説明

無線端末装置、コードレス電話装置セット、通信制御プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】中継装置の通信可能エリアに束縛されることなく、行方不明の無線端末装置を捜索し、その手がかりを得ることができる無線端末装置を実現する。
【解決手段】 本発明に係る無線端末装置は、通信相手の無線端末装置の識別情報を記憶する記憶部17と、信号を送受信する通信部12と、上記識別情報を含む送信用信号を作成し、当該送信用信号を通信部12を介して発信する通信制御部14と、通信制御部14を介して受信した受信信号に上記識別情報が含まれているか否かを、上記記憶部17に記憶された識別情報との比較によって検出する検出部16と、を備えている。それゆえ、送信用信号による発呼に対し、通信相手の無線端末装置が応答するか否か、すなわち、通信相手の無線端末装置が、捜索側の無線端末装置の通信可能範囲内に存在しているか否かの手がかりをつかむことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を有する無線端末装置、特に携帯可能で無線通信機能を有する無線端末装置に関するものである。また、本発明は、上記無線端末装置を備えたコードレス電話装置セットに関するものでもある。なお、コードレス電話装置とは、相互に無線通信する親機と子機とを備え、上記親機が公衆回線網に有線接続して使用される、従来の電話機の代替としてのコードレス電話装置に加え、いわゆる携帯電話及びPHS等も含む。
【背景技術】
【0002】
公衆回線網に有線接続して通話を行う電話装置において、容易に持ち運びできる端末装置を備えるコードレス電話機セットが普及してきた。このコードレス電話装置セットには、通常、1台の中継装置(いわゆる親機)と1台以上の端末装置(いわゆる子機)とが含まれる。
【0003】
このようなコードレス電話装置では、中継装置が公衆回線網に有線接続され、また、中継装置と端末装置との間で無線信号による通信が行われる。これによって端末装置は、中継装置を経由して公衆回線網にアクセスを行っている。
【0004】
さらに、近年、屋外でも使用可能で、公衆回線網に使用者が有線接続する必要のないコードレス電話装置(いわゆる携帯電話やPHS等)も普及してきた。このようなコードレス電話装置においても、各端末装置は、キャリア会社によって設置された中継装置(いわゆる基地局)を経由して公衆回線網にアクセスを行っている。
【0005】
上記2種類のコードレス電話装置の端末装置は、小型軽量で、かつ、配線を伴わないことから、容易に持ち運びできるという特徴を有している。これによって、使用者は、状況に応じて好みの場所で快適に通話を行うことが可能になった。
【0006】
しかしながら、それと同時に、上述した特徴により使用者が端末装置を紛失してしまうという問題が発生している。このとき、中継装置を介して端末装置に呼び出し音を鳴らさせることができるものの、距離が遠い場合には、呼び出し音が聞こえにくいため捜索することが困難になってしまうという問題がある。また、捜索している間に端末装置のバッテリが消耗してしまい、バッテリ切れになって捜索を継続することができなくなってしまうという問題もある。
【0007】
そこで、紛失した端末装置を鳴らす代わりに、紛失した端末装置との間の位置関係を使用者に確実に通知することができる以下のような装置が発明された。
【0008】
特許文献1には、サーチボタンを押し、親機と子機間でサーチ用電波の送受信を行い、その後、制御部でサーチ用電波を用い、子機の方向と、子機までの距離を計算し、表示部に方向および距離を表示するコードレス電話機が開示されている。このコードレス電話機によれば、子機または親機の所在方向および親機と子機間の距離を把握することができる。
【0009】
また、特許文献2には、以下の捜索装置が開示されている。すなわち、親機のPHS送受信装置から捜索対象が携行している子機に無線電話をかけると、子機ではGPS測位装置で測位してPHS応答装置から子機の測位情報を親機に返信する。そして、親機では、子機から受信した子機の測位情報と、親機のGPS測位装置で測定した自己の測位情報とが得られるので、ディファレンシャルGPS測位システムが形成されており、親機から子機への相対位置が誤差1m未満の高精度で地図画像ディスプレイに表示される。このような捜索装置によれば、PHSを通信に使うので距離に関係なく速やかな捜索ができ、DGPSによりピンポイントで子機の位置の特定ができる。
【特許文献1】特開平8−265853号公報(平成8年(1996)10月11日公開)
【特許文献2】特開平10−122895号公報(平成10年(1998)5月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の構成では、後述するように、親機または基地局のような中継装置からの無線信号が子機に届かない場合に、紛失した子機を捜索することができないという問題を有している。
【0011】
特許文献1に記載のコードレス電話機は、親機と子機との間で距離及び方向を計測するものである。親機は、通常、公衆回線網に有線接続されており、バッテリを備えていないため、作動させたまま容易に持ち運ぶことができない。従って、親機からの無線信号が届かないところにある子機、すなわち、親機の通信可能エリア外にある子機は、捜索することができないという問題を有している。
【0012】
また、特許文献2に記載の捜索装置は、PHS(Personal Handy-phone System)及びGPS(Global Positioning System)を利用している。ここで、PHSを利用した端末装置は、上述したように、中継装置を介さないと通信することができない。従って、特許文献2に記載の捜索装置も、特許文献1に記載の発明と同様に、中継装置の通信可能エリア外にある子機を捜索することができないという問題を有している。
【0013】
また、上記従来の構成は、以下の問題も有している。
【0014】
すなわち、特許文献1に記載の発明では、紛失した子機を捜索する際に、使用者は、親機に表示された距離情報及び方向情報を参照して、その情報に対応する地点に移動することになる。しかしながら、上述したように親機は移動させることが困難であるので、使用者は、親機を携帯して捜索を行うことができない。つまり、紛失した子機の情報を手元で参照しながら捜索することができない。これによって、使用者は周辺地点に到達することはできるものの、精確な地点に到達して、紛失した子機を発見することは非常に困難である。以上のように、特許文献1に記載のコードレス電話機は、使用者が手元で位置情報を参照しながら捜索することができないという問題も有している。
【0015】
また、特許文献2に記載の発明において、GPS装置は衛星からの電波を受信するために、天井等がある屋内では信号を受信することができない。このように、特許文献2に記載の捜索装置は、衛星から電波が届かない場所では捜索することができないという問題も有している。
【0016】
また、通常の無線端末装置にはGPS装置が備えられていないため、GPS装置を追加する必要がある。GPS装置は比較的高価であるので、特許文献2に記載の捜索装置は、製造コストが上昇してしまうという問題も有している。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、中継装置の通信可能エリア外でも他の無線端末装置の手がかりを得ることができる無線端末装置を実現することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、使用者が手がかりを参照しながら捜索することができる無線端末装置を実現することにある。
【0019】
また、本発明の他の目的は、屋内等の、衛星からの電波が届かない場所でも捜索することができる無線端末装置を実現することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、製造コストを抑えることができる無線端末装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)本発明に係る無線端末装置は、上記課題を解決するために、通信相手の無線端末装置の第1の識別情報を記憶する記憶部と、信号を送受信する通信部と、上記第1の識別情報を含む第1の送信用信号を作成し、当該第1の送信用信号を上記通信部を介して発信する通信制御部と、上記通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれているか否かを、上記記憶部に記憶された第1の識別情報との比較によって検出する検出部と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、通信制御部が、通信相手の無線端末装置に割り当てられた第1の識別情報を含む第1の送信用信号を作成し、発信するということは、通信相手の無線端末装置に呼び出しをかける(発呼する)ということである。この発呼の後、通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれているか否かを検出部が検出する。この検出には、記憶部に記憶された第1の識別情報を比較基準として用いる。
【0023】
第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれていることを検出部が検出したとすれば、それは、上記の発呼に通信相手の無線端末装置が応答し、自らの識別情報を含む信号を返信したことを意味する。つまり、上記の構成によれば、通信相手の無線端末装置が行方不明になったとしても、通信相手の無線端末装置が、捜索側の無線端末装置の通信可能範囲内に存在しているか否かの手がかりをつかむことができる。
【0024】
なお、上記識別情報は、互いに無線通信が可能な複数の無線端末装置に排他的に割り当てられた固有情報であり、発呼に用いることができる情報であればよい。
【0025】
以上のように、本発明の構成は、複数の無線端末装置が属する無線システムにおける、紛失端末の捜索に適用することができる。本発明の無線端末装置は、捜索対象の無線端末装置と通信する際に中継装置を必要としない。すなわち、本発明の無線端末装置は、公衆回線網に有線接続されているわけではなく、かつ、中継装置を介さないと通信相手の無線端末装置と通信することができないわけでもない。従って、中継装置の通信可能エリアに束縛されることなく、行方不明の無線端末装置を捜索し、その手がかりを得ることができる。
【0026】
(2)また、本発明に係る無線端末装置において、上記記憶部は、自己の第2の識別情報をさらに記憶し、上記検出部が、上記通信制御部を介して受信した第2の受信信号に上記第2の識別情報が含まれていることを、上記記憶部に記憶された第2の識別情報との比較によって検出すると、上記通信制御部は、上記第2の受信信号に応答して、上記第2の識別情報を含む第2の送信用信号を作成し、当該第2の送信用信号を上記通信部を介して発信することが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、自らが行方不明の無線端末装置となり、捜索される側になった場合に、捜索を行っている他の無線端末装置に対し応答することができる。要するに、自己の第2の識別情報を含む第2の受信信号を受信したことを検出部が検出したということは、他の無線端末装置から呼び出されている(発呼されている)ことを意味する。この検出を受けて、通信制御部は、第2の識別情報、つまり自らの識別情報を含む第2の送信用信号を作成し発信するので、捜索を行っている他の無線端末装置に対し所在の手がかりを与えることができる。
【0028】
(3)また、本発明に係る無線端末装置において、上記記憶部は、自己の第2の識別情報をさらに記憶し、上記通信制御部は、第2の識別情報をさらに含めて第1の送信用信号を作成して発信し、上記検出部が、上記通信制御部を介して受信した第2の受信信号に上記第1および第2の識別情報が含まれていることを、上記記憶部に記憶された第1および第2の識別情報との比較によって検出すると、上記通信制御部は、上記第2の受信信号に応答して、上記第2の識別情報を含む第2の送信用信号を作成し、第1の識別情報を有する通信相手の無線端末装置に対して、当該第2の送信用信号を送信することが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、通信制御部が、第2の識別情報をさらに含めて第1の送信用信号を作成して発信すると、通信を行いたい相手の無線端末装置を、その第1の識別情報によって発呼するとともに、第2の識別情報を送信元の情報として相手の無線端末装置に明示することができる。
【0030】
また、検出部は、第2の受信信号に通信相手の第1の識別情報と、自らの第2の識別情報とが含まれていることを検出し、通信制御部は、上記第2の受信信号に応答して、第1の識別情報を有する通信相手の無線端末装置に対して、第2の識別情報を含む第2の送信用信号を送信する構成である。従って、自らが行方不明の無線端末装置となり、捜索される側になった場合に、捜索を行っている他の無線端末装置を第1の識別情報で特定して、応答することができる。すなわち、通信相手の無線端末装置と中継装置を介さずに1対1の通信を確立した状態で、所在の手がかりを与えることができる。
【0031】
(4)また、本発明に係る無線端末装置は、上記通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれている場合、当該第1の受信信号に基づいて、上記通信相手の無線端末装置との距離を算出する距離算出部を備えていてもよい。
【0032】
上記構成によれば、第1の受信信号から第1の識別情報(通信相手の無線端末装置)が検出されたことにより、通信相手の無線端末装置の存在確認ができたので、その通信相手が発信したと推定される第1の受信信号を用いて、距離算出部は、通信相手の無線端末装置との間の距離を算出することができる。従って、捜索対象の無線端末装置の手がかりを距離として得ることができる。
【0033】
なお、本発明は、特定の距離算出方法によって限定されるものではなく、距離に応じて変化することが分かっている信号特性を検出すれば、距離を求めることができる。
【0034】
(5)また、本発明に係る無線端末装置において、上記距離算出部は、通信相手から受信した無線信号の電界強度に基づいて距離を算出するか、又は、通信相手から受信した無線信号のビットエラーレートに基づいて距離を算出するものであってもよい。
【0035】
電波による無線信号は、送信された地点から離れるにつれて振幅が減衰することが知られている。すなわち無線信号は、送信される距離に応じて電界強度が小さくなる。従って、距離算出部は、紛失した端末装置から受信した無線信号の電界強度に基づいて、捜索対象の端末装置との間の距離を算出することができる。
【0036】
また、ビットエラーレートとは、エラーが発生したビット数を全送信ビット数又は全受信ビット数にて除算したものである。無線信号は距離に依存して品質が低下するため、距離が離れるにつれて全信号に含まれるエラー信号の割合(すなわちビットエラーレート)が大きくなることが知られている。従って、距離算出部は、ビットエラーレートを算出すれば、得られたビットエラーレートに基づいて距離を算出することができる。
【0037】
以上のようにして、距離算出部は、捜索対象の端末装置から受信した信号に基づいて、捜索対象の端末装置との間の距離を算出することができる。ここで、捜索対象の端末装置の位置的な手がかりを得るのに、GPSを用いずに無線信号を用いているため、屋内等の、衛星からの電波が届かない場所にある無線端末装置でも、信号を送受信することができる。これにより、無線端末装置が屋内に置かれていても、行方不明の無線端末装置を捜索し、手がかりを得ることができる。また、無線端末装置に比較的高価なGPSを組み込む必要がないため、製造コストを抑えることもできる。
【0038】
(6)また、本発明に係る無線端末装置は、上記距離算出部が算出した距離を示す情報を使用者に通知する通知手段を備えていることが好ましい。
【0039】
上記構成によれば、距離算出部が通信相手の無線端末装置との距離を算出した際に、無線端末装置は、通知手段を介して使用者にその距離を示す情報を伝えることができる。無線端末装置は携帯するのが容易なものであるため、使用者は、手元の無線端末装置から距離を示す情報を参照しながら捜索対象の無線端末装置を捜索することができる。
【0040】
なお、距離を示す情報とは、距離そのものを表す数値情報に限らず、距離の大小を使用者が感覚(視覚、聴覚、触覚等の何れか1つまたは任意の組み合わせ)的に把握できる情報であればよい。
【0041】
(7)また、本発明に係る無線端末装置は、上記距離算出部が算出した距離を示す情報を使用者に少なくとも通知する通知手段を備え、上記第2の受信信号を受信したときに、当該第2の受信信号に対して応答中であることを示す通知動作を制限するように、通知手段を制御する通知制御部を備えていてもよい。
【0042】
上記構成において、上記第2の受信信号を受信した結果、自身が捜索対象の無線端末装置となった場合に、音または光を発したり、振動したりすることによって、自身の存在を周囲に報知することもできるが、発見されるまでにバッテリを消耗してしまうおそれがある。これに対し、本発明の構成では、通知制御部が、第2の受信信号に対して応答中であることを示す通知動作を制限するように、通知手段を制御するので、発見されない間に無線端末装置のバッテリが切れ、捜索できなくなってしまう事態を回避することができる。
【0043】
(8)また、本発明に係る無線端末装置において、上記通知手段は、上記距離算出部によって算出された距離に応じて通知方法を変更するものであってもよい。
【0044】
無線端末装置を捜索する際、捜索対象の無線端末装置との間の距離に応じて通知方法を変更する、例えば距離が比較的遠いうちは距離情報を表示するという通知方法を、ある距離まで接近した時点で、断続的通知音または点滅発光を加えるという通知方法に変更する。これにより、使用者がより容易に距離の変化を把握することができる。従って、上記構成は、無線端末装置の捜索効率を向上させることができる。
【0045】
(9)また、本発明に係る無線端末装置は、コードレス電話装置の子機に備えられる無線端末装置であってもよい。
【0046】
上記構成によれば、いわゆる親機または基地局等の中継装置と複数の子機とで構成されたコードレス電話装置において、親機または中継装置の通信可能エリア外でも、ある子機が第1の識別情報を記憶した他の子機を捜索して、その手がかりを得ることができるコードレス電話装置の子機を実現することができる。
【0047】
(10)また、本発明に係るコードレス電話装置セットは、上記の無線端末装置を備えた子機と、当該無線端末装置との間で無線通信する中継装置とを備えていることを特徴とする。
【0048】
上記構成によれば、上記の無線端末装置を備えているので、いわゆる親機または基地局等の中継装置と複数の子機とで構成されたコードレス電話装置において、親機または中継装置の通信可能エリア外でも、ある子機が第1の識別情報を記憶した他の子機を捜索して、その手がかりを得ることができるコードレス電話装置セットを実現することができる。
【0049】
(11)なお、上記無線端末装置の各制御部は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各制御部として動作させることにより上記無線端末装置の各制御部をコンピュータにて実現させる通信制御プログラム、及びその通信制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。なお、上記各制御部とは、通信制御部、距離算出部、検出部、記憶部、及び通知制御部のうち、上述した無線端末装置の何れかに備えられるものをいう。
【0050】
これらの構成によれば、上記通信制御プログラムを、コンピュータに読み取り実行させることによって、上記無線端末装置と同一の作用効果を実現しすることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明に係る無線端末装置は、通信相手の無線端末装置の第1の識別情報を記憶する記憶部と、信号を送受信する通信部と、上記第1の識別情報を含む第1の送信用信号を作成し、当該第1の送信用信号を上記通信部を介して発信する通信制御部と、上記通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれているか否かを、上記記憶部に記憶された第1の識別情報との比較によって検出する検出部と、を備えていることを特徴とする。
【0052】
また、本発明に係るコードレス電話機セットは、上記無線端末装置を備えた子機と、当該無線端末装置との間で無線通信する中継装置とを備えていることを特徴とする。
【0053】
また、本発明の通信制御プログラムは、上記無線端末装置を動作させる通信制御プログラムであって、コンピュータを上記無線端末装置として機能させるための通信制御プログラムである。
【0054】
また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記通信制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0055】
それゆえ、第1の送信用信号による発呼に対し、通信相手の無線端末装置が応答するか否か、すなわち、通信相手の無線端末装置が、捜索側の無線端末装置の通信可能範囲内に存在しているか否かの手がかりをつかむことができる。従って、本発明の無線端末装置は、中継装置の通信可能エリアに束縛されることなく、行方不明の無線端末装置を捜索し、その手がかりを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明に係る無線端末装置の一例として、コードレス電話機の子機(以下「端末装置」という。)について、図1乃至図6を用いて以下に説明する。
【0057】
本発明の端末装置において、通話に必要な受話部やマイク部等の部材は、公知の端末装置と同様のものを使用することができる。また、通話の際の動作についても公知の端末装置と同様である。ここでは説明を簡略化するため、通話等に関する部分等、一般の端末装置と共通の部分については説明を省略する。本実施形態では、本発明の端末装置に特有の機能である捜索機能について詳細に説明する。
【0058】
図1は、本発明の一実施形態である端末装置(無線端末装置)1の構成を示すブロック図である。端末装置1は、中継装置(いわゆる親機)と共にコードレス電話機セットに含まれる端末装置である。
【0059】
端末装置1には制御部9が設けられている。そして、制御部9には、キー入力部(入力部)2、表示部(通知手段)3、スピーカ出力部(通知手段)4、及び通信部12がそれぞれ接続されている。
【0060】
キー入力部2は端末装置1の入力部であり、複数のキーを有している。キー入力部2は、電話をかけるときに必要なダイヤル番号を使用者が入力する際や、後述する捜索モードコマンドを使用者が入力する際、紛失端末の識別情報を入力する際に、入力部として用いられる。
【0061】
表示部(通知手段の一例)3は、端末装置1の出力部である。表示部3は、使用者が必要とする様々な情報を視角的に通知するために用いられるものである。このような様々な情報としては、相手側の端末装置から受信した情報や、捜索を行う側の端末装置(以下「捜索端末」という。)と捜索の対象となっている紛失した端末装置(以下「紛失端末」という。)との間の距離情報が含まれる。
【0062】
なお、表示部3として、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0063】
スピーカ出力部(通知手段の他の例)4は、端末装置1の出力部である。スピーカ出力部4は、呼び出し音等の通知音を発することができ、これによって使用者に呼び出し等の様々な情報を通知することができる。また、スピーカ出力部4は、捜索端末と紛失端末との間の距離情報を通知音によって使用者に通知することもできる。
【0064】
なお、通知部として、表示部3及びスピーカ出力部4の両方を同時に機能させてもよいし、少なくとも一方を機能させるだけでも、捜索端末と紛失端末との間の距離情報を使用者に通知するという目的を果たすことができる。
【0065】
また、上述した表示部3及びスピーカ出力部4以外にも、通知手段として、振動の強弱によって捜索端末と紛失端末との間の距離情報を使用者に通知してもよい。このような通知手段は、振動を発生させるバイブレータと、振動の振幅を制御する振幅制御部(具体的には、CPU8及び振幅制御プログラム)によって構成することができる。
【0066】
通信部12は、端末装置と中継装置との間、又は端末装置と端末装置との間において電波による無線通信を行い、情報をやり取りするための入出力部である。通信部12は、A/D(Analog-to-digital)変換部11、RF(Radio Frequency)回路5、及びアンテナ部10を備えている。A/D変換部11、RF回路5、及びアンテナ部10は、この順番で制御部9に接続されている。すなわち、制御部9にA/D変換部11が接続され、A/D変換部11にRF回路5が接続され、RF回路5にアンテナ部10が接続されている。
【0067】
A/D変換部11は、アナログとデジタルとの間で信号の変換を行う。RF回路5は、電圧に基づく通常の信号と特定の周波数を有する無線信号との間で変調を行う回路である。アンテナ部10は、無線信号の送信及び受信を行う入出力端である。図1に示すように、端末装置1は、アンテナ部10を介して中継装置20との間や他の端末装置1との間で電波による無線通信を行うことができる。
【0068】
他の端末装置1又は中継装置20へ無線信号を送信する際、まず、制御部9から出力されたデジタル信号は、A/D変換部11に入力され、アナログ信号に変換される。そして変換されたアナログ信号はRF回路5に入力され、特定の周波数を有する信号に変換された後、アンテナ部10に出力される。そして、アンテナ部10から他の端末装置1又は中継装置20に無線信号が送信される。
【0069】
また、他の端末装置1又は中継装置20から信号を受信する際、アンテナ部10において受信された無線信号は、RF回路5に入力され、電圧に基づく通常のアナログ信号に変換される。そして変換されたアナログ信号は、A/D変換部11に入力され、デジタル信号に変換された後、制御部9に入力される。以上のようにして、本実施形態の端末装置1は、他の端末装置1又は中継装置20との間で情報の送受信を行っている。
【0070】
制御部9は、ROM(Read Only Memory)6、RAM(Random Access Memory)7、及びCPU(Central Processing Unit)8を備えている。
【0071】
ROM6は、各種プログラム及び各種データを格納している。各種プログラムとしては、コードレス電話機で利用される一般的なプログラム、端末間通信に関するプログラム、端末装置を識別するためのプログラム、距離算出プログラム、及び通知手段を制御するプログラム等が含まれる。
【0072】
ここで、一般的なプログラムには、キー入力部2から入力された情報を処理するためのプログラム、表示部3やスピーカ出力部4に出力する情報を処理するためのプログラム、中継装置からの一般呼出信号に対して応答する為のプログラム等が含まれる。また、端末間通信に関するプログラムには、接続要求信号を作成するためのプログラム、特定信号を生成するためのプログラム等が含まれる。
【0073】
RAM7は作業用のメモリであり、ROM6から読み出したプログラムを展開したり、外部から受信したデータ及び入力されたデータを一時的に確保したり、外部へ送信するデータ及び出力するデータを一時的に確保するために使用される。
【0074】
CPU8は、ROM6に格納されたプログラム及びデータに基づいて、RAM7とデータをやり取りしながら処理を行う。
【0075】
制御部9は、ROM6及び/又はRAM7に記録された各種プログラム及び各種データに基づいてCPU8が処理を行うことによって、図2に示すように様々な機能を有している。
【0076】
制御部9は、ROM6に記録された上述の一般的なプログラムに基づいて処理を行うことによって、一般制御部13として機能する。一般制御部13は、キー入力部2によって入力される情報の処理を含むさまざまな処理を行う。
【0077】
また、制御部9は、ROM6に記録された上述の端末間通信に関するプログラムに基づいて処理を行うことによって、通信制御部14として機能する。通信制御部14は、通信部12を制御することによって端末装置間同士の通信を行う。
【0078】
また、制御部9は、ROM6に記録された上述の距離算出プログラム、及びROM6に記録された距離算出用テーブルに基づいて処理を行うことによって、距離算出部15として機能する。距離算出部15は、通信制御部14から入力された情報を基に、捜索端末と紛失端末との間の距離を算出する。
【0079】
また、制御部9は、ROM6に記録された上述の端末装置を識別するためのプログラムに基づいて処理を行うことによって、検出部16として機能する。検出部16は、通信制御部14から入力された情報と、後述する記憶部17に格納されている情報とを比較することによって、端末装置の識別を行う。
【0080】
また、制御部9は、自己の端末装置の識別情報及び通信相手の端末装置の識別情報を記憶することによって、記憶部17として機能する。上記の識別情報は、後述する端末間での通信において、各端末装置を識別するために用いられる。自己の端末装置の識別情報は、ROM6又はRAM7に格納され、通信相手の端末装置の識別情報は、RAM7に格納される。
【0081】
自己の識別情報は、製造される全ての端末装置の間で重複しない固有の識別情報を端末装置の製造時に設定し、記憶部17に格納すればよい。或いは、製造時に設定する代わりに、コードレス電話システムが稼動する際に動的に設定してもよい。この場合、当該システムに属する全ての端末装置の間で重複しないよう、中継装置が配下の端末装置に対して動的に識別情報を設定し、各端末装置は、それぞれ割り当てられた識別情報を記憶部17に記憶すればよい。
【0082】
また、記憶部17には、他の端末装置の識別情報として、中継装置の配下にある全ての端末装置の識別情報をROM6又はRAM7に記憶しておいてもよい。この場合、使用者が紛失端末を捜索するときに、紛失端末の識別情報を呼び出したり、後述するように紛失端末から受信した紛失端末の識別情報を照合するために呼び出したりするのに利用することができる。
【0083】
制御部9は以上のように様々な機能を有しているが、機能毎に個別の制御部に分割されていてもよいのはいうまでもない。
〔第1の実施形態〕
次に端末装置1の捜索時における動作の一実施形態について説明する。
【0084】
コードレス電話システムに属する端末装置のうちの1つを紛失した場合、使用者は、紛失していない端末装置のうちの1機を用いて紛失した端末装置を捜索する。以下では、既に触れたとおり、捜索に用いる端末装置を捜索端末といい、紛失した端末装置を紛失端末という。ここでは、捜索端末の動作について図2及び図3を参照しながら説明する。
【0085】
まず、S11において、捜索端末の一般制御部13は、キー入力部2から捜索モードコマンドが入力されるまで待機している。すなわち、捜索モードコマンドが入力されたかどうかを判断し、入力された場合は次に進み、入力されていない場合は直前に戻り、再び判断を行う。
【0086】
なお、捜索モードコマンドは、捜索モードに対応するボタンを設けて、そのボタンを押下することによって入力してもよいし、或いは、他の操作にも用いられるキーを特定の順序又は組合せで押下することによって入力してもよい。
【0087】
次に、S12において、一般制御部13は、キー入力部2から紛失端末の識別情報が入力されるまで待機する。すなわち、紛失端末の識別情報が入力されたかどうかを判断し、入力された場合は次のステップに進み、入力されていない場合は直前に戻り、再び検出を行う。キー入力部2から入力された紛失端末の識別情報は、一般制御部13を介して通信制御部14に入力される。
【0088】
ここで使用者は、各端末装置に設定された固有の識別情報を直接入力してもよいが、使用者がコードレス電話システムに属する全ての端末装置の識別情報を記憶しておくのは煩雑であるため、使用者にとってより理解しやすい簡略な情報を用いて指定できることが好ましい。この場合、捜索する対象となる端末装置を指定するために使用者が入力する情報と実際の識別情報との対応付けは、制御部9のROM6又はRAM7に格納された対応テーブルによって行われる。
【0089】
また、コードレス電話システムに属する端末装置が2台のみで、かつ、捜索端末の記憶部17に予めもう1機の端末装置の識別情報も記憶されている場合、紛失端末は必然的にもう1機の端末装置となるので、S12において、キー入力部2からの入力を得る必要は無い。この場合、S11の後、S12において捜索端末の記憶部17に記憶されているもう1機の識別情報が自動的に通信制御部に入力され、次のステップに進む。
【0090】
次に、S13において、捜索端末の通信制御部14は、S12で入力された識別情報に基づいて紛失端末に対して情報を送信するよう通信部12を制御する。すなわち通信制御部14は、S12で入力された識別情報を含む送信用信号を作成し、無線信号としてアンテナ部10から送信するよう通信部12を制御する。また、通信制御部14は、S12で入力された識別情報を記憶部17に記憶する。
【0091】
ここでS13における送信用信号が、特許請求の範囲に記載されている「第1の送信用信号」に相当し、一時的に記憶する紛失端末の識別情報が、特許請求の範囲に記載されている「第1の識別情報」に相当する。
【0092】
S14において、捜索端末は、紛失端末からの応答信号があれば次のステップに進み、そうでない場合は再び紛失端末と無線通信を確立しようと試みる。このステップは、具体的には以下のように行われる。まず、通信制御部14は、通信部12を介して受信した受信信号を検出部16に送信する。次に、検出部16は、受信信号の送信元を特定する情報と、S13において一時的に記憶した紛失端末の識別情報とを比較して、一致すれば受信信号が紛失端末からの応答信号であると認識して次のステップに進み、そうでなければ、S13に戻る。
【0093】
ここで、S14における受信信号が、特許請求の範囲に記載されている「第1の受信信号」に相当する。
【0094】
S13及びS14において、捜索端末が紛失端末の識別情報を送信し、紛失端末がその識別情報を返信することによって、捜索端末は紛失端末の手がかりを得ることができる。
【0095】
S14において紛失端末からの返信を受信した後、S15において、捜索端末の距離算出部15は、受信した無線信号に基づいて紛失端末との間の距離を算出する。すなわち、紛失端末の受信信号が通信制御部14から距離算出部15に入力され、距離算出部15は、入力された受信信号に基づいて、捜索端末と紛失端末との間の距離を算出する。距離を算出する方法としては、通信相手から受信した無線信号の電界強度に基づいて距離を算出する方法、又は、通信相手から受信した無線信号のビットエラーレートに基づいて距離を算出する方法等を用いることができる。これらの方法は、制御部9のROM6に距離算出プログラムとして記録されている。
【0096】
無線信号の電界強度に基づいて距離を算出する方法について説明する。電波からなる無線信号は、送信位置から離れるにつれて電波の振幅、すなわち無線信号の電界強度が減衰することが知られている。従って捜索端末は、受信した無線信号の電界強度に基づいて紛失端末との間の距離を算出することができる。この場合、受信した無線信号の電界強度はA/D変換部11でデジタル信号に変換され、通信制御部14に入力される。距離算出部
15は、通信制御部14から入力された電解強度に基づいて、ROM6に予め記録された、電界強度と距離との対応テーブルを参照することによって入力された電界強度から距離を算出する。
【0097】
また、ビットエラーレートに基づいて距離を算出する方法では、距離に伴って無線信号が減衰し、それによって発生するエラーを測定することによって距離を算出する。ビットエラーレートは、エラーが発生したビット数を全ビット数にて除算することによって得られる。このビットエラーレートは、距離が長くなるにつれて大きくなるものであることが知られている。距離算出部15は、通信制御部14から入力された受信信号を基にビットエラーレートを算出し、ROM6内に予め測定して記録しておいた、ビットエラーレートと距離との対応テーブルを参照することによって距離を算出する。
【0098】
以上のように、距離算出部15は、受信した無線信号を基にROM6内に記録された距離算出プログラム及び対応テーブルに基づいて捜索端末と紛失端末との間の距離を算出する。
【0099】
次に、S16において、捜索端末の通知制御部18は、S15にて算出された距離に基づいて使用者に通知を行うよう表示部3及び/又はスピーカ出力部4を制御する。
【0100】
表示部3によって距離を通知する場合、表示部3に距離を直接数値で表示する方法、又は、インジケータ等によって直感的に理解できるよう表示する方法等を用いることができる。
【0101】
また、スピーカ出力部4から出力される通知音によって距離を通知する場合、距離を数値で読み上げる方法、音量の大小によって距離の相対的な大小を通知する方法(例えば、距離が近くなるにつれ音量を増大させる方法)、又は、通知音のパターンを距離に伴って変化させる方法(例えば、距離が近くなるにつれ通知音の周期を短くする方法)等を用いることができる。
【0102】
さらに、通知手段として、表示部3による方法とスピーカ出力部4による方法とを状況に応じて選択したり、組み合わせたりできることが好ましい。例えば、距離が所定の値未満になった場合にスピーカ出力部4から通知音により通知することによって、使用者がより直感的に距離を把握できるようになる。また、例えば、通知音を通知させないよう設定できるように構成し、夜間に捜索する場合は使用者が通知音で通知させないよう設定することで、夜間において騒音を発生させることなく捜索することができるようになる。また、例えば、距離が比較的遠い場合には表示部3のみで通知を行い、距離が所定の値未満になった場合にスピーカ出力部4による通知を追加することによって、使用者がより直感的に距離を把握できるようになる。
【0103】
次に、S17において、捜索端末の一般制御部13は、捜索モード終了コマンドがキー入力部2から入力されたか否かを検出する。ここで捜索モード終了コマンドが入力されなかった場合、S13に戻り、捜索端末はS13からのステップを繰り返す。
【0104】
捜索モード終了コマンドがキー入力部2から入力された場合、S18において、通信制御部14は、捜索モード終了コマンドを紛失端末に送信するよう通信部を制御し、捜索端末は捜索モードを終了する。すなわち、通信制御部14は、コマンド情報として捜索モード終了コマンドを含む送信用信号を作成し、通信部12を制御して送信用信号を無線信号としてアンテナ部10から送信し、捜索モードを終了する。
【0105】
なお、S18は、紛失端末が捜索端末から終了の指示を与えられるまで、定期的に応答信号を送信し続ける場合に必要となるステップである。従って、紛失端末が、例えばS13において捜索端末から送信される無線信号を受け取ったときだけ応答信号を送信するような構成であれば、S17の後、捜索端末はS18を行うことなく終了してもよい。
〔第2の実施形態〕
次に端末装置1の捜索時における動作の別の実施形態について、図2及び図5を用いて説明する。
【0106】
本実施形態は、S13、S14、及びS18以外は第1の実施形態と共通であり、共通の部分に関しては簡略化するために説明を省略する。
【0107】
本実施形態では、端末装置同士で直接通信を行う方法として、近年搭載されているトランシーバ機能が用いられている。トランシーバ機能を用いた通信では、送信先を特定する情報、送信元を特定する情報、及びコマンド情報を含んだ信号が送信される。この信号を受信した装置は、送信先を特定する情報が自己を特定する情報と一致した場合のみ、コマンド情報の処理を行う。また、送信先を特定する情報が自己を特定する情報と一致しなかった場合、信号を受信した装置は、その信号に含まれているコマンド情報を無視する。これにより、中継装置を介さずに端末装置のみでの相互に通信することが可能となる。
【0108】
S113において、捜索端末の通信制御部14は、S12で入力された識別情報に基づいて紛失端末に対して情報を送信するよう通信部12を制御する。すなわち通信制御部14は、送信元を特定する情報として自己(捜索端末)の識別情報を含み、送信先を特定する情報としてS12で入力された紛失端末の識別情報を含み、コマンド情報として捜索モードコマンドを含む送信用信号を作成し、無線信号としてアンテナ部10から送信するよう通信部12を制御する。また、通信制御部14は、後の信号受信時に通信相手が紛失端末であるかどうかを検出するために、紛失端末の識別情報(S113における送信先を特定する情報)を一時的に記憶部17に記憶する。
【0109】
ここでS113における送信用信号が、特許請求の範囲に記載されている「第1の送信用信号」に相当し、一時的に記憶した紛失端末の識別情報が、特許請求の範囲に記載されている「第1の識別情報」に相当し、自己の識別情報が、特許請求の範囲に記載されている「第2の識別情報」に相当する。
【0110】
S114において、捜索端末は、紛失端末からの応答信号があれば次のステップに進み、そうでない場合は再び紛失端末と無線通信を確立しようと試みる。このステップは、具体的には以下のように行われる。まず、通信制御部14は、通信部12を介して受信した受信信号を検出部16に送信する。そして、検出部16は、受信信号の送信先を特定する情報と、記憶部17に記録されている自己の識別情報とを比較し、一致すれば受信信号が自己に対して送信された信号であることを認識して次の処理を行い、一致しなければ次の処理を行わずにS113に戻る。次に、検出部16は、受信信号の送信元を特定する情報と、S113において一時的に記憶した紛失端末の識別情報とを比較して、一致すれば受信信号が紛失端末からのものであることを認識して次の処理を行い、一致しなければ次の処理を行わずにS113に戻る。そして、受信信号のコマンド情報が捜索モード応答コマンドであれば、応答を示すものであることを認識し、次のステップに進み、そうでなければ、S113に戻る。
【0111】
ここで、S114における受信信号が、特許請求の範囲に記載されている「第1の受信信号」に相当する。
【0112】
また、S118において、通信制御部14は、捜索モード終了コマンドを紛失端末に送信するよう通信部を制御し、捜索端末は捜索モードを終了する。すなわち、通信制御部14は、送信元を特定する情報として捜索端末の識別情報を含み、送信先を特定する情報として紛失端末の識別情報を含み、コマンド情報として捜索モード終了コマンドを含む送信用信号を作成し、通信部12を制御して送信用信号を無線信号としてアンテナ部10から送信し、捜索モードを終了する。
【0113】
なお、S118は、紛失端末が捜索端末から終了の指示を与えられるまで、定期的に応答信号を送信し続ける場合に必要となるステップである。従って、紛失端末が、例えばS13において捜索端末から送信される無線信号を受け取ったときだけ応答信号を送信するような構成であれば、S17の後、捜索端末はS118を行うことなく終了してもよい。
【0114】
本実施形態では、以上のように、送信用信号に送信元の識別情報と通信相手の識別情報とコマンド情報を含めることにより、捜索端末と紛失端末とが相互に直接通信することができるようになっている。また、本実施形態は、捜索モードコマンドや捜索モード応答コマンドを送受信することによって、第1の実施形態よりも確実に情報をやり取りすることができるようになっている。
〔第3の実施形態〕
次に、紛失端末の動作の一実施形態について図2及び図4を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態の捜索端末の動作に対するものである。
【0115】
紛失端末は、S21において、自己の識別情報を含む信号を受信すると自己が紛失端末であることを認識し、被捜索モードに入る。すなわち、紛失端末の通信制御部14は、通信部12から信号を受信し、その受信信号を検出部16に出力する。検出部16は、記憶部17に記憶された自己の識別情報が受信信号に含まれているか否かを検出する。含まれている場合は、次の被捜索モードに入ってステップに進み、含まれていない場合は、直前に戻る。
【0116】
そして被捜索モードに入った紛失端末は、S22において、捜索端末に応答する。すなわち、紛失端末の通信制御部14は、S21での受信信号に含まれる識別情報(自己である紛失端末の識別情報)を含む送信用信号を作成し、通信部12を制御して、アンテナ部10から送信用信号を無線信号として送信する。
【0117】
なお、S21及びS22における識別情報が、特許請求の範囲に記載した「第2の識別情報」に相当し、S21及びS22における受信信号が、特許請求の範囲に記載した「第2の受信信号」に相当し、S22における送信用信号が、特許請求の範囲に記載した「第2の送信用信号」に相当する。
【0118】
そして、S23において、紛失端末の通信制御部14は、S18で捜索端末が捜索モードの終了を通知するまでは、S22に戻り、応答を繰り返す。すなわち、紛失端末は、捜索モード終了コマンドを含む無線信号を受信した場合は、被捜索モードを終了し、受信しなかった場合は、S22に戻る。
【0119】
なお、S23は、紛失端末が捜索端末から終了の指示を与えられるまで、定期的に応答信号を送信し続ける場合に必要となるステップである。従って、紛失端末が、例えばS13で捜索端末から送信される無線信号を受け取ったときだけ応答信号を送信するような構成であれば、S23は省略することができる。
【0120】
また、紛失端末の通知制御部18は、S22及びS23において、所在を通知する報知音等を出力させないようにスピーカ出力部4を制御する。これによって、報知音等を発することによって紛失端末のバッテリが消耗し、見つかる前にバッテリ切れを起こし捜索不能となるといった事態を回避することができる。
〔第4の実施形態〕
次に、紛失端末の動作の他の実施形態について図2及び図6を用いて説明する。本実施形態は、第2の実施形態の捜索端末に対するものである。
【0121】
本実施形態では、端末装置同士で直接通信を行う方法として、近年搭載されているトランシーバ機能が用いられている。トランシーバ機能を用いた通信では、送信先を特定する情報、送信元を特定する情報、及びコマンド情報を含んだ信号が送信される。この信号を受信した装置は、送信先を特定する情報が自己を特定する情報と一致した場合のみ、コマンド情報の処理を行う。また、送信先を特定する情報が自己を特定する情報と一致しなかった場合、信号を受信した装置は、その信号に含まれているコマンド情報を無視する。これにより、中継装置を介さずに端末装置のみでの相互に通信することが可能となる。
【0122】
紛失端末は、S121において捜索端末がS113で送信した無線信号を受信することによって、自機が紛失端末となったことを認識し、被捜索モードに入る。すなわち、紛失端末の通信制御部14は、通信制御部12から信号を受信し、その受信信号を検出部16に出力する。検出部16は、受信信号に送信先を特定する情報として紛失端末の識別情報を含み、コマンド情報として捜索モードコマンドを含んでいることを検出した場合は次のステップに進み、検出しなかった場合は直前に戻る。
【0123】
そして被捜索モードに入った紛失端末の通信制御部14は、S122において、捜索端末に応答する。すなわち、紛失端末の通信制御部14は、送信元を特定する情報としてS121での受信信号に含まれる識別情報(自己である紛失端末の識別情報)を含み、送信先を特定する情報として捜索端末の識別情報を含み、コマンド情報として捜索モード応答コマンドを含む送信用信号を作成し、通信部12を制御して、アンテナ部10から送信用信号を無線信号として送信する。
【0124】
そして、S123において、紛失端末の通信制御部14は、S118で捜索端末が捜索モードの終了を通知するまでは、S122に戻り、応答を繰り返す。すなわち、紛失端末は、送信先を特定する情報として紛失端末の識別情報を含み、コマンド情報として捜索モード終了コマンドを含む信号を受信した場合は、被捜索モードを終了し、受信しなかった場合は、S122に戻る。
【0125】
なお、S123は、紛失端末が捜索端末から終了の指示を与えられるまで、定期的に応答信号を送信し続ける場合に必要となるステップである。従って、紛失端末が、例えばS113で捜索端末から送信される無線信号を受け取ったときだけ応答信号を送信するような構成であれば、S123は省略することができる。
【0126】
また、紛失端末の通知制御部18は、S122及びS123において、所在を通知する報知音等を発しさせないようにスピーカ出力部4を制御する。これによって、前実施形態で説明したように、報知音等を発することによって紛失端末のバッテリが消耗するのを防ぐことができる。
【0127】
上述した実施形態では、例として紛失した端末装置を捜索する際の動作について説明したが、捜索機能の利用目的は紛失した端末装置を捜索することのみに限定されるものではない。例えば、待ち合わせ相手の端末装置との距離情報を確認しながら、待ち合わせ場所に到達するアシスト等にも、本発明を適用することができる。
【0128】
以上のように、本発明のコードレス電話機の端末装置は、中継装置を介さずに端末間のみで通信を行いながら捜索することができる。通常、中継装置は電話回線に接続されており、容易に場所を移動させることができないため、中継装置の無線通信可能エリア外にある端末装置を、中継装置を用いて捜索するのは困難若しくは煩雑である。しかしながら、本発明のコードレス電話機の端末装置では、携帯することができる端末装置のみで捜索することができるので、親機との無線通信可能エリア外にある端末装置を捜索する場合に、容易に捜索することができる。
【0129】
また、本発明のコードレス電話機の端末装置は、電話回線に接続された親機と、この親機と無線で接続された子機からなるコードレス電話機において、前記無線電話子機には、受信電界強度の検出する検出手段またはビットエラーレート(BER)を検出する手段と、親機を介さず端末間でデータ送受信が可能となる手段と、情報を通知する為の通知手段と、紛失端末を探索する為の探索機能を有し、上記検出手段により検出された子機が紛失端末か判断し、上記検出手段により求められた距離を、上記通知手段に通知する手段を備えているものであってもよい。
【0130】
また、本発明のコードレス電話機の端末装置は、探索モードにて検出された紛失端末は検出された際、周囲に報知音を鳴動させず、探索側子機でのみ紛失端末情報取得が可能なものであってもよい。
【0131】
また、本発明のコードレス電話機の端末装置は、上記探索手段において、検出された紛失端末の距離に応じて通知手段を変更するものであってもよい。
【0132】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0133】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0134】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,等を用いることができる。
【0135】
また、上記プログラムコードは、通信ネットワークのような伝送媒体を介して、他のコンピュータシステムから端末装置の記憶部へダウンロードされるものであってもよい。
【0136】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0137】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0138】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードを格納することになる。
【0139】
なお、本発明のコードレス電話機の端末装置は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の無線端末装置は、紛失した際に効率よく捜索できる機能を有しながら、製造コストを抑えることができる。従って、公衆回線網に接続する有線コードレス電話機や携帯電話機等の端末装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、無線端末装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、無線端末装置の制御部9の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、捜索端末の処理の流れを示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、紛失端末の処理の流れを示すフロー図である。
【図5】本発明の一実施形態を示すものであり、捜索端末の処理の流れを示すフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態を示すものであり、紛失端末の処理の流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0142】
1 コードレス電話機の端末装置(無線端末装置)
3 表示部(通知手段)
4 スピーカ出力部(通知手段)
9 制御部
12 通信部
14 通信制御部
15 距離算出部
16 検出部
17 記憶部
18 通知制御部
20 コードレス電話機の中継装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手の無線端末装置の第1の識別情報を記憶する記憶部と、
信号を送受信する通信部と、
上記第1の識別情報を含む第1の送信用信号を作成し、当該第1の送信用信号を上記通信部を介して発信する通信制御部と、
上記通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれているか否かを、上記記憶部に記憶された第1の識別情報との比較によって検出する検出部と、
を備えていることを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
上記記憶部は、自己の第2の識別情報をさらに記憶し、
上記検出部が、上記通信制御部を介して受信した第2の受信信号に上記第2の識別情報が含まれていることを、上記記憶部に記憶された第2の識別情報との比較によって検出すると、上記通信制御部は、上記第2の受信信号に応答して、上記第2の識別情報を含む第2の送信用信号を作成し、当該第2の送信用信号を上記通信部を介して発信することを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
上記記憶部は、自己の第2の識別情報をさらに記憶し、
上記通信制御部は、第2の識別情報をさらに含めて第1の送信用信号を作成して発信し、
上記検出部が、上記通信制御部を介して受信した第2の受信信号に上記第1および第2の識別情報が含まれていることを、上記記憶部に記憶された第1および第2の識別情報との比較によって検出すると、上記通信制御部は、上記第2の受信信号に応答して、上記第2の識別情報を含む第2の送信用信号を作成し、第1の識別情報を有する通信相手の無線端末装置に対して、当該第2の送信用信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
上記通信制御部を介して受信した第1の受信信号に上記第1の識別情報が含まれている場合、当該第1の受信信号に基づいて、上記通信相手の無線端末装置との距離を算出する距離算出部を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の無線端末装置。
【請求項5】
上記距離算出部は、上記第1の受信信号の電界強度に基づいて距離を算出するか、又は、上記第1の受信信号のビットエラーレートに基づいて距離を算出することを特徴とする請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項6】
上記距離算出部が算出した距離を示す情報を使用者に通知する通知手段を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の無線端末装置。
【請求項7】
上記距離算出部が算出した距離を示す情報を使用者に少なくとも通知する通知手段を備え、
上記第2の受信信号を受信したときに、当該第2の受信信号に対して応答中であることを示す通知動作を制限するように、通知手段を制御する通知制御部を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の無線端末装置。
【請求項8】
上記通知手段は、上記距離算出部によって算出された距離に応じて通知方法を変更することを特徴とする請求項6に記載の無線端末装置。
【請求項9】
コードレス電話装置の子機に備えられる無線端末装置であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の無線端末装置。
【請求項10】
請求項9に記載の無線端末装置を備えた子機と、
当該無線端末装置との間で無線通信する中継装置とを備えていることを特徴とするコードレス電話装置セット。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の無線端末装置を動作させる通信制御プログラムであって、コンピュータを上記無線端末装置として機能させるための通信制御プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の通信制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−81036(P2006−81036A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264708(P2004−264708)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】