説明

熱可塑性樹脂組成物とゴム組成物の積層ホース

【課題】熱可塑性樹脂組成物とジエン系ゴム組成物との接着に溶剤系接着剤を使用しないで製造される熱可塑性樹脂組成物とジエン系ゴム組成物との積層ホースを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層2と液状ポリマー組成物(b)からなる接着層3とジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層4とが、ならびに所望により補強層5および被覆層6が、この順に積層してなる積層ホースであって、該液状ポリマー組成物(b)が該熱可塑性樹脂組成物(a)中の熱可塑性樹脂が有する官能基(A)と親和性または反応性を有する官能基(B)を有し、かつ、ブタジエン単位中の1,2−結合単位含量が25mol%以上である変性液状ポリブタジエンを30質量%以上含有し、ならびに該液状ポリマー組成物(b)および/または該ジエン系ゴム組成物(c)が架橋剤を含む、ことを特徴とする積層ホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶剤系接着技術を用いて製造される、熱可塑性樹脂組成物とジエン系ゴム組成物との積層構造を有する積層ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
耐透過性、耐汚染性、耐水性、耐油性、耐熱性、耐寒性、耐摩耗性、柔軟性、加工性等を向上することを目的として2以上の層からなる積層構造を有する積層ホースは、気体、液体、超臨界流体等を通すためのホースとして一般的に使用されている。より具体的には、例えば、都市ガス、LPガス、燃料、二酸化炭素冷媒等を通すためのホースとして使用されている。
LPガス用の積層ホースの構造は、例えば、内層と外層とが接着層を介して積層されてなるものである。
内層は、例えば、ガスバリア性に優れるポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂または変性ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂組成物からなり、押出成形によって管状に成形される。
接着層は、通常、溶剤系接着剤を主成分としてなり、前記管状に成形された内層の表面に塗布される等して形成される。
外層は、例えば、柔軟で耐油性、耐摩耗性および耐老化性に優れるアクリロニトリルブタジエンゴム等のジエン系ゴム組成物からなり、前記接着層の上に被覆押出成形によって形成される。
さらに、補強層・カバーゴム層を積層して、未加硫の積層ホースが構成され、その後加硫されて、加硫済の積層ホースが製造される。
従来、内層と外層との接着には、有機溶剤を含有するゴムセメント等を使用する溶剤系接着技術が用いられてきた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年、産業界において、環境負荷低減の観点から、製造工程における脱VOC(揮発性有機化合物)化が進められている。
そのため、積層ホースの製造工程においても、有機溶剤系接着技術から、有機溶剤を使用しない無溶剤系接着技術に移行することが求められている。
【0005】
また、一般に、ジエン系ゴム組成物と熱可塑性樹脂組成物は相溶性に劣る。
さらに、ジエン系ゴム組成物の加硫条件において熱可塑性樹脂が未溶融状態である場合、熱可塑性樹脂の分子運動性が相対的に劣るため、積層ホースの内層に使用される熱可塑性樹脂組成物と外層に使用される未変性のジエン系ゴム組成物は接着性があまり良好でない。接着性が良好でないと、負圧等によってホース閉塞が発生するおそれがある。
【0006】
したがって、無溶剤系であり、しかも熱可塑性樹脂組成物からなる内層とジエン系ゴム組成物からなる外層の良好な接着性を得ることができる接着技術を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる内層(以下、「樹脂層」ともいう。)とジエン系ゴム組成物(c)からなる外層(以下、「ゴム層」ともいう。)との間に次のi)〜iii)の要件を具備する液状ポリマー組成物(b)からなる接着層(以下、単に「接着層」ともいう。)を介在させて未加硫の積層ホースを構成し、さらに加硫をすると(ただし、加硫剤はジエン系ゴム組成物(c)および/または液状ポリマー組成物(b)に含まれる。)、無溶剤系で、内層と外層との間の良好な接着性を得られることを知得した。
要件:
i)前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂が有する官能基(A)と親和性または反応性を有する官能基(B)を有する。
ii)ブタジエン単位中の1,2−結合単位含量が25mol%以上である。
iii)揮発性有機化合物を含まない。
【0008】
なお、発明者は、本発明の無溶剤系接着技術によって良好な接着性が得られる理由は、次の(イ)および(ロ)のメカニズムによるものであると考えているが、本発明の接着メカニズムは必ずしもこれに限定されるものではない。
(イ)熱可塑性樹脂の官能基(A)と変性液状ブタジエンの官能基(B)との間に、化学的および/または電気的な結合が形成される。
(ロ)ジエン系ゴムの炭素−炭素二重結合と変性液状ブタジエンの側鎖の炭素−炭素二重結合との間に、加硫によって、架橋が形成される。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものである。
〔1〕 熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層と液状ポリマー組成物(b)からなる接着層とジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層とを、この順に積層してなる積層ホースであって、該液状ポリマー組成物(b)が該熱可塑性樹脂組成物(a)中の熱可塑性樹脂が有する官能基(A)と親和性または反応性を有する官能基(B)を有し、かつ、ブタジエン単位中の1,2−結合単位含量が25mol%以上である変性液状ポリブタジエンを30質量%以上含有し、ならびに該液状ポリマー組成物(b)および/または該ジエン系ゴム組成物(c)が架橋剤を含む、ことを特徴とする積層ホース。
〔2〕 前記官能基(A)が、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の積層ホース。
〔3〕 前記官能基(B)が、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕または〔2〕に記載の積層ホース。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂組成物(a)が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂および変性ポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を10〜100質量%以上含み、前記ジエン系ゴム組成物(c)がアクリロニトリルブタジエンゴムを20〜100質量%含有する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層ホース。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層ホースを、前記熱可塑性樹脂組成物(a)の融点より低い温度で加硫して得られる積層ホース。
〔6〕 樹脂マンドレル上に熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層(2)を押出成形し、その上に液状ポリマー組成物(b)からなる接着層(3)を形成し、同時にまたは逐次その上にジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層(4)を押出成形し、次いで加硫する工程を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層ホースの製造方法。
〔7〕 熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層2と、液状ポリマー組成物(b)からなる接着層3と、ジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層4とをこの順に積層してなる積層構造を有する積層ホースの製造方法であって、マンドレル上に熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層を押出成形し、液状ポリマーコーティング装置を用いて該樹脂層上に液状ポリマー組成物(b)からなる接着層を均一な厚みで形成し、該接着層上にジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層を押出成形し、その後加硫する、〔6〕に記載の積層ホースの製造方法。
〔8〕 前記液状ポリマーコーティング装置がクロスヘッドダイおよび液状ポリマー組成物供給装置を有し、該供給装置から該クロスヘッドダイに前記液状ポリマー組成物(b)が定量供給されて、前記樹脂層上に均一な厚みで押し出される、〔7〕に記載の積層ホースの製造方法。
〔9〕 前記液状ポリマーコーティング装置が塗布部位およびサイジング部位を有し、該塗布部位において、樹脂層上に液状ポリマー組成物(b)からなる接着層を形成し、次いで、該サイジング部位において、接着層の厚みを所定の厚みに均一化するためのサイジング用通過孔が設けられたゴム状弾性を有する板状体を通過させることによって、樹脂層の上に所定の厚みを有する接着層を形成する、〔7〕に記載の積層ホースの製造方法。
〔10〕 液状ポリマーコーティング装置が連続多孔質弾性体圧着部位および液状ポリマー組成物供給装置を有し、該供給装置から該連続多孔質弾性体圧着部位に液状ポリマー組成物(b)を過不足無く供給し、該連続性多孔質弾性体圧着部位において連続多孔質弾性体を樹脂層表面に圧着し、液状ポリマー組成物(b)の均一な厚みの層を形成する、〔7〕に記載の積層ホースの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、従来使用されてきた、揮発性有機化合物を含有する溶剤系接着剤を使用することなく、熱可塑性樹脂組成物からなる内層とジエン系ゴム組成物からなる外層とを良好な接着性で接着し、積層ホースを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の積層ホースの一態様を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の積層ホースの別の一態様を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の積層ホースのまた別の一態様を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の積層ホースの製造方法における接着層の形成工程の一態様を表す概念図である。
【図5】図5は、本発明の積層ホースの製造方法における接着層の形成工程の別の一態様を表す概念図である。
【図6】図6は、本発明の積層ホースの製造方法における接着層の形成工程のまた別の一態様を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層ホースは、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層とジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層が液状ポリマー組成物(b)からなる接着層を挟んで積層されていればよく、樹脂層の内側に単層または二層以上からなる層をさらに積層してもよいし、ゴム層の外側に単層または二層以上からなる層をさらに積層してもよい。
【0013】
〈樹脂層〉
樹脂層は、後述する熱可塑性樹脂(a)を成形して形成される層である。成形方法は特に限定されないが、連続製造に適した押出成形法が好ましい。
【0014】
《熱可塑性樹脂組成物(a)》
熱可塑性樹脂は、ガスバリア性を担保でき、かつ、主鎖および/または側鎖の官能基(A)が後記する変性ブタジエンが有する官能基(B)と親和性または反応性を有すれば、特に限定されず、所望の機能・性能と加工性に応じて適宜選択することができる。
好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、またはこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。
熱可塑性樹脂組成物(a)中に熱可塑性樹脂は、10〜100質量%、好ましくは30〜80質量%含有される。
【0015】
上記ポリアミド系樹脂(PA)としては、脂肪族系ポリアミド樹脂、非晶質系ポリアミド樹脂、芳香族系ポリアミド樹脂またはこれらの混合物が例示される。
【0016】
脂肪族系ポリアミド樹脂としては、主鎖および側鎖に芳香族環を有しない構造のものであればよく、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ナイロン6−66共重合体、ナイロン6−610共重合体等のコポリアミドを例示でき、さらに、ナイロン6,6−ポリエチレングリコールブロック共重合体等のポリアミド系エラストマーも例示できる。
【0017】
芳香族系ポリアミド樹脂としては、主鎖および/または側鎖に芳香族環を有する構造のものであればよく、具体的には、メタまたはパラキシリレンジアミンと炭素数が4〜12程度のジカルボン酸とから縮重合されるポリキシリレン系重合体を例示できる。かかる重合体は、ガスバリア−性、低吸水性、低吸湿性等の特性を備えている。
【0018】
非晶質ポリアミド樹脂としては、結晶性がないものか、結晶性が乏しいものであれば特に制限されないが、一般的には、主鎖および/または側鎖に芳香族環を有する半芳香族系のポリアミド樹脂を例示でき、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸とヘキサメチレンジアミン等のジアミンとの重合体、三元共重合体等が例示できる。このような非晶質系ポリアミド樹脂は、高湿度環境下でのガスバリア性に優れている。
本発明のポリアミド系樹脂としては、脂肪族系ポリアミド樹脂が好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、またはこれらの共重合体が特に好ましい。良好なガスバリア性、成形性、柔軟性を有するからである。
市販のポリアミド系樹脂としては、例えば、アミラン(登録商標、東レ社製:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン)、リルサン(登録商標、アルケマ社製、ナイロン11、ナイロン12)を好ましく使用することができる。
【0019】
上記ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステル系樹脂を使用することができる。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等やこれらの混合物を挙げることができる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸として、炭素数2〜20のアジピン酸、セバシン酸、ドデカンカルボン酸等が、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が、脂環式ジカルボン酸として、シクロヘキサンジカルボン酸等が、それぞれ例示される。
【0020】
ジオール成分としては、脂肪族グリコール、脂環式グリコール等やこれらの混合物を挙げることができる。具体的には、脂肪族グリコールとして、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等が、脂環式ジオールとして、1,4−シクロヘキサンジオール等が、それぞれ例示される。
さらに、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレンオキサイドグリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート−ポリカプロラクトンブロック共重合体等のポリエステル系エラストマーも上記ポリエステル系樹脂に包含される。また、ポリエステル系樹脂は、無水マレイン酸、エポキシ等によって変性されたものを使用してもよい。
市販のポリエステル系樹脂としては、例えば、ハイトレル(登録商標、東レ・デュポン社製)、ボンドファーストVC−40(住友化学社製)を好ましく使用することができる。
【0021】
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)は、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体であれば特に限定されず、ガスバリア−性、成形性、柔軟性、熱安定性等の諸特性を勘案し、適宜選択することができるが、ガスバリア性と成形性を重視すれば、エチレン共重合比率が20〜50mol%のものが好ましく、30〜40mol%のものがより好ましい。
市販のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂としては、例えば、エバール(登録商標、クラレ社製、エチレン共重合率24〜48mol%)を好ましく使用することができる。エバールの中でもエチレン共重合比率が32〜38mol%のもの(F、C、Hグレード)を特に好ましく使用することができる。
【0022】
上記変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、その他共重合可能なもの、例えば、他のビニル系モノマー等との共重合体およびこれらの混合物に例示されるオレフィン系樹脂を、例えば、無水マレイン酸、エポキシ基で変性したものが例示される。
【0023】
かかるポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、低密度〜高密度の各種密度ポリエチレン(LLDPE(綿状低密度ポリエチレン、VLDPE(超低密度ポリエチレンを含む。)、ポリプロピレン、ポリブテンおよびこれらの相互共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等を例示できる。これらポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
これらのポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸又はエポキシ等で変性する方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラフト重合法等の、従来から公知の方法で行うことができる。また、変性ポリオレフィン系樹脂として市販されているものを購入して使用することもできる。
また、変性ポリオレフィン系樹脂は、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)等に例示される、オレフィン系モノマーとエポキシ基を有するモノマーとの共重合体を使用してもよい。
市販の変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、アドマー(登録商標、三井化学社製)、ボンドファースト(登録商標、住友化学社製)を好ましく使用することができる。
【0024】
官能基(A)は、官能基(B)と親和性または反応性を有するものであれば限定されない。
また、官能基(A)は、官能基(B)に対して求核性または求電子性を持つものが好ましく、求核性を持つものがより好ましい。
なお、官能基(A)を有する高分子化合物と、官能基(B)を有する高分子化合物とが、官能基(B)によって、全体として親和性または反応性を有すればよく、具体的に特定されなくともよい。
【0025】
官能基(A)としては、例えば、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、酸無水物基およびエポキシ基を挙げることができるが、当然、これらのみに限定されるものではない。
酸無水物基としては、例えば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基等のカルボン酸無水物基を挙げることができる。
【0026】
また、所望により熱可塑性樹脂組成物に含有させる添加剤としては、例えば、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
また、所望により、ゴム、熱可塑性エラストマー等の軟質成分を添加して柔軟性を与えることができる。
【0027】
〈接着層〉
接着層は、後述する液状ポリマー組成物(b)を前述の熱可塑性樹脂(a)からなる樹脂層の上に形成される層である。形成方法は特に限定されないが、押出成形、塗布等の公知方法を使用することができる。また、そのような公知方法を実施することができる「ポリマーコーティング装置」を用いて層を形成することも好ましい。
【0028】
《液状ポリマー組成物(b)》
本発明の液状ポリマー組成物(b)は、従来の溶剤系接着剤に代えて使用することができる。塗布量は特に限定されないが、組成物の粘度等によって適宜設定することができる。均一の厚みとなるように塗ることが好ましい。
液状ポリマー組成物(b)は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する液状ポリマーの各種変性物を含有する組成物である。
【0029】
かかる液状ポリマーとは、硫黄加硫系配合、すなわち、加硫剤としてイオウを用い、窒素原子を有する加硫促進剤と組み合わせる配合、または、イオウを用いず、イオウドナーとなりうるイオウ原子と窒素原子とを有する加硫促進剤を用いる配合により加硫されうるものであり、常温で液状であって、主鎖および側鎖に炭素−炭素二重結合を有するものであれば特に限定されない。例えば、イソプレン単位中に1,2−結合単位を含有する液状ポリイソプレン、ブタジエン単位中に1,2−結合単位を含有する液状ポリブタジエン等が挙げられる。
液状ポリマーの変性は、液状ポリマー分子に官能基(B)を導入することによって行う。導入方法は特に限定されないが、グラフト付加が好ましい。
【0030】
官能基(B)としては、官能基(A)と親和性または反応性を持つものであれば特に限定されないが、官能基(A)と官能基(B)とが反応して共有結合を形成するものが好ましい。官能基(B)としては、例えば、無水マレイン酸基等の酸無水物基、エポキシ基、末端イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等を挙げることができる。
官能基(B)は、官能基(A)の種類、反応性、立体障害等の諸条件を考慮して好適なものが適宜選択される。
【0031】
1,2−結合単位の含量は、25mol%以上であり、50〜95mol%の範囲が好ましく、75〜90mol%の範囲がより好ましい。ジエン系ゴム組成物(c)との架橋による接着性の観点からは、含量が高い方が好ましく、架橋硬化後の液状ポリマー組成物の柔軟性等の物性の観点からは、余り高くない方が好ましい。
さらに、本発明で使用する液状ポリマー組成物は、側鎖に炭素−炭素二重結合を持つ変性液状ポリマーを単独で、または2種以上の混合物で含有してもよく、他の変性または非変性の液状ポリマーを含有してもよい。
【0032】
他の非変性液状ポリマーとしては、具体的には、イソプレン単位中に1,2−結合単位を含有する液状ポリイソプレン、ブタジエン単位中に1,2−結合単位を含有する液状ポリブタジエン等の他、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体、液状アクリロニトリルブタジエン共重合体、液状シリコーンゴム、ヒドロキシ基末端変性ポリブタジエンおよびその水素添加物等が例示され、変性液状ポリマーとしては、具体的には、ヒドロキシ基末端変性ポリイソプレンおよびその水素添加物等のヒドロキシ基変性ポリマー;エポキシ変性ポリブタジエンなどのエポキシ基変性ポリマー;アクリレート変性ポリブタジエン等の(メタ)アクリレート基変性ポリマー;シラングラフトポリオレフィン、シラン末端ポリオレフィン等の加水分解性ケイ素基含有ポリオレフィン;無水マレイン酸変性ポリイソプレン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブテン、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合体等の酸無水物基変性ポリマー;カルボキシ変性ポリブタジエン、カルボキシ変性ポリイソプレン、カルボキシ基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体(CTBN)等のカルボキシ基変性ポリマー;アミノ基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体(ATBN)等のアミノ基変性ポリマーが例示される。
【0033】
本発明で使用する液状ポリマー組成物(b)は、溶剤を使用しないことが一つの特徴である。ここで溶剤とは、一般に接着剤に使用されるトルエン系、ケトン系等の低中沸点溶剤であり、沸点が150℃以下のものをいう。本発明の液状ポリマー組成物は溶剤を含まないので、作業性がよく、環境負荷を低減できる。
また、本発明で使用する液状ポリマー組成物(b)は、上記の変性液状ポリマーの含有量が100質量%であってもよいが、変性液状ポリマーの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を必要に応じて配合することができる。添加剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー等の充填剤、パラフィン系オイル等(プロセスオイル等)の軟化剤、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、接着助剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、ポリマー等が挙げられる。可塑剤を配合する場合は、可塑剤としては沸点が150℃以上のものが好ましい。
【0034】
変性液状ポリマーとしては、1,2−結合単位を25〜95mol%の範囲で含有する液状ポリブタジエンに無水マレイン酸基またはエポキシ基をグラフト付加したものが好ましい。熱可塑性樹脂組成物(a)およびジエン系ゴム組成物(c)との相溶性に優れるとともに、無水マレイン酸基またはエポキシ基の高い反応性によって、接着力が強力になるためである。極性基の含量は、それが無水マレイン酸基である場合には、変性液状ブタジエン中に2〜25質量%の範囲で含まれることが好ましく、それがエポキシ基である場合には、変性液状ブタジエン中にオキシラン酸素濃度5〜10質量%の範囲で含まれることが好ましく、それがアクリレート基である場合には、変性液状ブタジエン中に2〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、またはそれがメタアクリレート基である場合には、変性液状ブタジエン中に3〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0035】
市販の変性液状ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸変性されたNISSO−PB BN−1015(日本曹達社製)、ライコン、ライコボンド(商標登録、サートマー社製)エポキシ変性されたNISSO−PB JP−200(日本曹達社製)、アクリレート変性されたNISSO−PB TEA−1000、TE−2000(日本曹達社製)、ライカクリル(商標登録、サートマー社製)を好ましく使用することができる。
【0036】
〈ゴム層〉
ゴム層は、前述の液状ポリマー組成物(b)からなる接着層の上に、後述するジエン系ゴム組成物(c)を成形して形成される層である。成形方法は特に限定されないが、連続製造に適した押出成形法が好ましい。
【0037】
《ジエン系ゴム組成物(c)》
ジエン系ゴムは、硫黄加硫系配合、すなわち、加硫剤(架橋剤)としてイオウを用い、窒素原子を有する加硫促進剤と組み合わせる配合、または、イオウを用いず、イオウドナーとなりうるイオウ原子と窒素原子とを有する加硫促進剤を用いる配合により加硫されうるものであれば特に限定されない。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(高シスブタジエンゴム、低シスブタジエンゴム)(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(NBIR)、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム(NIR)、ブチルゴム(IIR)、ノルボルネンゴム(NOR)、クロロブチルゴム(CIIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(HNBR)、α-メチルスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(MSBR)、ビニルピリジン−ブタジエンとの状共重合体ゴム(PBR)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(PSBR)が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)は、機械的強度に優れ、また、耐薬品性、耐熱性が高いことから、特に好ましい場合がある。
かかるアクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が35〜85のものが好ましく、また、結合アクリロニトリル量中心値としては、18〜45質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。耐久性、成形性が優れるからである。
【0039】
本発明の液状ポリマー組成物(b)および/またはジエン系ゴム組成物(c)は、それぞれ独立に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を必要に応じて配合することができる。
添加剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー等の充填剤、パラフィン系オイル等(プロセスオイル等)の軟化剤、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、接着助剤、ポリマー等が挙げられる。
ただし、加硫剤(架橋剤)は、液状ポリマー組成物(b)もしくはジエン系ゴム組成物(c)のいずれかまたは両方に含まれる。
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土等が挙げられる。
これらの添加剤の詳細は、特開2003−327750号公報の段落[0015]〜[0026]に記載されている。
【0040】
ここで、本発明の積層ホースの好適な実施態様の例を図1〜3を用いて説明する。図1〜3は、積層ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
【0041】
図1に示すように、本発明の積層ホース101は、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層2、液状ポリマー組成物(b)からなる接着層3およびジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層4を有する。所望により、ゴム層4の外側に補強層5およびカバーゴム層6を有してもよい。
【0042】
また、図2に示すように、本発明の積層ホース102は、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層2の内側に、さらに、液状ポリマー組成物(b)からなる接着層7およびジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層8を有してもよい。
【0043】
さらに、図3に示すように、本発明の積層ホース103は、ゴム層4の外側に、液状ポリマー組成物(b)からなる接着層9、ナイロン等の材料である補強材料10および液状ポリマー組成物(b)からなる接着層11からなる補強層12およびカバーゴム層6を有してもよい。
【0044】
ここで、補強層5は、硬鋼線(例えば、ブラスメッキワイヤー、亜鉛メッキワイヤー等)の金属材料を例示することができるが、補強材料10として後述する繊維材料であってもよい。
【0045】
積層ホース102の場合は、樹脂層2の内側にさらに接着層7を介してゴム層8を有するので、ガスバリア層である樹脂層2が保護され、流体中に樹脂層2を腐食または劣化させる成分を含む場合等に好適である。
【0046】
積層ホース103は、補強材料10に、ナイロン製のポリアミド系樹脂繊維、PET、PEN等のポリエステル系樹脂繊維、芳香族ポリアミド系樹脂繊維、等を用いれば、接着層9、11を介して、ゴム層4と補強材料10とカバーゴム層6とを強固に接合することができ、LPG用ホース、パワステ用ホース、AC用ホース等に好適である。
【0047】
[積層ホースの製造方法]
本発明の積層ホースの製造方法では、いわゆるVOC(揮発性有機化合物)である溶剤を含有する溶剤系接着剤を使用しないので、溶剤が揮発しない。
そのため、従来のように、従業者が溶剤に曝露することを避けるために工場の換気を頻繁に行って揮発した溶剤を工場外に排出することがなく、環境負荷が小さいという利点がある。
さらに、接着剤として使用される液状ポリマー組成物(b)は、揮発成分を含まないので、製造時に経時的な濃度変化が起こりにくくなり、従来と比較して、品質を安定させることが容易になるという利点がある。
本発明の積層ホースの製造方法は、概略を述べると、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂チューブを成形し、その表面に液状ポリマー組成物(b)を均一に塗布し、さらにその上にジエン系ゴム組成物(c)からなるゴムチューブを成形し、その後(a)の融点よりも低温の条件で加硫することによって、本発明の積層ホースを製造する。
【0048】
以下に製造方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定して理解されるべきものではない。
【0049】
《押出成形法》
(1)図4は、本発明の積層ホースの製造方法の一態様のうち、接着層を押出成形法によって形成して、未加硫の積層ホースを製造する工程を表すものである。
まず、単軸の押出成形機を用いて、クロスヘッドダイ31から熱可塑性樹脂組成物(a)を樹脂マンドレル21上に押し出して樹脂層22を押出成形する。
次いで、クロスヘッドダイ32から液状ポリマー組成物(b)を樹脂層22上に被覆押出して接着層23を形成する。液状ポリマー組成物の定量供給装置35とクロスヘッドダイ32をあわせ、「液状ポリマーコーティング装置」という場合がある。
次いで、クロスヘッドダイ33からジエン系ゴム組成物(c)を接着層26上に被覆押出してゴム層24を形成する。
各層の厚みは、それぞれ規定された均一な厚みとすることが望ましい。
未加硫の積層ホースを製造した後、加硫することによって加硫済の積層ホースを製造することができる。
(2)図示していないが、2機以上の押出成形機を用いて、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層と液状ポリマー組成物(b)からなる接着層を、マンドレル側からこの順に配置するように共押出成形し、さらにクロスヘッドダイを用いて液状ポリマー組成物(b)からなる接着層の上にジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層を押出成形し、樹脂層−接着層−ゴム層からなる積層ホース状積層構造とした後、加硫することによって加硫済の積層ホースを製造することができる。
(3)図示していないが、3機以上の押出成形機を用いて、熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層と液状ポリマー組成物(b)からなる接着層とジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層を、この順にマンドレル側から配置するように共押出成形し、樹脂層−接着層−ゴム層からなるホース状積層構造とした後、加硫することによって加硫済の積層ホースを製造することができる。
【0050】
《サイジング法》
図5は、一定の厚みを有する接着層を形成する工程の一態様を示すものである。
図5(A)は斜視図を、図5(B)は断面図を、それぞれ示している。
図5(A)、(B)に示すように、まず、樹脂マンドレル41上の樹脂層42の表面に、液状ポリマー組成物(b)を塗布して接着層43を形成する。
次に、所定の外径にするためのサイジング用通過孔が設けられたゴム状弾性を有する板状体51を通過させる。
そうすると、接着層43の厚みが調製され、樹脂層31の上に所定の厚みを有する接着層44が形成される。ここで、板状体51を有し、接着層を形成する工程を行う装置を、「液状ポリマーコーティング装置」という場合がある。
その次に、図4に示したように、クロスヘッドダイを用いて、接着層44の上にジエン系ゴム組成物(c)を被覆押出成形し、加硫前の積層ホースを製造する。
その後、加硫することによって加硫済の積層ホースを製造することができる。
【0051】
《含浸圧着法》
図6は、一定の厚みを有する接着層を形成する工程の一態様を示すものである。
図6に示すように、まず、樹脂マンドレル61上の樹脂層62の表面に、液状ポリマー組成物(b)を含浸した連続多孔質弾性体61を圧着する。
そうすると、樹脂層62の上に所定の厚みを有する接着層63が形成される。ここで、連続多孔質弾性体61を有し、接着層を形成する工程を行う装置を、「液状ポリマーコーティング装置」という場合がある。
その次に、図4に示したように、クロスヘッドダイを用いて、接着層63の上にジエン系ゴム組成物(c)を被覆押出成形し、加硫前の積層ホースを製造する。
その後、加硫することによって加硫済の積層ホースを製造することができる。
【0052】
《加硫》
公知の方法を使用することができる。熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度であれば、温度は特に限定されない。例えば、125〜200℃(ただし、熱可塑性樹脂組成物の融点以下に限る。)で約5〜200分間、加熱加硫する。加硫方法は特に限定されないが、加硫缶加硫法を使用し、温度125℃〜160℃、圧力1〜10MPa、時間30〜90分の加硫条件とすることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0054】
[積層体の接着強度試験]
本試験は実施例1〜6および比較例1〜4に関する。
<1.各成分の調製>
〈1−1〉熱可塑性樹脂組成物
熱可塑性樹脂組成物は、以下に記載の市販品をそのまま使用した。
《PA》
ポリアミド系樹脂組成物(アミラン CM6041XF、東レ社製)を使用した。
《epoxy−COPE》
エポキシ変性コポリエステル樹脂組成物(ボンドファースト VC−40、住友化学社製)を使用した。
《EVOH》
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(エバール F101B、クラレ社製)を使用した。
《E−GMA》
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体樹脂組成物(ボンドファースト E、住友化学社製)を使用した。
《EVA−MAH》
無水マレイン酸グラフト変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂組成物(HPR VR102、三井・デュポンポリケミカル社製)を使用した。
〈1−2〉液状ポリマー組成物
液状ポリマー組成物は、以下に記載の市販品をそのまま使用した。
《変性液状PB1》
無水マレイン酸基変性液状ポリブタジエン(NISSO−PB BN1015、日本曹達社製)を使用した(この組成物を、以下「変性液状PB1」という。)。官能基(B)は、無水マレイン酸基である。
《変性液状PB2》
エポキシ基変性液状ポリブタジエン(NISSO−PB JP200、日本曹達社製)を使用した(この組成物を、以下「変性液状PB2」という。)。官能基(B)は、エポキシ基である。
《変性液状PB3》
アクリレート基変性液状ポリブタジエン(NISSO−PB TEA−1000、日本曹達社製)を使用した(この組成物を、以下「変性液状PB3」という。)。官能基(B)は、アクリレート基である。
《変性液状PB4》
カルボキシル基変性液状ポリブタジエン(NISSO−PB C−1000、日本曹達社製)を使用した(この組成物を、以下「変性液状PB4」という。)。官能基(B)は、カルボキシル基である。
《変性液状NBR》
アミノ基末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(HYCAR ATBN 1300×16、宇部興産社製)を使用した(この組成物を、以下「変性液状NBR」という。)。官能基(B)は、アミノ基である。
〈1−3〉ジエン系ゴム組成物
《NBR系ゴム組成物》
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(Nipol 1042、日本ゼオン社製)100質量部、カーボンブラック(GPFカーボン、新日化カーボン社製)40質量部、ステアリン酸(ビーズステアリン酸NY、日本油脂社製)2質量部、老化防止剤(ノクラック224、大内新興化学工業社製)2質量部、および加硫剤(油処理イオウ、軽井沢精錬所社製)5質量部を、バンバリーミキサーを用いて100℃で混練し、ジエン系ゴム組成物(この組成物を、以下「NBR系ゴム組成物」という。)を調製した。
【0055】
<2.試験サンプルの作製>
〈被着体1〉
前述のとおり調製した熱可塑樹脂組成物を、それぞれ、熱プレスを用いて、200〜230℃の条件下で厚さ0.5mmの熱可塑性樹脂組成物からなるシートを作成した。得られたそれぞれのシートを、縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(切り出したシートを、以下「被着体1」という。)。
〈被着体2〉
前述のとおり調製した「NBR系ゴム組成物」を、熱プレスを用いて、100℃の条件下で厚さ2mmの未加硫のシートを得た。得られたシートを、縦150mm×横150mmのサイズで切り出した(切り出したシートを、以下「被着体2」という。)。
〈接着剤〉
前述の液状ポリマー組成物をそのまま使用した(以下、「接着剤」ともいう。)。
〈接着力評価試験用サンプル〉
被着体1(150mm×150mm×0.5mm)の片面に液状ポリマー組成物(接着剤)を塗布した(塗布量 100g/m)。
次いで、被着体2(150mm×150mm×2mm)を貼り合わせた。
その後、加硫(148℃×45分間)行い、加硫済の積層体を作製した。
前記の積層体を25mm幅に切り出し、接着力評価用積層体サンプルを調製した。
実施例1〜6および比較例1〜4における、被着体1および2ならびに接着剤の組合せを第1表に記載して示す。
【0056】
<3.試験方法>
前述のとおりにして調製した接着力評価用積層体サンプルを用いて、23℃および50%RHの環境下、測定器具として引張試験機(オートグラフAGS−5kNG、(株)島津製作所製)を用いて、つかみ具移動速度50mm/分の条件で、接着力評価用積層体サンプルの180度はく離試験(JIS K 6854−2:1999)を行い、接着強度を測定した。
破壊の様式は、JIS K 6866:1999によって記載した。
接着力の判定は、接着強度3N/mm以上を優良(◎)、3N/mm未満を不良(×)とした。
【0057】
4.試験結果
接着力評価試験の結果を第1表にまとめた。
【0058】
5.試験結果の評価
第1表から明らかなように、実施例1〜6の積層体サンプルは、比較例1〜4の積層体サン2プルに比べて接着強度が高く、いずれもその値が3N/mm以上であり、接着性に優れていた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
[積層ホースの接着強度試験]
本試験は実施例7〜11に関する。
<1.組成物>
熱可塑性樹脂組成物(a)として、ポリアミド系樹脂組成物(PA)、エポキシ変性コポリエステル樹脂組成物(epoxy−COPE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(EVOH)、およびエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体樹脂組成物(E−GMA)を選択し、使用した。
また、液状ポリマー組成物(b)として、ベースポリマーが「1,2−ポリブタジエン」であって、官能基(B)が無水マレイン酸基である「変性液状PB1」または官能基(B)がエポキシ基である「変性液状PB2」を選択し、使用した。
ジエン系ゴム組成物(c)は、前述の「NBR系ゴム組成物」を使用した。
【0062】
<2.試験用サンプルの作製>
〈2−1〉積層ホース
直径16mmの樹脂マンドレル上に、樹脂用押出し機およびクロスヘッドダイからなる被覆装置を用いて厚さ0.5mmで熱可塑性樹脂組成物を押出しチューブ状に成形した。
次に、その外側に液状ポリマー組成物を塗布して接着層を形成した(塗布量 100g/m)。
その次に、ゴム用押出し機およびクロスヘッドダイからなるゴム組成物被覆装置を用いて、厚さ1.5mmでジエン系ゴム組成物を被覆し、3層構造からなる未加硫の積層ホースを製造した。
その後、加硫缶を用い、前記の未加硫の積層ホースを、150℃、45分間加熱し、加硫済の積層ホースを作製した。
〈2−2〉積層ホースサンプル
加硫積層ホースから樹脂マンドレルを引き抜き、長手方向に半分に切断し、幅25mm×長さ150mmの接着力評価用積層ホースサンプルを調製した。
実施例7〜11の各試験用サンプルの内層、接着層および外層に用いた組成物は、第2表に示すとおりである。
【0063】
<3.接着強度試験>
前述のとおりにして調製した接着力評価用積層ホースサンプルを用いて、23℃および50%RHの環境下、測定器具として引張試験機(オートグラフAGS−5kNG、(株)島津製作所製)を用いて、つかみ具移動速度50mm/分の条件で、接着力評価用積層体サンプルの180度はく離試験(JIS K 6854−2:1999)を行い、接着強度を測定した。接着力の判定は、接着強度3N/mm以上を優良(◎)、3N/mm未満を不良(×)とした。
【0064】
<4.試験結果>
第2表に実施例7〜11の各試験サンプルについての接着力評価試験結果を示す。
【0065】
<5.試験結果の評価>
第2表から明らかなように、実施例7〜11の積層ホースサンプルは、いずれもそのはく離強度が3N/mm以上であり、接着性が良好であった。
【0066】
【表3】

【符号の説明】
【0067】
101,102,103 積層ホース
2,22,42,62 樹脂層
3,7,23,43,44,63 接着層
4,8,24 ゴム層
5,12 補強層
6 カバーゴム層
10 補強材料
21,41,61 樹脂マンドレル
31,32,33 クロスヘッドダイ
34 熱可塑性樹脂組成物(a)の定量供給装置
35 液状ポリマー組成物(b)の定量供給装置
36 ジエン系ゴム組成物(c)の定量供給装置
51 板状体
71 連続多孔質弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層と液状ポリマー組成物(b)からなる接着層とジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層とを、この順に積層してなる積層ホースであって、該液状ポリマー組成物(b)が該熱可塑性樹脂組成物(a)中の熱可塑性樹脂が有する官能基(A)と親和性または反応性を有する官能基(B)を有し、かつ、ブタジエン単位中の1,2−結合単位含量が25mol%以上である変性液状ポリブタジエンを30質量%以上含有し、ならびに該液状ポリマー組成物(b)および/または該ジエン系ゴム組成物(c)が架橋剤を含む、ことを特徴とする積層ホース。
【請求項2】
前記官能基(A)が、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の積層ホース。
【請求項3】
前記官能基(B)が、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の積層ホース。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物(a)が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂および変性ポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を10〜100質量%以上含み、前記ジエン系ゴム組成物(c)がアクリロニトリルブタジエンゴムを20〜100質量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層ホースを、前記熱可塑性樹脂組成物(a)の融点より低い温度で加硫して得られる積層ホース。
【請求項6】
樹脂マンドレル上に熱可塑性樹脂組成物(a)からなる樹脂層を押出成形し、その上に液状ポリマー組成物(b)からなる接着層を形成し、同時にまたは逐次その上にジエン系ゴム組成物(c)からなるゴム層を押出成形し、次いで加硫する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の積層ホースの製造方法。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269485(P2010−269485A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122080(P2009−122080)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】