説明

熱硬化性樹脂組成物及び半導体封止用樹脂組成物

【課題】長期耐熱性を有し、かつ高い接着性を有する樹脂組成物及びそれを用いた半導体封止材料を提供する。
【解決手段】(A)一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物100重量部、(B)フェノール化合物10〜500重量部、(C)トリアリルイソシアヌレート1〜500重量部、(D)無機充填剤1〜1000重量部を含有し、さらに(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして(E)エポキシ樹脂0〜20重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期耐熱性を有し、かつ高い接着性を有する樹脂組成物及びその半導体封止材料への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の封止材料は熱硬化性樹脂が用いられ、安価かつ大量生産容易である点でエポキシ樹脂が広く使用されている。一方で更なる展開が見込まれている電気自動車や送電システムのインバータやコンバータ等で使用されるパワー半導体においては、半導体素子にシリコンが使用されているが、電力損失が大幅に低減できる、耐電圧が高い、及び高温駆動が可能な点でSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使用する動きがあり、これらの材料に対応した封止材料が求められる。
【0003】
シリコン半導体はシリコンの耐熱温度である150℃以下で使用される一方、SiC半導体は200℃を超える温度でも動作するため、封止材料を含め高温に耐える周辺材料が必要となる。通常のエポキシ系では耐熱性が不十分であるため、エポキシを超える耐熱性の熱硬化性樹脂組成物として、シアン酸エステル化合物が検討されている。シアン酸エステル化合物の硬化物は200℃を超える耐熱性を有する一方、エポキシ樹脂硬化物と比較し金属との接着性に乏しいため、接着性を付与する樹脂成分を混合させる必要がある。(例えば、特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−172473号公報
【特許文献2】特開平8−208808号公報
【特許文献3】特開昭63−90531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シアン酸エステル化合物を配合した樹脂硬化物においては、金属との接着性が乏しい傾向にある。金属との接着性が低下することは金属との貼付体においてクラックが発生しやすくなり好ましくない。また、接着性を高める効果のある樹脂成分を配合すると、その成分の耐熱性が十分でなく、硬化物の長期耐熱性に乏しい問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱硬化性樹脂の選定及び配合について鋭意検討を行った結果、硬化物が200℃以上の大気雰囲気下において劣化が観測されず、かつ金属との高い接着性を有する耐熱性樹脂組成物を見出した。
【0007】
すなわち、本発明の第1は、(A)一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物100重量部、
(B)フェノール化合物10〜500重量部、
(C)トリアリルイソシアヌレート1〜500重量部、
(D)無機充填剤1〜1000重量部
を含有し、さらに(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして(E)エポキシ樹脂0〜20重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明の第2は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、(E)エポキシ樹脂0〜10重量部を含有する、上記第1に記載の熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明の第3は、(A)成分が、下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(nは0以上10以下の整数を表す。)
で表されるシアン酸エステル化合物である、上記第1または第2に記載の熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明の第4は、(B)成分が、下記一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(mは0以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アリル基、ビニル基から選ばれる1価の基を表す。)
で表されるフェノール化合物である、上記第1〜第3いずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明の第5は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、(D)成分50〜1500重量部を含有する、上記第1〜第4いずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明の第6は、上記第1〜第5いずれかの熱硬化性樹脂組成物を半導体封止材料に用いた半導体素子に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、有機溶媒を使用せず容易に成形可能であり、高い長期耐熱性及び金属との接着性を有するため、パワー半導体封止用樹脂組成物として好適に用いられる。従って本発明は、現行のエポキシ系と同じ設備にて製造できるとともに、大容量で電力損失が少ない、SiC半導体素子が実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明において、実施の形態は特に限定されないが、下記に示す説明により達成される。
【0016】
本願発明における熱硬化性樹脂組成物とは、
(A)一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物100重量部、
(B)フェノール化合物10〜500重量部、
(C)トリアリルイソシアヌレート1〜500重量部、
(D)無機充填剤1〜1000重量部
を含有し、さらに(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして(E)エポキシ樹脂0〜20重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物である。
以下各成分について説明する。
【0017】
(A)一分子中に少なくとも2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物
前記シアン酸エステル化合物を選定することで、硬化物に200℃を超える高い耐熱性を付与することが可能となる。前記シアン酸エステル化合物は、公知の方法により一分子中に平均して2個以上のフェノール水酸基を有する化合物とシアン酸塩素との反応により合成することができ、容易に入手可能である。前記シアン酸エステル化合物は単独で用いても良く、2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
前記一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有する化合物中の、シアナト基の数の平均値は、2.5個以上がより好ましく、3個以上がさらに好ましい。
【0019】
前記一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有する化合物は、耐熱性の点で芳香族基を有するものが好ましい。芳香族基を有するシアン酸エステル化合物は特に限定されないが、上記一般式(1)や、下記一般式(3)等を挙げることができる。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基を表す。)
【0022】
特に液状のため取り扱いがしやすく、硬化物に十分な耐熱性を付与できる点で、一般式(1)で表されるシアン酸エステル化合物を少なくとも1種以上含有することが好ましい。一般式(1)のnは、0以上10以下であることが好ましく、0以上5以下であることがより好ましい。nが10を超える場合、100℃以下で溶融せず樹脂組成物の流動性が低下する。nの値が異なるシアン酸エステル化合物を2種以上混合して使用しても良く、nの値に分布を持つシアン酸エステル化合物を使用しても良い。
【0023】
(B)フェノール化合物
フェノール化合物を選定することで、溶融時の樹脂粘度を低下させるとともに、耐熱性が高くかつ金属との接着性に優れた硬化物を得ることができる。フェノール化合物は単独で用いても良く、2種以上混合して使用しても良い。
【0024】
前記フェノール化合物中の、フェノール性水酸基の数の平均値は、1.6個以上が好ましく、2個以上がさらに好ましく、3個以上が特に好ましい。
【0025】
前記フェノール化合物は、耐熱性の点で芳香族基を有するものが好ましい。芳香族基を有するフェノール化合物は特に限定されないが、上記一般式(2)や、下記一般式(4)等を挙げることができる。
【0026】
【化4】

【0027】
(p、rはそれぞれ0以上10以下の整数を表し、Rは水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基を表す。)
【0028】
特に樹脂組成物の流動性の点から一般式(2)で表されるフェノール化合物が好ましい。前記一般式(2)のmは溶融流動性の点で0以上10以下であることが好ましい。mが10を超える場合、100℃以下で溶融せず樹脂組成物の流動性が低下する。mの値が異なるフェノール化合物を2種以上混合して使用しても良く、mの値に分布を持つフェノール化合物を使用しても良い。
【0029】
前記一般式(2)のRは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基またはアリール基であることが好ましく、特に水素原子であることが好ましい。炭素数10を超える基を用いると、脂肪族基の場合十分な耐熱性が付与できず、アリール基の場合溶融時の流動性が低下する。
【0030】
(B)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対し、10〜500重量部となるように配合することが好ましく、10〜200重量部とすることがより好ましく、10〜150重量部とすることがさらに好ましく、10〜100重量部とすることが特に好ましい。
【0031】
(C)トリアリルイソシアヌレート
前記トリアリルイソシアヌレートを選定することで、溶融時の樹脂粘度を低下させ、かつ靭性及び金属との接着性に優れた硬化物を得ることができる。(C)成分の配合量としては、特に限定されないが、(A)成分100重量部に対し、1〜500重量部含有させることが好ましく、1〜100重量部とすることがさらに好ましく、5〜80重量部とすることが特に好ましい。
【0032】
(D)無機充填剤
無機充填剤を含有することで、硬化物の耐熱性を維持するとともに、硬化物の熱膨張率を低下することができる。無機充填剤の種類としては特に限定されないが、シリカ粉末、石英ガラス粉末、タルク、アルミナ粉末、窒化ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末等を使用することができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。充填剤の形状も特に限定されるものではなく、球状、板状、破砕状等を使用することができ、単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。充填量を増やしても溶融流動性を維持することができる点、及び容易に入手可能な点で、少なくとも1種以上の球状シリカ粉末を含有することが好ましい。また、無機充填剤と樹脂との分散性及び流動性を向上させる目的で、予めシランカップリング剤等の処理により充填剤表面の修飾を施していても良い。
(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し、1〜1000重量部含有させることが好ましく、50〜1000重量部とすることがより好ましく、100〜800重量部とすることがさらに好ましい。
【0033】
また(D)成分の配合量は、樹脂成分である(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、50〜1500重量部が好ましく、100〜1000重量部がより好ましく、150〜1000重量部とすることがさらに好ましい。50重量部を下回ると熱膨張率が高く加熱冷却の繰り返しによりクラックが生じる傾向にあり、1500重量部を超えると成形に堪える流動性が確保できない。
【0034】
(E)エポキシ樹脂
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、(E)エポキシ樹脂0〜20重量部を含有するものである。(E)エポキシ樹脂の含有量は、0〜10重量部であることが好ましく、0〜5重量部であることがより好ましい。
【0035】
一般に、熱硬化性樹脂組成物中にエポキシ樹脂を含有させることで、金属との接着性を向上させることができる。しかしエポキシ樹脂を用いると樹脂硬化物の耐熱性が不十分となる傾向があるので、エポキシ樹脂は大量に用いるべきではない。
【0036】
本発明の(B)成分及び(C)成分を用いた場合、エポキシ樹脂の使用量を抑えることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物では、例えば(E)エポキシ樹脂を用いない場合(すなわち0重量部の場合)でも、(E)エポキシ樹脂を配合した硬化物と同等の金属との接着性を有し、かつ高い耐熱性を有する樹脂硬化物を得ることができる。本発明では、(E)成分となるエポキシ樹脂の含有量が20重量部を超えると、硬化物の長期耐熱性が十分とならない傾向になる。
【0037】
本発明の(E)エポキシ樹脂としては、公知の容易に入手可能なエポキシ樹脂を使用することができるが、耐熱性の点から芳香族基を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。エポキシ樹脂は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0038】
(F)その他の成分
上記(A)〜(D)以外の成分のほかに、必要に応じて(A)成分以外のモノシアン酸エステル化合物、触媒及び/または硬化剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、難燃剤、シランカップリング剤等を添加することができる。
【0039】
上記触媒及び/または硬化剤としては、特に限定されないが、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物系ラジカル重合開始剤、ルイス酸、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のカチオン重合開始剤、ルイス塩基、ルイス酸アミン錯体等のアニオン重合開始剤を挙げることができる。また、シアン酸エステルの環化反応の触媒として、例えばコバルト、銅、マンガン、亜鉛のアセチルアセトナートまたはオクトエート等の遷移金属錯体を挙げることができる。上記触媒及び/または硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、ヒンダードフェノール等のフェノール類、ホスファイト類、チオエーテル類等を挙げることができる。上記酸化防止剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0040】
上記着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック等のカーボン系材料、二酸化チタン等の金属酸化物等を挙げることができる。上記着色剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0041】
上記離型剤としては、特に限定されないが、脂肪族パラフィン、脂肪族エステル、天然ワックス、合成ワックス等を挙げることができる。上記離型剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0042】
上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系化合物等のリン系化合物、ホスファゼン系化合物等を挙げることができる。上記難燃剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0043】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、ビニルシラン、アミノシラン等のシラン系化合物等を挙げることができる。上記シランカップリング剤は単独で又は2種以上組み合わせ使用することができる。
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分を均一に混合させる方法は、特に限定されない。あらかじめ室温で成分を混合させたのち常温で攪拌混合することも、加熱ロール、ニーダー、押出機等により溶融混合することもできる。混合温度としては樹脂の硬化が起こらない温度であれば特に限定されず、100℃以下であることが好ましい。常温または溶融により均一に混合することができるため、溶媒を使用せず配合、混合から成形まで実施することができ、経済性に優れる上、かつ溶媒の揮発が無いことから安全性にも優れる。
本願発明のもう一つの形態は、上記熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体封止材料に関する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、溶媒を含まないプロセスで成形し、揮発分無く硬化物を製造できる点で、特に樹脂封止材料に好適である。
【0045】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化方法は、特に限定されないが、公知の熱硬化性樹脂の硬化方法にて実施することができる。硬化温度としては120℃以上で行うことが好ましく、250℃を超える温度で1時間以上硬化させる工程を含むことがより好ましい。250℃を超える温度で1時間以上硬化させる工程を含むことにより、架橋反応がより進行し、高い耐熱性を有する硬化物を得ることができる。
【0046】
上記熱硬化性樹脂組成物の成形方法は、公知の成形方法、例えばトランスファー成形、インジェクション成形、注入成形、圧縮成形等によって行うことができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例、比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
(A)シアン酸エステル化合物
PT−30(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値3.7) 17.4重量部
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 4.8重量部
(C)トリアリルイソシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート(デグサ社製) 2.8重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−2212(龍森株式会社製) 75.0重量部
【0049】
上記成分を80℃にて加熱溶融させたのち攪拌混合し、均一な混合物を得た。この液状混合物を脱泡後型に流し込み、140℃で1時間、200℃で1時間、250℃で3時間の順に加熱し、硬化物を得た。一連の硬化物作製において、又は作製した硬化物について下記の評価を行った。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物をTG−DTA装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、EXSTARTG/DTA6300)を用いて室温から550℃まで、昇温速度10℃で測定を行い、大気下での5%重量減少温度を測定した。硬化物の5%重量減少温度は456℃であった。
(2)長期耐熱性
硬化物(試験片の大きさ50×20×2mm)をオートグラフ(島津製作所製、オートグラフAG−10TB)を用いて三点曲げモードでの最大曲げ強度及び最大曲げ歪みを測定した。250℃にて50時間大気下で保存した硬化物も同様の測定を行い、最大曲げ強度及び最大曲げ歪みの値の減少幅が10%以下のものを合格、10%を超えるものを不合格とした。250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以下であり合格であった。
(3)接着性
硬化物の23℃における銅板(100×25×1.6mm)との重ね合わせ剪断接着強さを、JIS K6850準拠の条件でオートグラフ(島津製作所製、オートグラフAG−10TB)を用いて測定した。破断力を剪断面積で割った値である重ね合わせ剪断強さの値が10MPa以上のものを合格とした。重ね合わせ剪断強さは15MPaであり合格であった。
【0050】
(実施例2)
(A)シアン酸エステル化合物
PT−15(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値2.3) 6.6重量部
PT−30(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値3.7) 19.6重量部
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 2.9重量部
(C)トリアリルイソシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート(デグサ社製) 4.2重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−3512(龍森株式会社製) 66.6重量部
(F)その他の成分(触媒)
コバルト(III)アセチルアセトナート 0.03重量部
【0051】
上記成分を実施例1と同様の方法で硬化物を作製した。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物の5%重量減少温度は441℃であった。
(2)長期耐熱性
250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以下であり合格であった。
(3)接着性
重ね合わせ剪断強さは11MPaであり合格であった。
【0052】
(実施例3)
(A)シアン酸エステル化合物
PT−30(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値3.7) 34.8重量部
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 9.6重量部
(C)トリアリルイソシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート(デグサ社製) 5.6重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−3512(龍森株式会社製) 50.0重量部
(F)その他の成分(触媒)
コバルト(III)アセチルアセトナート 0.03重量部
【0053】
上記成分を実施例1と同様の方法で硬化物を作製した。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物の5%重量減少温度は435℃であった。
(2)長期耐熱性
250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以下であり合格であった。
(3)接着性
重ね合わせ剪断強さは16MPaであり合格であった。
【0054】
(実施例4)
(A)シアン酸エステル化合物
PT−30(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値3.7) 17.4重量部
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 3.6重量部
MEH−7851(明和化成株式会社製のフェノール化合物の製品名) 1.2重量部
(C)トリアリルイソシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート(デグサ社製) 2.8重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−2212(龍森株式会社製) 75.0重量部
(F)その他の成分(触媒)
コバルト(III)アセチルアセトナート 0.03重量部
【0055】
上記成分を実施例1と同様の方法で硬化物を作製した。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物の5%重量減少温度は452℃であった。
(2)長期耐熱性
250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以下であり合格であった。
(3)接着性
重ね合わせ剪断強さは13MPaであり合格であった。
【0056】
(比較例1)
(A)シアン酸エステル化合物
PT−15(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値2.3) 6.6重量部
PT−30(ロンザ社製の一般式(1)の構造を有するシアン酸エステル化合物の製品名、nの平均値3.7) 19.6重量部
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 2.9重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−3512(龍森株式会社製) 66.6重量部
(F)その他の成分
コバルト(III)アセチルアセトナート 0.03重量部
trans−スチルベン 4.2重量部
【0057】
(C)成分の代わりにtrans−スチルベンを用いた以外は、実施例2と同様の方法で硬化物を作製した。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物の5%重量減少温度は428℃であった。
(2)長期耐熱性
250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以上であり不合格であった。
(3)接着性
重ね合わせ剪断強さは8MPaであり不合格であった。
【0058】
(比較例2)
(B)フェノール化合物
MEH−8000H(明和化成株式会社製の一般式(2)の構造を有するフェノール化合物の製品名、mの平均値2.9) 9.6重量部
(C)トリアリルイソシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート(デグサ社製) 5.6重量部
(D)無機充填剤
球状シリカMSR−3512(龍森株式会社製) 50.0重量部
(E)エポキシ樹脂
HP−4032(DIC株式会社製の製品名) 34.8重量部
(F)その他の成分(触媒)
コバルト(III)アセチルアセトナート 0.03重量部
【0059】
(A)成分の代わりに(E)成分であるエポキシ樹脂を用いた以外は、実施例3と同様の方法で硬化物を作製した。
(1)硬化物の重量減少温度
硬化物の5%重量減少温度は376℃であった。
(2)長期耐熱性
250℃で50時間保存した硬化物は耐熱試験前と比較して最大曲げ強度、最大曲げ歪みの減少幅が共に10%以上であり不合格であった。
(3)接着性
重ね合わせ剪断強さは17MPaであり合格であった。
以上のように、実施例品では比較例品と比較し硬化物の重量減少温度が高く、長期耐熱性及び金属との接着性に優れていることがわかった。
【0060】
実施例、比較例の配合処方および各種特性を、表1にまとめた。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に平均して2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物100重量部、
(B)フェノール化合物10〜500重量部、
(C)トリアリルイソシアヌレート1〜500重量部、
(D)無機充填剤1〜1000重量部
を含有し、さらに(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして(E)エポキシ樹脂0〜20重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、(E)エポキシ樹脂0〜10重量部を含有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、下記一般式(1):
【化1】

(nは0以上10以下の整数を表す。)
で表されるシアン酸エステル化合物である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、下記一般式(2):
【化2】

(mは0以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アリル基、ビニル基から選ばれる1価の基を表す。)
で表されるフェノール化合物である、請求項1〜3いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部にたいして、(D)成分50〜1500重量部を含有する、請求項1〜4いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一項の熱硬化性樹脂組成物を半導体封止材料に用いた半導体素子。


【公開番号】特開2012−162664(P2012−162664A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24740(P2011−24740)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】