説明

無限軌道式建設機械の走行装置

【課題】無限軌道式掘削機の左・右側走行装置と作業装置を同時に駆動し、複合作業を行うにあたり、運転者が感じるほどの走行速度の急変速を防止する。
【解決手段】走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁5にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプからの作動油を作業装置用切換弁7,11にそれぞれ供給する走行直進弁13と、第2センターバイパス通路9と上流側から分岐した流路とを並列連結する合流通路に設けられ、作業装置に供給される作動油が合流通路を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィスと、作業モードを選択するためのモード選択装置31と、第1、2油圧ポンプの斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁19と、走行直進弁と可変オリフィスに供給される信号圧をそれぞれ制御する電気式制御弁21,25に制御信号を出力するコントローラを含める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無限軌道式掘削機の走行装置と作業装置とを同時に操作し、駆動する場合、走行速度が急変することを防止し得るようにした無限軌道式建設機械の走行装置に係る。
【0002】
さらに詳しくは、左・右側走行装置と作業装置(ブームなど)を同時に駆動する複合作業を行う場合、運転者が感じることができるような走行速度の減速又は増速を防止し、操作性を向上することができるようにした無限軌道式建設機械の走行装置に係る。
【背景技術】
【0003】
図1に示したように、従来技術による建設機械の走行装置の油圧回路は、エンジンE/Gに連結されている可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2及びパイロットポンプ3と、第1油圧ポンプ1の第1センターバイパス通路4に設置の左側走行モータ用切換弁5及び作業装置(スウィング装置、ブーム、アームなど)用切換弁6、7、8と、第2油圧ポンプ2の第センターバイパス通路9に設置の右側走行モータ用切換弁10及び作業装置(ブーム、バケット、アーム)用切換弁11、12と、第2センターバイパス通路9の上流側に設けられ、パイロットポンプ3からの信号圧により切り換えられる場合(図に於いて、右側方向に切り換えられる)、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁5、10にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプ2からの作動油を作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)にそれぞれ供給する走行直進弁13とを含める。
【0004】
図面中、説明されていない符号14及び15は、左側及び右側走行ペダルであり、符号16及び17は、作業装置用切換弁6、11を制御するジョイスティックであり、符号18は、第1、2油圧ポンプ1、2の斜板傾転角を制御し、第1、2油圧ポンプ1、2の吐出流量を制御し得るように電磁比例弁19、20に制御信号を出力し、且つパイロットポンプ3からの信号圧が走行直進弁へ供給されるように電気式制御弁21に制御信号を出力するコントローラであり、符号26は、主制御弁(MCV)である。
【0005】
前述した第1油圧ポンプ1からの作動油は、左側走行モータ用切換弁5と、走行直進弁13を経て作業装置用切換弁6、7、8にそれぞれ供給される。第2油圧ポンプ2からの作動油は、右側走行モータ用切換弁10と、走行直進弁13を経て作業装置用切換弁11、12にそれぞれ供給される。
【0006】
一方、左・右走行装置と作業装置とを同時に駆動させたい場合、コントローラ18から入力される制御信号により電気式制御弁21を切り換えさせることによって、パイロットポンプ3から流路28を介して供給されるパイロット信号圧により走行直進弁13を図において右側方向に切り換えさせる。
【0007】
そのことから、第1油圧ポンプ1からの作動油は、左側走行モータ用切換弁5と、走行直進弁13とを経て右側走行モータ用切換弁10にそれぞれ供給される。
【0008】
第2油圧ポンプ2からの作動油は、走行直進弁13を経て流路L1、L2を通じて作業装置用切換弁6、11にそれぞれ供給される。
【0009】
したがって、第1油圧ポンプ1からの作動油は、建設機械の左側及び右側走行装置に供給され、第2油圧ポンプ2からの作動油は、建設機械の作業装置にそれぞれ供給されるので、装備の走行直進性が確保される。
【0010】
この際、第1油圧ポンプ1から吐き出される作動油が左側及び右側走行モータ用切換弁5、10に分けて供給される。つまり、流量が半分に減ることにより走行速度が半分に減速されるため、運転者は、走行減速による走行ショックを感じることになる。
【0011】
図2に示したように、従来技術による建設機械の走行装置の他の油圧回路は、エンジンE/Gに連結されている可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2及びパイロットポンプ3と、第1油圧ポンプ1の第1センターバイパス通路4に設置の左側走行モータ用切換弁5及び作業装置用切換弁6、7、8と、第2油圧ポンプ2の第2センターバイパス通路9に設置の右側走行モータ用切換弁10及び作業装置用切換弁11、12と、第2センターバイパス通路9の上流側に設けられ、パイロットポンプ3からの信号圧により切り換えられる場合(図に於いて、右側方向に切り換えられる)、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁5、10にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプ2からの作動油を作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)にそれぞれ供給する走行直進弁13と、第2センターバイパス通路9の上流側から分岐した流路L2と第2センターバイパス通路9とを並列連結する合流通路22に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる場合、作業装置に供給される作動油の一部を走行装置側に供給し、走行速度の急減速を防止する固定形オリフィス23とを含める。
【0012】
図面中、説明されていない符号24は、合流通路22に設けられるチェックバルブである。
この時、固定形オリフィス23及びチェックバルブ24が設けられている合流通路22を除いた構成は、図1に示した構成と実質的に同一に適用されるため、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0013】
したがって、左・右側走行装置と作業装置とを同時に駆動したい場合、第2油圧ポンプ2から吐き出され、流路L2を経て作業装置側に供給される作動油の一部を合流通路22を介して走行装置側に供給することによって、走行速度の急減速を防止することができる。
【0014】
この際、左・右側走行装置と作業装置とを同時に駆動して作業する場合、作業装置側に生じる負荷圧力が走行装置側に生じるものより相対的に大きいと(例えば、引揚げ作業など)、第2油圧ポンプ2から吐き出され、作業装置側に供給されるはずの大半の作動油が合流通路22を通じて走行装置側に供給されてしまう。
【0015】
そのことから、作業装置は、駆動せず、走行速度の急増速が成されるので、建設機械の操作性が劣り、運転者が誤操作を起こし得る虞があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の実施例は、掘削機の走行装置と作業装置とを同時に駆動し、複合作業を行う場合、運転者が感じることができるほどの急減速又は急増速を防止し、操作性を向上すると共に、建設機械の誤操作を防止し得るようにした無限軌道式建設機械の走行装置に係る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施例による無限軌道式建設機械の走行装置は、
可変容量型第1、2油圧ポンプと、
第1油圧ポンプの第1センターバイパス通路に設置の左側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
第2油圧ポンプの第2センターバイパス通路に設置の右側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
第2センターバイパス通路の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部よりの信号圧供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプからの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプからの作動油を作業装置用切換弁にそれぞれ供給する走行直進弁と、
第2センターバイパス通路の上流側から分岐した流路と第2センターバイパス通路とを並列連結する合流通路に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部よりの信号圧供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィスと、
作業モードを選択するためのモード選択装置と、
モード選択装置から選択する作業モードによって、第1、2油圧ポンプの吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプの斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁と、走行直進弁と可変オリフィスに供給される信号圧をそれぞれ制御する電気式制御弁に制御信号を出力するコントローラとを含める。
【0018】
本発明の他の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置は、
可変容量型第1、2油圧ポンプと、
第1油圧ポンプの第1センターバイパス通路に設置の左側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
第2油圧ポンプの第2センターバイパス通路に設置の右側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
第2センターバイパス通路の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、コントロールバルブの内部に形成の信号圧供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプからの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプからの作動油を作業装置用切換弁に供給する走行直進弁と、
第2センターバイパス通路の上流側から分岐した流路と第2センターバイパス通路とを並列連結する合流通路に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部よりの信号圧供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィスと、
作業モードを選択するためモード選択装置と、
モード選択装置から選択する作業モードによって、第1、2油圧ポンプの吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプの斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁と、可変オリフィスに供給される信号圧を制御する電気式制御弁に制御信号を出力するコントローラを含める。
【0019】
望ましい実施例によれば、前述した電気式制御弁として、コントローラから制御信号入力によって切り換えられ、走行直進弁と可変オリフィスにそれぞれ供給される信号圧を制御することができるようにソレノイド弁が用いられる。
【0020】
前述した電気式制御弁として、
コントローラから制御信号入力によって切り換えられ、走行直進弁と可変オリフィスにそれぞれ供給される信号圧を制御することができるように電磁比例弁が用いられる。
【0021】
ジョイスティックの操作時、第1、2油圧ポンプにそれぞれ連結されている作業装置用切換弁に供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する作業装置の操作感知装置と、走行ペダルへの加圧時、左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する走行装置の操作感知装置とを含める。
【0022】
前述した走行装置の操作感知装置と作業装置の操作感知装置として圧力センサーがそれぞれ用いられる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置は、次のような利点を有する。掘削機の走行装置と作業装置とを同時に駆動し、複合作業を行う場合、走行速度の急変速を防止することから、運転者が感じ得るショックを減少することができる。しかも、建設機械の誤操作が防がれることから安全性を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の望ましい実施例を添付図面に基づいて述べるが、これは、本発明の属する技術分野において通常の技術を有する者が発明を容易に実施し得る程度に詳細に説明するためのものであって、これにより本発明の技術的思想及び範疇が限定されることを意味するのではない。
【0025】
図3に示したように、本発明の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置は、エンジンに連結されている可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2及びパイロットポンプ3と、第1油圧ポンプ1の第1センターバイパス通路4に設置の左側走行モータ用切換弁5及び作業装置用切換弁6、7、8と、第2油圧ポンプ2の第2センターバイパス通路9に設置の右側走行モータ用切換弁10及び作業装置用切換弁11、12と、第2センターバイパス通路9の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、パイロットポンプ3からの信号圧供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁5、10にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプ2からの作動油を作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)にそれぞれ供給する走行直進弁13と、第2センターバイパス通路9の上流側から分岐した流路L2と第2センターバイパス通路9とを並列連結する合流通路22に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、パイロットポンプ3からの信号圧の供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路22を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィス30と、特定作業モードを選択するためのモード選択装置31と、モード選択装置31から選択する作業モードによって、可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2の吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプ1、2の斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁19、20と、パイロットポンプ3から走行直進弁13と可変オリフィス30にそれぞれ供給される信号圧をそれぞれ制御する電気式制御弁21、25に制御信号を出力するコントローラ32を含める。
【0026】
前述した電気式制御弁21、25として、コントローラ32から制御信号入力によって切り換えられ、走行直進弁13と可変オリフィス30にそれぞれ供給される信号圧を制御することができるようにソレノイド弁が用いられる。
【0027】
前述した電気式制御弁21、25として、コントローラ32から制御信号入力によって切り換えられ、走行直進弁13と可変オリフィス30にそれぞれ供給される信号圧を制御することができるように電磁比例弁(図示せず)が用いられる。
【0028】
ジョイスティック16、17の操作時、第1、2油圧ポンプ1、2にそれぞれ連結されている作業装置用切換弁6、11に供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラ32に出力する作業装置の操作感知装置33、34と、走行ペダル14、15の加圧時、左側及び右側走行モータ用切換弁5、10にそれぞれ供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラ32に出力する走行装置の操作感知装置35、36とを含める。
【0029】
前述した走行装置の操作感知装置35、36と、作業装置の操作感知装置33、34として、圧力センサーがそれぞれ用いられる。
【0030】
前述した走行直進弁13の中立ポートは、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側走行モータ用切換弁5と、左側走行モータ用切換弁5に直列又は並列に連結されている作業装置用切換弁6、7、8にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプ2からの作動油を右側走行モータ用切換弁10と、右側走行モータ用切換弁10に直列又は並列に連結されている作業装置用切換弁11、12にそれぞれ供給するようになっている。
【0031】
この際、合流通路22に設置の可変オリフィス30と、可変オリフィス30に供給される信号圧を制御する電気式制御弁25と、モード選択装置31と、作業装置の操作感知装置33、34及び走行装置の操作感知装置35、36を除いた構成は、図2に示した構成と実質的に同一であるから、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0032】
以下で、本発明の一実施例による無限軌道式建設機械の走行装置の使用例を添付図面に基づいて詳しく説明する。
【0033】
図3に示したように、前述したモード選択装置31により標準作業モードを選択した場合、ジョイスティック16、17の操作量および走行ペダル14、15の加圧力に応じて、可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2から吐き出される作動油は、左・右側走行モータ用切換弁5、10及び作業装置用切換弁6、11を経由し、走行モータ及び油圧シリンダに供給される。
【0034】
この際、ジョイスティック16、17と、走行ペダル14、15をフルストローク状態に操作した場合、第1、2油圧ポンプ1、2から供給される作動油により、当該アクチュエータを最大の駆動速度で制御することができる。
【0035】
前述したモード選択装置31により走行装置と作業装置とを同時に駆動する作業モードを選択する場合、コントローラ32から出力される制御信号により、電気式制御弁21の内部スプールを図において下側方向に切り換えさせる。
【0036】
これにより、パイロットポンプ3から吐き出される信号圧が電気式制御弁21及びパイロット流路28を経て走行直進弁13に供給され、内部スプールを図において上側方向に切り換えさせる。
【0037】
第2油圧ポンプ2から作業装置に供給される作動油の一部が可変オリフィス30を経て走行装置側に供給される。これにより運転者が感じ得るような走行速度の急減速を防止することが可能となる。
【0038】
一方、モード選択装置31により特定作業モードを選択した場合、ジョイスティック16、17の操作により作業装置を駆動させると、コントローラ32により第1、2油圧ポンプ1、2から最大流量を吐き出し、走行装置を駆動させると、第1、2油圧ポンプ1、2から任意の流量を吐き出す(例えば、最大吐出流量の70%ほど)。
【0039】
走行ペダル14、15とジョイスティック16、17を操作し、走行装置と作業装置を同時に駆動させる場合、作業装置の操作感知装置33、34と走行装置の操作感知装置35、36からの検出信号がコントローラ32にそれぞれ入力される。これにより、コントローラ32から電磁比例弁19、20に出力される制御信号により第1、2油圧ポンプ1、2の斜板傾転角を制御し、第1、2油圧ポンプ1、2の吐出流量を最大に制御する。
【0040】
コントローラ32から出力される制御信号により電気式制御弁25を図において下側方向に切り換えさせる。パイロットポンプ3から吐き出される信号圧が電気式制御弁25及びパイロット流路27を経て可変オリフィス30に供給され、内部スプールを図に於いて上方向に切り換えさせる。
【0041】
コントローラ32から出力される制御信号により電気式制御弁21、25の内部スプールをそれぞれ図に於いて下側方向に切り換えさせる。パイロットポンプ3からの信号圧が電気式制御弁21、25及びパイロット流路28、27を経て走行直進弁13と可変オリフィス30に供給されることで切り換えさせる。したがって、可変オリフィス30のスプール切換により合流通路22が遮断される。
【0042】
即ち、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、合流通路22が遮断されるため、作業装置から作動油の一部が合流通路22を介して走行装置側には一切供給されない。そこで、第1油圧ポンプ1からの作動油は左側走行モータと右側走行モータとに分けて供給されるので、任意の走行速度(例えば、“70”)で走していた建設機械の走行速度が減速される(例えば、“50”)
【0043】
つまり、建設機械の走行速度は、“70”から“50”に減速したものの、運転者が感じるほどの走行減速ショックを生じない。
【0044】
一方、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置に生じる負荷より相対的に高い場合、合流通路22が遮断された状態で切り換えられるため、作業装置に供給される作動油が走行装置側に供給されることを防止し得るようになっている。そのことから、走行速度の急増速が防がれる。
【0045】
図4に示したように、本発明の他の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置は、エンジンに連結されている可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2及びパイロットポンプ3と、第1油圧ポンプ1の第1センターバイパス通路4に設置の左側走行モータ用切換弁5及び作業装置用切換弁6、7、8と、第2油圧ポンプ2の第2センターバイパス通路9に設置の右側走行モータ用切換弁10及び作業装置用切換弁11、12と、第2センターバイパス通路9の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、コントロールバルブ26の内部に形成の信号圧の供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプ1からの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁5、10にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプ2からの作動油を作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)にそれぞれ供給する走行直進弁13と、第2センターバイパス通路9の上流側から分岐した流路L2と第2センターバイパス通路9とを並列連結する合流通路22に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、信号圧供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路22を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィス30と、特定作業モードを選択するためのモード選択装置31と、モード選択装置31から選択する作業モードによって、可変容量型第1、2油圧ポンプ1、2の吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプ1、2の斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁19、20と、パイロットポンプ3から可変オリフィス30に供給される信号圧を制御する電気式制御弁25に制御信号を出力するコントローラ32を含める。
【0046】
この際、左側及び右側走行モータ用切換弁5、10と、少なくとも一つ以上の作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)とを同時に切り換えさせる場合、走行直進弁13のスプールを切り換えさせるべく、内部回路を有しているコントロールバルブ26を除いた構成は、図3に示した一実施例に記載の内容と実質的に同一に適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0047】
以下で、本発明の他の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置の使用例を添付図面に基づいて詳しく説明する。
【0048】
図4に示したように、前述したモード選択装置31により走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モードを選択すると、コントローラ32から出力される制御信号により電気式制御弁25の内部スプールを図に於いて下側方向に切り換えさせる。これにより、パイロットポンプ3からの信号圧が電気式制御弁25及びパイロット流路27を通過し、合流通路22に設置の可変オリフィス30に供給されるので、内部スプールを、図において上方向に切り換えさせることになる。
【0049】
即ち、合流通路22を遮断させることによって、第2油圧ポンプ2から作業装置に供給される作動油の一部を走行装置側に供給することが防がれるので、走行速度の急増速を防止し得る。
【0050】
一方、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる場合、走行直進弁13に信号圧を供給することができるようにコントロールバルブ26内に形成の内部回路は、
パイロットポンプ3と電気式制御弁25との間の流路から分岐したパイロット流路29を経由する信号圧がコントロールバルブ26内に流入されるためのポートAと、
ポートAに入力された信号圧が第1オリフィスa及び走行モータ用切換弁5を経由し、油圧タンクに供給されるための第1流路40と、
ポートAに入力された信号圧が第2オリフィスb-走行モータ用切換弁5-走行モータ用切換弁10を経由し、油圧タンクに供給されるための第2流路41と、
第1流路40から分岐し、走行直進弁13を切り換えさせるべく、走行直進弁13に信号圧を供給する第3流路42と、
ポートAに入力された信号圧が第3オリフィスc-作業装置用切換弁6、7、8、12、11-走行モータ用切換弁10を経由し、第3流路42に供給されるための第4流路43とを含める。
【0051】
即ち、左・右側走行モータ用切換弁5、10と、作業装置用切換弁(6、7、8)(11、12)のうち、何れかの一つを同時に切り換えさせる場合、コントロールバルブ26内に形成の信号圧が第2流路42を通じて走行直進弁13に供給されるので、内部スプールを、図において右側方向に切り換えさせる。
【0052】
したがって、第1油圧ポンプ1からの作動油は、左側走行モータ用切換弁5と、切り換えられた走行直進弁13とを経由し、右側走行モータ用切換弁10に供給される。また、第2油圧ポンプ2からの作動油は、流路L2に沿って作業装置用切換弁11、12と、切り換えられた走行直進弁13とを経由し、作業装置用切換弁6、7、8に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来技術による建設機械走行装置の油圧回路図である。
【図2】従来技術による建設機械走行装置の他の油圧回路図である。
【図3】本発明の一実施例による無限軌道式建設機械の走行装置の油圧回路図である。
【図4】本発明の他の実施例による無限軌道式建設機械の走行装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0054】
1 第1油圧ポンプ
3 パイロットポンプ
5 走行モータ用切換弁
7、11 作業装置用切換弁
9 第2センターバイパス通路
13 走行直進弁
15 走行ペダル
17 ジョイスティック
19 電磁比例弁
21、25 電気式制御弁
27 パイロット流路
31 モード選択装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型第1、2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプの第1センターバイパス通路に設置の左側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
前記第2油圧ポンプの第2センターバイパス通路に設置の右側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
前記第2センターバイパス通路の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部より信号圧の供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプからの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプからの作動油を作業装置用切換弁にそれぞれ供給する走行直進弁と、
前記第2センターバイパス通路の上流側から分岐した流路と第2センターバイパス通路とを並列連結する合流通路に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部より信号圧の供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路を通じて走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィスと、
作業モードを選択するためのモード選択装置、及び
前記モード選択装置から選択する作業モードによって、第1、2油圧ポンプの吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプの斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁と、走行直進弁と可変オリフィスに供給される信号圧をそれぞれ制御する電気式制御弁とに制御信号を出力するコントローラを含めることを特徴とする無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項2】
前記電気式制御弁として、
前記コントローラから制御信号の入力によってそれぞれ切り換えられ、走行直進弁と可変オリフィスにそれぞれ供給される信号圧を制御することができるようにソレノイド弁が用いられることを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項3】
前記電気式制御弁として、
前記コントローラから制御信号の入力によってそれぞれ切り換えられ、走行直進弁と可変オリフィスにそれぞれ供給される信号圧を制御することができるように電磁比例弁が用いられることを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項4】
ジョイスティックの操作時、第1、2油圧ポンプにそれぞれ連結されている作業装置用切換弁に供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する作業装置の操作感知装置と、
走行ペダルへの加圧時、左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する走行装置の操作感知装置とを含めることを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項5】
前記走行装置の操作感知装置と作業装置の操作感知装置として圧力センサーがそれぞれ使用されることを特徴とする請求項4に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項6】
可変容量型第1、2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプの第1センターバイパス通路に設置の左側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
前記第2油圧ポンプの第2センターバイパス通路に設置の右側走行モータ用切換弁及び作業装置用切換弁と、
前記第2センターバイパス通路の上流側に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、コントロールバルブの内部に形成の信号圧の供給により切り換えられ、切換時、第1油圧ポンプからの作動油を左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給し、第2油圧ポンプからの作動油を作業装置用切換弁にそれぞれ供給する走行直進弁と、
前記第2センターバイパス通路の上流側から分岐した流路と第2センターバイパス通路とを並列連結する合流通路に設けられ、走行装置と作業装置とを同時に駆動させる作業モード時、外部より信号圧の供給により切り換えられ、切換時、作業装置に生じる負荷圧力が走行装置の圧力より相対的に高い場合、作業装置に供給される作動油が合流通路を介して走行装置側に供給されることを遮断する可変オリフィスと、
作業モードを選択するためのモード選択装置、及び
前記モード選択装置から選択する作業モードによって、第1、2油圧ポンプの吐出流量をそれぞれ制御することができるように第1、2油圧ポンプの斜板傾転角を可変制御する電磁比例弁と、可変オリフィスに供給される信号圧を制御する電気式制御弁とに制御信号を出力するコントローラを含めることを特徴とする無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項7】
前記電気式制御弁として、
前記コントローラから制御信号の入力により切り換えられ、可変オリフィスに供給される信号圧を制御することができるようにソレノイド弁が使用されることを特徴とする請求項6に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項8】
前記電気式制御弁として、
前記コントローラから制御信号の入力により切り換えられ、可変オリフィスに供給される信号圧を制御することができるように電磁比例弁が使用されることを特徴とする請求項6に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項9】
ジョイスティックの操作時、第1、2油圧ポンプにそれぞれ連結されている作業装置用切換弁に供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する作業装置の操作感知装置と、
走行ペダルへの加圧時、左側及び右側走行モータ用切換弁にそれぞれ供給される信号圧力を感知し、検出信号をコントローラに出力する走行装置の操作感知装置とを含めることを特徴とする請求項6に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。
【請求項10】
前記走行装置の操作感知装置と作業装置の操作感知装置として、圧力センサーがそれぞれ使用されることを特徴とする請求項9に記載の無限軌道式建設機械の走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−286397(P2008−286397A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130537(P2008−130537)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】