説明

熱伝達媒体及びこれを利用した熱伝達方法

【課題】対象体に熱を伝達する熱伝達媒体及びこれを利用した熱伝達方法を提供する。
【解決手段】具体的に熱伝達媒体は、複数個のナノ粒子含有膜を含み、ナノ粒子が、膜に対して入射する光を吸収することで対象体に熱を伝達する。また、このような熱伝達媒体を利用した熱伝達方法は、複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜を形成する段階と、前記膜を光に露出させる段階と、及び前記ナノ粒子が入射された光を吸収することにより熱が生成され、この熱を対象体に伝達する段階とを含む。このとき、複数個のナノ粒子含有膜は、対象体に直接塗布してよく、中間層上に塗布してもよい。また、複数個のナノ粒子含有膜は、透明フィルム上に塗布し、これを対象体上に位置してマスクのように使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達媒体及びこれを利用した熱伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板またはプラスチック基板上に形成された膜は熱処理によって架橋、整列(ordering)、可塑化、あるいは結晶化する。しかしながら、前記膜と、ガラス基板またはプラスチック基板との間の互いに異なる膨張率によってガラス基板の破壊やプラスチック基板の変形がよく起こるようになる。特に、基板の不均一な収縮が発生することにより、高温条件で使用するような焼結工程をプラスチック基板に容易に適用することができない。
【0003】
また、例えば、光電池(PV cell)において使用される透明多孔性電極物質としての二酸化チタン(TiO)は、470℃で焼結しなければならない。したがって、プラスチック物質を容易に光電池用基板としての使用することが困難である。
【0004】
また、従来技術としては、特許文献1に光熱変換層に関する技術が記載されており、特許文献2には、プラズモン補助化学反応を用いて物質のフィルムを形成する方法及びシステムに関する技術が記載されている。
【特許文献1】韓国特許出願第2002−7006918号明細書
【特許文献2】韓国特許出願第2006−7013157号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的の一つは、対象体であるデバイスに熱伝達媒体として複数個のナノ粒子を位置させ対象体であるデバイスに熱を伝達する熱伝達媒体及び前記熱伝達媒体を使用する熱伝達方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様においては、対象体であるデバイスに熱伝達媒体として複数個のナノ粒子を位置させ前記対象体であるデバイスに熱を伝達する熱伝達媒体及び前記熱伝達媒体を使用する熱伝達方法が提供される。さらに、前記方法において、赤外線を透過するフィルムに複数個のナノ粒子含有膜を塗布し、これをマスクのように使用することで、対象体であるデバイスの所望の部位に熱を伝達することが可能である。このような方法によると、デバイスにおいて不要な熱発生物質を残すことなく熱伝逹効果が得ることが可能である。
【0007】
すなわち、複数個のナノ粒子の表面プラズモン効果により生成される熱を用いることにより互いに接する物質間の熱膨張差に基づく破損や変形を最小化できる。このような破損や変形の現象はプラスチックデバイスと関連する焼きなまし(アニーリング)または焼結工程において特に有用である。
【0008】
前記熱は、可視光線または近赤外線領域の光を吸収することにより伝達される。前記複数のナノ粒子はプラズモンレゾナンスにより光を吸収し、熱を発生させる。
【0009】
ナノ粒子含有膜は対象体に直接塗布されてもよく、この場合、ナノ粒子含有膜はエッチングにより除去できる。ナノ粒子含有膜が透明フィルム上にコーティングされることもあり、ナノ粒子含有膜でコーティングされた透明フィルムはマスクとして熱伝達が必要な対象体上に位置しており、赤外線に露出されると前記コーティングされたナノ粒子含有膜の下の対象体の特定位置に熱が伝達される。このような技術はプラスチックデバイスを製造するにあたり非常に有用である。
【0010】
具現例において、入射される光を吸収し対象体に熱を伝達する複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜を含む熱吸収媒体が提供される。
【0011】
具現例において、複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜を形成する段階;前記ナノ粒子含有膜を光に露出させる段階;前記ナノ粒子により前記ナノ粒子含有膜に入射される光が吸収され、これを通じ対象体に熱を伝達する段階;とを含む熱伝達媒体を使用する熱伝達方法が提供される。
【0012】
ここで、前記ナノ粒子含有膜は対象体に直接塗布されることもあり、または中間層に塗布されることもある。また、前記ナノ粒子含有膜は透明フィルムに塗布されることもあり、これによりナノ粒子含有膜が塗布された透明フィルムは対象体上に位置し、マスクとして使用できる。
【0013】
このような構成を採用する熱伝達過程において、前記ナノ粒子含有膜の配置を変化させることによりその配置に対応する所定の位置に熱伝達させることができる。ここで、前記膜は可視光線または近赤外線領域の光に露出されることがある。
【0014】
具現例において、前記透明フィルムは赤外線透明フィルムであり、前記ナノ粒子はAu、Cu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、Niの単独あるいはこれらの混合物である。
【0015】
具現例において、ナノ粒子含有膜が対象体に直接塗布される場合、ナノ粒子含有膜はエッチングにより除去されうる。また、ナノ粒子含有膜でコーティングされた透明フィルムはマスクとして熱伝達が必要な対象体上に位置しており、赤外線に露出すると前記コーティングされたナノ粒子含有膜の下の対象体の特定位置に熱が伝達されることがある。
【0016】
上記のような熱伝達媒体は、プラスチック上の有機物膜に対して熱処理を施す工程に使用可能である。例えば、OTFTでの絶縁体膜(200℃の架橋工程)とチャンネル物質である半導体膜(130℃の再配列工程)に適用することができる。また、プラスチック上の無機物膜にも適用することができるが、例えば、酸化亜鉛薄膜トランジスタ(ZnO TFT)のチャンネル物質であるZnO膜の結晶化工程(200℃)とシリコン薄膜トランジスタ(Si TFT)のチャンネル物質であるSi膜の結晶化工程(350℃)を例にあげることができる。
【0017】
具現例において、基板及び前記基板上にコーティングされるナノ粒子含有膜を含む熱伝達媒体が提供される。ここで、前記ナノ粒子は光が入射する際に熱を生成する。前記ナノ粒子においては表面プラズモンレゾナンスが発生する。前記光は可視光線または近赤外線領域である。前記ナノ粒子はAu、Cu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、Niの単独あるいはこれらの混合物からなる。
【0018】
具現例において、ナノ粒子含有膜を光に露出させ熱を生成する段階;前記熱を対象体に伝達し過熱する段階;とを含む対象体加熱方法が提供される。前記熱は、前記ナノ粒子においての表面プラズモン共鳴効果により生成される。前記光は可視光線または近赤外線領域の光である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、対象体の所望の部位に熱を伝達することができ、これにより、対象体において不要な熱発生物質を残すことなく熱伝逹効果が得られる。上記のような技術らは、プラスチックデバイスなどの製造にあたり有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明することにより、本発明を詳しく説明する。なお、本発明が下記の実施形態によって制限されるものではない。
【0021】
本発明の第一は、対象体に熱を伝達する熱伝達媒体において、複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜を有し、前記ナノ粒子は、前記複数個のナノ粒子を有する膜に対して入射する光を吸収するものであり、かつ前記膜は光を吸収することにより発生する熱を前記対象体に伝達する、熱伝達媒体である。
【0022】
なお、本発明に係る“ナノ粒子含有膜”なる用語は、複数個のナノ粒子が膜形状を持つようにコーティングされたものであり、複数個のナノ粒子からなるか、複数個のナノ粒子を含む膜を意味する。例えば、固体膜だけではなく、ポリマー溶液中にナノ粒子を分散させた溶液状のものも含む概念である。
【0023】
図1は、赤外線透明フィルムにコーティングされたナノ粒子含有膜を示す概略図である。図1に示すように、赤外線透明フィルム10のような基板上に複数個のナノ粒子含有膜11が塗布されている。前記基板は赤外線透明フィルムに限定されず、前記ナノ粒子により生成された熱を伝達しうる限りどのようなフィルムであってもよい。
【0024】
本発明に関するナノ粒子含有膜は、例えば金属ナノ粒子を含有する溶液をドロップ(drop)してコーティングされることである。前記ナノ粒子を含有する溶液にナノ粒子を分散させるための分散剤を使用することができる。膜形成時、前記溶媒は除去される。膜には分散剤が存在するか除去されることができる。ナノ粒子の形状によりナノ粒子形成の際使用される分散剤の量が異なる場合がある。本発明のナノ粒子含有膜において、ナノ粒子含有膜の質量を100としたとき、ナノ粒子の質量は0.1〜100が好ましく、10〜100がより好ましく、50〜100が特に好ましい。
【0025】
本発明に係る分散剤としては公知のものを使用することができ特に制限されない。また、本発明では一般的に分散剤は、界面活性剤(surfactant)を多く用いるが、その例としては、SDS、NaDDBS、TX−100、CTAB類などが挙げられる。
【0026】
また、上記赤外線透明フィルム10は、プラスチックまたはガラスを含むことができる。前記フィルム10は、また、可視光線にも透明である。前記ナノ粒子は光電池のようなデバイス製造の際熱伝達用マスクとしての役割を果たせる。
【0027】
即ち、前記ナノ粒子含有膜がコーティングされた透明フィルムが可視光線または近赤外線領域の光に露出される場合、前記ナノ粒子は光を吸収し表面プラズモンレゾナンス効果により赤外線領域の熱(IR heat)を生成することができ、この熱は対象体に伝達され対象体が加熱されうる。金属表面と水や空気のような誘電体との間の境界において、これらの間の電荷密度偏差に起因して前記表面プラズモンレゾナンスが発生する。前記赤外線透明フィルム10に塗布された前記ナノ粒子含有膜11を含む熱伝達媒体は赤外線透明フィルムに使用されるプラスチックまたはガラス基板の焼結工程、焼きなまし工程、結晶化肯定などのような熱処理の際に使用できる。
【0028】
本発明に係るナノ粒子含有膜に使用されるナノ粒子は、Au、Cu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、Niの単独あるいはこれらを混合して使用することが好ましく、Au、W、Ag、Ptの単独あるいはこれらの混合物がより好ましい。本発明に係るナノ粒子の形状は、特に制限されるものではなく、ロッド(rod)状、球状、フィラー状、円柱状、円錐状、多角錐状など挙げられる。
【0029】
本発明に係るナノ粒子の直径は、5〜50nmであることが好ましく、10〜30nmであることがより好ましい。本発明に係るナノ粒子の形状が球状以外の場合は、本発明に係るナノ粒子の長さは、直径対比1.5〜15倍であることが好ましく、2〜10倍であることがより好ましい。
【0030】
本発明に係るナノ粒子の粒径の測定方法は特に制限されるものではなく、X線、光散乱、SEMやTEMなどの電子顕微鏡で測定することができる。尚、本発明に係るナノ粒子の粒径は、Au 水溶液をTEM gridに乗せてからTEMにより測定した。
【0031】
また、本発明に係るナノ粒子は公知の方法で製造することができ、例えば、Auナノ粒子を製造する場合は、所定の量のHAuCl及びtri−sodium citrate水溶液を用意した後、所定の量のNaBH4溶液を添加しこれを攪拌しながらシード(Seed)を形成する。次に、所定の量の成長溶液とアスコルビン酸(ascorbic acid)溶液を混合し、ここに前記シード溶液を加えた後、シードよりAuナノ粒子を調製することができる。ここでは攪拌を行わない。
【0032】
図2aは、Auナノ粒子含有膜(Auナノ粒子が分散されている水溶液をドロップ(drop)してコーティングした膜)の模様を示す図である。一つの具現例において、Auからなるナノ粒子が赤外線透明基板上に塗布されうる。図2aに図示されているように、ナノ粒子は一定の粒径を持つことができる。ナノ粒子の粒径は熱伝達を調整するよう変形できる。
【0033】
図2aはAuナノ粒子を図示するが、ナノ粒子が別の物質、例えばCu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、Niの単独あるいはこれらの混合物からなり得るのは勿論のことである。
【0034】
一つの具現例において、前記赤外線透明フィルムにコーティングされたナノ粒子含有膜はパターン化することができ、これにより加熱される対象体の選択された部位にのみ熱を伝達するよう局部的に熱を生成し伝達することができる。即ち、ナノ粒子(ナノ粒子含有膜)は赤外線透明フィルムの全体表面や熱伝達を所望する選択部位にのみコーティングされ、これにより全体表面または選択部位にのみ熱伝達が遂行されうる。
【0035】
図2bは、図2aのAuナノ粒子が分散されている水溶液のUV−Vis−NIR 吸光度スペクトルである。図2bを参照すると、約800nmの波長で最大の吸光度を示すことが分かる。熱伝達媒体に照射される光の波長に依存し、ナノ粒子の粒径を調節することにより熱伝達を制御することができる。
【0036】
図2a及び図2bにおいて使用したAuナノ粒子は、直径が10nmで60nmの長さを有し、800nm波長の光で最大の吸光度を示す。したがって、800nm波長のレーザを照射すると、このAuナノ粒子は、光を吸収しこれによりIRヒートを生成する。
【0037】
図3は、ガラス基板が2Wで800nm波長のレーザに露出される場合の時間による基板温度プロファイルを示すグラフである。すなわち、図3に示したグラフ曲線(b)は、Auナノ粒子を含有する溶液をドロップ(drop)してガラス基板にコーティングしAuナノ粒子含有膜を形成した後、2Wで800nm波長のレーザに露出した場合の基板温度プロファイルであって、約50秒内に約110℃まで温度が上昇したことがわかる。これに対し、曲線(a)に示すように、Auナノ粒子含有膜がガラス基板上にコーティングされていない場合は、基盤にいかなる実質的な温度増加もなかった。
【0038】
図4は、ガラス基板が12Wで800nm波長のレーザに露出された場合の時間による基板温度プロファイルを示すグラフである。すなわち、グラフ曲線(b)は、Auナノ粒子を含有する溶液をドロップ(drop)してガラス基板にコーティングしAuナノ粒子含有膜を形成した後、12Wで800nm波長のレーザに露出した場合の基板温度プロファイルである。図4から約4秒内に約400℃まで温度が上昇したことがわかる。これに対し、曲線(a)に示すように、Auナノ粒子がコーティングされていない場合は、基板温度が実質的に増加しなかった。
【0039】
したがって、図3及び図4のグラフから、Auナノ粒子が入射される光を吸収すること即ち、Auナノ粒子においての表面プラズモン効果が起こることによりAuナノ粒子およびAuナノ粒子含有膜は熱伝達媒体としての機能を遂行することが分かる。また、同じ波長の場合、照射されるレーザの強さが2Wから12Wに強くなるほど、同一な800nmの波状においてもより短時間内に温度上昇が起こることが分かる。
【0040】
図5は、前述したようなナノ粒子を含む熱伝達媒体の一例の光電池への応用例を示す概略図である。図5に示すように、光電池に使用する二酸化チタン(TiO)ペースト53をコーティングしたプラスチック基板52上に、複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜51がコーティングされた赤外線透明フィルム50がマスクとして位置する。赤外線レーザに露出されると、ナノ粒子はプラズモン効果の結果として熱を生成し、この熱は透明基板50を介して二酸化チタン(TiO)53まで伝達され二酸化チタン(TiO)を焼結する。よって、光電池において使用される二酸化チタン(TiO)は、プラスチック基板52で引き起こされなくとも、焼結されることができる。
【0041】
図6は、プラスチック基板を持つデバイスの焼きなまし過程に適用される熱伝達媒体を示す概略図である。図6に示すように、選択的に位置するナノ粒子含有膜61を有する赤外透明フィルム60からなる熱伝達媒体がプラスチック基板62上にマスクとして位置している。赤外線レーザに露出される場合、選択的にコーティングされたナノ粒子含有膜61は表面プラズモン効果を通じ熱を生成し、この熱は赤外線透明基板60の下に置かれたプラスチック基板62上に物質が選択的に形成された部分(たとえば、有機物またはその他の物質がコーティングされた熱処理を必要とする部分)63に伝達される。ナノ粒子含有膜でコーティングされていない透明基板60の残りの部分は、赤外線を透過させるため過熱されず、したがって、プラスチック基板62に熱的に影響を与えない。
【0042】
即ち、以上において述べたとおり、ナノ粒子含有膜は透明基板上にパターン化された形態で選択的にコーティングされる。よって、赤外線のような光が照射されるとナノ粒子含有膜でコーティングされたパターン部分は選択的に過熱され、その熱が透明基板を通じ伝達され前記パターンに対応する対象体の部分を選択的に熱処理することになる。前記パターンを除いた残りの部分はナノ粒子の副存在に基づき光を透過させ過熱されない。このような具現例において、前記熱処理は焼結工程、焼きなまし工程、結晶化工程などに適用されうる。
【0043】
一つの具現例において、前記ナノ粒子含有膜は、例えばガラスまたはプラスチック基板上にパターン化された形態で処理される対象体に直接コーティングされることができる。前記コーティングされたナノ粒子はエッチング工程などを用いて除去できる。
【0044】
本発明を特定の具体的な実施形態や実施例を参照しながら詳細に説明してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲や概念から逸脱しない限り、様々な変更や修飾が可能であることは当業者には理解されるであろう。
【0045】
加えて、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲や概念から逸脱しない限り、様々な修飾を施して、本発明の示唆に特定の材料または形態を適用することができる。したがって、本発明は、特定の実施形態や実施例は本発明を実施するにあたっての最良の形態であり、本発明は特許請求の範囲に記載される範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものであると解される。
【実施例】
【0046】
ナノ粒子の調製
2.5 ×10−4 M HAuCl及び2.5 ×10−4M tri−sodium citrateを含む20mlの水溶液(aqueous solution)を円錐状(conical)のフラスコ内に用意した。次に、0.6mlのアイスコールド0.1 M NaBH溶液(0.6 ml of ice cold 0.1 M NaBH solution)を前記水溶液に攪拌しながら一度に全て添加した。この溶液はNaBH添加直後ピンク色に変わりながら粒子形成が現れた。この溶液中の粒子達は製造後2−5時間内にシード(Seed)として使用した。
【0047】
清潔なテストチューブで2.5×10−4 M HAuCl及び0.1 M cetyltrimethylammonium bromide (CTAB)を含む10mlの成長溶液 (growth solution)を新たに用意され0.1M アスコルビン酸(ascorbic acid)溶液0.05mlと混合した。次に、0.025mlの3.5nmシード溶液が加えられた。攪拌は施さなかった。5〜10分内に溶液の色が、赤みがかった褐色に変わり、ロッド状のAuナノ粒子が得られた。得られた水溶液にはロッド状の金ナノ粒子がよく分散されていった。なお、当該ナノ粒子をTEM gridに乗せてからTEMにより直径と長さを測定した。当該ロッド状のナノ粒子は、直径が10nmで長さが60nmであった。ロッド状のナノ粒子の縦横の比(acpect ratio)はCATB濃度及び熟成時間(aging time)を異ならせて調節できるものである。
【0048】
ナノ粒子含有膜の調製
上記製造したよく分散されたロッド状のAuナノ粒子水溶液を室温〜50℃の間の温度でドロップキャスティング(drop casting)し膜を形成した。この際、当該Auナノ粒子を含有する膜の厚さは500nmであった(膜の厚さは約100nm〜数百マイクロンに当たり、この厚さを調整可能である)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一つの具現例において、赤外線透明フィルムにコーティングされたナノ粒子を示す概略図である。
【図2a】本発明の一つの具現例において、Auを含むナノ粒子の模様を示す図である。
【図2b】図2aのAuナノ粒子のUV−Vis−NIR 吸光度スペクトルである。
【図3】本発明の一つの具現例において、2W、800nm波長のレーザに露出される場合基板の温度プロファイルを示すグラフである。
【図4】本発明の一つの具現例において、12W、800nm波長のレーザに露出される場合基板の温度プロファイルを示すグラフである。
【図5】本発明の一つの具現例において、熱伝達媒体の光電池への応用例を示す概略図である。
【図6】本発明の一つの具現例において、プラスチック基板を持つデバイスの焼きなまし過程に適用される熱伝達媒体を示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
10、50、60:赤外線(IR)透明フィルム
11、51、61:ナノ粒子含有膜
52、62:プラスチック基板
53:二酸化チタン(TiO)ペースト
63:有機物またはその他の物質がコーティングされた熱処理を必要とする部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体に熱を伝達する熱伝達媒体において、
複数個のナノ粒子を有するナノ粒子含有膜を含み、
前記ナノ粒子は、前記ナノ粒子含有膜に対して入射する光を吸収するものであり、かつ前記膜は光を吸収することにより発生する熱を前記対象体に伝達するものである、熱伝達媒体。
【請求項2】
前記ナノ粒子含有膜は、前記対象体に直接形成される、請求項1に記載の熱伝達媒体。
【請求項3】
前記ナノ粒子含有膜は、前記熱伝達後エッチングにより前記対象体から除去される、請求項2に記載の熱伝達媒体。
【請求項4】
前記ナノ粒子含有膜は、前記対象体上の中間層に形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項5】
前記ナノ粒子含有膜は赤外線(IR)透明フィルム上に位置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、Au、Cu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、およびNiからなる群から選択される少なくとも一つまたはこれらを混合して使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項7】
前記ナノ粒子含有膜は一定のパターンで配置され、前記パターンに対応する所定の位置に熱を伝達する請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項8】
特定波状において最大の吸光度を示すように、入射する光の波長により前記ナノ粒子の粒径を調節することにより前記熱伝達を制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項9】
前記ナノ粒子含有膜に対して入射する光は、可視光線領域または近赤外線領域の光である請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項10】
前記ナノ粒子含有膜は、プラスチック基板またはガラス基板上に位置するものであり、
プラスチック基板またはガラス基板に形成される前記ナノ粒子含有膜の焼きなまし(アニーリング)工程に前記熱伝達媒体が使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱伝達媒体。
【請求項11】
前記プラスチック基板またはガラス基板に塗布されるナノ粒子含有膜は、有機物、金属、炭素、または無機物を含む請求項10に記載の熱伝達媒体。
【請求項12】
前記プラスチック基板は、二酸化チタン(TiO)ペーストをコーティングしたプラスチック基板である請求項10または11に記載の熱伝達媒体。
【請求項13】
請求項1に記載の熱伝達媒体を使用する熱伝達方法。
【請求項14】
対象体に熱を伝達する方法であって、
複数個のナノ粒子を含むナノ粒子含有膜を形成する段階と、
前記ナノ粒子含有膜を光に露出させる段階、及び
入射された光を前記ナノ粒子が吸収することにより熱が生成され、当該熱を対象体に伝達する段階と、を含む熱伝達方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子含有膜を形成する段階において、前記ナノ粒子含有膜を前記対象体に直接形成する請求項14に記載の熱伝達方法。
【請求項16】
前記熱伝達する段階後、前記ナノ粒子含有膜をエッチングにより前記対象体から除去する請求項15に記載の熱伝達方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子含有膜形成段階において、前記ナノ粒子含有膜を前記対象体上の中間層に形成する請求項14〜16のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子含有膜形成段階において、前記ナノ粒子含有膜を赤外線(IR)透明フィルム上に位置させる請求項14〜17のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子含有膜形成段階において、前記ナノ粒子は、Au、Cu、Ag、Ti、Al、Pd、Pt、Rh、Ir、Fe、W、およびNiからなる群から選択される少なくとも一つまたはこれらを混合して使用する請求項14〜18のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項20】
前記ナノ粒子含有膜形成段階において、所定のパターンに対応する所定の位置に熱を伝達するよう前記ナノ粒子含有膜を前記所定パターンに配置する請求項14〜19のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項21】
特定波状において最大の吸光度を示すように、前記ナノ粒子の粒径を調節することにより前記熱伝達を制御する請求項14〜20のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項22】
前記光に露出する段階において、前記入射する光は、可視光線領域または近赤外線領域の光である請求項14〜21のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項23】
前記熱伝達方法に使用された熱伝達媒体は、プラスチック基板またはガラス基板に形成された前記膜の焼きなまし工程に使用される請求項14〜22のいずれか1項に記載の熱伝達方法。
【請求項24】
前記プラスチック基板またはガラス基板に形成されたナノ粒子含有膜は、有機物、金属、炭素、または無機物を含む請求項23に記載の熱伝達方法。
【請求項25】
前記プラスチック基板は、二酸化チタン(TiO)ペーストをコーティングしたプラスチック基板である請求項23また24に記載の熱伝達方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−62538(P2009−62538A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228611(P2008−228611)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】