説明

熱硬化性シリコーン樹脂用組成物

【課題】光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性に加えて、機械的強度及び接着性にも優れるシリコーン樹脂組成物を提供できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、ならびに該シートにより封止されている光半導体装置を提供すること。
【解決手段】(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、(6)ヒドロシリル化触媒、及び(7)シリカ粒子を含有してなる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物であって、前記シリカ粒子が、体積中位粒径が2〜50μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量が15個数%以下、かつ、粒径が60μm以上の粒子の含有量が15個数%以下のシリカ粒子である、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。さらに詳しくは、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、及び該シートにより封止されている光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明への応用が検討されている高出力白色LED装置には、耐光性と耐熱性に優れた封止材料が求められており、近年、いわゆる「付加硬化型シリコーン」が多用されている。
【0003】
この付加硬化型シリコーンは、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体を主成分とする混合物を、白金触媒の存在下で熱硬化させることにより得られるものであり、例えば、特許文献1では、組成物にオルガノポリシロキサンを導入して、組成物中のケイ素に結合する水素原子とアルケニル基のモル比を特定の範囲に設定することによって、透明性及び絶縁特性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するシリコーンレジンと、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を有するオルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンシロキサンを含有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3では、SiH基を有するシリコーン樹脂成分として、直鎖状で、ケイ素原子結合水素原子(Si−H基)を分子鎖途中に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、直鎖状で、Si−H基を分子鎖両末端に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを特定量で併用することにより、優れた強度を備えた硬化物を与える組成物が開示されている。
【0006】
一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、半硬化状態(Bステージ)を形成することは困難である。そこで、白金触媒の触媒活性を低下させるために、反応抑制剤として、リン、窒素、硫黄化合物やアセチレン類を添加することが有効であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開平6−118254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の付加硬化型シリコーンは、耐久性に優れるものの、硬化反応させる前は粘性を有する液体からなるものであるため、取り扱いが煩雑となり、さらに、周囲の環境によって粘度が変化する場合があるなど、依然満足できるものではない。
【0009】
また、反応抑制剤として知られている化合物は、樹脂の耐久性に影響を及ぼすことから、さらなる反応制御の方法が要求される。
【0010】
本発明の課題は、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性に加えて、機械的強度及び接着性にも優れるシリコーン樹脂組成物を提供できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、ならびに該シートにより封止されている光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、縮合反応に関するシリコーン成分と付加反応に関するシリコーン成分の両成分を含有する組成物にシリカ粒子を配合することで、硬化反応を段階的に行うことが可能となって安定した半硬化状態を形成でき、かつ、シリカ粒子を配合したにも関わらずシリコーン成分特有の優れた耐熱性や耐光性を低下させることなく、さらには機械的強度と接着性をも向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
〔1〕 (1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、(6)ヒドロシリル化触媒、及び(7)シリカ粒子を含有してなる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物であって、前記シリカ粒子が、体積中位粒径が2〜50μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量が15個数%以下、かつ、粒径が60μm以上の粒子の含有量が15個数%以下のシリカ粒子である、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。
〔2〕 前記〔1〕記載の組成物を半硬化させてなる、シリコーン樹脂シート、
〔3〕 前記〔2〕記載のシリコーン樹脂シートを硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物、ならびに
〔4〕 前記〔2〕記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性に加えて、機械的強度及び接着性に優れるシリコーン樹脂組成物を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、(6)ヒドロシリル化触媒、及び(7)シリカ粒子を含有するものであって、縮合反応に関するモノマーと付加反応(ヒドロシリル化反応)に関するモノマーに加えて、特定の粒度分布を有するシリカ粒子を含有することを大きな特徴とする。
【0015】
一般的なエポキシ樹脂等の半硬化状態(以下、Bステージともいう)は、通常、熱硬化条件を制御することによって達成される。具体的には、例えば、80℃で加熱してモノマーの架橋反応を一部進行させることにより、Bステージのペレットが調製される。そして、得られたペレットは、所望の成型加工を施した後に、150℃で加熱して完全に硬化させる。一方、付加硬化型の熱硬化性シリコーン樹脂は、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体とを付加反応(ヒドロシリル化反応)させて得られるが、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、Bステージを形成することは困難である。また、反応抑制剤によって反応を制御する方法も知られているが、反応抑制剤の種類や使用量によって反応の進行が異なることから、反応抑制剤による制御は容易ではない。
【0016】
本発明の組成物は、モノマーの架橋反応を反応温度が異なる2種類の反応系、即ち、縮合反応系と付加反応(ヒドロシリル化反応)系とによって行うように、各反応に関するモノマーを含有することによって、反応温度を調整して架橋反応を制御してBステージのペレットを調製する。即ち、本発明の組成物は、まず縮合反応に関するモノマーを縮合反応させることで半硬化状態の樹脂を調製し、次いでヒドロシリル化反応に関するモノマーを付加反応させることで完全硬化した樹脂を調製することが出来ると推定される。従って、ヒドロシリル化反応を生じさせない限りは、半硬化状態を維持することができ、Bステージでの保存安定性が担保される。また、本発明の組成物における樹脂モノマーは、いずれもシリコーンを主骨格として含有するため、得られる樹脂組成物が耐熱性と耐光性に優れるものとなる。さらに、前記モノマーにはエポキシ基を含有する化合物も含まれており、エポキシ基はその柔軟で極性の高い構造により接着性を付与することができることから、得られる樹脂組成物が接着性にも優れるものとなる。
【0017】
このような特性に加えて、本発明では特定の粒度分布を有するシリカ粒子を配合することで、機械的強度と接着性をより向上することが可能となる。シリコーン樹脂にシリカ粒子を配合して機械的強度を上げることは従来よく知られた技術であるが、シリカ粒子の配合は、同時に、光透過率の低下とヘイズの増大を引き起こして、LED封止材として使用した場合には光取り出し効率の大幅な低下が認められる。しかしながら、本発明では、特定のシリカ粒子を配合することで、単に機械的強度を向上するだけでなく、後方散乱も少なくなることから、輝度低下を抑制した上で、前記組成を有する組成物の硬化条件を緩和することが出来、ひいては、接着性をより向上することが可能となる。また、そのようなシリカ粒子がシランカップリング剤で表面処理されることにより、ヒドロシリル化反応の抑制剤となって、半硬化状態の樹脂の保存性を向上することも可能となる。なお、本明細書において、半硬化物、即ち、半硬化状態(Bステージ)の物とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である物のことを意味し、全硬化物とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態である物のことを意味する。
【0018】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、
(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、
(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、
(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、
(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、
(5)縮合触媒、
(6)ヒドロシリル化触媒、及び
(7)シリカ粒子
を含有する。
【0019】
(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン
本発明における末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとしては、各成分との相溶性の観点から、式(I):
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。なお、本発明においては、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの末端シラノール基が縮合反応を起こすことから、該モノマーを縮合反応系モノマーという。
【0022】
式(I)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0023】
式(I)中のnは、1以上の整数を示すが、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは1〜10000、より好ましくは1〜1000の整数である。
【0024】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが1〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0025】
式(I)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0026】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0027】
末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンにおける式(I)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0028】
末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの含有量は、組成物中、1〜99重量%が好ましく、50〜99重量%がより好ましく、80〜99重量%がさらに好ましい。
【0029】
(2)アルケニル基含有ケイ素化合物
本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物は、アルケニル基がヒドロシリル化反応を起こして樹脂化を行うことから、ヒドロシリル化反応に関するモノマーである。また、アルケニル基以外の置換基は、特に限定されないが、縮合反応に関する官能基である場合には、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーのいずれとも反応し得る化合物となり、該化合物を介して両反応系の樹脂が結合して、耐熱性により優れる硬化物が得られることになる。なお、本明細書において、縮合反応に関する官能基とは、成分(1)のOH基と縮合反応し得る官能基のことを意味し、具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0030】
このような観点から、本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物としては、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される、アルケニル基と縮合反応に関する官能基を有する化合物が好ましい。
【0031】
式(II)におけるRは、置換又は非置換のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0032】
式(II)におけるXはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、これらはいずれも縮合反応に関する官能基である。ハロゲン原子としては、反応性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。アルコキシ基としては、反応性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(II)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメトキシ基であることが好ましい。
【0033】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリヨードシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Xが全てメトキシ基である、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0034】
式(II)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0035】
アルケニル基含有ケイ素化合物における式(II)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0036】
アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0037】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100重量部に対して、得られる硬化物の強度の観点から、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0038】
(3)エポキシ基含有ケイ素化合物
本発明におけるエポキシ基含有ケイ素化合物は、エポキシ基を含有するのであれば特に限定はなく、エポキシ基がケイ素に直接結合しても、エポキシ基を一部に有する有機基がケイ素に結合していてもよい。また、前記以外の置換基として、縮合反応に関する官能基をエポキシ基含有ケイ素化合物が含有する場合には、該化合物は縮合反応に関するモノマーと結合する。その結果、硬化物中にエポキシ基が良好に分散して存在し、接着性が向上するものと考えられる。なお、本明細書において、エポキシ基及びエポキシ基を一部に有する有機基のことを、「エポキシ構造含有置換基」という。
【0039】
このような観点から、本発明におけるエポキシ基含有ケイ素化合物としては、式(III):
−Si(X) (III)
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される、エポキシ基と縮合反応に関する官能基を有する化合物が好ましい。
【0040】
式(III)におけるRはエポキシ構造含有置換基を示し、エポキシ基を骨格に含む有機基である。具体的には、3-グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロペンチル基等が例示される。なかでも、反応性や取り扱い性の観点から、3-グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。
【0041】
式(III)におけるXはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、これらはいずれも縮合反応に関する官能基である。ハロゲン原子としては、反応性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。アルコキシ基としては、反応性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(III)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメトキシ基であることが好ましい。
【0042】
かかる式(III)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0043】
【化2】

【0044】
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基である、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、Rがエポキシシクロヘキシルエチル基、Xが全てメトキシ基である、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランが好ましい。
【0045】
式(III)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0046】
エポキシ基含有ケイ素化合物における式(III)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0047】
エポキシ基含有ケイ素化合物の含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0048】
また、エポキシ基含有ケイ素化合物の含有量は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100重量部に対して、得られる硬化物の接着性の観点から、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。
【0049】
本発明の一態様として、アルケニル基含有ケイ素化合物のX及びエポキシ基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンのSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基とを過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比〔SiOH/(SiX+SiX)〕が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有ケイ素化合物とエポキシ基含有ケイ素化合物が多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0050】
またさらに、アルケニル基含有ケイ素化合物のX及びエポキシ基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合、アルケニル基含有ケイ素化合物とエポキシ基含有ケイ素化合物の重量比(アルケニル基含有ケイ素化合物/エポキシ基含有ケイ素化合物)は、得られる硬化物の接着性の観点から、200/1以下が好ましく、100/1以下がより好ましい。一方、前記重量比が好ましくは0.1/1以上、より好ましくは1/1以上であると、得られる硬化物の強靭性が良好となる。従って、前記重量比としては、200/1〜0.1/1が好ましく、100/1〜1/1がより好ましい。
【0051】
(4)オルガノハイドロジェンシロキサン
本発明におけるオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(IV):
【0052】
【化3】

【0053】
(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(V):
【0054】
【化4】

【0055】
(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、本発明においては、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基がヒドロシリル化反応を起こすことから、オルガノハイドロジェンシロキサンをヒドロシリル化反応に関するモノマーという。
【0056】
式(IV)で表わされる化合物は、構成単位A、B及びCによって構成され、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位であり、水素が繰り返し単位に含まれている化合物である。
【0057】
式(IV)におけるR、即ち、構成単位AにおけるR、構成単位BにおけるR、及び構成単位CにおけるRは、いずれも1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(IV)において、全てのRは同一でも異なっていてもよく、構成単位に関係なく、それぞれ独立して上記炭化水素基を示す。
【0058】
構成単位Aは末端単位であり、式(IV)中に2個含まれる。
【0059】
構成単位Bの繰り返し単位数、即ち、式(IV)中のaは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100の整数である。
【0060】
構成単位Cの繰り返し単位数、即ち、式(IV)中のbは、2以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは2〜1000の整数である。
【0061】
かかる式(IV)で表される化合物としては、メチルハイドロジェンシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンシロキサン、エチルハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサンCO-メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがメチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物、Rがエチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物が好ましい。
【0062】
式(IV)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0063】
式(V)で表される化合物は、水素を末端に有する化合物である。
【0064】
式(V)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(V)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0065】
式(V)中のcは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜10,000、より好ましくは1〜1,000の整数である。
【0066】
かかる式(V)で表される化合物としては、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、cが1〜1,000の整数である化合物、Rが全てエチル基、cが1〜1,000の整数である化合物が好ましい。
【0067】
式(V)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0068】
式(IV)及び式(V)で表される化合物としては、市販品を用いても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0069】
オルガノハイドロジェンシロキサンにおける、式(IV)及び式(V)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0070】
オルガノハイドロジェンシロキサンの含有量は、組成物中、0.1〜99重量%が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜80重量%がさらに好ましい。
【0071】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物とオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比は、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiR/SiH)が、20/1〜0.1/1が好ましく、10/1〜0.2/1がより好ましく、10/1〜0.5/1がさらに好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性があり、0.1/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。
【0072】
末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比(末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン/オルガノハイドロジェンシロキサン)は、シート化した際の粘弾性の観点から、99.9/0.1〜1/99が好ましく、99.9/0.1〜50/50がより好ましく、99.9/0.1〜90/10がさらに好ましい。
【0073】
(5)縮合触媒
本発明における縮合触媒としては、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンのシラノール基同士の縮合反応を、また、アルケニル基含有ケイ素化合物のX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のX基が縮合反応に関する官能基である場合は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンのシラノール基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基との縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水酸化テトラアルキルアンモニウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。なかでも、相溶性及び熱分解性等の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウムが好ましい。
【0074】
水酸化テトラメチルアンモニウムは、固体状態のものをそのまま用いてもよいが、取り扱い性の観点から、水溶液又はメタノール溶液として用いることが好ましく、樹脂の透明性の観点から、メタノール溶液を用いることがより好ましい。
【0075】
組成物における縮合触媒の含有量は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1.0〜5モルがより好ましい。
【0076】
また、縮合触媒として水酸化テトラアルキルアンモニウムを用いる場合、水酸化テトラアルキルアンモニウムの含有量は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、0.1〜5モルがより好ましく、0.1〜2モルがさらに好ましい。例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウムの含有量が0.1モル以上であれば、縮合反応が十分に進行するので好ましい。また、水酸化テトラアルキルアンモニウムの含有量が2モル以下であると、縮合反応の進行が良好であるだけでなく、熱硬化性シリコーン樹脂組成物の合成中に、反応系に存在する微量のメタノールや水とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基との反応が促進されず、SiOMe基やSiOH基の生成を抑制して更なる縮合反応を抑制することができる。その結果、組成物の粘性増大を抑制したり、水素ガスの発生を抑制したりすることができるのでより好ましい。またさらに、縮合反応に関与しない水酸化テトラメチルアンモニウムによって、ヒドロシリル化反応を促進させるヒドロシリル化触媒、例えば、白金触媒が不活化されるということもないためより好ましい。
【0077】
(6)ヒドロシリル化触媒
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシラン化合物とアルケンとのヒドロシリル化反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。なかでも、相溶性、透明性及び触媒活性の観点から、白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体等の白金−カルボニル錯体が好ましい。
【0078】
組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量は、例えば、白金触媒を用いる場合には、反応速度の観点から、白金含有量が、オルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0079】
(7)シリカ粒子
本発明におけるシリカ粒子は、得られる樹脂組成物の機械的強度を向上し、かつ、耐破壊力が向上することによって、無機材料に対する接着性、即ち、外力からの耐性を改善することができる。また、組成物の機械的強度が向上することによって、剪断に対する耐性も高まり、接着性が向上する。さらに、シリカを混合していない場合に比べて、一定の強度に達するまでの硬化反応の進行度を小さくすることができるので、結果的に、硬化条件を緩和することができる。
【0080】
本発明におけるシリカ粒子としては、特定の粒度分布を有し、かつ、主成分がシリカである粒子であれば特に限定はなく、無水シリカのほか、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム等を含有するものが例示される。また、その形態としては、煙霧シリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、粉砕シリカ、結晶シリカ等が例示される。なお、ここでいう「主成分」とは、粒子を構成する成分のうち50%以上を占める成分を意味する。
【0081】
シリカ粒子の平均粒子径は、輝度低下を抑制する観点から、2〜50μmであるが、ミー散乱による光の散乱は前方散乱が大きく、輝度低下の抑制効果が得られることから、2〜30μmが好ましい。なお、本明細書において、シリカ粒子の平均粒子径は、体積中位粒径を意味し、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0082】
また、粒径の小さな粒子は、レイリー散乱を起こすため、粒径の小さな粒子が多いほど後方散乱が大きくなる。従って、シリカ粒子の粒径が1μm以下の粒子の含有量は、15個数%以下であり、10個数%以下が好ましく、1個数%以下がより好ましく、実質的に0個数%がさらに好ましい。一方、粒径の大きな粒子は、幾何光学の法則より、粒子−マトリックス界面での反射が大きくなるため、輝度低下を生じる。従って、シリカ粒子の粒径が60μm以上の粒子の含有量は、15個数%以下であり、10個数%以下が好ましく、3個数%以下がより好ましく、実質的に0個数%がさらに好ましい。なお、本明細書において、シリカ粒子の粒径が1μm以下の粒子の個数換算における含有量(個数%)及び粒径が60μm以上の粒子の個数換算における含有量(個数%)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0083】
またさらに、シリカ粒子の粒径の変動係数(CV、%)は、輝度低下を抑制する観点から、30%以下が好ましく、0〜20%がより好ましい。なお、粒径の変動係数(CV、%)とは、粒度分布の標準偏差を平均値で割ったものであり、粒度分布のバラツキの尺度を示し、変動係数(CV、%)が小さいほど、バラツキが小さいことを意味する。
【0084】
このような粒径及び粒度分布を有するシリカ粒子は、公知の方法に従って粒度分布を調整したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。好適な市販品としては、電気化学工業社製のFB-40S、FB-7SDC、FB-3SDC等の溶融シリカ粒子、宇部日東化成社製のN3N-3、NSN-20等の単分散シリカ粒子等が例示される。
【0085】
シリカ粒子の形状は、可視光を散乱できるものであればよく、球状、破砕形状が例示されるが、輝度低下を抑制する観点から、球状が好ましい。
【0086】
また、本発明においては、シリカ粒子表面の物性改質の観点から、シリカ粒子の表面がシランカップリング剤によって処理されていることが好ましい。
【0087】
シランカップリング剤としては、公知のものが特に限定なく用いられるが、縮合触媒とシリカ粒子表面との吸着を抑制する観点から、塩基性シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するアミン系シランカップリング剤がより好ましい。
【0088】
アミン系シランカップリング剤としては、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
表面処理方法としては、特に限定はなく公知の方法が挙げられる。例えば、シリカ粒子とシランカップリング剤を溶媒中、10〜100℃で0.1〜72時間攪拌する方法(湿式方法)が例示される。
【0090】
シランカップリング剤の使用量は、表面処理されるシリカ粒子100重量部に対して、0.001〜1000重量部が好ましく、0.01〜100重量部がより好ましい。
【0091】
なお、シランカップリング剤による表面処理後のシリカ粒子の粒径及び粒度分布は、表面処理によってシリカ粒子の平均粒子径が変動することは殆どないため、処理前のものとほぼ同じである。
【0092】
シリカ粒子の含有量は、樹脂の機械的強度と接着性の向上、透明性と硬化前樹脂の流動性維持の観点から、(1)〜(6)の総量100重量部に対して、0.1〜70重量部が好ましく、5〜60重量部がより好ましい。
【0093】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有することができる。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、層状マイカ、カーボンブラック、珪藻土、ガラス繊維、ランタノイド系元素で賦活された酸化物・窒化物・酸窒化物蛍光体等の無機質充填剤、及び、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により表面処理されたものが例示される。
【0094】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、防カビ剤等の添加剤を含有してもよい。
【0095】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、(6)ヒドロシリル化触媒、及び(7)シリカ粒子の各成分を含有するものであれば、特に限定なく調製することができるが、本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の各反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させる観点から、縮合反応に関する成分を予め混合してから、ヒドロシリル化反応に関する成分を混合し、そこにシリカ粒子を混合してもよい。
【0096】
縮合反応に関する成分の混合は、(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、及び(5)縮合触媒、必要に応じて、有機溶媒などの添加剤を、好ましくは0〜60℃で5分〜24時間攪拌することにより行うことができる。なお、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応、ヒドロシリル化反応のいずれにも関する成分であるが、縮合反応の方がヒドロシリル化反応より低温で反応が開始されることから、(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと同時に混合されることが好ましい。
【0097】
有機溶媒としては、特に限定はないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。
【0098】
有機溶媒の存在量は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、アルケニル基含有ケイ素化合物、及びエポキシ基含有ケイ素化合物の総量100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、20重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0099】
なお、上記混合によって、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンのSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基との縮合反応の一部が開始されてもよく、縮合反応の進行度は、H−NMR測定によって、SiOH基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0100】
次に、ヒドロシリル化反応に関する成分として、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、及び(6)ヒドロシリル化触媒を、上記の縮合反応に関する成分の混合物に混合する。本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の2種類の反応を行って硬化物を得る際に、縮合反応のみを行って半硬化状態の成形物を調製することが可能であることから、ヒドロシリル化反応に関する成分は、上記の縮合反応に関する成分の混合物に、均一に混合されるのであれば、混合方法に特に限定はない。
【0101】
シリカ粒子の混合は、縮合反応に関する成分の混合物にヒドロシリル化反応に関する成分が混合された物に、シリカ粒子(必要により予めシランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子)を加えて、好ましくは0〜60℃で1〜120分間攪拌することにより行うことができる。なお、シリカ粒子が混合物中に均一に分散されるのであれば、混合方法に特に限定はない。
【0102】
かくして得られた本発明の組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜1,000,000mPa・s、より好ましくは1,000〜100,000mPa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0103】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエステル基材等の有機ポリマーフィルム、セラミックス、金属等)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することによりシート状に成形することができる。加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明の組成物は、この加熱によって、溶媒の除去に加えて、縮合反応を完結させて、半硬化状(Bステージ)のシリコーン樹脂シートを調製することができる。従って、本発明はまた、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を半硬化させた、シリコーン樹脂シートを提供する。なお、本明細書において、「反応の完結」とは、反応に関与する官能基の80%以上が反応した場合のことを意味し、縮合反応においては、前述のH−NMRによってSiOH基量を測定することによって確認することができる。
【0104】
加熱温度は、20〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましい。加熱時間は、0.1〜120分が好ましく、1〜60分がより好ましい。
【0105】
シリコーン樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、100〜10000μmが好ましく、100〜3000μmがより好ましい。
【0106】
本発明のシリコーン樹脂シートは、半硬化状態であるために、例えば、光半導体素子の上にそのまま、あるいは公知の樹脂をポッティングした上に載置させて封止加工した後、高温で加熱して樹脂シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。従って、本発明は、本発明のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。前記樹脂シートの完全硬化は、ヒドロシリル化反応に関する成分が反応することにより実施される。よって、本発明の別態様として、本発明のシリコーン樹脂シートを硬化させたシリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0107】
シートを基板に載置させてから封止加工する方法は、特に限定はないが、例えば、ラミネーターを用いて、好ましくは100〜200℃、0.01〜10MPaで、より好ましくは120〜180℃、0.1〜1MPaで、2〜600秒間加熱して行う方法が例示される。
【0108】
また、その後にポストキュアを行うこともできる。加熱温度は、120〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0109】
なお、ヒドロシリル化反応の進行度は、IR測定によって、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基に由来するピークの吸収程度によって確認することができ、吸収強度が初期値(硬化反応前)の20%を下回った場合に、ヒドロシリル化反応が完結して全硬化している。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0111】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0112】
〔シリカ粒子の平均粒子径、粒径が1μm以下の粒子の含有量、粒径が60μm以上の粒子の含有量、及び変動係数(CV)〕
本明細書において、シリカ粒子の平均粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味し、シリカ粒子の粒子分散液について動的光散乱法で測定して算出される体積中位粒径(D50)のことである。また、前記測定の際に得られた粒度分布から、粒径が1μm以下の粒子の含有量(個数%)、粒径が60μm以上の粒子の含有量(個数%)、及び粒度分布の変動係数(CV、%)を求める。
【0113】
〔組成物の粘度〕
25℃、1気圧の条件下でレオメータ(B形粘度計)を用いて測定する。
【0114】
実施例1
40℃に加温した末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11,500〕2031g(0.177mol)に対して、アルケニル基含有ケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン〔式(II)中のRがビニル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕15.76g(0.106mol)、及び、エポキシ基含有ケイ素化合物として、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン〔式(III)中のRが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕2.80g(0.0118mol)[末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンのSiOH基のモル数と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基とエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基の総モル数の比〔SiOH/(SiX+SiX)〕=1/1]を攪拌混合後、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液(濃度10重量%)0.97mL(触媒量:0.88mmol、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100モルに対して0.50モル)を加え、40℃で1時間攪拌した。得られたオイルは、40℃で1時間攪拌しながら減圧(10mmHg)し、揮発分を除去した。次に、反応液を常圧に戻した後、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(IV)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物、粘度20mPa・s〕44.67g〔0.319mol、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基のモル比(SiR/SiH)=1/3.0〕を加えて、40℃で1時間攪拌した。その後、ヒドロシリル化触媒として白金カルボニル錯体(白金濃度2重量%)0.13mL(白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.0058重量部)を加えて、40℃で10分間攪拌した。得られたオイル100gに対して、シリカ粒子(電気化学合成社製、FB-40S、平均粒子径40μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量2個数%、粒径が60μm以上の粒子の含有量15個数%、CV45%)100gを加えて、室温(20℃)で10分間攪拌して、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。
【0115】
実施例2
実施例1において、シリカ粒子(FB-40S)の使用量を100gから43gに変更した以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量30重量%)。
【0116】
実施例3
実施例1において、シリカ粒子(FB-40S)を100g用いる代わりに、シリカ粒子(電気化学合成社製、FB-7SDC、平均粒子径5.8μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量8個数%、粒径が60μm以上の粒子の含有量0個数%、CV59%)を43g用いる以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量30重量%)。
【0117】
実施例4
実施例1において、シリカ粒子(FB-40S)を100g用いる代わりに、シリカ粒子(電気化学合成社製、FB-3SDC、平均粒子径3.4μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量12個数%、粒径が60μm以上の粒子の含有量0個数%、CV70%)を43g用いる以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量30重量%)。
【0118】
実施例5
実施例1において、シリカ粒子(FB-40S)を100g用いる代わりに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン1gを99gの水に溶解させたシランカップリング剤溶液とシリカ粒子(FB-40S)100gとを混合して25℃で24時間攪拌後、濾取したシリカ粒子を乾燥させて得られた表面処理シリカ粒子を用いる以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。なお、シランカップリング剤処理量は、処理に供されるシリカ粒子100重量部に対して、1重量部であった。
【0119】
実施例6
実施例5において、シリカ粒子の表面処理に用いるN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの量を1gから0.5gに変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。なお、シランカップリング剤処理量は、処理に供されるシリカ粒子100重量部に対して、0.5重量部であった。
【0120】
実施例7
実施例5において、シリカ粒子の表面処理に用いるN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの量を1gから0.166gに変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。なお、シランカップリング剤処理量は、処理に供されるシリカ粒子100重量部に対して、0.166重量部であった。
【0121】
実施例8
実施例5において、シリカ粒子の表面処理に用いるN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの量を1gから0.125gに変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。なお、シランカップリング剤処理量は、処理に供されるシリカ粒子100重量部に対して、0.125重量部であった。
【0122】
実施例9
実施例5において、シリカ粒子の表面処理に用いるシランカップリング剤を、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン1gから、ヘキサメチルジシラザン1gに変更した以外は、実施例5と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量50重量%)。なお、シランカップリング剤処理量は、処理に供されるシリカ粒子100重量部に対して、1重量部であった。
【0123】
比較例1
実施例1において、シリカ粒子を含有させない以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0124】
比較例2
実施例1において、シリカ粒子(FB-40S)を100g用いる代わりに、シリカ粒子(龍森社製、Crystallite 5X、平均粒子径1.4μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量16個数%以上、粒径が60μm以上の粒子の含有量0個数%、比表面積14.5m2/g)を43g用いる以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た(シリカ粒子含有量30重量%)。
【0125】
前記実施例1〜9及び比較例1〜2の組成物の組成を、表1にまとめて示す。
【0126】
【表1】

【0127】
得られた組成物を用いて、以下の方法に従って、半硬化物、全硬化物、及び光半導体装置を調製した。
【0128】
半硬化物の調製例1
各組成物を二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステル社製、50μm)上に600μmの厚さに塗工し、表2又は3に示す条件で硬化して、シート状の半硬化物(シート)を調製した(厚み600μm)。
【0129】
完全硬化物の調製例1
上記で得られたシートについて、150℃で5時間加熱して完全硬化物シリコーン樹脂シートを調製した。
【0130】
光半導体装置の作製例1
青色LEDが実装された基板に、上記で得られた半硬化状態のシートを被せ、減圧下、160℃で5分間加熱し、0.2MPaの圧力で封止加工後、150℃で1時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて、光半導体装置を作製した。
【0131】
実施例1〜4及び比較例1〜2について、得られた半硬化物、全硬化物、光半導体装置を用いて、以下の試験例1〜6に従って、特性を評価した。結果を表2に示す。なお、ここでの評価は、シリカ粒子の平均粒子径や粒度分布が特性にどのように影響するかを調べる。
【0132】
試験例1(保存安定性A)
調製直後と室温(25℃)で24時間保存後の半硬化物について、デジタル測長計(MS-5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mm2の荷重をかけた際に、半硬化物の表面からセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、以下の式に基づいてシート硬度を求めた。
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/半硬化物の膜厚(μm)}]×100
次に、得られたシート硬度の比率(保存後/調製直後×100)を硬度保持率(%)とし、以下の評価基準に従って、保存安定性を評価した。なお、シート硬度の値が大きいほど硬いものであることを示し、硬度保持率が小さいほど保存安定性に優れることを示す。
【0133】
〔保存安定性Aの評価基準〕
○:硬度保持率が100〜150%
×:硬度保持率が150%超
【0134】
試験例2(弾性率、破断伸び)
得られた完全硬化物シートについて、オートグラフ(AGS-J、島津製作所社製)を用いて引張り弾性率(MPa)と破断伸び(%)を求めて評価した。引っ張り弾性率が高いほど機械的強度が高く、破断伸びが大きいほど引っ張りに対する耐破壊性に優れることを示す。
【0135】
試験例3(光透過性)
各全硬化物の波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど光透過性に優れることを示す。
【0136】
試験例4(接着性)
各組成物を、アルミ基板(日東シンコー社製)又は白色レジスト塗布基板(三栄化学社製、SSR-6300S)上に50μmの厚さに塗工し、その上に2mm角のシリコーンチップを載置し、135℃で4分間加熱後、150℃で5時間加熱して硬化させた。得られた硬化物上のシリコーンチップにプッシュプルゲージを横から押し当てて、該シリコーンチップを剥離させるのに要する力(剥離力、N/chip)を測定した。剥離力が高いほど接着性に優れることを示す。
【0137】
試験例5(封止性)
各光半導体装置の封止前後の状態を光学顕微鏡で観察し、光半導体素子が完全に包埋され、ボンディングワイヤーに変形、損傷がないものを「○」、あるものを「×」とした。
【0138】
試験例6(発光輝度)
50mAで点灯させた各装置について、比較例1の装置(シリカ粒子非含有)の試験開始直後の輝度を100とした場合の輝度の相対値を調べた。輝度測定は、積分球を使用して、瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。相対値が90以上であることが好ましい。
【0139】
【表2】

【0140】
結果、実施例1〜4の組成物は、シリカ粒子を含有しない比較例1に比べて、弾性率が高くなり、各基板への接着性が向上していることが分かる。また、シリカ粒子を含有するにも関わらず、発光輝度の低下が小さいものであった。なかでも、実施例3、4のように、平均粒径の小さなシリカ粒子を配合した場合には、破断伸びが大きくなり、樹脂の引っ張り耐性が高まっている。また、実施例1〜4の組成物は、比較例1に比べて、硬化条件が緩和されており、生産性の向上が期待される。
【0141】
次に、実施例1、5〜9及び比較例1について、得られた半硬化物、光半導体装置を用いて、前記試験例5と以下の試験例7に従って、特性を評価した。結果を表3に示す。なお、ここでの評価は、シリカ粒子の表面処理が特性にどのように影響するかを調べる。
【0142】
試験例7(保存安定性B)
調製直後と5℃、40℃の恒温器でそれぞれ168時間保存後の半硬化物について、荷重測定機(MODEL 1605 IIVL、アイコーエンジニアリング社製)を用いて、5Nのロードセルを有した押込端子(UP-05K、アイコーエンジニアリング社製、端子面積23.75mm2)を速度0.5mm/minで半硬化物の表面から深さ100μm押込んだ際に、変位(80〜100μm)での荷重変化の傾きから半硬化物の硬度(MPa)を算出し、以下の評価基準に従って、保存安定性を評価した。
【0143】
〔保存安定性Bの評価基準〕
◎:保存後の硬度が0.005MPa超、0.30MPa以下
○:保存後の硬度が0.30MPa超、0.70MPa以下
×:保存後の硬度が0.005MPa以下、0.70MPa超
【0144】
【表3】

【0145】
結果、実施例5〜9の組成物は、シリカ粒子がシランカップリング剤で処理されたものであるため、半硬化状態の保存性に優れ、封止性にも優れるものであることが分かった。なかでも、実施例5〜8のように、塩基性のシランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子を配合した場合には、5℃及び40℃のいずれにおいても硬度変化が小さく、取り扱い性に優れることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、(6)ヒドロシリル化触媒、及び(7)シリカ粒子を含有してなる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物であって、前記シリカ粒子が、体積中位粒径が2〜50μm、粒径が1μm以下の粒子の含有量が15個数%以下、かつ、粒径が60μm以上の粒子の含有量が15個数%以下のシリカ粒子である、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。
【請求項2】
末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンが、式(I):
【化1】

(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アルケニル基含有ケイ素化合物が、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ基含有ケイ素化合物が、式(III):
−Si(X) (III)
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1〜3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
オルガノハイドロジェンシロキサンが、式(IV):
【化2】

(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(V):
【化3】

(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4いずれか記載の組成物。
【請求項6】
シリカ粒子の表面が塩基性シランカップリング剤で処理されてなる、請求項1〜5いずれか記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の組成物を半硬化させてなる、シリコーン樹脂シート。
【請求項8】
請求項7記載のシリコーン樹脂シートを硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物。
【請求項9】
請求項7記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置。

【公開番号】特開2012−12563(P2012−12563A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262445(P2010−262445)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】