説明

燃料注入システム

【課題】簡素な構造で、燃料パイプに燃料を注入でき、かつ、燃料キャップを締め付けできる燃料注入システムを提供すること。
【解決手段】燃料注入システム1は、注入ガンと、先端フランジ面21が回転可能なロボットアーム20と、ロボットアーム20の先端フランジ面21に取り付けられた把持装置30と、これらを制御する制御装置40と、を備える。制御装置40は、注入ガンを把持装置30で把持して、注入ガンの吐出口を燃料パイプ53の先端に差し込んで燃料を注入するガソリン注入手段41と、注入ガンを燃料パイプ53から離して、把持装置30で燃料キャップを把持して、燃料キャップを燃料パイプ53の先端に当接させて、先端フランジ面21を回転させることにより、燃料パイプ53の先端に燃料キャップを締め付けるキャップ締め付け手段42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料注入システムに関する。詳しくは、燃料パイプに燃料を注入して、この燃料パイプの先端に燃料キャップを締め付ける燃料注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の製造工程では、ロボットを用いて、燃料パイプにガソリンを注入し、その後、この燃料パイプの先端に燃料キャップを締め付けることが行われている。
この場合、ロボットは、ロボットアームと、このロボットアームの先端に設けられて燃料キャップを把持して回転させる締め付け装置と、ロボットアームの先端に設けられて燃料を吐出する注入ノズルと、を備える(特許文献1参照)。
この提案によれば、締め付け装置に燃料キャップを把持させておき、注入ノズルを燃料パイプ先端に差し込んで、燃料を注入する。その後、注入ノズルを燃料パイプから離して、燃料パイプの先端に燃料キャップを当接させ、締め付け装置を駆動して、燃料キャップを締め付ける。
【特許文献1】特開平6−179191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上のロボットでは、燃料キャップを回転させる締め付け装置が設けられているため、ロボットの構造が複雑になっていた。
【0004】
本発明は、簡素な構造で、燃料パイプに燃料を注入でき、かつ、燃料キャップを締め付けできる燃料注入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の燃料注入システム(例えば、後述の燃料注入システム1)は、燃料パイプ(例えば、後述の燃料パイプ53)に燃料を注入して、前記燃料パイプの先端に燃料キャップ(例えば、後述の燃料キャップ54)を締め付ける燃料注入システムであって、燃料を吐出する注入ガン(例えば、後述の注入ガン10)と、先端フランジ面(例えば、後述の先端フランジ面21)が回転可能なロボットアーム(例えば、後述のロボットアーム20)と、当該ロボットアームの先端フランジ面に取り付けられ、前記燃料キャップまたは前記注入ガンを選択的に把持する把持装置(例えば、後述の把持装置30)と、これらを制御する制御装置(例えば、後述の制御装置40)と、を備え、前記制御装置は、前記注入ガンを前記把持装置で把持して、前記注入ガンの吐出口を前記燃料パイプの先端に差し込んで燃料を注入するガソリン注入手段(例えば、後述のガソリン注入手段41)と、前記注入ガンを前記燃料パイプから離して、前記把持装置で前記燃料キャップを把持して、前記燃料キャップを前記燃料パイプの先端に当接させて、前記先端フランジ面を回転させることにより、前記燃料パイプの先端に前記燃料キャップを締め付けるキャップ締め付け手段(例えば、後述のキャップ締め付け手段42)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、把持装置で注入ガンを把持して、燃料パイプに燃料を注入するとともに、把持装置で燃料キャップを把持してロボットアームの先端フランジ面を回転させることで、燃料キャップを締め付けた。よって、燃料キャップを回転させる締め付け装置を別途設ける必要がないので、簡素な構造で、燃料パイプに燃料を注入でき、かつ、燃料キャップを締め付けできる。
【0007】
この場合、前記キャップ締め付け手段は、前記先端フランジ面を回転させるアクチュエータ(例えば、後述のアクチュエータ22)の電流値に基づいて、前記燃料キャップの締め付けが完了したか否かを判定することが好ましい。
【0008】
先端フランジ面を回転させるアクチュエータの電流値に基づいて、燃料キャップの締め付けが完了したか否かを判定したので、締め付け力を検出するセンサを別途設けることなく、燃料キャップの締め付けが完了したか否かを容易に判定でき、コストを低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、把持装置で注入ガンを把持して、燃料パイプに燃料を注入するとともに、把持装置で燃料キャップを把持してロボットアームの先端フランジ面を回転させることで、燃料キャップを締め付けた。よって、燃料キャップを回転させる締め付け装置を別途設ける必要がないので、簡素な構造で、燃料パイプに燃料を注入でき、かつ、燃料キャップを締め付けできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料注入システム1の斜視図である。
燃料注入システム1は、自動車のボディ50の後述の燃料パイプ53に燃料を注入して、この燃料パイプ53の先端に燃料キャップ54を締め付けるものである。
【0011】
図2は、自動車のボディ50の部分拡大斜視図である。
自動車のボディ50の側面には、凹部51と、この凹部51を開閉する蓋部52とが設けられている。この凹部51の底面には、図示しない燃料タンクから延びる燃料パイプ53が接続される。燃料パイプ53の先端側には、雌ねじが形成されている。
【0012】
図3は、燃料キャップ54の斜視図である。
燃料キャップ54は、円柱状のキャップ本体55と、このキャップ本体55の一端面に設けられた円柱状の螺合部56と、キャップ本体55の他端面に突出して形成されたつまみ部57と、を備える。
螺合部56の外周面には、燃料パイプ53の先端に螺合可能な雄ねじが形成されている。この螺合部56には、ラチェット機能が設けられており、締め付けトルクが過大になると空転する。すなわち、トルク値が所定量以上まで上昇すると、一定のねじ山量緩んでトルク値が低下する。そのまま締め付けを継続しても、この動作の繰り返しとなる。
【0013】
図1に戻って、燃料注入システム1は、燃料を吐出する後述の注入ガン10と、先端フランジ面21を回転可能なロボットアーム20と、このロボットアーム20の先端フランジ面21に取り付けられ、燃料キャップ54または注入ガン10を選択的に把持する把持装置30と、これらを制御する制御装置40と、を備える。
【0014】
図4は、注入ガン10の斜視図である。
注入ガン10は、注入ガン本体11と、この注入ガン本体11の先端に形成されて燃料を吐出するノズル12と、注入ガン本体11を支持する支持治具13と、を備える。
支持治具13は、棒状の治具本体14と、この治具本体14の基端側に設けられた第1鍔部15と、治具本体14の先端側に設けられた第2鍔部16と、この第2鍔部16に設けられて注入ガン本体11にボルト18で固定される略コの字形状の支持部17と、を備える。
これら第1鍔部15および第2鍔部16の外径は、治具本体14の外径よりも大きくなっている。
【0015】
図1に戻って、ロボットアーム20には、先端フランジ面21を回転させるアクチュエータ22が内蔵されている。
把持装置30は、先端フランジ面に設けられた基部31と、先端フランジ面の中心軸Cを挟んで設けられた一対の把持部32と、これら把持部32を互いに接近、離隔させる駆動部33と、を備える。
【0016】
各把持部32は、先端フランジ面の中心軸Cに沿って延出する矩形板状の把持部本体321と、この把持部本体321の内側の表面から突出して設けられて把持部本体321の幅方向に延出する突部322と、を備える。
一対の把持部32は、互いに略平行であり、突部322同士が互いに対向するように、中心軸Cに関して対称に配置されている。
【0017】
駆動部33は、把持部32を閉じる場合には、把持部32同士を接近させ、把持部32を開く場合には、把持部32同士を引き離す。具体的には、駆動部33は、把持部32が中心軸Cに関して対称である状態を維持しながら、中心軸Cに直交する方向に各把持部32を移動させることで、把持部32を開閉する。
【0018】
基部31は、ロボットアーム20の先端フランジ面21に取り付けられた平板状の基板311と、この基板311に把持部32を挟んで設けられた矩形平板状の一対のガイド板312と、を備える。
各ガイド板312は、先端フランジ面21の中心軸Cに沿って延出しており、これらガイド板312同士は、互いに略平行である。
【0019】
ガイド板312の先端縁には、互いに対向する一対の係止片313が形成されている。
これら一対の係止片313は、ガイド板312の幅方向、つまり、一対の把持部32の移動方向に所定間隔離れている。
ここで、一対の係止片313の間隔は、支持治具13の治具本体14の外径よりも大きく、支持治具13の第1鍔部15および第2鍔部16の外径よりも小さくなっている。
【0020】
制御装置40は、ガソリン注入手段41と、キャップ締め付け手段42と、を備える。
ガソリン注入手段41は、注入ガン10の支持治具13を把持装置30で把持して、注入ガン10のノズル12を燃料パイプ53の先端に差し込んで燃料を注入する。
キャップ締め付け手段42は、注入ガン10を燃料パイプ53から離して、把持装置30で燃料キャップ54を把持して、この燃料キャップ54を燃料パイプ53の先端に当接させて、ロボットアーム20の先端フランジ面21を回転させることにより、燃料パイプ53の先端に燃料キャップ54を締め付ける。
【0021】
ここで、キャップ締め付け手段42は、先端フランジ面21を回転させるアクチュエータ22の電流値に基づいて、燃料キャップ54の締め付けが完了したか否かを判定する。
【0022】
図5は、アクチュエータ22の電流値の変化を示す図である。
上述のように燃料キャップ54にはラチェット機能が設けられているため、ラチェット機能が作動すると、締め付けトルクは、上昇した後、一定量緩んで低下する動作を繰り返す。したがって、図5に示すように、アクチュエータ22の電流値は、アクチュエータ22に作用する負荷が大きくなって増大した後、アクチュエータ22に作用する負荷が小さくなって減少する動作を繰り返す。
よって、電流値の所定時間内に規定値を超えた回数が例えば3回以上である場合には、燃料キャップ54のラチェット機能が作動し、燃料キャップ54が正常に取り付けられたと考えられるため、キャップ締め付け手段42は、燃料キャップ54の締め付けが完了したと判定する。一方、電流値の所定時間内に規定値を超えた回数が例えば3回未満である場合には、キャップ締め付け手段42は、燃料キャップ54の締め付けが完了していないと判定する。
【0023】
以上の燃料注入システム1は、以下のように動作する。
予め、注入ガン10を自動車の機種に応じて複数種類用意し、これら複数の注入ガンを図示しないガンストッカに配置しておく。
【0024】
まず、自動車の機種に応じて、ガンストッカから注入ガン10を選択し、図6に示すように、把持装置30で注入ガン10を把持する。
具体的には、把持部32を開いた状態で、支持治具13の側方から、把持装置30を接近させる。そして、支持治具13の治具本体14を、把持部32の突部322よりも基端側に位置させる。
すると、支持治具13の第1鍔部15および第2鍔部16は、ガイド板312の外側に位置して、各ガイド板312の一対の係止片313に係止する。これにより、支持治具13が長さ方向にずれて脱落するのを防止する。
この状態で、把持部32を閉じる。すると、支持治具13の治具本体14は、把持部32の突部322よりも基端側で挟持されて、把持部32の突部322に係止する。これにより、支持治具13が側方にずれて脱落するのを防止して、把持装置30で注入ガン10を把持する。
【0025】
次に、図示しないセンサにより自動車の燃料パイプ53の位置を検出し、この検出した燃料パイプ53の位置に基づいてロボットアーム20の動作を補正して、注入ガン10のノズル12を燃料パイプ53の先端に差し込んで燃料を注入する。
【0026】
燃料の注入が完了した後、注入ガン10を燃料パイプ53から離して、この注入ガン10をガンストッカに戻す。次に、燃料注入システム1は、供給される燃料キャップ54の位置を図示しないセンサにより検出し、この検出した燃料キャップ54の位置に基づいてロボットアーム20の動作を補正して、図7に示すように、把持装置30で燃料キャップ54を把持する。
具体的には、把持部32を開いた状態で、燃料キャップ54のつまみ部57に向かって把持部32を接近させる。そして、燃料キャップ54のつまみ部57を、把持部32の突部322よりも先端側に位置させる。
この状態で、把持部32を閉じる。すると、燃料キャップ54のつまみ部57は、把持部32の突部322よりも先端側で挟持される。
【0027】
次に、ロボットアーム20を駆動して、この燃料キャップ54を燃料パイプ53の先端に当接させて、ロボットアーム20の先端フランジ面21を回転させて、燃料パイプ53の先端に燃料キャップ54を締め付ける。
【0028】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)把持装置30で注入ガン10を把持して、燃料パイプ53に燃料を注入するとともに、把持装置30で燃料キャップ54を把持して、ロボットアーム20の先端フランジ面21を回転させることで、燃料キャップ54を締め付けた。よって、燃料キャップを回転させる締め付け装置を別途設ける必要がないので、簡素な構造で、燃料パイプ53に燃料を注入でき、かつ、燃料キャップ54を締め付けできる。
【0029】
(2)先端フランジ面21を回転させるアクチュエータ22の電流値に基づいて、燃料キャップ54の締め付けが完了したか否かを判定したので、締め付け力を検出するセンサを別途設けることなく、燃料キャップ54の締め付けが完了したか否かを容易に判定でき、コストを低減できる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料注入システムの斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る燃料注入システムにより燃料が注入される自動車のボディの部分拡大斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る燃料注入システムにより取り付けられる燃料キャップの斜視図である。
【図4】前記実施形態に係る燃料注入システムの注入ガンの斜視図である。
【図5】前記実施形態に係る燃料注入システムのアクチュエータの電流値の変化を示す図である。
【図6】前記実施形態に係る燃料注入システムの把持装置により注入ガンを把持した状態を示す図である。
【図7】前記実施形態に係る燃料注入システムの把持装置により燃料キャップを把持した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 燃料注入システム
10 注入ガン
20 ロボットアーム
21 先端フランジ面
22 アクチュエータ
30 把持装置
40 制御装置
41 ガソリン注入手段
42 キャップ締め付け手段
53 燃料パイプ
54 燃料キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料パイプに燃料を注入して、前記燃料パイプの先端に燃料キャップを締め付ける燃料注入システムであって、
燃料を吐出する注入ガンと、
先端フランジ面が回転可能なロボットアームと、
当該ロボットアームの先端フランジ面に取り付けられ、前記燃料キャップまたは前記注入ガンを選択的に把持する把持装置と、
これらを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記注入ガンを前記把持装置で把持して、前記注入ガンの吐出口を前記燃料パイプの先端に差し込んで燃料を注入するガソリン注入手段と、
前記注入ガンを前記燃料パイプから離して、前記把持装置で前記燃料キャップを把持して、前記燃料キャップを前記燃料パイプの先端に当接させて、前記先端フランジ面を回転させることにより、前記燃料パイプの先端に前記燃料キャップを締め付けるキャップ締め付け手段と、を備えることを特徴とする燃料注入システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料注入システムにおいて、
前記キャップ締め付け手段は、前記先端フランジ面を回転させるアクチュエータの電流値に基づいて、前記燃料キャップの締め付けが完了したか否かを判定することを特徴とする燃料注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−214920(P2009−214920A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62484(P2008−62484)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】