説明

熱間成形用還元鉄の温度制御方法

【課題】回転炉床炉などの還元炉から高温で排出された還元鉄を、ホットブリケットマシンによる熱間成形に適した温度に、確実にかつ精度良く制御する方法を提供する。
【解決手段】内周面に螺旋状に送り羽根(22)が設けられた回転ドラム(21)内を窒素ガス(D)にて非酸化性雰囲気に維持しつつ、高温還元鉄(B1)を回転ドラム(21)中を通過させる間に、回転ドラム(21)の外周面を冷却水(E)で冷却する間接冷却方式により、還元鉄(B2)を、熱間成形に適した600℃超750℃以下の温度まで冷却する。還元鉄(B2)の冷却温度の制御は、高温還元鉄(B1)の生産速度および高温還元鉄(B1)の回転ドラム(21)への装入温度に応じて、回転ドラム(21)の回転速度、窒素ガス(D)の回転ドラム(21)への供給流量および冷却水(E)の温度のうち少なくとも1つを調整することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭材内装塊成化物を回転炉床炉などの還元炉で加熱還元して得られる高温還元鉄を熱間成形してホットブリケットアイアン(以下「HBI」と略称する。)を製造するに際し、該還元鉄の温度を熱間成形に適した温度に制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の高出銑比操業指向およびCO排出削減の両面の課題に対応できる高炉用の装入原料として、HBIが注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のHBIは、鉄品位の高い焼成ペレットを原料とし天然ガスを改質した還元ガスでシャフト炉などの向流加熱式還元炉にて還元して製造された、いわゆるガスベース還元鉄(以下、還元鉄を「DRI」と略称することあり。)を熱間成形したものであることから、電気炉でスクラップ代替として利用されてはいるものの、高炉用原料としては価格等の理由により実用化に問題があった。
【0004】
一方、近年、低品位の鉄原料と安価な石炭を還元剤とする炭材内装塊成化物を回転炉床炉など輻射加熱式還元炉の高温雰囲気下で還元して得られる、いわゆる石炭ベースDRIの製造技術が開発され、実用化が進められている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
石炭ベースDRIは、内装炭材を還元剤とすることから、ガスベースDRIよりも気孔率が高く、かつ残留炭素の含有量が高いため、強度が低くなる。このため、DRIに高炉装入に耐えるだけの強度を持たせるには、炭材配合量を減らしてDRI中の残留C含有量を極端に低下させ、金属化率を犠牲にしても強度を確保するしかないのが現状であった(非特許文献2の図3参照)。しかも、石炭ベースDRIは従来のガスベースDRIと同様に再酸化されやすいため、長時間の貯蔵や長距離の輸送に向かない。
【0006】
そこで、高強度化および耐再酸化性(耐候性)付与を目的として、従来のガスベースDRIと同様、石炭ベースDRIをHBI化することが考えられる。
【0007】
ところが、還元炉から排出された際の還元鉄の温度は、向流式加熱還元炉を用いる現状のガスベースDRI製造法では750〜900℃程度であるのに対し、輻射加熱式還元炉を用いる石炭ベースDRI製造法では1000〜1100℃程度とより高温になる。このため、現状のガスベースDRI製造法と同様にして、還元炉から排出された還元鉄を実質的に冷却することなく、熱いままブリケットマシンへ供給すると、ブリケットロールの耐熱性の問題、還元鉄がブリケットロールのポケット内に固着して剥離しにくくなる問題など種々の問題が生じる。一方、還元炉から排出された高温の還元鉄をある程度冷却してから熱間成形することが考えられるが、過度に冷却すると還元鉄が硬化して成形性が悪化するため、成形圧を高める必要が生じたり、HBIに割れが発生したりするなどの問題がある。
【0008】
そこで、石炭ベースDRI製造法では、輻射加熱式還元炉から1000〜1100℃程度の高温で排出された還元鉄を、ブリケットマシンによる熱間成形に適した600℃超(好ましくは650℃以上)750℃以下の温度まで確実にかつ精度良く冷却する必要がある。
【0009】
ロータリキルンや回転炉床炉などの輻射加熱式還元炉から排出された高温の還元鉄を冷却する手段としては、下記のように種々の手段が提案されているものの、いずれもHBI化に適した温度に制御することを目的とするものではなく、還元鉄をHBI化することなくそのままの形状で最終的に常温まで冷却することを目的とするものである。
【0010】
[従来技術1]
例えば、特許文献3に開示された技術は、ロータリキルンによって還元された高温の還元鉄をロータリクーラに導入して冷却する際に、ロータリクーラの入り側内壁に設けた掻き上げ装置の仕切枡内の冷却水中に還元鉄を浸漬し、ロータリクーラの回転数および冷却水量を調整して高温の還元鉄を500〜600℃に冷却した後、この冷却された還元鉄を、掻き上げ装置を構成する掻き上げ板の後端側に設けたロータリクーラ内に排出し、ロータリクーラ内を通過中に還元鉄を散水によって間接冷却して常温まで冷却し、系外に排出するものである。
【0011】
しかしながら、本従来技術を、高温の還元鉄をHBI化に適した温度範囲に冷却制御する手段に適用しようとすると、高温の還元鉄を直接水中に浸漬するため、還元鉄が再酸化されてしまう問題があるうえ、還元鉄が瞬時に冷却されるので、精度良く適正な温度範囲に制御することは困難である。
【0012】
[従来技術2]
また、特許文献4に開示された技術は、還元鉄製造設備の排出口部に水槽を配置し、該水槽内の冷却水中に外周および側面に無数の貫通孔を設けた円筒形の冷却装置を浸漬させ、該円筒形冷却装置の内面には所定の間隔をあけて仕切板を配設しておき、該円筒形冷却装置内に還元塊成化物(還元鉄)を装入し、該円筒形冷却装置の回転速度により該還元塊成化物(還元鉄)の浸漬時間を1〜20秒の範囲内に調整することで、前記還元塊成化物(還元鉄)を200〜600℃に冷却するものである。
【0013】
しかしながら、本従来技術も、高温の還元鉄をHBI化に適した温度範囲に冷却制御する手段に適用しようとすると、上記従来技術1と同様、高温の還元鉄を直接水中に浸漬するため、還元鉄が再酸化されてしまう問題があるうえ、還元鉄の温度にばらつきが発生しやすく、精度良く適正な温度範囲に制御することは困難である。
【0014】
[従来技術3]
そこで、特許文献5に開示された技術は、高温の還元鉄を直接水中に浸漬することに代えて、内部が無酸化雰囲気ガスで保持されるとともに、外周面に散水された回転ドラム(ロータリクーラ)内に還元鉄を通過させ、該回転ドラム(ロータリクーラ)の回転速度や前記散水の流量を調整することで400〜600℃に冷却した後、還元鉄を直接水冷して常温まで冷却するものである。
【0015】
本従来技術は、高温の還元鉄を無酸化雰囲気ガス中で間接冷却することから、還元鉄の再酸化の問題は解消されるものの、高温の還元鉄をHBI化に適した温度範囲に冷却制御する手段に適用するには以下の問題点がある。
【0016】
すなわち、本従来技術は、散水された回転ドラムの外周面を介して還元鉄から抜熱するものであることから、還元鉄の温度が低下するほど、還元鉄と回転ドラムの外周面との温度差が小さくなり、還元鉄の冷却速度が低下する。したがって、400〜600℃の温度範囲では還元鉄の冷却速度が十分小さくなることから、繊細な温度制御を要せず、回転ドラムの回転速度や散水流量を調整することで、この温度範囲に冷却制御することは比較的容易である。
【0017】
しかしながら、HBI化に適した600℃超(好ましくは650℃以上)750℃以下の温度範囲では、還元鉄と回転ドラムの外周面との温度差はまだかなり大きく、還元鉄の冷却速度は、400〜600℃の温度範囲での冷却速度に比べて相当大きいため、繊細な温度制御を必要とし、単に回転ドラムの回転速度や散水流量を調整するだけでは、確実に上記HBI化に適した温度範囲に冷却制御することは困難であり、より繊細な温度制御方法が求められていた。
【非特許文献1】宇治澤 優ら:鉄と鋼、vol.92(2006)、No.10、p.591〜600
【非特許文献2】杉山 健ら:「FASTMET(R)法によるダスト処理」、資源・素材2001(札幌)、2001年9月24−26日、平成13年度資源・素材関係学協会合同秋季大会
【特許文献1】特開平11−27611号公報
【特許文献2】特開2001−181721号公報
【特許文献3】特公平7−42523号公報
【特許文献4】特開2002−38211号公報
【特許文献5】特開2001−255068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで本発明の目的は、輻射加熱式還元炉などの還元炉から高温で排出された還元鉄を、ホットブリケットマシンによる熱間成形に適した600℃超750℃以下の温度に、確実にかつ精度良く冷却制御する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、還元炉で還元された高温の還元鉄(以下、「高温還元鉄」という。)を熱間成形してホットブリケットアイアンを製造するに際し、内周面に螺旋状に送り羽根が設けられた回転ドラムを略水平に保持し、該回転ドラム内を不活性ガスにて非酸化性雰囲気に維持しつつ、前記高温還元鉄を該回転ドラム内に装入して該回転ドラムを回転させることにより該回転ドラム中を通過させる間に、該回転ドラムの外周面を冷却流体で冷却する間接冷却方式により、該還元鉄を、熱間成形に適した600℃超750℃以下の温度(以下、「熱間成形適正温度」という。)まで冷却することを特徴とする熱間成形用還元鉄の温度制御方法である。
【0020】
請求項2に記載の発明は、前記冷却流体を水または空気とする請求項1に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法である。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記熱間成形適正温度への冷却を、前記高温還元鉄の生産速度および該高温還元鉄の前記回転ドラムへの装入温度に応じて、前記回転ドラムの回転速度、前記不活性ガスの前記回転ドラムへの供給流量および前記冷却流体の温度のうち少なくとも1つを調整することにより行う請求項1または2に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法である。
【0022】
請求項4に記載の発明は、さらに、前記熱間成形適正温度への冷却を、前記回転ドラム内に遮蔽板を挿入し、前記高温還元鉄の生産速度に応じて、該遮蔽板の前記回転ドラム内への挿入長さ、および/または、該遮蔽板の水平面に対する傾斜角度を調整することにより行う請求項3に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法である。
【0023】
請求項5に記載の発明は、さらに、前記熱間成形適正温度への冷却を、前記回転ドラム内周面に断熱材を着脱可能に設置し、前記高温還元鉄の生産速度に応じて、該断熱材の設置面積を調整することにより行う請求項3または4に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回転ドラム内を不活性ガスにて非酸化性雰囲気に維持しつつ、該回転ドラムの外周面を冷却流体で冷却する間接冷却方式を用いたことで、還元鉄の温度を確実にかつ精度良く熱間成形に適した温度に冷却制御できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
[実施形態1]
図1は本発明の実施に係るHBI製造プロセスの概略構成を示すフロー図であり、(1)は炭材内装酸化鉄塊成化物(A)を1100〜1300℃程度で加熱還元して高温還元鉄(B1)とする還元炉としての回転炉床炉、(2)は該高温還元鉄(B1)を熱間成形に適した温度に冷却するロータリクーラ、(3)は該冷却された還元鉄(以下、「冷却還元鉄」ともいう。)(B2)を熱間で圧縮成形してHBI(C)とするホットブリケットマシンである。なお、以下において、高温還元鉄(B1)および冷却還元鉄(B2)と区別するため、ロータリクーラ内の還元鉄を単に「還元鉄(B)」と称する。
【0027】
ロータリクーラ(2)は、図2に詳細を示すように、内周面に送り羽根(22)が螺旋状に設置された円筒形の回転ドラム(21)が略水平に回転自在に保持され、インバータモータ(23)にて回転駆動される。そして、回転ドラム(21)内にその入口から装入した高温還元鉄(B1)が、回転ドラム(21)の回転に伴って送り羽根(22)のリードにより、回転ドラム(21)の出口方向に向かって移送されるように構成されている。
【0028】
また、回転ドラム(21)には不活性ガスとしての窒素ガス(D)を供給するための窒素ガス供給ライン(24)と、回転ドラム(21)の外周面に冷却流体としての冷却水(E)を噴霧するための冷却水供給ライン(25)が設けられている。そして、回転ドラム(21)内は窒素ガス(D)にて非酸化性雰囲気に維持されるとともに、回転ドラム(21)の外周面が冷却水(E)で冷却され、回転ドラム(21)の出口部に設置された温度計(26)で冷却還元鉄(B2)の温度(以下、「冷却温度」ともいう。)を測定し、この測定値が熱間成形適正温度になるように、回転ドラム(21)の回転速度、および/または、窒素ガス(D)の回転ドラム(21)への供給流量を制御するように構成されている。
【0029】
回転炉床炉(1)から排出された1000〜1100℃程度の高温還元鉄(B1)は、ロータリクーラ(2)の回転ドラム(21)内に装入され、該回転ドラム(21)の回転に伴って該回転ドラム(21)中を通過する間に、外周面が水冷された回転ドラム(21)を介した間接冷却方式により冷却され、該冷却還元鉄(B1)が、次工程のブリケットマシン(3)での熱間成形に適した600℃超(好ましくは650℃以上)750℃以下の温度(熱間成形適正温度)まで冷却される。
【0030】
この還元鉄(B)の熱間成形適正温度への冷却制御(すなわち、還元鉄(B2)の冷却温度の制御)は、高温還元鉄(B1)の生産速度および該高温還元鉄(B1)の前記回転ドラムへの装入温度に応じて、回転ドラム(21)の回転速度、および/または、窒素ガス(D)の回転ドラム(21)への供給流量を調整することにより行うことができる。
【0031】
すなわち、回転ドラム(21)の回転速度の調整については、例えば、回転ドラム(21)の回転速度を上昇させることにより、螺旋状の送り羽根(22)による還元鉄(B)の移送速度が上昇し、回転ドラム(21)内における還元鉄(B)の滞留時間が減少するので、還元鉄(B2)の冷却度合いを減少させる(還元鉄(B2)の冷却温度を上昇させる)ことができる。
【0032】
また、窒素ガス(D)の回転ドラム(21)への供給流量の調整については、例えば、該窒素ガス(D)の供給流量を増加させることにより、回転ドラム(21)内における窒素ガス(D)の線速度が上昇して、還元鉄(B)と窒素ガス(D)との間の伝熱係数が上昇するとともに、回転ドラム(21)内における窒素ガス(D)の平均温度が低下して、還元鉄(B)と窒素ガス(D)との温度差が大きくなるので、還元鉄(B2)の冷却度合いを増加させる(還元鉄(B2)の冷却温度を低下させる)ことができる。
【0033】
ここで、ロータリクーラ(2)の仕様は、回転炉床炉(1)での高温還元鉄(B1)の生産能力(最大生産速度)に合わせて設計する必要があるが、例えば、回転炉床炉(1)で高温還元鉄(B1)をフル生産しているときに、ロータリクーラ(2)で、回転ドラム(21)の回転速度を最小値、上記窒素ガス(D)の供給流量を最大値として、最高温度(例えば、1100℃)の高温還元鉄(B1)を熱間成形適正温度の最低温度(650℃)まで冷却できる能力を持たせるように設計すればよい。
【0034】
そして、回転炉床炉(1)での高温還元鉄(B1)の生産速度をフル生産から低下させていくにしたがって、例えば、最初に、上記窒素ガス(D)の供給流量を最大値から最小値まで減少させた後、次に、回転ドラム(21)の回転速度を最小値から最大値まで上昇させることで、回転炉床炉(1)での高温還元鉄(B1)の生産速度に応じて、還元鉄(B2)の冷却温度を熱間成形適正温度に確実にかつ精度良く制御することができる。
【0035】
なお、上記従来技術3では、冷却水(E)の流量を調整することでも還元鉄(B2)の冷却温度を制御できるとしているが、現実には、冷却水(E)の流量の調整による、還元鉄(B2)の冷却温度の制御は以下の理由により困難である。すなわち、回転ドラム(21)は、コスト面と強度面を考慮して、通常、普通鋼等で製作されることから、その強度維持を兼ねて、冷却水(E)は回転ドラム(21)の外周面に十分な量噴霧されるが、その冷却水(E)の一部が蒸発することで、その蒸発による吸熱を利用して冷却が行われる。したがって、冷却水の流量(噴霧量)を変更しても、蒸発する水の量はあまり変化せず、還元鉄(B)からの抜熱速度にはほとんど影響を与えないためである。
【0036】
(変形例)
上記実施形態1では、還元炉として輻射式還元炉の一種類である回転炉床炉を例示したが、輻射式還元炉の他の種類であるロータリキルンにも当然適用できる。さらに、輻射式還元炉だけでなく、ガスベースDRI製造法に用いられる向流式加熱還元炉においても、現状よりさらに高温の操業が可能になり、還元炉から排出される還元鉄の温度が上昇した場合は、当然に本発明を適用できるようになる。
【0037】
また、上記実施形態1では、不活性ガスとして窒素ガスを例示したが、実質的に酸素を含有しないガスであればよく、例えば、冷却後の回転炉床炉排ガスを用いることもできる。
【0038】
また、上記実施形態1では、冷却流体として水(冷却水)を用いる例を示したが、例えば、高温還元鉄の生産速度が大きく低下して冷却水を用いると還元鉄が過度に冷却されてしまうような場合には、水に代えて空気を用いてもよい。空気を用いる場合は、加熱された空気を回収して、例えば回転炉床炉の加熱用バーナの燃焼用空気として、その顕熱を有効に利用することもできる。
【0039】
また、上記実施形態1では、高温還元鉄の生産速度を低下させる際における還元鉄の冷却温度の制御の順番として、窒素ガスの供給流量を最小値まで減少させた後に、回転ドラムの回転速度を上昇させる例を示したが、これらの手段を逆の順番にしてもよく、また、窒素ガス供給流量の変更と回転ドラムの回転速度の変更を同時に行うようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態1では、熱間成形適正温度への冷却の制御を、回転ドラムの回転速度、および/または、不活性ガスの供給流量の調整で行う例を示したが、これらに代えてまたは加えて、冷却水の温度の調整で行うこともできる。冷却水の温度の調整で行う場合は、例えば、冷却水の温度を高めることにより、上述の冷却水の一部の蒸発による吸熱量が減少し、回転ドラムの外周面からの抜熱量が減少するので、還元鉄の冷却度合いを減少させる(冷却還元鉄の冷却温度を上昇させる)ことができる。
【0041】
[実施形態2]
上記実施形態1(変形例を含む)では、熱間成形適正温度への冷却は、回転ドラム(21)の回転速度、窒素ガス(D)の供給流量および冷却水(E)の温度のうち少なくとも1つを調整することにより行う例を示したが、これらの調整手段に加えて、回転ドラム(21)内に、還元鉄(B)の層表面から回転ドラム(21)内周面への熱放射の形態係数を調整する手段を設け、還元鉄(B)の層表面から回転ドラム(21)内周面への放射伝熱量を調整するようにしてもよい。
【0042】
該形態係数の調整手段の一例として、図3に示すように、回転ドラム(21)内に、遮蔽板(27)を挿入し、該遮蔽板(27)の回転ドラム(21)内への挿入長さ、および/または、該遮蔽板(27)の水平面に対する傾斜角度を調整するように構成したものを用いることができる。
【0043】
該遮蔽板(27)の回転ドラム(21)内への挿入長さ、および/または、該遮蔽板(27)の水平面に対する傾斜角度を調整することで、還元鉄(B)の層表面から回転ドラム(21)内周面への熱放射の形態係数を変化させることができ、これにより、還元鉄(B)の層表面から回転ドラム(21)内周面への放射伝熱量を大幅に変化させることができる。なお、遮蔽板(27)は、回転ドラム(21)内の高温側(還元鉄(B)の入口側)に装入するのが好ましく、これにより、回転ドラム(21)内の低温側(還元鉄(B)の出口側)に装入した場合に比べて、放射伝熱量の変化割合をより大きくすることができる。
【0044】
したがって、該可動式の遮蔽板(27)による調整手段を、上記実施形態1で述べた、回転ドラム(21)の回転速度、窒素ガス(D)の供給流量、冷却水(E)の温度といった調整手段と併用することで、回転炉床炉(1)における高温還元鉄(B1)の生産速度が大幅に変更される場合でも、1つのロータリクーラ(2)で、高温還元鉄(B1)を熱間成形適正温度へ確実にかつ精度良く冷却することが可能となる。
【0045】
(変形例)
上記実施形態2では、形態係数の調整手段として、可動式の遮蔽板を用いる例を示したが、これに代えてまたは加えて、回転ドラム内周面に断熱材を着脱可能に設置し、該断熱材の設置面積を調整する手段を用いることもできる。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を確証するため、以下に示すように、高温還元鉄の冷却試験を実施した。
【0047】
〔試験方法および試験条件〕
輻射式加熱還元炉で還元された高温還元鉄を模擬するため、別途、製鉄所ダストと微粉炭からなる炭材内装酸化鉄ペレットを回転炉床炉で還元して製造した常温の還元鉄ペレットを定量供給機にて所定の供給速度で連続的に切り出し、これをロータリ式加熱炉で1000℃に加熱して用いた。
【0048】
そして、1000℃に加熱された還元鉄ペレットを、内周面に螺旋状の送り羽根が設けられたロータリクーラ(回転ドラムの外径0.3185m×全長約0.8m)に連続的に供給し、回転ドラムの外周面の所定の長さの範囲に冷却水を0.4m/h(一定)の供給速度で噴霧しつつ、回転ドラムの回転速度、回転ドラム内への窒素ガスの供給流量、冷却水の温度、散水長さを種々変更して高温還元鉄の冷却を行い、回転ドラムの出口から排出された冷却還元鉄の温度を測定した。
【0049】
〔試験結果〕
下記表1に試験結果を示す。同表に示すとおり、回転ドラムの回転速度を調整すること(試験No.1〜3)、窒素ガス供給流量を調整すること(試験No.1、4)、冷却水の温度を調整すること(試験No.1、5)で、冷却還元鉄の温度(回転ドラム出口温度)の制御を行えることが確認された。
【0050】
また、高温還元鉄の供給速度を200kg/hから120kg/hに低下させた場合、回転ドラムの回転速度を調整するだけでは、冷却還元鉄の温度を熱間成形に適した650〜750℃の温度範囲に制御することはできない(試験No.6〜8)が、散水長さを短縮することで、熱間成形に適した温度範囲に制御できることがわかる(試験No.9)。この結果より、回転ドラムの内周面への熱放射の形態係数を調整する手段を設けることで、同様の効果が得られることが確認された。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施に係るHBI製造フローの概略を示すフロー図である。
【図2】実施形態1に係るロータリクーラの概略構成を示す正面図である。
【図3】実施形態2に係るロータリクーラの概略構成を示す、(a)正面図、(b)XX線断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…還元炉としての回転炉床炉
2…ロータリクーラ
3…ホットブリケットマシン
21…回転ドラム
22…送り羽根
23…インバータモータ
24…窒素ガス供給ライン
25…冷却水供給ライン
26…温度計
27…遮蔽板
A…炭材内装酸化鉄塊成化物
B…還元鉄(DRI)
B1…高温還元鉄
B2…冷却還元鉄
C…ホットブリケットアイアン(HBI)
D…不活性ガスとしての窒素ガス
E…冷却流体としての冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元炉で還元された高温の還元鉄(以下、「高温還元鉄」という。)を熱間成形してホットブリケットアイアンを製造するに際し、
内周面に螺旋状に送り羽根が設けられた回転ドラムを略水平に保持し、該回転ドラム内を不活性ガスにて非酸化性雰囲気に維持しつつ、前記高温還元鉄を該回転ドラム内に装入して該回転ドラムを回転させることにより該回転ドラム中を通過させる間に、該回転ドラムの外周面を冷却流体で冷却する間接冷却方式により、該還元鉄を、熱間成形に適した600℃超750℃以下の温度(以下、「熱間成形適正温度」という。)まで冷却することを特徴とする熱間成形用還元鉄の温度制御方法。
【請求項2】
前記冷却流体を水または空気とする請求項1に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法。
【請求項3】
前記熱間成形適正温度への冷却を、前記高温還元鉄の生産速度および該高温還元鉄の前記回転ドラムへの装入温度に応じて、前記回転ドラムの回転速度、前記不活性ガスの前記回転ドラムへの供給流量および前記冷却流体の温度のうち少なくとも1つを調整することにより行う請求項1または2に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法。
【請求項4】
さらに、前記熱間成形適正温度への冷却を、前記回転ドラム内に遮蔽板を挿入し、前記高温還元鉄の生産速度に応じて、該遮蔽板の前記回転ドラム内への挿入長さ、および/または、該遮蔽板の水平面に対する傾斜角度を調整することにより行う請求項3に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法。
【請求項5】
さらに、前記熱間成形適正温度への冷却を、前記回転ドラム内周面に断熱材を着脱可能に設置し、前記高温還元鉄の生産速度に応じて、該断熱材の設置面積を調整することにより行う請求項3または4に記載の熱間成形用還元鉄の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−74725(P2009−74725A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242649(P2007−242649)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】