説明

燃料電池搭載車両

【課題】急な負荷が生じる可能性があるか否かを判断して、車両に搭載された燃料電池の燃料電池スタックの性能劣化の抑制効果を向上する。
【解決手段】運転座席201にはシートセンサ43が設けられている。シートセンサ43は、運転座席201における運転者の搭乗有無を検出する。シートセンサ43によって得られた搭乗無の情報は、車両コントローラ27へ送られ、車両コントローラ27は、送られた搭乗無の情報を燃料電池ユニットコントローラ44へ送る。燃料電池ユニットコントローラ44は、搭乗無の情報の入力に基づいて、燃料電池システム37を微小発電させる制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と空気中の酸素とを反応させて発電する燃料電池を用いる場合には、燃料電池で発電された電気を蓄電装置に蓄電できる構成が一般的に採用される。このような構成では、燃料電池を構成する燃料電池スタックがOCV(オープン・サーキット・ボルテージ)状態(電気的な無負荷状態であって、燃料電池スタックの電位が最も高い状態)になることによって燃料電池スタックの性能が劣化する。これは、燃料電池スタックに用いられている触媒(白金)が高い電圧によって溶出するためである。
【0003】
又、燃料電池スタックの性能劣化は、発電及び発電停止の繰り返しによっても生じる。触媒(白金)が溶出する高い電圧よりも低い領域では触媒(白金)が酸化し、酸化による保護膜ができる。この保護膜は、触媒(白金)の溶出を抑えて燃料電池スタックの性能劣化を防止するが、さらに低い電圧領域では触媒(白金)が還元し、酸化による保護膜が無くなる。発電及び発電停止の繰り返しは、還元領域(保護膜がない状態)からOCV状態への移行を伴うことによって、燃料電池スタックの性能劣化を招く。
【0004】
このような燃料電池スタックの性能劣化を抑制する手段が特許文献1に開示されている。特許文献1では、電気的な無負荷時(換言すると車両の無負荷状態の時)においても、蓄電装置よりも僅かに高い電圧で連続して発電させて燃料電池スタックの性能劣化を抑制する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−248367公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気的な無負荷時において、蓄電装置よりも僅かに高い電圧で連続して発電させて燃料電池スタックの性能劣化を抑制する場合にも、急な負荷への備えとして、蓄電装置を早く満充電状態にすることが望ましい。しかし、蓄電装置を早く満充電状態にするということは、発電及び発電停止の繰り返し回数を増やすことになり、燃料電池スタックの性能劣化の抑制の妨げとなる。そこで、急な負荷が生じる可能性があるか否かを判断する必要があり、急な負荷が生じる可能性がある場合には、蓄電装置を早く満充電状態にする制御を遂行すればよく、急な負荷が生じる可能性がない場合には、蓄電装置を早く満充電状態にする制御を回避すればよい。
【0006】
しかし、特許文献1では、このような判断の具体的な開示がなく、その示唆もない。
本発明は、急な負荷が生じる可能性があるか否かを判断して、車両に搭載された燃料電池の燃料電池スタックの性能劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池と、前記燃料電池で発電された電気を蓄電する蓄電装置と、前記蓄電装置の電圧を計測する電圧計測手段と、前記電圧計測手段によって得られた電圧計測情報に基づいて前記燃料電池における発電量を制御する制御手段とを備えた燃料電池搭載車両を対象とし、請求項1の発明では、前記車両の運転座席における運転者の搭乗有無を検出する搭乗有無検出手段を備え前記搭乗有無検出手段が搭乗無状態を検出した場合には、前記制御手段は、発電停止を含まない微小発電制御を行なう。
【0008】
搭乗無におけるこのような微小発電は、燃料電池スタックの性能劣化を抑制する効果を高める。運転者が運転座席にいない限り車両の操作は行われない。つまり車両は無負荷状態となり、しかも急な負荷が生じる可能性はない。車両の無負荷状態とは、無走行状態や、産業車両では無走行状態以外に荷役動作のない状態を含む。運転者の搭乗有無の検出は、急な負荷が生じる可能性があるか否かを確実に判断する上で好ましい。
【0009】
好適な例では、前記微小発電制御は、前記蓄電装置が満充電にならない間は一定の電力を発電する制御である。
一定の電力の発電は、微小発電の制御を容易にする。
【0010】
好適な例では、前記微小発電制御は、前記蓄電装置が満充電になった場合には、車両の無負荷状態における必要最小限の維持電力を発電する制御である。
このような制御は、蓄電装置の過充電の回避に有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両の無負荷状態を確実に検出して、車両に搭載された燃料電池の燃料電池スタックの性能劣化を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をフォークリフトに具体化した第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、フォークリフト11の車体フレーム12の前部にはマスト13が立設されている。マスト13は、車体フレーム12に対して前後に傾動可能に支持された左右一対のアウタマスト131と、これにスライドして昇降するインナマスト132とからなる。各アウタマスト131の後部には油圧式のリフトシリンダ14が配設されている。リフトシリンダ14のピストンロッド141の先端は、インナマスト132の上部に連結されている。インナマスト132の上部に支承されたチェーンホイール15にはチェーン17が巻き掛けられている。チェーン17の一端は、リフトシリンダ14のボディ又はアウタマスト131の上部に一端を固定されており、チェーン17の他端は、リフトブラケット16に連結されている。フォーク18は、リフトシリンダ14の伸縮によりチェーン17に吊り下げられたリフトブラケット16と共に昇降するようになっている。
【0013】
マスト13は、油圧式の左右一対のチルトシリンダ19を介して車体フレーム12に対して傾動可能に連結支持されている。チルトシリンダ19は、その基端側が車体フレーム12に対して回動可能に連結されているとともに、ピストンロッド191の先端でアウタマスト131に回動可能に連結されている。マスト13は、チルトシリンダ19が伸縮駆動されることで前後に傾動する。リフトシリンダ14及びチルトシリンダ19は、荷役用モータ30から駆動力を得る。
【0014】
運転室20には運転座席201が設けられており、運転座席201の前方にはステアリングホイール21、リフトレバー22及びチルトレバー23が装備されている。運転座席201の前側且つ下方にはアクセルペダル28が設けられている。
【0015】
ステアリングホイール21は、操舵輪24(後輪)の舵角を変更するためのものである。リフトレバー22は、フォーク18を昇降させるときに操作するものであり、チルトレバー23は、マスト13を傾動させるときに操作するものである。アクセルペダル28は、フォークリフト11を走行させるものである。
【0016】
リフトレバー22の操作が行われると、この操作に応じた電気的操作情報が車両コントローラ27へ送られ、車両コントローラ27は、該電気的操作情報の入力に基づいて、フォーク18の昇降を制御する。チルトレバー23の操作が行われると、この操作に応じた電気的操作情報が車両コントローラ27へ送られ、車両コントローラ27は、該電気的操作情報の入力に基づいて、マスト13の傾動を制御する。
【0017】
駆動輪25(前輪)は、走行用モータ26によって回転駆動される。走行用モータ26は、車両コントローラ27の制御を受ける。アクセルペダル28の踏む込み操作が行われると、この操作に応じた電気的操作信号が車両コントローラ27へ送られる。車両コントローラ27は、該電気的操作信号の入力に基づいて、走行用モータ26の回転速度を制御する。
【0018】
運転座席201には圧力センサ型のシートセンサ43が設けられている。シートセンサ43は、運転座席201上の運転者の有無(運転者の搭乗の有無)を検出するためのものである。搭乗有無検出手段としてのシートセンサ43によって得られた運転者の搭乗有無検出情報は、車両コントローラ27へ送られる。
【0019】
車両コントローラ27は、搭乗有無検出手段によって得られる搭乗有無情報に基づいて、荷役用モータ30及び走行用モータ26の駆動、つまりフォーク18の駆動及びフォークリフト11の走行の可否を判断する駆動制御手段である。運転者が運転座席201に搭乗していない場合には、車両コントローラ27は、荷役用モータ30及び走行用モータ26の駆動を禁止する。
【0020】
運転室20のフロアの下側には収納室31が備えられている。収納室31には燃料電池ユニットFUが搭載されている。収納室31にはコネクタK〔図1(b)に図示〕が設けられている。
【0021】
図1(b)に示すように、コネクタKは、燃料電池ユニットFU側の配線32と、フォークリフト11側の電力回路を構成する配線33とを電気的に接続している。車両側の配線33には走行用インバータ34、荷役用インバータ35及び電圧計36が接続されている。走行用インバータ34は、コネクタKを介して燃料電池ユニットFUから供給される直流を交流に変換する。走行用モータ26及び荷役用モータ30は、走行用インバータ34により変換された交流により駆動される。
【0022】
電圧計36、走行用インバータ34及び荷役用インバータ35は、車両コントローラ27に電気的に接続されている。車両コントローラ27は、走行用インバータ34の動作を制御して走行用モータ26に供給される交流の電圧を調節することによって走行用モータ26の回転数を制御する。同様に、車両コントローラ27は、荷役用インバータ35の動作を制御して荷役用モータ30に供給される交流の電圧を調節することによって荷役用モータ30の回転数を制御する。
【0023】
車両コントローラ27には車両キースイッチ29が電気的に接続されている。車両キースイッチ29がON操作されると、車両コントローラ27は、走行用インバータ34及び荷役用インバータ35の動作の制御を開始して走行用モータ26及び荷役用モータ30への電力供給の制御を開始する。
【0024】
次に、収納室31に搭載された燃料電池ユニットFUについて説明する。
図1(b)に示すように、燃料電池ユニットFUは、燃料電池システム37を備えている。燃料電池システム37は、燃料電池FC、水素を貯蔵するとともに燃料電池FCに対して水素を供給する水素タンク38、及び燃料電池FCに対して空気を供給するコンプレッサ39を備えている。
【0025】
燃料電池システム37は、燃料電池ユニットFU側の配線32に電気的に接続されている。配線32には電気二重層キャパシタ40(以下、キャパシタ40と示す)が燃料電池FCに対して並列となるようにDC/DCコンバータ41を介して電気的に接続されている。蓄電装置としてのキャパシタ40は、燃料電池システム37からDC/DCコンバータ41を介して電力供給を受けて充電する。DC/DCコンバータ41は、燃料電池システム37で発電された所定の電圧(例えば100ボルト)の電力を所定の電圧(例えば48ボルト)に変換する。
【0026】
配線32には電圧計42(ユニット用電圧計)がキャパシタ40に対して並列となるように接続されている。電圧計測手段としての電圧計42は、キャパシタ40の電圧(以下、「キャパシタ電圧」と示す)Vcを検出する。
【0027】
DC/DCコンバータ41、電圧計42及び燃料電池システム37は、燃料電池ユニットコントローラ44に電気的に接続されている。燃料電池ユニットコントローラ44は、燃料電池システム37による発電の開始及び停止や、その発電量を制御する。燃料電池ユニットコントローラ44は、燃料電池システム37が発電する電力の電圧をキャパシタ40の充電に適した所定の電圧に変換するように、DC/DCコンバータ41を制御する。
【0028】
燃料電池ユニットコントローラ44は、車両コントローラ27と電気的に接続されている。車両キースイッチ29がON操作されると、車両コントローラ27は、燃料電池ユニットコントローラ44へユニット起動信号を出力する。燃料電池ユニットコントローラ44は、ユニット起動信号の入力に基づいて、燃料電池システム37における発電の制御を開始する。又、車両コントローラ27は、シートセンサ43によって得られた搭乗有無情報を燃料電池ユニットコントローラ44へ送る。
【0029】
図3は、燃料電池スタックの劣化を抑制するための劣化抑制制御プログラムを表すフローチャートである。以下、図3のフローチャートに従って劣化抑制制御を説明する。
ユニット起動信号が入力されると、燃料電池ユニットコントローラ44は、シートセンサ43によって得られた搭乗有無検出情報を取り込む(ステップS1)。燃料電池ユニットコントローラ44は、取り込んだ搭乗有無検出情報に基づいて、搭乗有か否かを判断する(ステップS2)。搭乗有の場合(ステップS2においてYES)、燃料電池ユニットコントローラ44は、燃料電池システム37に対して通常発電制御を行なう(ステップS3)。
【0030】
図2(a)のグラフにおける曲線E1は、キャパシタ電圧Vcの変動の一例を表す。曲線E1を含む座標の横軸は、時刻を表し、縦軸は、キャパシタ40のキャパシタ電圧を表す。フォークリフト11の稼働(フォークリフト11の走行あるいはフォーク18の荷役動作)に伴ってキャパシタ40の充電電気が消費(放電)されると共に、キャパシタ40の充電電気の消費に伴って燃料電池システム37の発電が制御され、キャパシタ40のキャパシタ電圧が変動する。時刻t1以前の曲線E1の部分E11は、搭乗有状態のときのキャパシタ電圧Vcの変動を表す。
【0031】
図2(a)のグラフにおける曲線F1は、燃料電池システム37で発電される発電電力の変動の一例を表す。曲線F1を含む座標の横軸は、時刻を表し、縦軸は、発電電力を表す。時刻t1以前の曲線F1の部分F11は、搭乗有状態のときの部分E11に対応した発電電力の変動を表す。部分F11は、部分E11の変動に応じて決定された発電電力であり、通常発電制御は、搭乗有状態のときのキャパシタ電圧Vcの変動に応じて発電電力を決定する制御のことである。
【0032】
ステップS2においてNOの場合〔搭乗無(車両の無負荷状態)の場合〕、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS4〜ステップS6で示す微小発電制御を行なう。
ステップS2においてNOの場合、燃料電池ユニットコントローラ44は、電圧計42から得られるキャパシタ電圧検出情報に基づいて、キャパシタ40が満充電か否かを判断する(ステップS4)。キャパシタ40が満充電でない場合(ステップS4においてNO)、燃料電池ユニットコントローラ44は、発電電力がf1となるように燃料電池システム37の発電を制御する(ステップS5)。発電電力f1は、燃料電池システム37の最大発電電力の3%〜15%の範囲である。この範囲は、燃料電池スタックの高電位を回避するのに有効な範囲である。
【0033】
発電電力f1の発電制御を行なっているとき、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS1,S2へ移行して搭乗有か否かを判断する。搭乗有の場合(ステップS2においてYES)、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS3へ移行する。搭乗無〔車両の無負荷状態〕の場合(ステップS2においてNO)、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS4へ移行する。
【0034】
キャパシタ40が満充電である場合(ステップS4においてYES)、燃料電池ユニットコントローラ44は、発電電力がf2(<f1)となるように燃料電池システム37の発電を制御する(ステップS6)。
【0035】
発電電力f2の発電制御を行なっているとき、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS1,S2へ移行して搭乗有か否かを判断する。搭乗有の場合(ステップS2においてYES)、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS3へ移行する。搭乗無〔車両の無負荷状態〕の場合(ステップS2においてNO)、燃料電池ユニットコントローラ44は、ステップS4へ移行する。
【0036】
図2(a)のグラフにおける時刻t1以後の曲線E1の部分E12は、搭乗無状態のときのキャパシタ電圧Vcの変動を表す。図2(a)のグラフにおける時刻t1以後の曲線F1の部分F12,F13は、搭乗無状態のときの発電電力の変動の一例を表す。部分E12は、部分F12(発電電力f1)に応じて変動するキャパシタ電圧Vcを表し、満充電でないキャパシタ電圧である。部分E13は、満充電のキャパシタ電圧を表しており、部分F13は、キャパシタ40が満充電のときに発電される発電電力f2を表す。発電電力f2は、車両コントローラ27、燃料電池ユニットコントローラ44、燃料電池システム37冷却用の冷却装置(図示略)等の作動維持に必要な最小限の電力である。
【0037】
微小発電制御は、搭乗無状態のときには予め設定された発電電力(本実施形態ではf1,f2)をもたらすように行われる発電制御のことである。
燃料電池ユニットコントローラ44は、搭乗有無検出手段が搭乗無状態を検出した場合には、発電停止を含まない微小発電制御を行なう制御手段である。
【0038】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)搭乗無状態にあるときのこのような微小発電は、燃料電池スタックの性能劣化を抑制する。運転者が運転座席201にいない限りフォークリフト11の操作は行われず、フォークリフト11は無負荷状態となり、しかも急な負荷が生じる可能性はない。運転者の搭乗有無の検出は、急な負荷が生じる可能性があるか否かを確実に判断する上で好ましい。
【0039】
(2)図2(b)のグラフは、キャパシタ40を急速に満充電させた場合の一例を示す。図2(b)のグラフにおける曲線E2における時刻t1以前の部分E21は、搭乗有状態のときのキャパシタ電圧Vcの変動を表す。図2(b)のグラフの曲線F2の部分F21は、搭乗有状態のときの部分E21に対応した発電電力の変動を表す。曲線E2の部分E22は、搭乗有状態において無負荷状態で急激に満充電したときのキャパシタ電圧Vcの変動の一例を表す。曲線F2の部分F22は、搭乗有状態において無負荷状態における部分E22をもたらす発電電力の変動を表す。キャパシタ40が満充電になった後には、発電が停止されている。
【0040】
キャパシタ40を急速に満充電させた場合、発電を停止することにすると、その後の発電停止が長くなるが、発電停止が長くなるほど、燃料電池スタックの性能劣化が進行し易い。
【0041】
運転者が運転座席201にいない限りフォークリフト11の操作は行われないことから、フォークリフト11の負荷が急激に増大することはないため、急な負荷の増大に備えるためにキャパシタ40を急速に満充電にする必要はない。従って、運転者が運転座席201にいないときに微小発電を行なうのは、発電停止を回避して燃料電池スタックの性能劣化の進行を抑制する上で、好ましい。
【0042】
(3)キャパシタ40における蓄電容量が満充電にならない間は一定の電力f1を発電するようにした微小発電では、一定量の水素を燃料電池FCに供給すればよい。従って、キャパシタ40における蓄電容量が満充電にならない間の一定の電力の発電は、微小発電の制御を容易にする。
【0043】
(4)キャパシタ40の満充電後に、搭乗無状態における必要最小限の維持電力f2よりも大きい電力を発電すると、キャパシタ40が過充電になってキャパシタ電圧が上昇し過ぎてしまう。キャパシタ40における蓄電容量が満充電になった後の搭乗無状態における必要最小限の維持電力f2を発電する制御は、キャパシタ40の過充電の回避に有効である。
【0044】
(5)作業者(運転者)が乗り降りを頻繁に繰り返すフォークリフト11では、キャパシタ40の蓄電容量が満充電になってから発電を停止することにすると、燃料電池システム37の発電及び停止が頻繁に繰り返されることになり、燃料電池スタックの性能劣化が進行し易い。このようなフォークリフト11は、搭乗無状態において発電停止を行わない本発明の適用対象として特に好適である。
【0045】
(6)フォークリフト11では、搭乗無の状態ではフォーク18の荷役動作(荷役用モータ30の駆動)及びフォークリフト11の走行(走行用モータ26の駆動)を行わせないために、搭乗有無検出手段の設置が義務付けられており、車両コントローラ27は、搭乗無状態では荷役用モータ30及び走行用モータ26を作動させない制御を行なう。つまり、フォークリフト11では、元々設置されている搭乗有無検出手段を本発明のために流用することができ、新たな搭乗有無検出手段を設置する必要がない。この点においても、フォークリフト11は、本発明の適用対象として好適である。
【0046】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1の実施形態において、搭乗有状態のときにフォークリフト11が無負荷状態にあるときには、図2(b)のように急速充電制御を行なって満充電させた後、微小発電制御へ移行してもよい。このようにすれば、急な負荷の増大に対処することができ、しかも、搭乗有状態且つフォークリフト11の無負荷状態のときにも燃料電池スタックの性能劣化を抑制することができる。この場合の微小発電制御における発電電力は、f2とするのが望ましい。
【0047】
リフトレバー22の操作、チルトレバー23の操作あるいはアクセルペダル28の踏み込み操作に伴う電気的操作信号が車両コントローラ27に入力しているため、これら電気的操作信号の入力の有無に基づいて、フォークリフト11が負荷有状態と無負荷状態とのいずれかであるかをフォークリフト11に判断させることができる。つまり、車両コントローラ27は、搭乗有状態のときのフォークリフト11の負荷有無の状態を判断する負荷状態判断手段とすることができる。
【0048】
○コネクタKを経由してインバータ34,35へ流れる電流を検出する電流計を設け、燃料電池ユニットコントローラ44が電流計43によって検出された電流値からフォークリフト11の稼働の有無、つまりフォークリフト11が負荷有状態と無負荷状態とのいずれかであるかを判断するようにしてもよい。この場合、燃料電池ユニットコントローラ44は、フォークリフト11の負荷の状態を判断する負荷状態判断手段となる。
【0049】
○シートセンサ43以外の搭乗有無検出手段、例えばシートベルトの着脱を検出するシートベルトセンサを用いてもよい。シートベルトセンサは、シートベルトの着状態によって運転者の搭乗有を検出し、シートベルトの脱状態によって運転者の搭乗無を検出する。
【0050】
○第1の実施形態において、搭乗無状態では発電電力をf1のみとする発電制御を行なうようにしてもよい。
○第1の実施形態において、搭乗無状態では発電電力を徐々に低減させるようにしてもよい。
【0051】
○フォークリフト以外の産業車両や、産業車両以外の車両に本発明を適用してもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下にその効果と共に記載する。
〔1〕車両の負荷の状態を判断する負荷状態判断手段を備え、前記負荷状態判断手段が負荷無状態と判断し、且つ前記搭乗有無検出手段が搭乗有状態を検出した場合には、前記制御手段は、急速充電制御を行なった後に微小発電制御へ移行する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池搭載車両。
【0052】
搭乗有状態且つ無負荷状態のときには、急な負荷の増大に対処しつつ燃料電池スタックの性能劣化を抑制することができる。
〔2〕前記車両は、フォークリフトであり、前記フォークリフトは、荷役モータ及び走行用モータの駆動を制御する駆動制御手段を備え、前記駆動制御手段は、前記搭乗有無検出手段によって得られる搭乗有無情報に基づいて、荷役モータ及び走行用モータの駆動の可否を判断する前記〔1〕項、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池搭載車両。
【0053】
作業者(運転者)が乗り降りを頻繁に繰り返すフォークリフトでは、無負荷状態と負荷有状態とが頻繁に繰り返され、燃料電池スタックの性能劣化が進行し易い。このようなフォークリフトは、本発明の適用対象として特に好適である。又、搭乗有無検出手段によって得られる搭乗有無検出情報を、〔2〕項に記載の判断と、本発明の発電制御とに兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)は、フォークリフトを示す正面図。(b)は、電気ブロック図。
【図2】(a)は、微小発電制御を説明するためのグラフ。(b)は、通常発電制御を説明するためのグラフ。
【図3】劣化抑制制御プログラムを表すフローチャート。
【符号の説明】
【0055】
11…車両としてのフォークリフト。201…運転座席。27…駆動制御手段としての車両コントローラ。37…燃料電池システム。40…蓄電装置としてのキャパシタ。42…電圧計測手段としての電圧計。43…搭乗有無検出手段としてのシートセンサ。44…制御手段としての燃料電池ユニットコントローラ。FC…燃料電池。FU…燃料電池ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、前記燃料電池で発電された電気を蓄電する蓄電装置と、前記蓄電装置の電圧を計測する電圧計測手段と、前記電圧計測手段によって得られた電圧計測情報に基づいて前記燃料電池における発電量を制御する制御手段とを備えた燃料電池搭載車両において、
前記車両の運転座席における運転者の搭乗有無を検出する搭乗有無検出手段を備え
前記搭乗有無検出手段が搭乗無状態を検出した場合には、前記制御手段は、発電停止を含まない微小発電制御を行なう燃料電池搭載車両。
【請求項2】
前記微小発電制御は、前記蓄電装置が満充電にならない間は一定の電力を発電する制御である請求項1に記載の燃料電池搭載車両。
【請求項3】
前記微小発電制御は、前記蓄電装置が満充電になった場合には、車両の無負荷状態における必要最小限の維持電力を発電する制御である請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の燃料電池搭載車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−63265(P2010−63265A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226092(P2008−226092)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】