説明

燃料電池の発電方法及びそれに用いるガスバーナ並びにそのガスバーナを備えたガス器具

【課題】燃料極側と空気極側に供給するガスを分離したガス炎で直接加熱発電させる高温作動型燃料電池用ガスバーナを備えたガス器具を提供する。
【解決手段】固体電解質型燃料電池14の燃料極20がガスバーナ10の炎口部12から噴出される還元炎18に当たり、空気極24が還元炎18に当たらないように燃料電池14をガスバーナ10の炎口部12近辺に配置し、ガスバーナ10の燃焼による燃焼熱によって燃料電池14をその作動温度まで昇温させると共に、ガスバーナ10の燃焼の際ガスバーナ10の炎口部12から噴出される燃焼ガスを電極の燃料極20に供給することによって発電させる方法とする。また、ガスバーナ10の炎口部20に燃料電池14を立設させたガスバーナ及びそのガスバーナを内部に備えたガス器具とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の発電方法及びそれに用いるガスバーナ並びにそのガスバーナを備えたガス器具に関し、さらに詳しくは、ガスバーナの燃焼により高温作動型の固体電解質型燃料電池を発電させる燃料電池の発電方法及びその発電方法に使用可能な、高温状態で発電する燃料電池を備えたガスバーナ及びそのガスバーナを器具内部に備え、その燃料電池を、ファンや電磁弁等の電気部品を駆動させるための電力源として用いたガス器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス器具内部に備えたファンや電磁弁等の電気部品を駆動させるために、その内部に、駆動用電力を発電させる高温作動型燃料電池(固体電解質型燃料電池)を備えたガス器具が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなガス器具では、そのガスバーナの燃焼熱により高温作動型燃料電池をその作動温度まで昇温させると共に、ガスバーナへ供給される燃料ガスの一部をこの高温作動型燃料電池に供給して発電させている。これによって、ガスバーナの燃焼と同時に内部の電気部品を駆動させることが可能となる。
【0004】
この場合、通常、筒状の管内に高温作動型燃料電池を納め、管外からガスバーナで加熱すると共に、この管内に燃料ガスを供給して発電させるものとなっている。
【0005】
そして、最近、筒状の管等に納めることなく、ガスバーナの炎の上に直接高温作動型燃料電池を配置し、ガスバーナの還元炎で直接加熱して燃料電池の作動温度まで昇温させると共に、ガスバーナの炎口部から直接燃料電池に燃料ガスを供給して発電させる方法が報告されている。
【0006】
図8を用いてその方法を説明すると、ガスバーナ100の炎口部102から出た炎の上に、ジルコニア等からなる固体電解質106の表裏面に電極が取付けられた高温作動型燃料電池104が、その燃料極側108を炎側にし、その空気極側110を炎と反対側になるように、炎の吹き出し方向に対して垂直方向に配置したものとなっている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−196176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8に示すものは、その燃料電池104の燃料極側108に発電に充分な加熱とガス供給をするためには、炎口部102にかなり近づけて配置させなければならず、そのため、炎を遮ってガスバーナ100の燃焼を邪魔するという問題があった。
【0009】
また、炎口部102と燃料電池104の位置が近いことから、炎口部102から出た還元炎が燃料電池104の燃料極側108に当たると共に、還元炎がその燃料電池104の裏側に回り込んで、空気極側110も還元炎に覆われるため、空気極側110に空気が供給されにくくなるという問題があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ガスバーナの炎に直接当ててその燃焼熱と燃料ガス供給によって発電可能な高温作動型燃料電池を発電させる際、燃料極側と空気極側に供給するガスを確実に分離してそれぞれの側に供給し、最適に発電させることが可能な燃料電池の発電方法及びそれに用いるガスバーナ並びにそのガスバーナを備えたガス器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池の発電方法は、請求項1に記載のように、酸素イオン伝導性固体電解質を有し該固体電解質の表面に燃料極及び空気極が形成された高温作動型の固体電解質型燃料電池をガスバーナの燃焼により発電させる燃料電池の発電方法であって、前記固体電解質型燃料電池の前記燃料極側が前記ガスバーナの炎口部から噴出される還元炎に当たり、前記空気極側が前記還元炎に当たらないように前記ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って前記固体電解質型燃料電池を前記ガスバーナの炎口部近辺に配置し、前記ガスバーナの燃焼による燃焼熱によって前記固体電解質型燃料電池をその作動温度まで昇温させると共に、前記ガスバーナの燃焼の際前記ガスバーナの前記炎口部から噴出される燃焼ガスを前記燃料極に供給することを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係るガスバーナは、請求項2に記載のように、燃料ガスと燃焼用空気とが供給される入口と、該入口から供給された前記燃料ガスと前記燃焼用空気との混合ガスが通過するガス通路と、該ガス通路の下流側に接続され前記混合ガスを噴出させるための炎口部を有するガスバーナであって、酸素イオン伝導性固体電解質を有し該固体電解質の表面に燃料極及び空気極が形成された高温作動型の固体電解質型燃料電池を、該固体電解質型燃料電池の前記燃料極側が前記炎口部から噴出される還元炎に当たり前記空気極側が前記還元炎に当たらないように前記ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って前記炎口部に立設させたことを要旨とする。
【0013】
そして、本発明に係るガス器具は、請求項3に記載のように、上記ガスバーナと電磁弁やファン等の電力を必要とする電気部品とを備えるガス器具であって、前記ガスバーナの前記固体電解質型燃料電池により発電される電力を前記電気部品の駆動用電力として用いることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、高温作動型の固体電解質型燃料電池の発電において、ガスバーナの炎口部近辺に固体電解質型燃料電池を配置するが、この際、この固体電解質型燃料電池の表面に取付けられた電極の燃料極側がガスバーナの炎口部から噴出される還元炎に当たり、空気極側にはこの還元炎が当たらないように、ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って固体電解質型燃料電池を配置することから、電極の燃料極側には燃料ガスを、電極の空気極側には空気を、それぞれ発電に充分な量で供給することができる。また、ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って配置することから、ガスバーナの燃焼の炎を遮ることなくガスバーナの炎口部近くに固体電解質型燃料電池を配置できるため、燃料電池の作動温度まで昇温させるのに充分な熱量を供給することができる。これによって、高出力の発電が安定して得られるようになる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、ガスバーナの燃焼の際その固体電解質型燃料電池の燃料極側が炎口部から噴出される還元炎に当たり空気極側が還元炎に当たらないようにガスバーナの炎口部に固体電解質型燃料電池を立設させることから、還元炎が燃料電池の固体電解質を越えて空気極側にいくことはないので、空気極側が還元炎に覆われることはなく、空気極側に空気が充分に供給されるものとすることができる。また、従来のように、ガスバーナの炎の上側に配置し、炎口部にかなり近づけるものではないため、炎を遮ってガスバーナの燃焼を邪魔することもない。よって、請求項1に記載の発明を確実に実施できるものとなる。
【0016】
そして、請求項2に記載のガスバーナをガス器具の内部に備えることにより、そのガスバーナの燃焼熱を供給することができるだけでなく、外部電源からの電力供給を使うことなく、そのガスバーナに備えた燃料電池からの電力供給によってその内部に備える温風ファンや電磁弁、操作パネル等の電気部品を作動させることができる。
【0017】
この場合、ガス器具内に配置されたガスバーナに取付けられた固体電解質型燃料電池は、ガスバーナへの取付け位置から、ガスバーナの炎口部から出た炎で燃料電池を加熱することができる。これにより、他にこの燃料電池を作動させる温度まで昇温させるための加熱装置を必要としないものとすることができる。
【0018】
また、ガスバーナの炎口部から出てすぐの完全燃焼する前の還元炎がこの燃料電池に当たることから、ガスバーナの炎口部から直接燃料供給することができるため、発電のための燃料供給路を他に設ける必要もない。
【0019】
さらに、発電に使用されなかった残りのガスはそのまま燃焼されるため、排ガスを逃がす通路等を設ける必要もない。
【0020】
このように、本発明のガス器具によれば、発電システム全体の構造を簡単にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明に係る燃料電池の発電方法は、固体電解質型燃料電池の酸素イオン伝導性を有する固体電解質の表面に取付けられた電極の燃料極側(アノード側)が、ガスバーナの炎口部から噴出される還元炎に当たり、電極の空気極側(カソード側)が還元炎に当たらないようにガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って固体電解質型燃料電池をガスバーナの炎口部近辺に配置することを第一の特徴とする。
【0023】
そして、ガスバーナの燃焼による炎で直接、高温作動型の固体電解質型燃料電池を加熱してその作動温度まで昇温させると共に、ガスバーナの燃焼の際には、ガスバーナの炎口部から噴出される燃焼ガスが燃料電池の電極の燃料極側(アノード側)に供給されることを第二の特徴とする。
【0024】
上記高温作動型の固体電解質型燃料電池(以下、単に燃料電池と略す)は、その中心に板状の酸素イオン伝導性固体電解質(以下、単に固体電解質と略す)を有しており、この板状の固体電解質の表面に電極が設けられる。この場合、固体電解質の一方の面のみに燃料極(アノード側)と空気極(カソード側)の両極を設けても良いし、一方の面に燃料極(アノード側)を設け、他の面に空気極(カソード側)を設けたものであっても良い。電極は一対の場合もあるし、二対以上としても良い。また、形状は板状のものに限らず、筒状のものであっても良い。
【0025】
この燃料電池は、燃料極と空気極が室等によって区分けされておらず、燃料ガスと空気とを分けて供給するものではないため、燃料ガスと空気との混合ガスでも発電可能ないわゆる単室型燃料電池に用いられる電解質、電極材料を用いれば良い。その作動温度は、通常、700℃〜1000℃くらいを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0026】
ここでいう還元炎とは、還元作用のある炎であり、混合気体が完全燃焼する前の状態(内炎部分)では燃料ガスが残っている状態のものである。よって、この還元炎に、燃料電池の電極の燃料極(アノード側)が当たることにより、発電に必要な燃料ガスを直接供給することが可能となる。一方、空気極(カソード側)には、必要に応じて強制的に空気を送り込むこともできる。
【0027】
炎口部近辺に配置するとは、ガスバーナの炎口部から噴出される炎を遮ることなく、燃料電池が作動するのに必要な熱と燃料ガスが、ガスバーナの燃焼によって供給できるような位置に配置することである。
【0028】
次に図1を用いて、ガスバーナの燃焼時における本発明の実施形態の一例を示して、本発明に係る発電方法を説明する。
【0029】
図1(a)は、通常のガスバーナ(ブンゼン燃焼型)10の炎口部12に燃料電池14を配置させたものである。燃焼時には、流路Aに燃料ガスと燃焼用空気の理論空燃比での混合気が供給され、流路B1、B2は、空気が供給される。そして、ガスバーナ10の炎口部12に配置した燃料電池14をガスバーナ10の燃焼の炎16によって直接加熱する。
【0030】
ここで、ガスバーナ10の炎口部12から出てすぐの完全燃焼する前の還元炎18を燃料電池14の燃料極(アノード側)20に当てて、ガスバーナ10の炎口部12から直接、燃料電池14を作動させるために充分の燃料ガスを供給する。
【0031】
さらに、炎口部12から出た炎16は図中上方に向かって伸びており、この燃料電池14もそれに沿って配置しているため、この燃料電池14の固体電解質22を越えて外側に還元炎18が流れるようなことはない。つまり、その外側にある空気極(カソード側)24が還元炎18に当たることはないので、還元炎18によってこの空気極(カソード側)24に空気が供給されるのを邪魔されることはない。
【0032】
このような構成により、ガスバーナ10の炎で安定して燃料電池14の加熱と燃料ガスの供給を行うことができる。また、電極のカソード側24には安定して空気を供給することができる。そして、従来のように、燃料電池14の加熱温度や燃料ガス、空気の供給が不安定となることはない。これによって、燃料電池14から、高出力の発電が安定して得られるようになる。
【0033】
図1(b)(c)は、ガスバーナが濃淡バーナ26となっている。流路Cには燃料ガスと燃焼用空気の理論空燃比より燃料ガスの割合が希薄な(空気の割合が多い)混合気が供給され、燃焼により淡炎口部28から主炎30が形成される。一方、流路D1、D2には、理論空燃比より燃料ガスの割合が濃い(燃料ガスの割合が多い)混合気が供給され、燃焼により濃炎口部32から袖火34が形成される。
【0034】
そして、図1(a)と同様、濃淡バーナ26の炎口部(28、32)に燃料電池14が配置されているため、この炎によって燃料電池14を直接加熱することができる。また、濃淡バーナ26の濃炎口部32から出てすぐの完全燃焼する前の還元炎(袖火34)がこの燃料電池14の燃料極(アノード側)20に当たることから、濃淡バーナ26の濃炎口部32から直接、燃料電池14を作動させるための燃料ガスが供給できる。一方、空気極(カソード側)24には、淡炎口部28から出た空気の割合が高い主炎30の酸化性ガスが供給されることから、発電に充分な空気が供給されて実用的な発電が達成される。
【0035】
なお、本発明に係る燃料電池の発電方法は、ここに示すものに限られるものではない。例えば、ガスバーナ(10、26)の炎口部12に燃料電池14が引っ付いた状態を示しているが、炎口部12から少し離したものであっても問題ない。炎口部12の近辺に、ガスバーナ10の高温の炎が充分に当たる位置に配置するものであり、燃料電池14の電極の空気極側(カソード側)24が、ガスバーナ(10、26)の燃焼による還元炎(18、34)に覆われることなく、発電に充分な空気が供給されるものであれば良い。
【0036】
次に、本発明に係る上記燃料電池の発電方法を実施するのに好適なガスバーナの一例を説明する。
【0037】
図2は、本発明に係るガスバーナの一実施形態を示している。本実施形態に係るガスバーナ36は、本体部Xと発電部Yとからなる。
【0038】
本体部Xには、燃料ガスと共に燃焼用空気が供給される側方の入口38と、この入口38から供給された燃料ガスと燃焼用空気との混合気が通過するU字状のガス通路40と、そのガス通路40の上方に、この混合気が噴出される出口となる炎口部12とを備えている。
【0039】
本体部Xは、例えば、一対の板金により上記の形状のようにプレスされ、溶接やカシメ接合等によって扁平状に成形されたものである。
【0040】
炎口部12は、複数の板金が厚み方向に配置されて分割された構造をしており、その内部から燃料が噴出される。この炎口部12の外周端部には2枚の板金によって形成された溝42があり、この溝42に燃料電池14が挿入取付けされている。
【0041】
また、その炎口部12は、本体部Xが通常のガスバーナの場合には、主炎口部のみが形成されているが、本体部Xが通常のガスバーナに限られず、例えば濃淡バーナのように、淡炎口部と濃炎口部といった複数の炎口部が形成されたものであっても良い。
【0042】
炎口部12は、さらに仕切り板等によって長手方向に分割されたものであっても良い。この場合、U字状に形成されたガス通路40と炎口部12との接続部は、ガス通路40から炎口部12にかけて開口が広がっている。そのため、分割された各炎口部への距離が等しくならないことから、ガス通路40を通ってきた混合ガスが各炎口部に等しく分配されるように、例えばテーパー状にして各炎口部に均等にガスが分配されるようにすることも可能である。
【0043】
一方、発電部Yは、炎口部12に立設された燃料電池14を有する構成となっている。この燃料電池14はその中心に固体電解質22を有しており、表面に燃料極(アノード側)20と空気極(カソード側)24を有する。これら両極(20、24)からは、電気を取り出すための図示しない電線が配される。
【0044】
この燃料電池14は、ガスバーナ36の炎口部12に二点鎖線に沿って複数個取付けることができるし、1つであっても良い。1つの場合、図示するような相対的大きさのものであっても良いし、二点鎖線に沿って面積を大きくしても良い。
【0045】
次に、図3〜図5を用いて、燃料電池14の炎口部12への取付け状態について詳しく説明する。
【0046】
図3は、主炎口部44のみを有する通常のガスバーナが本体部Xとなるものの構造を示している。図3(a)は、炎口部12を上側から見た図であり、図3(b)は、本体部Xを横側から見た図である。
【0047】
図3(a)で説明すると、炎口部12は、複数の板金が厚み方向に配置されて分割された構造をしており、その内部の主炎口部44から燃料が噴出される。この炎口部12の外周端部には2枚の板金によって形成された溝42があり、この溝42に燃料電池14が挿入取付けされている。
【0048】
また、図3(b)では、2枚の燃料電池14は炎口部12の端部に1対となって立設され、燃料電池14の燃料極(アノード側)20はそれぞれ主炎口部44側を向いており、そこから噴出される還元炎に当たるように配置される。一方、空気極(カソード側)24は、主炎口部44から噴出される還元炎に当たらないように、主炎口部44とは反対側にそれぞれ配置されている。
【0049】
図4及び図5は、本体部Xが濃淡バーナ26となっており、淡炎口部28と濃炎口部32とを有する。この濃淡バーナ26は、理論空燃比(空燃比=空気/燃料ガス混合比)より燃料の割合が希薄な(空気の割合が多い)混合気を燃焼することにより淡炎口部28から主炎を形成し、理論空燃比より燃料の割合が濃い(燃料の割合が多い)混合気を燃焼することにより濃炎口部32から袖火を形成する。そして、このような構成にすることにより、排ガスのNOx排出量の低減を図るものである。
【0050】
図4に示すものは、淡炎口部28と濃炎口部32との間に板金によって形成された溝42があり、図4(a)のように、この溝42に燃料電池14が挿入取付けされる。また、図4(b)のように、燃料電池14の電極のうち、空気極(カソード側)24は、お互いに向き合う形で淡炎口部28側を向いており、そこから噴出される主炎に当たるように配置される。一方、燃料極(アノード側)20は、お互いに外側を向き、濃炎口部32から噴出される袖火に当たるように配置される。
【0051】
図5に示すものは、固体電解質22の一方の面のみに燃料極(アノード側)20、空気極(カソード側)24の両極を設けた燃料電池14であり、炎口部12の厚み方向(短手方向)に沿って立設されたものである。この燃料電池14は、淡炎口部28と濃炎口部32との間に板金によって形成された溝42の位置で、固体電解質22に突起部を設けてこの溝42に挿入固定させたり、他の棒状部材等を溝42に挿入固定し、この棒状部材等に固体電解質22を固定させることもできる。この場合、淡炎口部28に電極の空気極(カソード側)24を配置し、濃炎口部32に燃料極(アノード側)20を配置する。
【0052】
なお、図3〜図5に示す燃料電池14は、本体部Xの炎口部12との相対的な位置、大きさ等は、図示するものに限られない。また、燃料電池14の炎口部12への取付ける枚数も図示するものに限られない。さらに取付け方法も、特に限定されるものではない。
【0053】
次に、本発明に係るガスバーナを器具内部の燃焼系に取付けたガス器具について説明する。
【0054】
図6は、本発明に係るガス器具の一例を表している。図示するものは、ファン付赤外線ストーブ50である。なお、本図はシステムの概略図であり、実際のレイアウトとは異なる場合もある。
【0055】
ファン付赤外線ストーブ(以下、ストーブと略す)50は、前面に開口部が設けられたケーシング54内に、この開口部に対向させて赤熱プレート式の燃焼部(56a、56b)を備える。燃焼部(56a、56b)は、上下二段で構成され、燃料ガス(例えばメタンガスやプロパンガス等)と一次空気との混合室を形成するガスバーナ10と、その本体部に装着される多数の炎口が設けられたセラミック製の燃焼プレート(58a、58b)とを備えた全一次空気式バーナである。上段のガスバーナは、ガスバーナ本体部のみのガスバーナであり、下段のガスバーナは、燃料電池14が取付けられた本発明に係るガスバーナである。燃焼部(56a、56b)の基端には燃料ガスと一次空気とが吸入される吸入口60が開口し、吸入口60に臨んでノズル62が設けられる。
【0056】
ケーシング54内の下方には、燃焼部(56a、56b)からの燃焼ガスを本体前面下方に設けられた温風吹出口64から送出する送風ファン66が設けられる。
【0057】
下段の燃焼部56bの炎口部には燃料電池14が設けられ、この燃料電池14で発生した起電力が送風ファン66のモータの電源として用いられる。この燃料電池14は、プレート状の固体電解質が設けられ、その表面に燃料極と空気極が形成されている。そして、ガスバーナ10の燃焼によって、燃料電池14を作動させるための熱と燃料ガスが供給される。
【0058】
燃焼部(56a、56b)へガス供給するまでのガス通路には、上流から順に、図示しない点火レバーの操作力によって機械的に開閉されるメイン弁68と、後述する熱電対(80、84)からの起電力によって開弁又は開弁保持されるマグネット電磁弁70と、供給ガス圧を一定に保つガスガバナ72とが設けられる。なお、さらに下流側には、下段の燃焼部56bへのガス供給量を制御するために、ガス比例弁等を設けることもできる。
【0059】
また、燃焼部(56a、56b)へ点火するための点火用バーナ74が設けられ、この近傍にはこの点火用バーナ74へ点火するための点火電極76が設けられ、この点火電極76はイグナイタ78と接続されている。そして、この点火用バーナ74の近傍にはマグネット電磁弁70のコイルと直列に接続された点火用熱電対80も設けられ、図示しないスイッチによって点火用バーナ74が点火された後、この点火用バーナ74の炎により点火用熱電対80が素早く加熱されて起電力が発生し、マグネット電磁弁70を開弁する。
【0060】
この点火用バーナ74の炎は、室内の酸欠を検知するためのセンシングバーナ82に火移りさせた後、上記スイッチを離すことにより消火する。そして、このセンシングバーナ82の近傍にはマグネット電磁弁70のコイルと直列に接続された酸欠検知用熱電対84が設けられる。この酸欠検知用熱電対84はセンシングバーナ82の炎により直接加熱され、この時発生する起電力によって通常運転時にマグネット電磁弁70を開弁保持している。
【0061】
ケーシング54には、上述したセンサ類からの信号を入力して各種のアクチュエータ類を駆動制御して燃焼部(56a、56b)の燃焼を制御するコントローラ86が設けられる。
【0062】
上述したストーブ50によれば、図示しない点火レバーを操作すると、燃焼プレート(58a、58b)前面から燃料ガスが噴出し、点火用バーナ74により点火される。そして、赤熱した燃焼プレート(58a、58b)からの輻射熱によりストーブ50正面の使用者を直接温める。この時、強弱切替えレバー88で加温強さを調節する。例えば、弱にする場合、下段の燃焼部56bのみ燃焼され、強にする場合、上下段の燃焼部(56a、56b)が燃焼される。
【0063】
下段の燃焼部56bのガスバーナ10が燃焼すると、その燃焼熱により燃料電池14が作動温度まで昇温されて発電を開始する。この燃料電池14の発電によって得られた電力によって送風ファン66が駆動し、燃焼部(56a、56b)で発生した高温の燃焼ガスと本体前面及び背面の給気口からの外部空気を吸い込んで、それらの混合気を温風吹出口64から送出することにより、温風で室内を加温する。
【0064】
図7は、ストーブ50のレイアウトの一例を表す断面概略図である。その内部中央には燃焼部(56a、56b)を備え、燃焼部(56a、56b)の正面には開口部52がある。燃焼部(56a、56b)の燃焼プレート(58a、58b)からの輻射熱がこの開口部52を経て使用者を温める。この開口部52には、器具本体内に使用者の手等が入らないように複数のガード棒90が設けられている。
【0065】
内部下方には送風ファン66が設けられ、下段の燃焼部56bのガスバーナの燃焼により発電可能となった燃料電池からの電力供給によって送風ファン66が回ると、温風吸込口92から燃焼ガスが吸引されると共に、背面や前面にある給気口(94、96)から冷たい空気が吸引される。これらが混合され、使用者がやけどしないような適切な温度に調節されて、前面下方にある温風吹出口64から温風が送出される。
【0066】
このように、本発明に係るガスバーナをストーブ50の内部に備えることにより、そのガスバーナの燃焼熱による温風を送風ファン66を介して供給することができるだけでなく、外部電源からの電力供給を使うことなく、そのガスバーナに備えた燃料電池からの電力供給によってその内部に備える温風ファン66や電磁弁、操作パネル等の電気部品を作動させることができる。
【0067】
この場合、ストーブ50内に配置されたガスバーナに取付けられた燃料電池は、ガスバーナへの取付け位置から、ガスバーナの炎口部から出た炎で燃料電池を加熱することができる。これにより、他にこの燃料電池を作動させる温度まで昇温させるための加熱装置が必要ない。
【0068】
また、ガスバーナの炎口部から出てすぐの完全燃焼する前の還元炎がこの燃料電池に当たることから、ガスバーナの炎口部から直接燃料供給することができるため、発電のための燃料供給路を他に設ける必要もない。
【0069】
さらに、発電に使用されなかった残りの燃料ガスはそのまま燃焼されるため、排ガスを逃がす通路等を設ける必要もない。
【0070】
このように、本発明のガス器具によれば、発電システム全体の構造を簡単にすることが可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0072】
例えば、上記実施例において、ガス器具は、ファン付赤外線ストーブについて示しているが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、小型給湯器、テーブル・ビィルトインコンロ、炊飯器等にも適用することは可能である。
【0073】
給湯器や炊飯器等は、家庭用のコンセントからAC100Vの電力が供給されるが、これらのものに本発明を適用すると電源コードが不要となり使用場所を選ばないため、使い勝手が良くなる。また、コンロ等は電源として乾電池を用いているが、電力が弱いためにファン等の電気部品を取付けることができなかった。例えばコンロに本発明を適用すると、ファンを取付けてコンロのトッププレートの温度を下げることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るガスバーナ及びそれを用いたガス器具は、ファン付赤外線ストーブ、小型給湯器、テーブル・ビィルトインコンロ、炊飯器等として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る燃料電池の発電方法を説明するための模式図であり、ガスバーナの炎口部を横側から見たものである。
【図2】本発明に係るガスバーナの一実施形態を表す図である。
【図3】本発明に係るガスバーナの炎口部を上側及び横側から見た図である。
【図4】本発明に係るガスバーナの炎口部を上側及び横側から見た図である。
【図5】本発明に係るガスバーナの炎口部を上側及び横側から見た図である。
【図6】本発明に係るガス器具の一例としてのファン付赤外線ストーブを表す図である。
【図7】図6に示すファン付赤外線ストーブのレイアウトの一例を表す断面概略図である。
【図8】公知の、ガスバーナの炎の上に直接高温作動型燃料電池を配置し、ガスバーナの還元炎で直接加熱して燃料電池の作動温度まで昇温させると共に、ガスバーナの炎口部から直接燃料電池に燃料ガスを供給して発電させるシステムを表す図である。
【符号の説明】
【0076】
10 ガスバーナ
12 炎口部
14 固体電解質型燃料電池
16 炎
18 還元炎
20 燃料極(アノード側)
22 固体電解質
24 空気極(カソード側)
26 濃淡バーナ
28 淡炎口部
30 主炎
32 濃炎口部
34 袖火
36 ガスバーナ
38 入口
40 ガス通路
50 ファン付赤外線ストーブ
X 本体部
Y 発電部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性固体電解質を有し該固体電解質の表面に燃料極及び空気極が形成された高温作動型の固体電解質型燃料電池をガスバーナの燃焼により発電させる燃料電池の発電方法であって、
前記固体電解質型燃料電池の前記燃料極側が前記ガスバーナの炎口部から噴出される還元炎に当たり、前記空気極側が前記還元炎に当たらないように前記ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って前記固体電解質型燃料電池を前記ガスバーナの炎口部近辺に配置し、前記ガスバーナの燃焼による燃焼熱によって前記固体電解質型燃料電池をその作動温度まで昇温させると共に、前記ガスバーナの燃焼の際前記ガスバーナの前記炎口部から噴出される燃焼ガスを前記燃料極に供給することを特徴とする燃料電池の発電方法。
【請求項2】
燃料ガスと燃焼用空気とが供給される入口と、該入口から供給された前記燃料ガスと前記燃焼用空気との混合ガスが通過するガス通路と、該ガス通路の下流側に接続され前記混合ガスを噴出させるための炎口部を有するガスバーナであって、
酸素イオン伝導性固体電解質を有し該固体電解質の表面に燃料極及び空気極が形成された高温作動型の固体電解質型燃料電池を、該固体電解質型燃料電池の前記燃料極側が前記炎口部から噴出される還元炎に当たり前記空気極側が前記還元炎に当たらないように前記ガスバーナからの炎の吹出し方向に沿って前記炎口部に立設させたことを特徴とするガスバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載のガスバーナと電磁弁やファン等の電力を必要とする電気部品とを備えるガス器具であって、前記ガスバーナの前記固体電解質型燃料電池により発電される電力を前記電気部品の駆動用電力として用いることを特徴とするガス器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−42354(P2007−42354A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223701(P2005−223701)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000112015)パロマ工業株式会社 (298)
【Fターム(参考)】