説明

照明用低圧電源回路、照明装置および照明用低圧電源出力方法

【課題】負荷電流をほぼ一定に制御しつつ、1に近い力率を得られる小型で低価格なLEDなどの照明用低圧電源回路を得る。
【解決手段】交流電源を整流回路1により整流して、力率制御回路2により、照明用低圧電源を出力する照明用低圧電源回路において、前記力率制御回路2が、降圧型からなり、かつ電流制限機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用低圧電源回路、照明装置および照明用低圧電源出力方法に関し、特に有機ELやLEDなどの直流点灯光源を用いた照明用低圧電源回路、照明装置および照明用低圧電源出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高輝度LEDや有機ELなどの開発が進んでおり、照明用途にも近いうちに使われようとしている。高輝度LEDや有機ELは、蛍光灯と比較してまだ発光効率は低いものの、小型化、薄型化、長寿命化が可能と言われていることや、何より水銀レスが可能であることが照明用光源として有望視されている。
【0003】
また、高輝度LEDや有機ELは、どちらも直流駆動素子であり、これら直流駆動素子に直流電流を流すことにより発光する素子である。従って、この直流駆動素子を家庭用の交流電源を用いて発光させるためには、交流電源を直流電源に変換する電源を必要がある。また、高輝度LEDや有機ELは、どちらも一定電流を流すことによって安定に発光する素子であるので電流を制限する回路が必要である。なお、これら直流駆動素子の発光効率が劇的に向上しない限り、これら直流駆動素子を照明装置として使用するには50〜200Wの電力が必要になる。
【0004】
一方、電力の大きな照明装置は力率改善回路を備えている必要がある。従来、一般的に用いられている力率改善回路は、昇圧型である。この力率改善回路は、出力電圧が電源が100Vの場合、200〜300Vの直流電圧となり、そのままではLEDなどの低電圧素子には使用できない。そのため、その直流電圧出力をさらに電流制限回路で一定電流に制限すると共に、LEDの駆動電圧まで電圧を降下させて点灯させるのが最も単純な方法である。しかし、その場合には、回路規模が大きくなり、低価格化の障害になる。
【0005】
従来用いられている力率改善回路は昇圧回路であるため、その出力電圧はAC電源電圧VACの最大瞬時値よりも高い必要が有る。例えば、電源電圧が100Vの場合、200V〜300Vと設定される。一方、LEDの順方向電圧降下は2〜4V、有機ELでも10〜20Vと低く、複数個の素子を直列に駆動したとしてもあまりに力率改善回路の出力電圧が高いため、力率改善回路によるこれらの素子に直接駆動は困難であった。
【0006】
従って、従来例では力率改善回路の後に、定電流回路を挿入して、一定電流をLEDなどの負荷に供給すると同時に、力率改善回路の高い出力電圧をLEDなどの負荷の低い駆動電圧にまで下げる回路を必要としていた。従って回路が複雑になり、部品点数が増し、価格を低くできないという問題が有った。
【0007】
従来例1の回路構成を、図4のブロック図に示す。図4の左約半分は力率改善回路であり、図4の右約半分は定電流回路である。また、図5(a)(b)は図4の力率制御回路および電流制御回路のブロック図、図6(a)〜(f)は図4,5の動作を説明する波形図である。
【0008】
この図4の力率改善回路の主要部は、ダイオードブリッジ1と、トランスT1と、スイッチ素子Q1と、このスイッチ素子Q1を制御する力率制御回路2aと、出力フィルタ3とから構成される。この力率改善回路は、AC電源電圧VAC(図6(a))と電源電流IACの位相を制御して力率を改善する。力率改善回路の出力V7は、図4の右約半分である定電流回路に供給され、負荷6のLEDに流れるLED電流ILEDを一定値に制御する。
【0009】
図5(a)は図4の力率制御回路2aの詳細を説明するブロック図である。この力率制御回路2aは、乗算器11、基準電源12a、誤差増幅器14a、比較器16a、ドライバ17a、ゼロ電流検出器18、フリップフロップ19から構成される。
【0010】
力率改善回路の出力V7は、抵抗R5とR6で分圧された出力分圧V3(図6(c))として、制御ICの力率制御回路2aにフィードバックされる。この出力分圧V3は、基準電源12aの基準電圧と誤差増幅器14aで比較され、その差が増幅されて乗算器11の一方の入力端子に印加される。乗算器11のもう一方の入力端子には、AC入力であるVACをダイオードブリッジ1(D1)によって全波整流し抵抗R1とR2によって適当な値に分圧された電圧V2(図6(b))が加わる。乗算器11は、これらの電圧を乗算した電圧V4(図6(d))を発生し、比較器16aの一方の端子に出力する。従って、乗算器11の出力V4は、AC電源電圧VACに相似で、振幅が力率改善回路の出力電圧V7に比例した電圧となる。
【0011】
比較器16aのもう一方の入力端子には、スイッチ素子Q1に流れる電流値IQ1を抵抗R6によって電圧値に変換した変換電圧V8(図6(d))が加わる。スイッチ素子Q1は、トランスT1に流れる電流IT1が0になった時点から変換電圧V8が乗算電圧V4に達するまでの間ONとなる。その間、電流はほぼ直線的に増加するが、その増加の割合はトランスT1の一次インダクタンスと電源電圧VACの瞬時値によって決まる。
【0012】
上記ON期間が終了し、スイッチ素子Q1がOFFすると、スイッチ素子Q1に流れる電流は瞬時に0になり、鋸歯状波になるが、トランスT1の一次巻線には一次インダクタンスで決まる減少電流がある期間流れた後、0になる電流が流れる(図6(e)のIT1)。このトランスT1はゼロ電流検出も行うが、同時に昇圧チョッパ回路のインダクタンスとして、エネルギーの変換(すなわち電圧の変換)の機能がある。
【0013】
これを繰り返してトランスT1の一次巻線には三角波状の断続電流が流れる。なお、電圧V8の高周波数は、VACの周波数より十分大きい周波数となるように部品を選び、通常20〜200kHzである。
【0014】
比較器16aの出力は、フリップフロップ19のリセット端子に供給される。このフリップフロップ19は、セットされている間スイッチ素子Q1はONとなる。この比較器16aにより前述の電圧V4と電圧V8が比較され、電圧V4よりも電圧V8が大きくなると、比較器16aの出力が反転してフリップフロップ19をリセットし、スイッチ素子Q1をOFFにする。
【0015】
また、スイッチ素子Q1がOFFになった瞬間に、トランスT1の一次巻線には逆起電力が発生し、ダイオードD3を通じてコンデンサC3を充電する。この充電電流が流れている間は、スイッチ素子Q1がOFFになった後もトランスT1の一次巻線には徐々に減少する電流IT1が流れ続ける。
【0016】
トランスT1の一次巻線に流れる電流IT1がゼロになったことを、トランスT1の二次巻線とゼロ電流検出器18によって検出する。ゼロ電流検出器18が、電流IT1がゼロになったことを検出すると、フリップフロップ19をセットしてスイッチ素子Q1をONにする。
【0017】
以上の動作を繰り返すことによって、トランスT1の一次巻線に流れる電流IT1の平均値、すなわち電源入力電流IACの位相はAC電源電圧VACの位相に等しくなり(図6(f))、力率はほぼ1に制御される。
【0018】
また、力率制御回路2aにはその出力電圧V7がフィードバックされるから、力率制御回路2aの出力電圧V7は略一定値に制御され、その大きさはAC電源電圧が100Vの場合、通常200〜300Vに設定される。
【0019】
また、定電流回路部は、広く用いられているチョッパ型の降圧回路からなり、定電流回路部は、電流制御回路7と、スイッチ素子Q2、フィルタ3とから構成される。図5(b)は、図4の電流制御回路7の詳細を説明するブロック図である。この電流制御回路7は、基準電源22、誤差増幅器23、鋸歯状波発振器21、比較器24、ドライバ25から構成される。
【0020】
電流制御回路7は、負荷電流を抵抗R4により電圧V9として検出し、誤差増幅器23の一方に入力する。誤差増幅器23の他方には基準電源22からの基準電圧が入力される。この誤差増幅器23の出力は、比較器24で、鋸歯状波発振器21の出力と比較され、比較器24の出力はドライバ25を介して出力され、スイッチ素子Q2を駆動する。
【0021】
このスイッチ素子Q2が、チョッパ型の降圧回路となっている。電流制御回路7は、負荷(LED)電流ILEDを抵抗R4で電圧に変換した電圧V9をフィードバックすることにより、LED電流ILEDを一定に保つと同時にLEDの駆動に適した低電圧を出力する。
【0022】
この従来例1の回路は、前述のように、力率改善回路の後に、定電流回路を挿入して、高い出力電圧を降下させて、定電流をLEDなどの負荷に供給していた。そのためこの回路を構成するための、高耐圧部品のスイッチング素子、ダイオード、コイル、大型のコンデンサなどを必要とし、装置が大型化するという不都合があった。すなわち、回路が複雑になり、部品点数が増し、価格を低くできないという問題があった。
【0023】
また、他の従来例2として、特許文献1に示された放電灯点灯装置がある。この放電灯点灯装置は、出力回路を簡易化したもので、図7のブロック図に示されている。この放電灯点灯装置は、ダイオードブリッジ1a、昇降圧コンバータ31、極性切換回路32、始動パルス発生回路33、制御電源回路34、制御部35から構成される。 ダイオードブリッジ1aは商用交流ACを全波整流し、昇降圧コンバータ31は全波整流された電圧の昇圧および降圧を行い、極性切換回路32はスイッチ素子Q3a〜dから構成されて放電灯6aに流れる電流の極性を切り変える。また、始動パルス発生回路33は高圧パルスを発生させて負荷6aの放電灯を始動させる。
【0024】
また、昇降圧コンバータ31は、スイッチング素子Q2、トランスT1、ダイオードD2、コンデンサC2から構成されている。また、制御部35は、商用交流のゼロクロスを検出する検出回路41、昇降圧コンバータ31を制御する制御回路42、電流検出抵抗R4による放電灯の電流を検出する電流検出部43、始動パルス発生回路33を制御する始動パルス制御回路44、目標電流演算回路45、極性切換回路32を制御する極性切換制御回路45から構成されている。
【0025】
この放電灯点灯装置の動作を説明する。まず、商用交流電源から電力が供給されると、制御電源回路34が制御部35への制御電源を生成して供給し、制御部35が動作を開始する。制御部35では、始動パルス制御回路44が始動パルス発生回路33を制御し、放電灯に高圧パルスを印加して放電灯6aを点灯させる。
【0026】
放電灯6aが点灯すると、電流検出抵抗R4に電流が流れ始め、この電流を電流検出回路43が検出する。一方、目標電流演算回路45では目標電流が演算される。そこで、極性切換制御回路46は、電流検出回路43により検出された電流と目標電流演算回路45により演算された目標電流を比較し、検出電流と目標電流が等しくなるように昇降圧コンバータ31を制御し、フィードバック制御を行う。
【0027】
昇降圧コンバータ31では、スイッチング素子Q1は数十kHzの高周波でON/OFFを繰り返し、スイッチング素子Q1がON状態の場合にはトランスT1の一次側に電流が流れて、トランスT1にエネルギーが蓄積される。一方、スイッチング素子Q1がOFF状態の場合には、蓄えられたエネルギーがトランスT1の二次側に電力として放出される。放出された電力は、数十kHzの高周波なので、ダイオードD2とコンデンサC2により高周波成分が除去されて放電灯に供給される。
【0028】
そこでコンバータ制御回路42は、目標電流演算回路45による目標電流よりも電流検出回路43による検出電流が少ない場合には、スイッチング素子Q1のON状態の時間を増やすことにより、二次側に放出される電力を増加させ、放電灯6aに流れる電流を増やす。また、目標電流より検出電流が大きい場合には、スイッチング素子Q2のON状態の時間を減らすことにより、二次側に放出される電力を減少させ、放電灯6aに流れる電流を減らす。これらの動作を高速で行うことにより、放電灯の電流が目標電流と一致するように制御する。
【0029】
次に、極性切換制御回路46は、極性切換回路32を制御し、スイッチ素子Q3a,Q3dの組とスイッチング素子Q3c,Q3bの組を交互にON状態にさせることにより、昇降圧コンバータ31から出力された直流電流を交流電流とし、放電灯に流す。そこで、検出回路41は、商用交流電源における電圧の周期的な変化において、零ボルトになった場合にゼロクロス検出信号を出力する。
【0030】
目標電流演算回路45は、ゼロクロス検出回路41からのゼロクロス検出信号を受け、商用交流電圧波形に対して、0度および180度付近では目標電流値を小さく、90度および270度付近では目標電流値を大きくなるように目標電流を演算する。制御部35は、検出回路41からのゼロクロス検出信号を受け、スイッチング素子5a、5dの組はON状態とOFF状態を切り替え、スイッチング素子5c、5bの組はON状態とOFF状態を切り替える。
【0031】
これにより、放電灯6aに流れる電流は、極性が0度、180度で切り換えられ、商用交流電源VACに同期した正弦波状の電流となる。商用交流電源VACから放電灯点灯装置に流れ込む電流と放電灯6aに流れる電流は比例関係にあるので、放電灯点灯装置の入力電流も商用交流電源に同期した正弦波状の電流となり、入力力率が高くなり、また、昇圧インバータのような力率改善回路が不要であるため、小型で安価な放電灯点灯装置を得ることができる。
【0032】
【特許文献1】再特WO2001−060129号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかし、この従来技術(従来例1)では、照明装置として使用するには、50〜200Wの電力が必要になる。このように電力の大きな照明装置は、力率改善回路を備える必要がある。この力率改善回路の出力はさらに電流制限回路で一定電流にしているが、前述のとおり回路規模が大きくなり、低価格化の障害になる。
【0034】
そこで本発明では、力率改善回路に電流制限機能も持たせることを検討した。この方法であると、発光素子に流れる電流のフィードバックの時定数は交流電源の周期に比べて十分大きくとる必要があるので、発光素子に流れる電流の急激な変化には追従できないという欠点がある。また、どうしても交流電源のリップル成分が発光素子電流に乗ることは避けられず、多少の輝度リップルが出るという欠点もある。これらは、いずれも電流制限回路を別に設ける方法では表れない欠点である。
【0035】
また、特許文献1(従来例2)の場合は、出力回路を簡易化した電灯点灯装置が示されているが、放電灯点灯のための回路であるため、極性切替え回路によって放電灯に流れる電流の極性を切り替える交流点灯装置となっている。そのため、主要な目的である力率を改善するためには極性の切換えを商用電源の周波数に同期して行う必要があり、極性切替えが不可欠の要素技術である。そのため直流駆動素子であるLEDや有機ELの点灯を目的としたものには使用することが出来ない。
【0036】
本発明の主な目的は、負荷電流をほぼ一定に制御し、1に近い力率を得られると共に、小型で低価格な照明用低圧電源回路、照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明の構成は、交流電源を整流回路により整流して、力率制御回路により、照明用低圧電源を出力する照明用電源回路において、前記力率制御回路が、降圧型からなり、かつ電流制限機能を有することを特徴とする。
【0038】
本発明において、力率制御回路が、整流回路の出力および電源電流の検出出力により駆動されると共に、前記力率制御回路からの制御出力により切替えられるスイッチング素子と、このスイッチング素子の出力により制御される降圧型のトランスと、このトランスの出力を整流しかつ受動素子により高周波成分をフィルタする簡易出力回路と、この簡易出力回路の出力電流から前記電源電流の検出出力を得る電流検出回路とを含むことができ、また、トランスは、一入力端がスイッチング素子の出力に接続されると共に他の入力端が整流回路の出力に接続されることができ、また、力率制御回路が、負荷電流の検出出力を所定基準値と比較してその誤差を増幅し、この増幅出力と整流回路の出力とを乗算し、この乗算出力と所定高周波信号とを比較し、この比較出力によりスイッチング素子を駆動することができ、また、所定高周波信号が20〜200KHzの鋸歯状波信号からなる ことができる。
【0039】
本発明の照明装置の構成は、上述した照明用電源回路を、照明用光源に接続して用いたことを特徴とする。
【0040】
本発明において、照明用光源が、有機ELやLEDなどの直流点灯光源であることができる。
【0041】
本発明の照明用低圧電源出力方法の構成は、交流電源を整流回路により整流して、この整流出力を力率制御回路により制御し、照明用低圧電源を出力する照明用電源出力方法において、前記力率制御回路が、降圧型回路からなり、かつ電流制限機能を有することを特徴とする。
【0042】
本発明において、力率制御回路が、整流回路の出力および電源電流の検出出力により駆動されると共に、前記力率制御回路からの制御出力によりスイッチング素子を切換駆動し、このスイッチング素子の出力により降圧型のトランスを制御し、このトランスの出力を整流しかつ受動素子により高周波成分をフィルタして電源電流を出力し、前記電源の出力電流から前記負荷電流検出出力を得ることができ、また、力率制御回路が、負荷電流の検出出力を所定基準値と比較してその誤差を増幅し、この増幅出力と整流回路の出力を乗算し、この乗算出力と所定高周波信号とを比較し、この比較出力によりスイッチング素子を駆動することができる。
【0043】
本発明の照明方法の構成は、上述の照明用電源出力方法により得られた照明用電源出力で照明用光源を駆動して照明することを特徴とする。
【0044】
本発明において、照明用光源に、有機ELやLEDなどの直流点灯光源を用いることが出来る。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように、本発明の構成によれば、降圧型の力率制御回路に負荷に流れる電流をフィードバックさせ、この力率制御回路に負荷に流れる電流を制限する機能を持たせているので、別個に負荷に流れる電流を制限する回路を設ける必要が無く、小型で低価格な照明用低圧電源回路および照明装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
図1は本発明の一実施形態の照明用電源回路のブロック図、図2(a)〜(f)は本実施形態の照明用電源回路の動作を説明する波形図である。この図1に示すように、本実施形態の対象とする被駆動素子は、直流で駆動できる有機ELやLEDなどの電流制御型発光素子であればよいので、以下の説明ではLEDを被駆動素子として説明する。
【0047】
本実施形態の特徴は、降圧型の力率制御回路にLEDに流れる電流の制限機能を持たせたことである。すなわち、本実施形態の照明用電源回路は、交流電源VACを整流回路1により整流して、この整流出力を力率制御回路2により制御し、照明用低圧電源を出力する照明用低圧電源回路において、前記力率制御回路2が、降圧型回路からなり、かつ電流制限機能を有することを特徴としている。
【0048】
なお、有機ELやLEDなどの電流制御型発光素子は、一定の電流をLEDやELに流すと、それらが持つ順方向電圧降下で出力電圧は決まってしまうので、出力電圧をフィードバックして制御する必要はない。
【0049】
更に、整流出力を力率制御回路2により制御するとは、整流回路の出力および電源電流の検出出力により駆動して照明用低圧電源を出力することである。また、力率制御回路2の電流制限機能とは、電源電流の検出出力を所定基準値と比較して駆動することにより、出力電流が一定になるよう制御された照明用低圧電源を出力することである。
【0050】
本実施形態の照明用電源回路は、力率制御回路2と、この力率制御回路2からの制御出力により切替えられるスイッチング素子Q1と、このスイッチング素子Q1の出力により制御される降圧型のトランスT1と、このトランスT1の出力をダイオードD2により整流しかつ受動素子(インダクタL2,コンデンサC2)により高周波成分をフィルタする簡易出力回路と、この簡易出力回路の出力電流から前記電源電流の検出出力を得る電流検出回路(抵抗R4とV−I変換回路4)とをさらに含むものである。
【0051】
この図1の照明用電源回路の主要部は、ダイオードブリッジ1と、トランスT1と、スイッチ素子Q1と、このスイッチ素子Q1を制御する力率制御回路2と、ダイオードD2と、出力フィルタ3と、V−I変換回路4、フォトカップラ5から構成される。
【0052】
図1において、まず交流電源VAC(図2(a))は、ダイオードブリッジ1により全波整流される。この全波整流出力V1はトランスT1の一次巻線を介してスイッチング素子Q1の一端に接続される。また、力率制御回路2は、制御ICから構成され、スイッチング素子Q1のスイッチング時間を制御することによって、交流電源VACとそれに流れる電源電流IACの位相を制御して力率を改善する。スイッチング素子Q1は、力率制御回路2によってON/OFF制御され、トランスT1の一次電流を断続する。トランスT1は、断続する一次電流によるエネルギーを二次側に伝達すると共に、一次巻線と二次巻線の比に相当する昇圧比で二次巻線に電圧を発生する。
【0053】
ダイオードブリッジ1によって整流された全波整流電圧V1は、抵抗R1とR2により適当な値に分圧され、この分圧電圧V2が力率制御回路2の端子FB1に供給される(図2(b))。
【0054】
また、トランスT1の二次電圧は、ダイオードD2により整流される。この整流出力は、さらにインダクタL2とコンデンサC2からなる出力フィルタ3を介して負荷6のLEDに供給される。出力フィルタ3は整流された電圧をリップルの少ない直流に変換される。
【0055】
負荷6のLEDは、照明装置の光源となる発光ダイオードで、単独又は複数個を直列接続として用いられる。負荷6の帰還ラインには抵抗R4が設けられ、抵抗R4はLEDに流れる電流ILEDを検出する。この負荷6で検出された出力は、V−I変換回路5で電流に変換された後、フォトカップラ5を通じて力率制御回路2の端子FB2に帰還電圧V3(図2(c))としてフィードバックされる。
【0056】
なお、抵抗R3を直列接続したフォトカップラ5は、力率制御回路2の端子REFからの基準電圧が供給され、その直列接続端から帰還電圧V3を出力し、力率制御回路2の端子FB2に供給する。力率制御回路2は、これら分圧電圧V2と帰還電圧V3とを入力してスイッチ素子Q1を制御する。
【0057】
本実施形態の照明用低圧電源回路は、図1のように、照明用低圧電源出力を負荷6のLEDに接続し、交流電源を供給する。この照明用低圧電源回路からの照明用低圧電源出力により、LEDが駆動されると、LEDを発光させることができるので、照明装置として使用することが出来る。
【0058】
本実施形態の照明用低圧電源出力方法としては、交流電源を整流回路1により整流して、この整流出力を力率制御回路2により制御し、照明用低圧電源を出力することができる。また、照明方法としては、上述の照明用電源出力方法により得られた照明用電源出力で照明用光源を駆動して照明することができる。
【0059】
本実施形態では、電源回路の力率制御回路2を降圧型として電流制限機能も持たせることとしている。通常、このような構成の場合、発光素子に流れる電流のフィードバックの時定数は交流電源の周期に比べて十分大きくとる必要があるので、発光素子に流れる電流の急激な変化には追従できないという問題がある。また、どうしても交流電源のリップル成分が発光素子電流に乗ることは避けられず、多少の輝度リップルが出るという問題もある。しかし、照明装置として一定輝度で使用することを考えると、発光素子電流の急激な変化が起こるとは考えにくく、また多少の輝度リップルがあったとしても、電源回路の実用上差し支えのない場合が多いので、簡易型構成とし、コストダウンを図っている。
【0060】
通常、力率改善回路2は、出力電圧をフィードバックしてほぼ一定値に保つように動作するが、本実施形態は、このフィードバックを電流値のフィードバックとしただけなので、簡易に構成できるという特徴がある。
【0061】
従来の力率制御回路には、多くの場合、昇圧形の回路が用いられてきた。その場合には、AC電源電圧の最大瞬時値よりも力率制御回路の出力電圧が高く、蛍光灯などの高い電圧を必要とする点灯回路には適していた。しかし、LEDや有機ELのように低電圧素子を駆動するには適しておらず、力率改善回路の後に電圧をそれらの負荷に適した電圧まで下げるための回路が必要であった。
【0062】
本実施形態では、力率制御回路2に降圧型の回路を用いているため、別個に電圧を下げる回路を必要とせず、さらに負荷LEDに流れる電流を一定に制御する機能も力率制御回路に持たせたため、回路を簡素化することができる。
【0063】
このようにして、本実施形態では、力率制御すると同時に、光源である負荷LEDに流れる電流ILEDの大きさに応じた信号を制御回路にフィードバックしているので、本実施形態による電源回路は、力率を改善すると共に、LEDに常に一定の大きさの電流を流すように動作している。このような構成によって、別個にLEDの電流を制限する電流制限回路を設ける必要が無いので、小型で低価格なLED照明装置の電源回路を構成することができる。
【0064】
本実施形態によれば、別個に電流制限回路を設けることなく、より簡単な回路構成で所望のLED照明装置を実現できることから、小型で低価格なLEDの照明装置用電源回路を実現できる。
【0065】
さらに、力率改善回路を備えているため電源電流が低く抑えられ、大きな出力の照明装置であっても電源配線に与える負担を軽減することができる。
【実施例1】
【0066】
図1の実施形態において、図1に用いる力率制御回路2の詳細を説明したものが、第1の実施例である。図3は図1に用いる力率制御回路2の実施例を説明するブロック図である。この力率制御回路2は、乗算器11、基準電源12、分圧器13、誤差増幅器14、鋸歯状波発振器15、比較器16、ドライバ17から構成される。本実施例は、力率制御回路2が、負荷電流の検出出力を所定基準値と誤差増幅器14で比較してその誤差を増幅し、この増幅出力と整流回路の出力を乗算器11で乗算し、この乗算出力と所定高周波信号とを比較器16で比較し、この比較出力によりスイッチング素子Q1を駆動する。
【0067】
次に、図1〜図3を用いて本実施例による電源回路の詳細な動作を説明する。負荷6に流れる電流ILEDは、抵抗R4で電圧に変換された後、V−I変換回路4やフォトカプラ5を通じて帰還電圧V3(図2(c))として力率制御回路2に入力される。この帰還電圧V3は誤差増幅器14によって基準電圧と比較され、その差の電圧が増幅されて乗算器11の一方の入力端子に印加される。乗算器11のもう一方の入力端子には、分圧電圧V2が加わる。乗算器11は、これらの電圧を乗算した電圧V4を発生し、比較器16の一方の端子に出力する。従って、乗算器11の出力V4は、AC電源電圧VACに相似で、振幅がLEDに流れる電流ILEDに比例した電圧となる(図2(d)(e)のV4)。
【0068】
比較器16の他方の端子には、鋸歯状波発生器15で発生する一定の周期と振幅の鋸歯状波(図2(d)(e)のV5)が加わる。この鋸歯状波の周波数は、従来例と同様に、通常20〜200kHzである。比較器16では、これらの入力電圧を比較して出力にパルス幅変調されたパルスを発生する。比較器16の出力はドライバ17で電力増幅されスイッチング素子Q1のゲートを駆動する(図2(f))。従って、スイッチング素子Q1は、比較器16によって発生するパルス幅変調されたパルス信号でトランスT1に流れる電流を断続する。
【0069】
このような構成をとることによって、トランスT1の一次側に流れる電流の平均値、すなわち交流電源の入力電流IACの位相(図2(a))は、交流電圧VACの位相に極めて近くなり力率は1に近くなる。
【0070】
力率制御回路2の端子FB1に印加された電圧V2は、図2(a)に示すように、電源電圧VACと同じ位相の半波整流波形である。また、電流ILEDは、図2 (b )に示すように、ほぼ直流電流となる。このため、電流ILEDに対応するフィードバック信号V3もほぼ直流の電圧となる。電圧V2とV3は力率制御回路2の内部の乗算器で乗算された後、電圧V3と比較され、GATE端子からスイッチング素子Q1をスイッチする信号として出力される。つまり、力率制御回路2には、電圧V3とV2がフィードバックされるが、電圧V3のフィードバックの時定数を大きく、電圧V2のフィードバックの時定数を小さく設定することにより、短い時間スパンでは電圧V2に追従し、長い時間スパンでは電圧V3、つまり平均電流ILEDを一定にするように動作する。
【0071】
その結果、電源電流としては、平均すると図2(a)に示すように、電源電圧VACと位相の一致した電流IACが流れ、力率はほぼ1に近い値となる。また、LED1には所望のほぼ一定な電流が流れる。
【実施例2】
【0072】
図1の第1の実施例では、スイッチ素子Q1としてFETを示し、またフィードバック信号の伝達素子として、LEDとフォトトランジスタを内蔵したフォトカプラ5を示している。この他の実施例として、スイッチ素子Q1として、トランジスタやIGBT(Insulated−gate bipolar transistor)などのスイッチング素子も適用可能である。また、フォトカプラの代わりに、発光素子と受光素子間が電気的に絶縁され、かつ信号の伝達が可能であれば発光素子や受光素子の種類を問わず適用可能である。なお、図1の実施例では、トランスT1とフォトカプラ5により、一次側と二次側を電気的に分離している。この分離は使い勝手の良さを優先するためであるが、分離することは、本実施例の機能を実現する上での不可欠な要素ではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、有機ELやLEDを光源として用いた照明装置の電源装置に応用することができる。また、現在は商品化された例は少ないが、今後読書灯や案内灯や装飾照明、さらには蛍光灯に代わる一般家庭用照明装置や店舗用照明に用途が広がるものと考えられる。
【0074】
照明装置として、これらの光源を用いる場合には、電源装置として、1)電源が交流であり、2)電源電流が大きい場合には力率改善回路が必要であり、さらに3)小型で低価格であることが求められる。本発明によれば、これらの条件をもつ照明用低圧電源回路、照明装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明する電源回路のブロック図である。
【図2】(a)〜(f)は図1の動作を説明する波形図である。
【図3】図1の力率改善制御回路の部分の具体例のブロック図である。
【図4】従来例の一般の電源回路を説明するブロック図である。
【図5】(a)(b)は図4の力率改善制御回路、電流制御回路の部分のブロック図である。
【図6】(a)〜(f)は図5の動作を説明する波形図である。
【図7】他の従来例の電源回路を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
1,1a ダイオードブリッジ
2,2a 力率制御回路
3 出力フィルタ
4 VーI変換回路
5 フォトカップラ
6 負荷(LED)
6a 負荷(放電灯)
7 電流制御回路
11 乗算器
12,12a,22 基準電源
13 分圧器
14,14a,23 誤差増幅器
15,21 鋸歯状波発振器
16,16a,24 比較器
17 ドライバ
18 ゼロ電流検出器
19 フリップフロップ
31 昇降圧コンバータ
32 極性切換回路
33 始動パルス発生回路
34 制御電源回路
35 制御部
41 ゼロクロス検出回路
42 コンバータ制御回路
43 電流検出回路
44 始動パルス制御回路
45 目標電流演算回路
46 極性切換制御回路
C1〜C3 コンデンサ
D1〜D3 ダイオード
L1,L2 インダクタ
Q1,Q2 スイッチ素子
R1〜R6 抵抗
T1 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流回路により整流して、この整流出力を力率制御回路により制御し、照明用低圧電源を出力する照明用低圧電源回路において、前記力率制御回路が、降圧型回路からなり、かつ電流制限機能を有することを特徴とする照明用低圧電源回路。
【請求項2】
前記力率制御回路が、前記整流回路の出力および電源電流の検出出力により駆動されると共に、前記力率制御回路からの制御出力により切替えられるスイッチング素子と、このスイッチング素子の出力により制御される降圧型のトランスと、このトランスの出力を整流しかつ受動素子により高周波成分をフィルタする簡易出力回路と、この簡易出力回路の出力電流から前記電源電流の検出出力を得る電流検出回路とをさらに含む請求項1記載の照明用低圧電源回路。
【請求項3】
前記トランスが、一入力端が前記スイッチング素子の出力に接続されると共に他の入力端が前記整流回路の出力に接続された請求項2記載の照明用低圧電源回路。
【請求項4】
前記力率制御回路が、負荷電流の検出出力を所定基準値と比較してその誤差を増幅し、この増幅出力と前記整流回路の出力を乗算し、この乗算出力と所定高周波信号とを比較し、この比較出力によりスイッチング素子を駆動する請求項2または3記載の照明用低圧電源回路。
【請求項5】
前記所定高周波信号が20〜200KHzの鋸歯状波信号からなる請求項4記載の照明用低圧電源回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの1項に記載の照明用低圧電源回路を、照明用光源に接続して用いたことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
前記照明用光源が、有機ELやLEDなどの直流点灯光源である請求項6記載の照明装置。
【請求項8】
交流電源を整流回路により整流して、この整流出力を力率制御回路により制御し、照明用低圧電源を出力する照明用電源出力方法において、前記力率制御回路が、降圧型回路からなり、かつ電流制限機能を有することを特徴とする照明用電源出力方法。
【請求項9】
前記力率制御回路が、前記整流回路の出力および電源電流の検出出力により駆動されると共に、前記力率制御回路からの制御出力によりスイッチング素子を切換駆動し、このスイッチング素子の出力により降圧型のトランスを制御し、このトランスの出力を整流しかつ受動素子により高周波成分をフィルタして前記電源電流を出力し、前記電源電流から前記電源電流の検出出力を得る請求項8記載の照明用電源出力方法。
【請求項10】
前記力率制御回路が、負荷電流の検出出力を所定基準値と比較してその誤差を増幅し、この増幅出力と前記整流回路の出力を乗算し、この乗算出力と所定高周波信号とを比較し、この比較出力により前記スイッチング素子を駆動する請求項8記載の照明用電源出力方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のうちの1項に記載の照明用電源出力方法により得られた照明用電源出力で照明用光源を駆動して照明することを特徴とする照明方法。
【請求項12】
前記照明用光源に、有機ELやLEDなどの直流点灯光源を用いる請求項11記載の照明方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−80771(P2007−80771A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270004(P2005−270004)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】