説明

熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、熱発泡性積層体、発泡体およびその製造方法

【課題】低温の加熱で発泡することのできる、熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、熱発泡性積層体、発泡体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】発泡性樹脂粒子と樹脂組成物とを含有し、発泡性樹脂粒子が、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されている熱発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シート1を、加熱により発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、熱発泡性積層体、発泡体およびその製造方法、詳しくは、各種産業分野で用いられる熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、熱発泡性積層体、発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱発泡性樹脂組成物は、樹脂および発泡剤を含有しており、加熱によりガスを発生させることにより、発泡可能であり、かかる発泡を利用して、各種産業分野に広く用いられている。
【0003】
例えば、常温で固体である成膜性樹脂および熱膨張カプセルを含有する加熱膨張性接着剤組成物を、複数の被着体の間に配置し、その後、それらを加熱して、成膜性樹脂を発泡および硬化させることによって、被着体同士を接着することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、ポリオレフィンおよび熱膨張性微小球を含有する補強剤組成物を、車体の鋼板に配置し、その後、それらを加熱して、ポリオレフィンを発泡および硬化させることによって、鋼板を補強することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、上記した特許文献1および2の熱発泡性樹脂組成物において、発泡剤として用いられる熱膨張性カプセルおよび熱膨張性微小球は、ガスバリアー性を有する熱可塑性樹脂からなる殻(シェル)と、その殻に内包される低沸点物質(コア、熱膨張剤)とを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−106963号公報
【特許文献2】特開2004−244508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1および特許文献2の熱発泡性樹脂組成物においては、成膜性樹脂およびポリオレフィンを発泡させるには、加熱によって、低沸点物質(コア)を熱膨張させるとともに、殻(シェル)を溶融または軟化させる必要がある。殻を十分に溶融または軟化させるためには、熱発泡性樹脂組成物を高温で加熱する必要がある。
【0008】
そのため、そのような熱発泡性樹脂組成物が配置される被着体または鋼板などの部材には、十分な耐熱性が必要とされる一方、かかる部材における耐熱性が不十分であれば、そのような部材(例えば、プラスチックなど)の保護の観点から、低温で加熱する必要があり、そのため、熱発泡性樹脂組成物の十分な発泡、さらには、それによる十分な接着または補強を図ることができないという不具合がある。
【0009】
本発明の目的は、低温の加熱で発泡することのできる、熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、熱発泡性積層体、発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、発泡性樹脂粒子と樹脂組成物とを含有し、前記発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、120℃以下の加熱で発泡することが好適である。
【0012】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記樹脂組成物が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好適である。
【0013】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、発泡後における密度が、0.02〜1.5g/cmであることが好適である。
【0014】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記熱膨張性物質の沸点が、−160〜120℃であることが好適である。
【0015】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記発泡性樹脂粒子は、前記樹脂のモノマーを、前記熱膨張性物質の存在下で重合させることにより得られることが好適である。
【0016】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記樹脂が、ポリスチレンおよび/またはポリスチレンコポリマーであることが好適である。
【0017】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記発泡性樹脂粒子の含有割合が、前記樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜350重量部であることが好適である。
【0018】
また、本発明の熱発泡性樹脂シートは、上記した熱発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の熱発泡性積層体は、発熱可能な発熱部材と、前記発熱部材に接触するように積層される上記した熱発泡性樹脂シートとを備えることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の熱発泡性積層体では、前記発熱部材は、通電により発熱することが好適である。
【0021】
本発明の熱発泡性積層体では、前記発熱部材は、マイクロ波の照射により発熱することが好適である。
【0022】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性樹脂組成物を加熱により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性樹脂シートを加熱により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることにより得られることが好適である。
【0025】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材に通電して、前記発熱部材を発熱させることによって、前記熱発泡性シートを加熱して発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材にマイクロ波を照射して、前記発熱部材を発熱させることによって、前記熱発泡性シートを加熱して発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0027】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性樹脂組成物を、加熱により発泡させることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性樹脂シートを、加熱により発泡させることを特徴としている。
【0029】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴としている。
【0030】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材に通電して、前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴としている。
【0031】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性積層体の前記発熱部材にマイクロ波を照射して、前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴としている。
【0032】
また、本発明の発泡体の製造方法では、120℃以下の温度に加熱することが好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の熱発泡性樹脂組成物および熱発泡性樹脂シートによれば、発泡性樹脂粒子は、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有されているので、低温の加熱でも、熱膨張性物質を膨張させることができる。
【0034】
そのため、本発明の発泡体の製造方法によれば、低温の加熱でも、樹脂組成物を確実に発泡させることができる。
【0035】
その結果、本発明の熱発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シート、および、それを備える熱発泡性積層体を、低温の加熱が要求される各種産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の発泡体の製造方法の一実施形態を説明するための断面図であり、(a)は、熱発泡性樹脂シートを中空部材の内部空間に配置する工程、(b)は、熱発泡性樹脂シートを加熱による発泡させる工程を示す。
【図2】図2は、本発明の発泡体の製造方法の他の実施形態(通電により発熱部材を発熱させる態様)を説明するための断面図であり、(a)は、発熱部材(発熱部、絶縁体および金属外装板を備える態様)とそれに積層される熱発泡性樹脂シートとを備える熱発泡性積層体を中空部材の内部空間に配置する工程、(b)は、発熱部材に通電して、発熱部材を発熱させて、熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させる工程を示す。
【図3】図3は、本発明の発泡体の製造方法の他の実施形態(通電により発熱部材を発熱させる態様)を説明するための断面図であり、(a)は、発熱部材(発熱部からなる態様)とそれに積層される熱発泡性樹脂シートとを備える熱発泡性積層体を中空部材の内部空間に配置する工程、(b)は、発熱部材に通電して、発熱部材を発熱させて、熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させる工程を示す。
【図4】図4は、本発明の発泡体の製造方法の他の実施形態(マイクロ波の照射により発熱部材を発熱させる態様)を説明するための断面図であり、(a)は、発熱部材(マイクロ波吸収体を備える態様)とそれに積層される熱発泡性樹脂シートとを備える熱発泡性積層体を中空部材の内部空間に配置する工程、(b)は、発熱部材にマイクロ波を照射して、発熱部材を発熱させて、熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させる工程を示す。
【図5】図5は、実施例における発泡充填性の評価方法の概略説明図であり、(a)は、熱発泡性樹脂組成物からなる熱発泡性樹脂シートを試験鋼板の間に配置する工程、(b)は、熱発泡性樹脂シートを加熱により発泡させる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の熱発泡性樹脂組成物は、発泡性樹脂粒子と樹脂組成物とを含有している。
【0038】
本発明の熱発泡性樹脂組成物において、発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に、熱膨張性物質が含有(含浸)されている。
【0039】
樹脂は、熱膨張性物質を均一に含有でき、さらには、加熱によって硬化しにくい樹脂が挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0040】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーを含有し、例えば、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(PA、ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン・ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0041】
これら熱可塑性樹脂は、単独または2種以上併用することができる。
【0042】
熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、スチレン系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0043】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーを含有するモノマーを重合させることにより得られるスチレン系重合体(スチレン系ホモポリマー)である。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、および、α−メチルスチレン、環ハロゲン化スチレン、環アルキル化スチレン、2−ビニルトルエン(o−メチルスチレン)、3−ビニルトルエン(m−メチルスチレン)、4−ビニルトルエン(p−メチルスチレン)などのスチレン誘導体などが挙げられる。これらスチレン系モノマーは、単独使用または2種以上併用される。スチレン系モノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0044】
スチレン系重合体として、好ましくは、ポリスチレン(ポリスチレンホモポリマー)が挙げられる。
【0045】
また、スチレン系樹脂としては、例えば、上記したスチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な共重合性モノマーとのスチレン系共重合体(ポリスチレンコポリマー)が挙げられる。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)と、炭素原子1〜8個を有するアルコールとのエステル(つまり、(メタ)アクリレート)、ジメチルフマレート、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニル、エチレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独使用または2種以上併用される。共重合性モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエンが挙げられる。
【0046】
スチレン系共重合体として、好ましくは、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(つまり、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS)、および/または、アクリル酸メチル・スチレン共重合体)、アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)などが挙げられる。さらに好ましくは、MS、ASが挙げられる。
【0047】
MSは、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、(メタ)アクリル酸メチル含量が、例えば、10〜60重量%である。
【0048】
ASは、アクリロニトリルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、アクリロニトリル含量が、例えば、10〜60重量%である。
【0049】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(つまり、ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。
【0050】
樹脂は、中実(つまり、中空ではない)形状をなし、その密度は、例えば、0.9〜2.0g/cm、好ましくは、1.0〜1.5g/cmである。
【0051】
また、樹脂のガラス転移温度は、例えば、50〜110℃、好ましくは、80〜90℃である。
【0052】
熱膨張性物質は、加熱により膨張する物質であって、具体的には、後述する特定の温度で膨張する、つまり、気化(蒸発あるいは沸騰)する物質であって、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、不燃性ガスなどが挙げられる。
【0053】
炭化水素としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素が挙げられる。好ましく、飽和炭化水素が挙げられる。
【0054】
飽和炭化水素としては、例えば、直鎖状アルカン、分枝状アルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。
【0055】
直鎖状アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数1〜7の直鎖状アルカン(脂肪族炭化水素)が挙げられる。
【0056】
分枝状アルカンとしては、例えば、2−メチルプロパン(イソブタン)、2−メチルブタン(イソペンタン)、2,2−ジメチルプロパン(ネオペンタン)、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2,4−ジメチルペンタンなどの炭素数4〜7の分岐状アルカンが挙げられる。
【0057】
シクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの炭素数3〜7のシクロアルカンが挙げられる。
【0058】
飽和炭化水素として、好ましくは、直鎖状アルカンが挙げられる。
【0059】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン(CCl)などのクロロ炭化水素、例えば、ジフルオロメタン(CF)などのフルオロ炭化水素、例えば、フロン22(商標、CHClF)、フロン12(商標、CCl)、フロン113(商標、CClFCClF)などクロロフルオロ炭化水素が挙げられる。
【0060】
不燃性ガスとしては、例えば、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0061】
これら熱膨張性物質のうち、好ましくは、炭化水素が挙げられる。
【0062】
熱膨張性物質の沸点は、例えば、−160〜120℃、好ましくは、−50〜100℃、さらに好ましくは、−5〜70℃である。
【0063】
熱膨張性物質の沸点が上記した範囲を超える場合には、熱発泡性樹脂組成物の低温における発泡が困難となる場合がある。熱膨張性物質の沸点が上記した範囲に満たない場合には、熱膨張性物質を樹脂に均一に含有させることが困難となる場合がある。
【0064】
発泡性樹脂粒子は、上記した樹脂のモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。あるいは、上記した樹脂のモノマーを、溶媒の不存在下で、かつ、熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。
【0065】
好ましくは、樹脂のモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させる。
【0066】
溶媒としては、例えば、水などの水性溶媒、例えば、トルエンなどの有機溶媒などが挙げられる。好ましくは、水性溶媒が挙げられる。
【0067】
具体的には、発泡性樹脂粒子は、モノマーを、分散剤が配合され、かつ、熱膨張性物質が吹き込まれた(流入された)水性溶媒中に、水分散させながら、懸濁重合させることにより得る。上記した重合方法によれば、樹脂に熱膨張性物質を均一に含有させることができる。
【0068】
このようにして得られる発泡性樹脂粒子は、中実の球状(ビーズ状)または中実のペレット状、好ましくは、中実のビーズ状に形成されている。
【0069】
発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、0.10〜4.0mm、好ましくは、0.15〜2.0mmである。また、発泡性樹脂粒子の平均粒子径を、例えば、0.2〜4.0mm、好ましくは、0.4〜1.0mmに設定することもできる。
【0070】
発泡性樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲を超えると、意匠性および発泡性の均一性が低下する場合がある。発泡性樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲に満たないと、熱膨張性物質が容易に揮発してしまい、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0071】
そして、この発泡性樹脂粒子では、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されている。
【0072】
すなわち、発泡性樹脂粒子は、中実(中空でない)で粒状の樹脂の表面から内部にわたって、熱膨張性物質が浸透されている。
【0073】
熱膨張性物質の含有割合は、樹脂100重量部に対して、例えば、1〜10重量部、好ましくは、2〜8重量部である。
【0074】
これにより、発泡性樹脂粒子では、低温、具体的には、例えば、120℃以下(具体的には、70〜120℃)、また、110℃以下(具体的には、70〜110℃)、さらには、100℃以下(具体的には、70〜120℃)の温度(熱膨張開始温度)で熱膨張が開始する。
【0075】
また、熱膨張後の発泡性樹脂粒子の密度は、例えば、0.005〜0.5g/cm、好ましくは、0.01〜0.1g/cmである。
【0076】
発泡性樹脂粒子の100℃における熱膨張倍率は、熱膨張性物質の含有割合にもよるが、例えば、2〜200倍、好ましくは、10〜100倍である。
【0077】
このような発泡性樹脂としては、市販品(発泡性ビーズ)を用いることができ、例えば、「スチロダイヤ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「ヒートポール」(発泡性アクリロニトリル・スチレン共重合体ビーズ)、「クリアポール」(発泡性メチルメタクリレート・スチレン共重合体ビーズ)(以上、JSP社製)、「エスレンビーズ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「PNビーズ」(特殊発泡ポリスチレンビーズ)(以上、積水化成品工業社製)、「カネパール」(発泡性ポリスチレンビーズまたは発泡性ポリメチルメタクリレートビーズ、カネカ社製)などが挙げられる。
【0078】
本発明の熱発泡性樹脂組成物において、樹脂組成物は、例えば、ゴム、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を含有している。
【0079】
ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ポリイソブチレンゴム(PIB)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(BR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミド系ゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、ポリスルフィドゴムなどの合成ゴム、例えば、天然ゴムなどが挙げられる。
【0080】
ゴムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0081】
ゴムのうち、好ましくは、合成ゴム、さらに好ましくは、PIB、EPDM、シリコーンゴムが挙げられる。
【0082】
PIBは、イソブチレン(イソブテン)の重合により得られる合成ゴムである。
【0083】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合により得られる合成ゴムであり、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)に、さらにジエン類を共重合させることにより得られる。
【0084】
ジエン類としては、例えば、5−エチリデン−5−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0085】
EPDMのジエン含量は、例えば、1〜20重量%、好ましくは、3〜10重量%である。
【0086】
シリコーンゴムは、ポリシロキサン((−Si−O−))において、アルキル基および/アリール基などの有機基を含有する合成ゴムである。
【0087】
これらゴムの100℃におけるムーニー粘度は、例えば、0.5〜150ML1+4、好ましくは、1〜100ML1+4である。
【0088】
また、ゴムの重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)は、例えば、1000〜1000000、好ましくは、10000〜100000である。
【0089】
また、ゴムの密度は、例えば、0.8〜2.1g/cm、好ましくは、0.85〜2.0g/cmである。
【0090】
熱可塑性樹脂としては、上記した発泡性樹脂粒子の樹脂で挙げられた熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独使用または併用することができる。
【0091】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂(熱硬化性ポリイミド樹脂)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂(熱硬化性ウレタン樹脂)などが挙げられる。
【0092】
熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0093】
熱硬化性樹脂として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0094】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など)、ナフタレン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂など)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0095】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0096】
エポキシ樹脂として、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0097】
また、エポキシ樹脂は、エポキシ当量が、例えば、50〜20000g/eqiv.、好ましくは、100〜5000g/eqiv.である。
【0098】
また、熱硬化性樹脂(硬化前)の重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)あるいは分子量は、例えば、200〜3000000、好ましくは、300〜2000000である。
【0099】
また、熱硬化性樹脂の密度は、例えば、1.0〜1.5g/cm、好ましくは、1.1〜1.4g/cmである。
【0100】
上記した各成分(ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂)は、単独使用することができ、あるいは、2種以上併用することができる。
【0101】
ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が、それぞれ、単独使用される場合には、各成分の配合割合は、それぞれ、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、100重量部以下、好ましくは、90重量部以下である。
【0102】
また、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が併用される場合には、各成分の配合割合が、樹脂組成物100重量部に対して、それぞれ、例えば、80重量部以下、好ましくは、1〜50重量部である。
【0103】
また、熱発泡性樹脂組成物において、発泡性樹脂粒子の配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.1〜350重量部、好ましくは、5〜320重量部である。また、発泡性樹脂粒子の配合割合を、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.1〜130重量部、好ましくは、50〜100重量部に設定することもできる。
【0104】
発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲に満たないと、発泡倍率が過度に低くなり、樹脂組成物を十分に発泡させることができない場合がある。一方、発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲を超えると、発泡性樹脂粒子が樹脂組成物から脱落する場合がある。
【0105】
なお、樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、充填剤、硬化剤、架橋剤、加硫剤、その他の発泡剤(発泡性樹脂粒子を除く発泡剤)、さらには、発泡促進剤、硬化促進剤、架橋促進剤、加硫促進剤、揺変剤、滑剤、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤、粘着付与剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で添加することもができる。
【0106】
充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム(バライト)などが挙げられる。これら充填剤は、単独使用または併用することができる。充填剤の配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、1000重量部未満であり、重量の観点より、好ましくは、10〜700重量部、さらに好ましくは、20〜500重量部である。また、充填剤の配合割合を、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、100重量部未満、好ましくは、10〜70重量部、さらに好ましくは、20〜50重量部に設定することもできる。
【0107】
硬化剤としては、例えば、加熱により硬化する加熱硬化型硬化剤が挙げられ、具体的には、アミン化合物類、酸無水物化合物類、アミド化合物類、ヒドラジド化合物類、イミダゾール化合物類、イミダゾリン化合物類などが挙げられる。また、その他に、フェノール化合物類、ユリア化合物類、ポリスルフィド化合物類などが挙げられる。
【0108】
アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0109】
酸無水物化合物類としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0110】
アミド化合物類としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0111】
ヒドラジド化合物類としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどのジヒドラジドなどが挙げられる。
【0112】
イミダゾール化合物類としては、例えば、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0113】
イミダゾリン化合物類としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0114】
これら硬化剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、硬化剤と樹脂組成物(好ましくは、熱硬化性樹脂)との当量比にもよるが、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは、1〜40重量部である。
【0115】
架橋剤としては、例えば、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生して分子間または分子内に架橋結合を形成させるラジカル発生剤が挙げられる。より具体的には、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、1,1−ジターシャリブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリブチルパーオキシヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパ−オキシイソプロピル)ベンゼン、ターシャリブチルパーオキシケトン、ターシャリブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。架橋剤は、単独使用または併用することができる。架橋剤の配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜7重量部である。
【0116】
加硫剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物類、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、酸化亜鉛、ポリアミン類、オキシム類、ニトロソ化合物類、樹脂類、アンモニウム塩類などが挙げられる。加硫剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜3重量部である。
【0117】
その他の発泡剤としては、例えば、無機発泡剤、有機発泡剤などが挙げられる。無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0118】
有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物、例えば、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、4,4´−オキソビスベンゼンスルホニルカルバジド、p−トルエンスルホルニルアジドなどのアゾ化合物などが挙げられる。
【0119】
その他の発泡剤は、単独使用または2種以上併用することができ、その配合割合は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、例えば、100重量部以下、好ましくは、50重量部以下であり、通常、5重量部以上である。
【0120】
そして、熱発泡性樹脂組成物は、例えば、上記した樹脂組成物の各成分と、発泡性樹脂粒子とを同時に配合することにより、調製する。
【0121】
具体的には、上記したゴム、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂および必要により添加される添加剤と、発泡性樹脂粒子とを、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって混練することにより、混練物として熱発泡性樹脂組成物を調製する。
【0122】
この混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、樹脂組成物と発泡性樹脂粒子とを加熱する。
【0123】
あるいは、熱発泡性樹脂組成物は、まず、上記したゴム、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂および必要により添加される添加剤を配合して、樹脂組成物を調製し、その後、樹脂組成物に発泡性樹脂粒子を配合することにより、調製することもできる。
【0124】
具体的には、まず、上記したゴム、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂および必要により添加される添加剤を、上記と同様にして、混練することにより、樹脂組成物を調製する。混練では、例えば、70〜120℃、好ましくは、80〜110℃の温度で、樹脂組成物を加熱する。
【0125】
樹脂組成物の100℃におけるムーニー粘度は、例えば、0.5〜150(ML1+4)、好ましくは、1〜100(ML1+4)である。
【0126】
その後、樹脂組成物を、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度に冷却し、続いて、樹脂組成物に、発泡性樹脂粒子を配合する。
【0127】
具体的には、樹脂組成物と、発泡性樹脂粒子とを、上記と同様にして、混練することにより、混練物として熱発泡性樹脂組成物を調製する。
【0128】
この混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、樹脂組成物と発泡性樹脂組成物とを加熱する。
【0129】
その後、必要により、調製した混練物(熱発泡性樹脂組成物)を、例えば、カレンダー成形、押出成形、射出成形あるいはプレス成形などの成形方法によって、シート状などの所定形状に形成する。
【0130】
混練物の成形では、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)あるいは70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、混練物を加熱する。
【0131】
また、シート状に形成する場合には、そのシートの厚みは、例えば、0.1〜10mmである。
【0132】
これによって、熱発泡性樹脂組成物をシートとして得ることができる。つまり、熱発泡性樹脂シートを得ることができる。
【0133】
そして、本発明の熱発泡性樹脂組成物によれば、発泡性樹脂粒子が、樹脂に熱膨張性物質が含有されてなるので、低温の加熱でも、熱膨張性物質を樹脂において均一に膨張させることができる。
【0134】
そのため、低温の加熱でも、樹脂組成物を確実に発泡させることができる。
【0135】
すなわち、この熱発泡性樹脂組成物は、例えば、120℃以下の温度(具体的には、70〜120℃)で発泡する。さらには、熱発泡性樹脂組成物は、110℃以下の温度(具体的には、70〜110℃)で発泡し、さらにまた、100℃以下の温度(具体的には、70〜100℃)でも発泡する。
【0136】
そして、熱発泡性樹脂組成物は、上記した所望の温度(低温)に加熱して、発泡させることができる。
【0137】
その結果、本発明の熱発泡性樹脂組成物を、上記した発泡温度を超える場合に、熱発泡性樹脂組成物が配置される部材(例えば、熱可塑性樹脂(プラスチック)などからなる樹脂成形品など)が損傷または劣化するような、低温の加熱が要求される各種産業分野に用いることができる。
【0138】
例えば、上記した熱発泡性樹脂組成物が発泡した発泡体は、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する各種産業分野の産業製品の充填材として用いることができる。
【0139】
図1は、本発明の発泡体の製造方法の一実施形態を説明するための断面図である。
【0140】
次に、中空部材の内部空間に発泡体を充填する方法について、図1を参照して説明する。
【0141】
図1において、中空部材2の内部空間12に発泡体3を充填するには、例えば、中空部材2の内部空間12に、熱発泡性樹脂組成物からなる熱発泡性樹脂シート1を設置する。なお、熱発泡性樹脂シート1は、中空部材2の内面に接触するように設置される。
【0142】
その後、設置された熱発泡性樹脂シート1を、上記した中空部材2とともに加熱し、熱発泡性樹脂シート1を発泡させることにより、発泡体3を形成する。これにより、形成された発泡体3によって、中空部材2の内部空間12を充填する。
【0143】
熱発泡性樹脂シート1の加熱方法としては、特に限定されず、例えば、熱発泡性樹脂シート1が設置された中空部材2を乾燥機(例えば、熱風乾燥機などのオーブン)の熱風雰囲気(空気)下に放置(保存)する方法、例えば、上記した中空部材2を、加熱された液体(熱媒体)に浸漬する方法、例えば、上記した中空部材2に遠赤外線を照射する方法、例えば、化学反応の反応熱を利用する方法などが挙げられる。
【0144】
なお、上記した中空部材2の内部空間12に発泡体3を充填する方法と同様にして、上記した各種の部材の間に発泡体3を充填することができる。
【0145】
そして、上記した充填材は、上記した部材または中空部材に対する、補強、制振(防振)、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密、または、接着など、種々の効果を付与することができる。そのため、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する、例えば、補強材、制振材(防振材)、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材、または、接着材など、各種の産業製品の充填材として、好適に用いることができる。
【0146】
とりわけ、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車、電気製品、住宅製品などのシールに用いられる。その場合には、発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シートを、自動車、電気製品または住宅製品の隙間に取り付けた後、発泡させる。これにより、発泡体により、かかる隙間を充填する。つまり、熱発泡性樹脂シートは、好ましくは、自動車外装シール材、電気製品シール材、住宅用シール材などとして、自動車、電気製品、住宅製品などの各種部材の隙間をシールするためのシール材として用いられる。そして、発泡体を、自動車、電気製品または住宅製品の防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして、防振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密することができる。
【0147】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車の中空部材、具体的には、ピラーの制振、断熱、防音、補強に用いられる。その場合には、熱発泡性樹脂組成物から形成されるシート(熱発泡性樹脂シート)を、ピラーの内部空間に取り付けた後、加熱により発泡させる。そして、発泡体により、ピラーの内部空間を充填することにより、エンジンの振動および/または騒音、さらには、風きり音などが車室内に伝達されることを防止しながら、ピラーの補強を図ることができる。
【0148】
さらに、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車の構造部材、具体的には、車体鋼板、バンパ、インストルメントパネルなどの補強に用いられる。その場合には、まず、熱発泡性樹脂組成物から形成されるシート(熱発泡性樹脂シート)に、ガラスクロスなどから形成される拘束層を積層させることにより鋼板補強シートを作製する。次いで、作製した鋼板補強シートの熱発泡性樹脂シートを、上記した自動車の構造部材に貼着し、その後、加熱により発泡させる。そして、発泡体を備える鋼板補強シートにより、自動車の構造部材を補強することができる。
【0149】
一方、特許文献1の熱膨張性カプセルを混練して、混練物として熱発泡性樹脂組成物を調製する場合に、熱膨張性カプセルには、その混練時に、剪断力(シェア)がかかるので、シェルが破壊され、コアが流出し易くなる。その結果、混練物を加熱しても、樹脂を発泡させることが困難となる場合がある。
【0150】
しかしながら、本発明の発泡性樹脂粒子は、特許文献1のようなコアシェル構造でなく、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有される構造であるので、かかる発泡性樹脂粒子に、混練時における剪断力(シェア)がかかっても、熱膨張性物質が流出することを防止することができる。
【0151】
そのため、混練物を加熱すれば、樹脂組成物を確実に発泡させることができる。
【0152】
このようにして得られる発泡体は、その密度が、例えば、0.02〜1.5g/cm、好ましくは、0.05〜1.3g/cm、さらに好ましくは、0.06〜0.2g/cmである。また、発泡体の密度を、例えば、0.03〜1.0g/cm、好ましくは、0.05〜0.5g/cmに設定することもできる。なお、発泡体の密度は、JIS Z8807に準拠して測定される。なお、発泡体の密度は、JIS Z8807に準拠して測定される。
【0153】
発泡体の密度が上記した範囲外であれば、発泡体の充填性が低下する場合がある。
【0154】
また、発泡倍率(つまり、熱発泡性樹脂組成物の発泡時の体積発泡倍率)が、例えば、2〜30倍、好ましくは、2〜20倍、さらに好ましくは、5〜16倍である。
【0155】
発泡倍率は、[熱発泡性樹脂組成物(発泡前の熱発泡性樹脂組成物)の密度]/[発泡体(発泡後の熱発泡性樹脂組成物)密度]として算出される。
【0156】
図2および図3は、本発明の発泡体の製造方法の他の実施形態(通電により発熱部材を発熱させる態様)を説明するための断面図、図4は、本発明の発泡体の製造方法の他の実施形態(マイクロ波の照射により発熱部材を発熱させる態様)を説明するための断面図を示す。
【0157】
なお、以降の各図において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0158】
図1の実施形態では、熱発泡性樹脂シート1のみを上記した中空部材2の内部空間12に設置して、それらを加熱により発泡させているが、例えば、図2〜図4に示すように、発熱部材4と、発熱部材4の上に積層される熱発泡性樹脂シート1とを備える熱発泡性積層体5を上記した中空部材2の中空空間12に設置して、発熱部材4を発熱させることにより、熱発泡性樹脂シート1を加熱して発泡させることもできる。
【0159】
図2〜図4において、熱発泡積層体5は、シート状をなし、発熱部材4と、発熱部材4に接触するように積層される熱発泡性樹脂シート1とを備えている。
【0160】
発熱部材4は、例えば、通電、マイクロ波の照射、電磁誘導などによって発熱する発熱部6(図2において図示せず)を含んでいる。
【0161】
発熱部材4が、通電により発熱する発熱部6を含む場合には、図2に示すように、例えば、発熱部材4が、発熱部6と、発熱部6を埋設する絶縁体7と、絶縁体7を被覆する金属外装板8とを備えている。
【0162】
発熱部6は、例えば、電気抵抗性材料からなり、線状に複数形成されており、各発熱部6は、電源9に配線10を介してそれぞれ接続されており、電源9から配線10を介して通電されることにより発熱する。
【0163】
電気抵抗性材料としては、具体的には、例えば、ニッケル・クロム合金(ニクロム)、アルミニウム・鉄合金、タングステンなどが挙げられる。好ましくは、ニクロムが挙げられる。
【0164】
絶縁体7は、各発熱部6を埋設するように、シート状に形成されている。絶縁体7を形成する絶縁材料としては、例えば、雲母(マイカ)などのセラミックス材料が挙げられる。好ましくは、雲母が挙げられる。
【0165】
金属外装板8は、絶縁体7の表面を被覆するように形成されており、金属外装板8を形成する金属材料としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミなどが挙げられる。
【0166】
そのような発熱部材4として、市販品を用いることができ、例えば、ヒーター装置(商品名「坂口スペースヒーター」、坂口電熱社製)などを用いることができる。
【0167】
発熱部材4の厚みは、例えば、1〜10mmである。
【0168】
そして、図2(a)に示す発熱部材4と熱発泡性樹脂シート1とを備える熱発泡性積層体5を、中空部材2の中空空間12に、金属外装板8と中空部材2とが隣接するように、設置する。なお、電源9は、上記した中空部材2の外部に配置されており、中空部材2を貫通する配線10によって、発熱部6と接続されている。
【0169】
次いで、電源9から配線10を介して発熱部6に通電すると、発熱部6が発熱し、続いて、熱が絶縁体7および金属外装板8を順次伝導する。そして、金属外装板8を介して、熱発泡性樹脂シート1が加熱される。すると、図2(b)に示すように、発泡体3が形成され、これにより、形成された発泡体3によって、中空部材2の内部空間12を充填する。
【0170】
通電条件では、電圧が、例えば、1〜1000V、出力が、例えば、10〜1000W、通電時間が、例えば、1〜30分間である。また、通電電流は、交流および直流のいずれであってもよく、好ましくは、交流である。
【0171】
この方法によれば、熱発泡性積層体5の発熱部材4を発熱させて、熱発泡性樹脂シート1を加熱することにより、熱発泡性樹脂シート1を簡単に発泡させることができる。
【0172】
さらに、上記した通電条件に設定することにより、熱発泡性樹脂シート1を上記した低温(具体的には、120℃以下)で加熱することができる。
【0173】
また、図3に示す熱発泡性積層体5では、発熱部材4が発熱部6のみから形成されている。
【0174】
発熱部6は、例えば、シート状に形成されており、上記と同様の電気抵抗性材料から形成されている。発熱部6は、好ましくは、ニクロム、タングステンから形成されている。
【0175】
発熱部6の厚みは、例えば、0.5〜10mmである。
【0176】
そして、図3(a)に示す発熱部6からなる発熱部材4と熱発泡性樹脂シート1とを備える熱発泡性積層体5を、中空部材2の中空空間12に、発熱部材4と中空部材2とが隣接するように、設置する。
【0177】
次いで、電源9から配線10を介して発熱部6に上記と同様の通電条件で通電すると、発熱部材4が発熱し、熱発泡性樹脂シート1が加熱される。すると、図3(b)に示すように、発泡体3が形成され、これにより、形成された発泡体3によって、中空部材2の内部空間12を充填する。
【0178】
この方法によれば、熱発泡性積層体5の発熱部材4を発熱させて、熱発泡性樹脂シート1を加熱することにより、熱発泡性樹脂シート1を簡単に発泡させることができる。
【0179】
しかも、図3に示す発熱部材4は、図2に示す発熱部材4のように、発熱部材4に絶縁体7および金属外装板8を備える必要がないので、構成を簡易にすることができる。
【0180】
また、図3(a)の仮想線で示すように、電源9に配線10に代えて、電磁誘導加熱装置11を設けることもできる。
【0181】
すなわち、図3(a)において、電磁誘導装置11は、中空部材2の外部に配置されており、中空部材2を挟んで発熱部材4と対向配置されている。電磁誘導加熱装置11は、電磁誘導によって発熱部6を発熱する。
【0182】
そして、電磁誘導装置11によって、発熱部6が電磁誘導されて、発熱部材6が発熱する。これにより、熱発泡性樹脂シート1が加熱される。すると、図4(b)に示すように、発泡体3が形成され、これにより、形成された発泡体3によって、中空部材2の内部空間12を充填する。
【0183】
あるいは、発熱部材4が、マイクロ波の照射により発熱する発熱部6を含む場合には、図4に示すように、発熱部材4は、マイクロ波を吸収するマイクロ波吸収体からなっている。
【0184】
図4において、マイクロ波吸収体は、シート状をなし、マイクロ波吸収材料を含み、より具体的には、基材と、基材を被覆するマイクロ波吸収層とを備えている。
【0185】
基材は、シート状をなし、そのような基材を形成する材料としては、例えば、上記した樹脂、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、PETが挙げられる。
【0186】
基材の厚みは、例えば、0.1〜10mmである。
【0187】
マイクロ波吸収層は、マイクロ波吸収材料からなり、基材の表面(一方の表面および/または他方の表面)に形成されている。マイクロ波吸収材料としては、例えば、導電性物質、磁性体、極性樹脂などが挙げられる。好ましくは、導電性物質が挙げられる。
【0188】
導電性物質は、例えば、金属、カーボン系物質、ポリマー系物質などが挙げられる。
【0189】
金属としては、例えば、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、インジウム、または、それらの合金(黄銅、ステンレスなど)などが挙げられる。
【0190】
カーボン系物質としては、例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、例えば、天然グラファイト、合成グラファイト(人工グラファイト)などのグラファイトなどが挙げられる。
【0191】
ポリマー系物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンスルフィドなどの共役系導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0192】
上記した導電性物質のうち、好ましくは、金属系物質が挙げられ、さらに好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
【0193】
磁性体としては、例えば、強磁性体、反磁性体などが挙げられ、好ましくは、強磁性体、さらに好ましくは、軟質磁性フェライト(ソフトフェライト)、軟質磁性鉄類が挙げられる。
【0194】
極性樹脂は、例えば、シアノ基、ヒドロキシル基(水酸基)、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、塩素などの極性基を有する樹脂である。
【0195】
極性樹脂としては、例えば、極性ゴム、熱可塑性極性樹脂(ゴムを除く)、熱硬化性極性樹脂などが挙げられる。好ましくは、極性ゴム、より具体的には、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの合成極性ゴムが挙げられる。
【0196】
なお、マイクロ波吸収層が導電性物質(好ましくは、金属)から形成される場合には、マイクロ波吸収層は、例えば、スパッタリングなどの真空蒸着によって、基材の表面に形成される。
【0197】
マイクロ波吸収層の厚みは、例えば、0.1〜100μmである。
【0198】
そして、マイクロ波吸収体からなる発熱部材4と、発熱部材4に積層される熱発泡性樹脂シート1とを備える熱発泡性積層体5において、熱発泡性樹脂シート1を発泡させるには、熱発泡性積層体5を、発熱部材4が中空部材2に接触するように、中空部材2の中空空間12に設置して、その後、それらを公知のマイクロ波発生装置に投入する。そして、熱発泡性積層体5および中空部材2、好ましくは、発熱部材4に、マイクロ波を照射する。
【0199】
マイクロ波の照射条件では、マイクロ波の波長が、例えば、100μm〜1m、周波数が、例えば、300MHz〜3THz、マイクロ波の照射出力が、例えば、100〜2,000W、照射時間が、例えば、0.2〜30分間である。
【0200】
これにより、マイクロ波吸収体のマイクロ波吸収層がマイクロ波を吸収して発熱し、その熱が、熱発泡性樹脂シート1に伝導して、熱発泡性樹脂シート1が加熱され、熱発泡性樹脂シート1が発泡する。
【0201】
そして、図4に示す発熱部材4は、図2および図3に示す発熱部材4のように、電源9および配線10に接続する必要がないので、構成をより一層簡易にすることができる。
【0202】
さらに、上記したマイクロ波の照射条件に設定することにより、熱発泡性樹脂シート1を上記した低温(具体的には、120℃以下)で加熱することができる。
【0203】
なお、上記した図4の実施形態では、実線で示すように、発熱部材4の表面に、熱発泡性樹脂シート1を積層しているが、例えば、図4の仮想線で示すように、発熱部材4を、さらに、熱発泡性樹脂シート1の表面に積層することもできる。
【0204】
つまり、発熱部材4は、熱発泡性樹脂シート1の一方の表面および他方の表面の両面に積層されている。
【実施例】
【0205】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0206】
実施例1、8〜19、比較例1および2
各成分を、表1の配合処方に従って、ミキシングロールにて、50℃で、回転数10min−1、10分間混練して、混練物(熱発泡性樹脂組成物)を調製した。その後、調製した混練物を、50℃、圧力50kg/cmで、5分間プレスすることにより、厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを形成した。なお、実施例1については、厚み2mmの熱発泡性樹脂シートも形成した。
【0207】
実施例3〜7
混練温度およびプレス温度を、常温(20℃)に変更した以外は、実施例1と同様に処理することにより、厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを形成した。
【0208】
(評価)
(1) ムーニー粘度
上記した混練物の調製において、熱膨張カプセル、OBSHおよび発泡性樹脂粒子のいずれをも配合せずに、それら以外の成分を混練して得られた混練物について、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定した。その結果を表1に示す。
(2) 密度および発泡倍率
上記により得られた厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを、直径19mmの円形状に打ち抜いてサンプルを作製し、その後、作製したサンプルを、100℃のオーブンに投入して、15分間加熱することにより、サンプルを発泡させて、発泡体を得た。
【0209】
発泡前後(発泡前のサンプルおよび発泡後の発泡体)の密度を、JIS Z8807に準拠してそれぞれ測定し、それらから発泡倍率を算出した。それらの結果を表1に示す。
(3) 発泡充填性
上記により得られた厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを、長さ50mm、幅20mmのサイズに切り取ってサンプル(1)を作製し、その後、作製したサンプル(1)を、図5(a)に示すサイズ(長さ50mm、幅25mm)の試験鋼板(2)の間において、下側の試験鋼板(2)の上面の中央に載置した。
【0210】
その後、実施例1〜18および比較例1、2から得られたサンプル(1)については、100℃のオーブンに投入し、また、実施例19から得られたサンプル(1)については、120℃オーブンに投入して、それぞれ、15分間加熱することにより、図5(b)に示すように、サンプル(1)を発泡させて、発泡体(3)を得た。
【0211】
そして、試験鋼板(2)の間における発泡体(3)の発泡充填性を目視にて下記の基準にて評価した。その結果を表1に示す。
【0212】
(評価基準)
○:発泡充填性が良好であった。
【0213】
×:隙間(未充填部分)があり、発泡充填性がやや不良であった。
(4) 通電およびマイクロ波の照射による発泡性
A.通電による発泡
A−1.ヒーター装置
ニクロムからなる線状の発熱部、発熱部を埋設し、マイカからなるシート状の絶縁体、および、絶縁体を被覆する金属外装板を備える発熱部材(ヒーター装置:商品名「坂口スペースヒーター」、容量60W、坂口電熱社製)を用意した。なお、発熱部材の厚みは4mmであり、サイズが50mm×50mmであった。
【0214】
別途、上記により得られた実施例1の厚み2mmの熱発泡性樹脂シートを、50mm×50mmのサイズに切り取ってサンプルを作製した。
【0215】
次いで、発熱部材の上に、上記したサンプルを積層して、熱発泡性積層体を作製した(図2(a)参照)。
【0216】
そして、電源から配線を介して発熱部に、電圧50Vで、1分間、通電して、発熱部を発熱させた。
【0217】
これにより、熱発泡性樹脂シートを発泡させて、発泡体を得た(図2(b)参照)。
【0218】
A−2.ニクロム箔
ニクロムからなるシート状の発熱部からなる発熱部材(ニクロム箔)を用意した。なお、発熱部材の厚みは2mmであり、サイズが50mm×50mmであった。
【0219】
別途、上記により得られた実施例1から作製したサンプル(50mm×50mm×2mm)を用意した。
【0220】
次いで、発熱部材の上に、上記したサンプルを積層して、熱発泡性積層体を作製した(図3(a)参照)。
【0221】
そして、電源から配線を介して発熱部に、電圧50Vで、1分間、通電して、発熱部を発熱させた。
【0222】
これにより、熱発泡性樹脂シートを発泡させて、発泡体を得た(図3(b)参照)。
【0223】
B.マイクロ波の照射による発泡
PETからなる基材の表面に、アルミニウム蒸着によりマイクロ波吸収層が形成されたマイクロ波吸収体からなる発熱部材を用意した。なお、発熱部材の厚みは6μmであり、サイズが50mm×50mmであった。
【0224】
別途、上記により得られた実施例1から作製したサンプル(50mm×50mm×2mm)を用意した。
【0225】
次いで、発熱部材の上に、上記したサンプルを積層して、熱発泡性積層体を作製した(図4(a)参照)。
【0226】
そして、熱発泡性積層体をマイクロ波発生装置(型番CRE173−5、Convesta社製)に投入し、出力260Wで、1分間、マイクロ波(波長12.2cm、周波数2.45GHz)をサンプルに照射した。
【0227】
これにより、熱発泡性樹脂シートを発泡させて、発泡体を得た(図4(b)参照)。
【0228】
【表1】

【0229】
なお、表1中、熱発泡性樹脂組成物の配合処方の欄の数値は、各成分の重量部数を示す。
【0230】
また、表1中、各成分において、「*」にて示す化合物および評価を以下に詳説する。
ポリイソブチレンゴム*1:Oppanol B50、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)340000、密度0.92g/cm、BASF社製
ポリイソブチレンゴム*2:Oppanol B12、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)51000、密度0.92g/cm、BASF社製
シリコーンゴム*3:KE−550−U、密度1.21g/cm、信越シリコーン社製
シリコーンゴム*4:KE−951−U、密度1.14g/cm、信越シリコーン社製
EPDM*5:EPT9090M、ジエン含有量14.2%、三井化学社製
EPDM*6:EPT4045、ジエン含有量8.0%、三井化学社製
EPDM*7:EPT1045、ジエン含有量5.0%、三井化学社製
エポキシ樹脂*8:エピコート♯834、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270、密度1.18g/cm、JER社製
エポキシ樹脂*9:PKHM−301、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ガラス転移温度45℃、重量平均分子量39000、InChem社製
マツモトマイクロスフェアーF−36*10:商品名、熱膨張カプセル、発泡開始温度75〜85℃、最大膨張温度120〜130℃、平均粒子径10〜16μm、松本油脂製薬社製
ネオセルボン#1000M*11:商品名、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、発泡開始温度160℃、平均粒子径4μm、発生ガス量125ml/g(160℃)、永和化成工業社製
発泡性ビーズ*12:発泡性ポリスチレンビーズ(発泡性樹脂粒子)、樹脂のガラス転移温度85℃、熱膨張開始温度70℃、平均粒子径0.46mm、密度(熱膨張前)1.00g/cm、膨張倍率45倍(100℃)
発泡性ビーズ カネパールK−BS*13:発泡性ポリスチレンビーズ(熱発泡性樹脂粒子)、平均粒子径0.6mm、カネカ社製
発泡性ビーズ カネパールSR*14:発泡性ポリスチレンビーズ(熱発泡性樹脂粒子)、平均粒子径0.19mm、カネカ社製
発泡性ビーズ HCH2*15:商品名、エスレンビーズHCH2、発泡性ポリスチレンビーズ(熱発泡性樹脂粒子)、平均粒子径1.13mm、積水化成品工業社製
発泡性ビーズ HLA3000*16:商品名、ヒートポールGR HLA3000、発泡性アクリロニトリル・スチレン共重合体ビーズ、発泡性(熱発泡性樹脂粒子)、平均粒子径1.13mm、JSP社製
ムーニー粘度*17:100℃のムーニー粘度、自動ムーニー粘度計「AM−1」(東洋精機製作所社製)にて測定
密度*18:JIS Z8807に準拠して測定
発泡倍率*19:体積発泡倍率=発泡前のサンプルの密度/発泡後の発泡体の密度
発泡後*20:発泡後
【符号の説明】
【0231】
1 シート(熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート)
2 試験鋼板(中空部材)
3 発泡体
4 発熱部材
5 熱発泡性積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性樹脂粒子と樹脂組成物とを含有し、
前記発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されていることを特徴とする、熱発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
120℃以下の加熱で発泡することを特徴とする、請求項1に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
発泡後における密度が、0.02〜1.5g/cmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱膨張性物質の沸点が、−160〜120℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
前記発泡性樹脂粒子は、前記樹脂のモノマーを、前記熱膨張性物質の存在下で重合させることにより得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂が、ポリスチレンおよび/またはポリスチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
前記発泡性樹脂粒子の含有割合が、前記樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜350重量部であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴とする、熱発泡性樹脂シート。
【請求項10】
発熱可能な発熱部材と、
前記発熱部材に接触するように積層される請求項9に記載の熱発泡性樹脂シートと
を備えることを特徴とする、熱発泡性積層体。
【請求項11】
前記発熱部材は、通電により発熱することを特徴とする、請求項10に記載の熱発泡性積層体。
【請求項12】
前記発熱部材は、マイクロ波の照射により発熱することを特徴とする、請求項10に記載の熱発泡性積層体。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物を加熱により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項14】
請求項9に記載の熱発泡性樹脂シートを加熱により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項15】
請求項10に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項16】
請求項11に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材に通電して、前記発熱部材を発熱させることによって、前記熱発泡性シートを加熱して発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項17】
請求項12に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材にマイクロ波を照射して、前記発熱部材を発熱させることによって、前記熱発泡性シートを加熱して発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱発泡性樹脂組成物を、加熱により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項19】
請求項9に記載の熱発泡性樹脂シートを、加熱により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項20】
請求項10に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項21】
請求項11に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材に通電して、前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項22】
請求項12に記載の熱発泡性積層体の前記発熱部材にマイクロ波を照射して、前記発熱部材を発熱させることにより、前記熱発泡性樹脂シートを加熱して発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項23】
120℃以下の温度に加熱することを特徴とする、請求項18〜22のいずれかに記載の発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−202141(P2011−202141A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242014(P2010−242014)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】