説明

熱硬化減衰材材料

上昇した温度で振動を減衰するために有用な熱硬化組成物が開示されている。この熱硬化組成物は、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有することができる。この熱硬化組成物は100℃を超える温度で振動を減衰するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示された態様は、一般的に、振動を減衰させるための熱硬化性システムに関する。更に詳しくは、本明細書中に開示された態様は高温度で振動を減衰させるための熱硬化性システムに関する。
【背景技術】
【0002】
輸送及び航空宇宙工業に於いて一般的に使用される防振材(dampener)材料にはゴム材料、瀝青質パッド及び他の類似の材料が含まれる。これらの材料は、典型的には、低温度で、最もしばしば室温で、振動を減衰させることでのみ有効である。
【0003】
しかしながら、輸送及び航空宇宙工業に於いて使用される部品は、しばしば、高い温度で機械的振動を受ける。特に、150℃を超える温度での振動減衰は、達成することが非常に困難である。
【0004】
上昇した温度で振動減衰のために有用である熱硬化組成物についてのニーズが存在する。下記の文献によって例示されているように、高いガラス転移温度を有する種々の材料又は高い温度で安定であるものが存在している。
【0005】
例えば、高温度熱可塑性組成物が非特許文献1に開示されている。開示されている組成物には、熱可塑性ポリエーテルイミドマトリックス中の架橋した熱硬化エポキシアミンの分散物が含まれる。同様に、高Tg熱可塑性及び熱硬化性エポキシアミンモノマーを含有する高温度(>140℃)防蝕性皮膜が非特許文献2に開示されている。
【0006】
低い誘電定数及び高い熱安定性を有するマイクロエレクトロニクス包装のための材料が非特許文献3に開示されている。
【0007】
テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン/4,4’−ジアミノジフェニルスルホンエポキシ樹脂と高Tg熱可塑性ポリイミドとをブレンドすることによって製造されたホットメルト加工性熱硬化組成物が非特許文献4に開示されている。10重量%のポリイミド濃度のような熱可塑性樹脂配合の結果は、非変性のエポキシマトリックスに比較して、Tgに於ける僅かな上昇並びに破断時応力及び歪みエネルギー放出速度G1cに於ける限定された改良であった。
【0008】
ポリイミドPI2080(I)[62181−46−8]及びN,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ビスマレイミドを含有する熱可塑性/熱硬化性ポリイミドブレンドが非特許文献5に開示されている。このブレンドは、180℃よりも高い温度に加熱されて、高いガラス転移温度(300℃よりも高い)を有する、共連続コンポジット熱可塑性−熱硬化構造物を形成する。炭素布帛及びガラス布帛強化ブレンドは、260℃よりも低い温度で、それらの機械的特性を維持した。
【0009】
特許文献1には、熱硬化性組成物中での、高いガラス転移温度(140℃〜220℃)を有する熱可塑性添加剤の使用が開示されている。スチレン中に溶解された変性ポリオキシフェニレンが不飽和マレイン酸樹脂をベースにするガラス繊維強化熱硬化性組成物中に使用された。
【0010】
特許文献2及び特許文献3には、ガラス及び/又は前駆体ガラスのものに適合する作業温度を有する、混合アルカリピロリン酸塩ガラス及び高温度有機熱可塑性又は熱硬化性ポリマーから形成されたアロイが開示されている。このガラス及びポリマーは、作業温度で一緒になって、本質的に均一で、微粒子状のミクロ構造の緊密な混合物を形成する。
【0011】
特許文献4には、共連続熱可塑性−熱硬化架橋ブレンド、例えばレゾルシノールジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンとブレンドした、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオリン、アミン末端ポリジメチルシロキサン及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物の反応によって製造されたシロキサン−ポリイミド(この混合物は、130℃で2時間及び180℃で2時間硬化される)が開示されている。開示された硬化樹脂から形成された繊維強化構造物は、他の特性の中で、少なくとも120℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0012】
特許文献5には、高い温度で良好な動的疲労を有するエチレンコポリマーゴム組成物が開示されている。この耐熱性防振ゴム組成物は、(b)50〜85重量%の≦80のヨウ素価を有する水素化ニトリルゴムを、(c)50〜15重量%のメタクリル酸亜鉛と[但し、(b)及び(c)の合計は100重量%である]予備混合することによって得られる。次いで、この2〜200重量部の量の得られた混合物は、(a)100重量部のエチレン−α−オレフィンコポリマーゴム及び2〜20重量部の有機過酸化物架橋剤と混合されて、(c)強化剤として使用されるメタクリル酸亜鉛が、(b)≦80のヨウ素価を有する水素化ニトリルゴム中に不均一に分散させられる。
【0013】
特許文献6には、(A)0.1〜20重量%の非液晶性樹脂、例えばナイロン樹脂、例えばナイロン66、ナイロン6又は主成分としてナイロン66若しくはナイロン6を含有するナイロンコポリマー、(B)80〜99.9重量%の液晶性樹脂並びに好ましくは(C)成分A及びBの全量の100重量部当たり5〜300部の量で、100〜400μmの重量平均主軸又は重量平均繊維長、全ての充填剤の全量基準で10〜50重量%の≦60μm主軸又は繊維長充填剤含有量及び5〜15μmの平均厚さ又は平均繊維直径を有する無機充填剤を含有する接着組成物が開示されている。この組成物は、非液晶性樹脂と液晶性樹脂とを特定の比で含有することによって、強度が高く、成形適性、耐熱性、靱性、耐油性、耐ガソリン性、耐摩耗性、成形製品表面平滑性、高温剛性、寸法安定性及び振動減衰特性に於いて優れており、強度が高い。
【0014】
特許文献7には、ラミネート樹脂として有用である、ポリシアネート及びポリシアネート/エポキシド組合せが開示されている。得られる熱硬化性ポリシアネートコポリマーは、トリアジン構造の高い比率及び約200℃以下のガラス転移温度を有する。
【0015】
高いガラス転移温度材料又は高温度で安定である材料を有する組成物又はブレンドは、前記文献を参照して記載されているであろう。しかしながら、上昇した温度で有効である振動減衰材料は存在していない。
【0016】
従って、上昇した温度で使用するとき振動を減衰する際に有効である熱硬化防振材材料についてのニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第1225203号明細書
【特許文献2】米国特許第6,103,810号明細書
【特許文献3】米国特許第6,268,425号明細書
【特許文献4】欧州特許第382575号明細書
【特許文献5】特開2005−126473号明細書
【特許文献6】特開平11−071568号明細書
【特許文献7】米国特許第6,822,067号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】“Creep behaviour of polymer blends based on epoxy matrix and intractable high Tg thermoplastic”、C.Gauthierら、Polymer International(2004),53(5),第541−549頁
【非特許文献2】“Innovative pipe coating material and process for high temperature fields”、Sauvant−Maynotら、Oil & Gas Science and Technology(2002),57(3),第269−279頁
【非特許文献3】“Polyquinoline / bismaleimide blends as low-dielectric constant materials”、Nalwaら、Proceedings - Electrochemical society (1999), 98-6 (Electrochemical Processing in ULSI Fabrication I and Interconnect and Contact Metallization: Materials, Processes, and Reliability),第135−144頁
【非特許文献4】“Polyimide-modified epoxy system: time-temperature-transformation diagrams, mechanical and thermal properties”、Biolleyら、Polymer(1994),35(3),第558−564頁
【非特許文献5】“Preparation and characterization of thermoplastic / thermosetting polyimide blends”、Yamamotoら、SAMPE Journal(1985),21(4),第6−10頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
一つの面に於いて、本明細書中に開示した態様は、物品中の振動の減衰方法に関する。この方法は、基体上に熱硬化組成物を配置してコンポジットを形成する工程(この熱硬化組成物は、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(dynamic mechanical thermal analysis)(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さ(half-height)で測定したtanδピーク幅を有する)、このコンポジットを100℃又はそれ以上の温度で振動に曝す工程を含んでよい。
【0020】
別の面に於いて、本明細書中に開示した態様は、上昇した温度で改良された減衰特性を有するコンポジットに関する。このコンポジットは、基体上に配置された熱硬化組成物を含有してよく、この熱硬化組成物は、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したとき、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有し、ここで、このコンポジットは、100℃又はそれ以上の温度で振動に曝される。
【0021】
他の面に於いて、本明細書中に開示した態様は、上昇した温度で改良された減衰特性を有する熱硬化組成物に関する。この熱硬化組成物は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性組成物の反応生成物を含有してよく、ここで、この熱硬化組成物は、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有する。
【0022】
他の面及び利点は、以下の説明及び付属する特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本明細書中に開示した態様に従って製造された樹脂についての、動的機械的熱分析結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一つの面に於いて、本明細書中に開示した態様は、上昇した温度(elevated temperature)で防振材材料として使用するための熱硬化性組成物に関する。他の面に於いて、本明細書中に開示した態様は、高いガラス転移温度及び高い減衰係数を有する防振材材料に関する。更に特定の面に於いて、本明細書中に開示した態様は、少なくとも150℃のガラス転移温度及び少なくとも40℃の半高さでのピーク幅と共に、0.2よりも大きいtanδによって定義された高い減衰係数を有する、熱硬化防振材材料に関する。このような防振材材料は、高い使用温度減衰を必要とする、輸送、航空宇宙、流延、被覆及びエレクトロニクス/電気用途のために有用であろう。
【0025】
上昇した温度で振動の影響を減少させるための防振材材料の態様は、硬化の際に架橋したネットワークを発生することができる熱硬化樹脂をベースにした組成物を含んでよい。有効に減少させることができる振動には、幾つかの態様に於いて0〜10,000Hz、他の態様に於いて0〜3000Hz、更に他の態様に於いて0〜500Hzの振動が含まれる。
【0026】
種々の態様に於いて、熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂若しくは高温でフェノール単位を発生することができる樹脂、ビニル樹脂、シクロ脂肪族エポキシ樹脂、窒素含有樹脂、例えばシアネートエステル系樹脂並びに他の熱硬化性組成物又はこれらの混合物が含まれてよい。防振材材料には、また、耐高温性熱可塑性樹脂のような他の樹脂を含む種々の添加剤が含有されていてよい。更に、熱硬化防振材材料を形成するための硬化性組成物には、硬化剤及び触媒が含有されていてよい。
【0027】
例えば、本明細書中に開示した熱硬化防振材材料には、少なくとも1種の熱硬化性樹脂並びに任意に、硬化剤、触媒、無機充填剤、繊維状強化剤、耐高温性(high temperature resistant)熱可塑性樹脂及び溶媒の少なくとも1種が含有されていてよい。種々の態様に於いて、熱硬化性組成物の硬化に続いて、硬化組成物は、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したとき、少なくとも150℃のガラス転移温度、少なくとも40℃の半高さでのピーク幅と共に0.2よりも大きいtanδによって定義された高い減衰係数の少なくとも1個を有することができる。この硬化組成物は、物品に取り付けて、100℃よりも高い温度で物品の干渉振動を減少させることができる。
【0028】
硬化組成物のガラス転移温度は、1Hzの振動数でDMTAを使用して測定したときに、幾つかの態様に於いて約150℃よりも高く、他の態様に於いて約170℃よりも高く、他の態様に於いて約180℃よりも高く、他の態様に於いて約200℃よりも高くてよく、他の態様に於いて約300℃よりも低く、他の態様に於いて約280℃よりも低く、更に他の態様に於いて約260℃よりも低くてよい。
【0029】
硬化組成物のtanδピークの高さは、1Hzの振動数でDMTAを使用して測定したときに、幾つかの態様に於いて約0.2よりも高く、他の態様に於いて約0.25よりも高く、他の態様に於いて約0.3よりも高く、更に他の態様に於いて約0.35よりも高い。
【0030】
硬化組成物のtanδピークの幅は、本明細書中に開示した硬化組成物の幾つかの態様について半高さで測定したとき約40℃よりも大きく、他の態様に於いて約50℃よりも大きく、更に他の態様に於いて約60℃よりも大きい。
【0031】
他の態様に於いて、ショルダー又は二次tanδピークが、DMTAによって測定したとき硬化組成物によって示される。この二次tanδピークのこのショルダーは、一次tanδピークよりも低い又は高い温度であってよい。幾つかの態様に於いて、二次tanδピークは、主tanδピークから約10℃よりも大きく、他の態様に於いて主tanδピークから約20℃よりも大きく、他の態様に於いて主tanδピークから約30℃よりも大きく、他の態様に於いて主tanδピークから約150℃よりも小さく、他の態様に於いて主tanδピークから約100℃よりも小さく、更に他の態様に於いて主tanδピークから約80℃よりも小さく位置している。
【0032】
本明細書中に開示した防振材材料は、幾つかの態様に於いて約100℃よりも高い、他の態様に於いて約120℃よりも高い、他の態様に於いて約150℃よりも高い、他の態様に於いて約180℃よりも高い、更に他の態様に於いて約200℃よりも高い温度で観察される振動を減少させることができる。
【0033】
本明細書中に開示した熱硬化防振材材料は、任意の適切な手段によって物品又は基体に取り付けることができる。例えば、本明細書中に開示した熱硬化防振材材料は被覆、スプレー、浸漬、流延、注封、ラミネート、接着及びサンドイッチによって、物品に取り付けることができる。幾つかの態様に於いて、未硬化の組成物を、基体上に配置し、そこで硬化させて、高温度で減少した振動を有する変性物品を製造することができる。
【0034】
前記のように、本明細書中に開示した熱硬化防振材材料には、1種又はそれ以上の熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シアネートエステル樹脂及びその他が含まれてよい。防振材材料には、また、種々の添加剤、例えば、とりわけ、高温度耐性熱可塑性物質が含有されていてよい。これらのそれぞれを、以下、更に詳細に説明する。
【0035】
エポキシ樹脂
本明細書中に開示した態様に於いて使用されるエポキシ樹脂は変化することができ、一般的で市販されているエポキシ樹脂を含み、これらは単独で又は2種又はそれ以上の組合せで使用することができ、例えば、とりわけノボラック樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂及びカルボキシレート付加物を含む。本明細書中に開示した組成物のためのエポキシ樹脂を選択する際に、考慮が、最終製品の特性に対してのみならず、樹脂組成物の加工に影響し得る粘度及び他の特性に対しても払われなくてはならない。
【0036】
このエポキシ樹脂成分は、1個又はそれ以上の反応性オキシラン基(これらは、本明細書に於いて、「エポキシ基」又は「エポキシ官能基」として参照される)を含有する任意の材料を含む、組成物の成形に於いて有用であるエポキシ樹脂の如何なる種類であってもよい。本明細書中に開示した態様に於いて有用であるエポキシ樹脂には、単官能性エポキシ樹脂、多−又はポリ官能性エポキシ樹脂及びこれらの組合せが含まれてよい。モノマー性及びポリマー性エポキシ樹脂は脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族又は複素環式エポキシ樹脂であってよい。ポリマー性エポキシ樹脂には、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えばポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、ポリマー骨格オキシラン単位(例えばポリブタジエンポリエポキシド)及び側鎖エポキシ基を有するポリマー(例えばグリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)を含む。このエポキシは純粋な化合物であってよいが、一般的に、分子当たり1個、2個又はそれ以上のエポキシ基を含有する混合物又は化合物群である。幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂には、また、反応性−OH基(これは、より高い温度で、無水物、有機酸、アミノ樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ基(触媒作用されるとき)と反応して、追加の架橋になることができる)を含有してよい。
【0037】
一般的に、このエポキシ樹脂はグリシド化樹脂、シクロ脂肪族樹脂、エポキシ化油などであってよい。グリシド化樹脂は、しばしば、グリシジルエーテル、例えばエピクロロヒドリン及びビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAの反応生成物;C4〜C28アルキルグリシジルエーテル;C2〜C28アルキル−及びアルケニル−グリシジルエステル:C1〜C28アルキル−、モノ−及びポリ−フェノールグリシジルエーテル;多価フェノール、例えばピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(又はビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(又はビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及びトリス(4−ヒドロキシフィニル)メタンのポリグリシジルエーテル;上記のジフェノールの塩素化及び臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカン又はジハロゲンジアルキルエーテルによってエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2個のハロゲン原子を含有する長鎖ハロゲンパラフィンとを縮合させることによって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。本明細書中に開示した態様に於いて有用であるエポキシ樹脂の他の例には、ビス−4,4’−(1−メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテル及び(クロロメチル)オキシランビスフェノールAジグリシジルエーテルが含まれる。
【0038】
幾つかの態様に於いて、このエポキシ樹脂には、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、脂環式型、複素環式型及びハロゲン化エポキシ樹脂などが含まれてよい。適切なエポキシ樹脂の非限定例には、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ヒドロキノンエポキシ樹脂、スチルベンエポキシ樹脂並びにこれらの混合物及び組合せが含まれてよい。
【0039】
適切なポリエポキシ化合物には、レゾルシノールジグリシジルエーテル(1,3−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン)、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)プロパン)、トリグリシジルp−アミノフェノール(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、ブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−ブロモ−フェニル)プロパン)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)メタン)、メタ−及び/又はパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(3−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)及びテトラグリシジルメチレンジアニリン(N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル) 4,4’−ジアミノジフェニルメタン)並びに2種又はそれ以上のポリエポキシ化合物の混合物が含まれてよい。見出される有用なエポキシ樹脂の更に包括的なリストは、Lee,H.及びNeville,K.、Handbook of Epoxy Resins、McGraw-Hill Book Company、1982年再発行に記載されている。
【0040】
他の適切なエポキシ樹脂には、芳香族アミン及びエピクロロヒドリンをベースにするポリエポキシ化合物、例えばN,N’−ジグリシジル−アニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル及びN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレン ビス−4−アミノベンゾアートが含まれる。エポキシ樹脂には、また、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸の1種又はそれ以上のグリシジル誘導体が含まれてよい。
【0041】
有用なエポキシ樹脂には、例えば多価ポリオール、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのポリグリシジルエーテル;脂肪族及び芳香族カルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び二量化リノール酸のポリグリシジルエーテル;ポリフェノール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン及び1,5−ジヒドロキシナフタレンのポリグリシジルエーテル;アクリレート又はウレタン単位を有する変性エポキシ樹脂;グリシジルアミンエポキシ樹脂並びにノボラック樹脂が含まれる。
【0042】
このエポキシ化合物はシクロ脂肪族又は脂環式エポキシドであってよい。シクロ脂肪族エポキシドの例には、ジカルボン酸のシクロ脂肪族エステルのジエポキシド、例えばシュウ酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、ピメリン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル);ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ジシクロペンタジエンジエポキシド等が含まれる。他の適切なジカルボン酸のシクロ脂肪族エステルのジエポキシドは、例えば米国特許第2,750,395号明細書に記載されている。
【0043】
他のシクロ脂肪族エポキシドには、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等が含まれる。他の適切な3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、例えば米国特許第2,890,194号明細書に記載されている。
【0044】
特に有用である更なるエポキシ含有材料には、グリシジルエーテルモノマーをベースにするものが含まれる。例は、多価フェノールを過剰のクロロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと反応させることによって得られる多価フェノールのジ−又はポリグリシジルエーテルである。このような多価フェノールには、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFとして知られている)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとして知られている)、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン又は酸性条件下で得られるフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物、例えばフェノールノボラック及びクレゾールノボラックが含まれる。この型のエポキシ樹脂の例は、米国特許第3,018,262号明細書に記載されている。他の例には、多価アルコール、例えば1,4−ブタンジオール又はポリアルキレングリコール、例えばポリプロピレングリコールのジ−又はポリグリシジルエーテル及びシクロ脂肪族ポリオール、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジ−又はポリグリシジルエーテルが含まれる。他の例は、単官能性樹脂、例えばクレジルグリシジルエーテル又はブチルグリシジルエーテルである。
【0045】
エポキシ化合物の別の種類は多価カルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸又はヘキサヒドロフタル酸の、ポリグリシジルエステル及びポリ(β−メチルグリシジル)エステルである。エポキシ化合物の更なる種類は、アミン、アミド及び複素環式窒素塩基のN−グリシジル誘導体、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビス(4−アミノフェニル)メタン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N’−ジグリシジルエチルウレア、N,N’−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン及びN,N’−ジグリシジル−5−イソプロピルヒダントインである。
【0046】
更に他のエポキシ含有材料はグリシドールのアクリル酸エステル、例えばアクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルと1種又はそれ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーである。このようなコポリマーの例は1:1スチレン−メタクリル酸グリシジル、1:1メタクリル酸メチル−アクリル酸グリシジル及び62.5:24:13.5メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジルである。
【0047】
容易に入手可能であるエポキシ化合物には、オクタデシレンオキシド;メタクリル酸グリシジル;ザ・ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.R.331(ビスフェノールA液体エポキシ樹脂)及びD.E.R.332(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル);ビニルシクロヘキセンジオキシド;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;プロピレングリコールによって変性された脂肪族エポキシ;ジペンテンジオキシド;エポキシ化ポリブタジエン;エポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えばザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能な、商標D.E.R.580で入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂);フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えばザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能な、商標D.E.N.431及びD.E.N.438で入手可能なもの)及びレゾルシノールジグリシジルエーテルが含まれる。具体的に記載しないが、ザ・ダウ・ケミカル社から入手可能な商標名D.E.R.及びD.E.N.での他のエポキシ樹脂も使用することができる。
【0048】
エポキシ樹脂には、また、イソシアネート変性エポキシ樹脂が含まれてよい。イソシアネート又はポリイソシアネート官能基を有するポリエポキシドポリマー又はコポリマーにはエポキシ−ポリウレタンコポリマーが含まれてよい。これらの材料は、1,2−エポキシ官能基を与えるための1個又はそれ以上のオキシラン環を有し、また、開放オキシラン環(これは、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応のためのジヒドロキシル含有化合物のためのヒドロキシル基として有用である)を有する、ポリエポキシドプリポリマーの使用によって形成することができる。イソシアネート単位はオキシラン環を開き、この反応は第一級又は第二級ヒドロキシル基とのイソシアネート反応として継続する。有効なオキシラン環を未だ有するエポキシポリウレタンコポリマーの製造を可能にするために、ポリエポキシド樹脂上に十分なエポキシド官能基が存在する。線状ポリマーは、ジエポキシドとジイソシアネートとの反応によって製造することができる。このジ−又はポリイソシアネートは、幾つかの態様に於いて、芳香族又は脂肪族であってよい。
【0049】
他の適切なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第7,163,973号明細書、米国特許第6,632,893号明細書、米国特許第6,242,083号明細書、米国特許第7,037,958号明細書、米国特許第6,572,971号明細書、米国特許第6,153,719号明細書、米国特許第5,405,688号明細書、米国特許出願公開第20060293172号明細書及び米国特許出願公開第20050171237号明細書(これらのそれぞれを参照して本明細書中に含める)中に開示されている。
【0050】
以下に説明するように、硬化剤及び強化剤は、エポキシ官能基を含有することができる。これらのエポキシ含有硬化剤及び強化剤は、本明細書に於いて、前記のエポキシ樹脂の一部として考えるべきではない。
【0051】
フェノール樹脂
本明細書中に開示した幾つかの態様に於いて有用であるフェノール樹脂には、アルデヒド、例えばメタナール、エタナール、ベンズアルデヒド又はフルフラルデヒドと、フェノール類、例えばフェノール、クレゾール、二価フェノール、クロルフェノール並びにC1-9アルキルフェノール、例えばフェノール、3−及び4−クレゾール(1−メチル,3−及び4−ヒドロキシベンゼン)、カテコール(2−ヒドロキシフェノール)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)及びキノール(1,4−ジヒドロキシベンゼン)とから誘導される任意のアルデヒド縮合物樹脂が含まれてよい。幾つかの態様に於いて、フェノール樹脂には、クレゾール及びノボラックフェノールが含まれてよい。
【0052】
本明細書中に開示した態様に於いて有用であるフェノール樹脂には、フェノール化合物、例えば単官能性フェノール、二官能性フェノール及びマルチ−又はポリ官能性フェノールと、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドとの反応生成物が含まれる。単官能性フェノールの例には、フェノール、クレゾール、2−ブロモ−4−メチルフェノール、2−アリルフェノール、1,4−アミノフェノール等が含まれる。二官能性フェノール(ポリフェノール性化合物)の例には、フェノールフタラン(phenolphthalane)、ビフェノール、4,4’−メチレン−ジ−フェノール、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノール−A、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、レゾルシノール、フルオレンビスフェノール等が含まれる。三官能性フェノールの例には、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が含まれる。ポリビニルフェノールも適切なフェノール樹脂であろう。フェノール樹脂は、例えば米国特許第6,207,786号明細書に開示されている。
【0053】
幾つかの態様に於いて使用されるフェノール樹脂は、低いホルムアルデヒド対フェノール比を有してよい。例えば長い保存寿命及び可使(pot life)時間を有し、ホルムアルデヒド非含有硬化技術を使用しそしてダイに対して非腐食性であり、低い溶媒含有量を有し、そして水硬化を生じない2パーツシステムを使用することができる。例えば米国特許出願公開第20050009980号明細書及び米国特許出願公開第20050054787号明細書中に開示されているフェノール樹脂を使用することができる。
【0054】
シアネートエステル系樹脂
本明細書中に開示した態様に於いて有用であるシアネートエステル樹脂には、1種又はそれ以上の、一般式NCOAr(YxArmqOCNの化合物及びオリゴマー並びに/又はポリシアネートエステル並びにこれらの組合せが含まれてよい。上記の式に於いて、それぞれのArは、独立に、単独の又は縮合した、芳香族又は置換された芳香族及びこれらの組合せ並びにオルト、メタ及び/又はパラ位で結合された間の核であり、xは0〜2の整数であり、m及びqは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。Yは酸素、カルボニル、硫黄、酸化硫黄、化学結合、オルト、メタ及び/若しくはパラ位で結合された芳香族並びに/又はCR12、P(R34R’45)若しくはSi(R34R’46)からなる群から選択された結合単位である。R1及びR2は、独立に、水素、ハロゲン化アルカン、例えばフッ素化アルカン並びに/又は置換された芳香族及び/若しくは炭化水素単位であり、ここで、該炭化水素単位は単一で又は複数で結合され、それぞれのR1及び/又はR2について20個以下の炭素原子からなる。R3はアルキル、アリール、アルコキシ又はヒドロキシルである。R’4はR4に等しくてよく、単一で結合された酸素又は化学結合を有する。R5は二重に結合された酸素又は化学結合を有する。R5及びR6は上記のR3と同様に定義される。任意的に、この熱硬化性樹脂はノボラックから誘導されるフェノール/ホルムアルデヒドのシアネートエステル又はそのジシクロペンタジエン誘導体から本質的になっていてよく、その例はザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandによって販売されているXU71787である。
【0055】
本明細書中に開示した一つの態様に於いて、このシアネートエステルには、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、4,4−ジシアナトビフェニル、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、1,4−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン及びレゾルシノールジシアネートが含まれてよい。他のシアネートエステルには、フェノールホルムアルデヒドノボラックのシアネートエステル、フェノールジシクロペンタジエンノボラックのシアネートエステル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタンが含まれてよい。
【0056】
本発明に於いて使用することができるシアネートエステルプリポリマーは、触媒の存在下又は不存在下で、このシアネートエステルの部分硬化によって製造されるプリポリマーである。このようなシアネートエステルプリポリマーの典型的な例は、チバ社(Ciba)によって商品名AROCY M−20で販売されている部分的に硬化されたビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタンである。他のシアネートエステルは、例えば米国特許第7,115,681号明細書、米国特許第7,026,411号明細書、米国特許第6,403,229号明細書及び米国特許第6,194,495号明細書(これらのそれぞれを、参照して本明細書中に含める)中に記載されている。
【0057】
硬化剤(Curing agent/Hardener)
硬化剤は前記の熱硬化性樹脂の硬化を促進するために加えることができる。例えば硬化剤は、ポリマー組成物を形成するための、エポキシ樹脂組成物の架橋を促進するために加えることができる。本明細書中に記載された硬化剤は、個々に又は2種又はそれ以上の混合物として使用することができる。
【0058】
硬化剤には、第一級及び第二級ポリアミン及びこれらの付加物、無水物並びにポリアミドが含まれてよい。例えば多官能性アミンには、脂肪族アミン化合物、例えばジエチレントリアミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.20)、トリエチレンテトラミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.24)、テトラエチレンペンタミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.26)並びにエポキシ樹脂、希釈剤又は他のアミン反応性化合物と上記アミンの付加物が含まれてよい。芳香族アミン、例えばメタフェニレンジアミン及びジアミンジフェニルスルホン、脂肪族ポリアミン、例えばアミノエチルピペラジン及びポリエチレンポリアミン並びに芳香族ポリアミン、例えばメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びジエチルトルエンジアミンも使用することができる。
【0059】
無水物硬化剤には、例えば、とりわけ、メチルナド酸無水物(nadic methyl anhydride)、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物及びメチルテトラヒドロフタル酸無水物が含まれてよい。
【0060】
硬化剤には、フェノール誘導又は置換フェノール誘導のノボラック又は無水物が含まれてよい。適切な硬化剤の非限定例には、フェノールノボラック硬化剤、クレゾールノボラック硬化剤、ジシクロペンタジエンフェノール硬化剤、リモネン型硬化剤、無水物及びこれらの混合物が含まれる。
【0061】
幾つかの態様に於いて、フェノールノボラック硬化剤はビフェニル又はナフチル単位を含有してよい。フェノール性ヒドロキシ基はこの化合物のビフェニル又はナフチル単位に結合していてよい。この型の硬化剤は、例えば欧州特許出願公開第915118A1号明細書に記載の方法に従って製造することができる。例えばビフェニル単位を含有する硬化剤は、フェノールをビスメトキシ−メチレンビフェニルと反応させることによって製造することができる。
【0062】
他の態様に於いて、硬化剤には、ジシアンジアミド及びジアミノシクロヘキサンが含まれてよい。硬化剤には、また、イミダゾール、それらの塩及び付加物が含まれてよい。これらのエポキシ硬化剤は、典型的に、室温で固体である。適切なイミダゾール硬化剤の例は欧州特許出願公開第906927A1号明細書中に開示されている。他の硬化剤には、芳香族アミン、脂肪族アミン、無水物及びフェノールが含まれる。
【0063】
幾つかの態様に於いて、硬化剤はアミノ基当たり500以下の分子量を有するアミノ化合物、例えば芳香族アミン又はグアニジン誘導体であってよい。アミノ硬化剤の例には、4−クロロフェニル−N,N−ジメチルウレア及び3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチルウレアが含まれる。
【0064】
本明細書中に開示した態様に於いて有用である硬化剤の他の例には、3,3’−及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;メチレンジアニリン;シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からEPON1062として入手可能なビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン及びシェル・ケミカル社からEPON1061として入手可能なビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンが含まれる。
【0065】
エポキシ化合物のためのチオール硬化剤を使用することができ、これらは例えば米国特許第5,374,668号明細書に記載されている。本明細書中に使用されるとき、「チオール」には、また、ポリチオール又はポリメルカプタン硬化剤が含まれる。例示的チオールには、脂肪族チオール、例えばメタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2−メルカプトエチル−2,3−ジメルカプトスクシネート、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコール ビス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパン トリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトール テトラ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラ(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパン トリス(β−チオプロピオネート)、プロポキシル化アルカンのトリグリシジルエーテルのトリス−メルカプタン誘導体及びジペンタエリスリトール ポリ(β−チオプロピオネート);脂肪族チオールのハロゲン置換誘導体;芳香族チオール、例えばジ−、トリス−又はテトラ−メルカプトベンゼン、ジ−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、トルエンジチオール及びナフタレンジチオール;芳香族チオールのハロゲン置換誘導体;複素環式環含有チオール、例えばアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アルコキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アリールオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート;複素環式環含有チオールのハロゲン置換誘導体;少なくとも2個のメルカプト基を有し、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有するチオール化合物、例えばビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、ビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキルチオ)アルカン、ビス(メルカプトアルキル)ジスルフィド、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトアセテート)、メルカプトエチルエーテルビス(メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(メルカプトアセテート)、チオジグリコール酸ビス(メルカプトアルキルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、4,4−チオ酪酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、3,4−チオフェンジチオール、ビスマスチオール及び2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが含まれる。
【0066】
エポキシ樹脂、アクリロニトリル又は(メタ)アクリレートの付加によって変性された脂肪族ポリアミンも、硬化剤として利用することができる。更に、種々のマンニッヒ塩基を使用することができる。アミン基が芳香族環に直接結合している芳香族アミンも使用することができる。
【0067】
本発明に於いて使用するための硬化剤の安定性はメーカー仕様書又は日常的実験を参照して決定することができる。メーカー仕様書は、硬化剤が液体又は固体エポキシと混合するための所望の温度で無定形固体であるか又は結晶性固体であるかを決定するために使用することができる。その代わりに、固体硬化剤の無定形又は結晶性特性及び液体形又は固体形であるエポキシ樹脂と混合するための硬化剤の安定性を決定するために、簡単な結晶学を使用して、固体硬化剤を試験することができる。
【0068】
幾つかの態様に於いて、硬化剤は、約0.2〜約5、他の態様に於いて約0.5〜2、他の態様に於いて約0.8〜1.25、更に他の態様に於いて約0.9〜1.1の、それぞれの反応性基のモル比(熱硬化性樹脂対硬化剤)を達成するための濃度で使用することができる。
【0069】
連鎖延長剤
連鎖延長剤を、本明細書中に記載した組成物中の任意の成分として使用することができる。連鎖延長剤として本明細書中に開示した硬化性組成物の態様に於いて使用することができる化合物には、分子当たり平均約2個の、隣接するエポキシ基と反応性である水素原子を有する任意の化合物が含まれる。幾つかの態様に於いて、例えば2個のフェノール性ヒドロキシ基を有するキサンテン、フタレイン及びスルホンフタレインを含む、二価及び多価フェノール性化合物を使用することができる。
【0070】
幾つかの態様に於いて、連鎖延長剤には、フェノール性ヒドロキシル含有化合物、例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールK、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラ第三級ブチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、フェノールフタレイン、フェノールスルホンフタレイン、フルオレセイン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラブロモジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−2,6,2’,6’−テトラブロモ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ジシクロペンタジエン又はそのオリゴマーとフェノール性化合物との反応生成物、これらの混合物等が含まれてよい。他の適切な連鎖延長剤には、例えばアニリン、トルイジン、ブチルアミン、エタノールアミン、N,N’−ジメチルフェニレンジアミン、フタル酸、アジピン酸、フマル酸、1,2−ジメルカプト−4−メチルベンゼン、ジフェニルオキシドジチオール、1,4−ブタンジチオール、これらの混合物等が含まれてよい。
【0071】
他の態様に於いて、連鎖延長剤は窒素含有モノマー、例えばイソシアネート及びアミン又はアミドであってよい。幾つかの態様に於いて、連鎖延長剤には、国際特許出願公開第WO99/00451号明細書及び米国特許第5,112,932号明細書(これらのそれぞれを、参照して本明細書中に含める)中に記載されているようなエポキシ−ポリイソシアネート化合物が含まれてよい。連鎖延長剤として有用であるイソシアネート化合物には、例えばMDI、TDI及びこれらの異性体が含まれる。
【0072】
窒素含有連鎖延長剤は、また、例えばエポキシ基と反応することができる2個のN−H結合を有するエポキシ末端アミン化合物を形成するアミン−又はアミノアミド含有化合物であってよい。アミン含有連鎖延長剤には、例えば、一般式R−NH2(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル又はアリール単位である)のモノ第一級アミン、一般式R−NH−R’−NH−R”(式中、R、R’及びR”はアルキル、シクロアルキル又はアリール単位である)のジ第二級アミン及び複素環式ジ第二級アミン(但し、N原子の一方又は両方は窒素含有複素環式化合物の一部である)が含まれる。アミン含有連鎖延長剤の例には、2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン又は2,6−キシリジン(1−アミノ−2,6−ジメチルベンゼン)が含まれてよい。芳香族ジアミン、例えば3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン又は4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)及び3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルを、他の態様に於いて使用することができる。
【0073】
連鎖延長剤として有用なアミノアミド含有化合物には、例えば追加的に1個の第一級アミノ基又は2個の第二級アミノ基を有する、カルボン酸アミドの誘導体並びにスルホン酸アミドの誘導体が含まれる。このような化合物の例には、アミノ−アリールカルボン酸アミド及びアミノ−アリールスルホンアミド、例えばスルファニルアミド(4−アミノベンゼンスルホンアミド)及びアントラニルアミド(2−アミノベンズアミド)が含まれる。
【0074】
幾つかの態様に於いて、連鎖延長剤の量は、エポキシ樹脂基準で1〜40重量%の量で使用することができる。他の態様に於いて、連鎖延長剤は、それぞれエポキシ樹脂の量基準で、2〜35重量%、他の態様に於いて3〜30重量%、更に他の態様に於いて、5〜25重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0075】
溶媒
硬化性エポキシ樹脂組成物に添加することができる別の任意の成分は、溶媒又は溶媒のブレンドである。エポキシ樹脂組成物中に使用される溶媒は、この樹脂組成物中の他の成分と混和性であってよい。使用される溶媒は、電気ラミネートを製造する際に典型的に使用されるものから選択することができる。本発明に於いて使用される適切な溶媒の例には、例えばケトン、エーテル、アセテート、芳香族炭化水素、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、グリコールエーテル及びこれらの組合せが含まれる。
【0076】
触媒及び抑制剤のための溶媒には、極性溶媒が含まれてよい。炭素数1〜20の低級アルコール、例えばメタノールは、プリプレグが形成されるとき樹脂マトリックスから除去するために良好な溶解度及び揮発度を提供する。他の有用な溶媒には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール及びグリセリンが含まれてよい。
【0077】
硬化性エポキシ樹脂組成物中に使用される溶媒の全量は、一般的に、幾つかの態様に於いて約1〜約65重量%の範囲であってよい。他の態様に於いて、溶媒の全量は2〜60重量%、他の態様に於いて3〜50重量%、更に他の態様に於いて5〜40重量%の範囲であってよい。
【0078】
触媒
幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂成分と硬化剤との間の反応を促進するために、触媒を使用することができる。触媒には、例えばイミダゾール又は第三級アミンが含まれてよい。他の触媒には、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩等;ベンジルジメチルアミン;ジメチルアミノメチルフェノール及びアミン、例えばトリエチルアミン、イミダゾール誘導体等が含まれてよい。
【0079】
第三級アミン触媒は、例えば米国特許第5,385,990号明細書(参照して本明細書中に含める)中に記載されている。例示的第三級アミンには、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、m−キシリレンジ(ジメチルアミン)、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルヒドロキシピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノエタン、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルデシルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチル−1,3−(4−ピペリジノ)プロパン、ピリジン等が含まれる。他の第三級アミンには、1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、1,8−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、4−(N−ピロリジノ)ピリジン、トリエチルアミン及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが含まれる。
【0080】
触媒には、分子当たり1個のイミダゾール環を有する化合物を含有するイミダゾール化合物、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等並びに上記のヒドロキシメチル含有イミダゾール化合物、例えば2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを脱水し、それらを脱ホルムアルデヒド反応により縮合することによって得られる、分子当たり2個又はそれ以上のイミダゾール環を含有する化合物、例えば4,4’−メチレン−ビス−(2−エチル−5−メチルイミダゾール)等が含まれてよい。
【0081】
シアネートエステル樹脂と共に使用することができる触媒には、例えばカルボン酸塩、フェノール、アルコール、アミン、尿素誘導体、イミダゾール及び金属キレートが含まれてよい。幾つかの態様に於いて、この触媒には、亜鉛、コバルト、銅、マンガン、鉄、ニッケル又はアルミニウムのオクトエート(octoate)、カルボキシレート又はアセチルアセトネート塩が含まれてよい。
【0082】
フェノール樹脂を形成するために使用することができる触媒には、例えば種々のアミン及びヒドロキシドが含まれてよく、それらの例には、苛性水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム及びトリエタノールアミンが含まれる。
【0083】
幾つかの態様に於いて、2種又はそれ以上の触媒の組合せを使用することができる。他の態様に於いて、使用される少なくとも1種の触媒は、組成物中に使用される硬化剤の温度よりも高い温度で反応することができる。例えば硬化剤が150℃の温度で反応を開始する場合、触媒は180℃で反応を開始することができる。
【0084】
本明細書中に開示した硬化性組成物中に使用される触媒の濃度は、熱硬化性樹脂及び使用する場合硬化剤の全重量基準で約10重量ppm〜約5重量%、他の態様に於いて、約100重量ppm〜3重量%、更に他の態様に於いて、1000重量ppm〜2重量%であってよい。
【0085】
耐高温性熱可塑性樹脂
減衰範囲、高温度での性能及び加工性の少なくとも1個を改良するために、耐高温性熱可塑性樹脂を、前記の熱硬化性樹脂と組み合わせることができる。例えば耐高温性熱可塑性樹脂には、とりわけ、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシフェニレン、ポリスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、アセタール、ポリイミド及びポリアリーレンスルフィドが含まれてよい。
【0086】
ポリフェニレンエーテル及びそれらの製造方法の例は、例えば米国特許第4,734,485号明細書に記載されている。ポリアリーレンスルフィドの例は、例えば米国特許第5,064,884号明細書に記載されている。ポリアリールエーテルケトンの例は、例えば米国特許第5,122,588号明細書に記載されている。
【0087】
ポリエーテルイミド樹脂には、例えば米国特許第6,753,365号明細書に記載されているような、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、パラフェニレンジアミン及びメタフェニレンジアミンの1種又はそれ以上との溶融重合によって形成される反応生成物が含まれてよい。他のポリエーテルイミド樹脂には、例えば、とりわけ、米国特許第6,239,232号明細書、米国特許第6,403,684号明細書及び米国特許第6,011,122号明細書に記載されているものが含まれてよい。他の耐高温性熱可塑性樹脂は、例えば、とりわけ、米国特許第6,548,608号明細書、米国特許第3,984,604号明細書、米国特許第6,894,102号明細書、米国特許第6,890,973号明細書、米国特許第6,875,804号明細書、米国特許第6,008,293号明細書及び米国特許第5,352,727号明細書に記載されている。
【0088】
本明細書中に開示した熱硬化性組成物の態様に於いて使用される耐高温性熱可塑性樹脂は、約100℃で約5重量%よりも多くの熱分解を受けない任意の熱可塑性樹脂から選択することができる。他の態様に於いて、この熱可塑性樹脂は、約150℃で、更に他の態様に於いて約200℃で約5重量%よりも多くの熱分解を受けない。
【0089】
耐高温性熱可塑性樹脂の濃度は、熱硬化性組成物の全重量基準で、約0.1%〜60%、他の態様に於いて約0.5重量%〜50重量%、他の態様に於いて約1重量%〜40重量%、他の態様に於いて約2重量%〜約30重量%、更に他の態様に於いて約5重量%〜20重量%であってよい。
【0090】
幾つかの態様に於いて、得られる熱硬化防振材組成物は、熱硬化樹脂相及び高温熱可塑性樹脂相を含めて、別個の相を有する。本明細書中に開示した組成物は、硬化した熱硬化性樹脂が連続相を形成するような最大濃度よりも低い高温熱可塑性樹脂の濃度を維持しなくてはならない。幾つかの態様に於いて、熱可塑性樹脂相は、分散された熱可塑性ドメインのサイズが、約100ミクロンよりも小さく、他の態様に於いて50ミクロンよりも小さい、他の態様に於いて20ミクロンよりも小さく、他の態様に於いて10ミクロンよりも小さく、更に他の態様に於いて5ミクロンよりも小さいように、熱硬化ネットワーク中で分離して分散された粒子を形成する。
【0091】
任意の添加剤
この組成物には、また、熱硬化性又はエポキシシステム中に一般的に見出される任意の添加剤及び充填剤が含有されていてよい。例えば種々の態様に於いて開示された熱硬化組成物及び防振材材料には、強化剤、硬化抑制剤、湿潤材、着色剤、加工助剤、UV遮断化合物、蛍光化合物及びその他の添加剤が含有されていてよい。
【0092】
添加剤及び充填剤には、とりわけ、シリカ、ガラス、タルク、石英、金属粉末、二酸化チタン、湿潤剤、顔料、着色剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、イオンスカベンジャー、UV安定剤、柔軟剤及び粘着付与剤が含まれてよい。添加剤及び充填剤には、また、とりわけ、ヒュームドシリカ、骨材、例えばガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、研磨顔料、粘度低下剤、窒化ホウ素、雲母、核生成剤及び安定剤が含まれてよい。充填剤及び変性剤は、エポキシ樹脂組成物に添加する前に水分を追い出すために予熱することができる。更に、これらの任意の添加剤は、硬化の前及び/又は後に、組成物の特性に影響を有し得、組成物及び所望の反応生成物を配合するとき考慮に入れなくてはならない。
【0093】
他の態様に於いて、本明細書中に開示した組成物には、強化剤が含有されていてよい。強化剤はポリマーマトリックス中に第二相を形成することによって機能する。この第二相はゴム状であり、従って、亀裂成長阻止が可能であり、改良された衝撃靱性を与える。強化剤には、ポリスルホン、ケイ素含有エラストマー性ポリマー、ポリシロキサン及び当該技術分野で公知の他のゴム強化剤が含まれてよい。
【0094】
本明細書中に開示した態様に於いて使用される無機充填剤は約1mmよりも小さく、他の態様に於いて約100ミクロンよりも小さく、他の態様に於いて約50ミクロンよりも小さく、他の態様に於いて約10ミクロンよりも小さく、他の態様に於いて2nmよりも大きく、他の態様に於いて10nmよりも大きく、他の態様に於いて20nmよりも大きく、更に他の態様に於いて50nmよりも大きい、少なくとも1個の平均寸法を有してよい。
【0095】
他の態様に於いて、本明細書中に開示した熱硬化性組成物には、繊維状強化材料、例えば連続及び/又は細断された繊維が含有されていてよい。繊維状強化材料には、ガラス繊維、炭素繊維又は有機繊維、例えばポリアミド、ポリイミド及びポリエステルが含まれてよい。この熱硬化性組成物の態様中に使用される繊維状強化材の濃度は、組成物の全重量基準で、約1重量%〜約95重量%、他の態様に於いて約5重量%〜90重量%、他の態様に於いて約10重量%〜80重量%、他の態様に於いて約20重量%〜70重量%、更に他の態様に於いて30重量%〜60重量%であってよい。
【0096】
他の態様に於いて、本明細書中に開示した組成物には、ナノ充填剤が含有されていてよい。ナノ充填剤には、無機系、有機系又は金属系のものが含まれてよく、粉末、ホイスカー、繊維、プレート又はフィルムの形態であってよい。このナノ充填剤は、一般的に、約0.1〜約100ナノメートルの少なくとも1個の寸法(長さ、幅又は厚さ)を有する任意の充填剤又は充填剤の組合せであってよい。例えば、粉末について、少なくとも1個の寸法は、粒子サイズとして特徴付けることができ、ホイスカー及び繊維について、少なくとも1個の寸法は、直径であり、プレート及びフィルムについて、少なくとも1個の寸法は、厚さである。例えば、クレーを、エポキシ樹脂系マトリックス中に分散させることができ、剪断下でエポキシ樹脂中に分散させたとき非常に薄い構成層に破壊することができる。ナノ充填剤には、クレー、有機クレー、カーボンナノチューブ、ナノホイスカー(例えばSiC)、SiO2、元素、アニオン又は周期表のs、p、d及びf族から選択された1種又はそれ以上の元素の塩、金属、金属酸化物及びセラミックスが含まれてよい。
【0097】
上記の添加剤の何れかの濃度は、本明細書中に記載された熱硬化性組成物中に使用されるとき、組成物の全重量基準で、約1%〜95%、他の態様に於いて2%〜90%、他の態様に於いて5%〜80%、他の態様に於いて10%〜60%、更に他の態様に於いて15%〜50%であってよい。
【0098】
基体
基体又は物体は特別の制限を受けない。それで、基体には、金属、例えばステンレススチール、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、アルマイト等、このような金属の合金及びこのような金属によってめっきされたシート及びこのような金属の積層シートが含まれてよい。基体には、また、ポリマー、ガラス及び種々の繊維、例えば炭素/グラファイト;ホウ素;石英;酸化アルミニウム;ガラス、例えばEガラス、Sガラス、S−2GLASS(登録商標)又はCガラス及び炭化ケイ素又は炭化ケイ素繊維含有チタンが含まれてよい。市販の繊維には、有機繊維、例えばケブラー(KEVLAR);酸化アルミニウム含有繊維、例えば3M社からのNEXTEL繊維;炭化ケイ素繊維、例えば日本カーボン社からのNICALON及び炭化ケイ素繊維含有チタン、例えば宇部興産社からのTYRRANOが含まれてよい。幾つかの態様に於いて、基体は、基体への硬化性又は硬化組成物の接着を改良するために、相溶化剤で被覆することができる。
【0099】
選択された態様に於いて、本明細書中に記載された硬化性組成物は、高温度に耐えることができない基体のための被覆物として使用することができる。他の態様に於いて、この硬化性組成物は、その寸法及び形状が、均一に加熱しようとすることを困難にする基体に、例えば風車羽根と共に使用することができる。
【0100】
コンポジット及び被覆された構造物
本明細書中に記載した硬化性組成物及びコンポジットはエポキシ樹脂及び温度安定触媒の化学量論的過剰を含む、それらを前記のようにして硬化させる前のエポキシ樹脂組成に於ける変更を考慮して、従来どおり製造することができる。幾つかの態様に於いて、コンポジットは本明細書中に開示した硬化性組成物を硬化させることによって形成することができる。他の態様に於いて、コンポジットは、例えば基体又は強化材料を含浸又は被覆し、硬化性組成物を硬化させることによって、硬化性エポキシ樹脂組成物を基体又は強化材料に適用することによって形成することができる。
【0101】
前記の硬化性組成物は粉末、スラリー又は液体の形状であってよい。硬化性組成物を前記のようにして製造した後、硬化性組成物の硬化の前、間又は後に、これを、前記の基体の上、中又は間に配置することができる。
【0102】
例えばコンポジットは基体を硬化性組成物によって被覆することによって形成することができる。皮膜はスプレーコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーター若しくはグラビアコーターによる被覆、刷毛コーティング及び漬け又は浸漬コーティングを含む、種々の手順によって行うことができる。
【0103】
種々の態様に於いて、基体は単層又は多層であってよい。例えば基体は、とりわけ、例えば2種のアロイのコンポジット、多層ポリマー物品及び金属被覆ポリマーであってよい。他の種々の態様に於いて、硬化性組成物の1個又はそれ以上の層を、基体の上に配置することができる。例えば本明細書中に記載したようなポリウレタン富化硬化性組成物によって被覆された基体を、エポキシ樹脂富化硬化性組成物によって追加的に被覆することができる。基体層及び硬化性組成物層の種々の組合せによって形成された他の多層コンポジットも、ここで予想される。
【0104】
幾つかの態様に於いて、硬化性組成物の加熱は、例えば温度感受性基体の過熱を回避するために、局在化させることができる。他の態様に於いて、この加熱には、基体を加熱すること及び硬化性組成物を加熱することが含まれる。
【0105】
一つの態様に於いて、前記の硬化性組成物、コンポジット及び被覆された構造物を、硬化剤の反応を開始するために十分な温度まで硬化性組成物を加熱することによって硬化させることができる。初期硬化の間に、硬化剤が反応するとき、第二級ヒドロキシル基が形成され得る。硬化剤とエポキシとの少なくとも部分的反応に続いて、硬化性組成物、コンポジット又は被覆された構造物の温度は、触媒が、第二級ヒドロキシル基と過剰のエポキシ樹脂との反応に触媒作用するために十分な温度まで上昇することができる。この方法に於いて、化学量論的過剰のエポキシは、エポキシ熱硬化樹脂の顕著な劣化無しに反応させられることができる。
【0106】
幾つかの態様に於いて、過剰のエポキシの反応の間に形成する追加の架橋はエポキシ熱硬化樹脂の嵩密度を低下させることができる。他の態様に於いて、この追加の架橋はエポキシ熱硬化樹脂の破壊靱性を増加させることができる。更に他の態様に於いて、化学量論的過剰のエポキシの反応は、先行技術に於いて記載されているような、未反応のエポキシが熱硬化組成物上に有する有害な影響を回避することができ、とりわけ、適切な又は改良された耐熱性、耐溶媒性、低い水分吸収、リフロー(reflow)信頼性、電気的特性、ガラス転移温度及び接着の1個又はそれ以上を有する熱硬化組成物になることができる。
【0107】
本明細書中に開示した硬化性組成物の硬化は、エポキシ樹脂、硬化剤及び使用する場合触媒に依存して、数分間〜数時間の期間、少なくとも約30℃、約250℃以下の温度を必要とするであろう。他の態様に於いて、硬化は、数分間〜数時間の期間、少なくとも100℃の温度で起こり得る。後処理を同様に使用することができ、このような後処理は、通常、約100℃〜250℃の温度である。
【0108】
幾つかの態様に於いて、硬化は発熱を防ぐために段階化することができる。段階化には、例えば或る温度で或る時間硬化させ、続いてより高い或る温度で或る時間硬化させることが含まれる。段階化硬化には、2個又はそれ以上の硬化段階が含まれてよく、幾つかの態様に於いて約180℃よりも低い、他の態様に於いて約150℃よりも低い温度で開始することができる。
【0109】
幾つかの態様に於いて、硬化温度は30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃の下限から、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃の上限までの範囲(この範囲は、任意の下限から任意の上限までであってよい)であってよい。
【0110】
本明細書中に開示した硬化性組成物は、高強度フィラメント又は繊維、例えば炭素(グラファイト)、ガラス、ホウ素等を含有するコンポジットに於いて有用であり得る。コンポジットには、コンポジットの全体積基準で、幾つかの態様に於いて約30%〜約70%、他の態様に於いて40%〜70%のこれらの繊維が含有されていてよい。
【0111】
繊維強化コンポジットは、例えばホットメルトプリプレグ形成によって形成することができる。プリプレグ形成方法は、連続繊維のバンド又は布帛を、溶融状態にある本明細書中に記載したような熱硬化性エポキシ樹脂組成物によって含浸させてプリプレグを得、これを堆積し、硬化させて、繊維及び熱硬化樹脂のコンポジットをもたらすことによって特徴付けられる。
【0112】
本明細書中に開示したエポキシ系組成物を含有するコンポジットを形成するために、他の加工技術を使用することができる。例えばフィラメント巻き付け、溶媒プリプレグ形成及び引抜成形が典型的な加工技術であり、これらでは未硬化のエポキシ樹脂を使用することができる。更に、束の形状にある繊維を、未硬化のエポキシ樹脂組成物によって被覆し、フィラメント巻き付けによるようにして堆積し、硬化させて、コンポジットを形成することができる。
【0113】
本明細書中に記載した硬化性組成物及びコンポジットは接着剤、構造的及び電気的ラミネート、コーティング、注型品、航空宇宙工業用の構造物、エレクトロニクス工業用の回路基板等、風車羽根として並びにスキー、スキーポール、釣竿及びその他のアウトドアスポーツ器具の形成のために有用であり得る。本明細書中に開示したエポキシ組成物は、また、とりわけ、電気ワニス(electrical varnish)、カプセル化材、半導体、一般的成形粉末、フィラメント巻きパイプ、貯蔵タンク、ポンプ用内張及び耐蝕性コーティングに於いて使用することもできる。
【実施例】
【0114】
例A1及びA2
例A1及びA2を、表1に示したような樹脂及び硬化剤を、適切な溶媒中で、環境温度で混合することによって製造する。熱硬化性樹脂PNは104のフェノール当量重量、PhEWを有する低分子量フェノールノボラックであり、硬化剤ZEは5−エチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタンのオキサゾリジンである。より高い粘度の配合物について、配合物を60℃〜80℃の温度まで加温して、成分の混合物についての粘度を低下させる。この混合物を脱気し、開放金型内に注ぐことによって注型品を製造する。次いで、この注型品を、換気オーブン内で、150℃で10分間、180℃で10分間及び200℃で10分間硬化させる。硬化に続いて、注型品を環境温度まで冷却させる。配合及び動的機械的熱分析を使用して測定したときの硬化組成物の特性を、表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
例A3及びA4
例A3及びA4を、表2に示したような樹脂、硬化剤及び触媒を、適切な溶媒中で混合することによって製造する。熱硬化性エポキシ樹脂E1は180のエポキシ当量重量、EEWを有するビスフェノールAのグリシジルエーテルであり、熱硬化性エポキシ樹脂E2は180のエポキシ当量重量、EEWを有するエポキシノボラックであり、トリアジンT1は、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンのトリアジンホモポリマーであり、ビスマレイミドB1は、ジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミドであり、触媒C1はMEK(メチルエチルケトン)溶液中の亜鉛−ビス(2−エチルヘキサノエート)である。配合物を100℃〜120℃の温度まで加温して、成分の混合物についての粘度を低下させる。この配合物を開放金型内に注ぐことによって注型品を製造する。次いで、この注型品を、換気オーブン内で、170℃で60分間及び200℃で90分間硬化させる。硬化に続いて、注型品を環境温度まで冷却させる。配合及び動的機械的熱分析を使用して測定したときの硬化組成物の特性を、表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
例A5
例A5を、表3に示したような樹脂、硬化剤、添加剤及び触媒を混合することによって製造する。熱硬化性エポキシ樹脂E2は187のエポキシ当量重量、EEWを有するビスフェノールAのグリシジルエーテルであり、熱硬化性エポキシ樹脂E3は135のエポキシ当量重量、EEWを有する3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり、硬化剤H1は168の無水物当量重量、AnhEWを有するメチル ヘキサヒドロフタル酸無水物であり、硬化剤H2は154の無水物当量重量、AnhEWを有するヘキサヒドロフタル酸無水物であり、触媒C2は1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールであり、そして充填剤F1は約16ミクロンの中間粒子サイズを有する結晶性シリカ充填剤である。配合物を約60℃の温度まで加温して、成分の混合物についての粘度を低下させる。この混合物を60℃で15分間脱気し、この配合物を開放金型内に注ぐことによって注型品を製造する。次いで、この注型品を、換気オーブン内で、65℃で95分間、75℃で75分間、115℃で80分間及び150℃で60分間硬化させる。硬化に続いて、注型品を環境温度まで冷却させる。配合及び動的機械的熱分析を使用して測定したときの硬化組成物の特性を、表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
例A6
モレキュラーシーブス上で予備乾燥した、約425の平均分子量のポリプロピレングリコール50gに無水のジクロロメタン123グラムを加えて、機械式攪拌機、還流凝縮器、温度計、粉末用のスクリュー型供給漏斗及び乾燥窒素(これは、操作の全ての継続の間にゆっくり流される)用の入口供給チューブを取り付けた、十分な容量の五つ口フラスコ内に入れる。次いで、温度を20℃〜25℃に調節し、全プロセスの間この温度で維持する。次いで、40℃〜50℃で真空下で乾燥した粉末にしたヨウ化カリウム11.36gを、攪拌下でフラスコの中に徐々に供給する。この混合物を、これが透明になるまで撹拌する。次いで、得られる溶液から溶媒の大部分を、大気圧下で、50℃〜60℃を超えない温度で蒸留によって除去する。次いで、残留するジクロロメタンを、ロータリーエバポレーターにより、減圧下で、再び50℃〜60℃で、注意深く除去する。この方法で調製した触媒は、15℃〜25℃で、黄色みを帯びた透明で油状の液体である。
【0121】
上記形成したヨウ化カリウム触媒0.6グラムを、約185のエポキシ当量重量、EEWを有するビフェノールAのジグリシジルエーテル35.3グラム及び約143の分子量を有するメチレンジイソシアネート58.5グラムと混合する。この混合物を、100℃〜120℃の温度まで加温して、成分の混合物についての粘度を低下させる。この配合物を開放金型内に注ぐことによって注型品を製造する。次いで、この注型品を、換気オーブン内で、150℃で約2時間硬化させる。硬化に続いて、注型品を環境温度まで冷却させる。配合及び動的機械的熱分析を使用して測定したときの硬化組成物の特性を、表4及び図1に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
有利には、本明細書中に開示した態様は、高温度における振動の効率的な減衰を提供することができる。本明細書中に記載した組成物は、高いガラス転移温度及び高い減衰係数の両方を含むことができる。高温度環境で使用するために基体上に配置されたとき、本明細書中に記載した減衰材組成物は、振動を効率よく減衰することができ、他の利点の中で、延長された部品寿命及び改良された部品性能の1個又はそれ以上になる。
【0124】
この開示には、態様の限定された数字が含まれているが、この開示の利益を有する当業者は、本件開示の範囲から逸脱しない他の態様を案出できることを認識するであろう。従って、この範囲は、付属する特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有する、熱硬化組成物を配置してコンポジットを形成する工程、
前記コンポジットを100℃又はそれ以上の温度で振動に曝す工程
を含んでなる物品中の振動の減衰方法。
【請求項2】
硬化性組成物を硬化させて熱硬化組成物を形成する工程を更に含んでなり、該硬化性組成物が少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び硬化剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び硬化剤を混合して硬化性組成物を形成する工程を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒、無機充填剤、繊維状強化剤、耐高温性熱可塑性樹脂、溶媒及び添加剤の少なくとも1種を混合して、硬化性組成物を形成する工程をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記耐高温性熱可塑性樹脂がポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシフェニレン、ポリスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、アセタール、ポリイミド及びポリアリーレンスルフィドの少なくとも1種を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シクロ脂肪族エポキシ樹脂及びシアネートエステル系樹脂の少なくとも1種を含む請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基体上に配置された、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有する熱硬化組成物を含んでなる上昇した温度で改良された減衰特性を有するコンポジットであって、100℃又はそれ以上の温度で振動に曝されるコンポジット。
【請求項8】
前記熱硬化組成物が、少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び少なくとも1種の硬化剤を含んでなる硬化性組成物の反応生成物を含む架橋した組成物を含んでなり、前記熱硬化性樹脂がエポキシ、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シクロ脂肪族エポキシ樹脂及びシアネートエステル系樹脂の少なくとも1種を含む請求項7に記載のコンポジット。
【請求項9】
前記熱硬化組成物が耐高温性熱可塑性樹脂を更に含有する請求項8に記載のコンポジット。
【請求項10】
前記高温度耐性熱可塑性樹脂がポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシフェニレン、ポリスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、アセタール、ポリイミド及びポリアリーレンスルフィドの少なくとも1種を含む請求項9に記載のコンポジット。
【請求項11】
前記熱硬化組成物が触媒、無機充填剤、溶媒、強化剤及び繊維状強化剤の少なくとも1種を更に含む請求項8〜10のいずれか1項に記載のコンポジット。
【請求項12】
少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性組成物の反応生成物を含んでなる、上昇した温度で改良された減衰特性を有する熱硬化組成物であって、該熱硬化組成物が、それぞれ、1Hzの振動数で動的機械的熱分析(DMTA)によって測定したときに、150℃又はそれ以上のガラス転移温度、0.2又はそれ以上のtanδピーク及び約40℃よりも大きい半高さで測定したtanδピーク幅を有する熱硬化組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の前記熱硬化性樹脂がエポキシ、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シクロ脂肪族エポキシ樹脂及びシアネートエステル系樹脂の少なくとも1種を含む請求項12に記載の熱硬化組成物。
【請求項14】
前記硬化性組成物が耐高温性熱可塑性樹脂を更に含む請求項13に記載のコンポジット。
【請求項15】
前記耐高温性熱可塑性樹脂がポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシフェニレン、ポリスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、アセタール、ポリイミド及びポリアリーレンスルフィドの少なくとも1種を含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記硬化性組成物が触媒、無機充填剤、溶媒、強化剤及び繊維状強化剤の少なくとも1種を更に含む請求項13〜15のいずれか1項に記載の熱硬化組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535321(P2010−535321A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520103(P2010−520103)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/071302
【国際公開番号】WO2009/018194
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】