2〜N)は、希望信号の拡散コードPN1と完全に直交しているため、マッチドフィルタMF2乃至MFNの出力には、希望信号の成分は現れないこととなる。
【0046】
LC重み制御部272では、マッチドフィルタMF2乃至MFNの出力β2乃至βNに、対応する重みW2乃至WNをそれぞれ乗算し、更に、その結果を足し合わせることにより、他局間干渉成分を算出し、この他局間干渉成分を減算器273に出力する。ここでLC重み制御部272は、LC重み制御部272の出力が、MF1の出力における他局間干渉成分の大きさと等しくなるように重みを制御する。この制御アルゴリズムは、データ判定の平均自乗誤差が最小になるようにLMS等の適応アルゴリズムを用いることが可能である。
【0047】
減算器273は、マッチドフィルタMF1の出力β1から、重み制御部272から供給された他局間干渉成分を差し引くことにより、希望信号の成分のみを抽出し、出力する。希望信号の成分は硬判定部274を経由して、後段に設けられているタグ信号生成部23(図6参照)へ供給される。
図6において、タグ信号生成部23は、直交マッチドフィルタ群27から供給された希望信号(つまり、無線タグリーダ1から送信された変調ビーコン信号)を自己が保有するタグIDにより変調し、このタグID変調信号を出力する。タグID変調信号は、コード拡散器28に供給され、ここで、各拡散コードPNn(n=2〜N)で拡散された後、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を経由して送信される。
このように、本実施形態では、無線タグリーダ1において拡散コードPN1を用いたコード化が行われることにより変調ビーコン信号が生成され、更に、無線タグ2においてビーコン信号が復調された後、再び拡散コードPNi(i=2乃至N)を用いたコード化が行われることによりタグID変調信号が生成されることとなる。
【0048】
無線タグ2から送信された拡散後のタグID変調信号は、他のタグが発する信号に干渉されて無線タグリーダ1のアンテナ11により受信され、バンドパスフィルタ12を経由して、復調器群50に供給される。具体的には、復調器群50を構成する各復調器DEM2乃至DEMN(図8参照)に供給される。各復調器DEMi(i=2〜N)は、図8に示すように、同期回路501、相関器502、各復調器に対応するテンプレートコード503、ローパスフィルタ504、及び硬判定部505を備えて構成されている。
【0049】
このような構成からなる復調器群50において、受信信号は、各復調器DEM2乃至DEMNに供給されることにより、各拡散ビーコン信号PNn(n=2〜N)との逆拡散が施された後、ローパスフィルタ504、硬判定部505を経て、出力される。このようにして、各復調器DEM2乃至DEMNから出力された信号は、後段に設けられている比較器51にそれぞれ供給される。比較器51は、供給された各信号の中から最大の出力を選択し、選択した信号を後段に設けられている受信モジュール14(図1参照)に出力する。これにより、上述した第1の実施形態と同様の手法により、タグID並びに距離Dが算出され、この結果が図示しない制御部へ供給される。
【0050】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグ2が直交マッチドフィルタ群27等を備えるので、他局間干渉を軽減することが可能となる。これにより、複数のタグリーダ及びタグが存在し、通信リンクが混在する環境においても確実に所望の信号のみを抽出することが可能となるので、特定の無線タグリーダとの安定した通信を実現させることができる。
【0051】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムについて、図を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、上述した第4の実施形態に係る無線タグシステムの他の実施例であり、周辺に複数の通信機器が存在する場合であっても特定の無線タグリーダと無線タグとの間の通信を安定して行うための機能を図1に示した無線タグシステムに更に付加した構成をとる。
【0052】
具体的には、本実施形態に係る無線タグリーダ1は、図1に示した無線タグリーダ1と構成を略同じくするが、図9に示すように、受信モジュール14とバンドパスフィルタ12とをつなぐ受信経路に干渉キャンセラ60を更に備える点で異なる。また、本実施形態に係る無線タグ2についても、図1に示した無線タグ2と構成を略同じくするが、タグIDを各拡散コードCi(i=1〜N)でコード化した信号をタグ信号生成部23に対して供給するコード拡散器70を更に備える点で異なる。
以下、本実施形態の無線タグシステムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、図1に示した構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付している。
【0053】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
まず、無線タグリーダ1の送信モジュール13により生成された変調ビーコン信号(図2(e)参照)は、バンドパスフィルタ12、アンテナ11を介して送信される。この変調ビーコン信号は、無線タグリーダ固有の拡散コードPNによってコード化されている。この変調ビーコン信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグ2のアンテナ21により受信され、バンドパスフィルタ22、増幅器を経由して、タグ信号生成部23に供給される(以下、このようにしてタグ信号生成部23に供給された信号を「受信変調ビーコン信号」という。)。
【0054】
一方、コード拡散器70は、タグID及び送信時刻データを低速な拡散コードCi(i=1〜N)により拡散変調し、この拡散変調したタグID及び送信時刻データをタグ信号生成部23へ供給する。
タグ信号生成部23は、上記受信変調ビーコン信号とコード拡散器70から供給されるタグID及び送信時刻データとを積算することによって、具体的には、極性反転させることによりタグID変調信号を生成し、出力する。タグ信号生成部23から出力されたタグID変調信号は、バンドパスフィルタ22、アンテナ21を介して送信される。
このように、本実施形態では、無線タグリーダ1において拡散コードPN1を用いたコード化が行われることにより変調ビーコン信号が生成され、更に、無線タグ2において低速なコードCi(i=1乃至N)を用いたタグID及び送信時刻データの拡散変調が行われることによりタグID変調信号が生成されることとなる。
【0055】
無線タグ2から送信されたタグID変調信号は、無線タグ2の周辺に存在する他の通信機器が発する信号と干渉されて無線タグリーダ1のアンテナ11により受信され、バンドパスフィルタ12を経由して、干渉キャンセラ60に供給される。
干渉キャンセラ60は、図10に示すように、複数のフィルタバンクFB1乃至FBNを備えている。ここで、N−1個のフィルタバンクFB2乃至FBNは、最大の残留他局間干渉が大きい順に、シリアルに接続されている。各フィルタバンクFBi(i=1〜N)は、それぞれ復調器DEMi(i=1〜N)、変調器MODi(i=1〜N)、適応ディジタルフィルタADFi(Adaptive Digital Filter)(i=1〜N)を備えて構成されている。
【0056】
上記復調器DEMi(i=1〜N)は、例えば、図8に示した復調器と略同様の構成を有するが、本実施形態においては、拡散コードとしてPN×Ciを用いる。また、図示していないが、変調器MODi(i=1〜N)は、対応する復調器DEMi(i=1〜N)が備えるテンプレートコードで用いた拡散コードPN×Ciを利用して変調を行うコード拡散器を備えている。
【0057】
このような構成を備える干渉キャンセラ60では、まず、受信信号は、フィルタバンクFB2の復調器DEM2に供給され、ここで拡散ビーコン信号PN及び拡散コードC2との相関をとることで復調が行われる。このとき、相関結果をフィードバックさせることにより、同期を正確にとることができる。また、相関結果によりデータ判定を行い、判定したデータシンボルを後段に設けられている変調器MOD2に供給する。変調器MOD2は、供給されたデータシンボルに対して、再度拡散ビーコン信号PN及び拡散コードC2を用いて拡散変調をかけ、干渉するタグからの送信信号を再現する。この送信信号は、適応ディジタルフィルタADF2に供給され、ここで通信路特性が付加される。これにより、受信信号に含まれる干渉信号成分が再現されることとなる。
【0058】
再現された干渉信号成分は、減算器に供給される。減算器は、受信信号からフィルタバンクFB2により再現された干渉信号成分を差し引くことにより、干渉除去を行い、除去後の受信信号を次段のフィルタバンクFB3に出力する。そして、同様の動作が個々のフィルタバンクFB3乃至FBNにおいて順次行われることにより、受信信号から干渉信号成分が除々に除去され、最終的に、フィルタバンクFB1に供給されることにより、受信信号に含まれていた最小の残留他局間干渉が除去される。これにより、受信信号から全ての干渉信号成分が除去されることとなる。
また、各フィルタバンクFB1乃至FBNと並列に遅延回路61が設けられており、この遅延回路61により時間遅延が求められる。
【0059】
このようにして求められた干渉信号成分が除去された受信信号及び時間遅延は、後段に設けられる受信モジュール14(図9参照)に供給され、ここで、無線タグ2のタグID及び無線タグ2と無線タグリーダ1との間の距離Dが求められることとなる。
【0060】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグリーダ1側に干渉キャンセラ60を備えるので、複数タグが存在する場合でも、特定のタグIDを持つ無線タグとのみ通信を行うことが可能となる。また、これにより、無線タグまでの距離を測ることが可能となる。
更に、干渉キャンセラ60において、複数のフィルタバンクをシリアルに接続することにより、電力の大きな干渉成分から順に除去することが可能となる。これにより、タグ間の電力制御が不可能な環境化での遠近問題に対処することができる。
【0061】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態に係る無線タグシステムについて、図11を参照して説明する。本実施形態に係る無線タグシステムは、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cと、無線タグ2と、位置特定装置100とを備えて構成されている。ここで、無線タグリーダ1a、1b、1cは、それぞれ、上述した第1の実施形態に係る無線タグリーダ1と同一の構成からなる。
【0062】
このような構成を備える無線タグシステムにおいて、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cから変調ビーコン信号が無線タグ2に送られると、無線タグ2は、受信した変調ビーコン信号を各無線タグリーダ1a、1b、1cへ提供する提供情報、つまり自己のタグIDを用いて変調してタグID変調信号を生成し、このタグID変調信号を各変調ビーコン信号の送り元である無線タグリーダ1a、1b、1cに対してそれぞれ送信する。なお、この送受信の過程については、上述した第1の実施形態と同様である。
【0063】
これにより、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cに対してタグID変調信号が送信されることとなる。各無線タグリーダ1a、1b、1cは、受信したタグID変調信号を用いてタグIDを復調するとともに、無線タグ2までの距離D1、D2、D3をそれぞれ算出し、算出した距離D1、D2、D3を位置特定装置100に対して情報伝達媒体を介して送信する。なお、このときの送信手法については、無線、有線を問わない。
【0064】
位置特定装置100は、無線タグリーダ1aの位置情報(x1,y1,z1)、無線タグリーダ1bの位置情報(x2,y2,z2)、無線タグリーダ1cの位置情報(x3,y3,z3)を予め保有しており、これら位置情報と、各無線タグリーダ1a、1b、1cから送信されてきた上記距離D1、D2、D3とを用いて、無線タグ2の3次元位置座標(x,y,z)を特定する。
具体的には、以下の3つの連立方程式(式(1)〜式(3))を解くことにより、無線タグ2の3次元座標(x,y,z)を求める。
【0065】
(x−x1)2+(y−y1)2+(z−z1)2=D12 (1)
(x−x2)2+(y−y2)2+(z−z2)2=D22 (2)
(x−x3)2+(y−y3)2+(z−z3)2=D32 (3)
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係る無線タグシステムによれば、無線タグリーダ1a、1b、1cにより求められた距離D1、D2、D3を有効に利用して無線タグ2の3次元座標を特定することが可能となる。
なお、上記実施形態において、距離D1、D2、D3は、各無線タグリーダ1a、1b、1cによりそれぞれ求められていたが、これに代わって、位置特定装置100が一元的に求めるようにしても良い。
また、上記実施形態においては、位置特定装置100を独立した装置として設けた例について説明したが、位置特定装置100は、3つの無線タグリーダ1a、1b、1cのいずれかが備えるようにしても良い。
また、上述した実施形態では、第1の実施形態に係る無線タグリーダ1と無線タグとを適用した場合について説明したが、これらの例に限られず、第2乃至第5の実施形態に係る無線タグリーダ、無線タグを適用しても良い。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、無線タグリーダ1又は無線タグ2の周辺に存在する通信装置による干渉を除去するための機能は、上述した第4又は第5の実施形態において説明した手法に限られることなく、公知のノイズ除去手法を適用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線タグシステムにおいて生成される各種信号を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る無線タグシステムにおける無線タグリーダ及び無線タグの電源オンオフのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示した直交マッチドフィルタ群の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図6に示した復調器群を構成する各復調器の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した干渉キャンセラの概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図12】従来の超広帯域無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
1、1a、1b、1c 無線タグリーダ
2 無線タグ
13 送信モジュール
14 受信モジュール
23、24 タグ信号生成部
27 直交マッチドフィルタ群
60 干渉キャンセラ
100 位置特定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調することにより、タグ信号を生成するタグ信号生成手段と、
前記タグ信号を送信する送信手段と
を具備する無線タグ。
【請求項2】
前記無線タグリーダが信号を送信する信号送信周期に応じて、電源をオンオフする電源制御手段を備える請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記信号送信周期に、前記信号を送信する信号送信時間を加算した第1の期間と、前記信号送信周期から前記信号送信時間を減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時する計時手段を備え、
前記電源制御手段は、前記第1の期間において前記電源をオンし、前記第2の期間において前記電源をオフする請求項2に記載の無線タグ。
【請求項4】
無線タグリーダと、
前記無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、該タグ信号を送信する無線タグと
を具備する無線タグシステム。
【請求項5】
3つの無線タグリーダと、
3つの前記無線タグリーダから受信した信号を、各前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、生成した前記タグ信号を前記信号の送信元である前記無線タグリーダへそれぞれ送信する無線タグと、
3つの前記無線タグリーダが前記無線タグに対して前記信号を送信したタイミングと前記無線タグから前記信号に対応する前記タグ信号を受信したタイミングとに基づいて、各前記無線タグリーダと前記無線タグとの間の距離を測定し、測定した前記距離を用いて前記無線タグの位置を特定する位置特定手段と
を具備する無線タグシステム。
【請求項1】
無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調することにより、タグ信号を生成するタグ信号生成手段と、
前記タグ信号を送信する送信手段と
を具備する無線タグ。
【請求項2】
前記無線タグリーダが信号を送信する信号送信周期に応じて、電源をオンオフする電源制御手段を備える請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記信号送信周期に、前記信号を送信する信号送信時間を加算した第1の期間と、前記信号送信周期から前記信号送信時間を減算した第2の期間とを交互に繰り返し計時する計時手段を備え、
前記電源制御手段は、前記第1の期間において前記電源をオンし、前記第2の期間において前記電源をオフする請求項2に記載の無線タグ。
【請求項4】
無線タグリーダと、
前記無線タグリーダから受信した信号を、前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、該タグ信号を送信する無線タグと
を具備する無線タグシステム。
【請求項5】
3つの無線タグリーダと、
3つの前記無線タグリーダから受信した信号を、各前記無線タグリーダに対して提供する提供情報を用いて変調してタグ信号を生成し、生成した前記タグ信号を前記信号の送信元である前記無線タグリーダへそれぞれ送信する無線タグと、
3つの前記無線タグリーダが前記無線タグに対して前記信号を送信したタイミングと前記無線タグから前記信号に対応する前記タグ信号を受信したタイミングとに基づいて、各前記無線タグリーダと前記無線タグとの間の距離を測定し、測定した前記距離を用いて前記無線タグの位置を特定する位置特定手段と
を具備する無線タグシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−215085(P2007−215085A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34980(P2006−34980)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
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