説明

無線ネットワークシステム、及び、無線通信装置

【課題】マルチホップ無線ネットワークにおいて通信性能を劣化させることなく、消費電力を低減し、通信の信頼性及び安定性を図る。
【解決手段】無線通信装置は、センサによる測定結果を含むセンサデータを生成するセンサ処理部と、パケットを送信するための通信状態を含む通信品質データを生成する通信測定部と、送信されたセンサデータと生成されたセンサデータを含む第1のセンサデータの内容又は送信されたセンサデータと生成された通信品質データを含む第1の通信品質データの内容に従って、第1のセンサデータ及び第1の通信品質データの圧縮率を定める圧縮判断部と、定められた圧縮率によって、第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを圧縮する圧縮部と、圧縮された第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを含むパケットを、他の無線通信装置又は基地局に送信するための無線通信部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークシステムに関し、特に、マルチホップ技術を用いてセンサデータを送信する無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の計算機性能の向上は目覚ましく、それにともない複数の計算機間を接続するネットワーク通信に必要とされる通信性能も著しく向上している。ネットワーク通信は、従来有線ケーブルを用いて計算機間が接続されており、性能を向上させる要求には、有線ケーブルの数を増加させることによって対応してきた。しかしながら、現状において、例えば大規模な製造ライン工場、及び/又は、プラント設備などといった産業インフラ分野の施設において、使用されるネットワーク通信用のケーブルの総敷設長が数キロメートルになり、ケーブルの設置、保守及び管理の難易度及び費用が高くなっている。
【0003】
このような有線ケーブルの敷設に関する問題を解決するために、無線通信技術を用いた通信ネットワークが期待されている。しかしながら、無線通信は、有線ケーブル通信における外乱耐性、及び/又は、通信環境変化といった観点における安定性が低い。従って、無線通信における障害発生確立は、有線通信にくらべて高くなる。また、無線通信は、同じ空間を複数の通信装置が共有するため、電波が互いに影響しあうことによって干渉し、通信性能を劣化させることがある。
【0004】
つまり、ビットエラーレート(データ1ビットあたりの伝送エラー率)、レーテンシ(データ伝送に必要な遅延時間)、スループット(データ伝送にかかる速度)などが示す、無線通信ネットワークにおける、通信性能は、電波環境の時間的及び/又は空間的な変化とともに劣化することがあり、無線通信によるデータ伝送が不安定(すなわち、データ伝送の信頼性が低下)になる。産業インフラ分野においては特に、データ伝送の高い安定性及び信頼性が要求されるため、信頼性確保が無線通信ネットワーク導入における障壁となっている。
【0005】
前述のように、無線通信ネットワークの不安定性を解決する手段には、無線通信装置(例えば、データ送信元である通信端末と、データ送信先である基地局との組合せ)の間に複数の中継局を配置し、データを中継局を介して転送するという、マルチホップ転送技術が提案されている。
【0006】
マルチホップ転送技術において、通信端末と基地局との間を無線転送する場合、選択される中継局、無線転送経路及び無線チャネル(周波数)は、複数通り選択されることが可能である。このため、ある中継局、ある無線転送経路又はある無線チャネルにおける無線通信環境が不安定であり、無線通信性能が低い場合においても、異なる中継局、無線転送経路又は無線チャネルを選択することによって、通信端末と基地局との間のデータ伝送を安定化させることが可能となる。
【0007】
マルチホップ転送技術における一般的な課題は、端末と基地局との間のデータ伝送を信頼性及び安定性を高くし、かつ、効率的に行えるような中継局及び無線転送経路の選択を最適化させることにある。
【0008】
また、マルチホップ転送技術を用いた各無線通信装置間における1対1の無線通信を安定化させるための方法には、同じデータを相手に届くまで複数回送信する再送制御、及び、データに誤り訂正符号を追加するなどの符号化制御といった、冗長化の方法が提案されている。冗長化手段は、あるデータに対する送信量を増やすことによって、無線通信の信頼性・安定性を向上させる手段である。
【0009】
一方で、無線通信を安定化させるための方法には、データを圧縮して無線通信に必要な時間を短くし、これによって安定性を向上させる方法が提案されている。無線通信に対する外乱の影響は、一回の無線通信時間が短い方が小さくなる場合がある。さらに、無線通信に必要な時間を短くすることは、無線通信装置の稼働時間を短くできるため、消費電力を低減できる。
【0010】
以下に、マルチホップ転送技術と、データ圧縮を含めた無線通信の安定化を図る方法との例を説明する。
【0011】
例えば、通信状態に従って、データを圧縮する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法において、送信されるデータの中から、映像データとその他のデータ(制御データ、緊急通報データ、音声データ及び、一般データ)とが分類され、また、受信されたデータ又は受信された電波のレベルなどから、通信品質が判定される。そして、通信品質が悪いと判定された場合、分類された結果に基づいて、映像データを圧縮、その他のデータを冗長化することによって、特許文献1の方法は、映像データは犠牲にしても、その他のデータの通信信頼性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−203053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、マルチホップ無線ネットワークにおいて、ビットエラーレート、レーテンシ、及び、スループットなどの指標が示す通信性能を向上させ、各無線通信装置における消費電力を抑えつつ、無線データ伝送の信頼性・安定性を向上させることを前提とする。
【0014】
複数の無線通信装置からなる無線通信ネットワークにおいて、ある端末からある基地局へデータを送信するため、中継局を経由して、データを無線転送(マルチホップ転送)することが可能である。このため、この無線転送経路又は無線周波数チャネルを複数通り選択可能とすることによって、データを送信する際の信頼性及び安定性を高めることができる。また、個々の無線通信装置間の無線通信において、通信データを圧縮することによって、通信データが短くなり、これによって、各無線通信装置における消費電力を抑えつつ、データを送信するための信頼性及び安定性が高められる。
【0015】
通信データの圧縮及び冗長による無線通信の信頼性向上技術に関して、従来の技術は、特許文献1の通り、無線通信装置間の無線通信状況を判断基準として通信データの圧縮及び冗長化を行い、これによって、信頼性を向上させた。
【0016】
しかしながら、実際のマルチホップ転送を含む無線通信ネットワークにおいては、通信端末だけでなく、中継局が通信端末の機能を備え、データを追加することがある。さらに無線通信ネットワークにおける通信品質を示すデータも、通信端末及び中継局間のすべての転送経路に沿って付加されながら基地局へ送信される必要がある。
【0017】
このため、マルチホップ無線ネットワークにおいてデータ伝送の信頼性及び安定性を高めるために、無線転送経路に従って通信状況を把握し、各無線転送経路の通信状況に従って、データを圧縮する方法が必要になる。
【0018】
さらに、無線通信ネットワークシステムの応用として、例えば、通信端末のセンサが窓の開閉センサである防犯警報システムとして用いられる場合のように、無線通信状況に従ったデータの圧縮ではなく、センサデータの内容に従ったデータ圧縮が必要となることもある。
【0019】
このため、本発明の目的は、前述した従来技術の問題を鑑み、マルチホップ無線ネットワークを用いた最適な経路選択及び無線周波数チャネル選択を可能とするシステムにおいて、無線通信品質データ又はセンサ測定データに従って、送信するための最適なデータ量を定め(データ圧縮)し、無線通信の信頼性向上と消費電力の低減とを実現する無線通信装置および無線通信ネットワークを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、複数の無線通信装置と、前記各無線通信装置と接続される基地局とを備える無線ネットワークシステムであって、前記各無線通信装置は、前記各無線通信装置が有するセンサが取得した測定結果を含むセンサデータを生成するセンサ処理部と、前記各無線通信装置からパケットを送信するための通信の状態を含む通信品質データを生成する通信測定部と、前記生成されたセンサデータの内容、又は、前記生成された通信品質データの内容に従って、前記生成されたセンサデータ及び前記生成された通信品質データの圧縮率を定める圧縮判断部と、前記圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記生成されたセンサデータ及び生成された通信品質データを圧縮する圧縮部と、前記圧縮部によって圧縮されたセンサデータ及び通信品質データを含むパケットを、他の前記無線通信装置又は前記基地局に送信するための無線通信部と、を備え、第1の前記無線通信装置の前記無線通信部は、第2の前記無線通信装置から送信された第1の前記パケットを受信し、前記第1の無線通信装置の前記圧縮判断部は、前記第1のパケットに含まれるセンサデータと前記第1の無線通信装置の前記センサ処理部によって生成されたセンサデータとを含む第1の前記センサデータの内容、又は、前記第1のパケットに含まれる通信品質データと前記第1の無線通信装置の前記通信測定部によって生成された通信品質データとを含む第1の前記通信品質データの内容に従って、前記第1のセンサデータ及び前記第1の通信品質データの圧縮率を定め、前記第1の無線通信装置の前記圧縮部は、前記第1の無線通信装置の圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを圧縮し、前記第1の無線通信装置の前記無線通信部は、前記圧縮部によって圧縮された第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを含む第2の前記パケットを、第3の前記無線通信装置又は前記基地局に送信する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によると、マルチホップ無線ネットワークにおいて、通信性能を劣化させることなく、かつ低電力で通信の信頼性及び安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワークの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワークにおけるリンクによって通信されるパケットを示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワークにおけるデータ・コマンド類の圧縮を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のセンサ端末又は中継局によって送信されるデータ・コマンド類を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のセンサ端末及び中継局の論理的な構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の基地局の論理的な構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のセンサ端末又は中継局による、データ・コマンド類の圧縮処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態のマルチホップ無線ネットワークにおける基本的な通信を示すシーケンス図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のデータ圧縮を用いたマルチホップ無線ネットワークにおける通信を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る無線通信装置および無線通信ネットワークを、図面に示したいくつかの実施形態を参照して詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワーク100の構成を示すブロック図である。
【0025】
無線通信ネットワーク100は、センサ端末110(110a、110b及び110c)、中継局120(120a、120b、120c及び120d)、基地局130、ネットワーク160、及び、サーバ170を備える。以下において、センサ端末110、中継局120及び基地局130を、無線通信装置と総称する。
【0026】
センサ端末110、中継局120及び基地局130は、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置、及び、ネットワークインタフェースを備える計算機である。センサ端末110、中継局120及び基地局130に備わるプロセッサは、各々に備わるメモリに保持されるプログラムを実行することによって、各機能を実装する。
【0027】
さらに、センサ端末110又は中継局120は、設置された環境において、温度、圧力及び流量などの物理量を測定するためのセンサ装置、又は、エラーなどの異常状態を示すメッセージを受信するためのセンサ装置を備える。
【0028】
無線通信ネットワーク100において、センサ端末110は、様々なセンサ機能を備え、自らが備えるセンサ機能によって、センシングデータを測定し、測定された結果であるセンサ測定データを生成する。そして、生成されたセンサ測定データを基地局130へ無線を用いて送信する。
【0029】
センサ端末110は、センサ測定データを無線を用いて送信する場合、複数の中継局120を段階的に経由させて、基地局130へ送信する方法と、センサ端末110から基地局130へセンサ測定データを直接送信する方法とのいずれかによって、センサ測定データを送信する。
【0030】
また、センサ端末110は、中継局120と同じ機能を備えてもよい。すなわち、他のセンサ端末110からセンサ測定データを受信し、受信したセンサ測定データと、自らのセンサ機能によって生成されたセンサ測定データを無線を用いて基地局130又は基地局130に接続される中継局120に送信してもよい。
【0031】
中継局120及び基地局130は、センサ端末110又は中継局120の装置のうち、少なくとも一つの装置から、センサ測定データを受信する。
【0032】
中継局120は、センサ端末110が備えるセンサ機能を備えてもよい。すなわち、センサ端末110又は他の中継局120からセンサ測定データを受信し、受信したセンサ測定データを基地局130又は基地局130に接続される中継局120に無線を用いて送信し、かつ、自らのセンサ機能によって生成されたセンサ測定データを無線を用いて基地局130又は基地局130に接続される中継局120に送信してもよい。
【0033】
基地局130は、センサ端末110又は中継局120からセンサ測定データ及び通信品質データを受信し、センサ測定データをネットワーク160を介してサーバ170に送信する。
【0034】
本実施形態において、センサ端末110、中継局120及び基地局130の各々を接続する無線通信を、リンク140と記載する。図1のセンサ端末110aと中継局120cとは、リンク140eによって接続され、中継局120cと中継局120aとは、リンク140cによって接続され、中継局120aと基地局130とは、リンク140aによって接続される。また、センサ端末110bと中継局120dとは、リンク140fによって接続され、センサ端末110cと中継局120dとは、リンク140gによって接続され、中継局120dと中継局120bとは、リンク140dによって接続され、中継局120bと基地局130とは、リンク140bによって接続される。
【0035】
各リンク140において、無線通信の状態、環境又は性能が、通信の品質として測定される。通信品質の指標には、例えば、RSSI、再送回数、CCA回数、アクノレッジ回数、及び/又は、レーテンシ等がある。リンク先の無線通信装置、すなわち、データの送信先の無線通信装置は、通信品質の指標に従って、通信品質データを測定する。
【0036】
RSSI(Received Signal Strength Indicator)は、無線電波を受信した際の電力強度を示す。再送回数は、送信されたデータがリンク先の無線通信装置(アップリンクにおいて、中継局120又は基地局130、ダウンリンクにおいて、中継局120又はセンサ端末110)に到達するまで繰り返された送信の回数を示す。
【0037】
CCA(Channel Clear Assessment)回数は、無線通信の開始前における、同じ電波が他の無線通信装置に使われているか否かの判定(キャリアセンス)において、同じ電波が使われていたと判定され、送信が中止された場合の回数を示す。
【0038】
アクノレッジ回数は、リンク先の無線通信装置が、自らに送信されたデータに対し、データを受信したことを示すアクノレッジ信号を、データの送信元に返信する回数を示す。レーテンシは、データを一定周期で送信する場合に、リンク先の無線通信装置がデータ受信する時刻の、送信の周期からの遅れ時間を示す。
【0039】
リンク元の無線通信装置、すなわち、データの送信元の無線通信装置(アップリンクにおいて、センサ端末110又は中継局120、ダウンリンクにおいて、中継局120)は、前述の通信品質の指標のうち、再送回数、CCA回数及びアクノレッジ回数を、通信品質データとして測定できる。また、リンク先の無線通信装置、すなわち、データの送信先の無線通信装置(アップリンクにおいて、中継局120又、ダウンリンクにおいて、センサ端末110又は中継局120)は、前述の通信品質の指標のうち、RSSI及びレーテンシを、通信品質データとして測定できる。
【0040】
なお、本実施形態において、センサ端末110から中継局120を経て基地局130へデータが送信される方向を、アップリンクと記載し、逆に、基地局130から中継局120を経てセンサ端末110へデータが送信される方向をダウンリンクと記載する。
【0041】
本実施形態のアップリンクによって、センサ測定データ及び/又は通信品質データが送信される。また、本実施形態のダウンリンクによって、基地局130からのチャネル・経路切り替え等の命令を含む通信コマンド、及び/又は、無線通信ネットワーク100内の全無線通信装置を時刻同期するための時刻コマンド等が送信される。
【0042】
ネットワーク160は、インターネット又はセルラー網等の広域通信網である。サーバ170は、ネットワーク160を介して基地局130と接続され、基地局130から送信されるセンサ測定データを処理する。サーバ170は、データセンタなどに配置されるサーバ群でもよい。
【0043】
図2は、本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワーク100におけるリンク140によって通信されるパケット150を示す説明図である。
【0044】
パケット150は、プリアンブル151、SFD(Start of Flame Delimiter)152、ヘッダ153、データ・コマンド類154、CRC(Cyclic Redundant Check)155を含む。
【0045】
プリアンブル151は、リンク140の受信側となる無線通信装置が、送信されたパケット150と同期をとるための信号である。SFD152は、SFD152の後の信号がパケット150におけるデータ内容であることを示す信号である。
【0046】
ヘッダ153は、パケット150のデータ内容の属性、送信元情報、及び、送信先情報などを示す。データ・コマンド類154はパケット150のデータ内容である。CRC155は、パケット150の受信側の無線通信装置がパケット150のデータ内容を正確に受信できたか否かをチェックするための信号である。
【0047】
アップリンクにおいて、データ・コマンド類154には、センサ測定データ156、及び/又は、通信品質データ157が格納されることが多い。センサ測定データ156には、センサ端末110又は中継局120によって生成されたセンサ測定データが格納され、通信品質データ157には、センサ端末110、又は中継局120によって測定される通信品質データが格納される。
【0048】
また、ダウンリンクにおいて、データ・コマンド類154には、コマンド158及びコマンド用データ159が格納されることが多い。コマンド158には、時刻同期をするためのコマンド、及び/又は、無線通信経路又はチャネルを切替えるための通信コマンド等が格納される。また、コマンド用データ159には、コマンド158に格納されるコマンドによって指定された数値等が格納される。
【0049】
図3は、本発明の第1の実施形態の無線通信ネットワーク100におけるデータ・コマンド類154の圧縮を示す説明図である。
【0050】
第1の実施形態のセンサ端末110又は中継局120は、パケット150のデータ・コマンド類154に格納されるセンサ測定データ156と通信品質データ157に、無線通信ネットワーク100において用いられるアプリケーションに従って、異なる圧縮をする。図3のデータ・コマンド類154e、154f、154g、154h及び154kは、第1の実施形態の方法によってデータ・コマンド類154に圧縮した場合の例を示す。
【0051】
従来の無線通信システムは、センサ測定データを無線によって送信することが中心であり、通信品質データを送信する場合、通信品質データ分のデータ量が増加することによって、パケット150の長さが長くなっていた。一方で、無線通信システムは一般的に外乱の影響を受けやすく、データが届かない場合、又は、受信情報に誤りが生じる場合などが発生し、信頼性及び安定性の劣化を招いていた。
【0052】
パケット150による無線通信の信頼性・安定性を向上する方法には、データを符号化(誤り訂正符号など)して冗長度をあげる方法と、データを圧縮してパケット150の長さを短くする方法とが考えられる。パケット150の長さを短くする方法を無線通信システムに適用した場合、送信及び受信にかかる時間が短縮され、また、無線通信ネットワーク100の消費電力を低減することができる。
【0053】
無線通信ネットワーク100において用いられるアプリケーションの第1の例(以下、第1のアプリケーションと記載)には、電力監視又は予防保全など、センサ端末110又は中継局120が備わる設備又は環境などの状態を測定するためのアプリケーションが挙げられる。電力監視のアプリケーションは、ビル等の電力消費量をセンサ端末110又は中継局120が測定し、センサ端末110又は中継局120は、定期的に無線を用いてセンサ測定データを送信する。
【0054】
予防保全のアプリケーションは、機器類の稼働状況をセンサ端末110又は中継局120が測定する。そして、センサ端末110又は中継局120は、定期的に無線を用いてセンサ測定データを送信する。
【0055】
第1のアプリケーションは、定常的なセンサ測定データ156の送信が必要である。このため、第1のアプリケーションを用いた無線通信ネットワーク100において、無線の通信品質(通信品質データ157が示す品質)が良好である場合、センサ端末110又は中継局120は、データ・コマンド類154eのようにセンサ測定データ156を圧縮しない。これによって、必要なセンサ測定データ156のすべてをパケット150を用いて送信できる。
【0056】
しかし、第1のアプリケーションを用いる無線通信ネットワーク100において、無線の通信品質(通信品質データ157が示す品質)が悪い場合、センサ端末110又は中継局120は、通信品質の劣化に従ってセンサ測定データ156の圧縮率を変化させる。これによって、データ・コマンド類154f、154g、154h及び154kのように、通信品質が劣化するに従って、通信品質データ157の量を増やす。通信品質が最も悪い場合、センサ端末110又は中継局120は、データ・コマンド類154kのように、センサ測定データ156を削除し、通信品質データ157のみを送信してもよい。
【0057】
通院品質が劣化した場合、通信品質が劣化したことを示す通信品質データ157が基地局130に送信され、基地局130によって、無線通信の転送経路の変更、又は、無線通信周波数チャネルの変更等の要否を判定する。無線通信の転送経路の変更、又は、無線通信周波数チャネルの変更等によって、通信品質が改善した場合、センサ端末110又は中継局120は、パケット150のデータ内容に含まれるセンサ測定データ156への圧縮率を下げる。
【0058】
基地局130が無線通信の転送経路の変更、又は、無線通信周波数チャネルの変更等を判定し、判定結果に基づいて、基地局130が変更のための切り替えコマンドを送信する方法は、集中制御方法と呼ばれる。一方で、リンク140ごとにチャネル切り替えを行う手順は、分散制御方法と呼ばれる。
【0059】
無線通信ネットワーク100において用いられるアプリケーションの第2の例(以下、第2のアプリケーションと記載)には、防犯、警報、緊急通報又は異常モニタなどの異常状態を検知するアプリケーションが挙げられる。第2のアプリケーションにおいて、センサ端末110又は中継局120が測定したセンサ測定データ156が定常状態を示す場合、無線通信のリンク140が正常に維持されていることが、基地局130によって検知されればよく、すなわち、通信品質データ157の送信が重要である。
【0060】
このため、第2のアプリケーションにおけるセンサ端末110又は中継局120は、センサ測定データ156が定常状態を示す場合、センサ測定データ156を送信する必要はない。一方で、警報が発生したなどの異常を示すセンサ測定データが検知された場合のみ、異常が発生したことを示すセンサ測定データ156を、基地局130に向けて送信することが重要である。
【0061】
このため、センサ測定データ156が定常状態を示す場合、センサ端末110又は中継局120は、データ・コマンド類154kのように通信品質データ157を圧縮しない。これによって、すべての通信品質データ157を無線を用いて送信できる。
【0062】
また、センサ測定データ156が異常状態を示す場合、測定された異常の程度に従って、通信品質データ157の圧縮率を変更することによって、センサ測定データ156の量(長さ)を増やす。測定されたセンサ測定データが、最も深刻な異常状態を示す場合、センサ端末110又は中継局120は、データ・コマンド類154eのように通信品質データ157を圧縮してもよい。
【0063】
また、第2のアプリケーションを用いる無線通信ネットワーク100において、測定されたセンサ測定データが定常状態を示し、かつ、無線通信ネットワーク100内の通信品質が劣化した場合、通信品質データ157の送信が重要になる。すなわち、第1のアプリケーションを用いる無線通信ネットワーク100と同じく、第2のアプリケーションを用いる無線通信ネットワーク100においても、無線通信ネットワーク100内の通信品質が劣化した場合、データ・コマンド類154kのような圧縮が行われる。
【0064】
そして、通信品質データ157を受信した基地局130による、転送経路又は無線チャネルの変更などによって通信品質が改善した場合、センサ測定データ156への圧縮率を下げる。
【0065】
(センサ測定データ156及び通信品質データ157の圧縮方法)
以下にセンサ測定データ156及び通信品質データ157を圧縮する方法を説明する。
【0066】
本実施形態の通信品質データ157の圧縮方法には以下のようなものがある。なお、本実施形態において圧縮率が高い場合は、データ・コマンド類154に格納されるデータをより低減する。
【0067】
例えば、通信品質データ157に、RSSI値、CCA回数、再送回数、及び/又は、アクノレッジ回数など複数の指標のデータが格納される場合、より必要性が高い指標には高い優先度を割当てることによって、通信品質データ157に格納される優先度の低い指標を削減する圧縮方法がある。
【0068】
また、通信品質データ157に、最も新しく測定されたデータと、過去複数回分の測定において生成された測定データが格納される場合、格納される過去の測定データに、低い優先度が割当てられ、優先度の低い順、すなわち、古い順にデータを削減する圧縮方法がある。また、過去の測定データとの差分情報だけが格納される圧縮方法もある。
【0069】
また、測定される通信品質データの変動が周期的なものである等、次の通信品質データの予測が可能である場合、予測値を用いることによって通信品質データ157に格納されるデータ量を削減する圧縮方法がある。
【0070】
センサ測定データ156の圧縮方法も、通信品質データ157の圧縮方法と同様である。すなわち、センサ測定データ156の圧縮方法には、センサ測定データ156に、複数の種類のセンサ測定データ(例えば、温度、圧力、及び/又は、エラーメッセージ等)が格納されている場合、より必要性が低いデータの種類に低い優先度が割り当てられ、優先度が低い種類のセンサ測定データを削減する圧縮方法がある。
【0071】
また、センサ測定データ156の圧縮方法には、過去複数回分のセンサ測定データが格納されている場合、格納される過去のセンサ測定データに、低い優先度が割り当てられ、優先度の低い順、すなわち、古い順にデータを削減する圧縮方法がある。
【0072】
さらに、過去のセンサ測定データとの差分情報のみをセンサ測定データ156に格納することによる圧縮方法、又は、センサ測定データの予測値のみをセンサ測定データ156に格納することによる圧縮方法がある。
【0073】
さらに、センサ端末110又は中継局120は、通信品質データ157に格納される値によって通信品質データ157の圧縮率を定める場合、通信品質データ157に格納される値(通信品質の劣化度合い)に従った、圧縮率の上限値(圧縮後の通信品質データ157の量の下限値)又は下限値(圧縮後の通信品質データ157の量の上限値)を保持してもよい。また、センサ測定データ156の量の上限値又は下限値を保持してもよい。
【0074】
また、センサ端末110又は中継局120は、センサ測定データ156に格納される値によってセンサ測定データ156の圧縮率を定める場合、センサ測定データ156に格納される値(異常を示す度合い)に従った、圧縮率の上限値(圧縮後のセンサ測定データ156の量の下限値)又は下限値(圧縮後のセンサ測定データ156の量の上限値)を保持してもよい。また、通信品質データ157の量の上限値又は下限値を保持してもよい。
【0075】
第1のアプリケーションが用いられる無線通信ネットワーク100において、データ・コマンド類154における圧縮率は、通信品質データ157の内容に基づいて定められる。すなわち、通信品質データ157が、通信品質データ157の送信が重要であるか否かによって、センサ測定データ156及び通信品質データ157の圧縮率が定められる。
【0076】
第2のアプリケーションが用いられる無線通信ネットワーク100において、データ・コマンド類154における圧縮率は、センサ測定データ156に格納される値のみによって定められてもよいし、センサ測定データ156に格納される値と通信品質データ157に格納される値との両方に基づいて、定められてもよい。
【0077】
第2のアプリケーションが用いられる無線通信ネットワーク100において、データ・コマンド類154における圧縮率を、センサ測定データ156に格納される値のみによって定める場合において、センサ測定データ156が異常状態を示す場合、センサ測定データ156の送信が常に重要であるため、センサ測定データ156の圧縮率が下げられる。また、センサ測定データ156が定常状態を示す場合、通信品質データ157の送信が重要であるため、通信品質データ157の圧縮率が下げられる。
【0078】
また、センサ測定データ156に格納される値と通信品質データ157に格納される値との両方に基づいて圧縮率が定められる場合において、通信品質データ157が定常状態を示す場合、常にセンサ測定データ156の圧縮率が下げられてもよい。また、通信品質データ157が異常状態であり、かつ、センサ測定データ157が正常状態を示す場合、通信品質データ157の圧縮率が下げられ、通信品質データ157が異常状態であり、かつ、センサ測定データ157が異常状態を示す場合、センサ測定データ156の圧縮率が下げられてもよい。
【0079】
図4は、本発明の第1の実施形態のセンサ端末110又は中継局120によって送信されるデータ・コマンド類154を示す説明図である。
【0080】
図4に示すデータ・コマンド類154の例は、センサ端末110aがセンサ測定データA1と通信品質データB1とを生成し、中継局120cがセンサ測定データA2と通信品質データB2とを生成し、中継局120aがセンサ測定データA3と通信品質データB3とを生成した場合の、各無線通信装置におけるデータ・コマンド類154を示す。センサ測定データA1〜A3はセンサ測定データ156に格納され、通信品質データB1〜B3は通信品質データ157に格納される。
【0081】
また、図4における無線ネットワークのアップリンクは、図1に示すセンサ端末110a、中継局120c、中継局120a、及び基地局130の順である。さらに、リンクeによって送信される際のパケット150に含まれるデータ・コマンド類154は、データ・コマンド類154p及び154sであり、リンク140cによって送信される際のパケット150に含まれるデータ・コマンド類154は、データ・コマンド類154n及び154rであり、リンク140aによって送信される際のパケット150に含まれるデータ・コマンド類154は、データ・コマンド類154m及び154qである。
【0082】
第1のアプリケーションを用いた場合のすべてのリンク140において、通信品質データ157がよい状態を示す場合、すなわち、通信品質が定常状態の場合、又は、第2のアプリケーションを用いた場合のセンサ端末110aにおいて、測定されたセンサ測定データが異常値を示す場合、センサ測定データ156の送信が重要であるため、パケット150に含まれるデータ・コマンド類154は、データ・コマンド類154s、154r、及び154qのように生成される。すなわち、通信品質データ157は圧縮率の上限値によって圧縮されることによって、通信品質データ157は削除され、センサ測定データ156のみが送信される。
【0083】
なお、センサ測定データ156には、センサ端末110及び中継局120間をマルチホップ無線によって転送されるごとに、下位のセンサ端末110又は中継局120から送信されたセンサ測定データ156が追加される。
【0084】
また、本実施形態のセンサ端末110又は中継局120は、センサ測定データ156及び通信品質データ157の各々に、圧縮率の上限値及び下限値を保持する。センサ端末110又は中継局120は、保持する圧縮率の上限値及び下限値に従って各データを圧縮し、上限値まで圧縮することによってパケット150の長さを短く保つ。本実施形態における圧縮率の上限値は、圧縮後のデータ長の下限値を示し、圧縮率の下限値は圧縮後のデータ長の上限値を示す。
【0085】
また、圧縮率の上限値及び下限値は、センサ測定データ156及び通信品質データ157の値に従って、定められてもよい。すなわち、各データの異常を示す程度によって、圧縮率の上限値及び下限値が変更されてもよい。
【0086】
第2のアプリケーションにおける中継局120cは、センサ端末110aから受信したセンサ測定データA1と、自らが測定したセンサ測定データA2とを参照し、いずれかのセンサ測定データAの内容が異常を示す場合、自らが保持する圧縮率の下限値に従って、センサ測定データ156を圧縮する。
【0087】
第2のアプリケーションにおける中継局120aも、センサ端末110a及び中継局120cから受信したセンサ測定データA1及びA2と、自らが測定したセンサ測定データA3とを参照し、いずれかのセンサ測定データAの内容が異常を示す場合、自らが保持する圧縮率の下限値に従って、センサ測定データ156を圧縮する。
【0088】
さらに、第1のアプリケーションを用いた場合の最も下位のリンク140において、測定された通信品質データ157が悪い状態を示す場合、又は、第2のアプリケーションを用いた場合のセンサ端末110又は中継局120のすべてにおいて、センサ測定データ156が定常値を示す場合、通信品質データ157の送信が重要であるため、パケット150に含まれるデータ・コマンド類154は、データ・コマンド類154p、154n、及び154mのように生成される。すなわち、センサ測定データ156は圧縮率の上限値又はより高い値によって圧縮され、通信品質データ157は圧縮率の下限値によって圧縮される。
【0089】
なお、センサ測定データ156及び通信品質データ157には、マルチホップ無線によって転送されるごとに、下位のセンサ端末110又は中継局120から送信されたセンサ測定データ156及び通信品質データ157が追加される。
【0090】
また、中継局120aが、センサ測定データ156を圧縮率の上限値によって圧縮しても、所定のパケット150の長さを超える場合、中継局120aは、パケット150の長さを長くすることによって、圧縮された通信品質データ157及び圧縮されたセンサ測定データ156とをパケット150に格納する。
【0091】
また、センサ測定データ156及び通信品質データ157の内容に従って、センサ測定データ156及び通信品質データ157の圧縮率が変化する場合において、センサ測定データ156の送信が重要である場合、センサ測定データの圧縮率の上限値は、低い値に保持される。また、通信品質データ156の送信が重要である場合、通信品質データ156の圧縮率の上限値は、低い値に保持される。
【0092】
各データ・コマンド類154の圧縮処理については、後述する。
【0093】
なお、図4では、マルチホップ無線による送信の各通信品質データ157が示す通信品質がすべて同じ程度という前提で圧縮状況を示すが、本発明の無線通信ネットワーク100におけるリンク140の通信品質は、リンク140ごとに異なる。
【0094】
前述のように、本実施形態によれば、センサ測定データ156又は通信品質データ157の値に従った最適なデータ量によってセンサ測定データ及び通信品質データを送信することによって、高信頼かつ低電力な無線通信ネットワーク100を実現できる。
【0095】
図5は、本発明の第1の実施形態のセンサ端末110及び中継局120の論理的な構成を示すブロック図である。
【0096】
センサ端末110及び中継局120は、無線通信部111、アンテナ112、圧縮判断部113、制御部114、センサデータ圧縮部115、通信品質データ圧縮部116、センサデータメモリ117、通信品質データメモリ118、通信品質測定部119、センサデータ処理部11A、及び、センサ11Bなどの機能を備える。これらの機能は、センサ端末110に備わるメモリに保持されるプログラムを、センサ端末110に備わるプロセッサが実行することによって実装される。
【0097】
センサ11Bは、設置された設備若しくは環境の状態を測定するセンサ装置、又は、メッセージを受信するセンサ装置における機能であり、センサ装置において測定されたセンシングデータを、本実施形態の無線通信装置において処理可能なセンサ測定データに生成する。
【0098】
センサデータ処理部11Aは、センサ11Bを稼働させることによってセンサ測定データを取得し、取得されたセンサ測定データを、センサデータメモリ117に格納する機能である。
【0099】
なお、中継局120は、センサデータ処理部11A及びセンサ11Bを備えなくてもよく、受信したセンサ測定データのみをセンサデータメモリ117に格納してもよい。
【0100】
また、センサ11B及びセンサ処理部11Aは、センサ測定データを取得するための処理機能である、アプリケーション(前述の第1のアプリケーション又は第2のアプリケーションに相当)を備える。このアプリケーションに従って、センサ測定データ又は通信品質データのいずれの内容が、圧縮率を定めるために用いられるかが定まる。
【0101】
通信品質測定部119は、再送回数等の通信品質データを測定し、測定された通信品質データを、通信品質データメモリ118に格納する機能である。なお、本実施形態の通信品質データは、パケットを送信しようとする先のリンク140における通信品質を含む。
【0102】
センサデータメモリ117及び通信品質データメモリ118は、センサ端末110又は中継局120の補助記憶装置に各データを格納する機能である。
【0103】
なお、中継局120は、センサ端末110又は他の中継局120から送信されたパケット150をアンテナ112及び無線通信部111によって受信し、パケット150に含まれる通信品質データを、通信品質データメモリ118に格納してもよい。
【0104】
センサ端末110及び中継局120に備わる制御部114は、自らのセンサ端末110又は中継局120において測定されたセンサ測定データ及び通信品質データ、並びに、他のセンサ端末110又は中継局120から受信したセンサ測定データ156及び通信品質データ157とを圧縮判断部113に送信し、圧縮判断部113に圧縮率を定めさせる。そして、圧縮判断部113によって定められた圧縮率に従って、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116に、各データを圧縮させる。
【0105】
また、制御部114は、センサデータメモリ117及び通信品質データメモリ118に格納されたセンサ測定データ及び通信品質データの内容を参照し、圧縮判断部113によって保持されるセンサ測定データ及び通信品質データの圧縮率の上限値と下限値とを、更新してもよい。例えば、センサ測定データの内容が、センサ測定データの送信が重要であることを示す場合、圧縮判断部113によって保持されるセンサ測定データの圧縮率の上限値又は下限値を、低く下げた値によって更新する。
【0106】
さらに制御部114は、圧縮後の各データを、無線通信のためのパケット150のデータ・コマンド類154に格納し、データ・コマンド類154に圧縮されたデータを格納されたパケット150を無線通信部111に送信する。無線通信部111は、制御部114から受信したパケット150を、アンテナ112を介して無線によって送信する。
【0107】
圧縮判断部113は、補助記憶装置等に接続され、通信品質データ又はセンサ測定データの圧縮率を含むテーブルを保持する。圧縮判断部113によって保持される圧縮率には、上限値及び下限値が含まれる。圧縮判断部113によって保持される圧縮率は、圧縮判断部113が備わるセンサ端末110又は中継局120が用いるアプリケーションに従ってあらかじめ格納されてもよいし、基地局130から送信されたコマンドによって更新されてもよい。
【0108】
また、圧縮判断部113は、アプリケーションを一意に示す識別子と、センサ測定データ又は通信品質データの内容のいずれに基づいて、どのデータの圧縮率を定めるかを示す判断基準とを、対応させて保持してもよい。
【0109】
この場合、センサ端末110又は中継局120の制御部114は、自らのセンサ処理部11A及びセンサ11Bが用いるアプリケーションの識別子を、送信するパケット150に格納する。そして、各中継局120の制御部114は、受信したパケット150からアプリケーションの識別子を抽出し、抽出されたアプリケーションの識別子を圧縮判断部113に送信する。または、センサ端末110又は中継局120の制御部114は、自らの装置が用いるアプリケーションの識別子を、圧縮判断部113に送信してもよい。
【0110】
そして、圧縮判断部113は、送信されたアプリケーションの識別子に基づいて、圧縮判断部113に保持される判断基準のうち、用いる判断基準を定める。
【0111】
後述する処理は、圧縮判断部113が、アプリケーションの識別子と、アプリケーションの識別子に対応する判断基準とを保持している前提において、説明される。
【0112】
圧縮判断部113は、制御部114から送信されたセンサ測定データ及び通信品質データと、自らが保持する圧縮率とに基づいて、データ・コマンド類154に格納するデータの圧縮率を定める。なお、圧縮判断部113は、アプリケーションの識別子に従って圧縮率を定める場合、圧縮率を、センサ測定データの内容に従って定めるか、通信品質データの内容に従って定めるかを示す判断基準を選択する。
【0113】
なお、センサ測定データ及び通信品質データに複数の種類のデータが含まれ、各データの種類に優先度が割当てられる場合、センサデータ処理部11A及び通信品質測定部119は、測定されたセンサ測定データ及び通信品質データに含まれる各データに、いかなるデータの種類かを示す識別子を付加してもよい。この場合、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116は、あらかじめ、データの種類による削減の優先度を保持し、センサ測定データ及び通信品質データを圧縮する際に、あらかじめ保持された優先度に従って、優先度の低い順にデータを削除する。
【0114】
また、各データの種類に優先度が割当てられる場合、センサデータ処理部11A及び通信品質測定部119は、測定されたセンサ測定データ及び通信品質データに含まれる各データに、優先度を示す値を付加してもよい。この場合、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116は、センサ測定データ及び通信品質データを圧縮する際に、各データに付加された優先度の低い順に、データを削除する。
【0115】
図6は、本発明の第1の実施形態の基地局130の論理的な構成を示すブロック図である。
【0116】
基地局130は、無線通信部131、アンテナ132、圧縮判断部133、基地局制御部134、通信・時刻コマンド圧縮部135、通信・時刻コマンド生成部136、システム管理部137、及び、広域通信部138などの機能を備える。
【0117】
センサ端末110又は中継局120から送信されたパケット150に含まれるセンサ測定データ及び通信品質データは、アンテナ132、無線通信部131、及び、基地局制御部134を介してシステム管理部137に送信される。
【0118】
システム管理部137は、ネットワーク160を介してサーバ170にセンサ測定データを送信する。また、システム管理部137は、受信した通信品質データに基づいて、無線通信ネットワーク100における最適なマルチホップ無線経路、及び/又は、リンク140ごとの最適な無線周波数チャネルを定める。
【0119】
システム管理部137が定めた結果に従って、通信・時刻コマンド生成部136は、チャネル及び/又は経路を切り替えるための通信コマンド、若しくは、時刻を同期するための時刻コマンドを生成する。
【0120】
通信・時刻コマンド圧縮部135は、通信・時刻コマンド生成部136において生成されたコマンドを、センサ端末110又は中継局120から受信した通信品質データに従って定められた圧縮率によって圧縮する。
【0121】
圧縮判断部133は、センサ端末110又は中継局120の圧縮判断部113と同様に、アプリケーションに従ったデータの圧縮率を保持し、圧縮する基準を選択する。
【0122】
基地局制御部134は、通信・時刻コマンド圧縮部135によって圧縮されたコマンドを、無線通信部131、アンテナ132を介して、中継局120又はセンサ端末110に無線によって送信する。そして、中継局120又はセンサ端末110は、基地局130から受信したコマンドに基づいて、マルチホップ無線経路の切り替え、チャネルの切り替え、又は、時刻の同期処理等を実行する。
【0123】
図7は、本発明の第1の実施形態のセンサ端末110又は中継局120による、データ・コマンド類154の圧縮処理を示すフローチャートである。
【0124】
センサ端末110は、センサ測定データ及び通信品質データを測定した際に、図7に示す処理を開始する。また、中継局120は、センサ端末110又は他の中継局120からパケット150を受信した際に、図7に示す処理を開始する(300)。
【0125】
なお、圧縮判断部113は、以下の処理において、データ・コマンド類154の所定の長さ(すなわち、データ・コマンド類154の量)をあらかじめ保持する。
【0126】
ステップ300の後、センサ端末110又は中継局120は、センサ測定データ及び通信品質データに格納された値を参照する(301)。
【0127】
具体的には、センサ端末110の圧縮判断部113は、ステップ301において、センサ端末110自身のセンサ11B及び通信品質測定部119によって測定されたセンサ測定データ及び通信品質データを、制御部114から送信された後、送信されたセンサ測定データ及び通信品質データを参照する。また、中継局120の圧縮判断部113は、ステップ301において、センサ端末110又は他の中継局120から送信されたセンサ測定データ及び通信品質データと、センサ端末110自身のセンサ11B及び通信品質測定部119によって測定されたセンサ測定データ及び通信品質データとを、制御部114から送信された後、送信されたセンサ測定データ及び通信品質データを参照する。
【0128】
ステップ301の後、圧縮判断部113は、圧縮判断部113が保持する圧縮率のテーブルを参照し、センサ測定データ及び通信品質データの圧縮率を定める(302)。
【0129】
具体的には、圧縮判断部113は、ステップ302において、制御部114から送信されたアプリケーションの識別子に基づいて、判断基準を選択することによって、圧縮率を定める際に基準となるデータを選択する。そして、センサ測定データ及び通信品質データの圧縮率を定める。
【0130】
例えば、アプリケーションの識別子が、前述の第1のアプリケーションの識別子を示す場合、圧縮判断部113は、通信品質データを基準に圧縮率を定めることを示す判断基準を選択する。そして、通信品質データのうち、いずれかに通信品質が悪いことを示すデータが含まれる場合、圧縮判断部113は、通信品質データの圧縮率の下限値に、通信品質データの圧縮率を定める。
【0131】
そして、圧縮判断部113は、圧縮率の下限値によって、通信品質データを圧縮した場合の、残りのデータ・コマンド類154の長さを算出し、算出された残りのデータ・コマンド類154の長さに、センサ測定データが格納されるようにセンサ測定データの圧縮率を定める。この時、センサ測定データが残りのデータ・コマンド類154の長さに格納されれば、センサ測定データの圧縮率は、上限値に定められてもよく、上限値よりも低い値に定められてもよい。
【0132】
ここで、センサ測定データの圧縮率が、センサ測定データの圧縮率の上限値を超える場合、圧縮判断部113は、所定のデータ・コマンド類154の長さを超えるように通信品質データの圧縮率を定めてもよい。すなわち、センサ測定データの上限値によってセンサ測定データを圧縮した結果、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、圧縮判断部113は、センサ測定データを上限値によって圧縮すると定めてもよい。これによって、パケット150の長さは長くなるが、必要なデータは送信される。
【0133】
なお、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、送信が重要である通信品質データの圧縮率を下限値より高い値に定めてもよい。これによって、パケット150の長さは所定の値に維持され、信頼性の高い通信が実現する。
【0134】
また、例えば、アプリケーションの識別子が、前述の第1のアプリケーションの識別子を示す場合において、すべての通信品質データが通信品質が良好であることを示す場合、圧縮判断部113は、センサ測定データの圧縮率の下限値に、センサ測定データの圧縮率を定める。
【0135】
そして、圧縮判断部113は、圧縮率の下限値によって、センサ測定データを圧縮した場合の、残りのデータ・コマンド類154の長さを算出し、算出された残りのデータ・コマンド類154の長さに通信品質データが格納されるように通信品質データの圧縮率を定める。この時、通信品質データが残りのデータ・コマンド類154の長さに格納されれば、通信品質データの圧縮率は、上限値に定められてもよく、上限値よりも低い値に定められてもよい。
【0136】
ここで、通信品質データの圧縮率が、通信品質データの圧縮率の上限値を超える場合、圧縮判断部113は、所定のデータ・コマンド類154の長さを超えるように通信品質データの圧縮率を定めてもよい。すなわち、通信品質データの上限値によって通信品質データを圧縮した結果、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、圧縮判断部113は、通信品質データを上限値によって圧縮すると定めてもよい。これによって、パケット150の長さは長くなるが、必要なデータは送信される。
【0137】
なお、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、送信が重要であるセンサ測定データの圧縮率を下限値より高い値に定めてもよい。これによって、パケット150の長さは所定の値に維持され、信頼性の高い通信が実現する。
【0138】
さらに、アプリケーションの識別子が、前述の第2のアプリケーションの識別子を示す場合、圧縮判断部113は、センサ測定データに含まれる値に従って、センサ測定データ及び通信品質データの圧縮率を定める判断基準を選択する。
【0139】
例えば、アプリケーションの識別子が、前述の第2のアプリケーションの識別子を示す場合において、センサ測定データに、いずれかのセンサ端末110又は中継局120において異常を測定したことを示す値が含まれる場合、圧縮判断部113は、まず、センサ測定データの圧縮率の下限値に、センサ測定データの圧縮率を定める。
【0140】
そして、圧縮判断部113は、圧縮率の下限値によって、センサ測定データを圧縮した場合の、残りのデータ・コマンド類154の長さを算出し、算出された残りのデータ・コマンド類154の長さに通信品質データが格納されるように通信品質データの圧縮率を定める。この時、通信品質データが残りのデータ・コマンド類154の長さに格納されれば、通信品質データの圧縮率は、上限値に定められてもよく、上限値よりも低い値に定められてもよい。
【0141】
ここで、通信品質データの圧縮率が、通信品質データの圧縮率の上限値を超える場合、圧縮判断部113は、所定のデータ・コマンド類154の長さを超えるように通信品質データの圧縮率を定めてもよい。すなわち、通信品質データの上限値によって通信品質データを圧縮した結果、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、圧縮判断部113は、通信品質データを上限値によって圧縮すると定めてもよい。これによって、パケット150の長さは長くなるが、必要なデータは送信される。
【0142】
なお、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、送信が重要であるセンサ測定データの圧縮率を下限値より高い値に定めてもよい。これによって、パケット150の長さは所定の値に維持され、信頼性の高い通信が実現する。
【0143】
また、例えば、アプリケーションの識別子が、前述の第2のアプリケーションの識別子を示す場合において、センサ測定データのいずれにも、異常を示す値が含まれない場合、通信品質データの送信が重要であるため、圧縮判断部113は、通信品質データの圧縮率の下限値に、通信品質データの圧縮率を定める。
【0144】
そして、圧縮率の下限値によって、通信品質データを圧縮した場合の、残りのデータ・コマンド類154の長さを算出し、算出された残りのデータ・コマンド類154の長さにセンサ測定データが格納されるように、センサ測定データの圧縮率を定める。この時、センサ測定データが残りのデータ・コマンド類154の長さに格納されれば、センサ測定データの圧縮率は、上限値に定められてもよく、上限値よりも低い値に定められてもよい。
【0145】
ここで、センサ測定データの圧縮率が、センサ測定データの圧縮率の上限値を超える場合、圧縮判断部113は、所定のデータ・コマンド類154の長さを超えるように通信品質データの圧縮率を定めてもよい。すなわち、センサ測定データの上限値によってセンサ測定データを圧縮した結果、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、圧縮判断部113は、センサ測定データを上限値によって圧縮すると定めてもよい。これによって、パケット150の長さは長くなるが、必要なデータは送信される。
【0146】
なお、データ・コマンド類154の長さが所定の長さを超える場合、送信が重要である通信品質データの圧縮率を下限値より高い値に定めてもよい。これによって、パケット150の長さは所定の値に維持され、信頼性の高い通信が実現する。
【0147】
なお、前述のような圧縮率を定める方法は、送信が重要であるデータの圧縮率を下限値としたが、本実施形態の制御部114は、センサ測定データ及び通信品質データが示す値の程度によって、圧縮率の上限値又は下限値を増減させてもよい。
【0148】
例えば、制御部114が、センサ測定データ及び通信品質データの内容を参照し、すべての通信品質データの中に、通信品質が悪いことを示すデータはあるが、通信品質の程度がそれほど深刻ではない場合、制御部114は、通信品質の程度が深刻な場合の通信品質データの圧縮率の下限値よりも、通信品質データの圧縮率の下限値を高くし、通信品質の程度が深刻な場合のセンサ測定データの上限値よりも、センサ測定データの圧縮率の上限値を低くしてもよい。そして、新たな圧縮率の上限値及び下限値を、圧縮判断部113に送信する。
【0149】
また、本実施形態の圧縮率は、すべてのデータを圧縮せずそのまま送信する場合とすべてのデータを削除する場合とを示してもよい。例えば、圧縮率が、0から1までの値によって示され、センサ測定データの圧縮率が0と定められる場合、センサデータ圧縮部115は、センサ測定データに含まれるすべてのデータを削除、又は置き換えない。また、センサ測定データの圧縮率が1である場合、センサデータ圧縮部115は、センサ測定データのすべてが削除されることを示す。
【0150】
以上のような処理が実行されることによって、センサ測定データ及び通信品質データの圧縮率が定まる。圧縮判断部113は、ステップ302において、定められた圧縮率を制御部114に送信する。
【0151】
ステップ302の後、制御部114は、圧縮判断部113から送信された圧縮率のうちセンサ測定データの圧縮率をセンサデータ圧縮部115に送信し、通信品質データの圧縮率を通信品質データ圧縮部116に送信する。そして、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116は、センサデータメモリ117及び通信品質データメモリ118に格納されたセンサ測定データ及び通信品質データを取得し、送信された圧縮率に基づいて、圧縮する(303)。
【0152】
ステップ302においてセンサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116は、前述に示した圧縮方法を用いる。すなわち、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116は、センサ測定データ及び通信品質データのうち、低い優先度が付加されたデータを削除したり、予測値に置き換えたりして、センサ測定データ及び通信品質データを圧縮する。
【0153】
なお、センサデータメモリ117及び通信品質データメモリ118に格納されたセンサ測定データ及び通信品質データには、圧縮を実行しているセンサ端末110又は中継局120のセンサ11B及び通信品質測定部119によって測定されたセンサ測定データ及び通信品質データと、センサ端末110又は他の中継局120によって送信され、アンテナ112を介して受信したセンサ測定データ及び通信品質データとが含まれる。
【0154】
ステップ303の後、制御部114は、センサデータ圧縮部115及び通信品質データ圧縮部116から圧縮後の各データを受信し、パケット150のデータ・コマンド類154に圧縮された各データを格納する。そして、制御部114は、圧縮された各データが格納されたパケット150を無線通信部111に送信し、無線通信部111は、アンテナ112によって、送信されたパケット150を無線によって送信する(304)。
【0155】
第1の実施形態によれば、線通信品質データ又はセンサ測定データの内容に従って、送信するための最適な圧縮率を定めることによって、必要以上にパケット150を長くせず、パケット150の長さを短く保つことができる。これによって送信及び受信にかかる時間が短縮され、無線通信の信頼性向上と消費電力の低減とを実現することができる。
【0156】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態のマルチホップ無線ネットワークにおける基本的な通信を示すシーケンス図である。
【0157】
図8に示すシーケンスは、センサ端末110、中継局120、及び、基地局130がそれぞれ一台ずつ備わる無線通信ネットワーク100における、無線通信を示す。
【0158】
基地局130は、中継局120へ時刻同期コマンドを送信し(211)、中継局120からアクノレッジ信号を受信する(212)。中継局120は、センサ端末110へ時刻同期コマンドを送信し(213)、センサ端末110からアクノレッジ信号を受信する(214)。各無線通信装置は、アクノレッジ信号を受信することによって、パケット150の送信先の無線通信装置が、正常にパケット150を受信したか否かを判定する。
【0159】
次に、センサ端末110は、中継局120へセンサ測定データを送信し(215)、中継局120からアクノレッジ信号を受信する(216)。中継局120は、基地局130へセンサ測定データを送信し(217)、基地局130からアクノレッジ信号を受信する(218)。
【0160】
図9は、本発明の第2の実施形態のデータ圧縮を用いたマルチホップ無線ネットワークにおける通信を示すシーケンス図である。
【0161】
基地局130は、中継局120へ時刻を同期するためのコマンド(時刻同期コマンド)と、チャネル又は無線通信の経路を切り替えるためのコマンド(チャネル・経路切替えコマンド)とを含むパケット150を送信する(311)。中継局120は、センサ端末110へ時刻同期コマンドとチャネル・経路切り替えコマンドとを含むパケット150を送信する(313)。この時、313によって送信されたパケット150が、無線によって基地局130にも到達するため、基地局130は、シーケンス313によるパケット150をアクノレッジ信号として処理する(312)。
【0162】
次に、センサ端末110は、中継局120へセンサ測定データと通信品質データAとを含むパケット150を送信する(314)。シーケンス314によるパケット150は、シーケンス313による通信に対応するアクノレッジ信号である。
【0163】
中継局120は、センサ端末110から送信されたセンサ測定データ及び通信品質データAに、中継局120によって測定された通信品質データBを追加した信号を、基地局130へ送信する(315)。シーケンス315によるパケット150は、シーケンス314に対応する中継局120からセンサ端末110へのアクノレッジ信号である(316)。
【0164】
最後に、基地局130は、アクノレッジ信号317を中継局120に送信するが(317)、これは、次のタイミングの、基地局130から中継局120へ送信される時刻同期コマンド及びチャネル・経路切り替えコマンドを含む信号を、アクノレッジ信号の代わりとしてもよい。
【0165】
シーケンス311、313、314及び315には、前述のデータ圧縮方法を用いることによって、無線通信のパケット150の長さを必要以上に長くすることなく、必要な通信品質データ量を増やすことが可能である。また、アクノレッジ信号による無線通信の回数を、減らすことが可能であるため、無線同士の干渉などによる信頼性劣化を抑制可能であり、同時に低電力化も実現できる。
【符号の説明】
【0166】
100 無線通信ネットワーク
110、110a、110b、110c センサ端末
120、120a、120b、120c、120d 中継局
130 基地局
140、140a、140b、140c、140d、140e、140f、140g リンク
160 ネットワーク
170 サーバ
111 無線通信部
112 アンテナ
113 圧縮判断部
114 制御部
115 センサデータ圧縮部
116 通信品質データ圧縮部
117 センサデータメモリ
118 通信品質データメモリ
119 通信品質測定部
11A センサデータ処理部
11B センサ
131 無線通信部
132 アンテナ
133 圧縮判断部
134 基地局制御部
135 通信・時刻コマンド圧縮部
136 通信・時刻コマンド生成部
137 システム管理部
138 広域通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置と、前記各無線通信装置と接続される基地局とを備える無線ネットワークシステムであって、
前記各無線通信装置は、
前記各無線通信装置が有するセンサが取得した測定結果を含むセンサデータを生成するセンサ処理部と、
前記各無線通信装置からパケットを送信するための通信の状態を含む通信品質データを生成する通信測定部と、
前記生成されたセンサデータの内容、又は、前記生成された通信品質データの内容に従って、前記生成されたセンサデータ及び前記生成された通信品質データの圧縮率を定める圧縮判断部と、
前記圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記生成されたセンサデータ及び前記生成された通信品質データを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部によって圧縮されたセンサデータ及び通信品質データを含むパケットを、他の前記無線通信装置又は前記基地局に送信するための無線通信部と、を備え、
第1の前記無線通信装置の前記無線通信部は、第2の前記無線通信装置から送信された第1の前記パケットを受信し、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮判断部は、前記第1のパケットに含まれるセンサデータと前記第1の無線通信装置の前記センサ処理部によって生成されたセンサデータとを含む第1の前記センサデータの内容、又は、前記第1のパケットに含まれる通信品質データと前記第1の無線通信装置の前記通信測定部によって生成された通信品質データとを含む第1の前記通信品質データの内容に従って、前記第1のセンサデータ及び前記第1の通信品質データの圧縮率を定め、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮部は、前記第1の無線通信装置の圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを圧縮し、
前記第1の無線通信装置の前記無線通信部は、前記圧縮部によって圧縮された第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを含む第2の前記パケットを、第3の前記無線通信装置又は前記基地局に送信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項2】
前記圧縮判断部は、
前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容に従った前記センサデータの圧縮率の下限値と、前記パケットに含まれる所定のデータ量とを保持し、
前記センサデータ又は前記通信品質データの内容が、前記センサデータの送信が重要であることを示す場合、前記保持されたセンサデータの下限値に前記センサデータの圧縮率を定めることによって、前記圧縮部による圧縮後の前記センサデータの量を増加させ、
前記所定のデータ量から、前記圧縮部による圧縮後のセンサデータの量を減算した量以下に、前記通信品質データの量が減少するように、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項3】
前記圧縮判断部は、
前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容に従った前記通信品質データの圧縮率の上限値を保持し、
前記定められた通信品質データの圧縮率が、前記保持された通信品質データの圧縮率の上限値を上回る場合、前記保持された通信品質データの圧縮率の上限値に、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項2に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項4】
前記センサ処理部は、前記センサが測定結果を取得するための複数の処理機能を備え、
前記圧縮判断部は、前記各処理機能を示す識別子と、前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容のいずれに従って、前記センサデータの圧縮率又は前記通信品質データの圧縮率のいずれが定められるかを示す判断基準とを、保持し、
前記センサ処理部が、第1の前記処理機能を備える場合、前記圧縮判断部は、前記第1の処理機能の識別子と、前記保持された判断基準とに基づいて、前記第1の処理機能によって取得されたセンサデータの圧縮率、及び、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項2に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項5】
前記複数の無線通信装置の前記センサ処理部が、前記第1の処理機能を備える場合、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮判断部は、前記基地局から送信された前記第1の処理機能の識別子及び前記第1の判断基準を受信し、
前記受信された第1の処理機能の識別子及び第1の判断基準を保持し、
前記第2の無線通信装置の前記無線通信部は、前記第1の処理機能の識別子を含む第1のパケットを、前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置の圧縮判断部は、前記第1のパケットに含まれる第1の処理機能の識別子に基づいて、前記第1の判断基準を選択し、
前記選択された第1の判断基準に基づいて、前記第1の処理機能によって取得されたセンサデータ、及び、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項4に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項6】
前記センサ処理部は、前記センサデータに含まれる各測定結果に、第1の識別子を付加し、
前記通信測定部は、前記通信品質データに含まれる複数の各データに、第2の識別子を付加し、
前記圧縮部は、
前記測定結果の優先度と、前記第1の識別子と、前記第2の識別子とを保持し、
前記圧縮判断部によって定められた前記センサデータの圧縮率が高いほど、前記優先度が低い前記第1の識別子を付加された測定結果を、前記センサデータから削除することによって、前記センサデータを圧縮し、
前記圧縮判断部によって定められた前記通信品質データの圧縮率が高いほど、前記優先度が低い前記第2の識別子を付加されたデータを、前記通信品質データから削除することによって、前記通信品質データを圧縮することを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項7】
基地局に接続される複数の無線通信装置であって、
前記各無線通信装置は、
前記各無線通信装置が有するセンサが取得した測定結果を含むセンサデータを生成するセンサ処理部と、
前記各無線通信装置からパケットを送信するための通信の状態を含む通信品質データを生成する通信測定部と、
前記生成されたセンサデータの内容、又は、前記生成された通信品質データの内容に従って、前記生成されたセンサデータ及び前記生成された通信品質データの圧縮率を定める圧縮判断部と、
前記圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記生成されたセンサデータ及び前記生成された通信品質データを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部によって圧縮されたセンサデータ及び通信品質データを含むパケットを、他の前記無線通信装置又は前記基地局に送信するための無線通信部と、を備え、
第1の前記無線通信装置の前記無線通信部は、第2の前記無線通信装置から送信された第1の前記パケットを受信し、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮判断部は、前記第1のパケットに含まれるセンサデータと前記第1の無線通信装置の前記センサ処理部によって生成されたセンサデータとを含む第1の前記センサデータの内容、又は、前記第1のパケットに含まれる通信品質データと前記第1の無線通信装置の前記通信測定部によって生成された通信品質データとを含む第1の前記通信品質データの内容に従って、前記第1のセンサデータ及び前記第1の通信品質データの圧縮率を定め、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮部は、前記第1の無線通信装置の圧縮判断部によって定められた圧縮率によって、前記第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを圧縮し、
前記第1の無線通信装置の前記無線通信部は、前記圧縮部によって圧縮された第1のセンサデータ及び第1の通信品質データを含む第2の前記パケットを、第3の前記無線通信装置又は前記基地局に送信することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
前記圧縮判断部は、
前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容に従った前記センサデータの圧縮率の下限値と、前記パケットに含まれる所定のデータ量とを保持し、
前記通信品質データの内容が、前記センサデータの送信が重要であることを示す場合、前記保持されたセンサデータの下限値に前記センサデータの圧縮率を定めることによって、前記圧縮部による圧縮後の前記センサデータの量を増加させ、
前記所定のデータ量から、前記圧縮部による圧縮後のセンサデータの量を減算した量以下に、前記通信品質データの量が減少するように、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記圧縮判断部は、
前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容に従った前記通信品質データの圧縮率の上限値を保持し、
前記定められた通信品質データの圧縮率が、前記保持された通信品質データの圧縮率の上限値を上回る場合、前記保持された通信品質データの圧縮率の上限値に、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記センサ処理部は、前記センサが測定結果を取得するための複数の処理機能を備え、
前記圧縮判断部は、前記各処理機能を示す識別子と、前記センサデータの内容又は前記通信品質データの内容のいずれに従って、前記センサデータの圧縮率又は前記通信品質データの圧縮率のいずれが定められるかを示す判断基準とを、保持し、
前記センサ処理部が、第1の前記処理機能を備える場合、前記圧縮判断部は、前記第1の処理機能の識別子と、前記保持された判断基準とに基づいて、前記第1の処理機能によって取得されたセンサデータの圧縮率、及び、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記複数の無線通信装置の前記センサ処理部が、前記第1の処理機能を備える場合、
前記第1の無線通信装置の前記圧縮判断部は、前記基地局から送信された前記第1の処理機能の識別子及び前記第1の判断基準を受信し、
前記受信された第1の処理機能の識別子及び第1の判断基準を保持し、
前記第2の無線通信装置の前記無線通信部は、前記第1の処理機能の識別子を含む第1のパケットを、前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置の圧縮判断部は、前記第1のパケットに含まれる第1の処理機能の識別子に基づいて、前記第1の判断基準を選択し、
前記選択された第1の判断基準に基づいて、前記第1の処理機能によって取得されたセンサデータ、及び、前記通信品質データの圧縮率を定めることを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記センサ処理部は、前記センサデータに含まれる各測定結果に、第1の識別子を付加し、
前記通信測定部は、前記通信品質データに含まれる複数の各データに、第2の識別子を付加し、
前記圧縮部は、
前記測定結果の優先度と、前記各第1の識別子と、前記各第2の識別子とを保持し、
前記圧縮判断部によって定められた前記センサデータの圧縮率が高いほど、前記優先度が低い前記第1の識別子を付加された測定結果を、前記センサデータから削除することによって、前記センサデータを圧縮し、
前記圧縮判断部によって定められた前記通信品質データの圧縮率が高いほど、前記優先度が低い前記第2の識別子を付加されたデータを、前記通信品質データから削除することによって、前記通信品質データを圧縮することを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129805(P2012−129805A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279604(P2010−279604)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】