説明

物体の欠陥を検出するための方法および装置

【課題】 物体の欠陥を検出するための方法および装置を提供する。
【解決手段】 物体20を透過する波長の光50を照射することによって物体20を局部的に照明するステップ10と、直接透過した照射光の部分48の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、かつ1回反射した照射光50の部分53a、53bの検出を少なくとも部分的に回避しつつ、複数回反射した照射光50の部分を検出するステップ12と、検出した照射光50の部分の強度の差を評価することによって欠陥22を識別するステップ14とを備える、物体20の欠陥22を検出するための方法ならびにこの方法を実施するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した、物体の欠陥を検出するための方法と、請求項9の前提部分に記載した、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を製造する際に一般的に、不良品をできるだけ少なくするという目的が追求される。従って、材料部材(出発材料)または半製品の万一の故障または欠陥を、それが製造に持ち込まれる前に、検査する試みがなされる。これにより、製造された製品に欠陥があることが最後のチェックであるいは後で認定される前に、このような欠陥を含む材料部材または半製品が製造工程に持ち込まれ、それによって経費と費用を生ぜしめることが防止される。例えば、半導体構成部品、特に太陽電池を製造する際には、シリコンディスクが材料部材として使用される。しばしばシリコンウェハーと呼ばれるこのシリコンディスクは、数百マイクロメータ以下の厚さのため比較的に薄く、それによって壊れる危険がある。このようなシリコンディスクの一部は、その都度の処理プロセスに送り込まれるときに既に微小ひび割れまたはそのほかの機械的な損傷を有する。このような欠陥が往々にして肉眼で見きわめることが困難であるので、特にシリコンディスクに光を通し、これにより万一の欠陥を識別することが試みられる。
【0003】
しかしながら、不均質な物体の場合、欠陥を部分的にのみ非常に精度良く検出することはできない。なぜなら、不均質性がこの欠陥の検出を困難にするからである。多結晶半導体材料、特に多結晶シリコンディスクの場合、例えば、粒状組織がひび割れ、微小ひび割れ、包有物、又は、そのような物の識別することを困難にする。なぜなら、それらが重なっているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景をふまえて、本発明の根底をなす課題は、物体の欠陥を精度良くに検出することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1の特徴を含む方法によって解決される。
【0006】
さらに、本発明の根底をなす課題は、この方法を実施するための装置を提供することである。
【0007】
この課題は請求項9の特徴を有する装置によって解決される。
【0008】
有利な発展形態はそれぞれ従属請求項の対象である。
【0009】
本発明に係る方法では、物体を透過する波長の光を照射することによって物体が照射される。さらに、直接透過した照射光の部分の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、1回反射した照射光の部分の検出を少なくとも部分的に回避し、複数回反射した照射光の部分が検出される。従って、複数回反射した照射光の部分は検出されるが、同時に直接透過した照射光の部分の少なくとも一部と、1回反射した照射光の部分の少なくとも一部は検出されない。さらに、検出した照射光の部分の強度の差を評価することによって、欠陥が識別される。光とは、物体を透過する波長を有する限り、基本的にあらゆる種類の電磁波であると理解すべきである。本発明の意味における直接透過した照射光の部分は、事前に反射しないで物体を透過する光部分である。本発明の意味における欠陥とは、例えば、粒界を含む一般的な結晶欠陥でなく、物体の機械的な損傷、例えば、ひび割れ、微小ひび割れ、空洞、機械的歪みまたは包有物である。
【0010】
照射光は、反射する場合には、大部分が物体の界面で、すなわち上面および下面で反射する。このように複数回反射した光部分は物体内において、直接透過した光部分または1回のみ反射した光部分と比較して、長い路程距離を進む。この場合、物体の不均一構造、例えば、多結晶半導体物体の結晶構造、特に多結晶シリコンウェハーの結晶構造に関する情報が失われる。その代わりに上記の界面の状態、すなわち表面の状態が検出信号にとって必要である。表面が比較的に粗いと、上記の複数回散乱はランバート反射に類似し得る。上記の複数回反射はランバートの多数回反射と解釈することができ、比較的に等方性の光が物体内に生じる。直接透過した光部分または1回だけ反射した光部分の検出が少なければ少ないほど、そして検出された光が頻繁に拡散されればされるほど、検出された信号内の結晶構造の情報の消滅が大きくなる。検出された信号が画像に変換されると、画像の表示において結晶構造が対応して大きく悪化する。
【0011】
これに対して、例えば、多結晶半導体ディスク内に割れ目が存在すると、この割れ目はそこで支配的な結晶構造に沿って形成される。従って、割れ目の表面が非常に滑らかであると仮定されるので、割れ目の表面では全反射が行われる。割れ目の方向に伝播する照射光は、割れ目の鏡面で全反射する、すなわち鏡のように反射する。この鏡面は基本的には任意の方向に向けることができるので、割れ目における全反射は、シリコンディスクの上面または下面を明るくする。これに対して、明るくされない側は暗くなる。その結果生じる明暗特性は、割れ目を確実に識別するために、画像処理アルゴリズムで利用することができる。その際最後に、照射光の検出部分内の強度の差が評価され、これによって欠陥、特に上記割れ目が識別される。割れ目の代わりに、例えば、包有物が検査物体内に存在すると、この包有物は明るい背景の前で暗く写り、適当な画像処理アルゴリズムによって同様に識別可能である。
【0012】
上記の欠陥は図1〜図3に概略的に示してある。図1は、従来技術に係る直接透過光法の赤外線カメラによって撮影した多結晶シリコンディスク20の画像を概略的に示している。この画像には、多数の粒界24が確認可能である。しばしば、このような粒界に沿って割れ目が延在する。図1にはこのような割れ目22が縁取りされている。この割れ目の延在は太い輪郭線によって人工的に強調されている。この人工的な強調がないと、割れ目22は実際には粒界24と区別がつかない。このことが、このような材料または類似の材料の場合に欠陥の検出を困難にする。既に述べたように、図1の撮影は直接的な透過光で行われた。すなわち、シリコンディスクは一方の側から局部的に照明され、そして他方の側でカメラを用いてまず第1に直接透過光が検出された。シリコンディスク20の全体画像を発生するために、シリコンディスクはカメラと使用光源によって走査された(abgerastert)。
【0013】
これに対して、本発明に係る方法によって提案するように、直接透過光部分の検出の少なくとも一部と、1回反射した光部分の検出の少なくとも部分的に回避されると、図2の図示にほぼ一致するシリコンディスク20の画像が得られる。図2が示すように、これにより、粒状組織24の大部分が消えるので、割れ目22の識別がきわめて簡単になる。割れ目22の周囲において、結晶構造24が図1よりもぼんやり見える。なぜなら、ここでは、直接透過した光部分の一部および/または1回反射した光部分の一部が検出されるからである。
【0014】
しかしながら、直接透過した照射光の部分の検出と、1回反射した照射光の部分の検出を完全に回避すると、図2で見える粒状組織24を同様に消すことが可能である。この場合、図3に示すような画像が得られる。ここで、割れ目22ははっきり見える。なぜなら、粒状組織24が完全に消されているからである。図3に概略的に示す画像はシリコンディスク20の表面粗さによって決定される。特にシリコンブロックを切断又は鋸引きして酸性エッチング剤でオーバーエッチングした多結晶シリコンディスク20の場合に、ランバートの多数回反射、ひいては局部等方性照射がきわめて近似的に実現可能であることが実際にわかった。
【0015】
本発明に係る方法の有利な変形例では、照射光が物体の表面に集束される。これによって、物体を非常に強く局部的に照明することができる。
【0016】
物体を照明するために、好ましくは線形光、特に有利には物体の表面に集束される線形光が照射され、そして照射光の複数回反射した部分が線に沿って検出される。この検出は例えば、ラインセンサ(線形センサ)によって、特にラインカメラによって実現可能である。
【0017】
本発明に係る方法の有利な変形の場合には、不均質物体内の欠陥が検出される。本発明の意味における不均質な物体とは、画一的な基本構造、例えば、画一的な結晶構造を有していない物体であると理解すべきである。従って、多結晶物体、特に多結晶半導体材料はこのような不均質物体である。
【0018】
本発明に係る方法は、シリコン体、好ましくはシリコンディスクおよび特に有利には多結晶シリコンディスクの欠陥を検出する際に有効であることが実証された。一方では、本発明の意味におけるシリコンディスクは、切断又は鋸引きされただけのシリコンディスクまたは切断され又は鋸引きされオーバーエッチングされたシリコンディスクまたは完成したまたは部分プロセス化されたシリコン太陽電池である。
【0019】
本発明の発展形態では、シリコン体の欠陥の検出時に、1100〜5000nmの波長の光、特に1100〜2000nmの波長の光が照射される。
【0020】
本発明に係る方法の有利な変形では、切断又は鋸引きによってシリコン材料部材から分離されたシリコン体の欠陥が検出される。その結果、シリコン体は少なくとも一部が切断又は鋸引きによる粗い表面を有する。それによって、シリコン界面で照射光の統計的拡散が生じ得る。この拡散の統計はランバート反射によって比較的に良好に説明することができる。
【0021】
シリコン体が欠陥の検出の前に少なくとも部分的にオーバーエッチングされる場合には、本発明に係る方法によって欠陥を検出するために、酸性エッチング剤によるシリコン体のオーバーエッチングが有利であることがわかった。これに対して、アルカリ性エッチング剤によるオーバーエッチングは欠陥検出を困難にする。
【0022】
本発明に係る方法のより好ましい実施形態では、局部的な照明のために、光は物体の一方の側の少なくとも一部に照射され、物体の同じ側で複数回反射した照射光部分が検出される。これはいわゆる入射光方法である。この入射光方法は、特に、物体の一方の側に、入った光を透過しない層、例えば、金属コーティングが設けられていると有利である。なぜなら、局部照明のための光源と、複数回反射した光部分を検出するための検出器とを、金属コーティングしていない物体の側に配置することができるからである。
【0023】
有利な変形では、光が物体の表面に対して斜めに照射される。これにより、光は物体内で長い路程距離を進む。これは、結晶構造または他の不均質性を考慮しないようにするために有利であることがわかった。
【0024】
上記の入射光方法の代替的な変形では、局部的な照射のために、光が物体の第1側の一部に照射され、複数回反射した照射光部分が物体の第1側とは反対側の第2側で検出される。この方法はしばしば透過光方法と呼ばれる。
【0025】
透過光方法の場合にも、光は好ましくは物体の表面に対して斜めに照射される。これは入射光方法に関連して既に説明したように、欠陥の検出に有利に作用する。
【0026】
本発明に係る方法の有利な変形では、局部的な照明のために、照射光が物体の表面の少なくとも一部にわたって、好ましくは物体の側面全体にわたって案内される。このような案内は連続的に行うことができるかあるいは走査可能である。これにより、物体の完全画像を生じることができる。物体を検出器および光源と相対的に動かすことにより、照射光を物体の表面の少なくとも一部にわたって案内することができる。
【0027】
本発明に係る装置は、物体を透過する波長の光を物体に局部的に照明するための光源と、光源から出射された光を検出するための検出器とを備えている。さらに物体を光源によって局部的に照明可能である照明領域の少なくとも一部と、直接透過した光部分の射出領域の少なくとも一部とが、検出器の検出領域の外に位置するように、検出器と光源が配置されている。直接透過した光部分の射出領域とは、直接透過した照射光部分が物体から外に出る物体の表面領域であると理解すべきである。検出器の検出領域は、検出器によって検出可能である物体の領域を指す。
【0028】
本発明に係る装置の変形では、1100〜5000nmの周波数を有する光、特に1100〜2000nmの周波数を有する光が、光源によって放出可能である。
【0029】
同様に、好ましくは、1100〜5000nmの波長領域、特に好ましくは1100〜2000nmの波長領域において感知する検出器が設けられている。
【0030】
本発明に係る有利な変形では、光源から出射された光を物体の表面上に集束するためのレンズが設けられている。これにより、光源から出射され物体に照射された光を強く集中させることができる。
【0031】
本発明に係る装置の有利な変形は、検出器の検出領域を通って物体を搬送することができる搬送装置を備えている。このような装置は好ましくは、しばしば「インライン」運転と呼ばれる連続的な運転のために設計されていると有利である。これにより、多数の物体を低コストで検査することができる。
【0032】
有利な変形では、本発明に係る装置は、照射光の検出された部分の強度の差を評価するための評価装置を備えている。
【0033】
本発明の発展形態では、検出器の検出領域が照明領域と、直接透過した光部分の射出領域とから離隔されている。これにより、直接透過した光部分の大部分の検出と、1回反射した光部分の大部分の検出を容易に回避することができる。
【0034】
本発明の変形では、光源と検出器が物体を支持可能な支持平面の同じ側に配置されている。この構造は入射光方法での欠陥の検出を可能にする。他の変形では、光源と検出器が支持平面の互いの反対側に配置されている。これは透過光方法での欠陥の検出を可能にする。
【0035】
本発明に係る装置の有利な変形では、光源として少なくとも1個の線光源が設けられ、検出器として、ラインセンサを備えた少なくとも1個の装置が設けられている。好ましくはラインセンサとして、ラインカメラが使用される。
【0036】
本発明に係る装置のすべての変形において、検出器は好ましくは、光源の波長領域で動作する対物レンズを備えている。その際、この対物レンズと、場合によっては、必要になるかもしれない検出器の他の光学要素とが、検出器の検出範囲内に位置する物体の領域を、検出器のセンサ、例えば、検出器のラインセンサに結像するように、設置されると有利である。
【0037】
有利な変形では、検査すべき物体、例えば、シリコンディスクが、検出器の検出領域を通って搬送される間に、完全に検出可能であるように、ラインセンサと、ことによると必要になるかもしれない対物レンズと、ことによると必要になるかもしれない他の光学要素とが配向されている。検査すべき物体、例えば、シリコンディスクが、検出領域を通って搬送されることにより、物体、例えば、シリコンディスクの全体画像を作成することができる。
【0038】
本発明に係る装置の発展形態では、線光源の長手延長方向と線光源の光軸によって形成された光平面と、ラインセンサの長手延長方向とラインセンサの光軸によって形成された検出器平面がそれぞれ、支持平面と共に、互いに平行な交線を形成するように、線光源とラインセンサが配向されている。検出器がラインセンサであり、光源が線光源であるので、光軸の代わりに、光学平面という用語を用いることができる。この場合、光平面は線光源の光学平面に一致し、検出器平面はラインセンサの光学平面に一致する。
【0039】
有利な変形では、支持平面の少なくとも一部が搬送装置、例えば、コンベヤベルトによって形成されている。このコンベヤベルトの上面は物体の支持平面を形成する。
【0040】
本発明に係る装置のきわめて有利な変形では、検出器あるいは特にラインセンサは、それらの光軸が支持平面の面垂線に対して平行に延在するように配向されている。
【0041】
本発明に係る装置の発展形態では、平行な交線の間隔が可変であるように、装置が形成されている。これにより、直接透過した光部分の検出または1回反射した光部分の検出をどの程度回避するかを、簡単に調節することができる。
【0042】
本発明に係る装置の有利な変形では、光源と検出器からなる群のうちの少なくとも1つの要素が可動に支持されている。特に、この要素は回転可能および/または揺動可能に支持されている。これは、光源と検出器の方向を互いに容易に適合させることを可能にする。これにより、本発明の変形では、検出器平面または光平面と支持平面との交線を、互いに平行に容易に向けることができる。
【0043】
次に、図に基づいて本発明を詳しく説明する。合目的である限りは、同じように作用する要素には、同じ参照符号が付けてある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】割れ目を有する多結晶シリコンディスクの撮影画像の欠陥を検出するための従来技術に係る方法を示す概略図である。
【図2】図1のシリコンディスクの撮影画像の直接透過した光部分の検出を部分的に回避しかつ1回反射した光部分の検出を部分的に回避する本発明に係る方法を示す概略図である。
【図3】図1のシリコンディスクの撮影画像の直接的な光部分の検出を完全に回避しかつ1回反射した光部分の検出を完全に回避する本発明に係る方法を示す概略図である。
【図4】本発明に係る方法の実施形態の原理図である。
【図5】本発明に係る装置の第1の実施形態の概略図である。
【図6】図5の詳細拡大図である。
【図7】本発明に係る装置の第2の実施形態の原理図である。
【図8】図7の詳細拡大図である。
【図9】1回反射した光部分を概略的に示す、図8と同じ部分領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図4は本発明に係る方法の第1の実施形態を概略的に示している。この実施形態に従って、多結晶シリコン体は赤外線で局部的に照明される(10)。さらに、赤外線は検出領域で検出される(12)。この検出領域は、シリコン体が局部的に照明される照明領域と、シリコン体の局部的な照明のために照射された赤外線の直接透過した光部分の射出領域とから離隔されている。これにより、照射された赤外線の直接透過した光部分、またはこの赤外線の1回反射した光部分の検出を十分に回避することができる。上述のように、欠陥、特に割れ目または包有物は、照射光の検出された部分内に、特徴的な強度の差を示し、この強度の差に基づいて、欠陥を識別することができる。従って、この強度の差が評価され、この強度の差に基づいて欠陥が識別される(14)。
【0046】
図5は本発明に係る装置の第1の実施形態を示す。この装置は、本実施形態では線光源40として形成された光源を備えている。この光源40によって、光はシリコンブロックを切断又は鋸引きして酸性オーバーエッチングした多結晶のシリコンディスク20に照射される。これは、上述したように、光平面としてみなされる線光源40の光軸41を明確にする。光平面とみなすことができる。多結晶シリコンディスク20はコンベヤベルト45a、45bの上面に支持されている。従って、このコンベヤベルトは支持平面46を形成している。反対の支持平面46に対して対向する側にある線光源40には、検出器が配置されている。この検出器は本実施形態では、ラインカメラ42として形成されている。光平面と解釈することもできるラインカメラの光軸43から分かるように、ラインカメラ42はシリコンディスク20の表面の方へ下向きに配置(配向)されている。支持平面46に対して光源40とラインカメラ42を反対側に配置すると、透過光方法での欠陥の識別が可能になる。
【0047】
ラインカメラ42は評価装置44に接続されている。この評価装置は、照射光の検出された部分の強度の差によって、欠陥の識別を可能にする。
【0048】
図6は図5の装置の部分拡大図であり、この方法で同時に、図5の装置によって実施可能な本発明に係る方法を示している。図6から明らかなように、線光源40から光軸41に沿って照射された光50は、照明領域51において多結晶シリコンディスク20に当たる。その際、照射光50が線光源40内に設けられたレンズによって照明領域51内に集束されるとより好ましい。
【0049】
照射光50は照明領域51においてその一部が多結晶シリコンディスク20の表面で反射する。1回反射したこの光部分は図6では、見やすくするために省略されている。残りの光部分は多結晶シリコンディスク20を透過し、その一部はシリコンディスク20の上側の界面のところでシリコンディスク20からその周囲に出る。この光部分は直接透過した光部分48である。射出光が界面での光の屈折に基づいて平行にずれることがあり得るが、見やすくするために、これはすべての図において省略されている。
【0050】
直接透過しなかった残り光部分は、界面でその周囲に反射する。1回反射したこの光部分はその一部がシリコンディスク20の下面のところでこのシリコンディスクから出て、もはや検出器42には達しない。残りの光部分は2回目の反射をし、従って複数回反射した光部分も存在する。界面におけるこの反射過程は複数回行われる。照射光50が斜めに照射されるので、複数回反射した光は図6において左側に伝播する。従って、この光は最終的に、検出器の検出領域47に達し、そこでシリコンディスク20から出た後で検出可能である。
【0051】
光の変化を考慮することは簡単化されている方法では、比較的に滑らかな表面を有する物体のほとんどの場合で十分である。これに対して、検査すべき物体の表面が多少凸凹している場合には、物体の界面のところで周囲への多少の任意の散乱が生じる。まさにこの任意の散乱が本発明に係る方法で効率的に対処することが可能である。例えば、照射光50はラインカメラの光軸43に対して真に平行に照射可能であり、それにもかかわらず検出領域47の光部分をで検出可能である。この光部分は、シリコンディスク20の表面における上記の任意の散乱に基づいて、特にシリコンディスクの平面内で光の伝播が行われるということに起因する。これは、シリコンディスクの表面が完全に滑らかである場合に、照射された光50が平行であると想定される場合にはないであろう。。しかしながらそれにもかかわらず、本発明に係る方法の場合には、物体、本実施形態の場合にはシリコンディスク20の表面での照射光50の強い散乱のときでさえも、照射光の斜めの照射によって、すなわち図6と図5に示すように斜めの照明によって、シリコンディスク内での光部分の伝播、すなわち図5と図6において水平方向左側への伝播が増幅される。
【0052】
複数回の反射は検査物体の内部、本実施形態ではシリコンディスク20の内部での光の伝播を生じる。この光の伝播は良好な等方性を有する。さらに、線光源40の使用に基づいて直線的に延在する照射領域51に対して平行に、良好な均一性を有する光伝播が生じる。光が物体内で伝播し、特にシリコンの場合長い自由路程距離を有するので、ラインカメラ42によって検出した画像内の多結晶シリコンディスク20の結晶構造が多く消滅していればいるほど、それだけ検出領域47が照明ライン49から距離が離れている。ラインカメラによって検出された画像は、物体、本実施形態ではシリコンディスク20の表面粗さによって大きく左右される。図5と図6の実施形態では、シリコンディスク20はシリコンブロックから切断又は鋸引きされており、従って大きな表面粗さを有する。これは本発明に係る方法で達成される多数回反射の効果をさらに増強する。
【0053】
検出物体、本実施形態の場合シリコンディスク20に包有物または割れ目が存在すると、これは検出された光部分の特徴的な強度の差を有することになる。この強度の差に基づいて、これらの欠陥は評価装置44の画像処理アルゴリズムによって識別可能である。
【0054】
図6に示すように、図示した実施形態では、ラインカメラ42の検出領域47は照明領域51と、直接透過した光部分48の射出領域49から離れている。これによって、直接透過した照射光50の部分48の検出と、1回反射した照射光50の部分の検出の大部分を簡単に回避することができる。
【0055】
図5の実施形態では、線光源40とラインカメラ42の長手延長方向は図面の平面に対して垂直である。従って、線光源40とその光軸41の長手延長方向は、同様に図面の平面に対して垂直である光平面を形成する。図面の平面内におけるこの光平面の位置は線光源40の光軸41によって示される。それによってさらに、参照符号41は光平面の基準としての役目もする。これに応じて、ラインカメラ42とその光軸43の長手延長方向は、同様に図面の平面に対して垂直な検出器平面を形成する。図面の平面内におけるこの検出器平面の位置はラインカメラの光軸43によって示される。従って、以下において、参照符号43は同時に、この検出器平面の基準として使用される。
【0056】
光平面41と検出器平面43は支持平面46と交叉し、その際交線55または56を形成する。この交線55、56は図面の平面に対して垂直に延在し、互いに平行に向いている。
【0057】
図5の実施形態では、線光源40が可動に支持されている。線光源は図面の平面に対して垂直に延在する軸の回りに回転可能に支持され、さらに図面の平面内にある軸の回りに揺動可能である。これにより、交線55、56を互いに平行に容易に配向することができる。さらに、平行な交線55、56の間隔を簡単に変更可能である。そのためには、図面の平面に対して垂直に延在する軸の回りに線光源を回転させるだけでよい。平行な交線55、56の間隔を変更することにより、直接透過した光部分の検出と1回反射した光部分の検出をどの程度回避するかを容易に調節することができる。
【0058】
図7は本発明に係る装置の他の実施形態を示し、同時に本発明に係る方法の実施形態を示している。図7の装置は図5に示した装置と、線光源60または40の配置のみことなっており、それによって生じる、線光源60の光軸61または線光源60の光平面61の延長に関する結果が異なっている。
【0059】
図7からわかるように、線光源60と検出器42は支持平面46の同じ側に配置されている。従って、本発明に係る装置の図示した変形例は入射光方法を実施するために適している。これは特に、シリコンディスク20の一方の側が入った光を透過しないコーティング、例えば、金属層を備えているときに有利である。この金属層は図7の実施形態ではコンベヤベルト45a、45bの方に向いたシリコンディスク20の側に配置される。
【0060】
線光源60の長手延長方向が図7の図面の平面に対して垂直に向いているので、線光源60の長手延長方向と線光源の光軸61によって形成された光平面は一方では図面の平面に対して垂直に延在し、他方では図面の平面内の光平面の位置は光軸61によって示される。従って、参照符号61はこの光平面の基準として使用される。
【0061】
図8は図7の部分拡大図である。この図からわかるように、図7の実施形態においても、ラインカメラ42の検出領域47は、照明領域51と直接透過した光部分48の射出領域49とから離隔して配置されている。これにより、既に説明したように、直接透過した光部分48の検出を簡単に回避することができるかまたは1回反射した光部分の検出を十分に回避することができる。
【0062】
図9は、照明領域51または射出領域49からの検出領域47の間隔が、1回反射した光部分の検出の回避の程度に影響を及ぼすことを示している。図9は図8と同じように拡大した部分図であるが、さらに1回反射した光部分53a、53bを示している。この光部分に基づいて明らかなように、検出領域と射出領域49の間隔を本実施例のように選択すると、1回反射した光部分53a、53bの検出が十分に回避される。しかしながら、検出領域47を照明領域51に近づけると、まず最初に1回反射した光部分53bの一部が検出され、照明領域51にさらに近づけると、1回反射した光部分53aの一部がさらに検出される。これに対して、入射光構造の場合、すなわち線光源60とラインカメラ42が同じ側に配置されている場合、直接透過した光48の検出の危険は小さい。
【0063】
図8に示すように、図7の実施形態では、光平面61と検出器平面41の交線55、56が互いに平行に延在している。さらに、線光源60は可動に支持されている。線光源は特に、図面の平面に対して垂直に延在する軸に関して回転可能に、かつ図面の平面内に延在する軸に関して揺動可能に形成されている。従って、線光源60とラインカメラ42または光平面61と検出器平面41は、相互の方へ容易に配向することが可能である。さらに、交線55、56の間隔は、図5に関連して説明した方法と類似の方法で容易に変更可能である。
【0064】
本発明に係る装置のきわめて有利な変形例の場合には、支持平面46の両側に、光源のための撮影装置、特にラインカメラ40、60が設けられている。それによって、本発明に係る装置は入射光方法でも透過光方法でも使用可能である。例えば、図5と図7の構造は同じ装置で実現可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 局部照明
12 検出領域での光の検出
14 欠陥の識別
20 シリコンブロックから切断又は鋸引きして酸性オーバーエッチングした多結 晶のシリコンディスク
22 割れ目
24 粒界
40 線光源
41 線光源の光軸/光平面
42 ラインカメラ
43 ラインカメラの光軸/検出器平面
44 評価装置
45a コンベヤベルト
45b コンベヤベルト
46 支持平面
47 検出領域
48 直接透過光部分
49 射出領域
50 照射光
51 照明領域
53a 1回反射した光部分
53b 1回反射した光部分
55 光平面と光平面の交線
56 支持平面と検出器平面の交線
60 線光源
61 線光源の光軸/光平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(20)を透過する波長の光(50)を照射することによって物体(20)を局部的に照明するステップ(10)を備えた、物体(20)の欠陥(22)を検出するための方法において、
直接透過した照射光部分(48)の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、かつ1回反射した照射光(50)の部分(53a、53b)の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、複数回反射した照射光(50)の部分を検出するステップ(12)と、
検出した照射光(50)の部分の強度の差を評価することによって欠陥(22)を識別するステップ(14)と、を備える方法。
【請求項2】
不均質な物体(20)の欠陥(22)が検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコン体(20)、好ましくはシリコンディスク(20)内の欠陥(22)が検出されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
シリコン材料部材から切断されたシリコン体(20)内の欠陥(22)が検出されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
直接透過した照射光(50)の部分(48)の検出を完全に回避しつつ、かつ1回反射した照射光(50)の部分(53a、53b)の検出を完全に回避しつつ、複数回反射した照射光(50)の部分を検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
直接透過した照射光(50)の部分(48)の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、かつ1回反射した照射光(50)の部分(53a、53b)の検出を少なくとも部分的に回避しつつ、複数回反射した照射光(50)の部分を検出するために、検出領域(47)において光が検出され、この検出領域が局部的に照射される物体(20)の照明領域(51)と直接透過する光部分(48)の射出領域(49)とから離隔されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
局部的な照明(10)のために、光が物体(20)の一方の側の一部に照射され、物体(20)の同じ側で複数回反射した照射光(50)の部分が検出されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
局部的な照明(10)のために、光が物体(20)の第1側の一部に照射され、複数回反射した照射光(50)の部分が第1側とは反対の物体(20)の第2側で検出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
物体(20)を透過する波長の光を物体(20)に局部的に照明する(10)ための光源(40;60)と、
光源(40;60)から出射された光(50)を検出するための検出器(42)とを備えている、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置において、
物体(20)を光源(40;60)によって局部的に照明可能である照明領域(51)の少なくとも一部と、直接透過した光部分(48)の射出領域(49)の少なくとも一部とが、検出器(42)の検出領域(47)以外に位置するように、検出器(42)と光源(40;60)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
検出器(42)の検出領域(47)が照明領域(51)と直接透過した光部分(48)の射出領域(49)とから離隔されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
光源(40;60)と検出器(42)が、物体(20)を支持することができる支持平面(46)の同じ側または反対側に配置されていることを特徴とする請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
光源(40;60)として、少なくとも1個の走査光源(40;60)が設けられ、かつ、検出器(42)として、ラインセンサを備えた少なくとも1つの装置が設けられていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
走査光源(40;60)の長手延長方向とその光軸(41;61)によって形成される光平面(41;61)と、ラインセンサ(42)の長手延長方向とそのラインセンサ(42)の光軸(43)とによって形成される検出器平面(43)とが、それぞれ支持平面(46)と、互いに平行の交線(55、56)を形成するように、線光源(40;60)とラインセンサ(42)が配向されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
平行な交線(55、56)の間隔が変更可能であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
光源(40;60)と検出器(42)からなる群のうちの少なくとも1個の要素が可動に支持されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−53213(P2011−53213A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195271(P2010−195271)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(510236092)ジーピー・インスペクト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】