説明

燃料電池自動車

【課題】補機バッテリのバッテリ温度を検出する専用のセンサを不要としながら、補機バッテリの過充電及び充電不足を防止する。
【解決手段】制御部100は、吸気温度センサ201により検出される起動初期の吸気温度Ts(この起動初期の吸気温度Tsが補機バッテリ22のバッテリ温度に強い相関がある。)に基づいて電圧変換器21により発生される充電電圧Vchを高充電電圧Vchhiと低充電電圧Vchlowに切り替えるようにしている。このため、補機バッテリ22のバッテリ温度を検出する専用のセンサが不要としながら、補機バッテリ22の過充電及び充電不足を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反応ガスにより発電する燃料電池の電力により駆動される駆動モータを備える燃料電池自動車に関し、特に、前照灯、ワイパ等の補機を作動させるための補機バッテリの充電設備のコストの低減、前記補機バッテリの充電システムの簡素化を図った燃料電池自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気自動車では、走行用の駆動モータは高圧バッテリの電力により駆動され、車両補機類(例えば、前照灯、ワイパ等)は低圧の補機バッテリの電力により駆動される(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、補機バッテリは、高圧バッテリの電圧を電圧変換器により降圧して充電される。
【0004】
また、一般的に、燃料電池自動車では、走行用の駆動モータが、燃料電池の電力又は該燃料電池と高圧バッテリとの電力により駆動され、前記車両補機類は低圧の補機バッテリの電力により駆動される。
【0005】
したがって、燃料電池自動車では、補機バッテリは、燃料電池の電圧及び(又は)高圧バッテリの電圧を電圧変換器により降圧して充電される。
【0006】
【特許文献1】特開平7−107619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、補機バッテリの推奨充電電圧は、バッテリの温度とともに変化(低温時は高電圧、高温時は低電圧)するものであり、このバッテリ温度を検出するために、特許文献1では、補機バッテリの側面又は底面等に温度検出手段としてのサーミスタを取り付け、このサーミスタの一接続端を補機バッテリの正極端子に接続する一方で他接続端を電圧変換器に接続するように構成し、該電圧変換器内部で前記サーミスタの他接続点を抵抗分圧し、バッテリ温度の変化に基づく分圧電圧の変化を検出し、検出したバッテリ温度に応じて充電電圧を可変するように構成している。
【0008】
しかしながら、上記従来技術に係るバッテリ温度を検出するシステム構成(設備構成)は、温度検出専用のセンサが必要とされ、その分コストがアップするとともに、温度検出専用のセンサを取り付けるための構成(サーミスタのバッテリへの取付構成、サーミスタから補機バッテリへの配線)が複雑化し、結局、補機バッテリの充電用設備のコスト及びシステムが複雑化するという問題がある。
【0009】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、補機バッテリの充電用設備のコストダウン及びシステムの簡素化を図ることを可能とする燃料電池自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る燃料電池自動車は、燃料ガスと空気により発電する燃料電池と、空気を吸気口から取り入れ前記燃料電池に供給する空気ポンプと、前記吸気口から取り入れられる前記空気の吸気温度を検出する温度センサと、前記燃料電池の電力により充電される補機バッテリと、前記燃料電池の発電電圧を前記補機バッテリの充電電圧に変換する電圧変換器と、前記補機バッテリへの充電を制御する充電制御器と、前記燃料電池の発電電力により駆動される駆動モータと、を備える燃料電池自動車であって、以下の特徴(1)〜(5)を備える。
【0011】
(1)車両のフロントフード下方の車体前部空間内に、前記空気ポンプの前記吸気口と、前記補機バッテリと、が配置され、前記充電制御器は、前記温度センサにより検出される前記吸気温度に基づいて前記電圧変換器により発生する前記補機バッテリの前記充電電圧を切り替えることを特徴とする。
【0012】
この特徴(1)を備える発明によれば、空気の吸気温度を検出する温度センサにより検出される吸気温度に基づいて電圧変換器により発生される充電電圧を切り替えるようにしているので、補機バッテリの温度を検出する専用のセンサが不要になり、補機バッテリの過充電及び充電不足を防止することができる。
【0013】
なお、車両のフロントフード下方の車体前部空間内に配置された空気ポンプの吸気口の吸気温度が、同じ車体前部空間室内に配置した補機バッテリの温度に対して強い相関関係がある。
【0014】
(2)上記特徴(1)を備える発明において、さらに高圧バッテリを有し、前記駆動モータは、前記燃料電池の発電電力の他、前記高圧バッテリの電力により駆動され、前記電圧変換器は、前記燃料電池の発電電圧又は前記高圧バッテリの電圧を前記補機バッテリの充電電圧に変換することを特徴とする。
【0015】
この特徴(2)を備える発明によれば、駆動モータを燃料電池と高圧バッテリのハイブリッド電源により駆動できるととともに、補機バッテリを前記燃料電池と前記高圧バッテリの電力により充電できる。
【0016】
(3)上記特徴(1)又は特徴(2)を備える発明において、前記吸気温度は、前記燃料電池自動車が起動されて、前記空気ポンプが作動した起動初期の吸気温度としたことを特徴とする。
【0017】
補機バッテリ温度は、燃料電池自動車の燃料電池の起動初期の前記空気ポンプの前記吸気温度に強い相関がある(略等しい)ので、補機バッテリ温度として前記燃料電池の起動初期の前記空気ポンプの前記吸気温度を利用することができる。
【0018】
(4)上記特徴(3)を備える発明において、前記充電制御器は、前記充電電圧を充電前期の高充電電圧から充電後期の低充電電圧に切り替えるように設定し、前記起動初期の前記吸気温度に基づいて、前記高充電電圧で充電する前記充電前期の充電時間を算出することを特徴とする。
【0019】
起動初期の吸気温度と、高充電電圧から低充電電圧に切り替えるタイミングとの間に相関関係があるので、前記起動初期の前記吸気温度に基づいて、前記高充電電圧で充電する前記充電前期の充電時間を算出することができる。
【0020】
(5)上記特徴(1)〜(3)のいずれかを備える発明において、前記充電制御器は、前記起動初期の前記吸気温度と、起動時からの充電経過時間に基づいて前記補機バッテリの現在のバッテリ温度を推定し、推定した現在のバッテリ温度に基づいて前記充電電圧を切り替えることを特徴とする。
【0021】
このように構成すれば、補機バッテリの推奨充電電圧に沿って充電電圧を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、空気の吸気温度を検出する温度センサにより検出される吸気温度に基づいて電圧変換器により発生される充電電圧を切り替えるようにしているので、補機バッテリの温度を検出する専用のセンサが不要になり、補機バッテリの過充電及び充電不足を防止することができる。その結果、補機バッテリの充電用設備のコストダウン及び簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、この発明の一実施形態が適用された燃料電池自動車12の概略回路図である。
【0025】
図1において、燃料電池自動車12は、基本的には、複数の発電セルが積層されたスタック構造の発電電圧が350[V]程度の燃料電池14と、この燃料電池14の発電出力を補助するエネルギストレージである開放電圧が280[V]程度の高圧バッテリ16とから構成されるハイブリッド電源と、このハイブリッド電源からの電流(電力)が図示しないインバータを通じて供給される走行用の駆動モータ18とから構成される。高圧バッテリ16は、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池、又はキャパシタを利用することができる。
【0026】
燃料電池14の電流出力は、配線101を通じて、VCU(Voltage Control Unit)15に接続される。
【0027】
VCU15には、PDU(Power Drive Unit)20を通じて駆動モータ18が接続されるとともに、高圧バッテリ16、空気圧縮機(空気ポンプという。)24、冷却水ポンプ26、28等が接続され、さらに、DC/DCコンバータ(ここではダウンバータ)である電圧変換器21を通じて補機バッテリ22が接続される。
【0028】
VCU15は、双方向の電圧変換が可能なDC/DCコンバータであり、例えば、高圧バッテリ16の電力を、PDU20を介して駆動モータ18に供給する。また、VCU15は、燃料電池14の電力及び(又は)駆動モータ18の回生電力を、高圧バッテリ16に充電用として供給するとともに空気ポンプ24に供給し、さらに電圧変換器21を通じて補機バッテリ22に充電用等として供給する。
【0029】
結果として、燃料電池14及び高圧バッテリ16の電力は、駆動系デバイス{DT(Drive Train)系デバイスという。}30に供給されるとともに、DT系冷却水ポンプ28及び燃料電池14を冷却する冷却水ポンプ26に供給される。すなわち、燃料電池自動車12は、ハイブリッド電源型の車両である。
【0030】
この実施形態においてDT系デバイス30は、駆動モータ18と、PDU20と、空気ポンプ24とから構成される。
【0031】
これらDT系デバイス30は、冷却水流路32に連通するDT系ラジエタ34及びDT系冷却水ポンプ28により冷却液体を通じて冷却される。
【0032】
燃料電池14は、冷却水流路36に連通するFC(Fuel Cell)系ラジエタ38及び冷却水ポンプ26により冷却液体を通じて冷却される。
【0033】
DT系ラジエタ34とFC系ラジエタ38とは、車速に応じた風速を有する外気による風(車速風という。)39を介して熱交換を行う。
【0034】
燃料電池14は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んで保持して構成される燃料電池セルを、複数積層させて一体化させたスタック構造である。各燃料電池セルは、電解質膜(固体高分子電解質膜)・電極構造体を挟んで保持する金属のセパレータとを備える。一方のセパレータの電解質膜・電極構造体のカソード電極に対向する面には、酸化剤ガス流路(反応ガス流路ともいう。)が設けられる。他方のセパレータの電解質膜・電極構造体のアノード電極に対向する面には、燃料ガス流路(反応ガス流路ともいう。)が形成される。
【0035】
燃料電池14の燃料ガス流路には、燃料ガス供給流路44を通じて燃料ガス、例えば水素(H2)が充填された水素タンク46から水素が供給される。水素タンク46の遮断弁のオンオフは、制御部100により制御される。
【0036】
燃料電池14の燃料ガス流路から排出される未使用の水素ガスを含むガスは、燃料ガス循環流路48を通じて燃料ガス供給流路44に戻される。燃料ガス供給流路44には図示しないエゼクタが設けられ、そのエゼクタによって発生される負圧により燃料ガス循環流路48からのガスが燃料電池14の燃料ガス流路にもどされる。
【0037】
燃料電池14の酸化剤ガス流路には、酸化剤ガス供給流路50を通じて空気ポンプ24から圧縮空気が供給され、圧縮空気は燃料電池14の酸化剤ガス流路を通過し、これに連通する酸化剤ガス排出流路52を通じて外気に排出される。
【0038】
燃料電池自動車12には、運転中に、駆動モータ18、空気ポンプ24を含むDT系デバイス30等の電気負荷、及びDT系冷却水ポンプ28や冷却水ポンプ26等の電気負荷を制御するための図示しない各種温度センサが車両内に設けられている。
【0039】
例えば、空気ポンプ24に外気の空気を導入する空気吸気口56には、吸気温度Tsを検出する吸気温度センサ201が設けられている。
【0040】
吸気温度センサ201により検出される吸気温度Tsは、制御部100により検出される。この図1例の燃料電池自動車12では、特許文献1のような補機バッテリ22の温度を検出する温度センサを設けていない。なお、空気ポンプ24に対して空気を導入する空気吸気口56の流路には、空気の流量センサ62も設けられている。
【0041】
補機バッテリ22は、低電圧の、例えば、鉛バッテリが採用されており、前照灯等の各種灯火器、ワイパ、オーディオ・ビジアル装置を含むナビゲーションシステム等の低電圧駆動機器に電力を供給する。
【0042】
制御部100には、燃料電池自動車12(燃料電池14)を起動する起動信号を出力するとともに、燃料電池自動車12(燃料電池14)を停止する停止信号を出力するイグニッションスイッチ60(起動スイッチ)が接続されている。
【0043】
制御部100は、燃料電池自動車12の各種弁の開閉、DT系デバイス30の制御、補機バッテリ22の充放電制御、高圧バッテリ16の充放電制御等を含め、燃料電池自動車12全般の動作を制御する。
【0044】
制御部100は、CPU、メモリ(ROM、RAM)、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等を含むコンピュータ(ECU)により構成され、各種入力に基づきメモリに記憶されているプログラムを実行することで各種の機能を実現する機能手段(機能部)としても動作する。
【0045】
図2は、燃料電池自動車12の各種部品の概略構成配置を示す燃料電池自動車12の模式的側面図である。
【0046】
燃料電池自動車12は、それぞれが空間である車室202と、車両のフロントフード204下方の車体前部空間室206と、車室202下の燃料電池室208と、リア側の燃料室210とから構成されている。各室は、ダッシュボード212、フロア214、リアトランクフロア216等により区画されている。
【0047】
車体前部空間室206には、駆動モータ18の他、空気ポンプ24と、空気吸気口56と、吸気温度センサ201と、補機バッテリ22と、DT系ラジエタ34、FC系ラジエタ38等が配置される。
【0048】
燃料電池室208には、VCU15と電圧変換器21と制御部100等とが搭載された電子回路ユニット220と、燃料電池14と、高圧バッテリ16とが配置される。
【0049】
燃料室210には、水素タンク46が配置される。
【0050】
図3は、実車により測定したバッテリ温度Tbと外気温Teaと空気の吸気温度Tsのグラフである。なお、吸気温度Tsは、車体前部空間室206内の温度と略同じように変化することを確認している。
【0051】
図3において、時点t1はイグニッションスイッチ60のオンに伴う燃料電池自動車12(燃料電池14)の起動時、時点t2はイグニッションスイッチ60のオフに伴う燃料電池自動車12(燃料電池14)の停止時、時点t3は起動時、時点t4は停止時、時点t5は起動時である。時間軸に平行な両端矢印付き線分の長さは約3時間[h]である。
【0052】
図3からバッテリ温度Tbは、時点t1、t3、t5の燃料電池自動車12(燃料電池14)の起動初期時において、吸気温度Tsに略等しいことが分かる。そこで、この実施形態では、起動初期時において、バッテリ初期温度Tbiは吸気温度Tsであると推定(同定)して利用する。
【0053】
基本的には以上のように構成される燃料電池自動車12の動作の第1実施例について、図4のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0054】
この第1実施例においては、予め制御部100のROM内に設定・記憶してある、図5のバッテリ温度・充電電圧(Tb−Vch)設定マップ(設定テーブル)252と、図6のバッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ(Tbi−tr)254が制御部100のCPUにより参照される。
【0055】
図5のバッテリ温度・充電電圧設定マップ252では、バッテリ温度Tbが所定の閾値温度Tbth[゜C](補機バッテリ22の仕様等に応じて概ね−10[゜C]〜+10[゜C]のいずれかの値に設定される。)より低いときには、充電不足にならないように高充電電圧Vchhi(この例では、Vchhi=15.0[V])で充電し、バッテリ温度Tbが閾値温度Tbth[゜C]より高いときには、過充電にならないように低充電電圧Vchlow(この例では、Vchlow=14.0[V])で充電する。
【0056】
図6のバッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ254では、起動初期(時点t1、t3、t5等の起動初期)における補機バッテリ22のバッテリ初期温度Tbi、この第1実施例では起動初期の吸気温度Tsに対する補機バッテリ22のバッテリ温度Tbが、高充電電圧Vchhiで補機バッテリ22が充電されているときに、閾値温度Tbthに到達するまでの時間実測値である到達時間tr[分]を示している。なお、バッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ254において、右端の温度Tbilは、概ね−10[゜C]〜+10[゜C]の間の値である。
【0057】
そこで、ステップS1においてイグニッションスイッチ60がオン状態にされたことが制御部100により検出されると、制御部100は、水素タンク46の遮断弁を開放し、空気ポンプ24を作動させ、燃料電池14の発電を開始させ燃料電池14を起動させるが、この起動時にステップS2において、高充電電圧充電時間(高充電電圧Vchhiでの充電時間)tchvhiが求められて確定しているかどうかが判定される。起動直後のこのステップS2の判定では確定していないので、ステップS3に進む。
【0058】
このステップS3では、空気ポンプ24の作動により空気吸気口56に所定流量の空気が流れているかどうかを流量センサ62の値により判定する。
【0059】
次に、所定流量の空気が流れ始めてから所定時間、たとえば数秒程度の時間(吸気温度Tsが安定する時間)が経過しているかどうかが判定され、経過していた場合には、ステップS5において、図6に示したバッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ254を参照して高充電電圧充電時間tchvhiを算出する。すなわち、このステップS5においては、吸気温度センサ201により検出されている吸気温度Tsを、バッテリ初期温度Tbiに対応する起動初期時の吸気温度Tsと同定して検出し、バッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ254を参照してバッテリ初期温度Tbiがバッテリ閾値温度Tbth(図5参照)になるまでの到達時間trを高充電電圧充電時間tchvhiとして算出する。
【0060】
次いで、ステップS6において、高充電電圧Vchhiによる充電を行う。ステップS5の算出処理が終了することで、ステップS2の判定が成立し、ステップS7において、ステップS5で設定した高充電電圧充電時間tchvhiが経過したかどうかを判断し、経過した場合には、バッテリ温度Tbがバッテリ閾値温度Tbth(図5参照)に到達したものと判定し、ステップS8において、充電電圧を高充電電圧Vchhiから低充電電圧Vchlowに切り替えて、低充電電圧Vchlowによる充電が遂行され、補機バッテリ22の補機バッテリ電圧の変化を監視する等による満充電判定がなされたとき充電が終了する。
【0061】
以上説明したように、この実施形態に係る燃料電池自動車12の第1実施例によれば、燃料電池自動車12は、燃料ガスと空気により発電する燃料電池14と、前記空気を空気吸気口56から取り入れ圧縮空気を燃料電池14に供給する空気ポンプ24と、空気吸気口56から取り入れられる前記空気の吸気温度Tsを検出する吸気温度センサ201と、燃料電池14の電力及び(又は)高圧バッテリ16の電力により充電される補機バッテリ22と、燃料電池14の発電電圧を補機バッテリ22の充電電圧Vchに変換する電圧変換器21と、補機バッテリ22への充電を制御する充電制御器としての制御部100と、燃料電池14の発電電力及び(又は)高圧バッテリ16の電力により駆動される駆動モータ18と、を備え、車両のフロント側に設けられ、駆動モータ18が配置される車体前部空間室206内に、空気ポンプ24の空気吸気口56と、補機バッテリ22と、が配置され、制御部100は、吸気温度センサ201により検出される起動初期の吸気温度Tsに基づいて電圧変換器21により発生される充電電圧Vchを高充電電圧Vchhiと低充電電圧Vchlowに切り替えるようにしている。
【0062】
このため、従来の技術のように、補機バッテリ22のバッテリ温度を検出する専用のセンサが不要になって充電用設備の簡素化が図れる上に、補機バッテリ22の過充電及び充電不足を防止することができる。
【0063】
上記第1実施例は、高圧バッテリ16が採用されていない燃料電池自動車にも適用することができる。この場合、例えば補機バッテリ22の電圧がDC/DCコンバータ(この場合には、昇降圧可能)により昇圧され、空気ポンプ24等に供給される。
【0064】
また、充電を制御する制御部100は、充電電圧Vchを充電前期の高充電電圧Vchhiから充電後期の低充電電圧Vchlowに切り替えるように設定し、起動初期の吸気温度Tsに基づき、バッテリ初期温度・バッテリ閾値温度Tbth到達時間マップ254を参照して、高充電電圧Vchhiで充電する前記充電前期の充電時間であるバッテリ閾値温度Tbthへの到達時間tchvhiを算出することができる。
【0065】
次に、第2実施例について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0066】
図8は、バッテリ温度Tb[゜C]に対する推奨充電電圧Vrchの特性(マップ又はテーブル)256を示している。この特性250が制御部100のROMに記憶される。
【0067】
図9は、バッテリ初期温度Tbi[゜C]と充電経過時間tchとバッテリ温度Tbとの関係を示す特性(マップ又はテーブル)258を示している。
【0068】
図9の特性258を参照すれば、バッテリ初期温度Tbi、すなわち起動初期吸気温度Tsと充電経過時間tchが分かれば、現在のバッテリ温度Tbが推定できるので、この推定したバッテリ温度Tbに基づき図8に示した推奨充電電圧Vrchの特性256を参照することで、推定したバッテリ温度Tbに応じて推奨充電電圧Vrchに充電電圧Vchを連続的に切り替えることができる。
【0069】
すなわち、ステップS1においてイグニッションスイッチ60がオン状態にされたことを検知すると、ステップS12においてバッテリ初期温度Tbiが確定されているかどうか判定され、最初の処理では確定されていないのでステップS13において、流量センサ62により所定流量の空気が流れているかどうかが判定される。
【0070】
所定流量の空気が流れていると判定された場合、ステップS14において、所定時間、例えば数秒が経過したかどうかが判定され、数秒経過していた場合には、ステップS15において、起動初期の吸気温度Tsが検出され、それがバッテリ初期温度Tbiとして同定される。
【0071】
ステップS16では、このバッテリ初期温度Tbiに応じた推奨充電電圧Vrchの特性256(図8)を参照して、最初の(初期の)推奨充電電圧Vrchを算出し、充電を開始する。
【0072】
このようにして、次のステップS12の判定が成立(バッテリ初期温度Tbiが確定)するので、ステップS17において、充電経過時間tchを検出する。
【0073】
次いで、ステップS18において、この充電経過時間tchとバッテリ初期温度Tbiとから図9の特性258を参照して現在のバッテリ温度Tbを推定する。
【0074】
次いで、ステップS19において、ステップS18で推定したバッテリ温度Tbに対応する推奨充電電圧Vrchを図8の特性256を参照して推定する。
【0075】
次いで、ステップS20で、推定した推奨充電電圧Vrchにより充電を継続する。
【0076】
このように構成すれば、補機バッテリ22の推奨充電電圧Vrchの特性256(図8参照)に沿って充電電圧Vchを切り替えることができる。
【0077】
上述した第1実施例及び第2実施例によれば、空気の吸気温度Tsを検出する吸気温度センサ201により検出される起動初期の吸気温度Tsに基づいて電圧変換器21により発生される充電電圧Vchを切り替えるようにしているので、補機バッテリ22のバッテリ温度Tbを検出する専用のセンサが不要になり、補機バッテリ22の過充電及び充電不足を防止することができる。その結果、補機バッテリ22の充電用設備のコストダウン及びシステムの簡素化を図ることができる。
【0078】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の一実施形態が適用された燃料電池自動車の概略回路図である。
【図2】燃料電池自動車を構成する各種部品の概略構成配置を示す燃料電池自動車の模式的側面図である。
【図3】実車により測定したバッテリ温度と外気温と吸気温度のグラフである。
【図4】第1実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【図5】バッテリ温度・充電電圧マップの説明図である。
【図6】バッテリ初期温度・バッテリ閾値温度到達時間マップの説明図である。
【図7】第2実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【図8】バッテリ温度に対する推奨充電電圧の特性を示す説明図である。
【図9】バッテリ初期温度と充電経過時間とバッテリ温度との関係を示す特性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
12…燃料電池自動車 14…燃料電池
16…高圧バッテリ 18…駆動モータ
21…電圧変換器 22…補機バッテリ
24…空気ポンプ 56…空気吸気口
62…流量センサ 201…吸気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気により発電する燃料電池と、
空気を吸気口から取り入れ前記燃料電池に供給する空気ポンプと、
前記吸気口から取り入れられる前記空気の吸気温度を検出する温度センサと、
前記燃料電池の電力により充電される補機バッテリと、
前記燃料電池の発電電圧を前記補機バッテリの充電電圧に変換する電圧変換器と、
前記補機バッテリへの充電を制御する充電制御器と、
前記燃料電池の発電電力により駆動される駆動モータと、
を備える燃料電池自動車であって、
車両のフロントフード下方の車体前部空間内に、前記空気ポンプの前記吸気口と、前記補機バッテリと、が配置され、
前記充電制御器は、
前記温度センサにより検出される前記吸気温度に基づいて前記電圧変換器により発生する前記補機バッテリの前記充電電圧を切り替える
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池自動車において、
さらに、高圧バッテリを有し、
前記駆動モータは、前記燃料電池の発電電力の他、前記高圧バッテリの電力により駆動され、
前記電圧変換器は、前記燃料電池の発電電圧又は前記高圧バッテリの電圧を前記補機バッテリの充電電圧に変換する
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池自動車において、
前記吸気温度は、前記燃料電池自動車が起動されて、前記空気ポンプが作動した起動初期の吸気温度とする
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池自動車において、
前記充電制御器は、
前記充電電圧を充電前期の高充電電圧から充電後期の低充電電圧に切り替えるように設定し、
前記起動初期の前記吸気温度に基づいて、前記高充電電圧で充電する前記充電前期の充電時間を算出する
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池自動車において、
前記充電制御器は、
前記起動初期の前記吸気温度と、起動時からの充電経過時間に基づいて前記補機バッテリの現在のバッテリ温度を推定し、推定した現在のバッテリ温度に基づいて前記充電電圧を切り替える
ことを特徴とする燃料電池自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−4638(P2010−4638A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160320(P2008−160320)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】